しかしながら、従来例に係る強誘電体容量素子における種々の構造では、強誘電体容量絶縁膜と導電性セラミックス膜との間に白金薄膜を有する構造であるがゆえに、微細な強誘電体容量素子を形成する際に、必要な微細加工を行なうことが極めて困難であるという課題を我々は見い出した。
以下に、本課題について詳細に説明する。
半導体プロセスに用いられる微細加工の方法には、一般的に、ドライエッチングが用いられている。従来例に示された導電性セラミックス膜及び白金薄膜よりなる積層構造を微細加工する場合、白金薄膜に対するエッチングの際にパーティクルが発生しやすい。したがって、従来例に係る強誘電体容量素子の構造を微細加工により実現する場合、白金薄膜が強誘電体容量絶縁膜の上下に配置されていることにより、強誘電体容量絶縁膜の組成の拡散を防止できるが、パーティクルが起因となって微細な強誘電体容量素子の加工不良の不具合が発生してしまう。
図15は、導電性セラミックス膜及び白金薄膜を微細加工した場合に発生した不具合の一事例を示している。なお、図15に示すように、エッチング加工の対象とした構造は白金薄膜及び導電性セラミックス膜の積層構造よりなる下部電極である。
図15から明らかなように、エッチング加工の際に生じた白金薄膜又はその副生成物がマスクとなることにより、導電性セラミックス膜及び白金薄膜の積層構造に対する加工に不具合を生じさせて、白金薄膜と導電性セラミックス膜との電気的短絡を引き起こしていることが分かる。特に、微細加工を行なう場合には、導電性セラミックス膜と白金薄膜との間の距離が短くなるので、前述の通り、白金薄膜に対するドライエッチングが非常に困難であることに起因して発生する白金薄膜又は白金薄膜の副生成物よりなるパーティクルが0.5μm以上の大きさを有する場合には、致命的な不具合を生じさせることになる。
また、白金薄膜に対するエッチングにおいては、化学反応によるエッチングに加えて、スパッタエッチングによる物理的なエッチングが行なわれるので、ドライエッチングチャンバの内壁には白金薄膜又は白金薄膜の副生成物が付着しやすい。そして、白金薄膜又は白金薄膜の副生成物は、エッチング中にチャンバの内壁から剥がれやすいために、剥がれた白金薄膜又は白金薄膜の副生成物がマスクとなって、導電性セラミックス膜の加工に不具合を生じさせるのである。
以上に述べたように、強誘電体容量絶縁膜の組成ずれを防止する目的で白金薄膜を用いることは、強誘電体容量素子を含む半導体装置の微細加工の点では適切ではない。また、前述の課題は、強誘電体容量絶縁膜の組成ずれを防止する膜が白金薄膜よりなる場合に限られず、強誘電体容量素子を含む半導体装置の微細加工の点に鑑みれば、エッチング加工が少なくとも白金よりも困難な金属を含む膜よりなる場合に同様に発生するものである。
前記に鑑み、本発明の目的は、白金膜を用いることなく、強誘電体容量絶縁膜の組成ずれを防止すると共に微細加工による不具合の発生を抑制する強誘電体容量素子の製造方法及び強誘電体容量素子を提供することである。
前記の課題を解決するために、本発明に係る第1の強誘電体容量素子の製造方法は、基板上に、第1の導電膜よりなる下部電極を形成する工程と、下部電極の上に、第1の濃度を有するビスマスを含む第1の強誘電体膜を形成する工程と、第1の強誘電体膜の上に、第2の濃度を有するビスマスを含む第2の強誘電体膜を形成する工程と、第1の強誘電体膜及び第2の強誘電体膜の形成後に熱処理を行なう工程と、熱処理後に、第2の強誘電体膜の上に、第2の導電膜よりなる上部電極を形成する工程とを備え、第1の導電膜は、エッチング加工が白金膜よりも容易な金属であり、熱処理前における第2の強誘電体膜は、第2の濃度が第1の濃度よりも低くなるように形成されることを特徴とする。
第1の強誘電体容量素子の製造方法によると、第1の強誘電体膜におけるビスマスの濃度を第2の強誘電体膜におけるビスマスの濃度よりも高くしているため、熱処理によって第1の強誘電体膜から下部電極へビスマスが拡散した後には、第1の強誘電体膜及び第2の強誘電体膜においてビスマス組成がほぼ均一になるので、組成ずれが防止されて強誘電体特性として十分な強誘電体膜を得ることができる。また、強誘電体膜の組成ずれを防止する目的で、従来例のように白金膜を用いることなく、白金膜よりもドライエッチング加工が容易な金属膜を用いることができるので、強誘電体容量素子の加工不具合の発生を防止できる。
本発明に係る第2の強誘電体容量素子の製造方法は、基板上に、第1の導電膜よりなる下部電極を形成する工程と、下部電極の上に、第1の濃度を有するビスマスを含む第1の強誘電体膜を形成する工程と、第1の強誘電体膜の形成後に第1の熱処理を行なう工程と、第1の熱処理後における第1の強誘電体膜の上に、第2の濃度を有するビスマスを含む第2の強誘電体膜を形成する工程と、第2の強誘電体膜の形成後に第2の熱処理を行なう工程と、第2の熱処理後における第2の強誘電体膜の上に、第2の導電膜よりなる上部電極を形成する工程とを備え、第1の導電膜は、エッチング加工が白金膜よりも容易な金属であり、熱処理前における第2の強誘電体膜は、第2の濃度が第1の濃度よりも低くなるように形成されることを特徴とする。
第2の強誘電体容量素子の製造方法によると、第1の強誘電体膜におけるビスマスの濃度を第2の強誘電体膜におけるビスマスの濃度よりも高くしているため、熱処理によって第1の強誘電体膜から下部電極へビスマスが拡散した後には、第1の強誘電体膜及び第2の強誘電体膜の全体においてビスマス組成がほぼ均一になるので、組成ずれが防止されて強誘電体特性として十分な強誘電体膜を得ることができる。また、強誘電体膜の組成ずれを防止する目的で、従来例のように白金膜を用いることなく、白金膜よりもドライエッチング加工が容易な金属膜を用いることができるので、強誘電体容量素子の加工不具合の発生を防止できる。さらに、各強誘電体膜の形成後にそれぞれ熱処理を行なうので、第1の強誘電体膜及び第2の強誘電体膜の全体におけるビスマス組成をほぼ均一にすることが容易になり、強誘電体特性としてより十分な強誘電体膜を得ることができる。
本発明に係る第3の強誘電体容量素子の製造方法は、基板上に、第1の導電膜よりなる下部電極を形成する工程と、下部電極の上に、ビスマスを含む強誘電体膜を形成する工程と、強誘電体膜の形成後に熱処理を行なう工程と、熱処理後における強誘電体膜の上に、第2の導電膜よりなる上部電極を形成する工程とを備え、第1の導電膜は、エッチング加工が白金膜よりも容易な金属であり、熱処理前における強誘電体膜は、強誘電体膜の膜厚方向において、ビスマスの濃度が下部電極側から上部電極側に向かって減少する傾斜勾配を有するように形成されることを特徴とする。
第3の強誘電体容量素子の製造方法によると、強誘電体膜は、強誘電体膜の膜厚方向において、ビスマスの濃度が下部電極側から上部電極側に向かって減少する傾斜勾配を有するように形成されているため、熱処理によって強誘電体膜から下部電極へビスマスが拡散した後には、強誘電体膜においてビスマス組成がほぼ均一になるので、組成ずれが防止されて強誘電体特性として十分な強誘電体膜を得ることができる。また、強誘電体膜の組成ずれを防止する目的で、従来例のように白金膜を用いることなく、白金膜よりもドライエッチング加工が容易な金属膜を用いることができるので、強誘電体容量素子の加工不具合の発生を防止できる。さらに、膜厚方向においてビスマスの濃度が下部電極側から上部電極側に向かって減少する傾斜勾配を有するように強誘電体膜を形成するため、よりきめ細かなビスマスの濃度の傾斜勾配を形成できるので、強誘電体膜におけるビスマス組成をほぼ均一にすることがより容易になり、強誘電体特性としてより十分な強誘電体膜を得ることができる。
本発明に係る第4の強誘電体容量素子の製造方法は、基板上に、第1の導電膜よりなる下部電極を形成する工程と、下部電極の上に、各々の層がビスマスを含んでなる多層構造を有する強誘電体膜を形成する工程と、強誘電体膜の形成後に熱処理を行なう工程と、熱処理後における強誘電体膜の上に、第2の導電膜よりなる上部電極を形成する工程とを備え、第1の導電膜は、エッチング加工が白金膜よりも容易な金属であり、熱処理前における強誘電体膜を構成する各々の層は、該各々の層に含まれるビスマスの濃度が下部電極側から上部電極側に向かって徐々に減少するように形成されることを特徴とする。
第4の強誘電体容量素子の製造方法によると、強誘電体膜は各々がビスマスを含む多層構造よりなり、各々の層に含まれるビスマスの濃度が下部電極側から上部電極側に向かって減少するように形成されているため、熱処理によって強誘電体膜から下部電極へビスマスが拡散した後には、強誘電体膜においてビスマス組成がほぼ均一になるので、組成ずれが防止されて強誘電体特性として十分な強誘電体膜を得ることができる。また、強誘電体膜の組成ずれを防止する目的で、従来例のように白金膜を用いることなく、白金膜よりもドライエッチング加工が容易な金属膜を用いることができるので、強誘電体容量素子の加工不具合の発生を防止できる。さらに、各々の層に含まれるビスマスの濃度が下部電極側から上部電極側に向かって減少する強誘電体膜を形成するため、よりきめ細かなビスマスの濃度の傾斜勾配を形成できるので、強誘電体膜におけるビスマス組成をほぼ均一にすることがより容易になり、強誘電体特性としてより十分な強誘電体膜を得ることができる。
本発明に係る第5の強誘電体容量素子の製造方法は、基板上に、第1の導電膜よりなる下部電極を形成する工程と、下部電極の上に、SBT膜又はSBTN膜よりなる強誘電体膜を形成する工程と、強誘電体膜の形成後に熱処理を行なう工程と、熱処理後における強誘電体膜の上に、第2の導電膜よりなる上部電極を形成する工程とを備え、第1の導電膜は、エッチング加工が白金膜よりも容易な金属であり、熱処理前における強誘電体膜は、ビスマスの組成比が化学量論的組成におけるビスマスの組成比よりも大きくなるように形成されることを特徴とする。
第5の強誘電体容量素子の製造方法によると、強誘電体膜におけるビスマスの組成比を化学量論的組成におけるビスマスの組成比よりも大きくなるように強誘電体膜を形成するため、熱処理によって強誘電体膜から下部電極へビスマスが拡散した後には、強誘電体膜においてビスマス組成がほぼ均一になるので、組成ずれが防止されて強誘電体特性として十分な強誘電体膜を得ることができる。また、強誘電体膜の組成ずれを防止する目的で、従来例のように白金膜を用いることなく、白金膜よりもドライエッチング加工が容易な金属膜を用いることができるので、強誘電体容量素子の加工不具合の発生を防止できる。
本発明に係る第1〜第5のいずれかの強誘電体容量素子の製造方法において、第1の導電膜として、エッチング加工が白金膜よりも容易な貴金属酸化物、又は貴金属酸化物と貴金属との積層膜を用いることにより、強誘電体容量素子の加工不具合の発生を防止できる。
本発明に係る第1〜第5のいずれかの強誘電体容量素子の製造方法において、第2の導電膜として、エッチング加工が白金膜よりも容易な貴金属酸化物、又は貴金属酸化物と貴金属との積層膜を用いることにより、強誘電体容量素子の加工不具合の発生を防止できる。さらに、第2の導電膜が貴金属酸化物と貴金属との積層膜である方がより好ましく、トランジスタの高速動作における動作遅延の問題を解消することができる。その理由は、第2の導電膜が貴金属酸化物と貴金属との積層膜よりなる場合には、金属酸化物単体よりなる場合に比べて、シート抵抗を1/10〜1/100に抑えることができるからである。
本発明に係る第6の強誘電体容量素子の製造方法は、基板上に、下部電極を形成する工程と、下部電極の上に、SBT膜又はSBTN膜よりなり、積層構造を有する強誘電体膜を形成する工程と、強誘電体膜の形成後に、熱処理を行なうことにより、下部電極と強誘電体膜との間に、第V族の元素とビスマスとを含む層を形成する工程と、熱処理後に、強誘電体膜の上に、上部電極を形成する工程とを備え、強誘電体膜における下部電極と接合する層は、ビスマスの組成比が化学量論的組成におけるビスマスの組成比よりも大きくなるように形成されることを特徴とする。
第6の強誘電体容量素子の製造方法によると、積層構造を有する強誘電体膜における下部電極と接合する層におけるビスマスの組成比を化学量論的組成におけるビスマスの組成比よりも大きくなるように強誘電体膜を形成するため、熱処理によって強誘電体膜から下部電極へビスマスが拡散した後には、強誘電体膜においてビスマス組成がほぼ均一になるので、組成ずれが防止されて強誘電体特性として十分な強誘電体膜を得ることができる。また、強誘電体膜の組成ずれを防止する目的で、従来例のように白金膜を用いることなく、白金膜よりもドライエッチング加工が容易な金属膜を用いることができるので、強誘電体容量素子の加工不具合の発生を防止できる。さらに、強誘電体膜と下部電極との間に第V族の元素とビスマスとを含む層が形成されるので、強誘電体膜から拡散してくるビスマスを効率的に捕獲することができる。このため、捕獲した層を分析することによって、強誘電体膜から拡散され抜け出るビスマスの量を予め把握することができるので、強誘電体膜の組成の制御をより効果的に行なうことができる。この点、第1〜第5の強誘電体容量素子の製造方法では、強誘電体膜から拡散され抜け出るビスマスは、捕獲されることなく下部電極側に抜け出てしまうため、強誘電体膜から拡散され抜け出るビスマスの量を予測することは容易ではないので、強誘電体膜の組成の制御が不安定とならざるを得なかったが、本発明によれば、強誘電体膜の組成の制御をより精度良く行なうことができる。これにより、強誘電体電気的特性をより向上させることができる。
本発明に係る第7の強誘電体容量素子の製造方法は、基板上に、下部電極を形成する工程と、下部電極の上に、SBT膜又はSBTN膜よりなる強誘電体膜を形成する工程と、強誘電体膜の形成後に、熱処理を行なうことにより、下部電極と強誘電体膜との間に、第V族の元素とビスマスとを含む層を形成する工程と、熱処理後に、強誘電体膜の上に、上部電極を形成する工程とを備え、熱処理前における強誘電体膜は、強誘電体膜の膜厚方向において、ビスマスの濃度が下部電極側から上部電極側に向かって減少する傾斜勾配を有するように形成されることを特徴とする。
第7の強誘電体容量素子の製造方法によると、強誘電体膜は、強誘電体膜の膜厚方向において、ビスマスの濃度が下部電極側から上部電極側に向かって減少する傾斜勾配を有するように形成されているため、熱処理によって強誘電体膜から下部電極へビスマスが拡散した後には、強誘電体膜においてビスマス組成がほぼ均一になるので、組成ずれが防止されて強誘電体特性として十分な強誘電体膜を得ることができる。また、強誘電体膜の組成ずれを防止する目的で、従来例のように白金膜を用いることなく、白金膜よりもドライエッチング加工が容易な金属膜を用いることができるので、強誘電体容量素子の加工不具合の発生を防止できる。さらに、膜厚方向においてビスマスの濃度が下部電極側から上部電極側に向かって減少する傾斜勾配を有するように強誘電体膜を形成するため、よりきめ細かなビスマスの濃度の傾斜勾配を形成できるので、強誘電体膜におけるビスマス組成をほぼ均一にすることがより容易になり、強誘電体特性としてより十分な強誘電体膜を得ることができる。さらに、強誘電体膜と下部電極との間に第V族の元素とビスマスとを含む層が形成されるので、強誘電体膜から拡散してくるビスマスを効率的に捕獲することができる。このため、捕獲した層を分析することによって、強誘電体膜から拡散され抜け出るビスマスの量を予め把握することができるので、強誘電体膜の組成の制御をより効果的に行なうことができる。この点、第1〜第5の強誘電体容量素子の製造方法では、強誘電体膜から拡散され抜け出るビスマスは、捕獲されることなく下部電極側に抜け出てしまうため、強誘電体膜から拡散され抜け出るビスマスの量を予測することは容易ではないので、強誘電体膜の組成の制御が不安定とならざるを得なかったが、本発明によれば、強誘電体膜の組成の制御をより精度良く行なうことができる。これにより、強誘電体電気的特性をより向上させることができる。
本発明に係る第8の強誘電体容量素子の製造方法は、基板上に、下部電極を形成する工程と、下部電極の上に、SBT膜又はSBTN膜よりなる強誘電体膜を形成する工程と、強誘電体膜の形成後に、熱処理を行なうことにより、下部電極と強誘電体膜との間に、第V族の元素とビスマスとを含む層を形成する工程と、熱処理後に、強誘電体膜の上に、上部電極を形成する工程とを備え、熱処理前における強誘電体膜は、ビスマスの組成比が化学量論的組成におけるビスマスの組成比よりも大きくなるように形成されることを特徴とする。
第8の強誘電体容量素子の製造方法によると、強誘電体膜におけるビスマスの組成比を化学量論的組成におけるビスマスの組成比よりも大きくなるように強誘電体膜を形成するため、熱処理によって強誘電体膜から下部電極へビスマスが拡散した後には、強誘電体膜においてビスマス組成がほぼ均一になるので、組成ずれが防止されて強誘電体特性として十分な強誘電体膜を得ることができる。また、強誘電体膜の組成ずれを防止する目的で、従来例のように白金膜を用いることなく、白金膜よりもドライエッチング加工が容易な金属膜を用いることができるので、強誘電体容量素子の加工不具合の発生を防止できる。さらに、強誘電体膜と下部電極との間に第V族の元素とビスマスとを含む層が形成されるので、強誘電体膜から拡散してくるビスマスを効率的に捕獲することができる。このため、捕獲した層を分析することによって、強誘電体膜から拡散され抜け出るビスマスの量を予め把握することができるので、強誘電体膜の組成の制御をより効果的に行なうことができる。この点、第1〜第5の強誘電体容量素子の製造方法では、強誘電体膜から拡散され抜け出るビスマスは、捕獲されることなく下部電極側に抜け出てしまうため、強誘電体膜から拡散され抜け出るビスマスの量を予測することは容易ではないので、強誘電体膜の組成の制御が不安定とならざるを得なかったが、本発明によれば、強誘電体膜の組成の制御をより精度良く行なうことができる。これにより、強誘電体電気的特性をより向上させることができる。
本発明に係る第9の強誘電体容量素子の製造方法は、基板上に、下部電極を形成する工程と、下部電極の上に、SBT膜又はSBTN膜よりなり、積層構造を有するビスマスを含む強誘電体膜を形成する工程と、強誘電体膜の上に、上部電極を形成する工程と、上部電極の形成後に、熱処理を行なうことにより、下部電極と強誘電体膜との間、及び強誘電体膜と上部電極との間に、第V族の元素とビスマスとを含む層を形成する工程とを備え、熱処理前における強誘電体膜における下部電極と接合する層及び上部電極と接合する層は、ビスマスの組成比が化学量論的組成比におけるビスマスの組成比よりも大きくなるように形成されることを特徴とする。
第9の強誘電体容量素子の製造方法によると、積層構造を有する強誘電体膜における下部電極と接合する層及び上部電極と接合する層におけるビスマスの組成比を化学量論的組成におけるビスマスの組成比よりも大きくなるように強誘電体膜を形成するため、熱処理によって強誘電体膜から下部電極及び上部電極へビスマスが拡散した後には、強誘電体膜においてビスマス組成がほぼ均一になるので、組成ずれが防止されて強誘電体特性として十分な強誘電体膜を得ることができる。また、強誘電体膜の組成ずれを防止する目的で、従来例のように白金膜を用いることなく、白金膜よりもドライエッチング加工が容易な金属膜を下部電極及び上部電極として用いることができるので、強誘電体容量素子の加工不具合の発生を防止できる。さらに、強誘電体膜と下部電極及び上部電極との間に第V族の元素とビスマスとを含む層が形成されるので、強誘電体膜から拡散してくるビスマスを効率的に捕獲することができる。このため、捕獲した層を分析することによって、強誘電体膜から拡散され抜け出るビスマスの量を予め把握することができるので、強誘電体膜の組成の制御をより効果的に行なうことができる。この点、第1〜第5の強誘電体容量素子の製造方法では、強誘電体膜から拡散され抜け出るビスマスは、捕獲されることなく下部電極側又は上部電極側に抜け出てしまうため、強誘電体膜から拡散され抜け出るビスマスの量を予測することは容易ではないので、強誘電体膜の組成の制御が不安定とならざるを得なかったが、本発明によれば、強誘電体膜の組成の制御をより精度良く行なうことができる。これにより、強誘電体電気的特性をより向上させることができる。また、上部電極を形成した後に熱処理を行なうため、半導体製造プロセスコストを低減することができる。これは、一般的に、半導体装置では半導体記憶装置のメモリー(記憶)部とロジック(論理)部との段差を合わせるための平坦化には、BPSG膜に対して熱処理を行なって平坦化フローする製造方法、又はBPSG膜に対して熱処理を行なって平坦化CMPする製造方法が用いられる。このような製造方法において、上部電極の形成後に強誘電体膜に対して熱処理を行なうことにより、強誘電体膜の熱処理と前述のBPSG膜の熱処理とを同時に実施できる製造方法となるので、製造コストを低減することができる。
本発明に係る第10の強誘電体容量素子の製造方法は、基板上に、下部電極を形成する工程と、下部電極の上に、SBT膜又はSBTN膜よりなる強誘電体膜を形成する工程と、強誘電体膜の上に、上部電極を形成する工程と、上部電極の形成後に、熱処理を行なうことにより、下部電極と強誘電体膜との間に、及び強誘電体膜と上部電極との間に、第V族の元素とビスマスとを含む層を形成する工程とを備え、熱処理前における強誘電体膜は、強誘電体膜の膜厚方向において、ビスマスの濃度が下部電極側から強誘電体膜の中央付近に向かって徐々に減少すると共に強誘電体膜の中央付近から上部電極側に向かって徐々に上昇する傾斜勾配を有するように形成されることを特徴とする。
第10の強誘電体容量素子の製造方法によると、強誘電体膜は、強誘電体膜の膜厚方向において、ビスマスの濃度が下部電極側から強誘電体膜の中央付近に向かって徐々に減少すると共に強誘電体膜の中央付近から上部電極側に向かって徐々に上昇する傾斜勾配を有するように形成されているため、熱処理によって強誘電体膜から下部電極及び上部電極へビスマスが拡散した後には、強誘電体膜においてビスマス組成がほぼ均一になるので、組成ずれが防止されて強誘電体特性として十分な強誘電体膜を得ることができる。また、強誘電体膜の組成ずれを防止する目的で、従来例のように白金膜を用いることなく、白金膜よりもドライエッチング加工が容易な金属膜を下部電極及び上部電極として用いることができるので、強誘電体容量素子の加工不具合の発生を防止できる。さらに、膜厚方向においてビスマスの濃度が下部電極側から強誘電体膜の中央付近に向かって徐々に減少すると共に強誘電体膜の中央付近から上部電極側に向かって徐々に上昇する傾斜勾配を有するように強誘電体膜を形成するため、よりきめ細かなビスマスの濃度の傾斜勾配を形成できるので、強誘電体膜におけるビスマス組成をほぼ均一にすることがより容易になり、強誘電体特性としてより十分な強誘電体膜を得ることができる。さらに、強誘電体膜と下部電極及び上部電極との間に第V族の元素とビスマスとを含む層が形成されるので、強誘電体膜から拡散してくるビスマスを効率的に捕獲することができる。このため、捕獲した層を分析することによって、強誘電体膜から拡散され抜け出るビスマスの量を予め把握することができるので、強誘電体膜の組成の制御をより効果的に行なうことができる。この点、第1〜第5の強誘電体容量素子の製造方法では、強誘電体膜から拡散され抜け出るビスマスは、捕獲されることなく下部電極又は上部電極側に抜け出てしまうため、強誘電体膜から拡散され抜け出るビスマスの量を予測することは容易ではないので、強誘電体膜の組成の制御が不安定とならざるを得なかったが、本発明によれば、強誘電体膜の組成の制御をより精度良く行なうことができる。これにより、強誘電体電気的特性をより向上させることができる。また、上部電極を形成した後に熱処理を行なうため、半導体製造プロセスコストを低減することができる。これは、一般的に、半導体装置では半導体記憶装置のメモリー(記憶)部とロジック(論理)部との段差を合わせるための平坦化には、BPSG膜に対して熱処理を行なって平坦化フローする製造方法、又はBPSG膜に対して熱処理を行なって平坦化CMPする製造方法が用いられる。このような製造方法において、上部電極の形成後に強誘電体膜に対して熱処理を行なうことにより、強誘電体膜の熱処理と前述のBPSG膜の熱処理とを同時に実施できる製造方法となるので、製造コストを低減することができる。
本発明に係る第11の強誘電体容量素子の製造方法は、基板上に、下部電極を形成する工程と、下部電極の上に、SBT膜又はSBTN膜よりなる強誘電体膜を形成する工程と、強誘電体膜の上に、上部電極を形成する工程と、上部電極の形成後に、熱処理を行なうことにより、下部電極と強誘電体膜との間、及び強誘電体膜と上部電極との間に、第V族の元素とビスマスとを含む層を形成する工程とを備え、熱処理前における強誘電体膜は、ビスマスの組成比が化学量論的組成におけるビスマスの組成比よりも大きくなるように形成されることを特徴とする。
第11の強誘電体容量素子の製造方法によると、強誘電体膜におけるビスマスの組成比を化学量論的組成におけるビスマスの組成比よりも大きくなるように強誘電体膜を形成するため、熱処理によって強誘電体膜から下部電極及び上部電極へビスマスが拡散した後には、強誘電体膜においてビスマス組成がほぼ均一になるので、組成ずれが防止されて強誘電体特性として十分な強誘電体膜を得ることができる。また、強誘電体膜の組成ずれを防止する目的で、従来例のように白金膜を用いることなく、白金膜よりもドライエッチング加工が容易な金属膜を下部電極及び上部電極として用いることができるので、強誘電体容量素子の加工不具合の発生を防止できる。さらに、強誘電体膜と下部電極及び上部電極との間に第V族の元素とビスマスとを含む層が形成されるので、強誘電体膜から拡散してくるビスマスを効率的に捕獲することができる。このため、捕獲した層を分析することによって、強誘電体膜から拡散され抜け出るビスマスの量を予め把握することができるので、強誘電体膜の組成の制御をより効果的に行なうことができる。この点、第1〜第5の強誘電体容量素子の製造方法では、強誘電体膜から拡散され抜け出るビスマスは、捕獲されることなく下部電極又は上部電極側に抜け出てしまうため、強誘電体膜から拡散され抜け出るビスマスの量を予測することは容易ではないので、強誘電体膜の組成の制御が不安定とならざるを得なかったが、本発明によれば、強誘電体膜の組成の制御をより精度良く行なうことができる。これにより、強誘電体電気的特性をより向上させることができる。また、上部電極を形成した後に熱処理を行なうため、半導体製造プロセスコストを低減することができる。これは、一般的に、半導体装置では半導体記憶装置のメモリー(記憶)部とロジック(論理)部との段差を合わせるための平坦化には、BPSG膜に対して熱処理を行なって平坦化フローする製造方法、又はBPSG膜に対して熱処理を行なって平坦化CMPする製造方法が用いられる。このような製造方法において、上部電極の形成後に強誘電体膜に対して熱処理を行なうことにより、強誘電体膜の熱処理と前述のBPSG膜の熱処理とを同時に実施できる製造方法となるので、製造コストを低減することができる。
本発明に係る第6〜第11の強誘電体容量素子の製造方法において、第V族の元素とビスマスとを含む層は、BiTa、BiPa、BiNb、BiTaOx、BiPaOx、又はBiNbOx よりなることが好ましい。
本発明に係る第6〜第11強誘電体容量素子の製造方法において、下部電の上面層及び上部電極の下面層のうち、少なくとも下部電極の上面層は、第V族の元素を含む材料によって構成されており、第V族の元素を含む材料は、IrTa、IrPa、IrNb、IrTaOx 、IrPaOx 、又はIrNbOx よりなることが好ましい。
このようにすると、少なくとも下部電極の上面層が第V族の元素を含む材料よりなるので、熱処理によって強誘電体膜からのビスマスの拡散を促進させることができるので、より短い熱処理時間で、強誘電体膜の全体におけるビスマスの組成をほぼ均一にすることが容易になると共に強誘電体膜の組成の制御を精度良く行なうことができる。これにより、強誘電体特性としてより十分な強誘電体膜を得ることができる。
また、前記の課題を解決するために、本発明に係る第1の強誘電体容量素子は、基板上に形成された第1の導電膜よりなる下部電極と、下部電極の上に形成されたビスマスを含む強誘電体膜と、強誘電体膜の上に形成された第2の導電膜よりなる上部電極とを備え、第1の導電膜は、エッチング加工が白金膜よりも容易な金属であり、強誘電体膜に含まれるビスマスの濃度は、強誘電体膜の膜厚方向において略等しいことを特徴とする。
第1の強誘電体容量素子によると、熱処理がなされた後の強誘電体膜におけるビスマス濃度が略等しいので、組成ずれがなく、強誘電体特性として十分な強誘電体膜を得ることができる。また、強誘電体膜の組成ずれを防止する目的で、従来例のように白金膜を用いることなく、白金膜よりもドライエッチング加工が容易な金属膜を用いているので、強誘電体容量素子の加工不具合の発生が防止されている。
本発明に係る第2の強誘電体容量素子は、基板上に形成された第1の導電膜よりなる下部電極と、下部電極の上に形成されたビスマスを含む第1の強誘電体膜と、第1の強誘電体膜の上に形成されたビスマスを含む第2の強誘電体膜と、第2の強誘電体膜の上に形成された第2の導電膜よりなる上部電極とを備え、第1の導電膜は、エッチング加工が白金膜よりも容易な金属であり、第1の強誘電体膜に含まれるビスマスの濃度と第2の強誘電体膜に含まれるビスマスの濃度とは略等しいことを特徴とする。
第2の強誘電体容量素子によると、熱処理がなされた後の第1の強誘電体膜及び第2の強誘電体膜の全体におけるビスマス濃度が略等しいので、組成ずれがなく、強誘電体特性として十分な強誘電体膜を得ることができる。また、強誘電体膜の組成ずれを防止する目的で、従来例のように白金膜を用いることなく、白金膜よりもドライエッチング加工が容易な金属膜を用いているので、強誘電体容量素子の加工不具合の発生が防止されている。
本発明に係る第3の強誘電体容量素子は、基板上に形成された第1の導電膜よりなる下部電極と、下部電極の上に形成され、各々の層がビスマスを含んでなる多層構造を有する強誘電体膜と、強誘電体膜の上に形成された第2の導電膜よりなる上部電極とを備え、第1の導電膜は、エッチング加工が白金膜よりも容易な金属であり、強誘電体膜を構成する各々の層に含まれるビスマスの濃度は略等しいことを特徴とする。
第3の強誘電体容量素子によると、熱処理がなされた後の強誘電体膜の多層構造を構成する各層におけるビスマス濃度が略等しいので、組成ずれがなく、強誘電体特性として十分な強誘電体膜を得ることができる。また、強誘電体膜の組成ずれを防止する目的で、従来例のように白金膜を用いることなく、白金膜よりもドライエッチング加工が容易な金属膜を用いているので、強誘電体容量素子の加工不具合の発生が防止されている。
本発明に係る第4の強誘電体容量素子は、基板上に形成された第1の導電膜よりなる下部電極と、下部電極の上に形成されたSBT膜又はSBTN膜よりなる強誘電体膜と、強誘電体膜の上に形成された第2の導電膜よりなる上部電極とを備え、第1の導電膜は、エッチング加工が白金膜よりも容易な金属であり、強誘電体膜におけるビスマスの組成比は、化学量論的組成)におけるビスマスの組成比と略等しいことを特徴とする。
第4の強誘電体容量素子によると、熱処理がなされた後の強誘電体膜におけるビスマスの組成比は化学量論的組成におけるビスマスの組成比と略等しいので、組成ずれがなく、強誘電体特性として十分な強誘電体膜を得ることができる。また、強誘電体膜の組成ずれを防止する目的で、従来例のように白金膜を用いることなく、白金膜よりもドライエッチング加工が容易な金属膜を用いているので、強誘電体容量素子の加工不具合の発生が防止されている。
本発明に係る第1〜第4のいずれかの強誘電体容量素子において、第1の導電膜として、エッチング加工が白金膜よりも容易な貴金属酸化物、又は貴金属酸化物と貴金属との積層膜を用いることにより、強誘電体容量素子の加工不具合の発生を防止できる。
本発明に係る第1〜第4のいずれかの強誘電体容量素子において、第2の導電膜として、エッチング加工が白金膜よりも容易な貴金属酸化物、又は貴金属酸化物と貴金属との積層膜を用いることにより、強誘電体容量素子の加工不具合の発生を防止できる。さらに、第2の導電膜が貴金属酸化物と貴金属との積層膜である方がより好ましく、トランジスタの高速動作における動作遅延の問題を解消することができる。その理由は、第2の導電膜が貴金属酸化物と貴金属との積層膜よりなる場合には、金属酸化物単体よりなる場合に比べて、シート抵抗を1/10〜1/100に抑えることができるからである。
本発明に係る第5の強誘電体容量素子は、基板上に形成された下部電極と、下部電極の上に形成されたSBT膜又はSBTN膜よりなる強誘電体膜と、強誘電体膜の上に形成された上部電極とを備え、強誘電体膜と下部電極との間、及び強誘電体膜と上部電極との間のうち、少なくとも強誘電体膜と下部電極との間には、第V族の元素とビスマスとを含む層が介在している。
第5の強誘電体容量素子によると、強誘電体膜と下部電極及び上部電極との間に第V族の元素とビスマスとを含む層が介在しており、第V族の元素とビスマスとを含む層は、製造工程における強誘電体膜から拡散してくるビスマスを効率的に捕獲する役割を有する。このため、捕獲した層を分析することによって、強誘電体膜から拡散され抜け出るビスマスの量を予め把握することができるので、所望の組成を有する強誘電体膜を実現することができる。この点、第1〜第4の強誘電体容量素子では、強誘電体膜から拡散され抜け出るビスマスは、捕獲されることなく下部電極又は上部電極側に抜け出てしまうため、強誘電体膜から拡散され抜け出るビスマスの量を予測することは容易ではないので、強誘電体膜の組成の制御が不安定とならざるを得なかったが、本発明によれば、強誘電体膜の組成の制御をより精度良く行なうことができる。これにより、優れた強誘電体電気的特性を有する強誘電体容量素子を提供することができる。また、強誘電体膜の組成ずれを防止する目的で、従来例のように白金膜を用いることなく、白金膜よりもドライエッチング加工が容易な金属膜を下部電極及び上部電極として用いることができるので、強誘電体容量素子の加工不具合の発生を防止できる。
本発明に係る第5の強誘電体容量素子において、第V族の元素とビスマスとを含む層は、BiTa、BiPa、BiNb、BiTaOx、BiPaOx、又はBiNbOx よりなることが好ましい。
本発明に係る第5の強誘電体容量素子において、下部電極の上面層及び上部電極の下面層のうち、少なくとも下部電極の上面層は、第V族の元素を含む材料によって構成されていることが好ましい。
本発明に係る第5の強誘電体容量素子において、第V族の元素を含む材料は、IrTa、IrPa、IrNb、IrTaOx 、IrPaOx 、又はIrNbOx よりなることが好ましい。
本発明に係る第5の強誘電体容量素子において、強電体膜に含まれるビスマスの濃度は、強誘電体膜において略等しいものである。
本発明に係る強誘電体容量素子の製造方法によると、熱処理によって強誘電体膜から下部電極又は上部電極へビスマスが拡散した後に、強誘電体膜においてビスマス組成がほぼ均一になるように、強誘電体膜におけるビスマスの濃度を調整することにより、組成ずれが防止されて強誘電体特性として十分な強誘電体膜を得ることができる。また、強誘電体膜の組成ずれを防止する目的で、従来例のように白金膜を用いることなく、白金膜よりもドライエッチング加工が容易な金属膜を用いることができるので、ドライエッチング時のパーティクル発生等が起因となる強誘電体容量素子の加工不具合の発生を防止できる。さらに、強誘電体膜と下部電極又は上部電極との間に第V族の元素とビスマスとを含む層を形成するので、強誘電体膜から拡散してくるビスマスを効率的に捕獲することができる。このため、捕獲した層を分析することによって、強誘電体膜から拡散され抜け出るビスマスの量を予め把握することができるので、強誘電体膜の組成の制御をより効果的に行なうことができる。また、上部電極の形成後に熱処理を行なう場合には、半導体製造プロセスコストを低減することができる。これは、一般的に、半導体装置では半導体記憶装置のメモリー(記憶)部とロジック(論理)部との段差を合わせるための平坦化には、BPSG膜に対して熱処理を行なって平坦化フローする製造方法、又はBPSG膜に対して熱処理を行なって平坦化CMPする製造方法が用いられるが、このような製造方法において、上部電極の形成後に強誘電体膜に対して熱処理を行なうことにより、強誘電体膜の熱処理と前述のBPSG膜の熱処理とを同時に実施できる製造方法となるので、製造コストを低減することができるからである。
本発明に係る強誘電体容量素子によると、熱処理がなされた後の強誘電体膜におけるビスマス濃度が略等しいので、組成ずれがなく、強誘電体特性として十分な強誘電体膜を得ることができる。また、強誘電体膜の組成ずれを防止する目的で、従来例のように白金膜を用いることなく、白金膜よりもドライエッチング加工が容易な金属膜を用いているので、ドライエッチング時のパーティクル発生等が起因となる強誘電体容量素子の加工不具合の発生が防止されている。さらに、強誘電体膜と下部電極又は上部電極との間に第V族の元素とビスマスとを含む層が介在しているので、第V族の元素とビスマスとを含む層は強誘電体膜から拡散してくるビスマスを効率的に捕獲する役割を有する。このため、捕獲した層を分析することによって、強誘電体膜から拡散され抜け出るビスマスの量を予め把握することができるので、強誘電体膜の組成の制御をより効果的に行なうことができる。これにより、優れた強誘電体電気的特性を有する強誘電体容量素子を提供することができる。
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
以下に、本発明の第1の実施形態に係る強誘電体容量素子を含む半導体装置ついて、図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る強誘電体容量素子を含む半導体装置の構造を示す要部断面図である。
図1に示すように、単結晶シリコン等の半導体基板又は石英等の絶縁性基板等よりなる半導体基板1の上には、半導体記憶素子として機能を備えるためのMOS型トランジスタが形成されている(図示せず)。なお、半導体基板1の上には、多結晶シリコン膜、非晶質シリコン膜、SiO2 膜若しくは窒化シリコン膜等の半導体薄膜、アルミ配線層、又はCu配線層が形成されていてもよい。
半導体基板1の上には、貴金属酸化物、又は貴金属酸化物と貴金属との積層膜等のエッチング加工が白金膜よりも容易な金属よりなり且つ膜厚が75〜150nmである下部電極2が形成されている。ここで、貴金属酸化物としては、IrOx 、PdOx 、又はRhOx 等を用いることができ、貴金属酸化物と貴金属との積層膜としては、Ir/IrOx 、Pd/PdOx 、Rh/RhOx 等を用いることができる。下部電極2の上には、下から順にビスマスを含む第1の強誘電体膜3a及びビスマスを含む第2の強誘電体膜3bの積層構造を有する強誘電体容量絶縁膜3が形成されている。ここで、第2の強誘電体膜3bの膜厚は第1の強誘電体膜3aの膜厚よりも厚く、また、第1の強誘電体膜3aにおけるビスマスの濃度は第2の強誘電体膜におけるビスマスの濃度よりも高い。
また、第2の強誘電体膜3bの上には、貴金属酸化物、又は貴金属酸化物と貴金属との積層膜等のエッチング加工が白金膜よりも容易な金属よりなり膜厚が75〜150nmである上部電極4が形成されている。ここで、貴金属酸化物としては、IrOx 、PdOx 、又はRhOx 等を用いることができ、貴金属酸化物と貴金属との積層膜としては、Ir/IrOx 、Pd/PdOx 、Rh/RhOx 等を用いることができるが、好ましくは、上部電極4が貴金属酸化物と貴金属との積層膜であれば、トランジスタの高速動作における動作遅延の問題を解消することができる。なぜなら、上部電極4が貴金属酸化物と貴金属との積層膜よりなる場合には、金属酸化物単体よりなる場合に比べて、シート抵抗を1/10〜1/100に抑えることができるからである。このように、下部電極2、強誘電体容量絶縁膜3、及び上部電極4よりなる強誘電体容量素子が形成されている。
次に、本発明の第1の実施形態に係る強誘電体容量素子を含む半導体装置の製造方法について、図2(a) 〜(d) を参照しながら説明する。
図2(a) 〜(d) は、本発明の第1の実施形態に係る強誘電体容量素子を含む半導体装置の製造方法を示す要部工程断面図である。
まず、図2(a) に示すように、単結晶シリコン等の半導体基板又は石英等の絶縁性基板等よりなる半導体基板1の上に、半導体記憶素子として用いる目的で図示していないMOS型トランジスタを形成する。なお、半導体基板1の上に、多結晶シリコン膜、非晶質シリコン膜、SiO2 膜若しくは窒化シリコン膜等よりなる半導体薄膜、アルミ配線層、又はCu配線層を形成してもよい。次に、半導体基板1の上に、貴金属酸化物、又は貴金属酸化物と貴金属との積層膜等のエッチング加工が白金膜よりも容易な金属よりなり且つ膜厚が75〜150nmである下部電極2を形成する。ここで、貴金属酸化物としては、IrOx 、PdOx 、又はRhOx 等を用いることができ、貴金属酸化物と貴金属との積層膜としては、Ir/IrOx 、Pd/PdOx 、Rh/RhOx 等を用いることができる。
次に、図2(b) に示すように、MOCVD法、MOD法、又はスパッタ法等により、下部電極2の上に、膜厚が20〜80mである第1の強誘電体膜3aを形成する。第1の強誘電体膜3aを形成する際の第1の強誘電体膜3aの成長温度は室温から300℃までの範囲としている。また、通常のSBT膜であれば、各元素の組成比はほぼ化学量論的組成比であるストロンチウム(Sr):ビスマス(Bi):タンタル(Ta):酸素(O)=1:2:2:9であるところ、第1の強誘電体膜3aについては、第1の強誘電体膜3aにおけるビスマスの組成比が、前記化学量論的組成比におけるビスマスの組成比よりも高くなるように、第1の強誘電体膜3aにおけるビスマスの濃度を高くしている。具体的には、ストロンチウムに対するビスマスの組成濃度比は、1.1〜3.5倍にすることが望ましい。
次に、図2(c) に示すように、MOCVD法、MOD法、又はスパッタ法等により、第1の強誘電体膜3aの上に、膜厚が50〜180nmである第2の強誘電体薄膜3bを形成する。第2の強誘電体膜3bを形成する際の第2の強誘電体膜3aの成長温度は室温から300℃までの範囲としている。また、第2の強誘電体膜3bの組成比については、ほぼ化学量論的組成比率であるストロンチウム(Sr):ビスマス(Bi):タンタル(Ta):酸素(O)=1:2:2:9となるように形成している。
次に、拡散炉又はRTAを用いて、第1の強誘電体膜3a及び第2の強誘電体膜3bを焼結する。拡散炉を用いる場合には、600〜850℃の温度範囲で10〜30分間、RTAを用いる場合には、650℃〜900℃の温度範囲で20〜120秒間、それぞれO2 雰囲気下又はO3 雰囲気下で熱処理を施す。なお、ここで説明した熱処理は、前述の図2(b) に示した第1の強誘電体膜3aを形成した後、及び前述の図2(c) に示した第2の強誘電体膜3bを形成した後のそれぞれにおいて行なってもよい。このようにすると、第1の強誘電体膜3a及び第2の強誘電体膜3bの全体におけるビスマス組成をほぼ均一にすることが容易になり、強誘電体特性としてより十分な強誘電体膜3を得ることができる。
次に、図2(d) に示すように、スパッタ法等により、第2の強誘電体膜3bの上に、貴金属酸化物、又は貴金属酸化物と貴金属との積層膜等のエッチング加工が白金膜よりも容易な金属よりなり且つ膜厚が75〜150nmである上部電極4を形成する。ここで、貴金属酸化物としては、IrOx 、PdOx 、又はRhOx 等を用いることができ、貴金属酸化物と貴金属との積層膜としては、Ir/IrOx 、Pd/PdOx 、Rh/RhOx 等を用いることができるが、好ましくは、上部電極4が貴金属酸化物と貴金属との積層膜であれば、トランジスタの高速動作における動作遅延の問題を解消することができる。なぜなら、上部電極4が貴金属酸化物と貴金属との積層膜よりなる場合には、金属酸化物単体よりなる場合に比べて、シート抵抗を1/10〜1/100に抑えることができるからである。次に、ドライエッチングにより、下部電極2、第1の強誘電体膜3a及び第2の強誘電体膜3bよりなる強誘電体膜3、並びに上部電極4をパターニングすることにより、強誘電体容量素子を形成する。
このようにして、半導体装置を構成する強誘電体容量素子が形成される。
以下に、前述した本発明の第1の実施形態に係る強誘電体容量素子を含む半導体装置の構造及びその製造方法によると、強誘電体膜を構成する強誘電体複合物の熱処理による外方拡散を防止して強誘電体膜の組成ずれを防止できると共に、微細加工による不具合の発生を防止できる理由について説明する。
まず、強誘電体膜の熱処理時において、強誘電体膜を構成するビスマス元素が拡散しやすいことが実験結果により見い出された点について説明する。
図3(a) 及び(b) は、強誘電体膜がSBT膜よりなる場合に、熱処理後のSBT膜のEDS分析結果を示している。なお、図3(a) 及び(b) では、凹部に順に形成された下部電極、SBT膜、及び上部電極よりなる立体キャパシタに用いられたSBT膜を、EDS分析の対象としている。
図3(a) から明らかなように、ビスマス元素の界面は不鮮明である一方、図3(b) から明らかなように、タンタル元素の界面は、図3(a) に示されたビスマス元素の場合と比較して鮮明であることが見出された。このような差異が生じる原因は、熱処理により、ビスマス元素がSBT膜中から外方へ拡散しているからである。このように、ビスマス元素の外方拡散により、強誘電体分極特性が劣化する。
したがって、本実施形態に係る強誘電体膜3を構成する下側に位置する第1の強誘電体膜3aにおけるビスマスの濃度を第2の強誘電体膜3bにおけるビスマスの濃度よりも高くしておくことにより、熱処理によって第1の強誘電体膜3aから下部電極2へビスマス元素が拡散した後であっても、強誘電体分極特性が劣化することのない所望のSBT組成比を有する強誘電体膜3が得られる。
さらに、強誘電体膜3が前述の構造を有していれば、強誘電体膜3の組成ずれを防止する目的で、従来例のように、ドライエッチング加工が困難な白金膜を用いる必要がなくなる。このため、ドライエッチングの際に白金膜剥がれに起因した強誘電体容量素子の加工不具合の発生を防止することができる。すなわち、本実施形態では、下部電極2として、貴金属酸化物、又は貴金属酸化物と貴金属との積層膜等の白金よりもドライエッチング加工が容易な金属を用いることができるので、強誘電体容量素子の加工不具合を発生させることがない。しかも、この場合には、強誘電体膜3の組成ずれを防止するために白金膜を用いることなく、強誘電体膜3の組成ずれを防止できる。
図4は、本実施形態に係る強誘電体容量素子の加工不具合数と、従来例による強誘電体容量素子の加工不具合数との比較を示すグラフである。
なお、図4では、パターン欠陥検査装置(KLA−Tencor社製 KLA2139)を用いて検査した場合の加工不具合数を示しており、また、図4における従来例としては導電性セラミックス膜及び白金薄膜の積層構造パターンがドライエッチングされたウエハについて検査したものである。
図4から明らかなように、従来例によるドライエッチング後の強誘電体容量素子の加工不具合数は2044(個/8インチウエハ)であるが、本発明によるドライエッチング後の強誘電体容量素子の加工不具合数は10(個/8インチウエハ)であり、加工不具合数が大幅に減少していることが分かる。
図5は、本実施形態に係る熱処理後の強誘電体容量素子の分極特性を示すグラフである。
図5から明らかなように、強誘電体分極特性は15μC/cm2 を達成していることが分かる。つまり、本実施形態に係る熱処理後の強誘電体容量素子は、半導体装置用の強誘電体容量素子として十分な分極特性を有している。
以上のように、本発明に係る第1の実施形態によると、強誘電体膜3を構成する下側に位置する第1の強誘電体膜3aにおけるビスマスの濃度を第2の強誘電体膜3bにおけるビスマスの濃度よりも高くしているので、熱処理によって第1の強誘電体膜3aから下部電極2へビスマス元素が拡散した後であっても、第1の強誘電体膜3a及び第2の強誘電体膜3bの全体においてビスマス組成がほぼ均一になるので、強誘電体分極特性が劣化することのない所望のSBT組成比を有する強誘電体膜3が得られる。また、強誘電体膜3が前述の構造を有していれば、強誘電体膜3の組成ずれを防止する目的で白金膜を用いることなく、白金膜よりもドライエッチング加工が容易な金属膜を電極として用いることができるので、強誘電体素子の加工不具合の発生を防止できる。
なお、前述において、強誘電体膜3が、第1の強誘電体膜3a及び第2の強誘電体膜3bの2層よりなる構造を有する場合について説明したが、単層よりなる構造を有する場合であってもよい。この場合には、強誘電体膜の膜厚方向において、強誘電体膜におけるビスマスの濃度が下部電極側から上部電極側に向かって減少する傾斜勾配を有するように、強誘電体膜を形成すればよい。例えば、ビスマスを含むガスを流し続けながらビスマス量を調整すれば、ビスマスの濃度が下部電極側から上部電極側に向かって減少する傾斜勾配を有する強誘電体膜を形成できる。このようにすると、前述と同様の効果を得ることができると共に、よりきめ細かにビスマスの濃度の傾斜勾配を形成できるので、強誘電体膜におけるビスマス組成をほぼ均一にすることがより容易になり、強誘電体特性としてより十分な強誘電体膜を得ることができる。
また、強誘電体膜3が、各々の層がビスマスを含んでなる多層構造を有する場合であってもよい。この場合には、強誘電体膜を構成する各々の層を、該各々の層に含まれるビスマスの濃度が下部電極側から上部電極側に向かって徐々に減少するように形成すればよい。例えば、強誘電体膜を構成する各々の層毎に、所望のビスマス量を含むガスを流せば、各々の層に含まれるビスマスの濃度が下部電極側から上部電極側に向かって徐々に減少する強誘電体膜を形成できる。このようにすると、前述と同様の効果を得ることができると共に、よりきめ細かにビスマスの濃度の傾斜勾配を形成できるので、強誘電体膜におけるビスマス組成をほぼ均一にすることがより容易になり、強誘電体特性としてより十分な強誘電体膜を得ることができる。
また、本実施形態においては、強誘電体膜3としてSBT膜を用いた場合について説明したが、他のBi系層状ペブロスカイト型の強誘電体薄膜、例えば、SBTN膜、又はBLT膜等を用いた場合であっても同様の効果を得ることができる。
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態に係る強誘電体容量素子を含む半導体装置について、図6を参照しながら説明する。
図6は、本発明の第2の実施形態に係る強誘電体容量素子を含む半導体装置の構造を示す要部断面図である。
図6に示すように、単結晶シリコン等の半導体基板又は石英等の絶縁性基板等よりなる半導体基板10の上には、半導体記憶素子として機能を備えるためのMOS型トランジスタが形成されている(図示せず)。なお、半導体基板10の上には、多結晶シリコン膜、非晶質シリコン膜、SiO2 膜若しくは窒化シリコン膜等の半導体薄膜、アルミ配線層、又はCu配線層が形成されていてもよい。
半導体基板10の上には、貴金属酸化物、又は貴金属酸化物と貴金属との積層膜等のエッチング加工が白金膜よりも容易な金属よりなり且つ膜厚が75〜150nmである下部電極11が形成されている。ここで、貴金属酸化物としては、IrOx 、PdOx 、又はRhOx 等を用いることができ、貴金属酸化物と貴金属との積層膜としては、Ir/IrOx 、Pd/PdOx 、Rh/RhOx 等を用いることができる。
下部電極11の上には、ビスマス元素の濃度が高い濃度プロファイルを有する強誘電体膜12が形成されている。具体的には、強誘電体膜12に対する熱処理時にビスマスが外方拡散することを考慮して、熱処理後の強誘電体膜12の組成比がほぼ化学量論組成比であるSr:Bi:Ta:O=1:2:2:9となるように、強誘電体膜12におけるビスマスの組成比が化学量論的組成(Sr:Bi:Ta:O=1:2:2:9)におけるビスマスの組成比よりも大きく設定している。
強誘電体膜12の上には、貴金属酸化物、又は貴金属酸化物と貴金属との積層膜等のエッチング加工が白金膜よりも容易な金属よりなり膜厚が75〜150nmである上部電極13が形成されている。ここで、貴金属酸化物としては、IrOx 、PdOx 、又はRhOx 等を用いることができ、貴金属酸化物と貴金属との積層膜としては、Ir/IrOx 、Pd/PdOx 、Rh/RhOx 等を用いることができるが、好ましくは、上部電極13が貴金属酸化物と貴金属との積層膜であれば、トランジスタの高速動作における動作遅延の問題を解消することができる。なぜなら、上部電極13が貴金属酸化物と貴金属との積層膜よりなる場合には、金属酸化物単体よりなる場合に比べて、シート抵抗を1/10〜1/100に抑えることができるからである。このように、下部電極11、強誘電体容量絶縁膜12、及び上部電極13よりなる強誘電体容量素子が形成されている。
次に、本発明の第2の実施形態に係る強誘電体容量素子を含む半導体装置の製造方法について、図7(a) 〜(d) を参照しながら説明する。
図7(a) 〜(d) は、本発明の第2の実施形態に係る強誘電体容量素子を含む半導体装置の製造方法を示す要部工程断面図である。
まず、図7(a) に示すように、単結晶シリコン等の半導体基板又は石英等の絶縁性基板等よりなる半導体基板10の上に、半導体記憶素子として用いる目的で図示していないMOS型トランジスタを形成する。なお、半導体基板10の上に、多結晶シリコン膜、非晶質シリコン膜、SiO2 膜若しくは窒化シリコン膜等よりなる半導体薄膜、アルミ配線層、又はCu配線層を形成してもよい。次に、半導体基板10の上に、貴金属酸化物、又は貴金属酸化物と貴金属との積層膜等のエッチング加工が白金膜よりも容易な金属よりなり且つ膜厚が75〜150nmである下部電極11を形成する。ここで、貴金属酸化物としては、IrOx 、PdOx 、又はRhOx 等を用いることができ、貴金属酸化物と貴金属との積層膜としては、Ir/IrOx 、Pd/PdOx 、Rh/RhOx 等を用いることができる。
次に、図7(b) に示すように、MOCVD法、MOD法、又はスパッタ法等により、下部電極11の上に、膜厚が50〜150nmである強誘電体膜12を形成する。強誘電体膜12を形成する際の強誘電体膜12の成長温度は室温から300℃までの範囲としている。また、強誘電体膜12に対する熱処理時にビスマスが外方拡散することを考慮して、熱処理後の強誘電体膜12の組成比がほぼ化学量論組成比であるSr:Bi:Ta:O=1:2:2:9となるように、強誘電体膜12におけるビスマスの組成比が化学量論的組成(Sr:Bi:Ta:O=1:2:2:9)におけるビスマスの組成比よりも大きい強誘電体膜12を形成している。具体的には、ストロンチウムに対するビスマスの組成濃度比は、1.1〜3.5倍にすることが望ましい。
次に、図7(c) に示すように、拡散炉又はRTAを用いて、強誘電体膜12を焼結する。拡散炉を用いる場合には、600〜850℃の温度範囲で10〜30分間、RTAを用いる場合には、650℃〜900℃の温度範囲で20〜120秒間、それぞれO2 雰囲気下又はO3 雰囲気下で熱処理を施す。このとき、強誘電体膜12におけるビスマスは外方拡散するが、前述したように、強誘電体膜12におけるビスマスの組成比が化学量論的組成(Sr:Bi:Ta:O=1:2:2:9)におけるビスマスの組成比よりも大きい強誘電体膜12を形成しているので、本熱処理によって、強誘電体膜12の組成比は、ほぼ化学量論組成比であるSr:Bi:Ta:O=1:2:2:9となり、所望の組成比となる。
次に、図7(d) に示すように、スパッタ法等により、強誘電体膜12の上に、貴金属酸化物、又は貴金属酸化物と貴金属との積層膜等のエッチング加工が白金膜よりも容易な金属よりなり且つ膜厚が75〜150nmである上部電極13を形成する。ここで、貴金属酸化物としては、IrOx 、PdOx 、又はRhOx 等を用いることができ、貴金属酸化物と貴金属との積層膜としては、Ir/IrOx 、Pd/PdOx 、Rh/RhOx 等を用いることができるが、好ましくは、上部電極13が貴金属酸化物と貴金属との積層膜であれば、トランジスタの高速動作における動作遅延の問題を解消することができる。なぜなら、上部電極13が貴金属酸化物と貴金属との積層膜よりなる場合には、金属酸化物単体よりなる場合に比べて、シート抵抗を1/10〜1/100に抑えることができるからである。次に、ドライエッチングにより、下部電極11、強誘電体膜12、及び上部電極13をパターニングすることにより、強誘電体容量素子を形成する。
図8は、本実施形態に係る熱処理後の強誘電体容量素子の分極特性を示すグラフである。
図8から明らかなように、強誘電体分極特性は14μC/cm2 を達成していることが分かる。つまり、本実施形態に係る熱処理後の強誘電体容量素子は、半導体装置用の強誘電体容量素子として十分な分極特性を有している。
以上のように、本発明に係る第2の実施形態によると、熱処理後の強誘電体膜12の組成比がほぼ化学量論組成比(Sr:Bi:Ta:O=1:2:2:9)となるように、予め、強誘電体膜12におけるビスマスの組成比を化学量論的組成(Sr:Bi:Ta:O=1:2:2:9)におけるビスマスの組成比よりも大きくしている。このため、熱処理によって強誘電体膜12から下部電極11へビスマス元素が拡散した後であっても、強誘電体膜12においてビスマス組成がほぼ均一になるので、強誘電体分極特性が劣化することのない所望のSBT組成比を有する強誘電体膜12が得られる。また、強誘電体膜12が前述の構造を有していれば、強誘電体膜12の組成ずれを防止する目的で白金膜を用いることなく、白金膜よりもドライエッチング加工が容易な金属膜を電極として用いることができるので、強誘電体素子の加工不具合の発生を防止できる。
また、本実施形態においては、強誘電体膜12としてSBT膜を用いた場合について説明したが、他のBi系層状ペブロスカイト型の強誘電体薄膜、例えば、SBTN膜、又はBLT膜等を用いた場合であっても同様の効果を得ることができる。
(第3の実施形態)
以下に、本発明の第3の実施形態に係る強誘電体容量素子を含む半導体装置について、図9を参照しながら説明する。
図9は、本発明の第3の実施形態に係る強誘電体容量素子の構造を示す要部断面図である。
図9に示すように、単結晶シリコン等の半導体基板又は石英等の絶縁性基板等よりなる半導体基板(図示せず)の上に、下部電極21が形成されている。ここで、下部電極21を構成する材料中には第V族の元素が含まれており、下部電極21は、例えば、IrTa、IrPa、IrNb、IrTaOx 、IrPaOx 、又はIrNbOx よりなる。また、下部電極21の膜厚は100〜500nmであることが好ましく、前記の第V族の元素を含む材料は、下部電極21の表層50〜100nmのみを構成する場合であってもよい。なお、半導体基板の上には、半導体記憶素子として機能を備えるためのMOS型トランジスタが形成されており、また、半導体基板の上には、多結晶シリコン膜、非晶質シリコン膜、SiO2 膜若しくは窒化シリコン膜等の半導体薄膜、アルミ配線層、又はCu配線層が形成されていてもよい。
また、下部電極21の上には、第V族の元素とビスマスとを含む層22が形成されている。第V族の元素とビスマスとを含む層22は、BiTa、BiPa、BiNb、BiTaOx 、BiPaOx 、又はBiNbOx よりなる。
また、第V族の元素とビスマスとを含む層22の上には、SBT膜又はSBTN膜よりなる強誘電体膜23が形成されている。
また、強誘電体膜23の上には、上部電極24が形成され、その材料としては、一般的によく用いられる白金膜であっても構わない。
次に、本発明の第3の実施形態に係る強誘電体容量素子を含む半導体装置の製造方法について、図10(a) 〜(d) を参照しながら説明する。
図10(a) 〜(d) は,本発明の第3の実施形態に係る強誘電体容量素子の製造方法を示す要部工程断面図である。
まず、図10(a) に示すように,半導体基板(図示せず)の上に、下部電極21を形成する。ここで、下部電極21を構成する材料中には第V族の元素が含まれており、下部電極21は、例えば、IrTa、IrPa、IrNb、IrTaOx 、IrPaOx 、又はIrNbOx よりなる。また、下部電極21の膜厚は100〜500nmであることが好ましく、前記の第V族の元素を含む材料は、下部電極21の表層50〜100nmのみを構成する場合であってもよい。なお、半導体基板の上には、半導体記憶素子として機能を備えるためのMOS型トランジスタが形成されており、また、半導体基板の上には、多結晶シリコン膜、非晶質シリコン膜、SiO2 膜若しくは窒化シリコン膜等の半導体薄膜、アルミ配線層、又はCu配線層が形成されていてもよい。
次に、MOCVD法、MOD法又はスパッタ法等を用いて、下部電極21の上に、強誘電体膜23を形成する。ここで、通常のSBT膜であれば、各元素の組成比はほぼ化学量論的組成比であるストロンチウム(Sr):ビスマス(Bi):タンタル(Ta):酸素(O)=1:2:2:9であるところ、強誘電体膜23の組成比については、強誘電体膜23におけるビスマスの組成比が、前記化学量論的組成比におけるビスマスの組成比よりも高くなるように、強誘電体膜23におけるビスマスの濃度を高くしている。具体的には、ストロンチウムに対するビスマスの組成濃度比は、1.1〜3.5倍にすることが望ましい。このようにすると、熱処理によって強誘電体膜23から下部電極21へビスマスが拡散した後には、強誘電体膜23においてビスマス組成がほぼ均一になるので、組成ずれが防止されて強誘電体特性として十分な強誘電体膜23を得ることができる。また、強誘電体膜23の組成ずれを防止する目的で、従来例のように白金膜を用いることなく、白金膜よりもドライエッチング加工が容易な金属膜を電極として用いることができるので、強誘電体容量素子の加工不具合の発生を防止できる。
また、熱処理前の強誘電体膜23の構造として、下部電極21側から第1及び第2の強誘電体膜が下から順に積層され、第1の強誘電体膜におけるビスマスの濃度を第2の強誘電体膜におけるビスマスの濃度よりも高くする構造であってもよい。このようにすると、後述する熱処理によって第1の強誘電体膜から下部電極21へビスマスが拡散した後には、第1の強誘電体膜及び第2の強誘電体膜の全体においてビスマス組成がほぼ均一になるので、組成ずれが防止されて強誘電体特性として十分な強誘電体膜23を得ることができる。また、強誘電体膜23の組成ずれを防止する目的で、従来例のように白金膜を用いることなく、白金膜よりもドライエッチング加工が容易な金属膜を電極として用いることができるので、強誘電体容量素子の加工不具合の発生を防止できる。
また、熱処理前の強誘電体膜23の構造として、単層よりなる構造を有する場合であってもよい。この場合には、強誘電体膜23の膜厚方向において、強誘電体膜23におけるビスマスの濃度が下部電極21側から後述する上部電極24側に向かって減少する傾斜勾配を有するように、強誘電体膜23を形成すればよい。例えば、ビスマスを含むガスを流し続けながらビスマス量を調整すれば、ビスマスの濃度が下部電極21側から上部電極24側に向かって減少する傾斜勾配を有する強誘電体膜23を形成できる。このようにすると、前述と同様の効果を得ることができると共に、よりきめ細かにビスマスの濃度の傾斜勾配を形成できるので、強誘電体膜23におけるビスマス組成をほぼ均一にすることがより容易になり、強誘電体特性としてより十分な強誘電体膜23を得ることができる。
また、熱処理前の強誘電体膜23の構造として、各々の層がビスマスを含んでなる多層構造よりなり、この各々の層を、該各々の層に含まれるビスマスの濃度が下部電極21側から後述する上部電極24側に向かって減少する傾斜勾配を有するような構造であってもよい。このようにすると、前述と同様の効果を得ることができると共に、よりきめ細かにビスマスの濃度の傾斜勾配を形成できるので、強誘電体膜23におけるビスマス組成をほぼ均一にすることがより容易になり、強誘電体特性としてより十分な強誘電体膜23を得ることができる。また、強誘電体膜23の組成ずれを防止する目的で、従来例のように白金膜を用いることなく、白金膜よりもドライエッチング加工が容易な金属膜を電極として用いることができるので、強誘電体容量素子の加工不具合の発生を防止できる。
次に、図10(b) に示すように、強誘電体膜23に対して熱処理を加える。ここでは、熱処理は、O3 雰囲気下、800℃の温度にて1〜30分間行なう。この熱処理により、強誘電体膜23中のビスマスが拡散する。ここで、下部電極21は第V族の元素を含む材料よりなるので、熱処理によって強誘電体膜23としてのSBT膜又はSBTN膜からのビスマスの拡散を促進させると共に、本工程の熱処理中に、強誘電体膜23から拡散されるビスマスと下部電極21における第V族の元素とが化学反応することにより、図10(c) に示すように、強誘電体膜23と下部電極21との間に、第V族の元素とビスマスとを含む層22を容易に形成することができる。このように、強誘電体膜23と下部電極21との間に、第V族の元素とビスマスとを含む層22が形成されるので、強誘電体膜23から拡散してくるビスマスを効率的に捕獲することができる。このため、捕獲した層を分析することによって、強誘電体膜23から拡散され抜け出るビスマスの量を予め把握することができるので、強誘電体膜23の組成の制御をより効果的に行なうことができる。すなわち、前述の第1及び第2の実施形態では、強誘電体膜から拡散され抜け出るビスマスは、捕獲されることなく下部電極側に抜け出てしまうため、強誘電体膜から拡散され抜け出るビスマスの量を予測することは容易ではないので、強誘電体膜の組成の制御が不安定とならざるを得なかったが、本実施形態であれば、強誘電体膜23の組成の制御をより精度良く行なうことができる。これにより、強誘電体電気的特性をより向上させることができる。また、下部電極21は、第V族の元素を含む材料よりなるので、熱処理によって強誘電体膜23からのビスマスの拡散を促進させることができるので、より短い熱処理時間で、強誘電体膜23の全体におけるビスマスの組成をほぼ均一にすることが容易になると共に強誘電体膜23の組成の制御を精度良く行なうことができる。これにより、強誘電体特性としてより十分な強誘電体膜23を得ることができる。
次に、図10(c) に示すように、強誘電体膜23の上に、上部電極24を形成する。なお、上部電極24の材料としては、一般的によく用いられる白金膜であっても構わない。
ここで、本実施形態における熱処理後の強誘電体容量素子の分極特性について、図11を参照しながら説明する。
図11から明らかなように、強誘電体特性は、約17μC/cm2 を実現していることが分かる。このように、本実施形態に係る熱処理後の強誘電体容量素子は、半導体に用いられる容量素子として十分な分極特性を保持していることが分かる。
なお、本第3の本実施形態では、強誘電体膜23としてSBT膜又はSBTN膜を用いた場合について説明したが、他のBi系層状ペロブスカイト型の強誘電体膜、例えばBLT膜等を用いた場合であっても同様の効果を得ることができる。なお、この場合は、下部電極には、第IV族の元素を含んでいることが好ましく、強誘電体膜と下部電極との間には、第IV族の元素とLaとを含む層が形成される。
(第4の実施形態)
以下に、本発明の第4の実施形態に係る強誘電体容量素子を含む半導体装置について、図12を参照しながら説明する。
図12は、本発明の第4の実施形態に係る強誘電体容量素子の構造を示す要部断面図である。
図12に示すように、半導体基板(図示せず)の上に、下部電極31が形成されている。ここで、下部電極31を構成する材料中には第V族の元素が含まれており、下部電極31は、例えば、IrTa、IrPa、IrNb、IrTaOx 、IrPaOx 、又はIrNbOx よりなる。また、下部電極31の膜厚は100〜500nmであることが好ましく、前記の第V族の元素を含む材料は、下部電極31の表層50〜100nmのみを構成する場合であってもよい。なお、半導体基板の上には、半導体記憶素子として機能を備えるためのMOS型トランジスタが形成されており、また、半導体基板の上には、多結晶シリコン膜、非晶質シリコン膜、SiO2 膜若しくは窒化シリコン膜等の半導体薄膜、アルミ配線層、又はCu配線層が形成されていてもよい。
また、下部電極31の上には、第V族の元素とビスマスとを含む層32が形成されている。第V族の元素とビスマスとを含む層32は、BiTa、BiPa、BiNb、BiTaOx 、BiPaOx 、又はBiNbOx よりなる。
また、第V族の元素とビスマスとを含む層32の上には、SBT膜又はSBTN膜よりなる強誘電体膜33が形成されている。なお、図示していないが、強誘電体膜33の上には、上部電極が形成され、その材料としては、一般的によく用いられる白金膜であっても構わない。
また、強誘電体膜33の上には、第V族の元素とビスマスとを含む層34が形成されている。第V族の元素とビスマスとを含む層34は、BiTa、BiPa、BiNb、BiTaOx 、BiPaOx 、又はBiNbOx よりなる。
また、第V族とビスマスとを含む層34の上には、上部電極35が形成されている。ここで、下部電極35を構成する材料中には第V族の元素が含まれており、下部電極35は、例えば、IrTa、IrPa、IrNb、IrTaOx 、IrPaOx 、又はIrNbOx よりなる。また、下部電極35の膜厚は100〜500nmであることが好ましく、前記の第V族の元素を含む材料は、下部電極35の下層50〜100nmのみを構成する場合であってもよい。
次に、本発明の第4の実施形態に係る強誘電体容量素子を含む半導体装置の製造方法について、図13(a) 〜(d) を参照しながら説明する。
図13(a) 〜(d) は、本発明の第4の実施形態に係る強誘電体容量素子の製造方法を示す要部工程断面図である。
まず、図13(a) に示すように、半導体基板(図示せず)の上に、下部電極31を形成する。ここで、下部電極31を構成する材料中には第V族の元素が含まれており、下部電極31は、例えば、IrTa、IrPa、IrNb、IrTaOx 、IrPaOx 、又はIrNbOx よりなる。また、下部電極31の膜厚は100〜500nmであることが好ましく、前記の第V族の元素を含む材料は、下部電極31の表層50〜100nmのみを構成する場合であってもよい。
次に、MOCVD法、MOD法又はスパッタ法等を用いて、下部電極31の上に、強誘電体膜33を形成する。ここで、通常のSBT膜であれば、各元素の組成比はほぼ化学量論的組成比であるストロンチウム(Sr):ビスマス(Bi):タンタル(Ta):酸素(O)=1:2:2:9であるところ、強誘電体膜33の組成比については、強誘電体膜33におけるビスマスの組成比が、前記化学量論的組成比におけるビスマスの組成比よりも高くなるように、強誘電体膜33におけるビスマスの濃度を高くしている。具体的には、ストロンチウムに対するビスマスの組成濃度比は、1.1〜3.5倍にすることが望ましい。このようにすると、熱処理によって強誘電体膜33から下部電極31及び上部電極35へビスマスが拡散した後には、強誘電体膜33においてビスマス組成がほぼ均一になるので、組成ずれが防止されて強誘電体特性として十分な強誘電体膜33を得ることができる。また、強誘電体膜33の組成ずれを防止する目的で、従来例のように白金膜を用いることなく、白金膜よりもドライエッチング加工が容易な金属膜を電極として用いることができるので、強誘電体容量素子の加工不具合の発生を防止できる。
また、熱処理前の強誘電体膜33の構造として、下部電極31側から第1、第2及び第3の強誘電体膜が下から順に積層され、第1及び第3の強誘電体膜における各々のビスマスの濃度を第2の強誘電体膜におけるビスマスの濃度よりも高くする構造であってもよい。すなわち、下部電極31又は後述する上部電極35と接する側の膜におけるビスマスの濃度が、間に挟まれた膜におけるビスマスの濃度よりも高くなっている構造であればよい。このようにすると、後述する熱処理によって第1の強誘電体膜33から下部電極31又は上部電極35へビスマスが拡散した後には、第1、第2及び第3の強誘電体膜の全体においてビスマス組成がほぼ均一になるので、組成ずれが防止されて強誘電体特性として十分な強誘電体膜33を得ることができる。また、強誘電体膜33の組成ずれを防止する目的で、従来例のように白金膜を用いることなく、白金膜よりもドライエッチング加工が容易な金属膜を電極として用いることができるので、強誘電体容量素子の加工不具合の発生を防止できる。
また、熱処理前の強誘電体膜33の構造として、単層よりなる構造を有する場合であってもよい。この場合には、強誘電体膜33の膜厚方向において、強誘電体膜33におけるビスマスの濃度が下部電極31側から後述する上部電極35側に向かって減少する傾斜勾配を有するように、強誘電体膜33を形成すればよい。例えば、ビスマスを含むガスを流し続けながらビスマス量を調整すれば、ビスマスの濃度が下部電極31側から上部電極35側に向かって減少する傾斜勾配を有する強誘電体膜33を形成できる。このようにすると、前述と同様の効果を得ることができると共に、よりきめ細かにビスマスの濃度の傾斜勾配を形成できるので、強誘電体膜33におけるビスマス組成をほぼ均一にすることがより容易になり、強誘電体特性としてより十分な強誘電体膜33を得ることができる。
また、熱処理前の強誘電体膜33の構造として、各々の層がビスマスを含んでなる上記3層よりも多い多層構造よりなり、この各々の層を、該各々の層に含まれるビスマスの濃度が下部電極31側から後述する上部電極35側に向かって減少する傾斜勾配を有するような構造であってもよい。このようにすると、前述と同様の効果を得ることができると共に、よりきめ細かにビスマスの濃度の傾斜勾配を形成できるので、強誘電体膜33におけるビスマス組成をほぼ均一にすることがより容易になり、強誘電体特性としてより十分な強誘電体膜33を得ることができる。また、強誘電体膜33の組成ずれを防止する目的で、従来例のように白金膜を用いることなく、白金膜よりもドライエッチング加工が容易な金属膜を電極として用いることができるので、強誘電体容量素子の加工不具合の発生を防止できる。
次に、図13(b) に示すように、強誘電体膜33の上に、上部電極35を形成する。ここで、下部電極31を構成する材料中には第V族の元素が含まれており、上部電極31は、例えば、IrTa、IrPa、IrNb、IrTaOx 、IrPaOx 、又はIrNbOx よりなる。また、上部電極31の膜厚は100〜500nmであることが好ましく、前記の第V族の元素を含む材料は、上部電極31の表層50〜100nmのみを構成する場合であってもよい。
次に、図13(c) に示すように、強誘電体膜33に対して熱処理を加える。ここでは、熱処理は、O3 雰囲気下、800℃の温度にて1〜30分間行なう。この熱処理により、図13(c) に示すように、強誘電体膜33中のビスマスが拡散する。ここで、下部電極31及び上部電極35は第V族の元素を含む材料よりなるので、熱処理によって強誘電体膜33としてのSBT膜又はSBTN膜からのビスマスの拡散を促進させると共に、本工程の熱処理中に、強誘電体膜33から拡散されるビスマスと下部電極31及び上部電極35における第V族の元素とが化学反応することにより、図13(d) に示すように、強誘電体膜33と下部電極31との間に第V族の元素とビスマスとを含む層32を容易に形成すると共に、強誘電体膜33と上部電極35との間に第V族の元素とビスマスとを含む層34を容易に形成することができる。このように、第V族の元素とビスマスとを含む層32、34が形成されるので、強誘電体膜33から拡散してくるビスマスを効率的に捕獲することができる。このため、捕獲した層を分析することによって、強誘電体膜33から拡散され抜け出るビスマスの量を予測することができるので、強誘電体膜33の組成の制御をより効果的に行なうことができる。すなわち、前述の第1及び第2の実施形態では、強誘電体膜から拡散され抜け出るビスマスは、捕獲されることなく下部電極又は上部電極側に抜け出てしまうため、強誘電体膜から拡散され抜け出るビスマスの量を予測することは容易ではないので、強誘電体膜の組成の制御が不安定とならざるを得なかったが、本実施形態であれば、強誘電体膜33の組成の制御をより精度良く行なうことができる。これにより、強誘電体電気的特性をより向上させることができる。また、下部電極31及び上部電極35は、第V族の元素を含む材料よりなるので、熱処理によって強誘電体膜33からのビスマスの拡散を促進させることができるので、より短い熱処理時間で、強誘電体膜33の全体におけるビスマスの組成をほぼ均一にすることが容易になると共に強誘電体膜33の組成の制御を精度良く行なうことができる。これにより、強誘電体特性としてより十分な強誘電体膜33を得ることができる。
また、前述のように、第4の実施形態では、第3の実施形態とは異なり、上部電極35を形成した後に熱処理を行なうことが特徴となっている。このため、半導体製造プロセスコストを低減することができる。これは、一般的に、半導体装置では半導体記憶装置のメモリー(記憶)部とロジック(論理)部との段差を合わせるための平坦化には、BPSG膜に対して熱処理を行なって平坦化フローする製造方法、又はBPSG膜に対して熱処理を行なって平坦化CMPする製造方法が用いられる。このような製造方法において、上部電極35の形成後に強誘電体膜33に対して熱処理を行なうことにより、強誘電体膜33の熱処理と前述のBPSG膜の熱処理とを同時に実施できる製造方法となるので、製造コストを低減することができる。
なお、前述した第4の本実施形態では、強誘電体膜33としてSBT膜又はSBTN膜を用いた場合について説明したが、他のBi系層状ペロブスカイト型の強誘電体膜、例えばBLT膜等を用いた場合であっても同様の効果を得ることができる。なお、この場合は、下部電極及び上部電極には、第IV族の元素を含んでいることが好ましく、強誘電体膜と下部電極及び上部電極との間には、第IV族の元素とLaとを含む層が形成される。