JP4381631B2 - ユニット式建物の小屋組構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、箱状のユニットで形成されたユニット式建物の小屋組構造に関する。
【0002】
【背景技術】
従来、住宅等の建物の工法として、ユニット工法がある。ユニット工法とは、工場において、箱状の骨組みに、天井面材、床面材、外壁材、間仕切壁等を取り付けて形成した建物ユニットを製造し、これら箱状の建物ユニットを建築現場で複数組み合わせて建築するものである。
ユニット工法は、予め工場でできるだけ部材の加工・組立を行い、これらを運搬して現場で組み上げる施工方法であるため、従来建築現場で行っていた作業がほとんど工場で行われることとなり、建築現場での作業が著しく軽減され、高品質の建物を短期間で建築できるという利点がある。
【0003】
ところで、ユニット式建物における屋根部分の構造としては、各建物ユニット上に束やブレースによる軸組を形成し、この軸組で屋根を支持する構造が知られている(特願2000−41042号参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述したユニット式建物では、例えば、屋根を特殊な形状とする場合や、屋根を複数種類の材料で形成する場合には、屋根の各建物ユニットへの荷重分布が屋根全体に均等にならないため、天井梁に過大な荷重がかかる可能性があった。そのため、大きな屋根荷重に耐えうる天井梁を備えた特殊な建物ユニットを用いる必要があり、製造コストの増大となっていた。
【0005】
本発明の目的は、大きな屋根荷重がかかる場合でも、経済的かつ確実に屋根を支持できるユニット式建物の小屋組構造を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のユニット式建物の小屋組構造は、次の構成を採用する。
本発明を図面を参照して説明すると、請求項1に記載のユニット式建物10の小屋組構造は、四隅の柱41の上下端を天井梁42および床梁43で連結して箱状に形成されたフレーム40を有する建物ユニット17をその角隅部Dを寄せ合わせて複数配置した屋根下建物ユニット16と、これら屋根下建物ユニット上に設けられた支持構造13と、この支持構造に支持された屋根14とを備えたユニット式建物の小屋組構造であって、屋根下建物ユニットを構成する建物ユニットの柱のうち、寄せ合わされた4つの角隅部の柱が省略されて大空間が形成され、支持構造は、小屋梁20と、2つの小屋フレーム30とを備え、小屋梁は、2本の長尺材21が抱き合わされて形成され、省略された4つの柱の両側に位置する4つの柱の間に架け渡された4つの天井梁上に配置され、各長尺材は、天井梁の長手方向に直交する方向に隣接する各天井梁上にそれぞれ配置され、各小屋フレームは、小屋梁を構成する部材と同一断面を有する部材により枠状に形成されるとともに、互いに隣接して配置されるように、かつ、角部が長尺材の一端にそれぞれ隣接して配置されるように、屋根下建物ユニットの各天井梁に積層されることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、屋根下建物ユニットの少なくとも1本の天井梁に沿って小屋梁を配置したので、この小屋梁によって天井梁が補強され、大きな屋根荷重がかかった場合でも、屋根を確実に支持できる。
また、天井梁に沿って小屋梁を配置するだけで、屋根下建物ユニット自体に何ら手を加えることなく、大きな屋根荷重がかかる天井梁だけを部分的に補強できるから、経済的である。
【0009】
この発明によれば、2本の長尺材を抱き合わせて小屋梁を形成したので、小屋梁を1本の長尺材で形成した場合に比べ剛性を向上できるから、小屋梁の構造耐力を向上できる。
【0011】
この発明によれば、屋根下建物ユニットのうち少なくとも1つの建物ユニットの各天井梁上に枠状の小屋フレームを積層したので、支持構造で受ける屋根荷重を1つの屋根下建物ユニット全体で支持することができ、屋根下建物ユニット全体の屋根荷重に対する構造耐力をさらに向上できる。
また、小屋梁と小屋フレームとを混用することによって、屋根下建物ユニットの所望の天井梁を安価かつ自在に補強することができ、屋根の意匠設計、構造設計の自由度を向上できる。
【0013】
この発明によれば、小屋フレームを構成する枠材を小屋梁を構成する部材と同一断面を有する部材で形成したので、小屋梁および小屋フレームの部品を共通化でき、支持構造の製造コストを低減できる。
また、小屋梁および小屋フレームの断面係数が同一となるから、小屋梁および小屋フレームの構造計算を容易に行うことができる。
【0015】
この発明によれば、建物ユニットの柱のうち寄せ合わされた1組の角隅部の柱を省略して大空間を形成したので、ユニット式建物内部の設計の自由度を向上できる。
この時、省略された柱の両側に位置する柱の間に小屋梁を架け渡したので、つまり、大空間の両端に位置する柱に小屋梁を設けたので、柱を省略したことによる屋根下建物ユニットの天井梁の構造耐力の低下を補うことができる。
【0016】
請求項1に記載のユニット式建物の小屋組構造は、請求項1から5のいずれかに記載のユニット式建物の小屋組構造において、前記支持構造は、小屋梁の上に立設された束を含んで構成されていることを特徴とする。
この発明によれば、小屋梁の上に立設された束を含んで支持構造を構成したので、屋根下建物ユニットの上に直接束を立設する場合に比べ、束の長さを短くするだけでよいから、支持構造の製造コストを低減できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本実施形態に係るユニット式建物10の全体斜視図が示されている。
ユニット式建物10は、基礎11と、この基礎11の上に設けられた建物本体12と、この建物本体12の上に設けられた支持構造13と、この支持構造13に支持された屋根14とを備えている。
このうち、建物本体12は、1階建物ユニット15と、この1階建物ユニット15の上に配置されかつ屋根14の下に位置する屋根下建物ユニットとしての2階建物ユニット16とを備え、これら1階建物ユニット15および2階建物ユニット16は、箱状に形成された建物ユニット17が複数組合わせて形成されている。
【0018】
建物ユニット17は、図2に示すように、四隅の柱41の上下端を連結する天井梁42および床梁43を有する箱状のフレーム40を備えている。このうち、柱41と天井梁42とは、柱41の柱頭側に配置される柱頭接合部材45を介して連結され、柱41と床梁43とは、柱41の柱脚側に配置される柱脚接合部材46を介して連結されている。
天井梁42としては、長さの異なる短辺天井梁42Aおよび長辺天井梁42Bの二種類が設けられ、床梁43としては、長さの異なる短辺床梁43Aおよび長辺床梁43Bの二種類が設けられている。また、対向する長辺天井梁42Bの間には、天井面材を支持するための天井小梁が架け渡され(図示省略)、また、対向する長辺床梁43Bの間には、床を形成するパーチクルボード等の床面材を支持するための複数の根太が架け渡されている(図示省略)。
【0019】
図3には、2階建物ユニット16の平面図が示されている。
1階建物ユニット15および2階建物ユニット16は、建物ユニット17をその角隅部Dを寄せ合わせて、梁間方向に3個、桁行方向に2個の計6個配置することにより形成されている。
したがって、2階建物ユニット16において、外周側では、2つの建物ユニット17の2つの角隅部Dが寄せ合わされて1組となっており、内部側では、4つの建物ユニット17の4つの角隅部Dが寄せ合わされて1組となっている。
【0020】
ここで、図3中右側を南側とすると、2階建物ユニット16を構成する建物ユニット17の柱41のうち寄せ合わされた1組の角隅部Dの柱41、ここでは、内部南側に位置する1組の角隅部Dの4本の柱41が省略されており(図3中点線で示す)、これによって、2階建物ユニット16の南側に大空間が形成されている。
【0021】
図4には、支持構造13の平面図が示され、図5には、図4のV−V断面図が示されている。
支持構造13は、省略された柱41の梁間方向両側に位置する柱41の間に短辺天井梁42Aに沿って架け渡された小屋梁20と、この小屋梁20の北側に隣接しかつ2階建物ユニット16の建物ユニット17の各天井梁42に積層された2つの小屋フレーム30と、これら小屋梁20、小屋フレーム30および2階建物ユニット16上に設けられた束50,51,52とを備えている。
【0022】
図6(A)には、小屋梁20の全体斜視図が示されている。
小屋梁20は、短辺天井梁2本分の長さを有する長尺材21が2本抱き合わされて形成されている。
図6(B)には、小屋フレーム30の全体斜視図が示されている。
小屋フレーム30は、小屋梁20を構成する部材と同一断面を有する部材、ここでは長尺材21が柱脚接合部材46を介して枠状に連結されて形成されている。
【0023】
図4および図5に戻って、束50〜52は、2階建物ユニット16の内部側に立設され、屋根14の棟部と軒先部の中間を支持するようになっている。
【0024】
次に、ユニット式建物10を組み立てる手順を説明する。
まず、建物ユニット17、小屋梁20、小屋フレーム30、束50〜52を工場で製作した後、建築現場に運搬する。運搬の際、柱41が省略された建物ユニット17の変形を防止するために、省略された柱41の代わりに図示しない仮柱を設けておく。
現場では、基礎11を施工した後、各建物ユニット17をその角隅部Dを寄せ合わせて隣接配置し、1階建物ユニット15および2階建物ユニット16を形成する。
【0025】
次に、省略された柱41の梁間方向両側に位置する柱41の間に小屋梁20を架け渡すとともに、2階建物ユニット16の建物ユニット17の各天井梁42に小屋フレーム30を積層する。その後、小屋梁20および小屋フレーム30を2階建物ユニット16の柱頭接合部材45にボルト等で連結した後、2階建物ユニット16内の仮柱を撤去する。
【0026】
次に、束50〜52を、小屋梁20、小屋フレーム30および2階建物ユニット16上にボルト等で固定し、これら束50〜52上に屋根14を設置する。
なお、本実施形態では、現場において束50〜52を取り付けたが、これに限らず、工場で予め取り付けておいてもよい。
【0027】
したがって、本実施形態によれば以下の効果がある。
(1)2階建物ユニット16の短辺天井梁42Aに沿って小屋梁20を配置したので、この小屋梁20によって短辺天井梁42Aが補強され、大きな屋根荷重がかかった場合でも、屋根14を確実に支持できる。
また、天井梁42に沿って小屋梁20を配置するだけで、2階建物ユニット16自体に何ら手を加えることなく、大きな屋根荷重がかかる天井梁42だけを部分的に補強できるから、経済的である。
【0028】
(2)2本の長尺材21を抱き合わせて小屋梁20を形成したので、小屋梁20を1本の長尺材21で形成した場合に比べ剛性を向上できるから、小屋梁20の構造耐力を向上できる。
【0029】
(3)2階建物ユニット16のうち2つの建物ユニット17の各天井梁42上に枠状の小屋フレーム30を積層したので、支持構造13で受ける屋根荷重を1つの2階建物ユニット16全体で支持することができ、2階建物ユニット16全体の屋根荷重に対する構造耐力をさらに向上できる。
また、小屋梁20と小屋フレーム30とを混用することによって、2階建物ユニット16の所望の天井梁42を安価かつ自在に補強することができ、屋根の意匠設計、構造設計の自由度を向上できる。
【0030】
(4)小屋フレーム30を構成する枠材を小屋梁20を構成する部材と同一断面を有する長尺材21で形成したので、小屋梁20および小屋フレーム30の部品を共通化でき、支持構造13の製造コストを低減できる。
また、小屋梁20および小屋フレーム30の断面係数が同一となるから、小屋梁20および小屋フレーム30の構造計算を容易に行うことができる。
【0031】
(5)建物ユニット17の柱41のうち寄せ合わされた1組の角隅部Dの柱41を省略して大空間を形成したので、ユニット式建物10内部の設計の自由度を向上できる。
この時、省略された柱41の両側に位置する柱41の間に小屋梁20を架け渡したので、つまり、大空間の両端に位置する柱41に小屋梁20を設けたので、柱41を省略したことによる2階建物ユニット16の天井梁42の構造耐力の低下を補うことができる。
【0032】
(6)小屋梁20の上に立設された束50Bを含んで支持構造13を構成したので、2階建物ユニット16の上に直接束52を立設する場合に比べ、束の長さを短くするだけでよいから、支持構造13の製造コストを低減できる。
【0033】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0034】
【発明の効果】
本発明のユニット式建物の小屋組構造によれば、次のような効果が得られる。
請求項1に記載のユニット式建物の小屋組構造によれば、屋根下建物ユニットの少なくとも1本の天井梁に沿って小屋梁を配置したので、この小屋梁によって天井梁が補強され、大きな屋根荷重がかかった場合でも、屋根を確実に支持できる。
また、天井梁に沿って小屋梁を配置するだけで、屋根下建物ユニット自体に何ら手を加えることなく、大きな屋根荷重がかかる天井梁だけを部分的に補強できるから、経済的である。
【0035】
また、2本の長尺材を抱き合わせて小屋梁を形成したので、小屋梁を1本の長尺材で形成した場合に比べ剛性を向上できるから、小屋梁の構造耐力を向上できる。
【0036】
さらに、屋根下建物ユニットのうち少なくとも1つの建物ユニットの各天井梁上に枠状の小屋フレームを積層したので、支持構造で受ける屋根荷重を1つの屋根下建物ユニット全体で支持することができ、屋根下建物ユニット全体の屋根荷重に対する構造耐力をさらに向上できる。
また、小屋梁と小屋フレームとを混用することによって、屋根下建物ユニットの所望の天井梁を安価かつ自在に補強することができ、屋根の意匠設計、構造設計の自由度を向上できる。
【0037】
加えて、小屋フレームを構成する枠材を小屋梁を構成する部材と同一断面を有する部材で形成したので、小屋梁および小屋フレームの部品を共通化でき、支持構造の製造コストを低減できる。
また、小屋梁および小屋フレームの断面係数が同一となるから、小屋梁および小屋フレームの構造計算を容易に行うことができる。
【0038】
また、建物ユニットの柱のうち寄せ合わされた1組の角隅部の柱を省略して大空間を形成したので、ユニット式建物内部の設計の自由度を向上できる。
この時、省略された柱の両側に位置する柱の間に小屋梁を架け渡したので、つまり、大空間の両端に位置する柱に小屋梁を設けたので、柱を省略したことによる屋根下建物ユニットの天井梁の構造耐力の低下を補うことができる。
【0039】
請求項2に記載のユニット式建物の小屋組構造によれば、小屋梁の上に立設された束を含んで支持構造を構成したので、屋根下建物ユニットの上に直接束を立設する場合に比べ、束の長さを短くするだけでよいから、支持構造の製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るユニット式建物を示す全体斜視図である。
【図2】前記実施形態に係る建物ユニットのフレームの斜視図である。
【図3】前記実施形態に係る屋根下建物ユニットの平面図である。
【図4】前記実施形態に係る支持構造の平面図である。
【図5】図4のV−V断面図である。
【図6】前記実施形態に係る小屋梁および小屋フレームの斜視図である。
【符号の説明】
10 ユニット式建物
13 支持構造
14 屋根
16 屋根下建物ユニットとしての2階建物ユニット
17 建物ユニット
20 小屋梁
21 長尺材
30 小屋フレーム
40 建物ユニットのフレーム
41 柱
42 天井梁
43 床梁
D 角隅部
Claims (2)
- 四隅の柱の上下端を天井梁および床梁で連結して箱状に形成されたフレームを有する建物ユニットをその角隅部を寄せ合わせて複数配置した屋根下建物ユニットと、これら屋根下建物ユニット上に設けられた支持構造と、この支持構造に支持された屋根とを備えたユニット式建物の小屋組構造であって、
前記屋根下建物ユニットを構成する建物ユニットの柱のうち、寄せ合わされた4つの角隅部の柱が省略されて大空間が形成され、
前記支持構造は、小屋梁と、2つの小屋フレームとを備え、
前記小屋梁は、2本の長尺材が抱き合わされて形成され、前記省略された4つの柱の両側に位置する4つの柱の間に架け渡された4つの天井梁上に配置され、
前記各長尺材は、前記天井梁の長手方向に直交する方向に隣接する前記各天井梁上にそれぞれ配置され、
前記各小屋フレームは、前記小屋梁を構成する部材と同一断面を有する部材により枠状に形成されるとともに、互いに隣接して配置されるように、かつ、角部が前記長尺材の一端にそれぞれ隣接して配置されるように、前記屋根下建物ユニットの各天井梁に積層されることを特徴とするユニット式建物の小屋組構造。 - 請求項1に記載のユニット式建物の小屋組構造において、
前記支持構造は、小屋梁の上に立設された束を含んで構成されていることを特徴とするユニット式建物の小屋組構造。
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