JP4381791B2 - 気相成長炭素材料製造用触媒、気相成長炭素材料製造方法 - Google Patents

気相成長炭素材料製造用触媒、気相成長炭素材料製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、気相成長炭素材料の製造に用いられる触媒、この触媒を用いた気相成長炭素材料の製造方法及びこの製造方法により製造された気相成長炭素材料に関するものである。
近年直径1μm以下の微小径の繊維状の炭素材料が発見されている。かかる繊維状の炭素材料の形状として以下のものを列挙することができる。
まず、単層カーボンナノチューブを挙げることができる。単層カーボンナノチューブは、グラファイト状の炭素の層からなるグラフェンを丸めて円筒状にした形状を有する。なお、グラフェンとは黒鉛構造の一部であって、1枚の炭素の層からなるものをいう。また、複数のグラフェンの円筒が同心円状に重なった形状を有する多層カーボンナノチューブ挙げることができる。さらに、多数の小さなグラフェンの層が軸方向に連続して積層したカーボンナノファイバーを挙げることができる。カーボンナノファイバーには、頂部を切り欠いて底面が開放した略円錐形のグラフェンが積層して軸方向に伸びた形状のもの、底面が開放した多角錐形のグラフェンが積層して軸方向に伸びた形状のもの、小紙片状のグラフェンが積層して軸方向に伸びた形状のもの、小紙片状のグラフェンがハの字型に積層して軸方向に伸びた形状のものがある。
これらの微小直径の繊維状の炭素材料は、素材強度を高めるための使用や、樹脂の導電性フィラーとしての使用、リチウムイオン2次電池の負極材としての使用、水素吸蔵体としての使用等が可能であり、その製造方法が研究開発されている。
直径1μm以下の繊維状の炭素材料のうち、カーボンナノファイバーの製造方法として鉄系触媒を利用した気相成長法がある。気相成長法における繊維状の炭素材料の成長機構として、以下のような機構が提案され、広く受け入れられている。まず、一酸化炭素を原料として、次の式(1)で表される反応により炭素を生成させる。
2CO→CO+C …(1)
そして、生成した炭素を鉄の触媒微粒子の中に一旦溶解させるか又は鉄カーバイドの形態とし、触媒微粒子の表面にグラフェンの層が析出する反応が繰り返され、カーボンナノファイバーである繊維状の炭素材料が製造される。この場合に使用される触媒としては、SUS板、インバーなどの合金板、鉄をシリカなどの不活性担体上に担持したものなどがある。かかる鉄系触媒を利用した気相成長法には以下の方法がある。
第1の気相成長法として、Fe−Ni合金又はFe−Co合金の基板を触媒とする方法(非特許文献1を参照)や、SUS304といった鉄合金系の基板を触媒とする方法(非特許文献2を参照)がある。
第2の気相成長法として、炭素供給源のベンゼン及び触媒となるフェロセンなどの鉄化合物を気相として供給し、鉄化合物を熱分解して鉄微粒子を発生させ、この鉄微粒子を触媒とする方法がある(特許文献1を参照)。
第3の気相成長法として、シリカ等の不活性担持体の上に担持された鉄を触媒とする方法がある。
第4の気相成長法として、鉄とニッケルを共沈させて触媒とし、又は、鉄と銅を共沈させて触媒とし、この触媒を一酸化炭素及び水素を含有するガスと接触させ、繊維状の炭素材料を製造する方法がある(非特許文献3を参照)。
特公昭62−49363号公報 M.Audier et. al.,"MORPHOLOGY AND CRYSTALLINE ORDER IN CATALYTIC CARBONS",Carbon,イギリス,1981,Pergamon Press Ltd.,Vol.19, p217〜224 曽根田靖及び牧野三則、「一酸化炭素を原料とする繊維状炭素の構造」、第24回炭素材料学会予稿集、1997、炭素材料学会、p210〜211 C.Park et. al.,"Carbon Deposition on Iron−Nickel during Interaction with Carbon Monoxide−Hydrogen Mixtures",Journal of Catalysis,アメリカ,1997,Academic Press,Vol.169, p212〜227
しかしながら、第1の気相成長法では、得られる炭素材料の直径が10nm以下から300nm以上まで広範囲にわたっており、微小直径で一定の形態を有する炭素材料を得ることが困難であり、得られる炭素材料の直径の均一性に問題があった。また、触媒が金属基板の形状をなしているので、原料のガスと接触可能な合金基板の表面積を体積に対して大きくし難く、高い反応効率を得難い。触媒をなす合金を粉末化し、表面積を大きくして、反応効率を高めることも考えられるが、金属を粉末化するには多大な手間とコストがかかり好ましくない。
第2の気相成長法では、触媒コストが高く、製造設備が複雑である。
第3の気相成長法では、細径で比較的均一な直径を有する炭素材料を製造することが可能ではあるものの、不活性担持体の上に成長した炭素材料を不活性担持体から分離する必要があり、手間とコストがかかってしまう。
第4の気相成長法では、得られる炭素材料の直径の均一性に問題がある。発明者らが行った試験によれば、鉄とニッケルを共沈させて触媒とし、又は、鉄と銅を共沈させて触媒とした場合、製造される炭素材料の直径のばらつきが非常に大きくなってしまった。
本発明は、上記した従来の技術の問題点を除くためになされたものであり、その目的とするところは、安価な一酸化炭素を原料とすることができ、簡単な設備を用いることができ、直径の平均値が100nm以下の細い炭素材料を製造でき、製造される炭素材料の中に直径200nm以上の太径のものが混入しないことを可能とする気相成長炭素材料製造用触媒、気相成長炭素材料製造方法及び気相成長炭素材料を提供することである。
本発明はその課題を解決するために以下のような構成をとる。
請求項1の発明に係る気相成長炭素材料製造用触媒は、水素及び一酸化炭素を含有するガスと加熱状態で接触して炭素材料を成長させる触媒であって、鉄及びコバルトを含む共沈物を乾燥して得られる。
請求項2の発明に係る気相成長炭素材料製造用触媒は、請求項1に記載の気相成長炭素材料製造用触媒であって、コバルトが鉄とコバルトの合計に対して60〜90モル%である。
請求項3の発明に係る気相成長炭素材料製造方法は、水素及び一酸化炭素を含有するガスと、請求項1又は請求項2に記載の気相成長炭素材料製造用触媒とを、加熱状態で接触させる。
請求項4の発明に係る気相成長炭素材料製造方法は、請求項3に記載の気相成長炭素材料製造方法であって、前記ガスの少なくとも一部が、転炉による製鋼過程から得られるガスである。
請求項5の発明に係る気相成長炭素材料製造方法は、請求項3又は請求項4に記載の気相成長炭素材料製造方法であって、請求項1又は請求項2に記載の気相成長炭素材料製造用触媒と水素及び一酸化炭素を含有する前記ガスとが接触するときの前記ガスの温度を450〜650℃とする。
求項1の発明は、発明者らが触媒に含有される金属成分の組み合わせを検討した結果なされた発明である。
すなわち、鉄及びコバルトを含む共沈物を乾燥して気相成長法の触媒とすると、製造される炭素材料の直径の最大値が200nm未満となり、直径の平均値が100nm以下となることを見出した。
鉄及びコバルトを含む共沈物は、鉄及びコバルトを含む溶液に鉄及びコバルトを共沈させる物質を混合することにより得られる。
鉄及びコバルトを含む溶液を作る原料として、例えば、鉄及びコバルトの塩化物、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩等を挙げることができ、これらの水溶液を鉄及びコバルトを含む溶液とすることが好ましい。鉄及びコバルトを共沈させる物質としては、例えば塩基性物質をあげることができる。塩基性物質としては、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を挙げることができる。また、塩基性物質は塩基性溶液を用いることが取り扱いが容易であり好ましく、前述した塩基性物質の水溶液であることが好ましい。なお、鉄及びコバルトを含む溶液や塩基性物質中に、後述する沈殿物の生成に影響を与えない範囲内の有機溶媒又は不純物等を含むことは問題とはならない。
鉄及びコバルトを含む溶液と塩基性物質とを混合し、鉄及びコバルトを含有する沈殿物として共沈させる際、混合に必要な塩基性物質の量は次のようにして算出される。3価の鉄を用いる場合、鉄を3価とし、コバルトを2価とし、鉄及びコバルトを含む溶液中の鉄とコバルトの各モル数に、鉄とコバルトの各価数をそれぞれ掛け合わせて合計し、この合計値以上の水酸基を含むか又は発生する塩基性物質の量が、必要な塩基性物質の量である。
鉄及びコバルトを含む溶液と塩基性物質との混合方法や混合時間は、混合に伴う発熱や発泡等の問題が生じない限り、特に限定されない。例えば、鉄及びコバルトを含む溶液を攪拌しつつ、塩基性物質、好ましくは塩基性溶液を投入又は滴下することが可能であり、逆に、塩基性溶液を攪拌しつつ、鉄及びコバルトを含む溶液を投入又は滴下することも可能である。
鉄及びコバルトを含む溶液と塩基性物質とを混合して生成する沈殿物(共沈物)は、炭酸塩、水酸化物、酸化物等のいずれの形態であってもよく、これらの混合物であってもよい。また、不純物として塩化物、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩等を含有していてもよい。
鉄及びコバルトを含む共沈物は、濾過又は遠心分離等の既知の方法によって液相から分離可能であり、液相から分離した共沈物を乾燥した後、既存の方法で粉砕可能である。
請求項2の発明は、発明者らが請求項1の発明に係る触媒に含有される鉄とコバルトの含有割合を検討した結果なされた発明である。
すなわち、請求項1の発明に係る触媒中のコバルトのモル数を、この触媒中の鉄のモル数よりも多くし、この触媒を気相成長法に用いると、製造される炭素材料の直径が細くなることを見出した。
また、発明者らは検討を重ねた結果、触媒中の鉄とコバルトの合計のモル数に対して、触媒中のコバルトのモル数がとる割合と、製造される炭素材料の直径との間に以下の関係が成立していることを見出している。
触媒中のコバルトのモル数が、この触媒中の鉄とコバルトの合計のモル数に対して60モル%未満である場合、製造される炭素材料の直径の平均値は100nmに接近した大きな値となり、特に50モル%未満であると、直径100nm超200nm未満の炭素材料が少量含まれる。
触媒中のコバルトが90モル%よりも大きくなっている場合、製造される炭素材料の直径の平均値は100nmに接近した大きな値となり、直径100nm超200nm未満の炭素材料が含まれる割合が大きくなる。
触媒中のコバルトが60〜90モル%である場合、製造される炭素材料の直径の平均値は100nmよりも小さな値となり、60モル%未満の場合及び90モル%よりも大きな場合に製造される炭素材料の直径の平均値よりも小さな値となっており、直径100nm超200nm未満の炭素材料が含まれる割合も小さくなっている。
したがって、触媒中のコバルトをこの触媒中の鉄とコバルトの合計に対して60〜90モル%とすることが好ましい。
さらに、触媒中のコバルトのモル%を70〜80モル%とすると、製造される炭素材料の直径の最大値が100nm以下となり、直径100nm超の炭素材料は含まれない。したがって、触媒中の鉄とコバルトの合計に対して、触媒中のコバルトをこの触媒中の鉄とコバルトの合計に対して70〜80モル%とすることがより好ましい。
請求項3の発明によると、水素及び一酸化炭素を含有するガスと触媒とを加熱状態で接触させれば、製造される炭素材料の直径の最大値が200nm未満となり、直径の平均値が100nm以下となる。例えば、反応容器中で原料となるガスと触媒とを加熱状態で接触させるだけなので、複雑な設備を必要とせず、また、ガス中の一酸化炭素は安価であるので、気相成長法により炭素材料を製造するコストは安価なものとなる。
製造される炭素材料には、アスペクト比が小さくて外見上繊維ということができないものから、アスペクト比が大きく繊維状をなすものまで含まれる。炭素材料の成長を早期に止めることによっても、アスペクト比が小さな炭素材料を得ることが可能である。また、アスペクト比が大きな炭素材料を製造し、製造した炭素材料を粉砕等によって短く切断してアスペクト比が小さな炭素材料を得ることも可能である。
原料となるガス中に水素及び一酸化炭素が含有されていれば、炭素材料を製造できるので、ガス中における水素の含有量と一酸化炭素の含有量は特に限定されない。
なお、発明者らは、ガス中に水素が含有されていない場合、炭素材料が製造されないが、ガス中に少なくとも2体積%の水素が含有されていれば、炭素材料が製造されることを確認している。また、反応容器内において、一酸化炭素の流量が一定である場合、ガス中の水素の含有量を3体積%以上に増やしても、炭素材料の成長速度に変化が見られないことを確認している。
炭素材料を形成する炭素がガス中の一酸化炭素から供給されるので、ガス中の一酸化炭素の流量又は濃度を大きくすることにより、炭素材料の成長速度が大きくなる。
水素及び一酸化炭素以外のガス中の成分を、窒素等の不活性ガスとすることができる。また、ガス中に二酸化炭素が含有されていてもよいが、その場合、その含有量が一酸化炭素の濃度以下であることが好ましい。二酸化炭素は酸化性ガスであるので、ガス中に大量の二酸化炭素が含有されていると、二酸化炭素が炭素材料を酸化分解してしまうからである。また、ガス中に酸素が含有されていないことが好ましい。酸素も酸化性ガスであり、酸素が炭素材料を酸化分解してしまうからである。さらに、ガス中に炭素材料の成長を阻害する成分が混入することは好ましくない。炭素材料の成長を阻害する成分として、例えば、硫化水素を挙げることができる。
請求項4の発明によると、水素及び一酸化炭素を含有するガスを転炉による製鋼過程から得ることができるので、炭素材料の原料となるガスの供給コストが安価となる。
なお、転炉による製鋼過程から得られる転炉ガスは、例えば、水素を5体積%程度、一酸化炭素を50〜60体積%程度含有し、残りは主に窒素と二酸化炭素からなる。発明者らは、成分調整を行わずに、転炉から得られる転炉ガスをそのまま気相成長炭素材料製造方法に用いることができ、転炉ガスを用いて細径の炭素材料を製造できることを確認している。
また、転炉から発生する転炉ガスは一般に1500〜1600℃の温度であり、転炉の回収設備に設けられたボイラなどで顕熱を回収し、さらにガス中に含まれるダストを除去した後であっても未だ相当の高温を有しており、転炉ガスの熱により、炭素材料の原料となるガスと触媒とが接触する際に必要な加熱状態を得ることが可能である。転炉ガスの熱を有効利用でき、炭素材料を製造する際の加熱にかかるコストを低減できる。
請求項5の発明は、発明者らが水素及び一酸化炭素を含有するガスと触媒とが接触するときの前記ガスの温度を検討した結果なされた発明である。
水素及び一酸化炭素を含有するガスと触媒とが接触するときの前記ガスの温度が、450℃よりも低い場合、又は、650℃よりも高い場合、炭素材料の成長速度が低下したり、零となったりしてしまう。ガスと触媒とが接触するときの前記ガスの温度を450〜650℃とすると、炭素材料の成長速度が大きくなり、炭素材料の製造量も大きくなり好ましい。なかでも、この温度を500〜550℃とすると、炭素材料の成長速度が最も大きくなりより好ましい
本発明は、上記のような気相成長炭素材料製造用触媒、気相成長炭素材料製造方法及び気相成長炭素材料であるので、安価な一酸化炭素を原料とすることができ、簡単な設備を用いることができ、直径の平均値が100nm以下となる細い炭素材料を製造でき、製造される炭素材料の中に直径200nm以上の太径のものが混入しないことを可能とする気相成長炭素材料製造用触媒、気相成長炭素材料製造方法及び気相成長炭素材料を提供できるという効果がある。
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
まず、気相成長炭素材料製造用の触媒の製造について述べる。
塩化コバルトを水に溶解して、コバルトを含む水溶液Sを作るとともに、三塩化鉄を水に溶解して、鉄を含む水溶液Sを作り、水溶液Sと水溶液Sとを混合して混合水溶液Sを作る。混合する水溶液Sと水溶液Sの各量は、混合水溶液S中で溶解しているコバルトのモル数が、溶解している鉄とコバルトの合計のモル数に対して70〜80モル%となる量である。
混合水溶液S中のコバルトのモル数にコバルトの価数2を掛け合わし、混合水溶液S中の鉄のモル数に鉄の価数3を掛け合わし、両者を合計する。この合計値以上の水酸基を含む量の水酸化ナトリウムの塩基性水溶液Sを準備する。
そして、塩基性水溶液Sを攪拌しつつ、塩基性水溶液Sに混合水溶液Sを滴下し、混合水溶液Sを作る。混合水溶液S中で、鉄とコバルトが水酸基と反応して水酸化物となり沈殿物として共沈する。混合水溶液Sから共沈物を濾過して取り出す。
混合水溶液Sから取り出された共沈物を脱イオン水で洗浄し、未反応の水酸化ナトリウム、陽イオン、陰イオン等の物質を共沈物から取り除き、その後、共沈物の乾燥を行う。共沈物は鉄及びコバルトの水酸化物であるが、共沈物が乾燥するにつれて、この水酸化物は酸化物となり、乾燥した共沈物中では鉄及びコバルトを含む酸化物の含有量が多くなる。
共沈物が乾燥したら、乾燥した共沈物を必要に応じて公知の方法で粉砕する。粉砕するサイズは後述するガスとの接触面積及び取り扱いの容易性に応じて適宜選択すればよく、例えば、最大粒径1mm未満又は300nm未満に調整すればよい。また、この粉砕サイズは後述する様に、得られる炭素材料の大きさに直接影響を及ぼすものではない。こうして得られた共沈物が気相成長炭素材料製造用の触媒Cである。
次いで、得られた触媒Cを反応容器内に仕込み、反応容器内の上流側から下流側へ水素及び一酸化炭素を含有するガスを流す。このガスは、製鋼過程にある転炉から得られた転炉ガスであり、水素を5体積%程度、一酸化炭素を50〜60体積%程度含有し、残りは主に窒素と二酸化炭素からなり、ガス中の二酸化炭素の含有量は一酸化炭素の濃度以下であり、ガス中に酸素は含有されておらず、炭素材料の成長を阻害する硫化水素等の成分も混入していない。
反応容器を加熱して、反応容器内のガスは500〜550℃の還元性雰囲気となっている。反応容器内で、ガスと触媒Cは加熱状態となる。
反応容器内において、ガス中の一酸化炭素から前記式(1)の反応により炭素が生成し、生成した炭素が触媒C中に一旦溶解し、グラフェンの層が触媒C表面に繰り返し析出し、繊維状の炭素材料が成長するものと考えられる。
反応容器は、その中のガスを500〜550℃の温度に加熱状態とし、ガスと触媒Cとを接触させることができるものであればその形態を問わず、公知の気相成長法で用いられる反応容器を使用できる。ただし、反応容器を形成する材料としてはステンレス又はセラミック、石英等の金属酸化物を用いることが好ましい。反応容器を形成する材料として、ステンレス以外の鉄等の遷移金属材料を用いると、この遷移金属材料からグラフェンが析出してしまい、太い直径の炭素材料が混入することとなって好ましくないからである。
炭素材料が反応容器内で成長したら、炭素材料を反応容器から取り出して回収する。回収された炭素材料の先端には触媒Cの微粒子が付着しており、炭素材料を反応容器外へ取り出すにつれて反応容器内の触媒Cの量が減少する。このため、必要に応じて減少した触媒Cを反応容器内に補充することが好ましい。
触媒Cを用いることにより、直径の平均値が小さな炭素材料が製造できる理由は明らかではないが、以下の理由が考えられる。
鉄とコバルトとからなる合金を気相成長法の触媒として用いる場合、この鉄コバルト合金は大きな結晶粒を有しており、鉄コバルト合金中の結晶粒の大きさが、成長する炭素材料の直径を決定すると考えられる。したがって、鉄コバルト合金を触媒とすると、太い直径を有する炭素材料が成長する。
これに対して、水酸化物又は酸化物の状態にある本発明の触媒Cは、結晶粒が微小であり、反応容器内で触媒Cの還元が進むと、鉄及びコバルトの微小な結晶粒が触媒C中に形成される。鉄及びコバルトの微小な結晶粒が形成されると、この微小な結晶粒の大きさに応じたグラフェンの層の析出が始まり、炭素材料の直径の最大値が200nm未満、直径の平均値が100nm以下となる。
(実施例)
次に、本発明に係る発明例1〜発明例13の触媒についてと、発明例1〜発明例13の触媒を用いて本発明に係る気相成長炭素材料製造方法により製造した発明例1〜発明例13の炭素材料について、以下の表1を参照しつつ順番に説明する。また、これらと比較するため、比較例1〜比較例3の触媒についてと、比較例1〜比較例3の触媒を用いて気相成長炭素材料製造方法により製造した比較例1〜比較例3の炭素材料について、表1を参照しつつあわせて説明する。
Figure 0004381791
(1)発明例1
まず、発明例1の触媒について述べる。塩化鉄(FeCl・6HO)を水に溶解して、0.5Mの塩化鉄水溶液を作り、同様に、塩化コバルト(CoCl・6HO)を水に溶解して、0.5Mの塩化コバルト水溶液を作った。これらの塩化鉄水溶液25mlと塩化コバルト水溶液75mlとを混合し、この混合水溶液に、0.5Mの炭酸ナトリウム(NaCO)の塩基性水溶液200mlを40分かけて滴下した。そして、塩基性水溶液を滴下して生じた共沈物を遠心分離により集め、300mlの蒸留水で集めた共沈物を洗浄した。共沈物の遠心分離と蒸留水による洗浄を3回繰り返し行った後、共沈物を集め、120℃で共沈物を24時間乾燥した。乾燥後の共沈物は4.5gあり、乾燥後の共沈物を乳鉢と乳棒とを用いて粉砕し、発明例1の触媒を得た。発明例1の触媒中に含有されるコバルトは、この触媒中に含有される鉄とコバルトの合計に対して75モル%である。
次に、発明例1の触媒を用いた炭素材料の製造について述べる。
発明例1の触媒を0.2g反応容器に仕込んだ。反応容器は、外径20mm、内径17mm、長さ500mmの縦置き石英管であり、反応容器のほぼ中央部に石英綿が詰められており、この石英綿上に触媒が仕込まれている。また、反応容器中央部の外側には温度調整が可能な電気ヒーターが取り付けられている。下方から反応容器内に成分を調整したガスを流した。ガスの流量は、標準状態に換算して150cm/minであり、ガスの組成は水素が33体積%、一酸化炭素が67体積%である。反応容器内にガスを流しつつ反応容器内のガスの温度を室温から550℃まで昇温させ、ガスを流したまま反応容器内のガスを550℃の状態で3時間維持し、反応容器内で炭素材料を成長させた。その後、反応容器から成長した炭素材料を発明例1の炭素材料として取り出して回収した。回収された発明例1の炭素材料は、その先端に触媒の微粒子が付着した状態となっている。
発明例1の炭素材料の回収量は、触媒が付着した状態で4.2gであった。発明例1の炭素材料を走査型電子顕微鏡(SEM)により1万倍の倍率下で観察し、100本の炭素材料をランダムに選び出して直径を測定し、選び出された100本の炭素材料の直径の平均値を算出した。同時に、選び出された100本の炭素材料のうちで、直径100nm超且つ200nm未満の炭素材料の割合と、直径200nm以上の炭素材料の割合を調べた。
その結果、発明例1の炭素材料において、直径の平均値は65nm、直径100nm超且つ200nm未満の炭素材料の割合は0%、直径200nm以上の炭素材料の割合も0%であった。
(2)発明例2
発明例2の触媒は、塩化鉄水溶液50mlと塩化コバルト水溶液50mlとを混合して混合水溶液を作った点を除いて、発明例1のものと同様にして得られたものである。発明例2の触媒中に含有されるコバルトは、この触媒中に含有される鉄とコバルトの合計に対して50モル%である。
発明例2の炭素材料の製造条件は、発明例2の触媒を用いる点を除いて、発明例1のものと同様である。
発明例2の炭素材料の回収量は、触媒が付着した状態で4.0gであった。発明例1の炭素材料同様に、発明例2の炭素材料を観察した結果、発明例2の炭素材料において、直径の平均値は71nm、直径100nm超且つ200nm未満の炭素材料の割合は0%、直径200nm以上の炭素材料の割合も0%であった。
(3)発明例3
発明例3の触媒は、塩化鉄水溶液10mlと塩化コバルト水溶液90mlとを混合して混合水溶液を作った点を除いて、発明例1のものと同様にして得られたものである。発明例3の触媒中に含有されるコバルトは、この触媒中に含有される鉄とコバルトの合計に対して90モル%である。
発明例3の炭素材料の製造条件は、発明例3の触媒を用いる点を除いて、発明例1のものと同様である。
発明例3の炭素材料の回収量は、触媒が付着した状態で3.4gであった。発明例1の炭素材料同様に、発明例3の炭素材料を観察した結果、発明例3の炭素材料において、直径の平均値は55nm、直径100nm超且つ200nm未満の炭素材料の割合は0%、直径200nm以上の炭素材料の割合は0%であった。
(4)発明例4
発明例4の触媒は、塩化鉄水溶液75mlと塩化コバルト水溶液25mlとを混合して混合水溶液を作った点を除いて、発明例1のものと同様にして得られたものである。発明例4の触媒中に含有されるコバルトは、この触媒中に含有される鉄とコバルトの合計に対して25モル%である。
発明例4の炭素材料の製造条件は、発明例4の触媒を用いる点を除いて、発明例1のものと同様である。
発明例4の炭素材料の回収量は、触媒が付着した状態で3.8gであった。発明例1の炭素材料同様に、発明例4の炭素材料を観察した結果、発明例4の炭素材料において、直径の平均値は85nm、直径100nm超且つ200nm未満の炭素材料の割合は3%、直径200nm以上の炭素材料の割合は0%であった。
(5)発明例5
発明例5の触媒は、発明例1のものと同じものである。
発明例5の炭素材料の製造条件は、反応容器内のガスの温度を400℃まで昇温させ、ガスを流したまま反応容器内のガスを400℃の状態に3時間維持する点を除いて、発明例1のものと同様である。
発明例5の炭素材料の回収量は、触媒が付着した状態で1.2gであった。発明例1の炭素材料同様に、発明例5の炭素材料を観察した結果、発明例5の炭素材料において、直径の平均値は77nm、直径100nm超且つ200nm未満の炭素材料の割合は2%、直径200nm以上の炭素材料の割合は0%であった。
(6)発明例6
発明例6の触媒は、発明例1のものと同じものである。
発明例6の炭素材料の製造条件は、反応容器内のガスの温度を700℃まで昇温させ、ガスを流したまま反応容器内のガスを700℃の状態に3時間維持する点を除いて、発明例1のものと同様である。
発明例6の炭素材料の回収量は、触媒が付着した状態で1.3gであった。発明例1の炭素材料同様に、発明例6の炭素材料を観察した結果、発明例6の炭素材料において、直径の平均値は60nm、直径100nm超且つ200nm未満の炭素材料の割合は0%、直径200nm以上の炭素材料の割合も0%であった。
(7)発明例7
発明例7の触媒は、発明例1のものと同じものである。
発明例7の炭素材料の製造条件は、反応容器内に流すガスとして以下の成分を含有する転炉ガスをそのまま用いた点を除いて、発明例1のものと同様である。転炉ガスは、水素を4.5体積%、一酸化炭素を52.7体積%、二酸化炭素を24.3体積%含有していおり、残部窒素である。
発明例7の炭素材料の回収量は、触媒が付着した状態で3.2gであった。発明例1の炭素材料同様に、発明例7の炭素材料を観察した結果、発明例7の炭素材料において、直径の平均値は68nm、直径100nm超且つ200nm未満の炭素材料の割合は0%、直径200nm以上の炭素材料の割合も0%であった。
(8)発明例8
発明例8の触媒は、塩化鉄水溶液50mlと塩化コバルト水溶液50mlとを混合して混合水溶液を作った点を除いて、発明例1のものと同様にして得られたものである。発明例8の触媒中に含有されるコバルトは、この触媒中に含有される鉄とコバルトの合計に対して50モル%である。
発明例8の炭素材料の製造条件は、発明例8の触媒を用いた点と、反応容器内に流すガスとして以下の成分を含有する転炉ガスを用いた点を除いて、発明例1のものと同様である。転炉ガスは、水素を4.5体積%、一酸化炭素を52.7体積%、二酸化炭素を24.3体積%含有しており、残部窒素である。
発明例8の炭素材料の回収量は、触媒が付着した状態で3.1gであった。発明例1の炭素材料同様に、発明例8の炭素材料を観察した結果、発明例8の炭素材料において、直径の平均値は70nm、直径100nm超且つ200nm未満の炭素材料の割合は0%、直径200nm以上の炭素材料の割合も0%であった。
(9)発明例9
発明例9の触媒は、塩化鉄の代わりに硝酸鉄(Fe(No・9HO)を用い、塩化コバルトの代わりに硝酸コバルト(Co(No・6HO)を用い、炭酸ナトリウムの代わりに炭酸カリウム(KCO)を用いた点を除いて、発明例1のものと同様にして得られたものである。発明例9の触媒中に含有されるコバルトは、この触媒中に含有される鉄とコバルトの合計に対して75モル%である。
発明例9の炭素材料の製造条件は、発明例9の触媒を用いた点を除いて、発明例1のものと同様である。
発明例9の炭素材料の回収量は、触媒が付着した状態で4.3gであった。発明例1の炭素材料同様に、発明例9の炭素材料を観察した結果、発明例9の炭素材料において、直径の平均値は63nm、直径100nm超且つ200nm未満の炭素材料の割合は0%、直径200nm以上の炭素材料の割合も0%であった。
(10)発明例10
発明例10の触媒は、発明例1のものと同じものである。
発明例10の炭素材料の製造条件は、反応容器内のガスの温度を450℃まで昇温させ、ガスを流したまま反応容器内のガスを450℃の状態に3時間維持する点を除いて、発明例1のものと同様である。
発明例10の炭素材料の回収量は、触媒が付着した状態で4.0gであった。発明例1の炭素材料同様に、発明例10の炭素材料を観察した結果、発明例10の炭素材料において、直径の平均値は70nm、直径100nm超且つ200nm未満の炭素材料の割合は0%、直径200nm以上の炭素材料の割合も0%であった。
(11)発明例11
発明例11の触媒は、発明例1のものと同じものである。
発明例11の炭素材料の製造条件は、反応容器内のガスの温度を650℃まで昇温させ、ガスを流したまま反応容器内のガスを650℃の状態に3時間維持する点を除いて、発明例1のものと同様である。
発明例11の炭素材料の回収量は、触媒が付着した状態で3.5gであった。発明例1の炭素材料同様に、発明例11の炭素材料を観察した結果、発明例11の炭素材料において、直径の平均値は62nm、直径100nm超且つ200nm未満の炭素材料の割合は0%、直径200nm以上の炭素材料の割合も0%であった。
(12)発明例12
発明例12の触媒は、塩化鉄水溶液5mlと塩化コバルト水溶液95mlとを混合して混合水溶液を作った点を除いて、発明例1のものと同様にして得られたものである。発明例12の触媒中に含有されるコバルトは、この触媒中に含有される鉄とコバルトの合計に対して95モル%である。
発明例12の炭素材料の製造条件は、発明例12の触媒を用いる点を除いて、発明例1のものと同様である。
発明例12の炭素材料の回収量は、触媒が付着した状態で3.1gであった。発明例1の炭素材料同様に、発明例12の炭素材料を観察した結果、発明例12の炭素材料において、直径の平均値は58nm、直径100nm超且つ200nm未満の炭素材料の割合は5%、直径200nm以上の炭素材料の割合は0%であった。
(13)発明例13
発明例13の触媒は、炭酸ナトリウムの代わりに水酸化カリウム(KOH)を用いた点を除いて、発明例1のものと同様にして得られたものである。発明例13の触媒中に含有されるコバルトは、この触媒中に含有される鉄とコバルトの合計に対して75モル%である。
発明例13の炭素材料の製造条件は、発明例13の触媒を用いた点を除いて、発明例1のものと同様である。
発明例13の炭素材料の回収量は、触媒が付着した状態で4.2gであった。発明例1の炭素材料同様に、発明例13の炭素材料を観察した結果、発明例13の炭素材料において、直径の平均値は67nm、直径100nm超且つ200nm未満の炭素材料の割合は0%、直径200nm以上の炭素材料の割合も0%であった。
(14)比較例1
比較例1の触媒は、塩化コバルトの代わりに酢酸ニッケル((CHCOO)Ni・4HO)を用いた点を除いて、発明例1のものと同様にして得られたものである。比較例1の触媒中に含有されるニッケルは、この触媒中に含有される鉄とニッケルの合計に対して75モル%である。
比較例1の炭素材料の製造条件は、比較例1の触媒を用いた点を除いて、発明例1のものと同様である。
比較例1の炭素材料の回収量は、触媒が付着した状態で3.7gであった。発明例1の炭素材料同様に、比較例1の炭素材料を観察した結果、比較例1の炭素材料において、直径の平均値は95nm、直径100nm超且つ200nm未満の炭素材料の割合は9%、直径200nm以上の炭素材料の割合は3%であった。
(15)比較例2
比較例2の触媒は、塩化コバルトの代わりに硝酸銅(Cu(NO・3HO)を用いた点を除いて、発明例1のものと同様にして得られたものである。比較例2の触媒中に含有される銅は、この触媒中に含有される鉄と銅の合計に対して75モル%である。
比較例2の炭素材料の製造条件は、比較例2の触媒を用いた点を除いて、発明例1のものと同様である。
比較例2の炭素材料の回収量は、触媒が付着した状態で3.1gであった。発明例1の炭素材料同様に、比較例2の炭素材料を観察した結果、比較例2の炭素材料において、直径の平均値は113nm、直径100nm超且つ200nm未満の炭素材料の割合は20%、直径200nm以上の炭素材料の割合は18%であった。
(16)比較例3
比較例3の触媒は、鉄とコバルトからなる合金板である。比較例3の触媒中に含有されるコバルトは、この触媒中に含有される鉄とコバルトの合計に対して50モル%である。
比較例3の炭素材料の製造条件は、比較例3の触媒を用いた点を除いて、発明例1のものと同様である。反応容器中に仕込まれた比較例3の触媒の大きさは、10mm×30mm×5mmである。
比較例3の炭素材料の回収量は、触媒となる鉄コバルト合金板の表面からステンレス製の箆を用いてはがして回収されたものであり、発明例1の炭素材料と同様にその先端に触媒の微粒子が付着している。反応容器から回収された比較例3の炭素材料は、触媒が付着した状態で0.3gであった。発明例1の炭素材料同様に、比較例3の炭素材料を観察した結果、比較例3の炭素材料において、直径の平均値は100nm、直径100nm超且つ200nm未満の炭素材料の割合は12%、直径200nm以上の炭素材料の割合は6%であった。
発明例1〜発明例13及び比較例1〜比較例3の結果を以下比較検討する。
触媒中に鉄及びコバルトを含有している発明例1〜発明例13において、回収された炭素材料の直径の平均値は85nm以下であり、直径100nm超且つ200nm未満の炭素材料の割合も5%以下に抑制され、直径200nm以上の炭素材料は含有されていない。
これに対して、触媒中に鉄及びコバルトを含有していない比較例1及び2においては、回収された炭素材料の直径の平均値は95nm以上であり、直径100nm超且つ200nm未満の炭素材料が含有される割合は比較例1において9%、比較例2において20%となっており、直径200nm以上の炭素材料が含有される割合は比較例1において3%、比較例2において18%となっている。
したがって、触媒中に鉄及びコバルトを含有させると、炭素材料の直径の平均値を小さくできるとともに、太径の炭素材料が含まれることを回避できることがわかる。
次に、触媒中に含有されるコバルトがこの触媒中に含有される鉄とコバルトの合計に対して50モル%である発明例2と比較例3とを比較する。発明例2の炭素材料の直径の平均値は71nmであり、比較例3の炭素材料の直径の平均値100nmよりも小さい。また、発明例2の炭素材料には、直径100nm超且つ200nm未満の炭素材料が含有されていないが、比較例3の炭素材料には、直径100nm超且つ200nm未満の炭素材料が12%含有されており、直径200nm以上の炭素材料も6%含有されている。
発明例2の炭素材料と比較例3の炭素材料との相違は、以下の理由によると考えられる。すなわち、発明例2の触媒においては、反応容器内で550℃の反応温度の下、触媒が還元されている。そして、触媒が還元されることによって、触媒中で結晶粒の形成が開始される。結晶粒の形成の開始とほぼ同時に、炭素材料の成長も開始される。触媒中で形成が開始されたばかりの結晶粒の大きさは非常に小さく、触媒から成長する炭素材料の直径も細くなると考えられる。
他方、比較例3の触媒においては、鉄コバルト合金板中に当初から結晶粒が存在しており、結晶粒の粒塊が鉄コバルト合金板から剥離し、剥離した結晶粒の粒塊から炭素材料が成長すると考えられる。鉄コバルト合金板から剥離する結晶粒の粒塊には、粒径が100nmを超える大きさのものが含まれている。したがって、比較例3では、炭素材料が成長する際に、基本単位となる結晶粒に大きな粒径を有するものが存在することとなり、比較例3の炭素材料には、直径100nm以上の炭素材料が含有されてしまうと考えられる。
次に、触媒中に含有されるコバルトがこの触媒中に含有される鉄とコバルトの合計に対して90モル%である発明例3、75モル%である発明例1、50モル%である発明例2、25モル%である発明例4、95モル%である発明例12を比較する。炭素材料の直径の平均値をそれぞれ比較すると、発明例3が55nmと最も小さく、発明例1が65nm、発明例2が71nm、発明例4が85nm、発明例12が58nmである。また、直径200nm以上の炭素材料が含有される割合は、これらの各発明例において0%であるが、直径100nm超且つ200nm未満の炭素材料が含有される割合は、発明例3、発明例1及び発明例2が0%、発明例4が3%、発明例12が5%である。
これより、触媒中に含有される鉄とコバルトの合計に対するコバルトのモル%が90モル%で、炭素材料の直径の平均値が最も小さくなっていることがわかる。しかし、触媒中に含有されるコバルトが95モル%である発明例12において、直径100nm超且つ200nm未満の炭素材料が5%含有されている。したがって、直径100nm以上の炭素材料が含まれることを回避するためには、触媒中に含有されるコバルトを50〜90モル%とし、さらに炭素材料の直径の平均値を小さくするには、この中でもコバルトのモル%を大として60〜90モル%とすることが好ましいことがわかる。
次に、触媒は同一であるが、反応容器内におけるガス温度がそれぞれ異なる発明例1、発明例5、発明例6、発明例10、発明例11を比較する。ガス温度が400℃の発明例5では炭素材料の直径の平均値が77nm、ガス温度が450℃の発明例10では炭素材料の直径の平均値が70nm、ガス温度が550℃の発明例1では炭素材料の直径の平均値が65nm、ガス温度が650℃の発明例11では炭素材料の直径の平均値が62nm、ガス温度が700℃の発明例6では炭素材料の直径の平均値が60nmとなっており、いずれも、比較例1〜比較例3における各炭素材料の直径の平均値よりも小さな値となっている。また、触媒が付着した状態における炭素材料の回収量を比較すると、ガス温度が400℃の発明例5では1.2g、ガス温度が450℃の発明例10では4.0g、ガス温度が550℃の発明例1では4.2g、ガス温度が650℃の発明例11では3.5g、ガス温度が700℃の発明例6では1.3gとなっている。
回収された各炭素材料の直径の平均値を比較すると、ガス温度が上昇するにつれて小さな値となる傾向が見られる。また、直径100nm以上の炭素材料が含有される割合も、発明例5において2%となっているだけであり、他は0%となっている。したがって、これらの各炭素材料の直径の平均値は小さくなっており、太径の炭素材料が含まれることも回避されているといえる。しかし、各炭素材料の回収量を比較すると、ガス温度によってそれぞれ相違しており、ガス温度を550℃とする場合に、炭素材料の回収量がピークとなっている。これは、550℃のガス温度において、反応容器内での反応速度が最も大きくなっているからである。したがって、回収される炭素材料の直径の平均値を小さくし、太径の炭素材料が含まれることを回避し、同時に、炭素材料の回収量を大きくするためには、反応容器内のガス温度を550℃を中心に450〜650℃とすることが好ましいことがわかる。
次に、水素を33体積%、一酸化炭素を67体積%含有するガスを用いた発明例1と、転炉ガスを用いた発明例7とを比較する。発明例1と発明例7とでは、ガスの組成を除いて他の条件は同じであり、発明例1の炭素材料の直径の平均値が65nm、触媒が付着した状態で炭素材料の回収量が4.2g、発明例7の炭素材料の直径の平均値が68nm、触媒が付着した状態で炭素材料の回収量が3.2gである。
発明例1と発明例7とでは、炭素材料の回収量に差が見られるほかは、ほとんど同じ太さの炭素材料を回収されている。炭素材料の回収量に差が生じた原因は、それぞれ用いたガス中の一酸化炭素量の差にあると考えられる。すなわち、発明例1のガス中に一酸化炭素が67体積%含有されているのに対して、発明例7の転炉ガス中には一酸化炭素が52.7体積%含有されており、炭素材料の原料となる一酸化炭素の量が発明例7の転炉ガスにおいて少なかったことが主な原因であると考えられる。したがって、発明例7の転炉ガスの流量を大きくし、転炉ガス中で単位時間当たりの一酸化炭素流量を、発明例1のガス中で単位時間当たりの一酸化炭素流量と同量とすれば、発明例7の炭素材料の回収量を発明例1の炭素材料の回収量と同じ量とすることができる。なお、転炉ガスは製鋼過程の副生ガスであり、非常に安価に得られるものであるので、発明例7の炭素材料の製造コストは、成分を調整したガスを用いる発明例1の炭素材料の製造コストに対して、充分な優位性を有すると考えられる。
発明例1と発明例7の比較と同様に、発明例2と発明例8とを比較すると、やはり発明例1と発明例7の比較結果と同様のことがわかる。
次に、触媒を作るにあたり塩化鉄、塩化コバルト及び炭酸ナトリウムを用いる発明例1、硝酸鉄、硝酸コバルト及び炭酸カリウムを用いる発明例9、塩化鉄、塩化カリウム及び水酸化カリウムをを用いる発明例13とを比較する。直径の平均値を比較すると、発明例1が65nm、発明例9が63nm、発明例13が67nmである。また、直径100nmを超える炭素材料の割合をそれぞれ比較すると、発明例1、9及び13はともに0%である。炭素材料の回収量は、発明例1が4.2g、発明例9が4.3g、発明例13が4.2gである。したがって、鉄及びコバルトを含む金属塩として、例えば、鉄及びコバルトの塩化物や硝酸塩を用いることができ、アルカリ水溶液として炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウムを用いることができ、いずれにしても、細径且つより均一な炭素材料を多く回収できることがわかる。

Claims (5)

  1. 水素及び一酸化炭素を含有するガスと加熱状態で接触して炭素材料を成長させる触媒であって、鉄及びコバルトを含む共沈物を乾燥して得られることを特徴とする気相成長炭素材料製造用触媒。
  2. コバルトが鉄とコバルトの合計に対して60〜90モル%であることを特徴とする請求項1に記載の気相成長炭素材料製造用触媒。
  3. 水素及び一酸化炭素を含有するガスと、請求項1又は請求項2に記載の気相成長炭素材料製造用触媒とを、加熱状態で接触させることを特徴とする気相成長炭素材料製造方法。
  4. 前記ガスの少なくとも一部が、転炉による製鋼過程から得られるガスであることを特徴とする請求項3に記載の気相成長炭素材料製造方法。
  5. 請求項1又は請求項2に記載の気相成長炭素材料製造用触媒と水素及び一酸化炭素を含有する前記ガスとが接触するときの前記ガスの温度を450〜650℃とすることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の気相成長炭素材料製造方法
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