JP4383035B2 - ヒアルロン酸ゲル及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒアルロン酸ゲル、及びその製造方法、用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒアルロン酸は、ヒトの関節液、硝子体などに分布する水溶性の高分子多糖である。関節液、硝子体の有する高い粘弾性は、これら組織中のヒアルロン酸の200万以上といわれる高い分子量に起因している。ヒアルロン酸は優れた生体適合性を有しており、この性質を利用して膝関節の治療剤、眼科手術補助剤などが開発されている。
このヒアルロン酸の優れた生体適合性を医用材料として応用するため、その短所とも言える比較的短いヒアルロン酸の生体内での滞留時間を延ばす検討がなされてきた。例えば、ヒアルロン酸を化学修飾する多様なゲル化の検討がされてきた(例えば、特許文献1〜5参照。)。
【0003】
【特許文献1】
米国特許第4,582,865号
【特許文献2】
特公平6−37575号
【特許文献3】
特開平7−97401号
【特許文献4】
特開昭60−130601号
【特許文献5】
特開平3−105003号
【0004】
しかし、ヒアルロン酸はゲル化反応中に、比較的、簡単に低分子化してしまう傾向が大きかった。従って得られたヒアルロン酸ゲルを生体中に投与しても、必要以上に長く残存したり、逆に早く消失する傾向があった。また低分子化したヒアルロン酸ゲルの場合、高分子量のヒアルロン酸に特徴的な粘弾性などの多くの物性が期待できなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、生分解性の医用材料としての、ヒアルロン酸ゲルの性能向上を目的に、高分子量かつ低架橋度のヒアルロン酸ゲルの調整を鋭意検討してきた。
その結果、ヒアルロン酸ゲル調整時に、ヒアルロン酸の分子量と濃度を高く維持することが反応条件として重要であることを見出し、それを工業的に簡便に可能にする方法を考案した。
さらに、得られたこの高分子量かつ低架橋度のヒアルロン酸ゲルの生分解性の挙動が、初期は時間あたりの溶解量が小さく、時間とともにその溶解量が加速度的に大きくなるため、生体内に投与する場合、必要な時間貯留し、一定時間後、消失する、生分解性の医用材料として極めて優れた性質を有することを見い出した。
【0006】
高分子量かつ低架橋度のヒアルロン酸ゲル調整には、反応時に、ヒアルロン酸の分子量と濃度を高く維持することが重要である。しかし、ヒアルロン酸濃度は、ヒアルロン酸の濃度の上昇とともに著しく粘性が高くなるため工業的な観点から均一溶液を得ることが難しかった。
例えば、分子量200万のヒアルロン酸水溶液の場合、粘性の著しい上昇により、ヒアルロン酸濃度3質量%以上の均一な水溶液を得るのは難かった。
【0007】
また、酸溶液に固体ヒアルロン酸を練り込む方法も、高濃度の酸を用いる必要から、ヒアルロン酸が低分子化してしまうためヒアルロン酸濃度の限界があった。
またヒアルロン酸は非常に吸湿性が高いため、ヒアルロン酸と酸との混合時にヒアルロン酸がダマをつくって均一な混合物を得ることが難しかった。
例えば分子量200万のヒアルロン酸の場合、ヒアルロン酸濃度10質量%以上、特に20質量%以上では均一なヒアルロン酸と酸の混合物を得ることが難しく、高濃度の酸との混合する過程で、時間がかかるためヒアルロン酸が加水分解し、一次分子量が大きく下がってしまい、ゲル化が困難だった。
【0008】
本発明者らは、ヒアルロン酸ゲル調整時の、ヒアルロン酸の分子量と濃度を高く維持することを、鋭意検討し、その結果、酸溶液の部分凍結物と、固体ヒアルロン酸を冷却しながら混和することで、ヒアルロン酸の加水分解を防ぎ、かつヒアルロン酸が高濃度でもダマをつくらない均一なヒアルロン酸と酸の混合物が容易に得られることを見出した。
【0009】
すなわち、ヒアルロン酸ゲル調整時に、酸溶液の部分凍結物を用い、さらにヒアルロン酸との混和時も冷却することで、調整時の酸によるヒアルロン酸の一次分子量の低下を防ぎ、ヒアルロン酸ゲルの分子量を高く維持し、かつ、ヒアルロン酸濃度を高くすることができることを見出した。そして工業的に最も簡便に、一次分子量が高く、かつ低架橋度のヒアルロン酸ゲルが、得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、(1) 酸溶液を部分的に凍結し細粒状、シャーベット状、破砕状にした部分凍結物と、ヒアルロン酸を、0〜−20℃に冷却しながら均一になるまで練り混ぜ混和することを特徴とするヒアルロン酸ゲルの製造方法、(2) (1)記載の部分凍結物の量が、ヒアルロン酸のカルボキシル基と等モル以上であることを特徴とするヒアルロン酸ゲルの製造方法、(3) (1)記載の混和物を中和処理前に熟成温度−30℃〜0℃で保持することを特徴とするヒアルロン酸ゲルの製造方法、(4) (1)記載の混和物に含有されるヒアルロン酸の濃度が、10質量%以上であることを特徴とするヒアルロン酸ゲルの製造方法、(5) (1)記載の混合物を、圧縮し成形することを特徴とするヒアルロン酸ゲルの製造方法、(6) (1)〜(5)のいずれか1項記載の製造方法によって製造されたヒアルロン酸ゲルが、一次平均分子量が80万より大きいヒアルロン酸から形成されたことを特徴とするヒアルロン酸ゲル、(7) 中性水溶液に溶解する際、一次平均分子量が80万より大きいヒアルロン酸が溶解してくることを特徴とする(6)記載のヒアルロン酸ゲル、(8) 初期は時間あたりの溶解量が小さく、時間とともにその溶解量が加速度的に大きくなることを特徴とする(7)記載のヒアルロン酸ゲル、(9) ヒアルロン酸ゲルを構成するヒアルロン酸の分子間の架橋度が1%未満であることを特徴とする(6)〜(8)のいずれか1項記載のヒアルロン酸ゲル、(10) (1)〜(9)のいずれか1項記載のヒアルロン酸ゲルを含有することを特徴とする医用材料、(11) 医用材料が関節症治療用注入剤であることを特徴とする(10)記載の医用材料である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるヒアルロン酸は、動物組織から抽出したものでも、また発酵法で製造したものでもその起源を問うことなく使用できる。
本発明に用いられるヒアルロン酸の分子量は、約8×105 〜約1×107 ダルトンの範囲内のものが好ましい。上記範囲内でも特に高分子量のものほどヒアルロン酸ゲルが短い反応時間で得やすい。一方、上記範囲内より低い分子量をもつものではヒアルロン酸ゲルを得ることは難しい。
なお、本発明にいうヒアルロン酸は、そのアルカリ金属塩、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウムの塩をも包含する概念で使用される。
【0012】
本発明で言う一次平均分子量が80万より大きいヒアルロン酸から形成されたことをヒアルロン酸ゲルとは、ヒアルロン酸ゲルの架橋点をアルカリ性水溶液中、例えばpH11のアルカリ性緩衝水溶液中に投入するなどして切断すれば、一次平均分子量が80万より大きいヒアルロン酸が生成することを意味する。従ってヒアルロン酸ゲル製造の原料として一次平均分子量がどんなに大きいものを使用しようとも、製造時の反応条件などにより一次平均分子量が80万より低下したヒアルロン酸ゲルは本発明の範囲外である。
本発明で言うヒアルロン酸ゲルの一次平均分子量を測る方法には、ゲルパーミエションクロマトグラム(GPC)に検出器として示差屈折率計と多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)を使うGPC−MALLS法、GPCに検出器として示差屈折率計と低角度レーザー光散乱検出器を使うGPC−LALLS法、あるいは、GPCに検出器として示差屈折率計と粘度計を使うGPC−粘度法がある。
【0013】
本発明で言う酸成分は、ヒアルロン酸より強い酸であれば、いずれの酸も使用することができる。酸溶液の部分凍結物とヒアルロン酸固体の混合物のヒアルロン酸濃度を上げるため酸の使用量を低減するには、好ましくは強酸、例えば、塩酸、硝酸、硫酸等の水溶液を使用することが望ましい。
【0014】
本発明の酸性に調製するため用いる酸成分の量及び濃度は、ヒアルロン酸塩の対イオンの種類、ヒアルロン酸の分子量、ヒアルロン酸濃度、並びに生成するゲルの強さ等の諸特性により適宜決められるが、一般にはヒアルロン酸のカルボキシル基と等モル以上の酸成分の量及び濃度が好ましい。
【0015】
本発明で言う酸溶液の部分凍結物とは、上記の酸溶液を低温で部分凍結したものを意味する。凍結物の形状はヒアルロン酸固体と均一に混合するため細粒状が好ましく、例えばシャーベット状や破砕状であるものが好適である。例えば2N硝酸溶液を用いる場合、約−20℃冷却するとシャーベット状になった部分凍結物が得られる。
【0016】
本発明で言う酸溶液の部分凍結物とヒアルロン酸固体の混合とは、均一に酸溶液の部分凍結物とヒアルロン酸固体を練り混ぜることを意味する。例えば2N硝酸を−20℃冷却しシャーベット状になった部分凍結物にヒアルロン酸固体を投入し、均一になるまで練り混ぜることにより簡便に均一なヒアルロン酸と酸との混合物を得ることができる。なお混合時の温度については、ヒアルロン酸の低分子化と、酸溶液の部分凍結物の融解を抑えるために、0〜−20℃に冷却することが必要である。
【0017】
本発明で言うヒアルロン酸ゲルとは、中性水溶液に難溶性であることを特徴とし、このヒアルロン酸ゲルを中性水溶液中に投入すると、ゲル化していないヒアルロン酸と比較して有意に難溶性を示す。難溶性は、中性の25℃の水溶液中でのゲルの溶解率で規定する。ここで、中性水溶液とは、pH7に調整された緩衝能を有する生理的食塩水である。
【0018】
本発明でいうヒアルロン酸ゲルとは、三次元網目構造をもつ高分子及びその膨潤体である。三次元網目構造はヒアルロン酸の架橋構造によって形成されている。
【0019】
本発明でいうヒアルロン酸ゲルは、ヒアルロン酸の促進酸加水分解反応条件下でヒアルロン酸ゲルを処理することで分解、可溶化することができる。可溶化されたヒアルロン酸が架橋構造を保持している場合、分岐点を有するヒアルロン酸として高分子溶液論的に直鎖状のヒアルロン酸と区別することができる。ヒアルロン酸自体は直鎖状の高分子であり、分岐構造を有さないことが知られている(多糖生化学1 化学編 共立出版 昭和44年)。
【0020】
本発明でいうヒアルロン酸ゲル中に、ヒアルロン酸の促進酸加水分解条件下でも安定に存在する架橋構造がある場合、可溶化されたヒアルロン酸に分岐構造が高分子溶液論的に確認される
可溶化されたヒアルロン酸の分子量と分岐度を測定する方法には、ゲルパーミエションクロマトグラム(GPC)に検出器として示差屈折率計と多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)を使うGPC−MALLS法がある。
【0021】
本発明で得られるヒアルロン酸ゲルは、ヒアルロン酸単独で形成される。ここでいうヒアルロン酸単独とは、ヒアルロン酸以外に化学的架橋剤や化学的修飾剤等を使用しないこと、また、カチオン性の高分子と複合体化しないことを意味するものである。
【0022】
一方、ヒアルロン酸への架橋構造の導入やヒアルロン酸の不溶化、難溶化に直接関係しない物質を、本発明でいうヒアルロン酸ゲルを形成させる際に添加することはできる。ヒアルロン酸と同様に生体適合性に優れる材料、例えば、コンドロイチン硫酸、カルボキシメチルセルロース等を混合、複合化してヒアルロン酸ゲルを形成させることができるものであり、何ら制限されないものである。
また、ヒアルロン酸ゲルを形成させる際に、薬学的又は生理学的に活性な物質を添加して、これらを含有するヒアルロン酸ゲルを形成させることもできるものであり、何ら制限されないものである。
【0023】
本発明に用いられる酸凍結物とヒアルロン酸の混合物は、生成するヒアルロン酸ゲルの中和処理の前に、ゲル化を進行させるための熟成が必要である。この熟成させる温度や時間は、ヒアルロン酸と酸の部分凍結物との混合物のヒアルロン酸塩の対イオンの種類、ヒアルロン酸の分子量、ヒアルロン酸濃度、並びに生成するゲルの強さ等の諸特性により適宜決められるが、温度については、ヒアルロン酸の酸による分解を抑えるために、−30℃以上0℃以下で行うことが好ましい。
【0024】
熟成温度によるヒアルロン酸ゲルの物性であるが、酸の部分凍結物とヒアルロン酸の混合物のヒアルロン酸塩の対イオンの種類、酸の濃度、酸の量、ヒアルロン酸の分子量、ヒアルロン酸濃度等の諸特性により異なってくる。
例えば2N硝酸の−20℃冷却した部分凍結物と分子量200万のヒアルロン酸ナトリウムの混合物(ヒアルロン酸約30質量%)を用いた場合、約−20℃の凍結状態でゲル化の熟成を行うと非透明のヒアルロン酸ゲルが得られる。また、−10℃の非凍結状態でゲル化の熟成を行えば透明のヒアルロン酸ゲルを得ることができる。
【0025】
酸凍結物とヒアルロン酸の混合物の圧縮による成形は、その方法は問わないが、金型に充填し加圧成型して得られるシート状、フィルム状、破砕状、スポンジ状、塊状、繊維状、及びチューブ状など各種の形態の成型物、射出成形による各種の形態の成型物などが例示できる。
【0026】
本発明で得られたヒアルロン酸ゲルは、ヒアルロン酸の酸加水分解を避けるために、カルボキシル基がプロトン化された酸型のヒアルロン酸や酸性に調整するために用いた酸等の成分を中和する必要がある。中和は、通常水性溶媒によって行う。ヒアルロン酸ゲルの機能を損なわないものであれば特に制限はないが、例えば、リン酸緩衝液、水酸化ナトリウム水溶液等が用いられる。
【0027】
また、中和方法は、特に制限はないが、通常は、バッチ法、濾過法、カラム等に充填して通液する方法等が用いられる。これらの中和条件は、中和液量、回数等を含めて、酸型のヒアルロン酸や酸性に調整するために用いた酸等の成分を中和できる条件であればよく、ヒアルロン酸ゲルの形態や用途により適宜選択することが可能である。
【0028】
この中和されたヒアルロン酸ゲルは、その使用目的に応じて、溶媒中に浸漬した状態、溶媒を含ませた湿潤状態、通風乾燥、減圧乾燥あるいは凍結乾燥等の処理を経た乾燥状態で供される。
【0029】
ヒアルロン酸ゲルの成形加工等の処理は、作製後の加工としては、機械的粉砕による微細な破砕状や凍結、解凍によるスポンジ状、圧延によるフィルム化、紡糸等が例示される。
本発明で得られたヒアルロン酸ゲルは、一般の生体内分解性医用材料及びヒアルロン酸が用いられる分野であれば特に制限なく使用することができる。例えば、関節注入剤、薬理活性物質の担体、創傷被覆剤、人工皮膚、組織置換型生体組織修復剤、癒着防止剤、外科手術用縫合糸、止血剤、人工臓器、人工細胞外マトリックス又は人工基底膜、診断・治療に用いる医療器具・医療用具等の生物医学的製品又は医薬組成物への使用が挙げられる。
【0030】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。なお、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0031】
実施例1
2Nの硝酸15gを乳鉢に入れ−20℃に冷却しシャーベット状の硝酸凍結物を得た。乳鉢を食塩の寒剤で冷却しながら、硝酸凍結物に分子量2×106 ダルトンのヒアルロン酸ナトリウムの粉末6gを投入し、乳鉢で均一なゴム状になるまで十分に5分間練り混ぜた(ヒアルロン酸ナトリウム28.6質量%)。
このヒアルロン酸と硝酸の混合物を−20℃に設定した冷凍庫に入れ凍結し熟成した。生成したヒアルロン酸ゲルを評価するため、熟成時間16時間、4,6,10,13日後に得られたヒアルロン酸ゲルを約1.5gずつ取り出し100mMの50ml燐酸緩衝液に投入し数時間おくことを数回繰り返し、硝酸が完全に無くなるまで中和洗浄をおこなった。その結果、白色のヒアルロン酸ゲルが得られた。
【0032】
実施例2
実施例1と同様にしてヒアルロン酸と硝酸の混合物(ヒアルロン酸ナトリウム28.6質量%)を得た後、これを−10℃に設定した冷凍庫に入れ非凍結のまま所定の日数で熟成し、中和洗浄を行った。その結果、透明なヒアルロン酸ゲルが得られた。
【0033】
実施例3
実施例1と同様にしてヒアルロン酸と硝酸の混合物(ヒアルロン酸ナトリウム28.6質量%)を得た後、これを0℃に設定した冷凍庫に入れ非凍結のまま所定の日数で熟成し、中和洗浄を行った。その結果、透明なヒアルロン酸ゲルが得られた。
【0034】
実施例4
実施例1のヒアルロン酸ナトリウムj投入量を6gから4.5gに変更し同様にして実施した。2Nの硝酸15gを乳鉢に入れ−20℃に冷却しシャーベット状の硝酸凍結物を得た。乳鉢を食塩の寒剤で冷却しながら、硝酸凍結物に分子量2×106 ダルトンのヒアルロン酸ナトリウムの粉末4.5gを投入し、乳鉢で均一なゴム状になるまで十分に5分間練り混ぜた(ヒアルロン酸ナトリウム23.1質量%)。
このヒアルロン酸と硝酸の混合物を−20℃に設定した冷凍庫に入れ凍結し所定の日数で熟成し、中和洗浄を行った。その結果、白色のヒアルロン酸ゲルが得られた。
【0035】
実施例5
実施例4と同様にしてヒアルロン酸と硝酸の混合物(ヒアルロン酸ナトリウム23.1質量%)を得た後、これを−10℃に設定した冷凍庫に入れ非凍結のまま所定の日数で熟成し、中和洗浄を行った。その結果、透明なヒアルロン酸ゲルが得られた。
【0036】
実施例6
実施例4と同様にしてヒアルロン酸と硝酸の混合物(ヒアルロン酸ナトリウム23.1質量%)を得た後、これを0℃に設定した冷凍庫に入れ非凍結のまま所定の日数で熟成し、中和洗浄を行った。その結果、透明なヒアルロン酸ゲルが得られた。
【0037】
実施例7
実施例1の硝酸を塩酸に置き換え同様にして実施した。2Nの塩酸15gを乳鉢に入れ−20℃に冷却しシャーベット状の塩酸凍結物を得た。乳鉢を食塩の寒剤で冷却しながら、塩酸凍結物に分子量2×106 ダルトンのヒアルロン酸ナトリウムの粉末6gを投入し、乳鉢で均一なゴム状になるまで十分に5分間練り混ぜた(ヒアルロン酸ナトリウム28.6質量%)。
このヒアルロン酸と塩酸の混合物を−20℃に設定した冷凍庫に入れ凍結し所定の日数で熟成し、中和洗浄を行った。その結果、白色のヒアルロン酸ゲルが得られた。
【0038】
実施例8
実施例7と同様にしてヒアルロン酸と塩酸の混合物(ヒアルロン酸ナトリウム28.6質量%)を得た後、これを−10℃に設定した冷凍庫に入れ非凍結のまま所定の日数で熟成し、中和洗浄を行った。その結果、透明なヒアルロン酸ゲルが得られた。
【0039】
実施例9
実施例8と同様にしてヒアルロン酸と塩酸の混合物(ヒアルロン酸ナトリウム28.6質量%)を得た後、これを0℃に設定した冷凍庫に入れ非凍結のまま所定の日数で熟成し、中和洗浄を行った。その結果、透明なヒアルロン酸ゲルが得られた。
【0040】
実施例10
実施例1の原料ヒアルロン酸の分子量を100万、120万、150万に置き換え同様にして実施した 実施例1と同様にしてヒアルロン酸と硝酸の混合物(ヒアルロン酸ナトリウム28.6質量%)を得た後、これを−10℃に設定した冷凍庫に入れ非凍結のまま所定の日数で熟成し、中和洗浄を行った。
その結果、透明なヒアルロン酸ゲルが得られた。
【0041】
比較例1
1Nの硝酸15gを乳鉢に入れ、そこに分子量2×106 ダルトンのヒアルロン酸ナトリウムの粉末6gを投入(ヒアルロン酸ナトリウム28.6質量%)し、乳鉢で均一になるまで十分に練り混ぜ続けた。ヒアルロン酸ナトリウムはすぐに硝酸とダマを形成し30分程度練り混ぜ続けても均一に練ることは困難だった。さらに混練りを続けると硝酸によるヒアルロン酸ナトリウムの低分子化のため混合物は液状化した。これを−20℃に設定した冷凍庫に入れ凍結し所定の日数で熟成した。凍結物が燐酸緩衝液で融解するとそのまま燐酸緩衝液に溶解し、ヒアルロン酸ゲルを得ることはできなかった。
【0042】
比較例2
0.1Nの硝酸90mlをビーカーに入れ、そこに分子量2×106 ダルトンのヒアルロン酸ナトリウムの粉末10gを投入し、スリーワンモーターで均一になるまで十分に練り混ぜ続けた(ヒアルロン酸ナトリウム10.0質量%)。溶液は餅状になりダマを形成し、4℃で3日間練り混ぜ続けたが、均一な混合物を得ることはできなかった。これを−20℃に設定した冷凍庫に入れ凍結し所定の日数で熟成した。凍結物が燐酸緩衝液で融解するとそのまま燐酸緩衝液に溶解し、ヒアルロン酸ゲルを得ることはできなかった。
【0043】
比較例3
2Nの硝酸15gを乳鉢に入れ−20℃に冷却しシャーベット状の硝酸凍結物を得た。乳鉢を食塩の寒剤で冷却しながら、硝酸凍結物に分子量45×104 ダルトンのヒアルロン酸ナトリウムの粉末4.5gを投入し、乳鉢で均一なゴム状になるまで十分に5分間練り混ぜた(ヒアルロン酸ナトリウム28.6質量%)。
このヒアルロン酸と硝酸の混合物を−20℃に設定した冷凍庫に入れ凍結し所定の日数で熟成し、中和洗浄を行った。凍結物が燐酸緩衝液で融解するとそのまま燐酸緩衝液に溶解し、ヒアルロン酸ゲルを得ることはできなかった。
【0044】
比較例4
分子量が2×106 ダルトンのヒアルロン酸ナトリウムを蒸留水に溶解し、1質量%のヒアルロン酸の水溶液を調整した。調整されたヒアルロン酸の水溶液のpHは、6.0であった。この水溶液のpHを、1N塩酸でpH1.5に調整した。ヒアルロン酸の酸性水溶液15mlを30mlのガラスビンに入れ、−20℃に設定した冷凍庫に入れた。このヒアルロン酸の酸性溶液を−20℃に設定した冷凍庫に入れ凍結し所定の日数で熟成し、中和洗浄を行った。
その結果、白色のヒアルロン酸ゲルが得られた。
【0045】
実施例11
ヒアルロン酸ゲルの透明性試験
得られたヒアルロン酸ゲルを、切り出すか、あるいは2枚のプレパラートの間にはさむことにより、厚さが10mmになるようした。得られたブロックあるいはゲルをはさんだプレパラートを、新聞紙の上に載せて下の字が読むことができることをもって、透明であると判断した。
【0046】
上記に従い、具体的に実施例1〜10のヒアルロン酸ゲルを試験したところ、いずれも−20℃の凍結状態でゲル化の熟成を行った場合は非透明のヒアルロン酸ゲルが得られた。また、−10、0℃の非凍結状態でゲル化の熟成を行った場合は透明のヒアルロン酸ゲルが得られた。
【0047】
実施例12
ヒアルロン酸ゲルの25℃溶解性試験
生理的食塩水に50mM濃度でリン酸緩衝成分を加え、pH7のリン酸緩衝生理的食塩水を調製した。得られたヒアルロン酸ゲルを、乾燥質量で10mgのヒアルロン酸を含むヒアルロン酸ゲルに対して、50mlのリン酸緩衝生理的食塩水の割合で、リン酸緩衝生理的食塩水中に浸漬した。そして、25℃で静置下のリン酸緩衝生理的食塩水中に溶出するヒアルロン酸の割合を、リン酸緩衝生理的食塩水中のヒアルロン酸濃度から求めた。
従って、中性の25℃の溶解性試験によるヒアルロン酸ゲルの溶解性は、上記試験により規定されるものである。
ヒアルロン酸濃度の測定
リン酸緩衝生理的食塩水中のヒアルロン酸の濃度は、GPCを使って、示差屈折率検出器のピーク面積から求めた。
ヒアルロン酸ゲルの一次分子量の測定
ヒアルロン酸ゲルを10mgを、0.1N水酸化ナトリウム溶液1mlに投入し、0℃で30分間静置し、ヒアルロン酸ゲルを溶解する。この溶解液に0.1N塩酸溶液1mlを添加し中和し、GPC溶媒で濃度を0.05質量%になるように希釈調製し、0.2μmのメンブランフィルターでろ過した後、GPC−MALLSに0.1ml注入して分子量の測定を行った。
GPCカラムとして昭和電工社製SB806HQを1本、示差屈折率検出器として日本分光社製830−RI、MALLSはWyatt社製DAWNDSP−Fを使用して、溶媒硝酸ナトリウムの0.2M水溶液、測定温度40℃、流速0.3ml/分、データ取得間隔1回/2秒で測定した。散乱強度の測定は散乱角度21.7°〜90°の8検出器を使った。データ処理ソフトウェアはWyatt社製ASTRA Version4.10を使用した。
【0048】
上記に従い、具体的に実施例1、4、10及び比較例1、3のヒアルロン酸ゲルの溶解性試験を行った。その結果を表1に示す。
例えば、実施例1で得られたヒアルロン酸ゲルの残存率を調べると、1,4日後では100%であり、7日後では99%であり、実施例1、2のヒアルロン酸ゲルは2週間後も殆ど残存していた。
また、実施例10で得られたヒアルロン酸ゲルの残存率を調べると、その原料ヒアルロン酸の分子量が低いほど数日後のヒアルロン酸ゲルの残存率は低下するが、何れも25℃の水溶液中で1日での溶解率は50%以下だった。さらに、その溶解挙動は、初期は時間あたりの溶解量が小さく、時間とともにその溶解量が加速度的に大きくなっていた。
それに対して比較例1では、冷却せずに硝酸の部分凍結物とヒアルロン酸を混和したためヒアルロン酸が酸加水分解を起こし分子量が低下し、ヒアルロン酸ゲルを得ることはできなかった。
また比較例3では、原料であるヒアルロン酸の分子量が45万と低いため、ヒアルロン酸ゲルを得ることはできなかった。
このように本願発明の酸溶液の部分凍結物とヒアルロン酸とを冷却しながら混和凍結すれば、実施例1、4、10が示すように、難溶性が向上したヒアルロン酸ゲルが得られることが分かる。
また、本願発明で得られたヒアルロン酸ゲルは、生体内滞留時間が長いことが示唆される。
【0049】
【表1】
Figure 0004383035
【0050】
実施例13
ヒアルロン酸ゲルの60℃溶解性試験による半減時間
生理的食塩水に50mM濃度でリン酸緩衝成分を加え、pH7.4のリン酸緩衝生理的食塩水を調製した。得られたヒアルロン酸ゲルを、乾燥重量で10mgのヒアルロン酸を含むヒアルロン酸ゲルに対して、50mlのリン酸緩衝生理的食塩水の割合で、リン酸緩衝生理的食塩水中に浸漬した。また、比較例1〜2のヒアルロン酸ゲル状溶液も、乾燥重量で10mgを50mlのリン酸緩衝生理的食塩水中に浸漬した。そして、60℃で静置下のリン酸緩衝生理的食塩水中に溶出するヒアルロン酸の割合を、リン酸緩衝生理的食塩水中のヒアルロン酸濃度から求めた。そしてヒアルロン酸ゲルがちょうど50%溶出する時間を求めた。
従って、中性の60℃の溶解性試験によるヒアルロン酸ゲルの半減時間は、上記試験により規定されるものである。
ヒアルロン酸濃度の測定
リン酸緩衝生理的食塩水中のヒアルロン酸の濃度は、GPCを使って、示差屈折率検出器のピーク面積から求めた。
【0051】
上記に従い、具体的に実施例1〜9及び比較例1、2、3のヒアルロン酸ゲルの溶解性試験を行った。その結果を表2に示す。
例えば、実施例1で得られたヒアルロン酸ゲルの溶解性試験の半減時間を調べると、4日熟成では29時間、6日熟成では30時間、10日熟成では36時間、更に13日熟成では40時間であり、低温熟成時間に従い溶解性試験の半減時間が延長し、難溶性が向上していた。それに対して比較例1及び2では均一なヒアルロン酸ゲルが得られず溶解性半減時間も測定不能であった。
ヒアルロン酸分子量200万、熟成温度―20℃、硝酸を用いたHA濃度の高い実施例1、4、7と、HA溶液を凍結した比較例4を比較すると、本発明の実施例1、4、7のほうが溶解性試験の半減時間が延長し、難溶性が向上したヒアルロン酸ゲルが得られることが分かる。
また本発明によると、実施例2、3、5、6、8、9に示すように透明であり、かつ難溶性の向上したヒアルロン酸ゲルが得られることがわかる。
また、実施例1、2、3と、そのヒアルロン酸濃度の低い実施例4、5、6を比較すると、ヒアルロン酸濃度の高い実施例1、2、3の方が溶解性試験の半減時間が延長し、難溶性が向上していた。
また、実施例1、2、3と、実施例1、2、3の硝酸を塩酸に置き換えた実施例7、8、9を比較すると、両者とも同様に、難溶性が向上し、酸の種類は問わないことがわかる。
【0052】
【表2】
Figure 0004383035
【0053】
実施例14
エステル架橋度の測定
エステル基の定量は、「官能基に基づく定量的有機分析(Quantitative Analysis Via Functional Groupus)」第4版(John Willy and Sons出版)、p169〜172記載のケン化法で行った。
その結果、実施例1〜10の何れも測定限界以下である1%以下であった。
【0054】
実施例15
実施例4と同様にしてヒアルロン酸と硝酸の混合物(ヒアルロン酸ナトリウム23.1質量%)を得た後、これを0℃に設定した冷凍庫に入れ非凍結のまま9時間熟成し、中和洗浄を行った。ゲル化反応が短いので強度は弱いが、透明なヒアルロン酸ゲルが得られた。
【0055】
実施例16
実施例15と同様にしてヒアルロン酸と硝酸の混合物(ヒアルロン酸ナトリウム23.1質量%)を得た後、これを0℃に設定した冷凍庫に入れ非凍結のまま6時間熟成し、中和洗浄を行った。ゲル化反応が短いので強度は弱いが、透明なヒアルロン酸ゲルが得られた。
【0056】
比較例5
実施例1と同様にしてヒアルロン酸と硝酸の混合物(ヒアルロン酸ナトリウム23.1質量%)を得た後、これを5℃に設定した冷凍庫に入れ非凍結のまま6日間熟成し、中和洗浄を行った。その結果、透明なヒアルロン酸ゲルが得られた。
【0057】
比較例6
実施例4と同様にしてヒアルロン酸と硝酸の混合物(ヒアルロン酸ナトリウム23.1質量%)を得た後、これを5℃に設定した冷凍庫に入れ非凍結のまま6日間熟成し、中和洗浄を行った。その結果、透明なヒアルロン酸ゲルが得られた。
【0058】
実施例17
ヒアルロン酸ゲルの60℃溶解性試験による溶解量の測定
実施例14と同様に生理的食塩水に50mM濃度でリン酸緩衝成分を加え、pH7.4のリン酸緩衝生理的食塩水を調製した。得られたヒアルロン酸ゲルを、乾燥質量で10mgのヒアルロン酸を含むヒアルロン酸ゲルに対して、50mlのリン酸緩衝生理的食塩水の割合で、リン酸緩衝生理的食塩水中に浸漬した。そして、60℃で静置下のリン酸緩衝生理的食塩水中に溶出するヒアルロン酸の割合を、リン酸緩衝生理的食塩水中のヒアルロン酸濃度から求めた。ヒアルロン酸ゲルの残存量(%)は、溶出するヒアルロン酸の割合から求めた。
【0059】
上記に従い、具体的に実施例15、16及び比較例5、6のヒアルロン酸ゲルの溶解性試験を行った。その結果を表3に示す。
例えば、実施例15、16にヒアルロン酸ゲルはその一次分子量が190万と高く、実施例15で得られたヒアルロン酸ゲルの溶解性試験のヒアルロン酸ゲルの残存率を調べると、溶解4時間後では95%であり、溶解6時間後では70%であり、溶解8時間後では5%であった。また、実施例16で得られたヒアルロン酸ゲルの溶解性試験のヒアルロン酸ゲルの残存率を調べると、溶解4時間後では95%であり、溶解6時間後では5%であった。すなわち、初期は時間あたりの溶解量が小さいが、時間とともにその溶解量が加速度的に大きくなっていた。
一方、比較例5、6にヒアルロン酸ゲルはその一次分子量が各70万、55万と低く、比較例5で得られたヒアルロン酸ゲルの溶解性試験のヒアルロン酸ゲルの残存率を調べると、溶解4時間後では70%であり、溶解6時間後では50%であり、溶解8時間後では20%であった。また、実施例6で得られたヒアルロン酸ゲルの溶解性試験のヒアルロン酸ゲルの残存率を調べると、溶解2時間後では80%であり、溶解4時間後では40%であった。すなわち溶解量は溶解時間が経過してもあまり変化しなかった。
すなわち、実施例15、16のヒアルロン酸ゲルは、所定の時間だけ残存し、その後、急速に溶解する性質を持つことが分かる。これは生分解性の医用材料として生体に必要な時間だけ、貯留させるのに応用可能な、極めて優れた性質であることが示唆される。
【0060】
【表3】
Figure 0004383035
【0061】
実施例17ウサギ関節腔内における貯留性比較
体重2.5〜3.0kgの成熟した健常なニュージーランドホワイト系の雄性ウサギの両膝関節部周辺を電気バリカンで剪毛し消毒後、実施例1で得られた−20℃で熟成日数10日のヒアルロン酸ゲルの破砕液及び、実施例2で得られた−10℃で熟成日数10日のヒアルロン酸ゲルの破砕液、及び比較例5で得られた5℃で熟成日数6日のヒアルロン酸ゲルの破砕液を、左膝関節腔に23Gの注射針を用いて0.1ml/kg体重の用量で投与した。対象として生理食塩水を同一個体の右膝関節腔内へ0.1ml/kg体重の用量で投与した。
なおヒアルロン酸ゲルの破砕は、各ヒアルロン酸ゲルをカップミキサーで2分間破砕後に、ポリトロンミキサーで更に5分間破砕した。粒子径は、コールターカウンター(LS−200)により測定し、平均粒子径は、実施例1、2、比較例5とも290μmだった。
ヒアルロン酸ゲルの破砕液は、ヒアルロン酸ゲルが1質量%になるよう2mMリン酸緩衝化生理的食塩水pH7.4に懸濁し、1mlツベルクリン用シリンジ(テルモ)に0.4mlづつ充填した。
投与後隔日ごとに両膝関節液を回収し、関節液中のHA濃度をGPCで定量した。尚、残存率は次式で算出したが、内在性HA量とは生理食塩水を投与直後に関節腔より採取した関節液中のHA量を示す。
残存率(%)=(回収量−内在性HA量)/投与量×100
その結果を表4に示す。
【0062】
【表4】
Figure 0004383035
【0063】
表2より、実施例1、2のヒアルロン酸ゲルは、生体内での貯留性が比較例5のヒアルロン酸ゲル比べ向上していることがわかる。また、生体内に所定の時間だけ貯留しそして消失する、極めて優れた性質を有することがわかった。
【0064】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、酸溶液の部分凍結物と、固体ヒアルロン酸を冷却しながら混合することにより、工業的にも簡便に高濃度のヒアルロン酸と酸の混合物を得られ、それにより、一次分子量が高くかつ低架橋度のヒアルロン酸ゲルが得られることを見出した。本発明により、工業的に簡便にヒアルロン酸ゲルの生体内貯留性、物理的安定性、強度などを向上させることができ、生分解性の医用材料として極めて優れた性質を有するヒアルロン酸ゲルを得ることができる。

Claims (11)

  1. 酸溶液を部分的に凍結し細粒状、シャーベット状、破砕状にした部分凍結物と、ヒアルロン酸を、0〜−20℃に冷却しながら均一になるまで練り混ぜ混和することを特徴とするヒアルロン酸ゲルの製造方法。
  2. 請求項1記載の部分凍結物の量が、ヒアルロン酸のカルボキシル基と等モル以上であることを特徴とするヒアルロン酸ゲルの製造方法。
  3. 請求項1記載の混和物を中和処理前に熟成温度−30℃〜0℃で保持することを特徴とするヒアルロン酸ゲルの製造方法。
  4. 請求項1記載の混和物に含有されるヒアルロン酸の濃度が、10質量%以上であることを特徴とするヒアルロン酸ゲルの製造方法。
  5. 請求項1記載の混合物を、圧縮し成形することを特徴とするヒアルロン酸ゲルの製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項記載の製造方法によって製造されたヒアルロン酸ゲルが、一次平均分子量が80万より大きいヒアルロン酸から形成されたことを特徴とするヒアルロン酸ゲル。
  7. 中性水溶液に溶解する際、一次平均分子量が80万より大きいヒアルロン酸が溶解してくることを特徴とする請求項6記載のヒアルロン酸ゲル。
  8. 初期は時間あたりの溶解量が小さく、時間とともにその溶解量が加速度的に大きくなることを特徴とする請求項7記載のヒアルロン酸ゲル。
  9. ヒアルロン酸ゲルを構成するヒアルロン酸の分子間の架橋度が1%未満であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項記載のヒアルロン酸ゲル。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項記載のヒアルロン酸ゲルを含有することを特徴とする医用材料。
  11. 医用材料が関節症治療用注入剤であることを特徴とする請求項10記載の医用材料。
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