JP4377117B2 - 炎症性疾患の改善用組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発酵培養物を用いた炎症性疾患改善用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒトの慢性関節リウマチは、関節滑膜において発症する炎症性疾患であり、1.自己免疫の異常、2.炎症性白血球による炎症、3.腫瘍様の細胞増殖という、3つの特徴的な側面を有することが知られている。日本における慢性関節リウマチの患者数は70万人に上るといわれており、この疾患に対する有効な治療・予防法の開発が今なお求められている。
【0003】
現在世界中で広く使用されている関節炎治療剤としては、例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、ノルメチン・ソジウム等の非ステロイド抗炎症剤、アザチオプリン、サイクロスポリン、メソトレキセート等の免疫抑制剤、デキサメタゾン、パラメタゾン等の副腎ステロイド剤が挙げられる。しかし、これらの薬剤の使用は、胃腸障害(例えば、非ステロイド抗炎症剤に関して、Tamblyn, R., et al., Ann. Intern. Med., 1997, Sep. 15; 127(6):429-38(非特許文献1))、肝機能障害、骨粗鬆症、易感染等の副作用を伴うことが知られており、副作用が少なくより安全に使用できる関節炎の治療・予防剤の開発がさらに求められている。
【0004】
また、近年ではイヌ、ネコ等のペット(愛玩動物)の高齢化が進行している。このペットの高齢化に伴い、ペットの疾患に対する治療・予防用の薬剤及び医療技術に対する需要も高まってきている。このような社会状況を背景として、イヌ、ネコ等のペットにおいても、自己免疫疾患性の関節炎等の治療・予防に有用な製品、例えば関節炎治療・予防用ペットフード等の開発が求められている。
【0005】
一方、本発明者らは、特開平11−221071号公報(特許文献1)において、肝機能及び腎機能改善作用、抗変異原性作用、腫瘍細胞増殖抑制作用並びに腸内細菌叢改善作用等を有する乳酸菌と酵母との混合微生物の培養物を開示している。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−221071号公報
【特許文献2】
特開平6−183966号公報
【非特許文献1】
Tamblyn, R., et al., Ann. Intern. Med., (USA) 1997, Sep. 15; 127(6):p.429-438
【非特許文献2】
長岡功、外2名,「グルコサミンの好中球抑制作用とそのメカニズム」, キチン・キトサン研究, 日本キチン・キトサン学会, 2001年, 第7巻, 第3号, p.261−265
【非特許文献3】
勝呂栞、坂本廣司,「グルコサミン塩酸塩の美肌効果」, FOOD Style 21, 食品化学新聞社, 2001年8月, 第5巻, 第8号, p.69−75
【非特許文献4】
Ikuo Kato, et al., Life Sciences, (USA) 1998, Vol. 63, No. 8, p.635-644
【非特許文献5】
I. Setnikar, et al., Arzneim.-Forsch./Drug Res. (Italy) 1991, 41(I), Nr.5, p.542-545
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、食品や飼料に配合して安全に使用可能な、関節炎に対して優れた効果を示す改善用組成物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、乳酸菌と酵母との混合培養物から得られた混合菌体及び/又は培養上清が、関節炎等の自己免疫疾患を始めとする炎症性疾患に対して、炎症を効果的に抑制し、かつその症状を抑制する作用を有することを見出した。さらに本発明者らは、上記組成物にさらにグルコサミンを添加した混合物が、特に関節炎に対して症状を有効に抑制する作用を有することを見出した。これらの知見に基づいて、本発明者らは本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] ラクトバチルス・デルブルエキイ、ラクトバチルス・アシドフィラス、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ラムノーサス、ラクトコッカス・ラクティス及びストレプトコッカス・サーモフィラスからなる群から選ばれる3〜8種の乳酸菌とサッカロミセス・セレビシエとの混合培養物から得られる混合菌体及び/又は培養上清を含有する、炎症性疾患の改善用組成物。
【0010】
[2] 乳酸菌とサッカロミセス・セレビシエとの混合培養物が、以下の(a)〜(d)から選択される少なくとも1つの群の乳酸菌及びサッカロミセス・セレビシエを用いた混合培養物である、上記[1]記載の組成物。
(a) ラクトバチルス・デルブルエキイ、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトコッカス・ラクティス、及びサッカロミセス・セレビシエの群;
(b) ラクトバチルス・アシドフィラス、ラクトバチルス・ラムノーサス、ラクトコッカス・ラクティス、及びサッカロミセス・セレビシエの群;
(c) ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・カゼイ、ストレプトコッカス・サーモフィラス、及びサッカロミセス・セレビシエの群;並びに
(d) ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ラムノーサス、ストレプトコッカス・サーモフィラス、及びサッカロミセス・セレビシエの群
【0011】
[3] 乳酸菌とサッカロミセス・セレビシエとの混合培養物が、以下の(a)〜(d)を混合してさらに培養した培養物である、上記[1]記載の組成物。
(a) ラクトバチルス・デルブルエキイ、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトコッカス・ラクティス、及びサッカロミセス・セレビシエの混合培養物;
(b) ラクトバチルス・アシドフィラス、ラクトバチルス・ラムノーサス、ラクトコッカス・ラクティス、及びサッカロミセス・セレビシエの混合培養物;
(c) ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・カゼイ、ストレプトコッカス・サーモフィラス、及びサッカロミセス・セレビシエの混合培養物;並びに
(d) ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ラムノーサス、ストレプトコッカス・サーモフィラス、及びサッカロミセス・セレビシエの混合培養物
上記の[1]〜[3]の組成物は、凍結乾燥物又は噴霧乾燥物であることが好ましい。また、炎症性疾患は自己免疫疾患であることが好ましく、関節炎であることがさらに好ましい。
【0012】
[4] グルコサミンをさらに含有する、上記[1]〜[3]の組成物。
[5] 上記[1]〜[4]のいずれか1つの組成物を含有する食品又は飼料。
[6] 上記[1]〜[4]のいずれか1つの組成物を有効成分として含有する製剤。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、特定菌種の乳酸菌と酵母との混合培養物から得られる混合菌体又は培養上清を含有する組成物の、炎症性疾患の改善のための用途に関する。本発明の組成物は、特に、自己免疫疾患性の関節炎等の改善のために好適に用いられる。本発明の組成物はまた、高い抗炎症作用を有する。さらに、本発明の組成物は、グルコサミンを添加することにより、炎症性疾患に対する改善効果を非常に高めることができる。本発明の組成物は、製剤化して使用することもできるが、食品又は飼料に含有させることによって特に好適に使用することができる。
【0014】
1.本発明の組成物の製造
本発明の組成物の製造においては、まず、使用する乳酸菌と酵母の菌株を下記のようにして選択し、それらの菌株を混合培養することによって混合培養物を得る。さらに、その混合培養物から、本発明の組成物を調製する。
【0015】
(a) 混合培養に用いる乳酸菌の選択
本発明では、乳酸菌として、3種類以上の乳酸菌株を組み合わせて用いる。それらの菌株は、各々の属する種の組み合わせが、以下の表1に挙げた8種のうちの3〜8種からなる組み合わせとなるように、選択される。
【0016】
【表1】
【0017】
これらの種に属する菌株としては、一般に市販されているものを容易に入手できる。さらに、これらの種に属する菌株としては、様々な寄託機関や研究機関等で維持されている各種の菌株を使用することもできる。例えば、理化学研究所 微生物系統保存施設(Japan Collection of Microorganisms; JCM)、財団法人 発酵研究所(Institute for fermentation, Osaka, Japan; IFO)からそれらの菌株を入手することができる。特に、本発明の乳酸菌株としては、例えば以下のような菌株を好適に用いることができる。
ラクトバチルス・デルブルエキイALAL007株
ラクトバチルス・アシドフィラスALAL005株
ラクトバチルス・プランタラムALAL006株
ラクトバチルス・ファーメンタムALAL001株、JCM1173株
ラクトバチルス・カゼイALAL002株、ALAL003株、JCM1053株
ラクトバチルス・ラムノーサスALAL004株、ALAL010株、JCM1136株
ラクトコッカス・ラクティス subsp. hordniae ALAL008株、ALAL009株
ストレプトコッカス・サーモフィラスALAL011株、ALAL012株
【0018】
なお、ラクトバチルス・ファーメンタムALAL001(Lactobacillus fermentum ALAL001)株、ラクトバチルス・カゼイALAL003(Lactobacillus casei ALAL003)株及びラクトバチルス・ラムノーサスALAL004(Lactobacillus rhamnosus ALAL004)株は、平成9年11月28日に、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum) ALAL001株については受託番号FERM BP-6627として、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei) ALAL003株については受託番号FERM BP-6628として、及びラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus) ALAL004株については受託番号FERM BP-6629として、ブダペスト条約に基づきそれぞれ寄託されている。
しかしながら、本発明において使用する乳酸菌株は、上記8種に属する菌株である限り、特定の株に限定されるものではない。
【0019】
(b) 混合培養に用いる酵母菌
本発明では、酵母菌として、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae; 省略表記はS. cerevisiae)に属する1種類以上の酵母菌株を用いる。本発明においては、酵母菌株として、例えばサッカロミセス・セレビシエJCM1499株、ALAY001株、ALAY002株、ALAY003株又はALAY004株等を好適に用いることができる。なお、サッカロミセス・セレビシエ ALAY001株は、平成9年11月28日に、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、ブダペスト条約に基づき受託番号FERM BP-6626として寄託されている。しかしながら、本発明において使用する酵母菌株は、サッカロミセス・セレビシエに属する菌株である限り、特定の株に限定されるものではない。
【0020】
(c) 乳酸菌と酵母菌との組み合わせ
本発明における乳酸菌と酵母菌との混合培養には、上記(a)及び(b)に従って選択する乳酸菌と酵母菌とを任意に組み合わせて用いる。
この乳酸菌と酵母菌との組み合わせとしては、種単位では、以下の表2に示されるA群〜D群にそれぞれ記載された組み合わせが例示される。
【0021】
【表2】
【0022】
本発明の乳酸菌と酵母菌との種単位での組み合わせとしては、さらに、上記表2に示されるA群〜D群のうちの2群以上を合わせたものでもよい。例えば、A群とC群とを合わせた組み合わせである場合には、用いる乳酸菌及び酵母菌の種の組み合わせは次の表3の通りである。
【0023】
【表3】
【0024】
また、本発明の乳酸菌と酵母菌との組み合わせにおいては、菌株単位では、同じ種に属する2種類以上の菌株をともに用いてもよい。例えば、表3に示した乳酸菌と酵母菌との組み合わせにおいて、菌株単位では次の表4のような組み合わせが例として挙げられる。
【0025】
【表4】
【0026】
(d) 乳酸菌と酵母菌との混合培養(共棲培養)
本発明における乳酸菌と酵母菌との混合培養は、上記(c)のような組み合わせとなるように選択した乳酸菌と酵母菌とを、同じ培地にともに添加して培養することにより行う。
培地としては、大豆抽出物を含有する培地、例えば大豆の熱水抽出液を用いる。
【0027】
乳酸菌と酵母菌との混合培養は、好ましくは、乳酸菌を1株につき1×105〜1×106細胞/ml、酵母菌を1株につき1×104〜1×106細胞/mlとなるように、接種前に株毎に前培養しておき、次いでそれらの前培養物を混合してから上記培地に接種し、20〜37℃で4〜10日にわたり培養することにより行う。
【0028】
本発明における乳酸菌と酵母菌との混合培養は、上記のような乳酸菌と酵母菌との混合培養物を、上記項目(c)に記載の組み合わせが異なる2種類以上について作製してから、続いてそれらを混合し、同じ条件でさらに培養する方法に従って行ってもよい。この場合は、混合すべき上記混合培養物に含まれるそれぞれの菌株の種類が、重複しないようにすることが好ましい。なおこの場合に、上記混合培養物に含まれる菌株について、それらが属する種は、重複していても構わない。
【0029】
培養終了後、混合培養物は、生菌のままでもよいが、好ましくは煮沸殺菌(例えば80℃)等により殺菌することが好ましい。
【0030】
(e) 混合培養物からの組成物の調製
本発明の組成物とは、第1には、上記の方法により得られる混合培養物を含有する組成物を意味する。また、本発明の組成物とは、第2には、上記混合培養物に対してろ過又は遠心分離等の処理を施すことにより分離した混合菌体又は培養上清を含有する組成物をも意味する。ここで、「混合菌体」とは、培養した乳酸菌及び酵母菌の菌体を、混合培養物の分離処理により、沈殿・残渣等の固形成分として分離したものを意味する。また「培養上清」とは、混合培養物の分離処理により得られる液体成分を意味する。すなわち「混合菌体」と「培養上清」とは、いずれも上記混合培養物の処理物である。なお上記の混合培養物は、得られた混合菌体と培養上清とがもともと混合されていた状態のものに他ならないから、本発明において、混合培養物を含有する組成物は「混合菌体及び培養上清を含有する組成物」である。すなわち、本発明の組成物としては、混合菌体と培養上清とを含有する組成物、混合菌体を含有する組成物、及び培養上清を含有する組成物の3種類の形態がありうる。
【0031】
本発明の組成物としては、具体的には、上記混合培養物、又は混合菌体若しくは培養上清を緩衝液や水等によって希釈したもの、濃縮したもの、乾燥固化したもの等が挙げられる。本発明の組成物としては特に、上記の混合培養物、混合菌体又は培養上清の、凍結乾燥物又は噴霧乾燥物を用いることが好ましい。
【0032】
また本発明においては、本発明の組成物にさらにグルコサミンを添加してもよい。この場合、配合するグルコサミンの例としては、例えばグルコサミン塩酸塩、グルコサミン硫酸塩等が挙げられる。本明細書においては、これらのグルコサミン類を総称してグルコサミンと呼ぶ。本発明の組成物にグルコサミンを配合する場合は、本発明の組成物とグルコサミンとを50:50〜90:10、好ましくは80:20の重量比で混合することが好ましい。グルコサミンを添加した本発明の組成物は、炎症性疾患に対する改善効果を得るために、特に有利に使用することができる。
【0033】
2.本発明の組成物の炎症性疾患に対する改善効果
上記の「1.本発明の組成物の製造」に従って製造される本発明の組成物は、炎症性疾患に対して高い改善効果を有する。また、本発明の組成物は、優れた抗炎症作用を有する。さらに、グルコサミンを添加した本発明の組成物は、関節炎に対し、特に抗炎症作用の点で、さらに優れた改善効果を有する。従って、本発明の組成物は、炎症性疾患に対する治療・予防剤、及び抗炎症剤として使用することができる。
【0034】
本発明において「炎症性疾患」とは、炎症を伴う全身性疾患を意味し、主に細菌感染症、ウイルス感染症、寄生虫・原虫感染症、自己免疫疾患、アレルギー疾患、悪性腫瘍性疾患等が含まれる。「炎症」とは、物理的、化学的、又は生物学的な要因による損傷や刺激に対する生体の免疫反応の結果生ずる現象であり、多くの場合、炎症組織における痛み、熱感、発赤、腫脹を引き起こし、さらに炎症組織の機能抑制又は機能喪失を生ずることもある。炎症性疾患の具体例としては、限定するものではないが、細菌感染症としては、例えば肺炎、腎盂炎、***症、中耳炎、気管支炎、歯周炎等;ウイルス感染症としては、例えばEBウイルス感染症、ヘルペスウイルス感染症等;寄生虫・原虫感染症としては、例えばアメーバ感染症、トキソプラズマ感染症、日本住血吸虫等;自己免疫疾患としては、例えば慢性関節リウマチや強直性脊椎炎等の関節炎、全身性エリマトーデス、クローン病等の炎症性腸炎、若年性糖尿病、多発性硬化症等;アレルギー疾患としては、アトピー性皮膚炎、気管支喘息等;悪性腫瘍性疾患としては、例えば肉腫、癌腫、悪性リンパ腫等の癌等;が挙げられる。
【0035】
本発明において「改善」とは、第1には炎症性疾患に対する治療的効果が示されることを意味し、具体的には、上記の炎症性疾患を患っている患者に本発明の組成物を投与又は摂取させることにより、その疾患に伴って患者に現れている病的な症状を緩和若しくは消失させるか、又はその症状の悪化を抑制することを意味する。また、本発明における「改善」とは、第2には炎症性疾患に対する予防的効果が示されることを意味し、具体的には、特定の炎症性疾患に罹りやすい体質を有する患者(例えば、その疾患に罹りやすい遺伝的要素を有する患者)又は特定の炎症性疾患に罹りやすい状態にある患者(例えば、その疾患が自己免疫疾患性の関節炎であれば、高齢者)に本発明の組成物を投与又は摂取させることにより、その患者において今後現れることが予想されるその疾患に伴う病的な症状を、将来的に軽減又は防止することを意味する。ここで、上記の「病的な症状」とは炎症反応と関連する症状、障害又は検出可能な生体内の変化を意味し、限定するものではないが、痛み、熱感、発赤、腫脹等の炎症反応に伴う症状、CRP(C-reactive protein;C反応性タンパク)検査値の急激な増加や補体の増大等を含む炎症反応の指標、さらに自己免疫疾患の患者にみられる特徴的な症状(例えば、シェグレン症候群における外分泌異常、炎症性腸炎における貧血等)が挙げられる。
【0036】
また本発明において「抗炎症作用」とは、被験者に本発明の組成物を投与又は摂取させた結果、該被験者において生じている炎症反応を緩和若しくは消失させるか、又はその炎症反応の悪化を抑制する作用を意味する。本発明において「抗炎症作用」とはまた、被験者に本発明の組成物を投与又は摂取させた結果、該被験者において今後生じると予想される炎症反応について、その発症を防止若しくは遅延させるか、又はその程度を軽減する作用をも意味する。
【0037】
本明細書において「患者」「被験者」とは、本発明の組成物、他の添加剤を加えた本発明の組成物、又はそれらを含有する食品若しくは飼料を、投与又は摂取させる対象となるヒト又はヒト以外の哺乳動物(例えば、家畜、愛玩動物、実験(試験)動物等)を意味する。本明細書において「投与」「摂取」とは、対象となるヒト又はヒト以外の哺乳動物に対し、目的とする物質を経口的又は非経口的に生体内に取り込ませることを意味する。
【0038】
本発明の組成物の効果は、その組成物を投与した患者若しくは被験者について、炎症性疾患に対する改善効果については炎症性疾患に伴う上記の病的な症状の経過を、特に抗炎症作用については炎症反応に伴う症状又は炎症反応の指標の経過を観察し、それらの質的・量的変化に基づいて評価することができる。すなわち本発明の組成物については、そのような症状又は指標が、本発明の組成物の投与後に低減若しくは消失するか、又はその顕在化又は悪化が抑制されることを確認することにより、上記のような効果を有するものと判断することができる。このような判断は、当業者に公知の他の様々な方法を用いて行うことができる。そのような方法としては、限定するものではないが、例えば本発明の組成物を炎症性疾患の動物モデル(例えば、自己免疫疾患の動物モデル等)に投与して、その動物モデルにおける上記の症状又は指標をモニターすることによって行えばよい。
【0039】
本発明に関して特に有用に用いられる自己免疫疾患の動物モデルとしては、II型コラーゲンによるコラーゲン誘導関節炎マウスが挙げられる。II型コラーゲンによるコラーゲン誘導関節炎マウスは、マウスにウシII型コラーゲンを注射することにより、多発性の関節炎(コラーゲン誘導関節炎(CA))を発症させる関節炎モデルマウスである。1977年、Trenthamらは、慢性リウマチをはじめとする自己免疫疾患患者の中にコラーゲンに対して免疫反応を示す症例があることから、関節等の軟骨に多量に存在するII型コラーゲンでラットを免疫したところ、そのラットで多発性の関節炎が発症したことを報告した。この報告に基づいて作製された前記モデルマウスは、ヒト自己免疫疾患の好適なモデル系として用いられている。
【0040】
このコラーゲン誘導関節炎モデルマウスにおける作用機序は、以下のように説明される。まず、マウスにウシII型コラーゲンを注射することにより、II型コラーゲン(II C)が、関節滑膜細胞及びマクロファージに取り込まれ、その断片が、クラスII MHC分子によって自己抗原として提示される。これにより、自己反応性ヘルパーT細胞が、マクロファージおよび滑膜細胞を活性化させ、炎症性サイトカイン(IL-1、IL-6、IL-8、TNF-α等)を放出する。また、自己反応性ヘルパーT細胞は、B細胞に抗II C抗体を産生させ、この抗II C抗体が、自己の関節軟骨のII型コラーゲン(II C)と抗原抗体反応(抗原による架橋)をし、補体が活性化され炎症を起こす。しかしながら、本発明の範囲は、このようなモデルマウスの関節炎誘導機序によって制限されるものではない。
【0041】
本発明の組成物の抗炎症作用又は炎症性疾患に対する改善効果を調べる際、上記コラーゲン誘導関節炎マウスを動物モデルとして用いる場合には、例えば、実験用マウスに本発明の組成物を投与した後、該マウスにおける四肢の腫脹の程度、後肢のフットパッドの厚さ、炎症性サイトカイン値、II型コラーゲンに対する抗体価等を経時的に測定することにより、本発明の組成物の上記改善効果を評価することができる。
【0042】
本発明の組成物の抗炎症作用又は炎症性疾患に対する改善効果の確認は、上記のような自己免疫疾患モデルマウスを使用する方法の他、市販の様々な検査薬を使用して行うこともできる。例えば、そのような検査薬としては、抗核抗体検査試薬、抗DNA抗体検査試薬、慢性リウマチ検査試薬、抗甲状腺抗体検査試薬、自己抗体陽性血清等の自己免疫疾患検査試薬、CPR(C反応性タンパク)定量用試薬、サイトカイン測定試薬、IgE測定試薬等が挙げられる。
【0043】
3.本発明の組成物を含有する食品又は飼料
本発明の組成物は、食品又は飼料等に配合して使用することができる。本発明の組成物が配合された食品及び飼料は、抗炎症作用を有し、炎症性疾患に対する有効な改善効果を有することから、炎症性疾患の改善用に用いられる食品若しくは飼料として有用である。本発明の組成物を含有する食品又は飼料は、非常に簡便に摂取できるため、本発明の組成物の利用形態として特に好適である。
【0044】
本発明の組成物を配合する食品としては、米飯類、菓子類、麺類、カマボコ・チクワ等の水産練り製品、ハム・ソーセージ等の畜肉加工品、栄養補助食品(サプリメント)、清涼飲料・果実飲料等の飲料類、マヨネーズ・ドレッシング・味付け調味液等の調味料等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの食品には、通常の食品に使用される各種添加物を使用してもよい。添加物としては、限定するものではないが、発色剤(亜硝酸ナトリウム等)、着色料(クチナシ色素、赤102等)、香料(オレンジ香料等)、甘味料(ステビア、アステルパーム等)、保存料(酢酸ナトリウム、ソルビン酸等)、乳化剤(コンドロイチン硫酸ナトリウム、プロピレングリコール脂肪酸エステル等)、酸化防止剤(EDTA二ナトリウム、ビタミンC等)、pH調整剤(クエン酸等)、化学調味料(イノシン酸ナトリウム等)、増粘剤(キサンタンガム等)、膨張剤(炭酸カルシウム等)、消泡剤(リン酸カルシウム)等、結着剤(ポリリン酸ナトリウム等)、栄養強化剤(カルシウム強化剤、ビタミンA等)等が挙げられる。
【0045】
上記のような食品に配合する本発明の組成物の量は、当業者であれば必要に応じて適宜設定することができるが、好ましくは30〜1600mg/kg(乾燥重量)であり、より好ましくは50〜100mg/kg(乾燥重量)である。本発明の組成物はさらに、グルコサミンとともに食品に配合することが好ましい。配合するグルコサミンとしては、例えばグルコサミン塩酸塩、グルコサミン硫酸塩等が挙げられる。この場合、本発明の組成物とグルコサミンとは、好ましくは50:50〜90:10、より好ましくは80:20の重量比で配合する。
【0046】
本発明の組成物は、当業者が利用可能である任意の適切な方法によって、当該食品に含有させればよい。例えば、該組成物は、食品中に混合又は溶解してもよいし、食品中に埋め込んでもよい。該組成物はまた、食品に塗布、被覆、浸透又は吹き付けてもよい。本発明の組成物は、その食品中に均一に分布していてもよいし、不均一に分布していてもよい。あるいは本発明の組成物は、食品中の特定部位に偏在していてもよい。また、本発明の組成物を含有させた食品をさらに加工することもできる。そのような加工製品も、本発明の範囲に包含される。
【0047】
一方、本発明の組成物を配合する飼料としては、家畜、家禽、その他の哺乳動物、又は魚類に用いる粉状、練り製品状、ペレット状、固形状、フレーク状等の飼料、栄養補助製品(サプリメント)等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの飼料には、通常の飼料に使用される任意の原材料、例えば動物性材料、植物性材料、各種添加物等を基礎飼料として使用することができる。
【0048】
動物由来材料としては、限定するものではないが、例えば、牛、豚、鶏、羊等の家畜、魚介類(例えばマグロ、カツオ、アジ、イワシ、シタビラメ、サンマ、エビ、タコ、ホタテ等)等から得られる肉、皮膚、骨、臓器、卵、血液、乳、動物性脂肪等の生体組織、その乾燥粉末、又はそれらの加工製品が挙げられる。
【0049】
また植物由来材料としては、限定するものではないが、例えば、ニンジン、カボチャ、キャベツ、ピーマン等の野菜類、ゴマ、アーモンド、ケシの実、ヒマワリの実等の種実類、イネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ等の穀類、ダイズ、インゲン、ソラマメ等の豆類、ジャガイモ、サツマイモ、コーンスターチ等の澱粉類、ダイズ油、ゴマ油等の植物性油脂類、ミカン、リンゴ、カキ等の果実類、エノキ、シイタケ、シメジ等の菌糸類、ワカメ、コンブ、クロレラ等の藻類、イネ科牧草、マメ科牧草等の牧草等から得られる植物組織、その乾燥粉末、又はそれらの加工製品が挙げられる。
また添加物として使用できる物質の例は、上述の食品に関して例示したものと同じである。
【0050】
上記のような飼料に配合する本発明の組成物の量は、当業者であれば必要に応じて適宜設定することができるが、好ましくは6〜320mg/kg(乾燥重量)であり、より好ましくは10〜20mg/kg(乾燥重量)である。本発明の組成物はさらに、グルコサミンとともに飼料に配合することが好ましい。配合するグルコサミンとしては、例えばグルコサミン塩酸塩、グルコサミン硫酸塩等が挙げられる。この場合、本発明の組成物とグルコサミンとは、好ましくは50:50〜90:10、より好ましくは80:20の重量比で配合する。
【0051】
本発明の組成物は、当業者が利用可能である任意の適切な方法によって、当該飼料に含有させればよい。例えば、該組成物は、飼料中に混合又は溶解してもよいし、飼料中に埋め込んでもよい。該組成物はまた、飼料に塗布、被覆、浸透又は吹き付けてもよい。本発明の組成物は、その飼料中に均一に分布していてもよいし、不均一に分布していてもよい。あるいは本発明の組成物は、飼料中の特定部位に偏在していてもよい。また、本発明の組成物を含有させた飼料をさらに加工することもできる。そのような加工製品も、本発明の範囲に包含される。
【0052】
4.本発明の組成物を用いる炎症性疾患改善用製剤
本発明の組成物はまた、本発明の組成物を有効成分として製剤化して使用することができる。
本発明の組成物を含む製剤には、医薬的に許容される担体又は添加物を配合してもよい。このような担体及び添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などの他、リポゾームなどの人工細胞構造物などが挙げられる。使用される添加物は、製剤の剤形に応じて適宜又は組み合わせて選択される。
【0053】
上記製剤は、さらに他の薬理成分を含有していてもよい。特に、本発明の組成物に加えてグルコサミンを配合した製剤は、炎症性疾患の改善用、特に関節炎の改善用に、非常に有利に用いることができる。この場合に配合するグルコサミンとしては、例えばグルコサミン塩酸塩、グルコサミン硫酸塩等が挙げられる。本発明の組成物に加えてグルコサミンを配合する場合は、本発明の組成物とグルコサミンとを50:50〜90:10、好ましくは80:20の重量比で混合することが好ましい。
【0054】
本発明の組成物とともに配合するグルコサミン以外の薬理成分としては、限定するものではないが、炎症性疾患の改善のために有効である公知の薬剤を用いることができる。例えば、抗生剤、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤、抗原虫剤、免疫抑制剤、抗アレルギー剤、抗癌剤等が挙げられる。
【0055】
上記製剤は、経口的又は非経口的に投与することができるが、特に経口的に投与することが好ましい。
上記製剤を経口的に投与する場合は、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤などの固形製剤、あるいは液剤、懸濁剤、シロップ剤などの液体製剤等として製剤化すればよい。特に顆粒剤及び散剤は、カプセル剤として単位投与剤形としてもよいし、また液体製剤の場合には使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。
【0056】
上記剤形のうち経口用固形製剤は、通常は薬学上一般に使用される結合剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤などの添加剤を含有する。また、経口用液体製剤は、通常は薬学上一般に使用される安定剤、緩衝剤、矯味剤、保存剤、芳香剤、着色剤などの添加剤を含有する。
【0057】
上記製剤を非経口的に投与する場合は、注射剤又は坐剤等とすることができる。例えば注射剤は、本発明の組成物を溶液、懸濁液、乳液などに溶解又は懸濁して調製されるものであり、通常単位投与量アンプル又は多投与量容器の形態で提供される。また注射剤は、使用する際に適当な担体、例えば発熱物質不含の滅菌水に再溶解させる粉剤であってもよい。注射手法としては、例えば点滴静脈内注射、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、皮内注射が挙げられる。これらの非経口投与剤形は、通常は薬学上一般的に使用される乳化剤、懸濁剤などの添加剤を含有する。
【0058】
また、上記製剤の投与量は、投与対象の年齢及び体重、投与経路、投与回数により異なり、当業者の裁量によって広範囲に変更することができる。例えば、経口的に投与する場合には、本発明の組成物の固形重量を基準として、1日につき体重1kg当たり0.4〜10mgであり、6〜8時間の間隔で投与される。投与期間は患者の症状の経過に応じて決定すればよいが、少なくとも14日にわたって投与する。
【0059】
上記製剤を投与する対象は、ヒト、家畜、愛玩動物、実験(試験)動物等を含む哺乳動物であり、特に、炎症性疾患を患っている哺乳動物、又は特定の炎症性疾患に罹りやすい体質を有するか(例えば、その疾患に罹りやすい遺伝的要素を有する)若しくは特定の炎症性疾患に罹りやすい状態にある(例えば、その疾患が関節炎の場合は、高齢の)哺乳動物であることが好ましい。
上記製剤は、副作用の心配が少ないことから、非常に有用に用いることができる。
【0060】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。
【0061】
[実施例1] 本発明に係る混合培養物の調製
表5に記載の通り、乳酸菌8種12株及び酵母菌1種4株の微生物(計16株)を、乳酸菌3株と酵母菌1株との組み合わせを一つの群としてA〜D群の4群に分けた。
【0062】
【表5】
【0063】
それぞれの群ごとに、大豆熱水抽出液に4株を含む各前培養液(乳酸菌1株あたり1×105〜1×106/ml 、酵母1×104〜1×105/ml)を1mlずつ接種し、20〜37℃で5日〜10日間培養した。
【0064】
続いて、各群ごとに得られた混合培養液を新たな培養培地中にさらに混合し、20〜37℃でさらに2〜5日培養した。培養後、得られた乳酸菌8種12株と酵母菌1種4株とを含む混合培養物を加熱殺菌し、さらに凍結乾燥することにより、混合培養物1リットルあたり90グラムの乾燥物(混合菌体と培養上清とからなる組成物A)を得た。また、加熱殺菌した該混合培養物をろ過することによって培養上清を採取し、その培養上清をさらに凍結乾燥することにより、1リットル当たり40グラムの乾燥物(培養上清からなる組成物B)を得た。
以上の方法により、本発明に用いることができる2種類の組成物(組成物A及びB)を製造した。
【0065】
[実施例2] 本発明の組成物の、コラーゲン誘導関節炎マウスに対する改善効果
DBA/1系の7週齢マウスに、II型コラーゲン溶液(牛由来、コスモバイオ社製)と、フロイントの完全アジュバントとの1:1混合液を、尾根部に0.1ml皮下注射して第1回目の感作を行い、その5週間後に2回目の感作を行うことによって、コラーゲン誘導関節炎マウスを作製した。
【0066】
第1回目の感作時より、マウスを10匹ずつの4群にわけ、対照群にはオリエンタル酵母社製粉末基礎飼料(MF)を、グルコサミン群(G群)にはMF飼料に0.5%(W/W)グルコサミン塩酸塩を添加した飼料を、組成物群(L群)にはMF飼料に実施例1で製造した組成物Bを2%(W/W)添加した飼料を、グルコサミン+組成物群(G+L群)にはMF飼料にグルコサミン塩酸塩を0.5%(W/W)及び実施例1で製造した組成物Bを2%(W/W)を添加した飼料を、それぞれ自由摂取させた。このようにして、コラーゲン感作後12週にわたり上記の飼料を摂取させながら、4群のマウスを飼育した。
【0067】
次いで、各群のマウスについて、関節炎の程度及びフットパッドの厚さを測定した。関節炎の程度は、各マウスについて、四肢ごとに目視により4段階(未発症0点、軽度の腫脹1点、中等度の腫脹2点、重度の腫脹3点)評価し、4本の肢の合計(最高12点)を算出して、炎症スコアとして数値化した。この炎症スコアが1点以上となった場合、そのマウスで関節炎が発症したものとする。また、各マウスについて、左右後肢のフットパッドの厚さをノギスにてmm単位で計測した。
【0068】
得られたデータは、発症率についてはχ2検定、炎症スコアについてはMan-Whitney U-test、フットパッド厚についてはt-testを用いて統計学的に処理し、対照群に対する有意性を検定した。
以上の実験を行った結果、得られた数値データは以下の通りである。なお「n.d.」はデータがないことを示す。
【0069】
【表6】
【0070】
【表7】
【0071】
さらに、これらのデータに基づいて、図1〜3のグラフがそれぞれ得られた。図1及び表6に示すように、4群のいずれにおいても、コラーゲン感作後7週目から関節炎の症状が認められた。関節炎発症率は、対照群では時間経過とともに上昇し、12週目においては90%に達した。これに対し、G群、G+L群は9週目までは対照群とほぼ同様に推移したが、G群ではむしろ発症率が高い傾向を示した。しかし10週目以降は、G群、G+L群の両群ともに新たな発症例は認められず、G+L群の12週目における発症率は60%で、対照群に対して有意差(p<0.05)が認められた。一方、L群においては初期より炎症の発症が30%程度に抑えられており、10週目以降は対照群に対して有意差(p<0.05)が認められた。
【0072】
図1に示す結果から、組成物群(L群)では、初期(8週前後)より炎症の発症が抑制されること、及び発症率が低いまま維持されることが示された。また、グルコサミン+組成物群(G+L群)においても、一定の投与期間後は、発症率の上昇が抑制されることが示された。すなわち、本発明の組成物は、関節炎に対してその症状の発症を有効に抑制することが示された。
【0073】
また図2及び表6に示すように、炎症スコアは、各群ともに発症率の推移とほぼ同様に上昇した。但し、L群においては発症率が他群に比べて低いにもかかわらず、9週目まではG+L群とほぼ同様に推移した。また10週目以降は、対照群の炎症スコアは3.2〜3.6であった。これに対し、G群、L群、G+L群はともに寛快の傾向を示し、G+L群では11週目〜12週目のスコア平均値が1.45であり、対照群に対して有意に低下した。
【0074】
図2に示す結果から、組成物群(L群)では、炎症の程度が軽減されることが示された。また特にグルコサミン+組成物群(G+L群)では、対照群に比較して炎症の程度が効果的に軽減されることが示された。すなわち、本発明の組成物とグルコサミンとの混合物は、関節炎に対して炎症を有効に軽減する効果を有することが示された。
【0075】
さらに、図3に示すように、コラーゲン感作11週目におけるフットパッド厚は、対照群に対してG+L群で有意に小さく、炎症の寛快が認められた。すなわち、グルコサミン+組成物群(G+L群)では、対照群に比較して炎症の程度が効果的に軽減されたことから、本発明の組成物とグルコサミンとの混合物は、関節炎に対して炎症を有効に軽減する効果を有することが示された。
【0076】
以上の結果より、本発明の組成物は、コラーゲン誘導関節炎に対する抑制的効果、すなわち疾患の発症の抑制や炎症の程度の軽減という効果をもたらすことが示された。このことから、本発明の組成物は、自己免疫疾患を含む炎症性疾患の治療及び予防に有用であることが示唆された。また、グルコサミンあるいは本発明の組成物単独よりも、グルコサミンと本発明の組成物との混合物を用いることによって、相乗的に炎症を抑制できることが示された。
【0077】
【発明の効果】
本発明の組成物は、炎症性疾患の改善、より具体的には炎症反応の抑制や炎症性疾患の治療又は予防のために、有利に使用することができる。またグルコサミンをさらに含有する本発明の炎症性疾患の改善用組成物は、関節炎の治療において特に有用である。本発明に従えば、古くから食品等として用いられてきた乳酸菌と酵母とを用いて製造することによって、炎症性疾患に対して優れた改善効果を有するだけでなく、副作用の心配が少なく安全性の高い炎症性疾患の改善用組成物を提供することができる。また、本発明の組成物を含有する食品又は飼料は、安全性が高く、かつ経口摂取によって簡便に炎症性疾患の改善効果を得ることができる有用な食品又は飼料として提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、コラーゲン誘導関節炎マウスにおける実験群ごとの関節炎発症率の推移を示すグラフである。*は、対照群に対して有意差(p<0.05)があることを示す。なお、各群につきn=10である。n.d.はデータがないことを示す。
【図2】図2は、コラーゲン誘導関節炎マウスにおける実験群ごとの炎症スコアの推移を示すグラフである。*は、対照群に対して有意差(p<0.05)があることを示す。なお、各群につきn=10である。n.d.はデータがないことを示す。
【図3】図3は、コラーゲン誘導関節炎マウスにおける感作後11週目の実験群ごとのフットパッド厚を示すグラフである。各バーには、平均±SD(標準偏差)を示した。*は、対照群に対して有意差(p<0.05)があることを示す。なお、各群につきn=10である。G群:グルコサミン群、L群:組成物群、G+L群:グルコサミン+組成物群。
Claims (3)
- 以下の(a)〜(d):
(a) ラクトバチルス・デルブルエキイ、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトコッカス・ラクティス、及びサッカロミセス・セレビシエの混合培養物;
(b) ラクトバチルス・アシドフィラス、ラクトバチルス・ラムノーサス、ラクトコッカス・ラクティス、及びサッカロミセス・セレビシエの混合培養物;
(c) ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・カゼイ、ストレプトコッカス・サーモフィラス、及びサッカロミセス・セレビシエの混合培養物;並びに
(d) ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ラムノーサス、ストレプトコッカス・サーモフィラス、及びサッカロミセス・セレビシエの混合培養物
を混合してさらに培養した培養物である乳酸菌とサッカロミセス・セレビシエとの混合培養物から得られる培養上清を含有する組成物を有効成分として含有する、関節炎改善用製剤。 - 前記組成物が凍結乾燥物又は噴霧乾燥物である、請求項1記載の関節炎改善用製剤。
- 前記組成物がグルコサミンをさらに含有する、請求項1又は2記載の関節炎改善用製剤。
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