JP4380910B2 - ペリクル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リソグラフィー用ペリクル、特には、LSI、超LSIなどの半導体装置あるいは液晶表示板を製造する際の、ゴミよけとして使用されるリソグラフィー用ペリクルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、LSI、超LSIなどの半導体デバイスあるいは液晶表示板などの製造においては、半導体ウエハーあるいは液晶用原板に光を照射してパターニングを行う工程がある。この場合に用いる露光原版(レチクル)にゴミが付着していると、このゴミが光を吸収したり、光を反射してしまうため、転写したパターニングが変形したり、エッジががさついたりしてしまい、寸法、品質、外観などがそこなわれ、半導体装置や液晶表示板などの性能劣化や製造歩留まりの低下を来すという問題があった。
【0003】
このため、これらの作業は通常クリーンルームで行われるが、このクリーンルーム内でも露光原版を常に清浄に保つことが難しいので、露光原版の表面にゴミよけのために、露光用の光を良く通過させるペリクル膜を貼着したペリクルを使用する方法が行われている。
この場合、ゴミは露光原版の表面には直接付着せず、ペリクル膜上に付着するため、リソグラフィー時に焦点を露光原版のパターン上に合わせておけば、ペリクル膜上のゴミは転写に無関係となるという利点がある。
【0004】
このペリクルは、光を良く通過させるニトロセルロース、酢酸セルロース、もしくはフッ素樹脂などからなる透明なペリクル膜を、アルミニウム、ステンレス、ポリエチレン等からなるペリクル枠の上部にペリクル膜の良溶媒を塗布し、風乾して接着する(特開昭58−219023号公報)か、アクリル樹脂やエポキシ樹脂もしくはフッ素樹脂などの接着剤で接着し(米国特許第4861402号明細書、特公昭63−27707号公報、特開平7−168345号公報)、ペリクル枠の下部にはポリブテン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等からなる粘着層および粘着層を保護する離型層(セパレータ)を積層して構成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
露光原版(レチクル)の表面にはパターンが描かれている。露光中は、このパターンのパターンエッジで露光光が散乱して乱反射光(散乱光)となり、一部粘着剤層もしくは接着剤層に直接当たることがある。この場合、粘着剤もしくは接着剤が光を吸収し、その結果分解物が発生する危険性がある。この分解物は、ペリクルとレチクルに囲まれた空間に放出され、ペリクル面もしくはレチクル面に析出して異物や曇りとなり、リソグラフィーに多大な影響を与えることがある。
【0006】
粘着剤もしくは接着剤がリソグラフィーの露光用の光を吸収しないか、もしくは吸収しても光劣化を起こさなければ、上記の様な乱反射光による問題は発生しないのであるが、粘着剤および接着剤において、粘着力もしくは接着力を出現させるための樹脂は、化学構造の上から、一般に紫外線域に、特に真空紫外線域に吸収を持つため、粘着力もしくは接着力と紫外線域の耐光性を両立させることは非常に困難である。
【0007】
近年はより微細な加工を行うことを目的として、露光光が短波長化してきており、短波長になるほど光子エネルギーが大きくなるので、粘着剤もしくは接着剤に光が当たった時の劣化も激しくなる。粘着剤もしくは接着剤に光が当たらない構造もしくは光が当たったとしてもペリクルとレチクルに囲まれた空間に光分解物が放出されない構造のペリクルが必要となってきた。
したがって、本発明は、露光光ないし乱反射光による粘着剤もしくは接着剤からの分解物がペリクルとレチクルに囲まれた空間に放出されない構造のペリクルを提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明のペリクルは、ペリクルをレチクルに装着するための粘着剤層およびペリクル膜をペリクルフレームに接着する接着剤層のうち少なくとも一つの層を、ペリクルとレチクルに囲まれた空間からの乱反射光から、遮蔽するためにペリクルフレームの粘着剤塗布面の粘着剤層および接着剤塗布面の接着剤層のうち少なくとも一つの層のペリクル内部に面した側に塗布した耐光性の高いポリマーからなる遮蔽手段を設ける。また、ペリクルをレチクルに装着するための粘着剤層およびペリクル膜をペリクルフレームに接着する接着剤層のうち少なくとも一つの層を、ペリクルとレチクルに囲まれた空間に対し、密閉するためにペリクルフレームの粘着剤塗布面の粘着剤層および接着剤塗布面の接着剤層のうち少なくとも一つの層のペリクル内部に面した側に塗布した耐光性の高いポリマーからなる密閉するたの手段を設ける。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、粘着剤層および接着剤層がペリクル内部からの光に曝されない遮蔽手段、もしくはペリクル内部からの光に曝されたとしても光分解物がペリクル閉空間内に放出しないように密閉する手段、具体的には、粘着剤層および/または接着剤層の内側に、露光光に対して粘着剤もしくは接着剤よりも光劣化が少ないポリマー層を設けることにより、粘着剤層および接着剤層が劣化しないか、劣化したとしてもペリクルとレチクルとに囲まれた空間内に劣化に基づく分解物が侵入しないような構造を持ったペリクルを提供することができる。
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ペリクルをレチクルに貼り付けるための粘着層およびペリクル膜をペリクルフレームに接着するための接着層の内側に、露光光ないし乱反射光に対して粘着剤および接着剤よりも劣化が少ないポリマー層を設けることにより、ペリクル内側からの光が粘着剤層および/または接着剤層に直接曝されない機構、もしくは曝されたとしても光分解物をペリクル閉空間内に放出しない構造をもたせることで、上記課題を解決できることを見い出した。
【0012】
通常、ペリクルをレチクルに貼り付けるための粘着剤層は、ペリクルフレームの端面に設けられており、ペリクルをレチクルに貼り付けた時、粘着剤層の厚み分だけはペリクル内部に向かって曝されている。ペリクルとレチクルに囲まれたペリクル内部に存在するレチクル上のパターンから乱反射光があった場合、内側に曝された粘着剤層が光を吸収して分解し、分解物をペリクル内部にまき散らす可能性があった。
一方、ペリクル膜をペリクルフレームに接着するための接着剤層の場合も同様で、接着剤層の厚み分はペリクルとレチクルに囲まれたペリクル内部に曝されているため、上記と同様の問題が発生する可能性がある。
【0013】
これらの分解物は、ペリクル膜上、もしくはレチクル表面に吸着し曇りを発生させたり、もしくは吸着後更に光反応を起こし、異物や曇りとなる。これらの異物や曇りが発生すると、パターンを異物で汚染したり、曇りにより透過率が低下したりといったリソグラフィーに関しての大きな問題となっていた。
【0014】
ペリクルをレチクルに貼り付けるための粘着層およびペリクル膜をペリクルフレームに貼り付けるための接着剤の内側全周に、露光用の光(露光光および乱反射光を含む)に対して粘着剤および接着剤よりも劣化が少ないポリマー層を設けることにより、露光用の光が粘着剤層および接着剤層に直接当たらないか、もしくは劣化の少ないポリマー層を通して当たったとしても、ポリマー層があるため、接着剤層の分解物がペリクルとレチクルに囲まれた空間に放出されることがない。
【0015】
なお、フレームの突起の設置および光劣化の少ないポリマー層の設置は、粘着剤層および接着剤層両方に行った方が効果的であるが、場合に応じて粘着剤層のみ、接着剤層のみの採用も可能である。また、粘着剤層にはフレーム部の突起の設置、接着剤層にはポリマー層の設置といった選択も可能であり、必要に応じて組み合わせることが可能である。
【0016】
以下に、図面に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
図1は、一般的なペリクルの説明図、図2は、本発明の実施の形態を示す説明図である。
図1に示すように、一般のペリクルは、少なくともペリクル膜1、ペリクルフレーム3、接着剤層2および粘着剤層4を有しており、ペリクルはレチクル5と粘着剤層4を介して接着されている。ペリクルフレーム3の接着剤層2および粘着剤層4が設けられる端面は、平面状に形成されている。レチクル5にはパターン6が描かれており、これがリソグラフィーでの露光原版になる。
【0017】
そして、ペリクル膜1は露光光に対して透明であり耐光性がある樹脂からなり、ペリクルフレーム3は、同様に従来公知のアルミニウム、ステンレス等からなる。接着剤層2、粘着剤層4は、ペリクル膜1とペリクルフレーム3、および、レチクル5とペリクルフレーム3を接着・粘着できる材料であればよいが、例えば、接着剤層2にはアクリル樹脂やエポキシ樹脂もしくはフッ素樹脂などの接着剤が用いられ、粘着剤層4にはポリブテン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等からなる粘着剤が用いられる。
【0019】
本発明の実施の形態を示す図2において、ペリクル膜1、ペリクルフレーム3、接着剤層2および粘着剤層4を有しており、ペリクルはレチクル5と粘着剤層4を介して接着されている。粘着剤層4および接着剤層2の内側には、粘着剤層4および接着剤層2よりも光劣化の少ないポリマー層8が設けられている。ポリマー層8は、露光用の光に対して、透明でも、不透明でも良い。ポリマー層8によって粘着剤層4および接着剤層2がペリクル内側の乱反射光に曝されるのを、もしくは曝されても分解物が閉空間に飛び散るのを防いでいる。
【0020】
【実施例】
以下本発明の実施例を示す。
【0022】
[実施例]
粘着剤塗布用端面および接着剤塗布用端面の内側に突起を持たない、図2に示す形態の、アルミニウム製ペリクルフレームを使用した。フレーム端面の内側半分に全周にわたってペリクル膜材料と同質のポリマー層[サイトップ(旭硝子社製製品名)]を形成した。その後フレーム端面の外側半分にフッ素系ポリマーからなる接着剤、レチクル接着用の粘着剤をそれぞれ塗布した。
【0023】
ペリクル膜材料であるフッ素系ポリマー:サイトップ(旭硝子社製製品名)をフッ素系溶媒に溶解したものを、シリコン基板上に塗布し、その後シリコン基板を加熱し溶媒を蒸発させてシリコン基板上にポリマー薄膜(厚さ1μm)を形成した。シリコン基板からポリマー薄膜を剥離し、その膜を上記のペリクルフレームに接着することでペリクルを完成させた。
このペリクルをレチクルに貼り付けた場合、粘着剤層および接着剤層の内側全周にポリマー層が存在するため、レチクル上のパターン面で露光光の乱反射が起こって、粘着剤および接着剤にポリマー層を通して乱反射光が当たっても、粘着剤および接着剤の光分解物はポリマー層に遮られ、ペリクルとレチクルに囲まれた閉空間には放出されないので、高品質のリソグラフィーが可能となった。
【0024】
[比較例]
粘着剤塗布用端面および接着剤塗布用端面の内側に突起を持たない、図1に示す一般の、アルミ製ペリクルフレームに実施例と同様の接着剤、粘着剤を塗布用端面全面に塗布した。
実施例と同様の方法でポリマー薄膜を形成し、その膜を上記のペリクルフレームに接着することでペリクルを完成させた。
このペリクルをレチクルに貼り付けた場合、粘着剤層および接着剤層はペリクルとレチクルに囲まれた閉空間に直接曝されており、レチクル上のパターン面で露光光の乱反射が起こった場合に、乱反射光は粘着剤層および接着剤層に直接当たることで分解物の生成が起こり、ペリクル膜面に白濁が発生した。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、粘着剤層および接着剤層の内側全周に露光光に対して粘着剤および接着剤よりも劣化が少ないポリマー層を設ける場合には、そのポリマー層からの露光に基づく分解物の発生を極めて少なくすることができ、かつ、ポリマー層を透過して粘着剤層および接着剤層に光が当たり、分解物が生成してもポリマー層に阻止されて露光閉空間に分解物が漏れることがないので、高品質なリソグラフィーを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 一般的なペリクルの説明図である。
【図2】 本発明の形態を示す説明図である。
【符号の説明】
1:ペリクル膜
2:接着剤層
3:ペリクルフレーム
4:粘着剤層
5:レチクル
6:パターン
8:ポリマー層
Claims (2)
- リソグラフィーに用いられるペリクルにおいて、ペリクルをレチクルに装着するための粘着剤層およびペリクル膜をペリクルフレームに接着する接着剤層のうち少なくとも一つの層を、ペリクルとレチクルに囲まれた空間からの乱反射光から、遮蔽するためにペリクルフレームの粘着剤塗布面の粘着剤層および接着剤塗布面の接着剤層のうち少なくとも一つの層のペリクル内部に面した側に塗布した耐光性の高いポリマーからなる遮蔽手段を設けたことを特徴とするペリクル。
- リソグラフィーに用いられるペリクルにおいて、ペリクルをレチクルに装着するための粘着剤層およびペリクル膜をペリクルフレームに接着する接着剤層のうち少なくとも一つの層を、ペリクルとレチクルに囲まれた空間に対し、密閉するためにペリクルフレームの粘着剤塗布面の粘着剤層および接着剤塗布面の接着剤層のうち少なくとも一つの層のペリクル内部に面した側に塗布した耐光性の高いポリマーからなる密閉するための手段を設けたことを特徴とするペリクル。
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