JP4376540B2 - 金属表面修飾剤および新規含硫黄化合物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、金属表面修飾剤およびこれに好適に用いられる新規含硫黄化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機低分子や高分子の機能特性を究極のサイズ領域で発現させるべく、固体表面を単分子膜で被覆し、かつ、そのパターンを形成する手法ならびに材料に関する研究が活発になっている。
このような技術では、金属表面に自己組織化膜と呼ばれる単分子膜を形成し、自己組織化膜の物性に起因した種々の機能性の発現を検討している(非特許文献1)。
【0003】
上記のような単分子膜を金属材料上に形成することで、さまざまな物性の発現が期待されている。また、単分子膜を重合させ、金属表面上に任意の機能を有する重合膜を形成する研究もなされている。
しかし、このように形成された単分子膜自体を基体として、これに種々の機能性を付与する研究はあまり行われていない。単分子膜に光照射して発生させた様々な官能基を利用して、酵素などの生体分子で結合修飾させれば、金属に様々な機能性を付与できる可能性がある。また、特定の波長の光を用いて複数の官能基を特定の位置に発生させることにより、複数の生体分子を配列させた高次機能性表面を作成することも可能である。
【0004】
【非特許文献1】
高分子、51巻、3月号、143〜147頁
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような状況に鑑み、単分子膜自体を基体として、これに種々の機能性を付与する技術を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る金属表面修飾剤は、
下記式(1)〜(3)の何れかで表される含硫黄化合物からなる。
【0007】
【化8】
【0008】
Xは、目的とする官能基を誘導する基であり、好ましくはカルバメート基、カルボン酸エステル基、カーボネート基、エーテル基、チオカーボネート基、チオエーテル基またはスルホン酸エステル基である。
Yは、光脱離性保護基であり、好ましくは下記式(4)にて示される光脱離性保護基である。
【0009】
【化9】
【0010】
R1は、水素またはメチル基であり、
bは、1〜4の整数であり、
R2は、水素またはメトキシ基であり、bが2以上の場合は、2つのR2は共同して酸素を含んでいてもよい環を形成してもよい。
Zは、ヘテロ原子を含有していてもよい二価の炭化水素基であり、好ましくは−(CH2)c−、−(CH2−CH2−O)d−、−(Ph)e−、−(Ph−O)f−(ただし、c、d、e、fはそれぞれ1〜30の整数、−Ph−はフェニレン基である)から選ばれる基、またはこれらの組み合わせ(ただし、c+d+e+fは1〜40)である。なお、式(2)において、複数のX、Y、Zはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、式(3)において、aは0〜10の整数である。
【0011】
上記(1)式で示されるチオール系化合物の中でも、好ましい態様に係るチオール系化合物は新規化合物である。また、上記(2)式で示されるジスルフィド系化合物の中でも、好ましい態様に係るジスルフィド系化合物は新規化合物である。さらに上記(3)式で示される環状ジスルフィド系化合物の中でも、好ましい態様に係る環状ジスルフィド系化合物は新規化合物である。以下、これらの化合物を「含硫黄化合物」または「新規含硫黄化合物」と呼ぶことがある。
【0012】
このような本発明によれば、金属表面に、種々の機能性を有する単分子膜を形成するために用いられる金属表面修飾剤が提供される。また、本発明によれば、このような金属表面修飾剤として好ましく用いられる新規含硫黄化合物が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る金属表面修飾剤および新規含硫黄化合物について、具体的に説明する。
本発明に係る金属表面修飾剤は、
下記式(1)で表されるチオール系化合物、下記式(2)で表されるジスルフィド系化合物または下記式(3)で表される環状ジスルフィド系化合物からなる。
【0014】
【化10】
【0015】
式中、Xは、目的とする官能基を誘導する基であり、好ましくはカルバメート基、カルボン酸エステル基、カーボネート基、エーテル基、チオカーボネート基、チオエーテル基またはスルホン酸エステル基である。
これらの基は、下記のような配置でチオール系化合物またはジスルフィド系化合物中に存在し、光脱離性保護基(Y)の脱離により、右欄に記載の官能基を誘導する。なお、下表において、zは、Zに結合する結合手を表し、yはYに結合する結合手を表す。
【0016】
【表1】
【0017】
Yは、光脱離性保護基であり、所定の反応工程においてはXを保護し、光照射により脱離する性質を有する。ここで、光としては一般的には、紫外線が用いられるが、光脱離性保護基が脱離する程度のエネルギー線であれば、これに限定されない。
このような光脱離性保護基としては、好ましくは下記式(4)にて示される光脱離性保護基を例示できる。
【0018】
【化11】
【0019】
R1は、水素またはメチル基であり、
bは、1〜4の整数、好ましくは1〜2の整数であり、
R2は、水素またはメトキシ基であり、bが2以上の場合は、2つのR2は共同して酸素を含んでいてもよい環(たとえばメチレンジオキシ基)を形成してもよい。
【0020】
したがって、好ましい光脱離性保護基としては、下記構造のものを例示できる。
【0021】
【化12】
【0022】
上記のような光脱離性保護基Yは、光照射によりXから脱離し、上記表に示した基を誘導する。なお、Yの脱離に際して、Xの一部もともに脱離する場合がある。たとえば、上記表において、カルバメート基からアミン基が誘導される際には、カルバメート基中のCOO基も光脱離性保護基Yとともに脱離する。
光脱離性保護基Yの脱離の条件は、XおよびYの種類により様々であり、一概には決定できないが、一般的には、室温程度の温度で、十分な光量の紫外線を照射することで脱離できる。
【0023】
Zは、ヘテロ原子を含有していてもよい二価の炭化水素基であり、単分子膜の形成を損なわない限り、特に限定はされないが、
好ましくは−(CH2)c−、−(CH2−CH2−O)d−、
【0024】
【化13】
【0025】
から選ばれる。ここで、c、d、e、fは、それぞれ好ましくは1〜30の整数、さらに好ましくは1〜20の整数である。また、Zは、上記の基の組み合わせであってもよい。この場合、c+d+e+fは、好ましくは1〜40、さらに好ましくは1〜20程度である。
したがって、Zが、−(CH2)c−単独で構成される場合には、cは、好ましくは1〜30の整数、さらに好ましくは1〜20の整数であり、
Zが、−(CH2−CH2−O)d−単独で構成される場合には、dは、好ましくは1〜30の整数、さらに好ましくは1〜20の整数であり、
Zが、−(Ph)e−単独で構成される場合には、eは、好ましく1〜30の整数、さらに好ましくは1〜20の整数であり、
Zが、−(Ph−O)f−単独で構成される場合には、fは、好ましく1〜30の整数、さらに好ましくは1〜20の整数である。
【0026】
上記した構成単位は、上述したように、任意の組み合わせで2種以上含まれていてもよい。このようなZの構成例としては、下記の基を例示できる。
−(CH2)c1−(Ph)e1−(CH2)c2−
(c1は、1〜20の整数、e1は1〜20の整数、c2は1〜20の整数であり、c1+e1+c2は40以下である)
−(CH2)c3−(Ph−O)f1−
(c3は、1〜20の整数、f1は1〜20の整数、c3+f1は40以下である)
−(CH2)c4−(Ph−O)f2−(CH2−CH2−O)d1−
(c4は、1〜20の整数、f2は1〜20の整数、d1は1〜20の整数であり、c4+f2+d1は40以下である)
なお、式(2)において、複数のX、Y、Zはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0027】
また、式(3)において、aは0〜10の整数、好ましくは0〜3の製数である。したがって、式(3)における好ましい環状スルフィド部分(S−S結合含有環)は、下記式にて示される。なお、下記式中zは、上記Zに結合する結合手を示す。
【0028】
【化14】
【0029】
本発明に係る金属表面修飾剤は、上記の含硫黄化合物からなる。なお、上記含硫黄化合物のうち、Xが、カルバメート基、カルボン酸エステル基、カーボネート基、エーテル基、チオカーボネート基、チオエーテル基またはスルホン酸エステル基であり、
Yが、上記式(4)にて示される光脱離性保護基であり、
Zが、−(CH2)c−、−(CH2−CH2−O)d−、−(Ph)e−、−(Ph−O)f−から選ばれる基、またはこれらの組み合わせである化合物は新規化合物であり、金属表面修飾剤のみならず、種々の用途展開が期待できる。
【0030】
本発明の金属表面修飾剤は、上記の含硫黄化合物を主成分とし、必要に応じ、光非分解性のHS−Z−X−H、H−X−Z−S−S−Z−X−Hまたは(S−S結合含有環)−Z−X−H(ここで、Z、Xは上記と同様である)等を含有していてもよい。
この金属表面修飾剤を金属表面に適用すると、分子末端のチオール基(HS−)あるいは分子中央のジスルフィド結合部(−S−S−)が金属表面と反応し、金属−硫黄結合が形成され、下記のような単分子膜が得られる。金属材料としては、好ましくは金、銀、白金またはこれらを被覆した材料が用いられる。
【0031】
【化15】
【0032】
金属表面修飾剤の金属表面への適用方法は特に限定はされず、種々の公知の手段により金属表面にチオール化合物の単分子膜を形成できる。また、この際、マスク等を用いることで、パターン化された単分子膜を形成することもできる。
本発明の金属表面修飾剤では、上記のような含硫黄化合物を用い、硫黄(S)を金属表面に結合させて、金属表面に単分子膜を形成している。硫黄は、金や銀、白金などの貴金属にも反応するため、本発明によれば、これら貴金属表面の修飾も容易となる。
【0033】
金属表面に単分子膜を形成した後、光照射によりYを脱離させると、前述したようにXの種類に応じて種々の機能性を有する官能基を誘導でき、かくして金属表面を修飾できる。さらに、光照射をパターン状に行なうことで、金属表面にパターン状の修飾部分を形成することもできる。
したがって、ナノレベルでの機能性制御の可能性が考えられ、ナノ金属錯体、金属ナノ粒子、機能性フォトニクス結晶、金−アルカンチオール系自己組織化膜などの様々な用途への応用が考えられる。
【0034】
本発明で用いるチオール系化合物および上記新規チオール系化合物は、末端にHS−基を有し、他端に反応性基Rを有する化合物(HS−Z−R;Zは上記と同様)と、光離脱性保護基Yを導く化合物とを反応させることで得られる。Rとしては、カルボン酸、アミンなどの種々の反応性基が適宜に用いられる。また、光離脱性保護基Yを導く化合物としては、分子内にニトロフェニル基を有する化合物や、Rとの反応により最終的にニトロフェニル基を導く化合物が用いられる。
【0035】
たとえば、Xがカルボン酸エステル基(−COO−)であるチオール系化合物は、下記反応式により形成される。
【0036】
【化16】
【0037】
また、たとえば、Xがカルバメート基(−NH−COO−)であるチオール系化合物は、下記反応式により形成される。
【0038】
【化17】
【0039】
また、たとえば、Xがエーテル基(−O−)であるチオール系化合物は、下記のようにアルキルチオアセティクアシッド−2−ニトロベンジルエーテルを、濃硫酸などによりチオール化することで得られる。
【0040】
【化18】
【0041】
また、たとえば、Xがチオエーテル基(−S−)であるチオール系化合物は、下記反応式により形成される。
【0042】
【化19】
【0043】
また、本発明で用いるジスルフィド系化合物および上記新規ジスルフィド系化合物は、分子内にジスルフィド結合(−S−S−)を有し、末端に反応性基Rを有する化合物(R−Z−S−S−Z−R;Zは上記と同様)、たとえばHOCO-(CH2)2-S-S-(CH2)2-COOH、H2N-(CH2)2-S-S-(CH2)2-NH2等を出発物質として用い、上記チオール系化合物と同様にして製造できる。
【0044】
また、チオール系化合物(HS−Z−X−Y)を製造した後、これを脱水素、二量化して、ジスルフィド系化合物(Y−X−Z−S−S−Z−X−Y)を得ることもできる。
さらにまた、上記ジスルフィド系化合物において、ジスルフィド結合(−S−S−)を切断することで、チオール系化合物を得ることもできる。
【0045】
また、本発明で用いる環状ジスルフィド系化合物および上記新規環状ジスルフィド系化合物は、前記チオール系化合物の製法に準じて製造することができる。すなわち、末端にS−S結合含有環を有し、他端に反応性基Rを有する化合物((S−S結合含有環)−Z−R;Z、Rは上記と同様)と、光離脱性保護基Yを導く化合物とを反応させることで得られる。
【0046】
反応条件は、反応物の種類により様々であり、一概には記述できないが、通常の有機合成の手法に準じて反応でき、また常法に従って、精製等を行っても良い。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、金属表面に、種々の機能性を有する単分子膜を形成するために用いられる金属表面修飾剤が提供される。また、本発明によれば、このような金属表面修飾剤として好ましく用いられる新規含硫黄化合物が提供される。
【0048】
【実施例】
以下に本発明の内容を示す実施例を示す。本発明はこれにより限定されるものではない。
【0049】
【実施例1】
200mlナスフラスコに1-(2-nitrophenyl)diazoethane chloroform溶液100ml(5.58mmol)入れ、滴下漏斗に3-mercaptopropionic acid 0.97g(6.97mmol)をChloroform 50mlに溶かした溶液に入れた。反応で発生する窒素を確認するためにしぼませた風船を取り付け、氷浴中で滴下しながら1時間攪拌し、室温で1時間攪拌した。反応後溶媒を留去し、粗生成物2.42g得た。これをカラムクロマトグラフィー(hexane-ethyl acetate=2:1)で精製し、黄色粘体の目的物0.91g(3.38mmol)得た。
【0050】
収率は60.6%であり、1H-NMRおよびIR(NaCl)の結果は下記のとおりであった。
1H-NMR(400MHz, CDCl3/TMS);δ 7.4-7.9(m, 4H, aromatic), 6.3(q, J=6.4 Hz, 1H, methane), 2.6-2.7(m, 4H, methylene), 1.6(d, J=6.0 Hz, 3H, methyl)
IR(NaCl);2576 cm-1(S-H), 1733 cm-1(C=O), 1524 および 1352 cm-1(NO2)
この結果、反応は下記のように進行していることがわかった。
【0051】
【化20】
【0052】
【実施例2】
窒素置換した100mlナスフラスコに2-aminoetanethiol 0.25 g (3.24mmol)、1-(2-nitrophenyl)ethyl-N-hydroxysuccnimidyl carbonate 1.00 g (3.25mmol)入れ、乾燥DMF 30 ml加え、100℃で1時間加熱攪拌した。反応後、DMFを減圧留去し褐色粘体の粗生成物1.30g得た。これをカラムクロマトグラフィー(hexane-ethyl acetate=1:1)で精製し、黄色粘体の目的物0.69g(2.55mmol)得た。
【0053】
収率は78.7%であり、1H-NMRおよびIR(NaCl)の結果は下記のとおりであった。
1H-NMR(400MHz, CDCl3/TMS);δ 7.93 (d, 1H, J=8.0 Hz, aromatic), 7.60-7.63(m, 4H, aromatic), 7.40-7.44 (m, 1H, aromatic), 6.25(q, J=6.4 Hz, 1H, methine), 5.16 (br, 1H, amine), 3.28-3.36(m, 2H, methylene), 2.63(q, 2H, J=6.4 Hz, methylene), 1.63(d, 3H, J=6.4 Hz, methyl)
IR(NaCl); 3339 cm-1(N-H), 2568 cm-1(S-H), 1717 cm-1(C=O), 1526 および 1353 cm-1(NO2)
この結果、反応は下記のように進行していることがわかった。
【0054】
【化21】
【0055】
【実施例3】
金属表面修飾剤としての評価を以下のように行なった。
「試験金属板の作成」
50mlのナスフラスコに水15ml、30%過酸化水素3.0ml、25%アンモニア水3.0mlを入れ、軽く振り混ぜ、その中にシリコンウエハを入れて80℃で10分間加熱した。その後ウエハを取り出し、水で洗浄(3回)、水中で10分間超音波洗浄した。表面に付着した水を窒素気流で乾燥させた後、小型真空蒸着装置JEE-3X(JEOL製)を用い、金の真空蒸着を行なった。作成した試験金属板はメタノール中で数秒間超音波洗浄を行なった。洗浄後、金属板表面と水との接触角を測定したところ約56°であった。
「表面修飾」
100mlビーカーに、実施例2で作成した1-(2-ニトロフェニル)エチル 3-(メルカプト)エチルカルバメート約15mgを量り取りエタノール20mlに溶解させ、約25mMの1-(2-ニトロフェニル)エチル 3-(メルカプト)エチルカルバメートのエタノール溶液を調製した。これに前記試験金属板を入れ、空気中、室温で1時間放置放置した後、取り出し、金属板表面と水との接触角を測定したところ約64°であった。
「光照射」
300nm以下の波長の光を遮断するパイレックス(R)製水フィルターを用意し、表面修飾した試験金属板を、光照射条件の照度が当る試料台の位置に光が確実に当るように載せ、光照射した。その後、金属板表面をメタノールで洗い流し表面のメタノールを気化させた後、水との接触角を測定した。
【0056】
光照射後約5分で接触角は55°まで減少し、30分で52°、1時間で51°まで減少した。
光照射により、ニトロフェニル基が脱離し、アミノ基が形成された結果、上記のように接触角が減少したものと考えられる。
【0057】
【実施例4】
1-(2-ニトロフェニル)エチル11-メルカプトウンデカノエート(エステルタイプ)の合成
<ステップ1>11−メルカプトウンデカノイックアシッド の合成
チオウレア 1.05 g (24.0 mmol) を 90 % エタノール / 水 165 mL に溶解し、メチル11−ブロモウンデカノエート 3.36 g (12.0 mmol) を加え、四時間還流した。NaOH 1.20 g (30. 0 mmol) を加え二時間還流し、エタノールを除去した。反応物は、6 N 硫酸 100 mL によって酸性にし、エーテル (100 mL×3) で抽出、乾燥、濾過、濃縮し、7.35 g の粗生物を得た。残渣をエタノールから再結晶し、白色粉体 1.01 g (4.63 mmol, 53 %) を得た。
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 2.51 (2H, t, J = 7.6 Hz, HS-CH 2 ), 2.36 (2H, t, J = 6.8 Hz, HOOC-CH 2 ), 1.54-1.64 (4H, m, CH 2 -(CH2)6-CH 2 ), 1.26-1.37 (12H, s, CH2-(CH 2 )6-CH2);
IR (KBr) 1700 cm-1 (C=O), 2678 cm-1 (S-H), 3431 cm-1 (O-H)
<ステップ2>1-(2-ニトロフェニル)エチル 11-メルカプトウンデカノエートの合成
200 mL ナスフラスコに、2−ニトロアセトフェノンのヒドラゾン 1.00 g (5.58 mmol) をクロロホルム 70 mL に溶解し、二酸化マンガン 2.84 g (32.6 mmol) を少しずつ加え、室温で15 分間撹拌した。反応液をろ過し、0.1 M 炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。一方、クロロホルム50 mL に溶解した<ステップ1>で合成した11-メルカプトウンデカノイックアシッド 0.85 g (3.90 mmol) に氷冷下で、1−(2−ニトロフェニル)ジアゾエタンのクロロホルム溶液を滴下した。0 ℃で一時間撹拌し、更に室温で三時間撹拌したあと、濃縮した。これをシリカゲルカラムで分離精製 (ヘキサン : 酢酸エチル = 2 : 1) を行い、乾燥したところ、透明粘体 0.14 g (0.40 mmol, 10 %) を得た。1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 1.31-1.35 (15H, m, HS-CH2-(CH 2 )7), 1.53-1.65 (5H, m, CH-CH 3 , HS-CH2-CH 2 , 2.29-2.34 (2H, m, -CH 2 -COO), 2.52 (2H, t, J = 7.6 Hz, HS-CH 2 -), 6.32 (1H, q, J = 6.4 Hz, -CH-COO), 7.43-7.95 (4H, m, Ar-H);
IR (NaCl) 1526および1351 cm-1 (NO), 1738 cm-1 (C=O), 2576 cm-1 (S-H)
この結果、反応は下記のように進行していることがわかった。
【0058】
【化22】
【0059】
【実施例5】
1-(2−ニトロベンジル) エチル 3-チオオクテート(エステルタイプ)の合成
200 mL ナスフラスコに、2−ニトロアセトフェノンのヒドラゾン 1.02 g (5.64 mmol) をクロロホルム 70 mL に溶解し、二酸化マンガン 2.85 g (32.7 mmol) を少しずつ加え、室温で15 分間撹拌した。反応液をろ過し、0.1 M 炭酸水素ナトリウム水溶液 100 mL で洗浄した。一方、クロロホルム50 mL に溶解した DL-α-チオオクチックアシッド 0.51 g (2.47 mmol) に氷冷下で、1−(2−ニトロフェニル)ジアゾエタンのクロロホルム溶液を滴下した。0 ℃で一時間撹拌し、更に室温で四時間撹拌したあと、抽出 (クロロホルム 100 mL × 3, 飽和炭酸ナトリウム水溶液) し、乾燥、濾過、濃縮した。これをシリカゲルカラムで分離精製 (ヘキサン : 酢酸エチル = 4 : 1) を行い、乾燥したところ、黄色粘体 0.32 g (0.90 mmol, 37 %) を得た。
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 1.54 (2H, s), 1.60-1.70 (5H, m), 1.86-2.05 (1H, m), 2.32-2.37 (2H, m), 2.41-2.58 (1H, m), 3.07-3.19 (1H, m), 3.51-3.57 (1H, m), 6.30-6.35 (1H, q, J = 6.4 Hz), 7.41-7.94 (4H, m);
IR (NaCl) 1523および1351 cm-1 (NO), 1732 cm-1 (C=O)
この結果、反応は下記のように進行していることがわかった。
【0060】
【化23】
【0061】
【実施例6】
3−メルカプトプロピル2−ニトロベンジルエーテル(エーテルタイプ)の合成<ステップ1>アリル2−ニトロベンジルエーテルの合成
窒素置換した 300 mL ナスフラスコに dry ヘキサン 100 mL, 水素化ナトリウム (60 %) 2.15 g (53.8 mmol) を入れ、十分間撹拌した。上澄み液を取り除き、乾燥ヘキサン 30 mL を加え、氷浴で冷却しながら アリルアルコール 35 mL を滴下した。更に、2−ニトロベンジルブロミド 7.01 g (32.4 mmol) を アリルアルコール 100 mL に溶解し、滴下した。滴下後、窒素気流下で一晩撹拌した。これを濃縮し、濃塩酸 20 mL, 水 100 mL を加え、抽出 (クロロホルム 100 mL×5) した。乾燥、濾過、濃縮し、減圧蒸留 (0.1 mmHg, 75 ℃) を行ったところ、淡黄色液体 5.03 g (26.0 mmol, 80 %) が得られた。
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 4.13-4.15 (2H, m, O-CH 2 CH), 4.91 (2H, s, Ar-CH 2 ), 5.23-5.38 (2H, m, -CH=CH 2 ), 5.94-6.01 (1H, m, -CH=CH2), 7.26-8.09 (4H, m, Ar-H);
IR (NaCl) 1344および1526 cm-1 (NO)
<ステップ2>プロピルチオアセティックアシッド2−ニトロベンジルエーテルの合成
窒素置換した 50 mL ナスフラスコに<ステップ1>で合成したアリル2−ニトロベンジルエーテル 0.960 g (4.97 mmol), AIBN 0.120 g (0.730 mmol) をメタノール 30 mL で溶解した。そこに チオアセティックアシッド 1.47 g (19.3 mmol) を加え、タングステンランプで照射しながら三時間撹拌した。反応液を濃縮し、残渣でシリカゲルカラム (ヘキサン : 酢酸エチル = 4 : 1) で分離精製し、黄色液体 1.36 g (5.50 mmol, 98 %) が得られた。
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 1.91-1.98 (2H, m, CH2-CH 2 -CH2-), 2.33 (3H, s, -CH 3 ), 3.02 (2H, t, J = 6.8, S-CH 2 ), 3.63 (2H, t, J = 6.8, CH2-O-), 4.88 (2H, s, Ar-CH2), 7.44 (1H, t, Ar-H), 7.65 (1H, t, Ar-H), 7.80 (1H, d, Ar-H) , 8.06 (1H, d, Ar-H);
IR (NaCl) 1343および1526 cm-1 (NO)
<ステップ3>3−メルカプトプロピル2−ニトロベンジルエーテル
窒素置換した 50 mL ナスフラスコに、<ステップ2>で合成したプロピルチオアセティックアシッド2−ニトロベンジルエーテル 0.320 g (1.19 mmol), 濃塩酸 1mL, メタノール 30 mL を加え、六時間還流した後、抽出 (エーテル 50 mL×4) した。残渣をシリカゲルカラム (ヘキサン : 酢酸エチル = 8 : 1) で分離精製し、黄色液体 0.110 g (0.480 mmol, 40 %) が得られた。
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 1.38 (1H, t, HS-CH2), 1.96 (2H, m, J = 6.8 Hz, HS-CH2-CH2), 2.68 (2H, q, J = 8.0, S-CH 2 ), 3.69 (2H, t, J = 6.0, CH 2 -O-), 4.88 (2H, s, Ar-CH 2 ), 7.42-8.07 (4H, m, Ar-H);
IR (NaCl) 1343および1526 cm-1 (N-O), 2574 cm-1 (S-H)
この結果、反応は下記のように進行していることがわかった。
【0062】
【化24】
【0063】
【実施例7】
3−メルカプトプロピル2−ニトロベンジルスルフィドの合成
窒素置換した 100 mL ナスフラスコに 60 % 水素化ナトリウム 0.090 g (2.25 mmol) を入れ、氷浴上で dry THF 20 mL に溶解した 1,3-プロパンジチオール 0.750 g (6.93 mmol) を滴下し、室温で 2.5 時間撹拌した。反応液を濃縮し、2 M 塩酸 10 mL と飽和食塩水 100 mL を加え、クロロホルムで抽出 (50 mL×3) した。有機層を乾燥、濾過、濃縮し粗生物を得た。残渣をシリカゲルカラムで分離精製 (ヘキサン : 酢酸エチル) したところ、目的物 0.39 g (1.60 mmol, 71 %) が得られた。
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 1.31 (2H, t, J = 8.0 Hz, HS-CH2CH2), 1.80-1.87 (2H, m, -CH2CH 2 -CH2), 2.56-2.62 (4H, m, HS-CH 2 CH2-, -CH2CH 2 -S-), 4.07 (2H, s, Ar-CH2-), 7.40-7.49 (2H, m, Ar-H), 7.56 (1H, t, J = 7.2 Hz, Ar-H), 7.97 (1H, d, J = 8.4 Hz, Ar-H);
IR (NaCl) 1346および1528 cm-1 (NO), 2570 cm-1 (S-H)
この結果、反応は下記のように進行していることがわかった。
【0064】
【化25】
【0065】
【実施例8】
3−メルカプトプロピル1−(2−ニトロフェニル)エチルスルフィドの合成
窒素置換した、100 mL 二口フラスコに 1,3-プロパンジチオール 0.71 g (3.60 mmol), dry アセトン 50 mL, 炭酸カリウム 0.500 g (3.60 mmol), 1−(2−ニトロフェニル)エチルp−トルエンスルホネート1.10 g (3.42 mmol) を入れ、八時間還流した。反応液を濃縮し、ヘキサン 20 mL を加え、沈殿した白色固体を濾別した。濾液を乾燥、濾過、濃縮し、残渣をシリカゲルカラムで分離精製 (ヘキサン : 酢酸エチル = 6 : 1) したところ、目的物 0.170 g (0.700 mmol, 20 %) が得られた。1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 1.25 (2H, t, J = 8.0 Hz, HS-CH2CH2-), 1.61 (3H, d, J = 6.8 Hz, -CH2CH 2 -CH2), 1.71-1.78 (2H, m, -CH2CH 2 -CH2), 2.48-2.56 (4H, m, HS-CH 2 -, -CH2CH 2 -S), 4.07 (1H, m, Ar-CH), 7.35 (1H, t, J = 9.2 Hz, Ar-H), 7.59 (1H, t, J = 8.0 Hz, Ar-H), 7.75 (1H, t, J = 8.0 Hz, Ar-H), 7.85 (1H, d, J = 8.4 Hz, Ar-H);
IR (NaCl) 1346および1528 cm-1 (NO), 2570 cm-1 (S-H)
この結果、反応は下記のように進行していることがわかった。
【0066】
【化26】
【0067】
【実施例9】
1-(4,5-ジメトキシ-2-ニトロフェニル)エチル11-メルカプト-N-ウンデシル-カルバメートの合成
<ステップ1>N-(11-アセチルチオウンデシル) フタルイミドの合成
30 mL 二口フラスコに、窒素雰囲気下、N-(10-ウンデセニル)-1-フタルイミド 0.770 g (2.57 mmol), チオアセティックアッシド 0.74 mL (10.9 mmol), AIBN 0.050 g (0.270 mmol) をとり、メタノール 20 mL で溶解した。反応液を撹拌しながら三時間、150 W タングステンランプで照射した。これを濃縮し、シリカゲルカラムで分離精製 (ヘキサン : 酢酸エチル = 2 : 1) したところ白色粉体 0.95 g (2.53 mmol, 98.4 %) が得られた。
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 1.25-1.32 (14H, s, -(CH2)7-), 1.55 (2H, m, -CH 2 CH2-S-), 1.68 (2H, m, -CH 2 CH2-N-), 2.32 (3H, s, -CH3), 2.86 (2H, t, J = 7.2 Hz, -CH2-S-), 3.67 (2H, t, J = 7.2 Hz, =CH2-N);
IR (KBr) 1697 cm-1 (C=O, succinyl), 1771 cm-1 (C=O);
<Reference> Panadda Chirakul, et. al, Langmuir, 18, 4324-4330 (2002)
<ステップ2>11-アミノウンデカンチオールの合成
<ステップ1>で合成したN-(11-アセチルチオウンデシル) フタルイミド 0.410 g (1.09 mmol) をメタノールに溶解し、濃塩酸 1 mL を加えた。これを穏やかに六時間還流した。更にヒドラジン一水和物を 0.90 mL (18.5 mmol) 加え、三時間還流した。冷却後、不溶物を濾過によって取り除いた。濾液を濃縮し、残渣に水 50 mL を加え、クロロホルムで抽出 (50 mL×3) した。有機層を飽和食塩水 150 mL で洗浄し、乾燥、濾過、濃縮、真空乾燥したところ、白色粉体 0.110 g (0.540 mmol, 49.5 %) が得られた。
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 1.27-1.39 (14H, s, -(CH 2 )7-), 1.44 (1H, t, J = 6.6 Hz, -SH), 1.55-1.64 (4H, m, HS-CH2CH 2 H2N-CH2CH 2 -), 2.52 (2H, m, -CH 2 -SH), 2.68 (2H, t, J = 7.0 Hz, -CH2-NH2);
IR (KBr) 2560 cm-1 (S-H), 3332 cm-1 (-NH2)
<ステップ3>1-(4,5-ジメトキシ-2-ニトロフェニル) エチル 11-メルカプト)-N-ウンデシルカルバメートの合成
窒素気流下、1-(4,5-ジメトキシ-2-ニトロフェニル)エチル N-サクシンイミジルカーボネート 0.210 g (0.590 mmol) を THF 20 mL に溶解し<ステップ2>で合成した11-アミノウンデカンチオール0.120 g (0.590 mmol) を加え、室温で三時間撹拌した。反応液を濃縮し、シリカゲルカラム (ヘキサン : 酢酸エチル = 2 : 1) で分離精製し、オレンジ色液体 0.13 g (0.28 mmol, 47.5 %) が得られた。
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 1.26 (18H, s, -(CH 2 )9-), 1.33 (1H, t, J = 8.0 Hz, -SH), 1.61 (3H, d, J = 7.6 Hz, -CH3), 2.52 (2H, q, J = 7.6 Hz, -CH 2 SH), 3.13 (2H, m, -CH 2 NH), 3.93 (3H, s, -CH 3 O), 3.97 (3H, s, -CH 3 O), 4.73 (1H, br, -NH), 6.37 (1H, q, J = 6.2 Hz, -CH), 7.00 (1H, s, Ar-H), 7.59 (1H, s, Ar-H);
IR (NaCl) 1336および1520 cm-1 (NO), 1719 cm-1 (C=O), 2398 cm-1 (S-H), 3449 cm-1 (N-H)
この結果、反応は下記のように進行していることがわかった。
【0068】
【化27】
【0069】
【実施例10】
1−(2−ニトロフェニル)エチル 11-(メルカプト)−N−ウンデシルカルバメートの合成
室温、窒素気流下で、1-(2-ニトロフェニル)エチル N-サクシンイミジルカーボネート 0.150 g (0.490 mmol) を、dry THF 20 mL に溶解し、11-アミノウンデカンチオール 0.10 g (0.490 mmol) を加えた。室温で三時間撹拌後濃縮し、残渣をシリカゲルカラムで分離精製 (ヘキサン : 酢酸エチル = 3 : 1) を行ったところ、黄色液体 0.150 g (0.380 mmol, 77.6 %) が得られた。
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 1.25 (18H, s, -(CH2)9-), 1.33 (1H, t, J = 7.6 Hz, -SH), 1.61 (3H, d, J = 6.4 Hz, n-CH3), 2.52 (2H, q, J = 7.2 Hz, S-CH2), 3.11 (2H, m, NH-CH2), 4.72 (1H, br, -NH), 6.23 (1H, q, J = 6.4 Hz, -CH), 7.41 (1H, m, Ar-H), 7.61 (2H, m, Ar-H), 7.92 (1H, d, J = 8.0 Hz, Ar-H);
IR (NaCl) 1350および1526 cm-1 (NO), 1705 cm-1 (C=O), 2567 cm-1 (S-H), 3343 cm-1 (N-H)
この結果、反応は下記のように進行していることがわかった。
【0070】
【化28】
【0071】
【実施例11】
1-(4,5-ジメトキシ-2-ニトロフェニル)エチル 2-(メルカプト)-N-エチルカルバメートの合成
室温、窒素気流下、1-(4,5-ジメトキシ-2-ニトロフェニル)エチル N-サクシンイミジルカーボネート1.00 g (2.72 mmol) を DMF 50 mL に溶解し、2-アミノエタンチオール 0.25 g (3.24 mmol) を加えた。100 ℃で一時間撹拌した後、水 50 mL, 2 N 塩酸 16 mL を加え、酢酸エチルで抽出 (50 mL×3) した。有機層を飽和食塩水 100 mL で洗浄し、乾燥、濾過、濃縮したところ粗生物 2.10 g が得られた。残渣をシリカゲルカラムで分離精製 (ヘキサン : 酢酸エチル = 2 : 1)したところ、黄色液体 0.820 g (2.48 mmol, 91.2 %) が得られた。
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 1.32 (1H, t, J = 8.0 Hz, -SH), 1.61 (3H, d, J = 6.8 Hz, -CH3), 2.64 (2H, q, J = 6.4 Hz, -CH2-SH), 3.33 (2H, q, J = 6.4 Hz, -CH 2 -NH-), 3.94 (3H, s, -OCH3), 3.98 (3H, s, -OCH3), 5.21 (1H, br, -NH), 6.38 (1H, q, J = 6.4 Hz, -CH), 7.01 (1H, s, Ar-H), 7.59 (1H, s, Ar-H);
IR (NaCl) 1373および1519 cm-1 (NO), 1719 cm-1 (C=O), 2570 cm-1 (S-H), 3382 cm-1 (N-H)
この結果、反応は下記のように進行していることがわかった。
【0072】
【化29】
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