JP4380141B2 - シリコンウェーハの評価方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコンウエーハの評価方法、並びにその評価方法に基づいて判定した高品質のシリコンウエーハを用いたSOIウエーハの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、デバイス用基板として、支持基板上にシリコン活性層(SOI層)が形成されたSOIウエーハが広く利用されている。このようなSOIウエーハの製造方法として、例えば2枚のシリコンウエーハ同士を酸化膜を介して貼り合わせる貼り合わせ法が知られている。
図8は、貼り合わせ法の一つであるイオン注入剥離法によるSOIウエーハの製造工程の一例を示したものである。
【0003】
まず、最初の工程(1)では、SOI層となるボンドウエーハ21と支持基板となるベースウエーハ22とを準備し、続く工程(2)では、ボンドウエーハ21とベースウエーハ22のうちの少なくとも一方のウエーハの表面を酸化する。ここでは、ボンドウエーハ21を熱酸化しており、絶縁性の確保と熱処理時間とを考慮して、例えば、その表面に2nm〜3000nmの厚さの酸化膜23を形成する。
【0004】
工程(3)では、表面に酸化膜(絶縁層)23を形成したボンドウエーハ21の片側の表面から水素イオンをイオン注入する。なお、希ガスイオンあるいは水素イオンと希ガスイオンの混合ガスイオンをイオン注入してもよい。これにより、ウエーハ内部にイオンの平均進入深さにおいて表面に平行なイオン注入層24を形成することができる。なお、この時のイオン注入層の深さは、酸化膜23の厚さやイオン注入の際の注入加速電圧の大きさにより制御でき、最終的に形成されるSOI層の厚さに反映される。
【0005】
工程(4)は、ボンドウエーハ21のイオン注入された側の表面とベースウエーハ22の表面とを酸化膜23を介して貼り合わせる。例えば、常温の清浄な雰囲気下で2枚のウエーハ21,22の表面同士を接触させることにより、接着剤等を用いることなくウエーハ同士が接着する。
【0006】
次に、工程(5)では、熱処理によりボンドウエーハ21の一部をイオン注入層24で剥離する。例えば、ボンドウエーハ21とベースウエーハ22とを貼り合わせて接着したものに対し、不活性ガス雰囲気下約500℃以上の温度で熱処理を加えれば、結晶の再配列と気泡の凝集とによって剥離ウエーハ25とSOIウエーハ26(SOI層27+埋込み酸化膜23+ベースウエーハ22)に分離される。
【0007】
工程(6)では、SOIウエーハ26に対して結合熱処理を加える。前記(4)の貼り合わせ工程および(5)の剥離熱処理工程で接着させたウエーハ同士の結合力では、そのままデバイス作製工程で使用するには弱いので、結合熱処理としてSOIウエーハ26に高温の熱処理を施して結合強度を十分なものとする。例えば、この熱処理は不活性ガス雰囲気下、1050℃〜1200℃で30分から2時間の範囲で行うことができる。
【0008】
工程(7)では、SOIウエーハ26表面に形成された酸化膜を弗酸洗浄により除去するものである。
さらに工程(8)では、必要に応じ、SOI層27の厚さを調整するための酸化を行い、次いで(9)工程では弗酸洗浄により酸化膜28を除去して、SOI層27の厚さを調整することもできる。
以上のような工程(1)〜(9)を経て、絶縁層23上にシリコン活性層27が形成されてなるSOIウエーハ26を製造することができる。
【0009】
上記のようにSOIウェーハを製造する場合、ボンドウエーハとしては、これまでは通常、表面にサイズが50nm以上の微小ピット欠陥が存在するシリコンウエーハを使用するのが一般的であった。しかし、近年、シリコン活性層の薄膜化要求が増し、これに適用できるシリコンウエーハの品質要求も厳しくなっている。
【0010】
そこで、シリコン活性層の欠陥を低減させるものとして、エピタキシャル層を利用したものや、FPD、LSTD、COP等のグローンイン(Grown−in)欠陥と呼ばれる単結晶成長起因の欠陥の無い、いわゆるニュートラルな領域(N領域)のシリコン単結晶を利用したものが提案されている。
【0011】
例えば、シリコンウエーハ(ボンドウエーハ)上にエピタキシャル層を形成し、エピタキシャル層にボロンをイオン注入した後、支持基板に酸化膜を介して貼り合わせ、さらにボンドウエーハの裏面を研削研磨することによりSOIウエーハを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、このようにエピタキシャル層を形成したウエーハをボンドウエーハとして使用した場合、SOI層の欠陥は改善されるが、エピタキシャル層を成長させる工程が増えるため、製造コストが著しく増加するという問題がある。
【0012】
一方、ボンドウエーハとして、FPDやCOP等の微小欠陥が存在しないN領域で育成したシリコンウエーハを用いる場合には、シリコン単結晶の育成条件を精密に制御する必要はあるが、エピタキシャル層を形成させるような工程は不要であるという利点がある。
【0013】
ここでN領域について説明しておくと、通常の結晶中固液界面近傍の温度勾配Gが大きい炉内構造(ホットゾーン:HZ)を使用したCZ引上げ機で結晶軸方向に成長速度Vを高速から低速に変化させた場合、図9に示したような欠陥分布図として得られることが知られている。
図9においてV領域とは、Vacancy、つまりシリコン原子の不足から発生する凹部、穴のようなものが多い領域であり、I領域とは、シリコン原子が余分に存在することにより発生する転位や余分なシリコン原子の塊が多い領域のことである。そして、V領域とI領域の間には、原子の不足や余分が無い(少ない)ニュートラル(Neutral、以下Nと略記することがある)領域が存在し、また、V領域の境界近辺にはOSF(酸化誘起積層欠陥、OxidationInduced Stacking Fault)と呼ばれる欠陥が、結晶成長軸に対する垂直方向の断面で見た時に、リング状に分布(以下、OSFリングということがある)していることも確認されている。
【0014】
そして、一般には、成長速度が比較的高速の場合には、空孔型の点欠陥が集合したボイド起因とされているFPD、LSTD、COP等のグローンイン欠陥が結晶径方向全域に高密度に存在し、これらの欠陥が存在する領域はV領域となる。また、成長速度の低下に伴い、OSFリングが結晶の周辺から発生し、このリングの外側に格子間シリコンが集合した転位ループ起因と考えられているL/D(Large Dislocation:格子間転位ループの略号、LSEPD、LFPD等)の欠陥(巨大転位クラスタ)が低密度に存在し、これらの欠陥が存在する領域はI領域(L/D領域ということがある)となる。さらに、成長速度を低速にすると、OSFリングがウエーハの中心に収縮して消滅し、全面がI領域となる(図9では、結晶成長界面の面内温度分布が均一なものを用いて結晶を成長させているため、V領域とI領域が大きく離れている例であり、上記説明とは完全には一致していない。)。
【0015】
そして、V領域とI領域の中間でOSFリングの外側のN領域は、空孔起因のFPD、LSTD、COPも、格子間シリコン起因のLSEPD、LFPDも存在しない領域となる。なお、最近では、N領域をさらに分類すると、図9に示されているように、OSFリングの外側に隣接するNv領域(空孔の多い領域)とI領域に隣接するNi領域(格子間シリコンが多い領域)とがあり、Nv領域では、熱酸化処理した際に酸素析出量が多く、Ni領域では酸素析出が殆ど無いことがわかっている。
さらに、ごく最近、Nv領域にはOSF消滅直後にCuデポジション法により極めて微細な欠陥が検出される領域が一部存在することも分かった(例えば、特許文献4参照。)。
【0016】
なお、Cuデポジション法とは、半導体ウエーハの欠陥の位置を正確に測定し、半導体ウエーハの欠陥に対する検出限度を向上させ、より微細な欠陥に対しても正確に測定し、分析できるウエーハの評価法である。
具体的には、ウエーハ表面上に所定の厚さの絶縁膜を形成させ、前記ウエーハの表面近くに形成された欠陥部位上の絶縁膜を破壊して欠陥部位にCu等の電解物質を析出(デポジション)するものである。つまり、Cuデポジション法は、Cuイオンが溶存する液体の中で、ウエーハ表面に形成した酸化膜に電位を印加すると、酸化膜が劣化している部位に電流が流れ、CuイオンがCuとなって析出することを利用した評価法である。酸化膜が劣化し易い部分にはCOP等の欠陥が存在していることが知られている。
Cuデポジションされたウエーハの欠陥部位は、集光灯下や直接的に肉眼で分析してその分布や密度を評価することができ、さらに顕微鏡観察、透過電子顕微鏡(TEM)または走査電子顕微鏡(SEM)等でも確認することができる。
【0017】
従来、原料融液から引き上げたシリコン単結晶インゴットをスライスしてウエーハとした場合、N領域はウエーハ面内では一部分にしか存在しなかったが、近年の技術の進歩により、引上げ速度(V)と結晶固液界面軸方向温度勾配(G)の比であるV/Gを制御することでN領域が横全面(ウェーハ全面)に広がった結晶が製造できるようになっている(図9参照)。
【0018】
そこで、SOIウエーハの製造においても、前記したようにボンドウエーハとして全面N領域となるシリコン単結晶ウエーハを用いる方法が提案されている。
例えば、チョクラルスキー法(CZ法)によりシリコン単結晶を引上げる際、引き上げ速度Vと引上げ軸方向の結晶固液界面の温度勾配Gとの比(V/G)を所定の範囲内に制御してN領域のシリコン単結晶を引上げ、ボンドウエーハとして、このN領域のシリコンウエーハを使用したSOIウエーハが提案されている(例えば、特許文献2及び特許文献3参照。)。
【0019】
【特許文献1】
特開平10−79498号公報(第4−6頁、図2)
【特許文献2】
特開2001−146498号公報(第5−8頁)
【特許文献3】
特開2001−44398号公報(第2−4頁、図1)
【特許文献4】
特開2002−201093号公報
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、引き上げたシリコン単結晶インゴットが所望の領域で育成されたものであることを確認するためにCuデポジション法による評価(Cuデポジション評価)を行うとなると、ウエーハの鏡面加工が必須である上、ウエーハ表面に酸化膜を形成させた後、Cuを析出させる処理(これらの処理を「Cuデポジション処理」と呼ぶ。)を行った上で分析を行う必要がある。従って、特にシリコン単結晶インゴットの引上げ直後にCuデポジション法により微小欠陥の有無を判定するには相当な日数を要し、リードタイムが長く、処理コストも大きいという問題がある。
【0021】
また、例えばイオン注入剥離法によりSOIウエーハを製造する際、ボンドウェーハとベースウェーハとの貼り合わせのための酸化処理及びSOI層の厚さを調整するための酸化処理を行った後、酸化膜除去のため弗酸洗浄を行う場合があるが、ボンドウエーハとしてN領域で育成したシリコン単結晶を用いても、SOI層がほぼ全面あるいは局部的に破壊するという不良が発生する場合があった。特にSOI層の厚さを薄く形成したときに上記のような不良が生じることが多かった。また、将来、さらにSOI層の薄膜化が要求されるようになった場合には、このような単にN領域で育成したシリコンウエーハをボンドウエーハとして使用してもSOI層が著しく劣化してしまうことが懸念されるほか、SOI層とベースウェーハの層間絶縁酸化膜の膜質を損なうという問題も予想される。
【0022】
そこで本発明者らは、SOIウエーハを製造する際、N領域の中でも、Cuデポジション法により検出される欠陥領域(以下「Cuデポジション欠陥領域」という場合がある。)が存在しないN領域となるような条件下でシリコン単結晶インゴットを引上げ、このインゴットから得たシリコンウエーハをボンドウエーハとして用いれば、弗酸洗浄等により微小ピットが発生せずに優れた電気特性を持つSOIウエーハを製造することができることを発想した。
【0023】
本発明は前述したような問題点に鑑みてなされたもので、シリコンウエーハについて、V領域、OSF領域、巨大転位クラスタ(LSEP、LFPD)領域、及びCuデポジション法により検出される欠陥領域を含まないニュートラル領域(N領域)のものであることを、迅速、容易に、かつ的確に判定することができるシリコンウエーハの評価方法を提供することを主な目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明によれば、シリコンウエーハの評価方法であって、シリコンウェーハ中の初期酸素濃度がXppma(ASTM’79)であり、該ウエーハに対してドライ酸素雰囲気中900℃から1100℃の温度領域で2時間から4時間の酸化処理を施し、次いで前記ドライ酸素雰囲気よりも水蒸気を多く含むウエット酸素雰囲気中1100℃から1200℃の温度領域で1時間から2時間の酸化処理を施すことによりウエーハの表面に生成されるOSF最大密度がY個/cm2であったとき、Y≦1.3X2−10Xを満たすことを基準として判定を行うことを特徴とするシリコンウェーハの評価方法が提供される。
【0025】
本発明者らは、Cuデポジション法により検出される欠陥領域が存在しないN領域のシリコンウエーハのほとんどが、上記のような評価方法においてY≦1.3X2−10Xを満たすことを見出した。従って、この評価方法に従えば、シリコンウエーハの初期酸素濃度と、2段階の熱処理後のOSF最大密度との関係から、Cuデポジション法により検出される欠陥領域が存在しないN領域のものであることを容易に、かつ的確に判定することができる。また、このような評価方法は、必ずしも鏡面研磨が必要では無いなど、Cuデポジション法に比べて処理が容易であり、処理時間及び処理コストを抑えることができる。
【0026】
このような評価方法を適用する場面は特に限定されないが、例えば、前記評価方法による判定を、少なくとも、原料融液からシリコン単結晶インゴットを引上げる引上げ工程と、該インゴットをスライスしてシリコンウエーハを得るスライス工程と、該シリコンウエーハを鏡面化する鏡面加工工程によりシリコンウエーハを製造する際の前記スライス工程の前と前記鏡面加工工程の後の少なくともいずれかにおいて行うことができる。
【0027】
例えば、引上げたシリコン単結晶インゴットをスライスする前にサンプルとして切り出したシリコンウエーハに対して前記評価方法を適用すれば、そのインゴット全体から得られるシリコンウエーハについて効率的に評価することができ、その後、スライス工程を行うか否かの判断を素早く、かつ的確に行うことができる。
一方、鏡面加工工程の後であれば、多数のウエーハの中から任意に抜き取った鏡面化ウエーハに対して評価を行うことができ、最終的な判定を素早く、かつ高い信頼性を持って行うことができる。
【0028】
また、前記評価方法による判定を行う前と後の少なくともいずれかにおいて、さらにグローンイン欠陥の有無の判定を行うことが好ましい。
グローンイン欠陥が存在するV領域やI領域のシリコンウエーハも前記のようなY≦1.3X2−10Xを満たす場合があり得るので、さらにグローンイン欠陥の有無の判定を行うことで、Cuデポジション欠陥領域が存在しないN領域のシリコンウエーハであることをより確実に判定することができる。
【0029】
また、前記評価方法による判定を前記スライス工程の前に行い、かつ前記鏡面加工工程の後にCuデポジション法による評価を行ってもよい。
Cuデポジション法による評価を行うには鏡面加工を必須とするが、初期酸素濃度とOSF最大密度との関係を求める方法ではスライス工程の前の段階で素早く判定でき、その後、鏡面加工まで進んだ段階ではウエーハは既に鏡面化されているので、例えば任意に抜き取った鏡面ウェーハに対してCuデポジション法による評価を行うことで、所望の領域のシリコンウエーハであることを、一層高い信頼性を持って判定することができる。
【0030】
さらに、本発明によれば、前記評価方法を適用したSOIウエーハの製造方法が提供される。すなわち、絶縁層上にシリコン活性層が形成されてなるSOIウエーハの製造方法において、前記シリコンウエーハの評価方法によりCuデポジション法により検出される欠陥領域が存在しないN領域のシリコンウエーハとして判定したものを、前記SOIウエーハのシリコン活性層を形成するウエーハとして用いることを特徴とするSOIウエーハの製造方法が提供される。
【0031】
このように本発明に係る評価方法によりCuデポジション欠陥領域が存在しないN領域のシリコンウエーハとして判定したものを、SOIウエーハのシリコン活性層を形成するウエーハとして用いてSOIウエーハを製造すれば、例えば、シリコン活性層の厚さが200nm以下となるような場合であっても、弗酸洗浄等により欠陥が拡大してシリコン活性層が破壊されることがなく、高品質のSOIウエーハを製造することができる。
【0032】
この場合、前記SOIウエーハの製造は、イオン注入剥離法により行うことができる。
前記評価方法により所望のウエーハとして判定したシリコンウエーハを用いてイオン注入剥離法によりSOIウエーハの製造を行えば、シリコン活性層を極めて薄く厚さの均一なものとすることができる上、欠陥の無い極めて高品質のSOIウエーハを製造することができる。
【0033】
また、前記シリコン活性層を形成するシリコンウエーハとしては、初期酸素濃度が15ppma(ASTM’79)以上のものを用いることが好ましい。
このような初期酸素濃度を有するものであれば、前記評価を行うための酸化処理において、判定に必要なOSFを十分生成させることができ、また、シリコン活性層において、悪影響となる不純物等を除去するゲッタリング能力を十分発揮させることができる。
【0034】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明者らは、Cuデポジション欠陥領域が存在しないN領域となるようにシリコン単結晶インゴットを引き上げ、これをスライスして鏡面ウエーハとするまでに、Cuデポジション法により検出される欠陥領域が存在しないN領域のシリコンウエーハであることを、Cuデポジション法によらずに、容易に、かつ高い信頼性を持って評価することができる方法について鋭意研究を行った。
その結果、シリコンウエーハに対して所定の熱処理を施して強制的に発生させたOSFの密度と、初期酸素濃度を判断基準とすることで、Cuデポジション法により検出される微小欠陥の存在を、簡単に、かつ的確に評価することができることを見出した。
【0035】
具体的には、本発明者らは、ドライ酸素雰囲気中と、ウエット酸素雰囲気中とで、所定の温度と時間で2段階の酸化処理を施した後、薬液で酸化膜を除去するとOSFが高感度に検出されたことを確認した。
ここで本発明者らは、ウエーハ面内のOSF最大密度(個/cm2)とウェーハの初期酸素濃度ppma(ASTM’79)の関係調査を行った。その際、初期酸素濃度の増加に伴いOSF密度が増加し、また、そのOSFは結晶を高速から低速へ漸減する際、OSF領域で最大密度を示し、V領域、Nv領域およびI領域の一部にも低密度で発生するが、Ni領域に近づくほど減少することを確認した。
さらに、Cuデポジション欠陥が存在するN領域とCuデポジション欠陥フリーのN領域の境界を調査した。
【0036】
その結果、図3のようなグラフが得られ、OSF最大密度をY(個/cm2)、初期酸素濃度をXppma(ASTM’79)とした場合、Cuデポジション欠陥フリーのN領域は、Y≦1.3X2−10Xの関係を満たすOSF最大密度領域にほぼ相当することがわかった。そこで、Y≦1.3X2−10Xを満たすことを基準とすれば、Cuデポジション法により検出される欠陥領域が存在しないN領域のシリコンウエーハであるか否かを鏡面研磨等を行わずに、迅速かつ感度良く判定することができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について具体的に説明する。なお、本発明に係るシリコンウエーハの評価方法は、評価するシリコンウエーハの用途等は特に限定されず、どのようなシリコンウエーハについても適用することができるが、好適な態様として、シリコン単結晶インゴットを引き上げ、SOIウエーハを製造するまでの工程において適用する場合について説明する。
【0038】
図1は、シリコン単結晶インゴットからSOIウエーハを製造するまでの工程において、本発明の評価方法を取り入れた一例を示すフロー図である。
まず、最初の結晶製造工程(A)、すなわちシリコン単結晶の引き上げ工程では、チョクラルスキー法(CZ法)により原料融液からシリコン単結晶インゴットを引上げる。このとき、例えば図4に示されるような単結晶引上げ装置を使用し、V/Gを制御しながらN領域であってCuデポジション欠陥領域の無いシリコン単結晶となるように育成する。
【0039】
この単結晶引上げ装置30について説明すると、引上げ室31と、引上げ室31中に設けられたルツボ32と、ルツボ32の周囲に配置されたヒータ34と、ルツボ32を回転させるルツボ保持軸33及びその回転機構(図示せず)と、シリコンの種結晶を保持するシードチャック6と、シードチャック6を引上げるワイヤ7と、ワイヤ7を回転又は巻き取る巻取機構(図示せず)を備えている。また、ヒータ34の外側周囲には断熱材35が配置されている。
【0040】
ルツボ32は、その内側のシリコン融液(湯)2を収容する側には石英ルツボが設けられ、その外側には黒鉛ルツボが設けられている。なお、引上げ室31の水平方向の外側に、図示しない磁石を設置し、シリコン融液2に水平方向あるいは垂直方向等の磁場を印加することによって、融液の対流を抑制し、単結晶の安定成長をはかる、いわゆるMCZ法が用いられることも多い。
【0041】
また、育成したシリコン単結晶1を囲むようにして筒状の黒鉛筒(遮熱板)12が設けられており、さらに結晶の固液界面4近傍の外周に環状の外側断熱材10が、内側には内側断熱材11がそれぞれ設けられている。これらの断熱材10,11は、その下端とシリコン融液2の湯面3との間に2〜20cmの間隔を設けて設置されている。このような黒鉛筒(遮熱板)12や断熱材10,11を設けることにより、結晶中心部分の温度勾配Gc[℃/cm]と結晶周辺部分の温度勾配Geとの差が小さくなり、例えば結晶周辺の温度勾配の方が結晶中心より低くなるように炉内温度を制御することもできる。
また、黒鉛筒12の上には冷却筒14があって冷却媒体を流して強制冷却している。さらに、冷却ガスを吹き付けたり、輻射熱を遮って単結晶を冷却する筒状の冷却手段を設けてもよい。
【0042】
このような単結晶引上げ装置30を用いてシリコン単結晶を製造するには、まず、ルツボ32内でシリコンの高純度多結晶原料を融点(約1420℃)以上に加熱して融解する。次に、ワイヤ7を巻き出すことにより融液2の表面略中心部に種結晶の先端を接触又は浸漬させる。その後、ルツボ保持軸33を回転させるとともに、ワイヤ7を回転させながら巻き取る。これにより種結晶も回転しながら引上げられ、単結晶の育成が開始され、以後、引上げ速度と温度を適切に調節することにより略円柱形状のシリコン単結晶インゴット1を得ることができる。
【0043】
そして、N領域であって、Cuデポジション欠陥領域が存在しないシリコン単結晶を育成するには、例えば、引上げ中のシリコン単結晶の成長速度を漸減した場合、OSFリングが消滅した後に残存する、Cuデポジション法により検出される欠陥領域が消滅する境界の成長速度と、さらに成長速度を漸減した場合に格子間転位ループが発生する境界の成長速度との間の成長速度に制御して結晶を育成する。すなわち、引上げ中のシリコン単結晶の成長速度を結晶肩から直胴尾部にかけて高速から低速へ漸減させた場合、図5に示したように、成長速度Vに応じて、V領域、OSF領域、Cuデポジション欠陥領域、Nv領域、Ni領域、I領域(巨大転位クラスタ発生領域)の順に各相が形成されるが、N領域のうち、OSFリング消滅後に残存するCuデポジションにより検出される欠陥領域が消滅する境界の成長速度と、さらに成長速度を漸減した場合に、I領域が発生する成長速度との間の成長速度に制御して単結晶を育成する。このような方法によれば、FPD等のV領域欠陥、巨大転位クラスタ(LSEPD、LFPD)等のI領域欠陥、OSF領域を含まず、かつCuデポジション法により検出される微細な欠陥もないN領域のシリコン単結晶インゴットを引き上げることができる。
【0044】
なお、シリコン単結晶中の酸素濃度に関しては、要求されるゲッタリング能力等に応じて適宜設定すればよいが、酸素濃度が低過ぎると、後に評価を行うための酸化処理において、判定に必要なOSFを十分生成させることができないおそれがあるので、初期酸素濃度は15ppma(ASTM’79)以上となるように制御することが好ましい。また、このような酸素濃度であれば、後のデバイス作製工程において、不純物等を除去するゲッタリング能力を十分発揮させることができる。なお、酸素濃度の上限に関しては特に限定されないが、例えば酸素析出物等を考慮すると30ppma程度が適当である。
【0045】
次に、引き上げたシリコン単結晶インゴットをスライスしてウエーハとするが、上記のようにCuデポジション欠陥領域を含まないN領域を育成するには極めて厳密な制御が必要であるため、必ずしも狙った領域の単結晶が育成できるとは限らない。
そこで、所望の単結晶が製造できたか否かを検査する必要があり、スライス工程の前に本発明に係る評価方法(以下、「OSF評価」という場合がある)を適用して判定する(a)。
具体的には、例えば、インゴット直胴部の両端からサンプルとしてのウエーハを数枚切り出し、必要に応じてラッピング等を行った後、初期酸素濃度X(ppma)を測定する。
【0046】
次に、サンプルのシリコンウエーハに対してドライ酸素雰囲気中900℃から1100℃の温度領域で2時間から4時間の酸化処理(ドライ酸化処理)を施す。さらに、前記ドライ酸素雰囲気よりも水蒸気を多く含むウエット酸素雰囲気中1100℃から1200℃の温度領域で1時間から2時間の酸化処理(ウエット酸化処理)を施し(以下、このような2段階の酸化処理を「OSF熱処理」という場合がある)、OSFを強制的に生成させる。
【0047】
そして、このような2段階の熱処理(OSF熱処理)を施した後、ウエーハの表面に生成されるOSF最大密度がY(個/cm2)であったとき、Y≦1.3X2−10Xを満たすことを基準として合否判定を行う。すなわち、この式を満たす場合には、引き上げたシリコン単結晶インゴットをスライスして得られるシリコンウエーハは、Cuデポジション欠陥領域が存在しないN領域である可能性が極めて高く、合格と判定してスライス工程に移すことができる。一方、上記式が満たされない場合には、狙ったものとは違う領域のシリコン単結晶が育成されたことが予想されるので、スライス工程に移すのを中止する等の措置をとることができる。なお、図3に示されているように、わずかではあるが、Y≦1.3X2−10Xを満たさない場合でも、Cuデポジション欠陥領域が存在しないN領域のものもあるので、不合格と判定された場合には、ここで、あるいは後に、Cuデポジション法による判定を行い、再度確認することもできる。
こうしてインゴットをスライスする前に、迅速にCuデポジション欠陥領域が無い結晶であるか否かを判定することができ、工程上極めて都合が良い。
【0048】
一方、何らかの理由によりN領域から外れてV領域あるいはI領域のシリコン単結晶が育成された場合であっても、上記のような評価方法を行ったときに、Y≦1.3X2−10Xを満たす可能性がある。
そのため、インゴットの両端から切り出したサンプル用の別のウエーハを用い、さらにV領域並びにI領域のそれぞれに存在するグローンイン欠陥について評価を行い、それらの欠陥の有無の判定を行うことが望ましい(b)。
具体的には、サンプルのウエーハを、所定のエッチング液を用いてエッチングするなどしてFPD等のV領域欠陥、及び巨大転位クラスタ(LSEPD、LFPD)等のI領域欠陥について、それらの有無を判定すれば良い。なお、このようなグローンイン欠陥についての評価は、OSF評価(a)の前に行ってもよい。
【0049】
これらの評価(a),(b)の結果、引き上げられたシリコン単結晶インゴットは、V領域あるいはI領域ではなく、Cuデポジション欠陥領域が存在しないN領域である(合格)と判定したら、CW製造工程(B)に移し、スライス工程においてインゴットをスライスしてシリコンウエーハを得る。その後、これらのシリコンウエーハに対し、面取り、ラッピング、エッチング等の加工を施し、ラッピングとエッチングにより平坦化されたウエーハ(CW)を得る。
【0050】
続くPW製造工程(C)、すなわち鏡面加工工程では、研磨装置を用いてシリコンウエーハを鏡面研磨し、鏡面ウエーハ(PW)とする。
そして、ここで鏡面化されたシリコンウエーハは、インゴットの両端から切り出されたサンプルに対する先の評価(a),(b)において合格と判定されたものと同じインゴットから得られたものであるので、Cuデポジション欠陥領域が存在しないN領域の可能性が極めて高いが、必ずしもインゴット全体が同じ領域で育成されているとは限らない。
【0051】
そこで、必要に応じ、鏡面加工工程の後、多数の鏡面研磨ウエーハ(PW)から任意に抜き取ったものに対して先の評価方法を再度適用することが望ましい(PW抜き取りOSF評価(c))。このような抜き取り評価を行うことにより、同じインゴットから得られた他の鏡面ウエーハについても所望の領域となっていることを、より確実に判定することができる。なお、具体的な評価手順については前記と同様である。
また、同様の理由からグローンイン欠陥(FPD、LFPD、LSEP等)の有無の判定も再度行えば(PW抜き取りグローンイン欠陥評価(d))、信頼性を一層高めることができる。
【0052】
一方、図2に示されるように、鏡面加工工程の後、OSF評価に代えて、Cuデポジション法による評価を行っても良い(PW抜き取りCuデポジション欠陥評価(e))。
本発明に係る評価方法は、Cuデポジション法により検出される欠陥を感度良く反映するが、Cuデポジション法による評価結果と完全に一致するものではない。また、前記したようにCuデポジション法による評価は、鏡面加工を必須とし、判定に時間がかかるが、この段階ではウエーハは既に鏡面化されている。そこで、鏡面加工工程の後、任意に抜き取った鏡面ウェーハに対してCuデポジション法による評価を行えば、所望の領域のシリコンウエーハであることをより高い信頼性を持って比較的容易に判定することができる。
なお、Cuデポジション法による評価を行った後、前記と同様にグローンイン欠陥の有無についても判定を行うことで、V領域でもI領域でもないことを再度確認しても良い(d)。
【0053】
上記のような抜き取り評価((c)又は(e)、及び(d))でも合格と判定された場合には、同じインゴットから得られた全てのシリコンウエーハは、Cuデポジション法により検出される欠陥領域が存在しないN領域のシリコンウエーハ(合格品)として判定することができる。
【0054】
このように、本発明に係る評価方法によれば、引き上げたインゴットをスライスする前に、Cuデポジション欠陥領域が存在しないN領域のシリコン単結晶を引き上げることができたことを容易に、かつ的確に判定することができ、そのような判定を行った上で、後のスライス工程等に進めて所望の領域のシリコンウエーハを確実に製造することができる。従って、インゴットを実際にスライスする工程に入るまでに、評価結果待ちの時間を短くすることができ、工程を効率化することができる。また、スライス、鏡面研磨等行った後にCuデポジション欠陥有りとの判定となることを最小限に抑制することができる。
【0055】
そして、上記のようにCuデポジション法により検出される欠陥領域が存在しないN領域のシリコンウエーハとして判定したものを、SOIウエーハのシリコン活性層を形成するウエーハとして用いてSOIウエーハを製造すれば、極めて高品質のSOIウエーハを得ることができる。
例えばイオン注入剥離法によりSOIウエーハを製造する場合、本発明に係る評価方法により合格と判定したウエーハをボンドウエーハとして使用すれば、シリコン活性層が例えば200nm以下となるように薄く形成しても、フッ酸洗浄によりシリコン活性層が破壊されず、電気的に信頼性の高いSOIウエーハを、高歩留まりで効率的に製造することができる。
【0056】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実験1):OSF密度と初期酸素濃度に基づく判定基準の確認
図4に示したような単結晶製造装置30を用いて、以下のように結晶成長速度の漸減実験を行い、各領域の境界における成長速度を調べた。
まず、24インチ(600mm)径の石英ルツボに原料となる多結晶シリコンを150kgチャージし、V領域からN領域の範囲内で8インチ(200mm)径のシリコン単結晶インゴットを引き上げた。このインゴットを切断して結晶ブロックに分割した後、各結晶ブロックを、結晶軸方向に頭側から順にスライスしてウェーハを得た。このとき、切断順序がわかるようにレーザーマーキングにて番号を印字し、鏡面ウェーハに加工した。
【0057】
そして、各結晶ブロック単位のロットから2枚隣接する鏡面ウエーハを抜き取り、1枚はOSF熱処理後、セコエッチングにより酸化膜を除去してOSFの分布状況を確認した。なお、OSF評価は、1000℃の温度領域で3時間のドライ酸化処理を施し、次いで1150℃の温度領域で100分間のパイロ酸化処理(ウエット酸化処理)後、冷却(800℃出し入れ)し、薬液で酸化膜を除去したあと、密度測定および分布の確認を行った。
さらにもう1枚については、熱酸化膜形成後、Cuデポジション法による処理を施し、酸化膜欠陥の分布状況を確認した。評価条件は次のとおりである。
1)酸化膜:25nm
2)電界強度:6MV/cm
3)電圧印加時間:5分間
【0058】
OSF最大密度Y(個/cm2)と初期酸素濃度Xppma(ASTM’79)との関係、及びこれらとCuデポジション欠陥との相関について調査したところ、図3に示したものと同様の関係が得られ、Cuデポジション欠陥フリーである条件は、Y≦1.3X2−10Xの範囲内であることがわかった。
【0059】
(実験2):引上げ条件の確認
図4に示した引き上げ装置の24インチ石英ルツボに原料多結晶シリコンを150kgチャージし、成長速度を0.7mm/minから0.3mm/minの範囲で直径210mmのインゴットの結晶頭部から尾部にかけて漸減させるように制御した。また、酸素濃度は23〜26ppma(ASTM’79)となるようにした。
【0060】
そして、図6(A)(B)に示すとおり、引上げた単結晶の頭部から尾部にかけて結晶軸方向に縦割り切断し、その後、直径200mmのウェーハ形状の鏡面加工仕上げのサンプルを4枚作製した。
4枚のサンプルのうち3枚は、ウエーハライフタイム(WLT)測定(測定器:SEMILAB WT−85)およびセコエッチングによりV領域、OSF領域、I領域の各領域の分布状況、FPD、LEPの分布状況、そして2段熱処理によるOSF発生状況を調査し、各領域境界の成長速度を確認した。
さらに結晶軸方向に縦割り切断したサンプルのうち1枚は200mmφのウェーハ形状にくり抜き加工し、1枚は鏡面加工仕上げの上、ウェーハ表面に熱酸化膜形成後、Cuデポジション処理を施し、酸化膜欠陥の分布状況を確認した。
本実験における詳細は以下のとおりである。
【0061】
(1)直径210mmのインゴットを結晶軸方向10cm毎の長さでブロックに切断後、結晶軸方向に縦割り切断加工し、その後、図7に示されるように結晶軸に対し垂直方向に直径200mm(8インチ)の円柱状にくり抜き加工後ウェーハ形状の鏡面加工サンプルを4枚仕上げた。
【0062】
(2)上記サンプルのうち1枚目は、ウェーハ熱処理炉内620℃・2時間(窒素雰囲気)熱処理後、800℃・4時間(窒素雰囲気)と1000℃・16時間(ドライ酸素雰囲気)の2段熱処理を施した後に冷却し、SEMILAB WT−85によるWLTマップを作成した。
また2枚目は、ミラーエッチング後、セコエッチングを施し、FPDおよびLEPの分布を観察した。
【0063】
(3)3枚目は、OSF熱処理後、セコエッチング後酸化膜を除去し、OSFの分布状況を確認した。なお、OSF評価は、1000℃の温度領域で3時間ドライ酸化処理を施し、次いで1150℃の温度領域で100分間のウエット酸化処理後冷却(800℃出し入れ)し、薬液で酸化膜を除去したあと、密度測定および分布の確認を行った。
【0064】
(4)4枚目は、ウェーハ表面に熱酸化膜形成後Cuデポジション処理を施し、酸化膜欠陥の分布状況を確認した。評価条件は次のとおりである。
1)酸化膜:25nm
2)電界強度:6MV/cm
3)電圧印加時間:5分間
【0065】
実験結果
上記実験から、V領域、OSF領域、N領域、I領域の各領域を特定し、各領域におけるOSFの最大密度を測定した。
V領域 : 220個/cm2
OSF領域 : 2259個/cm2
Cuデポジション欠陥領域 : 1283個/cm2
Cuデポジション欠陥フリーN領域 : 856個/cm2
非析出N領域 : 0個/cm2
I領域 : 48個/cm2
【0066】
さらに、上記の結果から、V領域、OSF領域、N領域、I領域の各領域境界の成長速度を確認した。
V領域/OSF領域境界 : 0.523mm/min
OSF消滅境界 : 0.510mm/min
Cuデポジション欠陥消滅境界 : 0.506mm/min
析出N領域/非析出N領域境界 : 0.497mm/min
非析出N領域/I領域境界 : 0.488mm/min
このような結果から、今回用いた結晶引き上げ装置において、Cuデポジション欠陥領域が存在しないN領域となるようにシリコン単結晶を育成するには、成長速度が0.506〜0.488mm/minの範囲内となるように設定すれば良いことが分かった。
【0067】
(実験3):SOIウエーハの製造
図4に示した実験1と同じ引き上げ装置により、Y≦1.3X2−10X(23≦X≦25:初期酸素濃度(ppma))を確実に満たすように、直胴部10cmから直胴尾部までの成長速度を0.50〜0.49mm/minに設定してシリコン単結晶を引上げた。
そして引き上げた全長110cmの結晶を10cm毎の長さに切断し、頭部10cmを除く各結晶ブロックを鏡面仕上げのウェーハに加工し、単位ロットから鏡面ウェーハを任意に抜き取った後、初期酸素濃度、FPD、LFPD、LSEP、2段熱処理によるOSF、Cuデポジション欠陥、酸化膜耐圧(Cモード)の各品質の評価をおこなった。なお、酸化膜耐圧特性の評価を行った際、Cモード測定条件は次のとおりである。
1)酸化膜:25nm
2)測定電極:リンドープ・ポリシリコン
3)電極面積:8mm2
4)判定電流:1mA/cm2
【0068】
FPD:結晶全ブロック発生なし
LFPD、LSEP:結晶全ブロック発生なし
Cuデポジション欠陥:結晶全ブロック発生なし
酸化膜耐圧(Cモード):結晶全ブロック100%
【0069】
また、各単位ロットからの抜き取りによる初期酸素濃度と2段熱処理後のOSF評価の結果を表1に示す。なお、評価の際、鏡面ウェーハを1/2のサイズに分割した。
表1から、全てのブロックにおいて、Y≦1.3X2−10Xを満たすことが分かった。
【0070】
【表1】
【0071】
さらに、イオン注入剥離法に基づき、上記ロットの鏡面ウェーハをボンドウェーハとして使用し、ベースウェーハとの結合後に50nm厚のSOI層に加工してSOIウエーハを製造した。
このように製造されたSOIウェーハの表面をパーティクルカウンター(KLA−Tencor社製Surfscan SP−1)により測定したところ、欠陥等はほとんど検出されなかった。さらにその後、50%弗酸溶液に30分間無攪拌のまま放置し欠陥密度測定を行った場合でもエッチピット欠陥は検出されなかった。
【0072】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0073】
例えば、上記実施形態では、イオン注入剥離法によりSOIウエーハを製造する際、本発明に係る評価方法に基づいて合格と判定したものをボンドウエーハとして使用する場合について説明したが、本発明のシリコンウエーハの評価方法は、上記のようにSOIウエーハを製造する場合に限定して適用されるものではない。
【0074】
例えば、SOIウエーハの製造に関して言えば、酸化膜を介さずに絶縁性の支持基板、例えば石英、SiC、サファイア等の基板に直接貼り合わせてSOIウエーハを製造する場合、また、SIMOX法、すなわちシリコンウエーハに酸素をイオン注入した後、熱処理してSOIウエーハを製造する場合においても、使用するシリコンウエーハの合否を本発明の評価方法によって的確に判定して、高品質のSOIウエーハを効率的に製造することができる。
また、本発明に係るシリコンウエーハの評価方法は、SOIウエーハの製造に限らず、エピタキシャルウエーハの製造等、様々なデバイス作製用ウエーハの製造においてシリコンウエーハを評価する際に適用することができる。
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るシリコンウエーハの評価方法によれば、V領域、OSF領域、巨大転位クラスタ(LSEP、LFPD)領域およびCuデポジション欠陥領域を含まないニュートラル領域(N領域)であることを、迅速、容易に、かつ的確に判定することができる。そして、このような評価方法をSOIウエーハの製造において適用すれば、SOI製造工程内で表面に微小ピットが発生しない、優れた電気特性を持つSOIウェーハを高歩留まりで効率的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】SOIウエーハの製造において本発明に係る評価方法を適用する場合の一例を示すフロー図である。
【図2】SOIウエーハの製造において本発明に係る評価方法を適用する場合の他の一例を示すフロー図である。
【図3】初期酸素濃度とOSF密度との関係、及びそれらとCuデポジション欠陥領域との関係示すグラフである。
【図4】本発明で使用することができるシリコン単結晶製造装置の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の評価方法により判定し得る領域を示す説明図である。
【図6】(A)単結晶成長速度と結晶切断位置の関係を示す関係図である。
(B)成長速度と各領域を示す説明図である。
【図7】Cuデポジション評価試料の作製方法を示す説明図である。
【図8】SOIウエーハの製造工程の一例を示すフロー図である。
【図9】ボンドウエーハとして従来使用されている結晶領域を表す説明図である。
【符号の説明】
1…シリコン単結晶インゴット、 2…シリコン融液、 3…湯面、
4…固液界面、 6…シードチャック、 7…ワイヤ、 10…外側断熱材、
11…内側断熱材、 12…黒鉛筒、 21…ボンドウエーハ、
22…ベースウエーハ、 23…酸化膜(絶縁層)、
24…イオン注入層、 25…剥離ウエーハ、 26…SOIウエーハ、
27…シリコン活性層(SOI層)、 28…酸化膜、
30…単結晶引上げ装置、 31…引上げ室、 32…ルツボ、
33…ルツボ保持軸、 34…ヒータ、 35…断熱材。
Claims (4)
- シリコンウエーハの評価方法であって、シリコンウェーハ中の初期酸素濃度が15ppma(ASTM’79)以上30ppma以下のXppma(ASTM’79)であり、該ウエーハに対してドライ酸素雰囲気中900℃から1100℃の温度領域で2時間から4時間の酸化処理を施し、次いで前記ドライ酸素雰囲気よりも水蒸気を多く含むウエット酸素雰囲気中1100℃から1200℃の温度領域で1時間から2時間の酸化処理を施すことによりウエーハの表面に生成されるOSF最大密度がY個/cm2であったとき、Y≦1.3X2−10Xを満たすことを基準としてCuデポジション法により検出される欠陥領域が存在しないN領域のシリコンウエーハであるかの判定を行うことを特徴とするシリコンウェーハの評価方法。
- 前記評価方法による判定を、少なくとも、原料融液からシリコン単結晶インゴットを引上げる引上げ工程と、該インゴットをスライスしてシリコンウエーハを得るスライス工程と、該シリコンウエーハを鏡面化する鏡面加工工程によりシリコンウエーハを製造する際の前記スライス工程の前と前記鏡面加工工程の後の少なくともいずれかにおいて行うことを特徴とする請求項1に記載のシリコンウエーハの評価方法。
- 前記評価方法による判定を行う前と後の少なくともいずれかにおいて、さらにグローンイン欠陥の有無の判定を行うことを特徴とする請求項2に記載のシリコンウェーハの評価方法。
- 前記評価方法による判定を前記スライス工程の前に行い、かつ前記鏡面加工工程の後にCuデポジション法による評価を行うことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のシリコンウェーハの評価方法。
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