JP4394490B2 - 塩ストレス耐性を付与する遺伝子 - Google Patents

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Description

本発明は、塩ストレス耐性を付与する遺伝子、及び該遺伝子を導入した形質転換植物等に関する。
植物が受ける環境ストレスには、塩、乾燥、高温、低温、強光、空気汚染等があるが、農業生産の観点から最も問題となっているのが、塩害及び乾燥である。塩害はもともと塩分の高い地域のみならず、灌漑を行うことによりそれまで問題のなかった農地においても発生している。現在、アジアでは1200万ヘクタールの耕地が塩害や干ばつの被害を受けており、実際に950万ヘクタールの耕地が塩害のため未使用のままになっている。特に、イネはアジアにおける主要穀物であるのでイネに塩ストレス耐性が付与できれば未使用の農地も食料生産の場に変えられて、世界の穀物生産の安定化に貢献できる。これまで、劣悪環境下や不良土壌でも栽培可能な環境ストレス耐性植物を遺伝子組換え技術を駆使して作出する種々の試みが検討されている。例えば、塩ストレスによって誘導される遺伝子を単離し、該遺伝子を発現させることで、耐塩性植物の作出が可能になると考えられる。塩ストレス耐性付与遺伝子としてこれまでコウライシバ由来のベタイン合成酵素遺伝子(特許文献1)、Arthrobacter globiformis由来のコリンオキシダーゼ遺伝子(非特許文献1)、イネ由来の葉緑体型グルタミンシンターゼ(非特許文献2)、イネ由来の転写活性因子(Os DREB)(非特許文献3)、ホソバノハマアカザ由来のNa/Hアンチポーター遺伝子(特許文献2)等が知られている。また、糖代謝・合成に関与する酵素遺伝子では、大腸菌由来のトレハロース合成関連遺伝子(非特許文献4)、UDPガラクトースからガラクチノールを合成するガラクチノール合成酵素(AtGolS)遺伝子が、乾燥・塩・低温といった水ストレス耐性付与に関与することがシロイヌナズナにおいて報告されている(非特許文献5、非特許文献6)。双子葉植物では、シロイヌナズナ由来のNa+/H+アンチポーター遺伝子にて形質転換したトマト(非特許文献7)やBrassica植物(非特許文献8)において200mMで10週間にわたって塩ストレス耐性を評価した例があり、果実や種子の収穫が報告されている。しかしながら、単子葉形質転換植物では移植から種子を収穫するまでという長期間の耐塩性を付与した遺伝子はない。例えば、形質転換イネで塩ストレス耐性を示した条件としては100mMで13日間、150mMで2週間、300mMで3日間と短期である。従って、苗の移植から種子の収穫までといった数週間から数カ月にわたる実際の生産工程に対応した耐塩性形質を上記の遺伝子群が付与できるとは判断し難いのが現状である。
UDPグルコース4−エピメラーゼは、UDPグルコースからUDPガラクトース、逆にUDPガラクトースからUDPグルコースの両方向の反応を触媒する酵素である。これまで植物由来のUDPグルコース4−エピメラーゼ遺伝子(以下、UGE遺伝子ともいう)としては、例えばシロイヌナズナ、グアーなどから単離されている(非特許文献9)。しかしながら、塩ストレス耐性を付与することのできるUGE遺伝子についてはこれまで知られていない。また、塩ストレスによってUGE遺伝子が誘導される植物種についてもこれまで報告がない。
ガラクトースは双子葉植物シロイヌナズナの芽生えにおいて茎葉部の生長を抑制する。これは、外から与えたガラクトースを植物が利用しきれず、UDP−ガラクトースやガラクトース−1−リン酸が蓄積したことによると考えられている。しかしながら、シロイヌナズナのUGE遺伝子の35SとnosTの発現カセットを導入した植物体では、ガラクトース存在下でも生長が抑制されにくいことが報告されており、UGE遺伝子の形質転換植物用選抜マーカーとしての有用性が指摘されている(非特許文献9、10参照)。また、上記UGE遺伝子導入植物体がガラクトース存在下で成長が抑制されないのはUGE遺伝子が蓄積したUDP-ガラクトースをUDP-グルコースに変換したためと考えられている。一方、ガラクトースは、単子葉植物において芽生えの一部の組織、幼葉鞘又は鞘葉、種子根のホルモン(オーキシンやジベレリンなど)による伸長生長の抑制作用があることが報告されているが(非特許文献11)、組織培養に関わる生理現象、例えば発根に対する影響などについての研究報告はない。また、イネ科を含む単子葉植物に対しては、これまでUGE遺伝子を導入し、ガラクトース存在下における生育を調べた実験報告はない。
さらに、近年、遺伝子組換え農作物(GMO)の安全性に関して最も問題視されているのが、カナマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子等の抗生物質耐性遺伝子がその組換え農作物に残存している点である。この遺伝子は、目的遺伝子の導入のうまくいった細胞を初期段階で選り分けるための選抜マーカー(マーカー遺伝子)と呼ばれるもので、細胞から植物体が再生し、さらに発根、馴化した後は不要なものである。一方、人体に影響の少ないと考えられる糖による選抜方法も近年報告されている。これらは、微生物の糖異性化酵素遺伝子をマーカーとし、キシロース(非特許文献12)やマンノース(非特許文献13)により選抜できる。しかし、これらのマーカー遺伝子は微生物由来であり、従来、人間が食物として摂取したことのないDNAであるため安全性については100%確証があるとは言い難い。従って、抗生物質耐性遺伝子に代わる安全性の高い選抜マーカー、それを用いた発現用ベクターの確立が望まれている。
特開2001-309789号 特開2000-157287号 Mohanty A., et al., Theor. Appl. Genet., 106, pp.51-57 (2002) Hoshida H., et al., Plant Mol. Biol., 43, pp.103-111 (2000) Dobouzet J. G., et al., Plant J. 33, pp.751-763 (2003) Jang I.C., et al., Plant Physiol., 131, pp. 516-524 (2003) 細胞工学, Vol.21, No.12, pp.1455-1459 (2002) Teruaki T., et al., The Plant Journal, 29(4), pp.417-426 (2002) Zhang H.X., Blumwald E., Nature Biotechnol., 19, pp.765-768 (2001) Zhang H.X., et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA., 98, pp.12832-12836 (2001) Reiter W. D., Vanzin G. F., Plant Mol. Biol., 47, pp.95-113 (2001) Dormann P. & Benning, C., The Plant Journal, 13, pp.641-652 (1998) Inouhe M., et al., Physiologia Plantalum, 66, pp.370-376 (1986) Haaldrup A., et al., Plant Cell Reports, 18, pp.76-81 (1998) Joersbo M., et al., Molecular Breeding, 4, pp.111-117 (1998)
本発明の課題は、長期間に渡って植物に塩ストレス耐性を付与することが可能な新規な遺伝子、及びその遺伝子を導入した塩ストレス耐性形質転換植物等を提供することにある。本発明の別の課題は、抗生物質耐性遺伝子に代わる安全性の高い選抜マーカーを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、海水耐性シバ(seashore paspalum)に塩ストレスによって誘導される遺伝子があることに着目し、そのクローニングを試みたところ、その遺伝子がUDPグルコース4−エピメラーゼをコードする遺伝子であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1) 以下の(a)、(b)、又は(c)に示すタンパク質をコードする遺伝子。
(a) 配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
(b) 配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ植物に塩ストレス耐性を付与する活性を有するタンパク質
(c) 配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつUDPグルコース4−エピメラーゼ活性を有するタンパク質
(2) 以下の(d)、(e)、又は(f)に示すDNAからなる遺伝子。
(d) 配列表の配列番号1に示す塩基配列からなるDNA
(e) 配列表の配列番号1に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ植物に塩ストレス耐性を付与する活性を有するタンパク質をコードするDNA
(f) 配列表の配列番号1に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつUDPグルコース4−エピメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
(3) (1)又は(2)に記載の遺伝子を含む組換えベクター。
(4) (1)若しくは(2)に記載の遺伝子、又は(3)に記載の組換えベクターを導入した形質転換植物。
(5) (1)若しくは(2)に記載の遺伝子、又は(3)に記載の組換えベクターを導入した塩ストレス耐性形質転換植物。
(6) 植物が単子葉植物である、(4)又は(5)に記載の形質転換植物。
(7) 単子葉植物がイネ科、ユリ科、又はショウガ科に属する植物である、(6)に記載の形質転換植物。
(8) イネ科に属する植物が、イネ、オオムギ、コムギ、トウモロコシ、サトウキビ、シバ、ソルガム、アワ、及びヒエから成る群から選択される、(7)に記載の形質転換植物。
(9) 植物が双子葉植物である、(4)又は(5)に記載の形質転換植物。
(10) 双子葉植物が、アブラナ科、ナス科、マメ科、ウリ科、セリ科、キク科、アオイ科、アカザ科、フトモモ科、又はヤナギ科に属する植物である、(9)に記載の形質転換植物。
(11) (1)若しくは(2)に記載の遺伝子、又は(3)に記載の組換えベクターを植物に導入することを特徴とする、植物に塩ストレス耐性を付与する方法。
(12) (1)又は(2)に記載の遺伝子を含有する形質転換植物選抜用マーカー。
(13) 植物が単子葉植物である、(12)に記載の形質転換植物選抜用マーカー。
(14) 単子葉植物がイネ科、ユリ科、又はショウガ科に属する植物である、(13)に記載の形質転換植物選抜用マーカー。
(15) イネ科に属する植物が、イネ、オオムギ、コムギ、トウモロコシ、サトウキビ、シバ、ソルガム、アワ、及びヒエから成る群から選択される、(14)に記載の形質転換植物選抜用マーカー。
(16) 植物が双子葉植物である、(12)に記載の形質転換植物選抜用マーカー。
(17) 双子葉植物が、アブラナ科、ナス科、マメ科、ウリ科、セリ科、キク科、アオイ科、アカザ科、フトモモ科、又はヤナギ科に属する植物である、(16)に記載の形質転換植物選抜用マーカー。
(18) (1)若しくは(2)に記載の遺伝子、又は(3)に記載の組換えベクターを植物に導入し、その植物をガラクトース含有培地にて培養し、ガラクトース耐性の有無を指標に前記遺伝子が導入された植物として選抜することを含む、形質転換植物の選抜方法。
本発明によれば、塩ストレス耐性を付与できる遺伝子が提供される。本遺伝子をイネなどの植物に導入することにより、塩ストレスの環境下で長期間生育し、種子をつけることのできる耐塩性植物を作出することができる。
1.遺伝子のクローニング
(1) cDNAライブラリーの作製及びスクリーニング
本発明の塩ストレス耐性を付与する遺伝子は、例えば以下のようにして取得することができる、まず、海水又は塩ストレスを加えた状態(塩処理区)と加えない状態(未処理区)でそれぞれ栽培した海水耐性シバ(seashore paspalum)からトータルRNAを調製し、オリゴdTを用いて作成した一本鎖cDNAを鋳型としてPCRを行い、塩処理プローブと対照区プローブを作成する。
次に、これらの2種のプローブ(塩処理プローブと対照区プローブ)を用いて、seashore paspalum cDNAライブラリーからディファレンシャルスクリーニング法によって塩処理区プローブでのみ特異的に検出されるクローンを選抜する。次に、そのクローンに含まれるcDNAの部分配列を基に作成したプローブを用いてノーザン解析を行い、塩ストレスによってseashore paspalumシバでは誘導されるがイネでは誘導されないクローンを二次選抜する。最後にこのクローンをプローブとして用いて塩ストレスを加えたseashore paspalumシバから調製したcDNAライブラリーから目的遺伝子を含むクローンを得る。
海水耐性シバ(Seashore Paspalum;Duedck A. E. and Peacock C. H., Agronomy Journal vol. 77, pp. 47-50 (1985)などに記述)からのmRNAの抽出及びcDNAライブラリーの作製は常法に従って行うことができる。mRNAの供給源としては、例えばSeashore Paspalum の成葉が挙げられるが、これに限定されるものではない。mRNAの調製は、通常行われる手法により行うことができる。例えば、上記供給源から、グアニジウムチオシアネート-トリフルオロ酢酸セシウム法などにより全RNAを抽出した後、オリゴdT-セルロースやポリU-セファロース等を用いたアフィニティーカラム法により、あるいはバッチ法によりポリ(A)+RNA(mRNA)を得ることができる。さらに、ショ糖密度勾配遠心法等によりポリ(A)+RNAを分画してもよい。
次いで、得られたmRNAを鋳型として、オリゴdTプライマー及び逆転写酵素を用いて一本鎖cDNAを合成した後、該一本鎖cDNAからDNA合成酵素I、DNAリガーゼ及びRnaseH等を用いて二本鎖cDNAを合成する。合成した二本鎖cDNAをT4DNA合成酵素によって平滑化後、アダプター(例えば、EcoRIアダプター)の連結、リン酸化等を経て、λgt11等のベクターに組み込んでin vitroパッケージングすることによってcDNAライブラリーを作製することができる。また、λファージ以外にもプラスミドを用いてcDNAライブラリーを作製することもできる。
上記のようにして得られる形質転換体から目的のDNAを有する株を選択するには、例えば、λファージ(λgt11等)を用いた場合は、λgt11インサート増幅用のプライマーを用いてPCRを行う方法を採用することができる。
ここで用いられる鋳型DNAとしては、前記mRNAから逆転写反応により合成されたcDNAが挙げられる。また、プライマーとしては、市販のランダムヘキサマー等が使用できる。
mRNAの抽出、cDNAライブラリーの作製、プローブの作製、cDNAライブラリーのディファレンシャルスクリーニングについては実施例1に具体例を示した。また、クローニングされた遺伝子がシバ(paspalum)で塩ストレス処理により誘導されることは、発現解析手法であるノーザンブロット解析法又はRT-PCR法などにより確認することができる。その確認については、実施例3に具体例を示した。
(2) 塩基配列の決定
上記で得られたcDNAのクローンについて、PCR産物を鋳型にしてcDNAの塩基配列を決定する。塩基配列の決定はマキサム-ギルバートの化学修飾法、又はM13ファージを用いるジデオキシヌクレオチド鎖終結法等の公知手法により行うことができるが、通常は自動塩基配列決定装置(例えばApplied Biosystems社製ABI373シークエンサー、同社310 DNAシークエンサー等)を用いて配列決定が行われる。得られた塩基配列を、DNASIS(日立ソフトウエアエンジニアリング社)等のDNA解析ソフトによって解析し、得られたDNA鎖中にコードされているタンパク質コード部分を見出すことができる。
本発明の塩ストレス耐性を付与する遺伝子(以下、Ps UGE遺伝子ともいう)は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子である。
また、本発明の遺伝子には、配列番号2に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ植物に塩ストレス耐性を付与する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も含まれる。
さらに、本発明の遺伝子には、配列番号2に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつUDPグルコース4−エピメラーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も含まれる。
ここで、欠失、置換若しくは付加されてもよいアミノ酸の数としては、好ましくは、1個から数個である。例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列の1〜10個、好ましくは1〜5個のアミノ酸が欠失してもよく、配列番号2で表わされるアミノ酸配列に1〜10個、好ましくは1〜5個のアミノ酸が付加してもよく、あるいは、配列番号2で表されるアミノ酸配列の1〜10個、好ましくは1〜5個のアミノ酸が他のアミノ酸に置換してもよい。
また、本発明の遺伝子には、配列番号2に示すアミノ酸配列と65%以上の相同性を有する遺伝子であって、植物に塩ストレス耐性を付与する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も含まれる。
さらに、本発明の遺伝子には、配列番号2に示すアミノ酸配列と65%以上の相同性を有する遺伝子であって、UDPグルコース4−エピメラーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も含まれる。
上記65%以上の相同性は、好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上、最も好ましくは95%以上の相同性をいう。
ここで、「植物に塩ストレス耐性を付与する活性」とは、植物に塩ストレスに対する抵抗性を付与する活性をいう。この活性は、植物に対してNaCl濃度が0.3〜3.0%の塩ストレスを2週間〜8週間継続的に与えた後の植物の生育状態の目視観察、生存率、収量、生長量などの項目を指標として判定することができる。なお、イネにおいては、生育状態の目視観察結果は、国際イネ研究所(IRRI)の耐塩性スコアを用いて数値化することもできる。塩ストレスのNaCl濃度は、植物により異なるが、例えば、イネでは0.3%、オオムギでは1%、コムギおよびトウモロコシでは0.3〜1%とすることができる。
活性の有無は、上記の項目のいずれか一つ、好ましくは2つ以上の組合せにおいて得られた数値が、対照となる植物(非形質転換体など)のそれと比較して高い場合は「活性有り」と判定できる。
上記の「植物に塩ストレス耐性を付与する活性を有する」とは、上記活性が、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質が有する活性と実質的に同等であることをいう。
また、「UDPグルコース4−エピメラーゼ活性」とは、UDPグルコースからUDPガラクトース、逆にUDPガラクトースからUDPグルコースの両方向の反応を触媒する活性をいい(下式参照)、UDPグルコース4−エピメラーゼはEC 5.1.3.2で標記される。
Figure 0004394490
上記の「UDPグルコース4−エピメラーゼ活性を有する」とは、上記反応の触媒活性が、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質が有する活性と実質的に同等であることをいう。
上記UDPグルコース4−エピメラーゼ活性は、例えば、Journal of Biological Chemistry (1964) Vol. 239: 2469-2481を参考に、UDP-ガラクトースを基質として、生成したUDP-グルコースをUDP-グルコースデヒドロゲナーゼによるNAD+からNADHの生成反応と共役させて、分光光度計にて340nmの吸光度上昇を測定することにより、その有無を確認することができる。
本発明の遺伝子はまた、配列表の配列番号1に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ植物に塩ストレス耐性を付与する活性を有するタンパク質をコードするDNAを含む。
本発明の遺伝子はまた、配列表の配列番号1に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつUDPグルコース4−エピメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAを含む。
ここで、ストリンジェントな条件とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、相同性が高い核酸、すなわち配列番号1で表わされる塩基配列と約65%以上、好ましくは約75%以上、より好ましくは約85%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNAの相補鎖がハイブリダイズし、それより相同性が低い核酸の相補鎖がハイブリダイズしない条件が挙げられる。より具体的には、ナトリウム濃度が150〜900mM、好ましくは600〜900mMであり、温度が60〜68℃、好ましく65℃での条件をいう。
上記アミノ酸の欠失、付加、及び置換は、上記タンパク質をコードする遺伝子を、当該技術分野で公知の手法によって改変することによって行うことができる。遺伝子に変異を導入するには、Kunkel法又は Gapped duplex法等の公知手法又はこれに準ずる方法により行うことができ、例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant-K(TAKARA社製)やMutant-G(TAKARA社製))などを用いて、あるいは、TAKARA社のLA PCR in vitro Mutagenesis シリーズキットを用いて変異が導入される。
いったん本発明の遺伝子の塩基配列が確定されると、その後は化学合成によって、又はクローニングされたcDNAを鋳型としたPCRによって、あるいはその塩基配列を有するDNA断片をプローブとしてハイブリダイズさせることによって取得することができる。さらに部位特異的誘発等によって前記遺伝子をコードする修飾されたDNAを合成することができる。
2.組換えベクター及び形質転換植物の作製
(1) 組換えベクターの作製
本発明の組換えベクターは、本発明の上記遺伝子を適当なベクターに挿入することによって作成できる。本発明の遺伝子を植物細胞へ導入し、発現させるためのベクターとしては、pBI系のベクター、pUC系のベクター、pTRA系のベクターが好適に用いられる。pBI系及びpTRA系のベクターは、アグロバクテリウムを介して植物に目的遺伝子を導入することができる。
特にpBI系のバイナリーベクター又は中間ベクター系が好適に用いられ、例えば、pBI121、pBI101、pBI101.2、pBI101.3等が挙げられる。バイナリーベクターとは大腸菌(Escherichia coli)及びアグロバクテリウムにおいて複製可能なシャトルベクターで、バイナリーベクターを保持するアグロバクテリムを植物に感染させると、ベクター上にあるLB配列とRB配列より成るボーダー配列で囲まれた部分のDNAを植物核DNAに組み込むことが可能である(EMBO Journal, 10(3), 697-704 (1991))。
一方、pUC系のベクターは、植物に遺伝子を直接導入することができ、例えば、pUC18、pUC19、pUC9等が挙げられる。また、カルフラワーモザイクウイルス(CaMV)、インゲンマメモザイクウイルス(BGMV)、タバコモザイクウイルス(TMV)等の植物ウイルスベクターも用いることができる。
ベクターに本発明の遺伝子を挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクター DNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法などが採用される。
本発明の遺伝子は、その遺伝子の機能が発揮されるようにベクターに組み込まれることが必要である。そこで、ベクターには、本発明の遺伝子の上流、内部、あるいは下流に、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、ポリA付加シグナル、5'-UTR配列などを連結することができる。
なお、通常であれば選択マーカーとして、例えばハイグロマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ビアラホス耐性遺伝子等が必要であるが、本発明においては目的とするPs UGE遺伝子が導入されたクローンはガラクトース含有培地における生育性を指標に選抜できるので選択マーカーは必ずしも必要としない。
「プロモーター」としては、植物細胞において機能し、植物の特定の組織内あるいは特定の発育段階において発現を導くことのできるDNAであれば、植物由来のものでなくてもよい。具体例としては、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター、ノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター(Pnos)、トウモロコシ由来ユビキチンプロモーター、イネ由来のアクチンプロモーター、タバコ由来PRタンパク質プロモーター等が挙げられる。
また、構成的に植物で発現するプロモーターだけでなく、塩ストレスで誘導されることが明らかになっている遺伝子のプロモーター領域を用いることもできる。そのようなプロモーターとしては、例えば、文献(Shinozaki, K., and Yamaguchi-Shinozaki, K. (2000). Molecular responses to dehydration and low temperature: Differences and cross-talk between two stress signaling pathways. Curr. Opin. Plant Biol. 3, 217-223)記載の遺伝子群などが利用できる。
「エンハンサー」は、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられ、例えばCaMV35Sプロモーター内の上流側の配列を含むエンハンサー領域が好適である。
「ターミネーター」は、前記プロモーターにより転写された遺伝子の転写を集結できる配列であればよい。具体例としては、ノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター(Tnos)、カリフラワーモザイクウイルスポリAターミネーター等が挙げられる。
(2) 形質転換植物の作製
本発明の形質転換植物は、本発明の組換えベクターを、目的遺伝子(Ps UGE遺伝子)が自己の遺伝子中に組み込まれ、発現し得るように植物中に導入することにより得ることができる。
本発明の遺伝子又は組換えベクターを植物中に導入する方法としては、アグロバクテリウム法、PEG−リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポソーム法、パーティクルガン法、マイクロインジェクション法等が挙げられる。例えばアグロバクテリウム法を用いる場合は、プロトプラストを用いる場合、組織片を用いる場合がある。プロトプラストを用いる場合は、Tiプラスミドをもつアグロバクテリウムと共存培養する方法、スフェロプラスト化したアグロバクテリウムと融合する方法(スフェロプラスト法)、組織片を用いる場合は、リーフディスクにより対象植物の無菌培養葉片に感染させる方法(リーフディスク法)やカルス(未分化培養細胞)に感染させる等により行うことができる。
遺伝子が植物に組み込まれたか否かの確認は、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法等により行うことができる。例えば、形質転換植物からDNAを調製し、DNA特異的プライマーを設計してPCRを行う。PCRを行った後は、増幅産物についてアガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はキャピラリー電気泳動等を行い、臭化エチジウム、SYBR Green液等により染色し、そして増幅産物を1本のバンドとして検出することにより、形質転換されたことを確認することができる。また、予め蛍光色素等により標識したプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物を検出することもできる。さらに、マイクロプレート等の固相に増幅産物を結合させ、蛍光又は酵素反応等により増幅産物を確認する方法でもよい。
本発明において形質転換に用いられる植物としては単子葉植物又は双子葉植物のいずれであってもよい。単子葉植物としては、例えばイネ科(イネ、オオムギ、コムギ、トウモロコシ、サトウキビ、シバ、ソルガム、アワ、ヒエ等)、ユリ科(アスパラガス、ユリ、タマネギ、ニラ、カタクリ等)、ショウガ科(ショウガ、ミョウガ、ウコン等)に属する植物が挙げられ、双子葉植物としては、例えばアブラナ科(シロイヌナズナ、キャベツ、ナタネ、カリフラワー、ブロッコリー、ダイコン等)、ナス科(トマト、ナス、ジャガイモ、タバコ等)、マメ科(ダイズ、エンドウ、インゲン、アルファルファ等)、ウリ科(キュウリ、メロン、カボチャ等)、セリ科(ニンジン、セロリ、ミツバ等)、キク科(レタス等)、アオイ科(ワタ、オクラ等)、アカザ科(シュガービート、ホウレンソウ等)、フトモモ科(ユーカリ、クローブ等)、ヤナギ科(ポプラ等)に属する植物が挙げられるが、これらに限定はされない。
本発明において、形質転換の対象となる植物材料としては、例えば、根、茎、葉、種子、胚、胚珠、子房、茎頂(植物の芽の先端の生長点)、葯、花粉等の植物組織やその切片、未分化のカルス、それを酵素処置して細胞壁を除いたプロプラスト等の植物培養細胞が挙げられる。
また、本発明において形質転換植物体とは、植物体全体、植物器官(例えば根、茎、葉、花弁、種子、種子、実等)、植物組織(例えば表皮、師部、柔組織、木部、維管束、柵状組織、海綿状組織等)、植物培養細胞のいずれをも意味するものである。
植物培養細胞を対象とする場合において、得られた形質転換細胞から形質転換体を再生させるためには既知の組織培養法により器官又は個体を再生させればよい。
植物細胞から植物体への再生方法として一般的に知られている方法により、当業者であれば容易に行うことができる。植物細胞から植物体への再生については、例えば、以下のように行うことができる。
まず、形質転換の対象とする植物材料として植物組織又はプロトプラストを用いた場合、これらを無機要素、ビタミン、炭素源、エネルギー源としての糖類、植物生長調節物質(オーキシン、サイトカイニン等の植物ホルモン)等を加えて滅菌したカルス形成用培地中で培養し、不定形に増殖する脱分化したカルスを形成させる(以下「カルス誘導」という)。このように形成されたカルスをオーキシン等の植物生長調節物質を含む新しい培地に移しかえて更に増殖(継代培養)させる。
カルス誘導は寒天等の固型培地で行い、継代培養は例えば液体培養で行うと、それぞれの培養を効率良くかつ大量に行うことができる。次に、上記の継代培養により増殖したカルスを適当な条件下で培養することにより器官の再分化を誘導し(以下、「再分化誘導」という)、最終的に完全な植物体を再生させる。再分化誘導は、培地におけるオーキシンやサイトカイニン等の植物生長調節物質、炭素源等の各種成分の種類や量、光、温度等を適切に設定することにより行うことができる。かかる再分化誘導により、不定胚、不定根、不定芽、不定茎葉等が形成され、更に完全な植物体へと育成させる。あるいは、完全な植物体になる前の状態(例えばカプセル化された人工種子、乾燥胚、凍結乾燥細胞及び組織等)で貯蔵等を行ってもよい。
上記のようにして得られる形質転換植物は、塩ストレスに対して耐性を獲得する。従って、当該形質転換植物は、塩ストレス耐性植物として使用することができる。ここで、「塩ストレス」とは、土壌に蓄積した塩類により土壌の水分ポテンシャルが低下して植物体が水分を吸収できなくなるなど、塩類が植物体の生理機能に損傷を与えるストレスをいう。塩類には、植物に生育阻害、収量低下、枯死を引き起こすあらゆる塩が含まれ、例えば、ナトリウム塩、マグネシウム塩等が含まれる。
塩ストレス耐性植物は、Ps UGE遺伝子が組み込まれた形質転換植物(トランスジェニック植物)を、上記塩ストレス耐性植物として使用し得る程度に育種することにより作出することができる。この場合、植物にとって上記塩ストレスが生じる条件において、生理機能に損傷を与えず、かつ成長阻害や枯死等をせずに耐性を示す植物を選抜すればよい。ストレス耐性植物としての使用開始時期は、耐性を示す植物を選抜した後であればいつでもよい。
3.形質転換植物選抜用マーカー及び選抜方法
本発明の遺伝子は植物に導入し、形質転換植物選抜用のマーカー遺伝子として利用できる。本発明のマーカー遺伝子は、単独で導入してもよく、発現させる他の目的遺伝子とともに導入してもよい。
本発明のマーカー遺伝子を導入する植物としては、単子葉植物又は双子葉植物のいずれであってもよい。単子葉植物、双子葉植物としては、前記に列挙したものと同様の植物が挙げられるが、これらの植物はカルスを形成し得るものが好ましい。
本発明のマーカー遺伝子の導入する対象は、根、茎、葉、種子、胚、胚珠、子房、茎頂(植物の芽の先端の生長点)、葯、花粉等の植物組織やその切片、未分化のカルス、それを酵素処置して細胞壁を除いたプロプラスト等の植物培養細胞を含む。本発明において、植物中へのマーカー遺伝子の導入は、通常、植物から取り出された植物組織片やカルス、プロトプラストに対して行われ、導入されたマーカー遺伝子は植物組織の細胞中、特にその染色体に取り込まれる。
マーカー遺伝子を植物に導入するにあたり、マーカー遺伝子を単独で導入する場合は、プラスミドに連結して組換えベクターを調製する。一方、マーカー遺伝子と発現の目的遺伝子とを共に導入する場合は、マーカー遺伝子を目的の遺伝子とともに同一のプラスミドに連結させて組換えベクターを調製する。あるいは、マーカー遺伝子をプラスミドに連結して得られる組換えベクターと、目的遺伝子をプラスミドに連結して得られる組換えベクターとを別々に調製してもよい。別々に調製した場合は、各ベクターを宿主にコトランスフェクト(共導入)する。なお、ベクターの調製の際に目的遺伝子又はマーカー遺伝子の上流にプロモーターを、下流にターミネーターなどを連結することもできる。プロモーターとしては、例えばカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター、アクチンプロモーター、ユビキチンプロモーター等が挙げられ、ターミネーターしては、例えばノパリン合成酵素遺伝子ターミネーター等が挙げられる。また、上記ベクターを植物に導入する方法としては、前述した各方法と同様な方法が挙げられる。
本発明のマーカー遺伝子を単独で植物に導入すると、ガラクトース耐性を有する個体(形質転換植物)を得ることができる。また、ベクターを植物に導入する際に、本発明の上記マーカー遺伝子とともに、他の特性、例えば特定の細菌に対する抗菌性、特定の薬剤に対する耐性、特定の有用物質の合成能、特定の植物ホルモンに対する感受性又は本来の植物と異なる形態的特性等を発現する遺伝子を同時にベクターに組み込んでおくと、それらの特性を共に発現した再分化個体を得ることができる。
上記のようにしてマーカー遺伝子を導入したプロトプラスト又は植物組織からカルスを形成させ、形成したカルスを更に培養させることが好ましい。カルス誘導、継代培養、再分化誘導の方法は前述の通りである。
本発明において、形質転換植物の選抜方法は、本発明の遺伝子又は組換えベクターを植物に導入し、その植物をガラクトース含有培地にて培養し、ガラクトース耐性の有無を指標に前記遺伝子が導入された植物として選抜することにより行う。ここで、「培養」とは、上記の「カルス誘導」、「再分化誘導」、「完全な植物体への成長(発根、発芽、茎伸長)」の各段階における培養の全てを含む。遺伝子が植物に導入されたか否かはガラクトースの存在下で上記培養を行い、ガラクトース耐性の有無を指標に判断することができ、ガラクトース耐性を有するものを遺伝子が植物に導入された植物として選抜する。「ガラクトース耐性を有する」とは、カルス誘導、再分化誘導、植物体への生長(発根、発芽、茎成長など)がガラクトースに阻害されることなく正常に起こることをいう。
以上のようにして選抜された植物体は、植物組織培養において通常採用されている前記の方法により完全な植物体に育成してもよく、又は完全な植物体になる前の状態(例えばカプセル化された人工種子、乾燥胚、凍結乾燥細胞及び組織等)で貯蔵等を行ってもよい。
上記のようにして選抜されたカルス又は植物体にはPs UGE遺伝子、又はPs UGE遺伝子と目的遺伝子の両者が組込まれている。従って、これら遺伝子が存在することの確認はPCRなどにより、遺伝子が発現したことの確認はRT-PCRなどによりそれぞれ行うことができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により限定されるものではない。
(実施例1) 塩ストレス下誘導シバ遺伝子のクローニング
一般的なRNA及びDNAの実験方法は、Molecular cloning-a laboratory manual-second edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press New York(1989)に従いこれを常法とした。また、実験中に使用したキットの使用方法はメーカーの示すプロトコールに従った。
(1) 植物材料の調製
Seashore Papalumシバ (Duedck A. E. and Peacock C. H., Agronomy Journal vol. 77, 47-50 (1985))を砂の入った1/5000a ワグネルポットに植え付け、東京湾から採水した塩分濃度2.3〜2.7%の海水で灌水し、温室内で3〜6ケ月間栽培した。毎日一回、海水をポット上面からかけて、ワグネルポットの排水口より海水がしみ出るまで灌水を行った。この海水灌水処理により、最低5年間このSeashore Papalumは生育維持し、海水耐性を示した。
この材料の分枝より、第1葉から第3葉、茎、及び節を含む切片(図1)を採取し、砂へ挿し芽を行い、発根させてクローン苗を温室内にて育成した。このクローン苗を以下の海水ストレス又は水耕による塩ストレス実験に使用した。
海水ストレスは以下の通りに与えた。まず、育成した苗を1/5000a ワグネルポット(作土壌深15cm)で、水道水にて温室内で4ヶ月通常栽培した。土壌は、イネ用培土と赤玉を1:1に混合したものを用いた。苗がポット栽培で順調に生育した段階(植え付け4ヶ月後)で、上記の方法で海水灌水処理を開始した。
対照区となる材料は、海水灌水処理を開始する前(水道水栽培)にサンプリングし、−80℃に保存した。塩ストレス条件の材料は、海水灌水処理14日でサンプリングし、−80℃に保存した。サンプリング部位は地上部の葉とした。後述(3)のディファンレンシャルスクリーニング用のcDNAライブラリーおよびプローブ作成のためのRNAは、この海水栽培した材料から抽出した。
水耕による塩ストレス実験は以下のようにして行った。まず、上述の水道水栽培したクローン苗より、図1に示した切片を採取して水耕(蒸留水)で、挿し芽を行った。これを明期(照度5000 lx、温度30℃)16時間、暗期(照度:0lx、温度22℃)8時間の条件で、植物育成装置(トミー製、Cultivation Chamber、CU-251) にて1週間育成し発根させた。発根後、蒸留水を下記表1に示す改変・吉田水耕培地(S. Yoshida, et al., Laboratory Manual For Physiological Studies of Rice 3rd. Ed., The International Rice Research Institute, pp.61-66 (1976); 微量元素はD.R. Hoagland & Arnon, D.I., Univ. Calif. Coll. Agri. c. Exp. Sta. Circ., p.347 (1936)に記載の各元素、 鉄分は、Murashige T. & Skoog F., Physiologia Plant., pp.473-497 (1962)のFeEDTAに改変)に置き換え、更に1週間、明期(照度10000 lx、温度30℃)16時間、暗期(照度:0lx、温度22℃)8時間の条件で育成した。
育成後、塩ストレスを4週間与えた。塩ストレスの条件は上述の改変・吉田水耕培地に500mMのNaClを添加したものを用いた。塩ストレスを与えて4週間後に地上部の葉を採取した。後記(4)のノーザン解析および後記(5)の全長cDNA単離のためのcDNAライブラリーは水耕した切片より抽出したRNAを使用した。
Figure 0004394490
尚、上記水耕培地は5N NaOHを用いてpH5.5に調整した。2日ごとに水耕液の体積を調べ、体積が減ったら、蒸留水を加えて初期の体積(ワグネルポットの場合、4L)に戻した。また、2週間に1回、水耕液を新鮮なものと交換した。
(2) RNAの調製とcDNAライブラリーの構築
生重量で2gの葉からトータルRNA約1mg をRneasy Mini Kit(キアゲン社製)、又はChang, S. ら(1993)の方法(Plant Mol. Biol. Report, 11, pp.113-116)を用いて抽出した。両法の場合ともに、Dnase I(タカラバイオ社製、Rnaseフリー、5 mM MgSO4存在下、25℃、11時間)処理を追加した。さらに、トータルRNAからBioMag SelectaPure, mRNA Purification System(Polysciences, Inc. 社製)を用いてmRNAを10μg精製した。このmRNA5μgからオリゴ(dT)12-18によりTime Saver cDNA合成キット(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いて1st strand cDNAさらに2nd strand cDNAを合成した。次に、cDNAをクローニングするためDirectional Cloning Kit(アマシャムバイオサイエンス社製)を用い、λgt11のファージ用ベクターへ挿入したものを、Ready-To-Go Lambda Packaging Kit(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いてパッケージングを行った。E.coli Y1088 を宿主として、タイターチェックの後、ディファレンシャルスクリーニングに供した。
(3) プローブの調製とディファレンシャルスクリーニング
上述のSeashore Paspalum シバを水道水栽培で挿し芽の状態から4ヶ月育成したもの(対照区)と4ヶ月育成後から海水を灌水しつづけて2週間経過したもの(塩処理区)から、それぞれトータルRNAをそれぞれ調製し、オリゴ(dT)12-18によりTime Saver cDNA合成キット(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いて1st strand cDNAを作成した。この1st strand cDNAを鋳型として、同キットに添付されているランダムヘキサマー(pdN6)を用い、PCRを行った(PCR条件:Premix ExTaq(タカラバイオ社製)を用いてcDNAを94℃5分熱変性、(94℃30秒、55℃1分、72℃1分)×25サイクル、72℃1分、Gene Amp PCRシステム9600を使用)。得られたPCR産物をゲル電気泳動で確認の後、ECL direct labeling kit(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いて2種類のプローブ(対照区と塩処理区)を作成した。
cDNAライブラリーを直径14.5cmのシャーレに撒き、2000プラークからディファレンシャルスクリーニングした。Hybond N(アマシャムバイオサイエンス社製)を使用してプラークブロッティングを行い、プラークのシグナルの検出にはECL detection system(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いた。上述の2種類のプローブで1枚のシートをそれぞれ検出し、塩処理区プローブで検出されるが、対照区プローブでは検出されないプラークを塩処理区で特異的なものとして選抜した。
選抜したクローンのインサート領域をプラスミドベクターへ移すため、ファージDNAを抽出した。ファージDNA を94℃10分処理して、急冷したものを鋳型とし、λgt11のフォワードプライマー(5'-GGT GGC GAC GAC TCC TGG AGC CCG-3':配列番号3)とリバースプライマー(5'-TTG ACA CCA GAC CAA CTG GTA ATG-3':配列番号4)(タカラバイオ社製)を用いてPremix ExTaq (タカラバイオ社製 )でPCRを行った(95℃1分、(94℃1分、55℃2分、72℃2分)×25サイクル、72℃2分)。得られたPCR産物をpT7 Blue T-ベクターへPerfectly Blunt Cloning Kit(Novagen社製)を用いてサブクローニングした。選抜された複数個のクローンをdRhodamine dye-terminator法 (AmpliTaq DNA polymerase FS;Applied Biosystems社製)によりシーケンス反応を行った後、ABI 310ジェネティックアナライザー(Applied Biosystems社製)を用いて両鎖方向からDNA配列を決定した。
(4) ノーザン解析による第二次スクリーニング(イネとの比較)
得られた2クローン(Ps ABAとPs uge)から二次選抜用プローブを作成した。Ps ABAプローブは、pT7 Blue T-ベクターのクローニングサイトを制限酵素EcoRI(タカラバイオ社製)とpoly Aを含まないようにインサート内部を制限酵素Alu I(New England Biolab社製)で切断し、アガロース電気泳動により切り出すことによって調製した(配列番号5)。また、Ps UGEプローブは、最初のデイファレンシャルでとれたcDNAクローンPs uge(配列番号6)をpT7 Blue T-ベクターにサブクローニングし、インサート内部にあるNot IサイトとSca I サイトで切り出すことによって調製した(配列番号7)。
Ps ABAプローブ(配列番号5)
TGCCGTGGGCTCCGGCGGGTTCGCCTTCCACGAGCACCACGAGAAGAAGGAGGACCACAAGGACGCCGAGGAGGCCGGCGGCGAGAAGAAGCACCACTTCTTCGGCTGATCCATCTCACCATCTCCATCTCCCACCCCCATCGATCCATTTGTGTTGGCTTTAATTCCCTGCGTGCATGCGTGTTGTTGAATAAGGGGCCGGTTCCATCTGTACGTACGTGTACTCCGAGACCTATCGTCATGTGTGTGTGTGTACGTATACCTGCTGTGTACATGATGGTCGTATATGCCACTGGACTATGTGTGTGTGCAACTCTGTTCTGATTTGCTATATATAAG
最初のデイファレンシャルでとれたcDNAクローンPs uge(配列番号6)
TGCAGGGACCAGTGGAACTGGGCCAAGAAGAACCCCTATGGCTACTGCGGCACTGCCGAAAAATAGAGCGCGTGCATTAATCAGATCTCTGGACTGAATTTGTCCATGGTTGATGGTTGTCTCAGACCTATCGGTGGAAGATGTAACAAGTAGAGACCGCTCGAATGTGCCTAGCTACGAAGTTTCGTACCATCTCTCTTGTCATAACCTCATGTAGATGGTCATTTTATTGGAATTAGCCTTAGCCTTCAGGCCCGGCGCTGTTAAAATTTGTTTTACACATGGATTTTCTCGCTACGTGTGATACATATTGTGTCTGTAATAATCCTGATCGGAGTTTCCAGTAATAAAACCGATCCACGACGGTGGCTACGCCCTGTGTTGTAGTactgtgaatatgatgtggtaataacaataacttgcagtgagacttcagctttcaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa
Ps UGEプローブ(配列番号7)
GGCCGCTGTGCAGGGACCAGTGGAACTGGGCCAAGAAGAACCCCTATGGCTACTGCGGCACTGCCGAAAAATAGAGCGCGTGCATTAATCAGATCTCTGGACTGAATTTGTCCATGGTTGATGGTTGTCTCAGACCTATCGGTGGAAGATGTAACAAGTAGAGACCGCTCGAATGTGCCTAGCTACGAAGTTTCGTACCATCTCTCTTGTCATAACCTCATGTAGATGGTCATTTTATTGGAATTAGCCTTAGCCTTCAGGCCCGGCGCTGTTAAAATTTGTTTTACACATGGATTTTCTCGCTACGTGTGATACATATTGTGTCTGTAATAATCCTGATCGGAGTTTCCAGTAATAAAACCGATCCACGACGGTGGCTACGCCCTGTGTTGTAGT
調製したPs ABAプローブ及びPs UGEプローブを用いてPaspalumシバとイネ(品種ポッカリ)での遺伝子発現の塩誘導性の比較を行い、Paspalumシバでは発現が塩ストレスにより誘導されるが、イネでは誘導されないクローンを第二次選抜した。イネ(ポッカリ)は上述の改変・吉田水耕培地で育成し、対照区(0mM NaCl)と塩処理区(50 mM NaCl)での1ヶ月後の茎葉部からトータルRNAを抽出した。トータルRNAの電気泳動、ノーザンブロッテイング及びハイブリダイゼーションを常法に従って行った。
Ps ABAプローブによるノーザン解析では、PaspalumとイネのいずれのトータルRNAにもPs ABA で検出されるmRNAが発現し、塩誘導性もあることが確認された(図2(A))。よって、このPs ABAクローンは耐塩性の低いイネにもホモログが発現しているとして選抜しなかった。一方、Ps UGEプローブによるノーザン解析では、Ps UGEはPaspalumシバで塩誘導性が認められたが、イネ(ポッカリ)で発現が認められなかった(図2(B))。従って、このPs UGEクローンをPaspalumシバ特異的なクローンとして選抜した。Ps UGEプローブのDNA配列をBlast Xによるホモロジー検索を行った結果、Guar (Cmopsis tetragonoloba)の遺伝子(Accession No. AJ005081, Joersbo, M., et al., Plant Science 142, pp. 147-154, 1999)、及びシロイヌナズナの遺伝子(Dormann, P. & Benning, C., Archives of Biochemistry and Biophysics, 327, pp.27-34, 1996)とホモロジー性のあることが判明した。このPs UGEクローンを全長cDNA単離用のプローブとして利用した。
(5) 全長cDNAの単離と配列決定
吉田・水耕培地により塩ストレス(400mM NaCl)を1週間与えたPaspalumシバよりmRNA10μgを取得し、ZAP Express cDNA Gigapack III Gold Cloning kit(Stratagene社製)を用いて、cDNA合成、Zap Express ベクターへのクローニング、及びパッケージングを行った。cDNAライブラリーを14×9 cmの角形シャーレ10枚に撒き、約100,000プラークから選抜を行った。Hybond N(アマシャムバイオサイエンス社製)を使用したプラークブロッティングを行い、前期(4)でノーザン解析に使用したPs UGEプローブをECL direct labeling kit(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いて標識し、プラークのシグナルの検出にはECL detection system(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いた。1〜3次スクリーニングの結果、PS UGEプローブで検出されるプラークを3つ単離した。In vivo excisionにより、それぞれのcDNAをpBK-CMV phagemid vecor(Stratagene社製)に移した。選抜された3個のcDNAをdRhodamine dye-terminator法(AmpliTaq DNA polymerase FS : Applied Biosystems社製)によりシーケンス反応を行った後、ABI 310ジェネティックアナライザー(Applied Biosystems社製)を用いて両鎖方向からDNA配列を決定した。シーケンスにはT7 とT3のプライマー、及び各cDNAに特異的なプライマーを用いた。配列の解析は、Genentyx Mac.Ver.11(Soft ware Development Co. LTD, 2000)を用いた。
シーケンスの結果、Ps UGEの配列とほぼ一致するcDNAクローン(Ps UGE1)が得られた。Ps UGE1の塩基配列を配列番号1に、それよりコードされるアミノ酸配列を配列番号2に示す。また、Ps UGE1とアミノ酸レベルで65%のホモロジーを有するcDNAクローン(Ps UGE2)が得られた。Ps UGE2の塩基配列を配列番号8に、それよりコードされるアミノ酸配列を配列番号9に示す。
(6)他種由来のUGEホモログとの比較
これまでにEST及びゲノム解析から登録されている植物UGEホモログとPs UGE1及びPs UGE2との系統樹を作成した(図3;シロイヌナズナのUGEファミリーAt1g30620、At1g12780、At1g63180、At1g64440、At2g34850、At4g10960、At4g23920とイネOs UGE(Accession No. AB087745)、グアCt UGE(Accession No.AJ005081)を使用)。これによるとPs UGE1はグループNo.1に分類された。グループNo.1に分類されたホモログ及びPs UGE2のアミノ酸配列でアラインメントをかけた結果を図4に示す。同じグループNo.1のいわゆるオルソログと考えられるシロイヌナズナのUGE遺伝子、及び同じPaspalum由来のPs UGE2と比較してPs UGE1はN末端のアミノ酸が約10塩基ほど長い新規の特徴を有していた(図4)。
(実施例2) 植物用発現ベクターの作成
実施例1で得られたPs UGEの全長cDNAを植物遺伝子導入用の発現ベクターへ以下のようにして導入した。まず、3’側のpoly Aを除くため、上述のクローンPS UGE1を鋳型に、インサート上流側45bp〜64bp番目の配列:5'-ACAGAGCCGCAAAACCACAC-3'(配列番号10)をセンスプライマー、下流側1314bp〜1340bp番目の配列:5'-TTCGTAGCTAGGCACATTCGAGCGGTC-3'(配列番号11)をアンチセンスプライマーとし、酵素Pyrobest(タカラバイオ社製)を使用し、98℃2分、(96℃30秒、62℃30秒、72℃2分)×30サイクル、72℃3分の条件でPCRを行った。増幅されたDNA断片(約1.3kb)をアガロースゲル電気泳動で分離して切り出し、ゲル抽出キット(キアゲン社製)を用いて精製した。この断片をPCR-Scrpit Amp Cloning Kit(Stratagene社製)を用い、pCR-Script Amp SK(+)にクローニングし、シーケンスを行い、配列を確認した。この1.3kb断片をインサートとして持つpCR-Script Amp SK(+)のクローンをPs UGE1aとした。
Ps UGE1aを制限酵素Not I(東洋紡社製)で処理してエタノール沈澱した後、タカラバイオ社製のブランティングキットを用いて平滑末端化し、フェノール抽出により精製した。さらにこの断片をBam HI(東洋紡社製)で処理し、切り出されるPS UGE遺伝子断片(約1.3kb)を0.7%アガロースゲル電気泳動により分離し、ゲル抽出キット(キアゲン社製)を用いて精製した。
本遺伝子断片をプロモーターとターミネーターの間に挿入するため、pBI221(クロンテック社製)を制限酵素Sac I(東洋紡社製)で処理し、エタノール沈澱した。次いで、タカラバイオ社製のブランティングキットを用いてSac I切断部位を平滑末端化し、フェノール抽出により精製した。この断片を更にBam HI(東洋紡社製)で処理し、ベクター部分とGUS部分を0.7%アガロースゲル電気泳動により分離し、ゲル抽出キット(キアゲン社製)を用いてベクター断片を精製した。その後、タカラバイオ社製のライゲーションキットver. Iを用いて、このベクター部分とPs UGE遺伝子断片(約1.3kb)のライゲーション反応を行い、大腸菌JM109への形質転換の後、プロモーター部分に対してセンス方向にPs UGE遺伝子断片(約1.3kb)が挿入したクローンを選抜した。これをPs UGE1a/pBI221とした。以上の構築手順を図5に示す。
このPs UGE1a/pBI221の発現カセット部分を遺伝子導入用のバイナリーベクターに挿入するため、以下の操作を行った。Ps UGE1a/pBI221を制限酵素EcoRI(東洋紡社製)で処理してエタノール沈澱した後、タカラバイオ社製のブランティングキットを用いて平滑末端化し、フェノール抽出により精製した。さらにこのDNA を制限酵素Hind III(東洋紡社製)処理し、エタノール沈澱した後、さらにDraIII(New England Biolab製)処理し、発現カセット部分35S:Ps UGE:nos T(約2.5 kb)とベクター部分を0.7%アガロースゲル電気泳動により分離し、ゲル抽出キット(キアゲン社製)を用いて発現カセット部分を精製した。次にベクターpIG121Hm(Plant Cell Report, Vol. 12, pp.7-11 (1992)、名古屋大学 中村研三氏より入手)を制限酵素Sal I(東洋紡社製)処理してエタノール沈澱した。次いで、タカラバイオ社製のブランティングキットを用いてSal I切断部位を平滑末端化し、フェノール抽出により精製した。このプラスミドベクター断片を更にHind III(東洋紡社製)で処理し、ベクター部分と35S:Intron-GUS:nos Tを0.7%アガロースゲル電気泳動により分離し、ゲル抽出キット(キアゲン社製)を用いてベクター断片を精製した。その後、タカラバイオ社製のライゲーションキットver.Iを用いて、Ps UGE遺伝子発現カセット断片とベクター断片のライゲーション反応を行い、プラスミドベクターpIG121Hmの35S:Intron-GUS:nos T部分に、Ps UGE遺伝子発現カセット断片が挿入したクローンを選抜し、Ps UGE1a/pBI121Hmとした。
このPs UGE1a/pBI121HmをBam HI(東洋紡製)処理し、エタノール沈澱した後、タカラバイオ社製のブランティングキットを用いて平滑末端化し、フェノール抽出により精製した。さらにこの断片をHind III処理して、Ps UGE1a発現カセット+35S:ハイグロマイシン抵抗性(HPT)遺伝子のDNA断片を0.7%のアガロース電気泳動により切り出してキアゲン社製のゲル抽出キットにより精製した。pBI221(クロンテック社製)を制限酵素Sac I(東洋紡製)で処理し、エタノール沈澱した後、タカラバイオ社製のブランティングキットを用いて平滑末端化し、フェノール抽出により精製した。さらにこの断片をHind III(東洋紡製)で処理し、ベクター部分と35S:GUS部分を0.7%アガロースゲル電気泳動により分離し、ゲル抽出キット(キアゲン社製)を用いてベクター断片を精製した。タカラバイオ社製のライゲーションキットver.Iを用いて、このベクター部分とPs UGE1a発現カセット+35S:HPT遺伝子とのライゲーション反応を行い、大腸菌JM109への形質転換の後、プロモーター部分に対してセンス方向にPs UGE遺伝子断片(約1.3 kb)が挿入したクローンを選抜した。これをPs UGE1a/pBI221Hmとした。
pIG121HmをSal IとBam HI処理して(東洋紡製)、ベクター部分と35S:HPT遺伝子部分を0.7%アガロースゲル電気泳動により分離し、35S:HPT遺伝子部分を切り出してキアゲン社製のゲル抽出キットにより精製した。これを更に、タカラバイオ社製のブランティングキットを用いて平滑末端化した。次にpBI221をHindIIIとSac I処理し、0.7%アガロースゲル電気泳動により分離し、ゲル抽出キット(キアゲン社製)をもちいてベクター断片を精製した。このベクター部分をさらに宝バイオ社製のブランティングキットを用いて平滑末端化し、タカラバイオ社製のライゲーションキットver.Iを用いて、このベクター部分と上述の35S:HPT遺伝子部分とを連結した。そして、大腸菌JM109への形質転換の後、35Sプロモーター:HPT遺伝子:Nosターミネーターの順序に連結されたものを選びHPT/pBI221とした。これはPs UGE1a/pBI221とのコトランスフォーメションに使用した。
(実施例3) 形質転換体(イネ)の作製及び導入遺伝子の確認
(1)Ps UGE形質転換イネの作製
イネ(品種:日本晴、滋賀県農協より種籾を入手可能)の完熟種子由来の再分化能を有する液体培養系からプロトプラストを単離し供試材料とした。プロトプラストの調製およびエレクトロポレーションの方法は経塚らの方法(Kyozuka et al., Mol. Gen. Gnet., 206, pp. 408-413, 1987)、鳥山らの方法(Toriyama et al., Bio/Technology 6, pp.1072-1074)、赤木らの方法(Akagi et al., Mol. Gen. Gnet., 215, pp.501-506, 1989)等に準じて行った。
プロトプラストを2×106/mL、プラスミドDNA(Ps UGE1a/pBI121Hm又はPs UGE1a/pBI221Hm又はPs UGE1a/pBI221とHPT/pBI221のコトランスフォーメションのいずれか)を50μg/mLになるように0.4Mマンニトール、70mMアスパラギン酸カリウム、5mMグルコン酸カルシウム、5mM.MESの導入バッファーに懸濁しエレクトロポレーションを行った。電気パルスは電界強度450V/cm、時定数約40msの減衰波とした。なお導入装置には島津社製のGTE-10を、導入チャンバーにはFTC-54を使用した。
R2P培地(島本功・田清隆監修、植物細胞工学シリーズ、モデル植物の実験プロトコール、秀潤社、pp.82−88、2001)を基本としたアガロース培地に包埋したプロトプラストを、液体培地に加えナース細胞と共に培養した。導入14日後ナース細胞および液体培地を除きハイグロマイシン50μg/mLを添加したR2P培地を加え形質転換体の選抜を開始した。耐性カルスが1〜2mmに成長後、選抜された形質転換カルスをハイグロマイシン50μg/mLのR2SA培地(島本功ら、同上、p.83)に移植した。10〜14日間培養し増殖させた後、ハイグロマイシン50μg/mLの再分化培地(島本功ら、同上、pp.78-81)にカルスを移植し、植物体を再生させた。
再分化植物体をカルス塊からはずし、50μg/Lハイグロマイシンを含むホルモンフリー培地(島本功ら、同上、pp.78-81)に置床し、発根してくる個体を選抜し、シャーレの蓋を開けて滅菌水をシャーレの培地上に注ぎ、1週間馴化を行った。この時、培地が乾かないように2日に1回滅菌水を供給した。馴化後、選抜された植物体(日本晴To世代とする)をイネ育成用土壌(三菱化学製):赤玉(1:1)を入れたジフィーポット(縦×横×高さ:5cm×5cm×6cm)に植え付け、1〜2ヶ月後にプラスチック製のポット(幅×奥行き×高さ:15cm×5.5cm×9.5cm)へ移植してさらに4〜10ヶ月育成し、自殖又は交配し、種子を得た。育成は隔離温室にて行った。
(2) Ps UGE遺伝子導入及び発現の確認
形質転換イネからのゲノムDNAの抽出は、若葉を1〜3cmの長さに切り、滅菌したエッペンドルフチューブに入れ、100μLのTE 緩衝液(10mM Tris HCl、pH8.0、1mM EDTA)を更に添加し、エッペンドルフチューブ用のホモジェナイザーで1〜3分磨砕することによって行った。磨砕後は氷上に保管し、4℃、15,000rpmで2分間遠心し、上清を新しい滅菌チューブに移した。この上清をゲノムDNA画分とした。
Ps UGE遺伝子の存在を確認するために、ゲノムPCRを5'-GTC GTC GAC AAC TTC CAC AA-3'(配列番号12)をセンスプライマー、5'-TTG TTC TCG TAG TAC ATG TC-3'(配列番号13)をアンチセンスプライマーとし、1.25Uの酵素KOD-Dash(東洋紡社製)、10pmolesのプライマー、0.2mMのdNTP、反応用緩衝液(終濃度:20mM Tris-HCl (pH7.5)、8mM MgCl2、7.5mM DTT、2.5 μg/50μL BSA)を用いて行った。上述したゲノムDNAは20μLのPCR反応液全量に対して10μLを使用した。反応装置は、ABI社製のGene Amp PCRシステム9600又はGene Amp PCRシステム9700を使用し、PCR条件は98℃2分、(98℃30秒、55℃2秒、74℃30秒)×30サイクル、74℃5分の後、4℃で維持とした。
上記ゲノムPCRの結果を図6に示す。図6に示すように、配列番号12をセンスプライマー、配列番号13をアンチセンスプライマーとして増幅させた226bpの断片(レーン1:ベクターDNA)はPs UGE形質転換日本晴(レーン3)でのみ検出され、非組換え体のイネ品種(日本晴(レーン2、4)、コシヒカリ(レーン6)、IR28(レーン5)、ポッカリ(レーン7))ではいずれも検出されず、形質転換体の確認に適していることを示している。また、図7は、Ps UGE形質転換日本晴To世代(遺伝子導入し、選抜した個体)、該To世代とコシヒカリの交配F1世代を用いて同じくゲノムPCRを行った結果を示す。図7において矢印はPs UGE遺伝子の内部配列226bpに対応するバンドの位置を示す。Vは発現ベクター Ps UGE1a/pBI221を鋳型とした場合のPCR産物、NTは非組み換えイネのゲノムPCR産物である。図7(上段)に示されるように、ハイグロマイシン耐性To世代22個体のうち20個体にPs UGE遺伝子の存在を示すバンドが確認された。日本晴To世代と非形質転換コシヒカリとの交配によって得たF1については、図7(下段)は46個体中29個体のゲノムにPs UGE遺伝子の存在が確認された例を示している。最終的には120個体のハイグロマイシン耐性イネTo世代のうち、106個体にPs UGE遺伝子を示すバンドが確認された。また、全体で193個体のF1世代のうち、90個体のゲノムにPs UGE遺伝子の存在が確認された。
Ps UGE形質転換日本晴To世代におけるPs UGE導入遺伝子の転写を確認するために、RT-PCRを配列番号12(同上)をセンスプライマー、配列番号13(同上)をアンチセンスプライマーとし、1.25Uの酵素KOD-Dash(東洋紡社製)、10pmolesのプライマー、0.2mMのdNTP、反応用緩衝液(終濃度:20mM Tris-HCl (pH7.5)、8mM MgCl2、7.5 mM DTT、2.5 μg/50μL BSA)を用いて行った。上述したトータルRNAより1st strand cDNA合成キット(Life Science社製)を用いて作成した1st strand cDNAを20μLのPCR反応液全量に対して0.2〜10μLを使用した。反応装置は、ABI社製のGene Amp PCRシステム9600又はGene Amp PCRシステム9700を使用し、PCR条件は98℃2分、(98℃30秒、55℃2秒、74℃30秒)×30サイクル、74℃5分の後、4℃で維持とした。
上記RT-PCRの結果を図8に示す。図8において矢印は Ps UGE遺伝子の内部配列226bpに対応するバンドの位置を示す。Vは発現ベクター Ps UGE1a/pBI221を鋳型とした場合のPCR産物であり、NTは非組み換えイネの1st strand cDNAを鋳型とした場合のRT-PCR産物である。図8に示されるように、cDNAを鋳型とした場合、22個体のハイグロマイシン耐性イネ(To世代)のうち20個体にPs UGE遺伝子の転写を示すバンドが確認された。1st strand cDNA合成に用いたトータルRNAに対してはバンドが検出されず、このバンドがゲノムDNA由来のものではないことを示している。このようにしてRT-PCRを実施した結果、Ps UGE1をゲノムに有する106個体のハイグロマイシン耐性イネ(To世代)のうち、95個体の日本晴To世代がPs UGEを発現し、さらに、ゲノムにPs UGEを有する90個体のF1のうち、81個体のF1世代(日本晴To世代とコシヒカリを交配した植物体)にPs UGE遺伝子の発現を確認した。
(実施例4) UDP-ガラクトースエピメラーゼ活性の確認
実施例3で得られたPs UGE形質転換イネ(To世代)、PsUGE遺伝子を発現しないイネ対照区として非形質転換イネカルスからの再分化個体、又は35SによりsGFPを発現する形質転換イネ(To世代)の葉身部0.1〜0.15gを採取し、液体窒素で凍結し、-80℃にて保存した。抽出用緩衝液(25mM Hepes pH 7.5, 0.3 M sorbitol, 5 mM DTTにロッシュ製のプロテアーゼインヒビターカクテルcomplete mini 1タブレットを7mlに溶かしたもの)を生重0.1〜0.15gの葉に対して1〜1.5ml添加し、さらに薬匙1杯のポリクラールAT、 薬匙1杯の石英砂を入れて、手早く氷上で乳鉢を用いてすり潰した。溶液状態になったところで、2mlのエッペンチューブに移して15000rpm、4℃にて20分間遠心した。上清を別チューブに移して、抽出用緩衝液で1mlにメスアップした。得られた液1mlをNAP-10カラム(アマシャムバイオサイエンス社製)にのせ、抽出用緩衝液1.5mlで溶出し脱塩した。この脱塩した溶出液1.5mlをPs UGE形質転換イネの場合は40μlを活性測定に用いた。非組換え体又はsGFPを発現する形質転換イネ(To世代)の場合は、前記溶出液1.5mlをYM-10(セントリコン、ミリポア社製)に入れ、6000 rpm (日立himac)、4℃にて120分間遠心処理して0.3mlまで濃縮し、40μlを活性測定に用いた。タンパク質量はバイオラッド社製のプロテインアッセイキットにより定量した。
活性測定は以下のように行なった。まず、50mM Tris HCl (pH8.5)、1mM NAD+含む反応液(ブランク)0.46 mlに上記酵素液40μLを添加後、温度28℃にて340nmの吸光度上昇を3分間測定することによってブランクの傾きΔabs1/minを求めた。なお、吸光度の測定は、分光光度計はベックマンDU-640を用いた。次に、50mM Tris HCl (pH8.5)、1mM NAD+、0.5mM UDP-ガラクトースを含む反応液 0.46 mlに上記酵素液40μLを添加後、同様にして吸光度上昇を測定し、傾きΔabs 2/minを求めた。Δabs 2/minからΔabs1/minを差し引いたΔA340/minから、次式を用いて比活性を計算した。
Figure 0004394490
それぞれのイネに対して各3系統の比活性(mU/mg タンパク質)を測定し、平均値と標準誤差を求めた。その結果、Ps UGE形質転換イネでは37.7±5.5、非形質転換イネのカルス再分化個体では4.1±1.8、sGFP形質転換イネでは2.8±0.8の活性をそれぞれ示した。即ち、Ps UGE形質転換イネのUDP-ガラクトースエピメラーゼ活性は、PsUGE遺伝子を発現しないイネよりも8〜10倍高く、PsUGE遺伝子はUDP-ガラクトースエピメラーゼ活性又はUDP-グルコースエピメラーゼ活性を持つことを確認した。
(実施例5) Ps UGE形質転換イネ個体のガラクトース耐性の確認
実施例3で得られたPs UGE形質転換イネ(35S:Ps UGE1a:nosT)、コントロールとして非形質転換イネ(日本晴)カルスからの再分化個体を用いて発根に対するガラクトースの影響とPs UGEの効果を調べた。培養は、抗生物質の入っていない検定培地MSHF(横井修司ら、同上)のシュクロースを0mMとし、ガラクトース濃度をそれぞれ21mM、42mM、84mM、168mMとした培地、あるいはグルコース濃度を同じく21mM、42mM、84mM、168mMとした培地で、16時間日長、10000 lxで1〜2週間行った。培養結果を図9に示す。非形質転換イネカルス再分化個体では、グルコースの濃度系列において発根がシュクロースとほぼ同等に起こるが、ガラクトースの濃度系列では発根が完全に抑制された。これに対してPs UGE導入形質転換イネ(35S:Ps UGE1a:nosT)では、ガラクトースによる発根抑制がほぼ完全になくなった(図9)。図10は、Ps UGE遺伝子導入イネ(35S:Ps UGE1a:nosT)、非形質転換イネカルス再分化個体について、ガラクトース添加培地で生育させた場合の発根の写真、不定根の数、不定根の最大長(cm)を示す。また、図11は、Ps UGE遺伝子導入イネ(35S:Ps UGE1a:nosT)、非形質転換イネカルス再分化個体について、ガラクトース添加培地で生育させた場合の苗条の写真、苗条の最大長(cm)を示す。これらの図に示されるように、根の生長及び葉茎部の生長に対するガラクトースの抑制効果もPs UGE遺伝子により緩和されることが分かった。この結果から、Ps UGE遺伝子はイネ科植物の糖代謝を改変し、ガラクトースを利用して生長可能なガラクトース耐性イネ科植物を作成する機能を持つことが見い出された。
(実施例6) Ps UGE遺伝子を導入した形質転換イネの塩ストレス耐性の評価
(1) Ps UGE遺伝子を導入した日本晴To世代における耐塩性スコア評価試験
塩ストレス耐性試験は、横浜市戸塚区に設置した隔離温室で行った。試験期間は7月〜9月で、平均気温は29℃、最高気温は34℃、最低気温26℃、平均湿度70〜90%であった。日長は平均14時間で照度は5万lxであった。塩ストレスは以下のようにして与えた。隔離温室内に縦0.9m、横1.5m、高さ0.15mのプラスチック製の水槽を3つ設置し、人工海水(日本動物薬品社製)を10分の1濃度に希釈したものを水深10cmの高さまで入れた。この時点のNaCl濃度は0.3%であり、塩分濃度計(ATAGO社製ES421)により0.3%であることを確認した。水分の蒸発による塩濃度の上昇を避けるため、1日に1回塩分濃度を測定し、濃度が上昇した場合は水道水を入れて0.3%に調整した。水槽には水流ポンプを設置して水槽内の水を循環させ、塩濃度の偏りを抑えた。
この水槽に、実施例3に示した方法で馴化後から2ヶ月、成熟期まで育成したPs UGE遺伝子導入日本晴To世代を栽培用のポット(幅×奥行き×高さ:15cm×5.5cm×9.5cm)のまま水槽に浸漬し、10%海水にて栽培を行った。その試験状況を図12に示す。試験に使用したTo世代の植物体数は95個体、対照区のカルスから再分化した非形質転換体数は18個体であった。これらの個体の作成は実施例3の方法に従って行った。各植物体を水槽に浸漬するに当たっては、水槽を縦57cm、横37cmに区切ってブロック化し、乱数表を用いて各個体の水槽における位置を決定した。
塩ストレス耐性の評価は、フィリピンの国際イネ研究所(IRRI)にて確立された方法で行った。10週間目に葉の枯れ程度を目視により調査し、IRRIでの方法に準じたスコアの定義(表2)に従って、各個体毎にスコアをつけた。その結果を図13に示す。日本晴の非組換え個体集団のスコアを白のカラムで、Ps UGE遺伝子導入To個体の集団を黒カラムで示した。横軸はスコアを、縦軸は各スコアを示した個体数の集団内における比率を示している。非組み換え集団と比較して、Ps UGE遺伝子導入集団はスコアの分布が高い方向へシフトし(中央値0.46→0.52)、スコアの中央値が高くなった。この差はχ二乗検定において5%で有意であった。以上の結果より、Ps UGE遺伝子導入により耐塩性の向上が実証された。
Figure 0004394490
(2) Ps UGE遺伝子導入日本晴Toとコシヒカリの交配によるF1世代の塩ストレス耐性評価試験
上記(1)で耐塩性の向上したPs UGE遺伝子導入日本晴To世代と日本晴よりも更に耐塩性の低いコシヒカリを交配させてF1世代を得た。F1種子およびその他の品種の種子をジフィーポット(縦×横×高さ:5cm×5cm×6cm)に播き、2〜3葉期に実施例3で示したようにゲノムPCR行い、Ps UGE遺伝子が確認されたF1集団(F1 Ps UGE+)とPs UGE遺伝子が確認されないF1集団(F1 PsUGE-)を分けた。分ける際には、ジフィーポットのセルを切り分けて、集団毎にトレイにまとめた。
Ps UGE遺伝子が確認されたF1集団(F1 PsUGE+)について、Ps UGE遺伝子が確認されないF1集団(F1 PsUGE-)、非形質転換イネ(品種名:日本晴、コシヒカリ、IR28)を対照として耐塩性試験を行った。塩ストレスは、2〜3葉期の状態のイネに対して与え、ジフィーポットのまま水槽へ浸漬させる点を除いては、前記(1)と同じ条件にて行った。また、試験期間は12月〜2月で、平均気温は28℃、最高気温は32℃、最低気温24℃、平均湿度60〜80%であった。日長は平均9時間で照度は5千から1万lxであった。
上記試験結果を図14に示す。2週間目よりPs UGE遺伝子導入イネの集団は対照である非形質転換イネ(日本晴)の集団に比較して生育がよく、4週間〜8週間には非形質転換イネ(日本晴)の集団と比較してPs UGE導入イネの集団は明らかに生存する個体の多いことが分かった。6週間〜8週間には、種子をつける個体がPs UGE導入イネの集団に認められた(図14)。図15は、Ps UGE遺伝子導入イネの塩ストレス条件での栽培6週間後の出穂状態を示す。
また、生存率、枯死率、穂のついた個体数の比率、穂あたりの種子数を表3にまとめた。Ps UGE遺伝子の確認されたF1集団(F1 Ps UGE+)は、対照区(Ps UGE遺伝子の確認されないF1集団(F1 Ps UGE-)、日本晴、コシヒカリ、IR28)に比べて生存率が有意に高く、穂のついた個体数も多かった。対照区においてはいずれの集団においても、F1 Ps UGE+より生存率が上回ることはなかった。
また、この条件で日本晴群、コシヒカリ群、及びIR28群では全く種子をつけていない(その前に枯れた)。F1 Ps UGE+は、F1 Ps UGE-と比較しても、穂のついた個体数が顕著に増加し、コメの収量が増大するほどの強い耐塩性の付与効果が認められた。これは、Ps UGE遺伝子が生存率でみた耐塩性向上効果を持つもののみならず、長期的な栽培で収量をも向上させる耐塩性効果を有することを示している。
Figure 0004394490
(実施例7)Ps UGE遺伝子の選抜マーカーとしての利用
実施例3に示した方法を用いてエレクトロポレーション法により発現ベクターPs UGE1a/pBI221Hmをイネプロトプラストに導入した。このプロトプラストよりカルスを再生させ、さらに抗生物質ハイグロマイシンを含まない状態で2〜6週間かけて再分化させ、再分化させた植物体を、シュクロースを0mMとし、10mM〜200mMの範囲のガラクトースを含む抗生物質の入っていないホルモンフリー培地(島本功ら、同上、pp.78-81)に植え1〜2週間育成した。植え付けた40000個体の再分化植物体中、6個体が発根し生育も旺盛であった。これらの6個体について導入したPs UGEの内部配列プライマー(配列番号12及び13)と発現ベクターPs UGE1a/pBI221HmによりPs UGE遺伝子と同時に導入されるハイグロマイシン抵抗性(HPT)遺伝子のプライマー(センスプライマー:5’-ATG AAA AAG CCT GAA CTC AC-3’(配列番号14)、アンチセンスプライマー:5’-CGA ACC CGC TCG TCT GGC TA-3’(配列番号15)を用いてゲノムPCRによる遺伝子導入の確認を行った(PCR条件は実施例3を参照)。図16に示すように、全ての個体でPs UGE遺伝子の226バンドとともに、ハイグロマイシン抵抗性(HPT)遺伝子の内部配列400bpのバンドが得られた。
以上の実験から、安全性の高い植物由来のPs遺伝子をマーカー遺伝子とし、抗生物質と比較して人体に影響の少ない糖であるガラクトースを用いることによってイネ科組換え植物体の選抜が可能であることがわかった。
(実施例8) 形質転換体(シロイヌナズナ)の作製及び導入遺伝子の確認
(1) Ps UGE形質転換シロイヌナズナの作製
(1−1) 凍結融解法によるアグロバクテリウムへの遺伝子導入
実施例2にて作製したプラスミド UGE1a/pBI221Hmをアグロバクテリウムに凍結融解法によって導入した。まず、24時間培養し飽和したAgrobacterium tumefaciens (GV3101株)の菌液0.5mlを50mlの培養液(LB培地)に入れ8時間培養した。集菌後300μlのYEB培地(ビーフエクストラクト 5.0g, ポリペプトン 5.0g, バクトイーストエクストラクト 1.0g, シュクロース 5.0g, MgSO4・7H2O 0.5g / 500 ml)にDNA溶液0.1μgを懸濁した。懸濁液を液体窒素中で5分静置後、37℃ウォータバスで静置した。30℃で1時間培養し、培養液をカナマイシン(終濃度50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布し、2晩培養して形質転換体を選抜した。出現した形質転換コロニーについてsingle-colony isolationを行った後に、コロニーを複数個釣菌し、PCR法により目的のプラスミドの存在を確認した。
(1−2) 形質転換用アグロバクテリウムの培養
Ps UGE遺伝子の導入が確認されたアグロバクテリウム1コロニーを釣菌し、前培養としてカナマイシン(終濃度50μg/ml)を含む1mlのLB液体培地にて30℃で約24時間培養した。この前培養液750μlを150 mlのLB培地に加え30℃で約24時間さらに培養した。遠心分離により集菌し、感染液(1/2 x MS salt, 5% シュクロース, 0.05% silwet)に再懸濁した後に600nmの吸光度を測定し、600nmの吸光度を0.5程度に調整した。本溶液をシロイヌナズナの感染に用いた。
(1−3)シロイヌナズナの形質転換
シロイヌナズナの形質転換は、島本功・岡田清隆監修、植物細胞工学シリーズ、モデル植物の実験プロトコール、秀潤社、pp.109-113、2001に記載の減圧浸潤法を用いて以下のようにして行った。
市販のシロイヌナズナ(品種:Columbia)の種子を、培養土に撒種し、23℃、長日条件(14時間明、10時間暗)にて生育させた。発芽後、適当に間引きし、約2〜3週間後、茎の高さが数cmとなったところで摘心を行った。
上記の摘心した植物体を、摘心後約1週間後に(1−2)で調製したアグロバクテリウム感染液に減圧下で浸潤させた。1日後、植物体を浸潤液から取り出し、2〜4週間生育させ、T1種子を採取した。
(2)Ps UGE遺伝子のホモラインの獲得
To世代より採種したT1種子をカナマイシン(終濃度50μg/ml)を含む1/2MS寒天培地に播種し、耐性株を選抜した。得られたT1世代形質転換体をロックウールに定植し、14
時間日長、24℃にて栽培し、T2世代種子を得た。このT2世代種子を選抜培地に播種し、薬剤耐性が3:1に分離するラインを選び、T3世代の分離比を検定することにより、ホモラインを獲得した。
(3)ゲノムサザンハイブリダイゼーションによる導入遺伝子の確認
獲得したホモライン(Ps UGE6-3、Ps 10-1、Ps 11-1、Ps 15-5)において、Ps遺伝子の導入を確認するために、ゲノムサザンハイブリダイゼーションを行った。ゲノムDNAはホモ接合体であると判断されたT3世代種子をMS培地に播種し、2週間後地上部を収穫し、液体窒素で保存した。この試料よりキアゲン社製Dneasy Kitを用いて、ゲノムDNAを抽出した。各DNA(各2μg)は、制限酵素HindIIIで消化し、0.6%アガロースゲルにて電気泳動した。ゲルは、メンブランに定法に従って移した。プローブは、pBI121のカナマイシン耐性(NPT)遺伝子領域をAlphos Directにてラベルしたものを用いた。一晩55℃にてハイブリダーゼーションを行った後、1次洗浄液にて55℃、10分の洗浄を2回行い、2次洗浄液にて5分2回の洗浄を行った。検出はプロトコールに従った。ゲノムサザンハイブリダイゼーションの結果を図17に示す(レーン1:非形質転換体、レーン2〜5:Ps UGE形質転換体)。レーン2は3から4コピー、レーン3,4は1コピー、レーン5は8コピー以上と推定された。
(4)導入遺伝子発現の確認
T3世代におけるPs遺伝子の発現を確認するために、RT-PCRを行った。キアゲン社製Rneasy Mini Kitを用いてプレートの植物より全RNAを抽出した。全RNAは、Rnase free Dnaseを用いて、ゲノムDNAを消化し除いた。これをcDNA合成の鋳型に用い、oligo-dTをプライマーとして逆転写酵素作用させ、1本鎖cDNAを合成した。この1本鎖cDNAを鋳型に、5'-GTG GTC GAC AAC TTC CAC AA-3'(配列番号16)、5'-TTG TTC TCG TAC ATG TA-3'(配列番号17)をプライマーとしてPCRを行った。PCR条件は98℃2分、(95℃30秒、55℃30秒、72℃1分)×30サイクル、74℃5分の後、4℃で維持とした。RT−PCRの結果を図18に示す。検出された断片長は約250bpであり、目的の長さであった。
(実施例9) Ps UGE形質転換シロイヌナズナのガラクトース耐性の確認
野生型、pBI121形質転換体、Ps UGE形質転換体のシロイヌナズナから種子を採取し、定法に従って滅菌処理を行い、1/2 MS、1% ガラクトース寒天培地に播種し、その生育を観察した。結果を図19に示す。野生型、及びpBI121形質転換体は、ガラクトース培地にて著しく生育が阻害されたが、Ps UGE形質転換体は、阻害されなかった。
(実施例10) Ps UGE形質転換シロイヌナズナの耐塩性評価
Ps UGE形質転換シロイヌナズナ種子をロックウールに播種し、14時間日長、100μE、湿度60%の条件下で、3週間生育させた。培養液は、PNSを1週間に1度の頻度で与えた。3週間後、200 mM NaClを加え、3日から4日ごとに交換した。また、3日から4日ごとに生育状況の観察を行った。図20に、塩処理後7日の写真を示した。非形質転換体はロゼット葉が完全に枯死しているが、形質転換体では花茎が伸張し、採種に至ることが分かる。
(実施例11)
双子葉植物として、トマト、ポプラ、ユーカリを例として、その形質転換体の作製及び導入遺伝子の確認の手法を説明する。
1.形質転換体の作製
(1) Ps UGE形質転換トマトの作製
トマト(栽培品種:ミニトマト(株)福花園種苗)の種子を70%エタノール(30秒)、2%次亜塩素酸ナトリウム(15分)を用いて表面殺菌した後、植物ホルモンを含まないMS寒天培地に置床し、16時間日長、25℃で1週間培養する。得られた無菌幼植物より子葉を切り取り、2mg/lゼアチンと0.1mg/lインドール酢酸添加MS寒天培地(細分化培地、9cmシャーレ)に置床し、2日間同条件で培養し、これを形質転換材料として用いる。
Agrobacterium tumefaciens (EHA101株)に実施例8と同様にしてPs UGE遺伝子を導入し、YEP培地(バクトリプトン10g、イーストエクストラクト10g、グルコース1g / 1000ml)にて一晩培養することによって得られたアグロバクテリウム菌液を感染液として用いる。2日間培養した子葉を滅菌シャーレに集めアグロバクテリウム菌液を感染させる。滅菌したろ紙を用いて余分なアグロバクテリウム菌液を子葉から取り除き、さらに、アグロバクテリウムの急激な増殖を抑える為に、先に用いたシャーレ培地に滅菌ろ紙を引き、その上に、感染させた子葉を乗せ、24時間共存培養する。
(2) Ps UGE形質転換ポプラの作製
ポプラ(Poplus alba)の葉を洗剤でよく洗い、1%の次亜塩素酸で処理した後、滅菌水で洗浄し、これを形質転換植物材料として用いる。上記と同様にして調製したアグロバクテリウム菌液を感染液として用い、形質転換は、木材科学講座11、バイオテクノロジー、海青社、p.42、2002に記載の具体的手順に従い、リーフディスク法によっておこなう。
(3) Ps UGE形質転換ユーカリの作製
ユーカリ(Eucalyptus camaldulensis)のin vitro植物体から3〜5mmの葉切片(葉柄は除く)を調製し、これを形質転換材料として用いる。上記と同様のアグロバクテリウム菌液を感染液として用い、形質転換は、Plant Cell Reports (1997)16: 787-791に記載の具体的手順に従っておこなう。
2.導入遺伝子の確認
再生させた植物体(トマト、ポプラ、ユーカリ)の形質転換体よりそれぞれ100mgの葉を採取し、キアゲン社製Dneasy Kitを用いてDNAを抽出する。このDNAを鋳型に、5’-GTG GTC GAC AAC TTC AA-3’(配列番号16)、5’-TTG TTC TCG TAC ATG TA-3’(配列番号17)プライマーとしてPCRを行う。PCR条件は98℃2分、(95℃30秒、55℃30秒、72℃1分)×30サイクル、74℃5分の後、4℃で維持とする。遺伝子の導入の確認はPCR産物をアガロースゲル電気泳動し、目的の長さの断片を検出することにより行う。
Seashore Paspalum シバの第1葉から第3葉、及び茎と節を含む切片を示す。 図2(A)はPs ABAプローブによるノーザン解析結果、図2(B)はPs UGEプローブによるノーザン解析結果をそれぞれ示す。 Ps UGE1及びPs UGE2の植物由来のUGEホモログとの系統樹(アミノ酸配列の比較)を示す。 系統樹作成で分類されたグループ1に属するUGEホモログとPs UGE1及びPs UGE2とのアミノ酸比較を示す。 植物用発現ベクターのPs UGE1a/pBI221の構築手順を示す。 ゲノムPCRによる各種イネ品種におけるPs UGE遺伝子検出結果を示す(レーン1:ベクター、レーン2:非形質転換日本晴、レーン3:Ps UGE形質転換イネ、レーン4:日本晴、レーン5:IR28、レーン6:コシヒカリ、レーン7:ポッカリ)。 Ps UGE遺伝子導入日本晴To世代、該日本晴To世代とコシヒカリを交配したF1世代におけるゲノムPCRによるPs UGE遺伝子検出結果を示す(上段:日本晴To世代、下段:日本晴To世代とコシヒカリとの交配F1世代)。 日本晴To世代におけるRT-PCRによるPs UGE遺伝子の発現確認を示す。 Ps UGE遺伝子導入イネ(35S:Ps UGE1a:nosT)、非形質転換イネカルス再分化個体(コントロール)について、各濃度のガラクトース添加培地で生育させた場合の発根の写真を示す。 Ps UGE遺伝子導入イネ(35S:Ps UGE1a:nosT)、非形質転換イネカルス再分化個体(コントロール)について、ガラクトース添加培地で生育させた場合の発根の写真、不定根の数、不定根の最大長(cm)を示す。 Ps UGE遺伝子導入イネ(35S:Ps UGE1a:nosT)、非形質転換イネカルス再分化個体(コントロール)について、ガラクトース添加培地で生育させた場合の苗条の写真、苗条の最大長(cm)を示す。 Ps UGE遺伝子導入日本晴To世代の塩ストレス(NaCl 3000ppm)耐性評価試験の状況を示す。 Ps UGE遺伝子導入日本晴To世代の塩ストレス(NaCl 3000ppm)耐性評価結果を示す。 Ps UGE遺伝子導入イネのF1世代(日本晴Toとコシヒカリの交配)の塩ストレス(NaCl 3000ppm)耐性評価結果を示す。 Ps UGE遺伝子導入イネ(F1世代)の塩ストレス条件での栽培6週間後の出穂状態を示す。 ガラクトースで選抜された個体のゲノムPCRの結果を示す(上段:Ps UGE遺伝子、下段:ハイグロマイシン抵抗性遺伝子)。 ゲノムサザンハイブリダイゼーションによるPs UGE遺伝子導入シロイヌナズナにおけるPs UGE遺伝子検出結果を示す(レーン1:非形質転換体、レーン2〜5:Ps UGE形質転換体)。 RT-PCRによるPs UGE遺伝子導入シロイヌナズナにおけるPs UGE遺伝子発現確認結果を示す(レーン1:ベクター(pBI122)、レーン2:Ps UGE形質転換体(Ps 6-3)、レーン3:Ps UGE形質転換体(Ps 10-1)、レーン4:Ps UGE形質転換体(Ps 15-5)、レーン5:鋳型なし、レーン6:プライマーなし)。 Ps UGE遺伝子導入シロイヌナズナについて、ガラクトース添加培地(Aのみシュクロース添加培地)で生育させた場合の植物体の写真を示す(A:非形質転換体、B:非形質転換体、C:ベクター(pBI122)、D:Ps UGE形質転換体(Ps 6-3)、E:Ps UGE形質転換体(Ps 11-1)、F:Ps UGE形質転換体(Ps 15-5))。 Ps UGE遺伝子導入シロイヌナズナの塩ストレス条件での栽培7日後の生育状態を示す(1:非形質転換体、2:Ps UGE形質転換体(Ps 6-3)、3:Ps UGE形質転換体(Ps 10-1)、4:Ps UGE形質転換体(Ps 11-1)、5:Ps UGE形質転換体(Ps 15-5))。

Claims (18)

  1. 以下の(a)、(b)、又は(c)に示すタンパク質をコードする遺伝子。
    (a) 配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
    (b) 配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ植物に塩ストレス耐性を付与する活性を有するタンパク質
    (c) 配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつUDPグルコース4−エピメラーゼ活性を有するタンパク質
  2. 以下の(d)、(e)、又は(f)に示すDNAからなる遺伝子。
    (d) 配列表の配列番号1に示す塩基配列からなるDNA
    (e) 配列表の配列番号1に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ植物に塩ストレス耐性を付与する活性を有するタンパク質をコードするDNA
    (f) 配列表の配列番号1に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつUDPグルコース4−エピメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
  3. 請求項1又は2に記載の遺伝子を含む組換えベクター。
  4. 請求項1若しくは2に記載の遺伝子、又は請求項3に記載の組換えベクターを導入した形質転換植物。
  5. 請求項1若しくは2に記載の遺伝子、又は請求項3に記載の組換えベクターを導入した塩ストレス耐性形質転換植物。
  6. 植物が単子葉植物である、請求項4又は5に記載の形質転換植物。
  7. 単子葉植物がイネ科、ユリ科、又はショウガ科に属する植物である、請求項6に記載の形質転換植物。
  8. イネ科に属する植物が、イネ、オオムギ、コムギ、トウモロコシ、サトウキビ、シバ、ソルガム、アワ、及びヒエから成る群から選択される、請求項7に記載の形質転換植物。
  9. 植物が双子葉植物である、請求項4又は5に記載の形質転換植物。
  10. 双子葉植物が、アブラナ科、ナス科、マメ科、ウリ科、セリ科、キク科、アオイ科、アカザ科、フトモモ科、又はヤナギ科に属する植物である、請求項9に記載の形質転換植物。
  11. 請求項1若しくは2に記載の遺伝子、又は請求項3に記載の組換えベクターを植物に導入することを特徴とする、植物に塩ストレス耐性を付与する方法。
  12. 請求項1又は2に記載の遺伝子を含有する形質転換植物選抜用マーカー。
  13. 植物が単子葉植物である、請求項12に記載の形質転換植物選抜用マーカー。
  14. 単子葉植物がイネ科、ユリ科、又はショウガ科に属する植物である、請求項13に記載の形質転換植物選抜用マーカー。
  15. イネ科に属する植物が、イネ、オオムギ、コムギ、トウモロコシ、サトウキビ、シバ、ソルガム、アワ、及びヒエから成る群から選択される、請求項14に記載の形質転換植物選抜用マーカー。
  16. 植物が双子葉植物である、請求項12に記載の形質転換植物選抜用マーカー。
  17. 双子葉植物が、アブラナ科、ナス科、マメ科、ウリ科、セリ科、キク科、アオイ科、アカザ科、フトモモ科、又はヤナギ科に属する植物である、請求項16に記載の形質転換植物選抜用マーカー。
  18. 請求項1若しくは2に記載の遺伝子、又は請求項3に記載の組換えベクターを植物に導入し、その植物をガラクトース含有培地にて培養し、ガラクトース耐性の有無を指標に前記遺伝子が導入された植物として選抜することを含む、形質転換植物の選抜方法。
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