本発明は、上記した問題点を踏まえ、端末側で指定された種々の印刷条件に対応した多様な画質での印刷を効率良く実現することを目的とし、付加的には、端末と印刷装置との間において、データ変換処理に必要なソフトウェア資源の有効活用を図ることを目的として、以下の構成を採った。
本発明の印刷装置は、
コンピュータによる取り扱いが可能な形式の画像データを所定の参照データを用いて印刷可能な形式の印刷データに変換する際に、1つの前記画像データに対して複数種類の参照データのうちのいずれかの種類の参照データが用いられることによって複数通りの印刷データが生成され得る場合に、該生成されたそれぞれの印刷データに基づいて、前記1つの画像データによって表わされる画像を2種類以上の画質で印刷可能な印刷装置であって、
少なくとも前記画像データを印刷データに変換する際に、前記複数種類の参照データのうちの一部の種類の参照データを保持する参照データ保持手段と、
所定の端末において前記画像データによって表わされる画像についての印刷指示がなされた場合に、該印刷指示がなされた画像である印刷対象画像についての印刷要求を表わす印刷要求データを入力する入力手段と、
該入力された印刷要求データに基づいて、前記印刷指示がなされた画像である印刷対象画像について前記端末側で指定された印刷条件の種類を判断する印刷条件判断手段と、
該判断された印刷条件の種類に応じて、前記画像データを印刷データに変換する処理の実行主体を前記端末または前記印刷装置のいずれかに決定し、該決定した実行主体において生成された前記印刷データに基づいて前記印刷対象画像の印刷を行なう印刷手段と
を備えたことを要旨とする。
また、上記印刷装置と同様の技術を用いてなされた本発明の印刷方法は、
コンピュータによる取り扱いが可能な形式の画像データを所定の参照データを用いて印刷可能な形式の印刷データに変換する際に、1つの前記画像データに対して複数種類の参照データのうちのいずれかの種類の参照データが用いられることによって複数通りの印刷データが生成され得る場合に、少なくとも前記画像データを印刷データに変換する際に、前記複数種類の参照データのうちの一部の種類の参照データを保持する印刷装置において、前記生成されたそれぞれの印刷データに基づき、前記1つの画像データによって表わされる画像を2種類以上の画質で印刷可能とする印刷方法であって、
所定の端末において前記画像データによって表わされる画像についての印刷指示がなされた場合に、該印刷指示がなされた画像である印刷対象画像についての印刷要求を表わす印刷要求データを入力した前記印刷装置が、
該入力された印刷要求データに基づいて、前記印刷指示がなされた画像である印刷対象画像について前記端末側で指定された印刷条件の種類を判断し、
該判断された印刷条件の種類に応じて、前記画像データを印刷データに変換する処理の実行主体を前記端末または前記印刷装置のいずれかに決定し、該決定した実行主体において生成された前記印刷データに基づいて前記印刷対象画像の印刷を行なうことを要旨とする。
ここで、印刷条件とは、画像データの印刷データへの変換時に考慮される条件である。この印刷条件を構成する個々の要素としては、例えば、印刷解像度、用紙等の印刷対象物の種類、印刷指示がなされた端末の種類などを考えることができる。
本発明の印刷装置ないし印刷方法では、端末から画像の印刷指示を受けた印刷装置は、該端末から入力した印刷要求データに基づいて、印刷対象画像について端末側で指定された印刷条件の種類を判断し、該判断された印刷条件の種類に応じて、画像データを印刷データに変換する処理の実行主体を端末または印刷装置のいずれかに決定し、該決定した実行主体において生成された前記印刷データに基づいて前記印刷対象画像の印刷を行なう。これにより、印刷条件の種類に適した単一の主体(端末または印刷装置)によってデータ変換処理が実行され、印刷データが生成されるので、1つの画像を表わす画像データから印刷データを生成するために端末と印刷装置の双方がデータ変換処理を実行するという必要がなくなる。従って、印刷装置において、種々の印刷条件に対応した多様な画質での印刷を効率良く実現することができる。
上記の印刷装置および印刷方法には、様々な展開を考えることができる。以下、印刷装置を例にとって説明するが、印刷方法としても、ほぼ同様の展開が可能である。
印刷手段が、印刷条件の種類が第1の条件であると判断された場合に、印刷要求データの一部として入力されたデータであって、端末が前記印刷対象画像を表わす画像データを該端末側に保持された前記一部の種類以外の種類の参照データを用いて変換することによって生成された第1印刷データに基づいて、印刷対象画像の印刷を行なう入力印刷手段と、印刷条件の種類が第1の条件以外の条件であると判断された場合に、印刷要求データの一部として入力された印刷対象画像を表わす画像データを、前記保持された一部の種類の参照データを用いて印刷データに変換し、該変換後の印刷データに基づいて印刷対象画像の印刷を行なう変換印刷手段とを備えた構成としてもよい。こうした構成では、データ変換処理に用いられる複数種類の参照データを、印刷装置が、端末と分担して保持している。こうした印刷装置に対して端末から画像の印刷指示がなされると、印刷装置は、端末側で指定された印刷条件の種類が第1の条件以外の条件であるときに、自己が保持している参照データを用いたデータ変換処理を実行して印刷データを生成し、印刷条件の種類が第1の条件であるときには、データ変換処理を実行せず、端末が、自己が保持する参照データを用いて実行したデータ変換処理の結果(第1印刷データ)を入力する。これにより、端末と印刷装置の双方に同一の参照データを格納するという必要がなくなる。従って、端末と印刷装置との間において、データ変換処理に必要なソフトウェア資源(参照データ)を有効に活用しつつ、複数種類の参照データを使い分けた多様な画質での印刷を効率良く実現することができる。
入力印刷手段が印刷の基準とする第1印刷データを、端末側に保持された高解像度用の参照データを用いて変換されたものとすることも好ましい。こうすれば、情報量の多い印刷データへの変換処理が印刷装置側で行われることを回避することができる。
印刷条件判断手段を、前記入力された印刷要求データに含まれているデータの種類を判別し、該判別結果に基づいて印刷条件の種類を判断する手段とすることも、印刷装置側での印刷条件の種類の判断を、簡単かつ確実に行なうことができる点で望ましい。
また、印刷条件判断手段を、入力された印刷要求データに基づいて、端末側で指定された所定の印刷条件についての設定内容を特定し、該特定した設定内容に基づいて印刷条件の種類を判断する手段としても差し支えない。この構成において、印刷条件の種類と前記印刷データへの変換に用いる参照データとの対応付けを、印刷解像度についての設定内容に応じて規定する規定手段を備え、印刷条件判断手段が、端末側で指定された所定の印刷条件についての設定内容として、少なくとも印刷解像度についての設定内容を特定し、該特定した設定内容について前記規定手段による対応付けを参照することにより印刷条件の種類を判断することとしてもよい。こうすれば、印刷データに要求されるドット数に適した参照データを、印刷装置側で決定することができる。
上記の参照データ保持手段を、3種類以上の参照データのうちの2種類以上の参照データを保持する手段であって、該2種類以上の参照データのうち、特定の種類の参照データを予め保持すると共に、該特定の種類以外の残余の種類の参照データを、画像データを印刷データに変換する際に端末から入力して一時的に保持する手段としてもよい。この場合には、上記の変換印刷手段が、印刷条件の種類が第2の条件であると判断された場合に、端末から入力した画像データを、前記予め保持された特定の種類の参照データを用いて第2印刷データに変換する予備変換手段と、印刷条件の種類が第1の条件および第2の条件以外の条件であると判断された場合に、端末から画像データに加えて前記残余の種類の参照データを入力し、該入力した参照データを用いて画像データを第3印刷データに変換する入力変換手段とを備えることが望ましい。こうすれば、印刷装置側には、3種類以上の参照データのうちの特定の種類の参照データのみを予め保持しておけばよい。従って、3種類以上の参照データを使い分けたデータ変換処理を実現する際に、印刷装置側の負担を軽減することができる。
上記の入力変換手段を、画像データの入力に先立って、残余の種類の参照データの入力を行なう手段とすることも、印刷装置側でのデータ変換処理をより円滑に行なうことが可能となる点で好適である。
印刷条件判断手段によって判断される第2の条件の内容を、使用者による使用頻度の高いものに定めておいてもよい。こうすれば、印刷装置においてデータ変換処理が行なわれる機会が多くなり、画像データよりもデータ量の多い印刷データが端末から印刷装置に転送される頻度が少なくなる。従って、3種類以上の参照データを使い分けたデータ変換処理を実現する際に、端末から印刷装置へのデータの転送に要する時間を全体として短縮することができる。
印刷条件判断手段を、前記入力された印刷要求データに含まれているデータの種類を判別し、該判別結果に基づいて印刷条件の種類を判断する手段とすることも、印刷装置側での印刷条件の種類の判断を、簡単かつ確実に行なうことができる点で望ましい。
印刷条件判断手段を、入力された印刷要求データに基づいて、印刷解像度と印刷対象物の種類についての設定内容を特定し、該特定した2つの設定内容の組み合わせに基づいて印刷条件の種類を判断する手段とすることも望ましい。こうすれば、データ変換処理に用いられる参照データを、印刷データに要求されたドットの細かさが印刷対象物上で実現される程度を考慮して、印刷装置側で決定することが可能となる。例えば、入力印刷手段が入力する第1印刷データが、端末側に保持された高解像度用の参照データを用いて変換されたものであり、予備変換手段が用いる特定の種類の参照データが、印刷解像度の設定と印刷対象物の種類との適した組み合わせに対応する内容で構成されている場合には、印刷条件判断手段を、印刷解像度の設定が所定値を超える場合に印刷条件の種類が第1の条件であると判断し、印刷解像度の設定が所定値以下の場合には、該設定での印刷に適した種類の印刷対象物と組み合わされているときに印刷条件の種類が第2の条件であると判断する手段とすればよい。こうすれば、情報量の多い印刷データへの変換処理が印刷装置側で行われることを回避することができると共に、印刷装置側において、情報量の多くない印刷データへの変換処理のうち、印刷解像度と印刷対象物の種類とが適合している場合の変換処理を、予め保持された参照データを用いて迅速に行うことができる。
印刷条件判断手段を、印刷指示がなされた端末の種類を考慮して、印刷条件の種類を判断する手段とすれば、印刷指示がなされた端末の性質に応じて、データ変換処理の精細度を変えることが可能となる。この場合において、印刷条件判断手段を、印刷指示がなされた端末の種類が画像データの印刷データへの変換機能を持たないものである場合に、印刷条件の種類が第2の条件であると判断する手段としてもよい。こうすれば、印刷指示を受けた端末に代わって、印刷装置において、データ変換処理を、予め保持された参照データを用いて迅速に行うことができる。
複数種類の各参照データには、少なくとも、画像データによって表わされる色情報を印刷装置で表現可能な色情報に変換する色変換用データが含まれていることとしてもよい。こうすれば、印刷装置側には、端末側とは異なる種類の色変換用データが保持される。従って、印刷装置と端末との間において、色変換用データが保持される領域の有効活用を図ることができる。
いずれかの種類の参照データの少なくとも一部を構成するデータが、通信回線を介して前記端末または前記印刷装置に供給される構成を採っても差し支えない。こうすれば、将来的な印刷画質の良好化に伴う参照データの追加や変更に柔軟に対応することができる。
本発明のデータ変換装置は、
コンピュータによる取り扱いが可能な形式の画像データを印刷可能な形式の印刷データに変換するデータ変換装置であって、
前記画像データの印刷データへの変換の際に参照される参照データを保持するデータ保持手段と、
前記画像データについて指定された印刷条件の種類を判断する条件判断手段と、
前記印刷条件の種類の判断結果に基づいて、前記保持された参照データを用いた前記画像データの印刷データへの変換を行なうか否かを決定する決定手段と、
該決定手段により前記保持された参照データを用いた変換を行なう決定がなされた場合には、該変換を実行して印刷データを生成する印刷データ生成手段と、
該決定手段により前記保持された参照データを用いた変換を行なわない決定がなされた場合には、前記画像データの印刷データへの変換を、当該データ変換装置に接続され、当該データ変換装置が保持している参照データとは異なる参照データを保持する他のデータ変換装置において行なうことを要旨とする。
また、上記データ変換装置と同様の技術を用いてなされた本発明のデータ変換方法は、
コンピュータによる取り扱いが可能な形式の画像データを、印刷可能な形式の印刷データに変換するデータ変換方法であって、
前記画像データの印刷データへの変換の際に参照される参照データを保持する第1データ変換装置が、前記画像データについて指定された印刷条件の種類を判断し、該印刷条件の種類の判断結果に基づいて、前記保持された参照データを用いた前記画像データの印刷データへの変換を行なうか否かを決定し、
前記保持された参照データを用いた変換を行なう決定がなされた場合には、前記第1データ変換装置が、前記画像データの印刷データへの変換を実行して印刷データを生成し、
前記保持された参照データを用いた変換を行なわない決定がなされた場合には、前記第1データ変換装置に接続され、該第1データ変換装置が保持している参照データとは異なる参照データを保持する第2データ変換装置が、前記画像データの印刷データへの変換を実行して印刷データを生成することを要旨とする。
本発明のデータ変換装置ないしデータ変換方法では、複数の各データ変換装置に互いに異なる参照データを分担して保持しておき、いずれの参照データを用いるべきかを印刷条件の種類に応じて決定し、決定に係る参照データを保持する側のデータ変換装置がデータ変換処理を行なう。これにより、複数の各データ変換装置に同一の参照データを格納し、1つの画像を表わす画像データに対するデータ変換処理を複数のデータ変換装置が実行するという必要がなくなる。従って、複数の各データ変換装置の間において、データ変換処理に必要なソフトウェア資源(参照データ)を有効に活用しつつ、複数種類の参照データを使い分けて多様な画質での印刷を効率良く実現することができる。
こうしたデータ変換装置およびデータ変換方法についても、上記した印刷装置および印刷方法とほぼ同様の様々な展開が可能である。また、上記のデータ変換装置を備えた印刷装置や上記のデータ変換装置を備えた端末として発明を把握することも可能である。
本発明の印刷データ生成システムは、
コンピュータによる取り扱いが可能な形式の画像データによって表わされる画像についての印刷指示が所定の端末から印刷装置に対してなされる場合に、前記印刷指示に係る画像データを前記印刷装置で印刷可能な形式に変換した印刷データを、前記端末側で前記画像データについて指定された印刷条件の種類に応じて複数通りに生成する印刷データ生成システムであって、
前記画像データの印刷データへの変換の際に参照される前記複数種類の参照データのうち、一部の種類の参照データを前記印刷装置に予め保持すると共に、前記一部の種類以外の種類の参照データを前記端末に保持する保持手段と、
前記印刷装置または前記端末の少なくとも一方が、前記印刷指示がなされた画像である印刷対象画像について前記端末側で指定された印刷条件の種類を判断する判断手段と、
該判断された印刷条件の種類に応じて、前記画像データを印刷データに変換する処理の実行主体を前記端末または前記印刷装置のいずれかに決定し、該決定した実行主体において前記印刷データを生成する印刷データ生成手段と
を備えたことを要旨とする。
また、上記印刷データ生成システムと同様の技術を用いてなされた本発明の印刷データ生成方法は、
コンピュータによる取り扱いが可能な形式の画像データによって表わされる画像についての印刷指示が所定の端末から印刷装置に対してなされる場合に、前記印刷指示に係る画像データを前記印刷装置で印刷可能な形式に変換した印刷データを、前記端末側で前記画像データについて指定された印刷条件の種類に応じて複数通りに生成する印刷データ生成方法であって、
前記画像データの印刷データへの変換の際に参照される前記複数種類の参照データのうち、一部の種類の参照データを前記印刷装置に予め保持すると共に、前記一部の種類以外の種類の参照データを前記端末に保持し、
前記印刷装置または前記端末の少なくとも一方が、前記印刷指示がなされた画像である印刷対象画像について前記端末側で指定された印刷条件の種類を判断し、
該判断された印刷条件の種類に応じて、前記画像データを印刷データに変換する処理の実行主体を前記端末または前記印刷装置のいずれかに決定し、該決定した実行主体において前記印刷データを生成することを要旨とする。
本発明の印刷データ生成装置ないし印刷データ生成方法では、画像データの印刷データへの変換の際に参照される複数種類の参照データのうち、一部の種類の参照データを印刷装置に予め保持すると共に、一部の種類以外の種類の参照データを端末に保持しておき、印刷装置または端末の少なくとも一方が、印刷指示がなされた画像である印刷対象画像について端末側で指定された印刷条件の種類を判断する。こうして判断された印刷条件の種類に応じて、画像データを印刷データに変換する処理の実行主体が端末または印刷装置のいずれかに決定され、該決定された実行主体において印刷データが生成される。これにより、印刷条件の種類に適した単一の主体(端末または印刷装置)によってデータ変換処理が実行され、印刷データが生成されるので、端末と印刷装置の双方に同一の参照データを格納し、1つの画像を表わす画像データに対するデータ変換処理を端末と印刷装置の双方が実行するという必要がなくなる。従って、データ変換処理に必要なソフトウェア資源(参照データ)を有効に活用しつつ、種々の印刷条件に対応した多様な画質での印刷を効率良く実現することができる。
こうした印刷データ生成システムおよび印刷データ生成方法についても、上記した印刷装置および印刷方法とほぼ同様の様々な展開が可能である。例えば、印刷データ生成手段が、前記印刷条件の種類が第1の条件であると判断された場合に、前記実行主体を前記端末に決定し、該端末が、該端末に保持された参照データを用いて前記印刷対象画像を表わす画像データを印刷データに変換し、第1印刷データを生成する端末側生成手段と、前記印刷条件の種類が第1の条件以外の条件であると判断された場合に、前記実行主体を前記印刷装置に決定し、前記印刷装置が、前記端末から前記印刷対象画像を表わす画像データを入力し、前記画像データを、少なくとも該印刷装置に予め保持された参照データを用いて印刷データに変換し、印刷データを生成する印刷装置側生成手段とを備える構成としてもよい。こうすれば、データ変換処理は、必要な種類の参照データを保持する側の装置で行なわれる。従って、複数種類の参照データを使い分けた印刷データの生成を効率良く行なうことができる。
上記の印刷データ生成システムにおいて、印刷装置が、端末が保持する参照データのうちの特定の種類の参照データを、一時的に格納する格納領域を備えている場合には、印刷装置側生成手段を、印刷条件の種類が第2の条件であると判断された場合に、印刷装置に予め保持された参照データを用いて画像データを第2印刷データに変換する主変換手段と、印刷条件の種類が第1の条件および第2の条件以外の条件であると判断された場合に、端末から画像データに加えて前記特定の種類の参照データを入力し、該入力した参照データを前記格納領域に一時的に保持し、該保持した参照データを用いて前記画像データを第3印刷データに変換する副変換手段とを備える構成を採ってもよい。こうすれば、端末が保持する参照データを印刷装置にロードして印刷装置側でデータ変換処理を行なうことが可能となる。従って、印刷装置において多様な画質での印刷を実現するために、印刷装置側に多種類の参照データを予め保持しておく必要がない。このほか、上記の印刷データ生成システムにおいて、参照データを構成するデータの少なくとも一部を、通信回線を介して端末または印刷装置に供給するデータ供給手段を備えることも、将来的な印刷画質の良好化に伴う参照データの追加や変更に柔軟に対応することができる点で望ましい。
以上説明した本発明の構成および作用を一層明らかにするために、以下、本発明の実施の形態を、以下の順序で説明する。
A.実施例
A−1.印刷システムGH1の構成
A−2.データ変換処理の内容
A−3.印刷指示端末1からの指示に基づく分担印刷処理の内容
A−4.作用効果
B.変形例
A.実施例:
A−1.印刷システムGH1の構成:
図1は本発明の実施例である印刷システムGH1の概略構成を示す説明図である。図1に示すように、印刷システムGH1は、印刷装置としてのプリンタ20と、プリンタ20の入力側に有線または無線で接続され、プリンタ20に対して画像の印刷指示を行なう印刷指示端末1とから構成されている。
プリンタ20は、カラー画像を各種用紙等の印刷対象物Pに印刷するカラープリンタである。本実施例では、プリンタ20として、印刷対象物P上にC(シアン)・LC(ライトシアン)・M(マゼンタ)・LM(ライトマゼンタ)・Y(イエロ)・K(ブラック)の6色のドットを形成することによってカラー画像を印刷するインクジェットプリンタを使用している。
印刷指示端末1では、画像の印刷をプリンタ20に指示するに当たり、種々の印刷条件が設定される。こうして設定される印刷条件には、印刷指示端末1の使用者の選択によって設定されるもの(例えば、印刷解像度や印刷対象物Pの種類等)と、印刷指示に伴って自動的に設定されるもの(例えば、印刷指示がなされた印刷指示端末1の種類等)とがある。プリンタ20は、印刷指示端末1側での印刷条件の設定に応じて、印刷対象となる画像(以下、印刷対象画像という)を、多種類の画質で印刷可能に構成されている。
印刷指示端末1は、カラー画像を、画素毎のR(赤),G(緑),B(青)各色の階調値で表現した画像データ(以下、RGBデータという)として取り扱っている。このため、印刷指示端末1においてRGBデータとして扱われる画像をプリンタ20で印刷するためには、印刷対象画像を表わすRGBデータを、所定の参照データを用いて、プリンタ20で印刷可能な形式の印刷データ(C・LC・M・LM・Y各色のドット分布を表わすデータ 以下、CMYデータという)に変換する必要がある。この参照データには、解像度変換における指示内容を表わすデータ(以下、解像度指示データという)や色変換用のルックアップテーブル(以下、LUTという)、ハーフトーニングにおける指示内容を表わすデータ(以下、階調変換指示データという)が含まれている。こうしたRGBデータのCMYデータへの変換処理(以下、データ変換処理という)に用いられる参照データは、プリンタ20に要求される画質が高くなるほど精細なデータである必要がある。このため、本実施例の印刷システムGH1では、様々な画質に対応する参照データを多数準備している。こうした多数の参照データを、本実施例では、実現される画質や使用される頻度を考慮して、3つの種類(第1参照データS1、第2参照データS2、第3参照データS3)に区分けしている。
上記の参照データは、一般に、データ変換処理の手順および内容を表わすプログラムと共に、プリンタドライバに組み込まれる。このプリンタドライバは、通常、プリンタ20やパーソナルコンピュータ10においてデータ変換処理を実行することができるように、プリンタ20の制御回路40やパーソナルコンピュータ10のPC制御装置11に格納される。一方、プリンタ20に接続される印刷指示端末1の中には、パーソナルコンピュータ10とは異なり、プリンタドライバを実行する処理能力を備えていないため、データ変換処理を行なえない簡易端末90(例えば、図1に示す携帯電話91,携帯情報端末92,ゲーム装置93,デジタルスチルカメラ94)もある。
本実施例の印刷システムGH1では、上記3種類の参照データを、プリンタドライバの一部として、印刷指示端末1のうちのパーソナルコンピュータ10とプリンタ20とに分担して格納している。具体的には、プリンタ20には、第2参照データS2を、パーソナルコンピュータ10には第1参照データS1および第3参照データS3を格納している。こうした印刷システムGH1では、印刷指示端末1からプリンタ20への印刷指示がなされた場合に、パーソナルコンピュータ10ないしプリンタ20が、印刷指示の内容を解析して、印刷条件の種類を第1の条件,第2の条件,第3の条件のいずれかに判断し、この判断結果に基づいて、データ変換処理に用いるべき参照データを第1参照データS1,第2参照データS2,第3参照データS3のいずれかに決定すると共に、データ変換処理の実行主体をパーソナルコンピュータ10,プリンタ20のいずれかに決定する。この印刷条件の種類に基づいた決定の内容にしたがって、データ変換処理が行なわれ、CMYデータが生成される。
図2は、パーソナルコンピュータ10が備えるPC制御装置11の構成を示す説明図である。このPC制御装置11はパーソナルコンピュータ10に内蔵されている。図5に示すように、PC制御装置11は、CPU11aと、このCPU11aとバスにより相互に接続されたROM11b,RAM11c,ディスクドライブコントローラ11d,入力コントローラ11f,ディスプレイコントローラ11g,パラレル入出力インタフェース11h,シリアル入出力インタフェース11i等の各部を備える。ROM11bは、CPU11aで各種演算処理を実行するのに必要なプログラムやデータを予め格納している。RAM11cは、CPU11aで各種演算処理を実行するのに必要な各種プログラムやデータを一時的に格納するためのメモリである。
ディスクドライブコントローラ11dには外部記憶装置としてのハードディスク11eが接続されている。ハードディスク11eには、RAM11cにロードされて実行される各種プログラムやプリンタ20用のデバイスドライバであるプリンタドライバなどが記憶されている。プリンタドライバには、後述する分担処理A1(図8)やデータ変換処理(図5)等の画像印刷に関する処理の内容および手順を表わすプログラムと、このプログラムの実行に際して用いられるデータが記述されている。このデータには、分担処理A1(図8)において参照される対応マップTM(図6)や、データ変換処理(図5、図8)において用いられる第1参照データS1および第3参照データS3が含まれている。第1参照データS1は、様々な画質に対応する多数の参照データ(解像度指示データとLUTと階調変換指示データの組み合わせ)のうち、高解像度での印刷に適した参照データの総称であり、実際には、高い解像度を表わす各設定値に対応した参照データを複数含んでいる。第3参照データS3は、第1参照データS1および後述する第2参照データS2以外の種類に属する参照データの総称である。本実施例では、印刷対象物Pの種類と印刷解像度の設定の組み合わせのうち、組み合わせの適合性および使用頻度が低いものについて、該組み合わせでの印刷に用いられる種類の参照データを、第3参照データS3に属するものとしている。
ディスプレイコントローラ11gには、カラー画像を表示可能なディスプレイ14が接続されており、入力コントローラ11fには、マウスやキーボード等の入力装置15が接続されている。パラレル入出力インタフェース11hは、コネクタ56を介して、プリンタ20のI/F専用回路50に接続されている。シリアル入出力インタフェース11iは、モデム87,公衆電話回線PNTを介して、外部のネットワークであるインターネットINに接続されている。
図3はプリンタ20の概略構成を示す説明図である。プリンタ20は、図示するように、紙送りモータ22によって印刷対象物Pを搬送する機構と、キャリッジモータ24によってキャリッジ30をプラテン26の軸方向に往復動させる機構と、キャリッジ30に搭載された印刷ヘッドユニット28を駆動してインクの吐出およびドット形成を行なう機構と、これらの各機構が接続される制御回路40とを備える。
印刷対象物Pを搬送する機構は、プラテン26と、プラテン26を回転させる紙送りモータ22と、図示しない給紙補助ローラと、紙送りモータ22の回転をプラテン26および給紙補助ローラに伝えるギヤトレイン(図示省略)とから構成されている。プリンタ20に供給された印刷対象物Pは、プラテン26と給紙補助ローラの間に挟み込まれるようにセットされ、プラテン26の回転角度に応じて所定量だけ送られる。キャリッジ30を往復動させる機構は、プラテン26の軸と並行に架設されたキャリッジ30を摺動可能に保持する摺動軸34と、キャリッジモータ24との間に無端の駆動ベルト36を張設するプーリ38と、キャリッジ30の原点位置を検出する位置検出センサ39等から構成されている。
キャリッジ30に搭載された印刷ヘッドユニット28は、ブラック・シアン・ライトシアン・マゼンタ・ライトマゼンタ・イエロの各色ごとに計6個のインク吐出用ヘッド61〜66を備える。また、キャリッジ30の底部には、各インク吐出用ヘッド61〜66に連通された6本の導入管が立設されている。キャリッジ30に黒インク用カートリッジ70a,カラーインク用カートリッジ70bが上方から装着されると、各カートリッジに設けられた接続孔に各導入管が挿入される。これにより、インク用カートリッジ内のインクが、毛細管現象を利用して導入管を介して吸い出され、各インク吐出用ヘッド61〜66に導かれる。各インク吐出用ヘッド61〜66には、各色について32個のノズルNzが設けられていて、各ノズルには、インク通路と、その通路上にピエゾ素子PEとが設けられている。ピエゾ素子PEは、周知のように、電圧の印加により結晶構造が歪み、極めて高速に電気−機械エネルギの変換を行う素子である。本実施例では、ピエゾ素子PEの両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧を印可することにより、ピエゾ素子PEが電圧の印加時間だけ伸張し、インク通路の一側壁を変形させる。この結果、インク通路の体積はピエゾ素子PEの伸張に応じて収縮し、この収縮分に相当するインクが粒子IpとなってノズルNzから高速で吐出される。このインクの粒子Ipがプラテン26に装着された印刷対象物Pに染み込むことによって、印刷対象物P上にドットが形成され、印刷が行なわれることになる。
制御回路40は、プリンタ20の操作パネル32と信号をやり取りしつつ、紙送りモータ22やキャリッジモータ24,印刷ヘッドユニット28による印刷動作を制御する。図4は制御回路40の構成を示す説明図である。図示するように、この制御回路40は、CPU41,CPU41で各種演算処理を実行するのに必要なプログラムやデータを予め格納したP−ROM43,CPU41で各種演算処理を実行するのに必要な各種プログラムやデータを一時的に格納するためのメモリであるRAM44,文字のドットマトリクスを記憶したキャラクタジェネレータ45,メモリカードコントローラ(MCC)47,無線I/F回路48,外部のモータ等とのインタフェースを専用に行なう回路であるI/F専用回路50などをバスで接続した算術論理演算回路として構成されている。このI/F専用回路50には、印刷ヘッドユニット28の駆動を制御するヘッド駆動回路52や同じく紙送りモータ22およびキャリッジモータ24の駆動を制御するモータ駆動回路54が接続されている。
P−ROM43には、RAM44にロードされて実行される各種プログラムやプリンタドライバなどが記憶されている。プリンタドライバには、後述する分担処理B1(図9)やデータ変換処理(図5)等の画像印刷に関する処理の内容および手順を表わすプログラムと、このプログラムの実行に際して用いられるデータが記述されている。このデータには、分担処理B1(図9)において参照される対応マップTM(図6)や、データ変換処理(図5、図9)において用いられる第2参照データS2が含まれている。第2参照データS2は、様々な画質に対応する多数の参照データのうち、使用頻度の高い印刷条件下で用いられる参照データの総称である。この第2参照データS2には、印刷対象物Pの種類と印刷解像度の設定の組み合わせが「印刷対象物P:普通紙/印刷解像度:低」である場合の印刷に適した普通紙用参照データS2aと、印刷対象物Pの種類と印刷解像度の設定の組み合わせが「印刷対象物P:写真用紙/印刷解像度:中」である場合の印刷に適した写真用参照データS2bとが含まれている。
無線I/F回路48は、プリンタ20の筐体表面に設けられたBluetooth(商標)アダプタ57に接続されている。このBluetoothアダプタ57が、簡易端末90としての携帯電話91や携帯情報端末92からのBluetooth信号(2.4GHz帯の電波)を受信することにより、携帯電話91や携帯情報端末92に保持されたRGBデータを入力することができる。また、I/F専用回路50には、ユニバーサルシリアルバスインタフェース回路が内蔵されており、このユニバーサルシリアルバスインタフェース回路は、プリンタ20の筐体表面に設けられたUSBポート56に接続されている。このUSBポート56に、簡易端末90としてのゲーム装置93やデジタルスチルカメラ94がUSBケーブル59を介して接続されることにより、ゲーム装置93やデジタルスチルカメラ94に保持されたRGBデータを入力することができる。この他、上記のUSBポート56にUSBメモリスティックを接続することや、メモリカードコントローラ47に接続されたメモリカードスロット58にメモリカード81を差し込むことによっても、USBメモリスティックやメモリカード81に保持されたRGBデータを入力することができる。なお、上記したインタフェースの形態は、周辺機器との接続の容易性を考慮して、適宜変更することができる。
以上説明したハードウェア構成を有するプリンタ20では、パーソナルコンピュータ10またはプリンタ20でのデータ変換処理の実行によって生成されたCMYデータに基づいて、紙送りモータ22によりプラテン26その他のローラを回転して印刷対象物Pを搬送しつつ、キャリッジ30をキャリッジモータ24により往復動させ、同時に印刷ヘッドユニット28の各インク吐出用ヘッド61〜66のピエゾ素子PEを駆動して、各色インクの吐出を行ない、印刷対象物P上に多色の画像を形成する。
なお、本実施例では、上述のようにピエゾ素子PEを用いてインクを吐出する方式のプリンタ20を用いているが、他の方式によってインクを吐出するプリンタを用いるものとしてもよい。例えば、インク通路に配置したヒータに通電し、インク通路内に発生する泡(バブル)によってインクを吐出する方式のプリンタや、熱転写方式のプリンタ、レーザプリンタ、白黒印刷のみを行なうプリンタ等、印刷するために画像データの変換を要するあらゆるプリンタに適用することができる。
なお、本実施例では、印刷指示端末1のうち、プリンタドライバを備えたパーソナルコンピュータ10では、画像を印刷しようとする際に、使用者が、印刷対象物Pの種類や印刷解像度についての設定内容を選択することが可能である。印刷指示を入力したパーソナルコンピュータ10は、印刷対象物Pの種類や印刷解像度について、上記選択されている設定内容を指定する。仮に、使用者による選択が全くなされなかった場合には、印刷指示に伴って、デフォルトの設定内容である「印刷対象物Pの種類:普通紙/印刷解像度:低」が自動的に指定される。一方、プリンタドライバを格納していない簡易端末90では、画像を印刷しようとする際に印刷対象物Pの種類や印刷解像度を指定することができないので、印刷指示に伴って、「印刷対象物Pの種類:指定なし/印刷解像度:指定なし」という設定内容が自動的に指定される。
A−2.データ変換処理の内容
次に、パーソナルコンピュータ10またはプリンタ20によって実行されるデータ変換処理の内容について図5を参照しつつ説明する。図5はデータ変換処理の概要を示すフローチャートである。この処理は、パーソナルコンピュータ10側では、PC制御装置11のCPU11aがハードディスク11eに格納されたプリンタドライバを用いて実行する処理であり、プリンタ20側では、制御回路40のCPU41がP−ROM43に格納されたプリンタドライバを用いて実行する処理である。
RGBデータをプリンタ20で印刷する場合には、まず、解像度変換処理(ラスタライザ)を行なう(ステップS100)。解像度変換処理は、RGBデータによって表わされる原画像を印刷対象物Pに印刷するサイズに応じて、原画像の解像度(単位長さ当たりにおける画素の数)を、プリンタの解像度(プリンタが単位長さ当たりに形成するドットの数)に合わせる処理である。こうした原画像の解像度の変更は、プリンタドライバが備える参照データの1つである解像度指示データを参照し、画素を間引いて原画像の画素の数を減らしたり、補間により原画像の画素の数を増やすことによって行なわれる。
解像度変換処理が終わると、続いて、色変換処理を行なう(ステップS102)。色変換処理は、R,G,Bの各色の階調値による色の表現方法を、C,M,Yの各色の階調値による色の表現方法に置き換える処理である。こうした置き換えは、プリンタドライバが備える参照データの1つであるLUTを利用して行なわれる。LUTは、R,G,Bの各階調値の組み合わせとC,M,Yの階調値の組み合わせとの対応関係をマップや変換式の形式で規定したものである。この色変換処理では、下色除去も併せて行われる。下色除去とは、C,M,Yの階調値の組み合わせからK(黒色)成分を抽出し、C,M,Yの階調値によって表わされたデータを、C・M・Y・Kの階調値によって表わされるデータに変換する処理である。
色変換処理を終了すると、続いて、ハーフトーニング処理を行なう(ステップS104)。ハーフトーニング処理は、C・M・Y・K各色について256通りの階調値で表わされたデータを、より少ない階調値で表現されたデータに変換する処理である。プリンタでは、C・M・Y・K各色の階調は、基本的には、印刷用紙上にドットを形成する/しないという二通りで表現されるため、表現し得る階調値が少ないからである。こうした階調変換は、プリンタドライバが備える参照データの1つである階調変換指示データを参照して行なわれる。
ハーフトーニング処理が終了すると、続いて、画素の再配置処理を行なう(ステップS106)。この処理は、ハーフトーニング処理によってドット形成の有無を表す形式に変換された画像データを、プリンタ20に転送すべき順序に並べ替える処理である。すなわち、前述のようにプリンタ20は、キャリッジ30の主走査と副走査を繰り返しながら、印刷ヘッドユニット28を駆動して、印刷対象物Pの上にドットを形成していく。画素再配置処理では、キャリッジ30の動きを考慮して、印刷ヘッドユニット28でドットを形成する順序になるように、ドットの有無を表すデータを並べ替えるのである。こうした並べ替えにより、プリンタ20が印刷可能な形式のCMYデータが生成される。
A−3.印刷指示端末1からの指示に基づく分担印刷処理の内容:
次に、上記の印刷システムGH1において、印刷指示端末1からの印刷指示に基づいてパーソナルコンピュータ10およびプリンタ20が実行する特徴的な処理である分担印刷処理の内容について図6ないし図9を参照しつつ説明する。
図6は分担印刷処理において参照される対応マップTMの一例を示す説明図である。この対応マップTMは、印刷指示端末1側で指定され得る種々の印刷条件のうちの印刷対象物Pの種類、印刷解像度の設定および印刷指示装置の種類という3つの条件に着目し、この3つの条件の内容に応じて印刷条件の種類を規定すると共に、この印刷条件の種類に応じてデータ変換処理を実行する主体とデータ変換処理に用いる参照データを規定したものである。
図示するように、対応マップTMでは、印刷解像度の設定が「高」とされ、高画質での印刷が要求されている場合には、印刷対象物Pの種類に拘らず、印刷条件の種類を「第1の条件」と規定すると共に、印刷対象物Pの種類と印刷解像度の設定の組み合わせが「印刷対象物P:普通紙/印刷解像度:低」や「印刷対象物P:写真用紙/印刷解像度:中」という使用頻度の高いものである場合に、印刷条件の種類を「第2の条件」と規定し、これら以外の印刷対象物Pの種類と印刷解像度の設定の組み合わせである場合には、印刷条件の種類を「第3の条件」と規定している。なお、印刷解像度の設定が「高」,「中」,「低」の区別は、パーソナルコンピュータ10やプリンタ20が、印刷解像度の具体的な設定値に基づいて判断する。例えば、設定値が300dpi未満の場合には「低」、設定値が300〜600dpiの場合には「中」、設定値が600dpiを超える場合には「高」、のように判断される。
また、対応マップTMでは、印刷条件の種類が、高画質での印刷が要求されている「第1の条件」である場合には、データ変換処理の内容が精細となることを考慮して、データ変換処理の実行主体を、プリンタ20よりも処理能力の高い「パーソナルコンピュータ10」と規定し、データ変換処理に用いる参照データを、パーソナルコンピュータ10自身のハードディスク11eに格納された「第1参照データS1」と規定している。一方、印刷条件の種類が「第2の条件」または「第3の条件」である場合には、いずれもデータ変換処理の実行主体を「プリンタ20」と規定しているが、「第2の条件」である場合には、使用頻度の高い設定であることを考慮し、データ変換処理に用いる参照データを、プリンタ20自身のP−ROM43に格納された「第2参照データS2(詳しくは、「印刷対象物P:普通紙/印刷解像度:低」という組み合わせに適した普通紙用参照データS2a、または、「印刷対象物P:写真用紙/印刷解像度:中」という組み合わせに適した写真用参照データS2b)」と規定している。一方、印刷条件の種類が「第3の条件」である場合には、印刷対象物Pの種類と印刷解像度の設定の組み合わせの適合性が低く、かつ、使用頻度が低い設定であることを考慮し、データ変換処理に用いる参照データを、パーソナルコンピュータ10のハードディスク11eに格納された「第3参照データS3」と規定している。
更に、対応マップTMでは、印刷対象物Pの種類や印刷解像度の設定が「指定なし」である場合には、印刷指示がなされた印刷指示端末1がプリンタドライバを備えていない簡易端末90であるとみなして、印刷条件の種類を「第2の条件」と規定し、プリンタ20が、処理能力の低い簡易端末90に代わって、自身のP−ROM43に格納された第2参照データS2(詳しくは、上述した普通紙用参照データS2a)を用いてデータ変換処理を行なう旨を規定している。
こうした対応マップTMを参照して実行される分担印刷処理の概要を、図7にブロック図として示した。図示するように、印刷条件の種類が「第1の条件」である場合には、印刷指示を行なったパーソナルコンピュータ10が、RAM11cに展開された印刷対象画像を表わすRGBデータに対して、ハードディスク11e内の第1参照データS1を用いたデータ変換処理を行ない、データ変換処理によって生成されたCMYデータをプリンタ20に転送する。一方、印刷条件の種類が「第2の条件」である場合には、印刷指示を行なったパーソナルコンピュータ10または90簡易端末90は、印刷対象画像を表わすRGBデータをプリンタ20に転送し、このRGBデータを受け取ったプリンタ20は、RAM44に展開されたRGBデータに対して、P−ROM43内の第2参照データS2を用いたデータ変換処理を行ない、CMYデータを生成する。更に、印刷条件の種類が「第3の条件」である場合には、印刷指示を行なったパーソナルコンピュータ10は、この場合のデータ変換処理に用いられる第3参照データS3をハードディスク11eから読み出し、読み出した第3参照データS3を、印刷対象画像を表わすRGBデータと共にプリンタ20に転送する。第3参照データS3およびRGBデータを受け取ったプリンタ20は、この2つのデータをRAM44に展開し、RGBデータに対して第3参照データS3を用いたデータ変換処理を行ない、CMYデータを生成する。こうしてパーソナルコンピュータ10から転送されたCMYデータやプリンタ20によって生成されたCMYデータはRAM44に展開され、展開されたCMYデータに基づいて印刷対象物P上に多色の画像が形成される。
こうした分担印刷処理の内容および手順を分担印刷処理ルーチンとして図8ないし図9に示した。図8では、分担印刷処理のうち、パーソナルコンピュータ10側でPC制御装置11のCPU11aが実行する処理の内容をルーチンA1として表わし、図9では、プリンタ20側でPC制御回路40のCPU41が実行する処理の内容をルーチンB1として表わしている。
図8に示すパーソナルコンピュータ10側のルーチンA1は、使用者による入力装置15の操作に基づいて、印刷指示端末1としてのパーソナルコンピュータ10が、ある画像についての印刷指示を表わすデータ(以下、印刷指示データLという)を入力したときに起動する。この印刷指示データLには、プリンタ20に対する印刷処理の実行開始命令を表わすデータ(以下、開始命令データL1という)のほか、印刷対象画像について設定された種々の印刷条件を表わすデータ(以下、印刷条件データL2という)と、印刷対象画像を表わす画像ファイルのパスを表わすデータ(以下、パスデータL3という)とが含まれている。
ルーチンA1が起動されると、まず、CPU11aは、プリンタドライバを起動し(ステップS300)、入力した印刷指示データLに含まれているパスデータL3に基づいて、印刷対象画像を表わすRGBデータをRAM11cに展開する処理を行なう(ステップS310)。次に、CPU11aは、入力した印刷指示データLに含まれている印刷条件データL2に基づいて、印刷対象物Pの種類および印刷解像度の設定という2つの印刷条件について、その内容を特定し(ステップS320)、特定した2つの印刷条件の内容について、対応マップTMを参照し、印刷条件の種類を、第1の条件,第2の条件,第3の条件のいずれかに決定する処理を行なう(ステップS330)。
こうして印刷条件の種類が決定された後、CPU11aは、印刷条件の種類ごとに規定された対応マップTMの内容に従い、データ変換処理を実行する(ステップS340〜S375)。具体的には、ステップS340の処理において、印刷条件の種類が第1の条件であると判断した場合には、CPU11aは、ステップS310の処理において展開されたRGBデータを、ハードディスク11eに格納された第1参照データS1を参照して、CMYデータに変換する処理を行ない(ステップS350)、この変換処理によって生成されたCMYデータ(以下、第1CMYデータという)をRAM11cに展開する。続いて、CPU11aは、開始命令データL1,印刷条件データL2および第1CMYデータの組を、プリンタ20への印刷要求を表わすデータ(以下、印刷要求データLPという)として、プリンタ20に出力する処理を行なう(ステップS355)。
一方、ステップS340の処理において、印刷条件の種類が第2の条件であると判断した場合には、CPU11aは、開始命令データL1,印刷条件データL2およびステップS310の処理において展開されたRGBデータの組を、印刷要求データLPとして、プリンタ20に出力する処理を行なう(ステップS360)。また、ステップS340の処理において、印刷条件の種類が第3の条件であると判断した場合には、CPU11aは、まず、対応マップTMにデータ変換処理に用いる参照データとして規定された第3参照データS3を、ハードディスク11eからRAM11cに展開する処理を行なう(ステップS370)。次に、CPU11aは、開始命令データL1,印刷条件データL2、ステップS370の処理において展開された第3参照データS3およびステップS310の処理において展開されたRGBデータの組を、印刷要求データLPとして、プリンタ20に出力する処理を行なう(ステップS355)。この場合、第3参照データS3は、RGBデータよりも先に出力される。
こうしてステップS355、ステップS360、ステップS375の出力処理が行なわれた後、CPU11aは、プリンタドライバを停止し(ステップS390)、本ルーチンを終了する。
続いて、プリンタ20側の処理について説明する。図9に示すプリンタ20側のルーチンB1は、印刷指示端末1としてのパーソナルコンピュータ10から出力された印刷要求データLPを入力したとき、または、印刷指示端末1としての簡易端末90から出力された、画像についての印刷要求を表わすデータ(以下、印刷要求データMPという)を入力したときに起動する。印刷要求データMPは、使用者の操作により簡易端末90にある画像についての印刷指示がなされたとき、この印刷指示に基づいて簡易端末90が生成したデータである。この印刷要求データMPには、プリンタ20に対する印刷処理の実行開始命令を表わすデータ(以下、開始命令データM1という)のほか、印刷対象画像を表わすRGBデータが含まれている。
ルーチンB1が起動されると、まず、CPU41は、プリンタドライバを起動し(ステップS500)、印刷指示端末1から出力された印刷要求データLP,MPを順次に入力する処理を行なう(ステップS510)。
続いて、入力した印刷要求データLP,MPに基づいて、印刷条件の種類を判断する処理を行なう(ステップS520)。この処理の内容および手順を、印刷条件種類判断処理ルーチンとして図10に示した。本実施例では、プリンタ20側での印刷条件の種類の判断手法として、上記したパーソナルコンピュータ10による判断手法(図8のステップS320〜S330:印刷条件データL2に基づいて特定された印刷対象物Pの種類および印刷解像度の設定の内容について対応マップTMを参照する手法)とは異なる手法を採用している。具体的には、図10に示す印刷条件種類判断処理では、入力した印刷要求データLP,MPに含まれているデータの種類を判別することによって印刷条件の種類を決定している。即ち、CPU41は、まず、入力した印刷要求データLP,MPに参照データ(本実施例の場合には、第3参照データS3)が含まれている場合には、印刷条件の種類が第3の条件であると判断し(ステップS600、S610)、入力した印刷要求データLP,MPにCMYデータ(本実施例の場合には、第1CMYデータ)が含まれている場合には、印刷条件の種類が第1の条件であると判断する(ステップS620、S630)。入力した印刷要求データLP,MPに、参照データ,CMYデータのいずれも含まれていない場合には、CPU41は、印刷条件の種類が第2の条件であると判断する(ステップS640)。よって、簡易端末90から印刷要求データMPを入力した場合には、印刷要求データMPには参照データおよびCMYデータが含まれていないので、印刷条件の種類が第2の条件であると判断される。
続いて、CPU41は、判断した印刷条件の種類について対応マップを参照し、対応マップTMの内容に従ってデータ変換処理を実行する(ステップS530〜S570)。具体的には、ステップS520の処理において、印刷条件の種類が第3の条件であると判断した場合には、CPU41は、まず、先に入力した第3参照データS3をRAM44に展開する処理を行なう(ステップS530)。この後、第3参照データS3に続いてRGBデータが入力された場合に、CPU41は、RGBデータをRAM44に展開し(ステップS535、S540)、このRGBデータを、RAM44に展開された第3参照データS3を参照してCMYデータに変換し(ステップS545)、このデータ変換処理によって生成されたCMYデータ(以下、第3CMYデータという)を、RAM44に展開する処理を行なう(ステップS580)。
一方、ステップS520の処理において、印刷条件の種類が第2の条件であると判断した場合には、CPU41は、まず、入力したRGBデータをRAM44に展開する処理を行なう(ステップS550)。次に、CPU41は、入力した印刷条件データL2に基づいて印刷対象物Pの種類および印刷解像度の設定の内容を特定した後(ステップS560)、特定した2つの印刷条件の内容について対応マップTMを参照し、第2参照データS2として用いるデータを、普通紙用参照データS2aまたは写真用参照データS2bのいずれかに決定する処理を行なう(ステップS565)。この場合、簡易端末90から入力された印刷要求データMPのように、印刷要求データMPに印刷条件データが含まれていない場合には、CPU41は、対応マップTMを参照して、印刷対象物Pの種類および印刷解像度の設定の内容を「指定なし」と判断する。よって、簡易端末90から印刷要求データMPを入力した場合には、第2参照データS2として用いるデータが普通紙用参照データS2aに決定される。
次に、CPU41は、決定された参照データをP−ROM43から読み出し、読み出した参照データを参照しながら、ステップS550の処理において展開されたRGBデータをCMYデータに変換し(ステップS570)、このデータ変換処理によって生成されたCMYデータ(以下、第2CMYデータという)を、RAM44に展開する処理を行なう(ステップS580)。また、ステップS520の処理において、印刷条件の種類が第1の条件であると判断した場合には、CPU41は、データ変換処理を行なうことなく、入力した第1CMYデータをそのままRAM44に展開する処理を行なう(ステップS580)。
続いて、CPU41は、RAM44に展開されたCMYデータと印刷条件データL2の組を印刷ジョブとして登録し、この印刷ジョブを実行する処理を行なう(ステップS585)。これにより、印刷指示端末1において印刷指示がなされた印刷対象画像が、印刷設定に従って印刷対象物Pに印刷される。こうした印刷ジョブの実行が終了した後、CPU41は、プリンタドライバを停止し(ステップS590)、本ルーチンを終了する。
なお、上記実施例における分担印刷処理ルーチンB1では、印刷要求データLP,MPに含まれている第3参照データS3や第1CMYデータを入力した後に、印刷条件の種類を判断したが(ステップS510〜S520)、参照データやCMYデータ,RGBデータの入力に先立って、印刷条件の種類を判断することも可能である。具体的には、印刷指示端末1が、印刷要求データLP,MPのヘッダ部に、第3参照データS3や第1CMYデータが付属しているか否かを表わす情報を記述しておき、この印刷要求データLP,MPを入力したプリンタ20が、ヘッダ部に記述された情報を読み取る構成とすればよい。こうすれば、プリンタ20は、参照データやCMYデータ,RGBデータの入力を待たずに、直ちに印刷条件の種類を判断することが可能となる。
A−4.作用効果:
以上説明した本実施例の印刷システムGH1では、データ変換処理に用いられる3種類の参照データS1〜S3を、プリンタ20が、印刷指示端末1としてのパーソナルコンピュータ10と分担して保持している。このプリンタ20に対して印刷指示端末1から画像の印刷指示がなされると、プリンタ20は、印刷指示端末1側で指定された印刷条件の種類が第1の条件以外の条件であるときに、印刷指示端末1からRGBデータを入力し、自己が保持している参照データ(第2参照データS2,第3参照データS3)を用いたデータ変換処理を実行してCMYデータ(第2CMYデータ,第3CMYデータ)を生成し、印刷条件の種類が第1の条件であるときには、データ変換処理を実行せず、印刷指示端末1としてのパーソナルコンピュータ10が、自己が保持する参照データ(第1参照データS1)を用いて実行したデータ変換処理の結果(第1CMYデータ)を入力する。これにより、印刷指示端末1とプリンタ20の双方に同一の参照データを格納し、1つの画像を表わす画像データに対するデータ変換処理を印刷指示端末1とプリンタ20の双方が実行するという必要がなくなる。従って、印刷指示端末1とプリンタ20との間において、データ変換処理に必要なソフトウェア資源(参照データ)を有効に活用しつつ、複数種類の参照データを使い分けた多様な画質での印刷を効率良く実現することができる。
本実施例の印刷システムGH1では、プリンタ20が、入力した印刷要求データLP,MPに含まれているデータの種類を判別することによって印刷条件の種類を決定する(図10)。従って、プリンタ20側での印刷条件の種類の判断を、簡単かつ確実に行なうことができる。
本実施例の印刷システムGH1では、印刷しようとする画像の印刷解像度が高い場合には、パーソナルコンピュータ10が第1参照データS1を用いてデータ変換処理を行ない、プリンタ20は、この処理によって生成された第1CMYデータをパーソナルコンピュータ10から入力する。これにより、情報量の多い印刷データへの変換処理がプリンタ20側で行われることを回避することができる。
本実施例の印刷システムGH1では、プリンタ20は、自身が行なうデータ変換処理に用いる2種類の参照データ(第2参照データS2,第3参照データS3)のうち、第2参照データS2を予めP−ROM43に格納し、第3参照データS3については、データ変換処理を実行する際にパーソナルコンピュータ10から入力し、一時的にRAM44に保持する。従って、P−ROM43に格納される参照データの容量を少なくすることが可能となり、3種類以上の参照データを使い分けたデータ変換処理を実現する際に、プリンタ20側の負担を軽減することができる。また、本実施例では、上記の予めP−ROM43に格納されている参照データを、「印刷対象物P:普通紙/印刷解像度:低」、「印刷対象物P:写真用紙/印刷解像度:中」という使用頻度の高い印刷条件下で用いられる第2参照データS2としている。従って、プリンタ20自身がデータ変換処理を行なう機会が多くなり、RGBデータよりもデータ量の多いCMYデータが印刷指示端末1からプリンタ20に転送される頻度が少なくなる。従って、印刷指示端末1からプリンタ20へのデータの転送に要する時間をシステム全体として短縮することができる。
本実施例の印刷システムGH1では、プリンタ20は、印刷指示がなされた印刷指示端末1の種類を考慮して印刷条件の種類を判断するので、印刷指示がなされた印刷指示端末1の性質に応じて、データ変換処理の精細度を変えることが可能となる。具体的には、プリンタ20は、データ変換処理を行なうことができない簡易端末90からの印刷要求データMPには参照データやCMYデータが含まれないことから、このような印刷要求データMPを簡易端末90から印刷指示であると判断すると共に、このような場合には、印刷条件の種類を第2の条件であると判断し、予めP−ROM43に格納された第2参照データS2を用いてデータ変換処理を行なう。従って、プリンタ20は、印刷指示を受けた簡易端末90に代わって、データ変換処理を、予め保持された第2参照データS2を用いて迅速に行うことができる。
本実施例では、データ変換処理に用いられる3種類の参照データS1〜S3には、少なくとも、R,G,Bによって表わされる色情報をプリンタ20で表現可能なC,M,Yの色情報に変換する色変換用データであるLUTが含まれている。このため、プリンタ20側には、パーソナルコンピュータ10とは異なる種類のLUTが保持される。従って、プリンタ20とパーソナルコンピュータ10との間において、LUTが保持される領域の有効活用を図ることができる。
本実施例の印刷システムGH1では、パーソナルコンピュータ10側で印刷条件の種類が第3の条件であると判断され、データ変換処理に用いられる第3参照データS3とRGBデータがプリンタ20に出力される場合に、プリンタ20は、RGBデータの入力に先立って、第3参照データS3を入力する。従って、プリンタ20は、まず第3参照データS3をRAM44に展開して、RGBデータを変換する準備をすることが可能となり、プリンタ20側でのデータ変換処理をより円滑に行なうことができる。
B.変形例:
以上本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる様態で実施し得ることは勿論である。
例えば、上記実施例における分担印刷処理(図8、図9)では、パーソナルコンピュータ10側で印刷条件の種類が第3の条件であると判断された場合に、パーソナルコンピュータ10が第3参照データS3,RGBデータをこの順に出力することにより、プリンタ20がRGBデータの入力に先立って第3参照データS3を入力する構成としたが、こうした構成を、第3参照データS3の入力に先立ってRGBデータを入力する構成に変更することも可能である。
上記実施例における印刷条件種類判断処理(図10)では、入力した印刷要求データLP,MPに参照データやCMYデータが含まれているか否かによって印刷条件の種類を判断したが、こうした印刷条件の種類の判断を、印刷要求データLP,MPに参照データやRGBデータが含まれているか否かによって行なうこととしてもよい。
上記実施例における印刷条件種類判断処理では、入力した印刷要求データLP,MPに含まれているデータの種類を判別することによって印刷条件の種類を決定したが、このようなデータの種類の判別以外の他の手法によって印刷条件の種類を決定してもよく、また、印刷要求データLP,MPに含まれているデータの種類の判別による手法と他の手法とを併用して、印刷条件の種類を判断することとしても差し支えない。このような他の手法としては、例えば、プリンタ20が、図10に示した印刷条件種類判断処理に替えて、図8に示したステップS320〜S330と同様の処理を行ない、入力した印刷条件データL2に基づいて印刷対象物Pの種類および印刷解像度の設定の内容を特定し、この内容について対応マップTMを参照することにより、印刷条件の種類を、第1の条件,第2の条件,第3の条件のいずれかに決定する手法を考えることができる。こうすれば、CMYデータに要求されるドット数に適した参照データを、ドットの細かさが印刷対象物上で実現される程度を考慮して、プリンタ20側で決定することができる。
また、プリンタ20が参照する対応マップTMには、印刷解像度の設定が「高」である場合には、印刷条件の種類が「第1の条件」、データ変換処理の実行主体が「パーソナルコンピュータ10」と規定されており、プリンタ20がデータ変換処理を実行することになる他の種類の印刷条件については、印刷対象物Pの種類と印刷解像度の設定の組み合わせが「印刷対象物P:普通紙/印刷解像度:低」や「印刷対象物P:写真用紙/印刷解像度:中」という使用頻度の高いものである場合に、印刷条件の種類が「第2の条件」と規定され、これら以外の印刷対象物Pの種類と印刷解像度の設定の組み合わせである場合に、印刷条件の種類が「第3の条件」と規定されている。従って、情報量の多いCMYデータへの変換処理がプリンタ20側で行われることを回避することができると共に、プリンタ20側において、情報量の多くないCMYデータへの変換処理のうち、印刷解像度と印刷対象物の種類とが適合している場合の変換処理を、予め保持された参照データ(第2参照データS2)を用いて迅速に行うことができる。
上記実施例の印刷システムGH1では、印刷指示端末1側で設定された印刷条件のうち、印刷解像度、印刷対象物Pの種類、印刷指示がなされた印刷指示端末1の種類という3つの条件に基づいて印刷条件の種類を判断したが、上記の3つの条件以外の印刷条件に基づいて、印刷条件の種類を判断することとしても差し支えない。こうした他の印刷条件としては、以下のものを考えることができる。例えば、プリンタ20に関する印刷条件としては、上記の印刷解像度、印刷対象物Pの種類のほかにも、プリンタ20の機種、印刷に使用するインクの種類などを考えることができる。また、印刷指示端末1に関する印刷条件としては、上記の印刷指示端末1の種類のほか、画像データの形式(例えば、RGB、YCbCr等)などを考えることができる。
上記実施例における分担印刷処理では、プリンタ20は、印刷要求データMPに、参照データ、CMYデータおよび印刷条件データのいずれもが含まれていない場合に、印刷指示がなされた印刷指示端末1が簡易端末90であると判断したが、これ以外の手法で簡易端末90か否かを判断することも可能である。例えば、印刷指示端末1からの印刷指示を表わすデータに端末固有のIDを含ませておき、このIDをプリンタ20が解読して、簡易端末90であるか否かを識別する構成などを考えることができる。
また、このような簡易端末90からの印刷指示であることをプリンタ20が認識する手段を設けることなく、上記の印刷システムGH1を、上記実施例におけるパーソナルコンピュータ10やプリンタ20のような、データ変換処理能力を備えた機器の間で行なわれる処理に限定することも可能である。このような限定をした場合には、パーソナルコンピュータ10のPC制御装置11やプリンタ20の制御回路40は、共に、RGBデータからCMYデータへの変換処理を行なうデータ変換装置として把握することができる。
上記実施例では、データ変換処理に用いる参照データを3種類に区分し、このうちの2種類の参照データ(第1参照データS1、第3参照データS3)をパーソナルコンピュータ10側に、1種類の参照データ(第2参照データS2)をプリンタ20側に、それぞれ予め格納した。こうした参照データの区分数は、プリンタ20において実現可能な画質の種類を考慮して、適宜、変更することが可能であり、例えば、4種類以上に区分された参照データを、パーソナルコンピュータ10とプリンタ20とに分担して格納しても良いし、2種類に区分された参照データを、パーソナルコンピュータ10とプリンタ20とに分担して格納しても良い。
上記実施例では、データ変換処理に用いる参照データ(第1参照データS1、第2参照データS2、第3参照データS3)を予めパーソナルコンピュータ10やプリンタ20に格納したが、こうした各参照データを、CD−ROMやメモリカード等の記録媒体からのロードすることにより、パーソナルコンピュータ10やプリンタ20に提供することも可能であり、また、ネットワーク上に置かれたサーバからダウンロードすることにより、パーソナルコンピュータ10やプリンタ20に提供することも可能である。こうした構成例を、第1変形例,第2変形例として、それぞれ、図11,図12に示した。
図11は、パーソナルコンピュータ10がネットワークに接続されている場合における印刷システムGH2の構成例である。図示するように、第1参照データS1、第2参照データS2、第3参照データS3は、インターネットIN上のサーバSVに予め格納されている。パーソナルコンピュータ10は、第1参照データS1、第2参照データS2、第3参照データS3の少なくとも1つを、データ変換処理の必要に応じてモデム87を介してダウンロードし、RAM11cやハードディスク11eに記憶すると共に、第2参照データS2、第3参照データS3をプリンタ20に転送するのである。こうした構成において、プリンタ20がネットワークに接続されている場合には、第2参照データS2、第3参照データS3をプリンタ20がダウンロードすることも可能である。こうした第1変形例によれば、データ変換処理に用いられる参照データの種類が追加または変更された場合であっても、この追加や変更に対応する参照データをサーバSVに記憶させておくことで、追加や変更に対応する参照データを、ネットワークを介してパーソナルコンピュータ10またはプリンタ20に供給することが可能となる。従って、将来的に、プリンタ20について印刷画質を更に良好化する改良がなされた場合に、この改良に伴う参照データの追加や変更に柔軟に対応することができる。
図12は、簡易端末90およびプリンタ20がネットワークに接続されている場合における印刷システムGH3の構成例である。図示するように、第2参照データS2は、インターネットIN上のサーバSVに予め格納されている。プリンタ20は、第2参照データS2を、データ変換処理の必要に応じてダウンロードし、RAM44等の記憶装置に記憶するのである。こうした第2変形例によっても、将来的な印刷画質の良好化に伴う参照データの追加や変更に柔軟に対応することができる。なお、上記第2変形例の場合において、第2参照データS2をプリンタ20にダウンロードするタイミングについては、種々のタイミングを考えることができる。例えば、プリンタ20が、簡易端末90からの印刷要求データMPを入力したときに、ダウンロードを開始してもよい。また、簡易端末90からの印刷要求をインターネットINを通じて受けたサーバSVが、この印刷要求をプリンタ20からの要求であると解釈し、第2参照データS2を、インターネットINを介してプリンタ20に送信することとしてもよい。