JP4360698B2 - 制振性に優れたoa機器部品用成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、機械的強度、耐熱性、寸法精度に優れたポリフェニレンエーテル系樹脂からなり、かつ制振性に優れたOA機器部品用成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリフェニレンエーテル系樹脂は、その優れた機械的強度、耐熱性、寸法安定性、難燃性から電子部品、電気製品、自動車部品をはじめとして多くの産業分野にて幅広く使われている。
【0003】
中でも最近では、OA機器部品、特に複写機、ファックス等の事務機器のシャーシ部品や、パソコン等に用いられるCD−ROM、DVD、FDD、HDD等のドライブ類のシャーシ部材やトレー類に、従来の金属や熱硬化性樹脂からの代替で採用が進んでいる。これらは、ポリフェニレンエーテル系樹脂の持つ、優れた機械的強度、耐熱性、寸法精度、難燃性といった特徴を活かしたものであり、特に剛性が必要とされる場合には、無機充填材を配合した強化ポリフェニレンエーテル樹脂が用いられており、最近の製品の小型化、薄肉化に対応してきている。
【0004】
しかしながら、最近では新たに、OA機器の高速化に伴う振動が問題となってきている。これはモーター等の振動源から発生する振動により、樹脂製の部品、特にシャーシ部材が振動してしまい、製品での画像ぶれやデータ読みとりに支障をきたすものである。例えば、複写機では高速処理化に伴い、また、CD−ROM等のドライブでは回転速度の高速化に伴い、発生周波数が高周波まで及ぶようになってきており、具体的には従来は、200Hz程度までであった周波数が、1,000Hzにも及ぶような場合も出てきている。
【0005】
このような発生周波数の高周波数化により、従来は、製品の肉厚化、リブ構造等の設計でカバーできていたシャーシ部材の振動が抑えられなくなってきている。また、樹脂材料面からは、従来、無機充填材を多量に配合して剛性を高くし、共振周波数を高くして、発生周波数から共振周波数をはずすといった対策が取られていたが、発生周波数の高周波数化により、それも限界であった。また、樹脂材料面からのもう一つの対策として、発生した振動を吸収してしまい、部品の振動を抑えるといった方法が考えられるが、このような材料は剛性、耐熱性に乏しく、OA機器部品用には使えないのが現状である。
かかる状況から、OA機器部品に求められる機械的強度、耐熱性は損なうことなく、耐振動性に優れた樹脂成形体が求められていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもと、機械的強度、耐熱性、寸法精度に優れたポリフェニレンエーテル系樹脂を用い、その特性を損なうことなく、かつ制振性に優れたOA機器部品用成形体を提供することを目的としてなされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成する為に鋭意検討を重ねた結果、特定の弾性率、減衰比を持つポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなる成形体がOA機器部品に適することを見い出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、下記配合の樹脂成分(1)〜(2)、難燃剤(3)およびガラス繊維(4)を含むポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなり、
下記熱可塑性エラストマー(2)が、1,2−ビニルおよび/または3,4−ビニル構造を有する構成単位を50重量%以上含むスチレン−イソプレンブロック共重合体であり、
該樹脂組成物におけるASTM D790による23℃の曲げ弾性率が1,500MPa以上、23℃の減衰比が1.0以上、ASTM D648による熱変形温度が100℃以上かつ曲げ弾性率と減衰比の積が13,280MPa以上であることを特徴とする制振性に優れたOA機器部品用成形体を提供するものである。
樹脂成分100重量部の配合:
(1)ポリフェニレンエーテル系樹脂 60〜98重量部
内訳: ポリフェニレンエーテル 10〜100重量%
スチレン系樹脂 0〜 90重量%
(2)熱可塑性エラストマー 2〜40重量部
難燃剤およびガラス繊維の配合:
(3)難燃剤 ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対して1〜50重量部
(4)ガラス繊維 マイカを併用する場合はこれも含めて、組成物中5〜55重量%
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明で言うOA機器とは、複写機、ファックス、プリンター等の事務機器や、CD−ROM、DVD、FDD、HDDといったドライブやその他のコンピューター関連機器を挙げることができる。また、これらの中で用いられる部品としては、機構部品であるシャーシを代表的なものとして挙げられる。
【0009】
本発明で用いるポリフェニレンエーテル系樹脂とは、ポリフェニレンエーテル、又は、ポリフェニレンエーテルとスチレン系樹脂の混合物である。
ここで、本発明で用いるポリフェニレンエーテルとは、下記一般式
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、Q1 は、各々ハロゲン原子、第一級若しくは第二級アルキル基、アリール基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基又はハロ炭化水素オキシ基を表し、Q2 は、各々水素原子、ハロゲン原子、第一級若しくは第二級アルキル基、アリール基、ハロアルキル基、炭化水素オキシ基又はハロ炭化水素オキシ基を表し、mは、10以上の数を表す)で示される構造を有する単独重合体又は共重合体である。
【0012】
Q1 及びQ2 の第一級アルキル基の好適な例は、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−アミル、イソアミル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、2,3−ジメチルブチル、2−、3−若しくは4−メチルペンチル又はヘプチルである。第二級アルキル基の好適な例は、イソプロピル、sec−ブチル又は1−エチルプロピルである。多くの場合、Q1 は、アルキル基又はフェニル基、特に炭素数1〜4のアルキル基であり、Q2 は、水素原子である。
【0013】
好適なポリフェニレンエーテルの単独重合体としては、例えば、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位からなるものである。好適な共重合体としては、上記単位と2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位との組合せからなるランダム共重合体である。多くの好適な、単独重合体又はランダム共重合体が、特許及び文献に記載されている。例えば、分子量、溶融粘度及び/又は耐衝撃強度等の特性を改良する分子構成部分を含むポリフェニレンエーテルもまた好適である。
【0014】
ここで使用するポリフェニレンエーテルは、クロロホルム中で測定した、30℃の固有粘度が0.2〜0.8dl/gであるものが好ましい。より好ましくは固有粘度が0.2〜0.7dl/gのものであり、とりわけ好ましくは0.25〜0.6dl/gのものである。固有粘度が0.2dl/g未満では組成物の耐衝撃性が不足し、0.8dl/gを越えると成形性が不満足である。
【0015】
また、本発明で用いるスチレン系樹脂とは、下記一般式
【0016】
【化2】
【0017】
(式中、Rは、水素又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Zは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又はハロゲンを表し、pは、1〜5の整数である。)で示される芳香族ビニル化合物繰り返し単位からなる重合体、及び該繰り返し単位を50重量%以上含む他の共重合可能なモノマーとの共重合体である。
【0018】
このようなスチレン系樹脂としては、スチレン、α−アルキル置換スチレン、核アルキル置換スチレン、及びこれらの混合物の重合体、並びに、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン共重合体等のゴムによって変性された、スチレン系重合体が挙げられる。本発明において特に好ましいものとしては、ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン又はこれらの混合物である。
【0019】
スチレン系樹脂の配合量は、ポリフェニレンエーテルとスチレン系樹脂の合計を100重量%としたときに、0〜90重量%が好ましく、より好ましくは1〜70重量%、とりわけ好ましくは2〜50重量%である。配合量が、少ないと、流動性の向上効果が期待できず、また、90重量%を越えると、耐熱性が低下しすぎ、いずれも好ましくない。
【0020】
本発明で用いられる無機充填材は、ガラス繊維であり、目的に応じて、単独で、又はマイカと併せて用いることができる。また、これらの充填材は、樹脂との接着性を改善する為に、各種カップリング剤で表面処理を施しても良い。
【0021】
これら無機充填材の量は、組成物中5〜55重量%であり、好ましくは10〜50重量%である。無機充填材が、少ないと、弾性率が低く高弾性率を必要とする用途には不適であり、また、多いと、衝撃硬度の低下が著しく、成形性も悪化し好ましくない。
【0022】
また、本発明では制振性の向上を目的として熱可塑性エラストマーを添加する。ここで用いる熱可塑性エラストマーは、1,2−ビニルおよび/または3,4−ビニル構造を有する構成単位を50重量%以上含むスチレン−イソプレンブロック共重合体である。また、これらのエラストマーは、DSCにて測定したガラス転移温度が−30〜50℃の間にあるものが好ましく、−20〜30℃の間にあるものが特に好ましい。これらの配合量は、組成物中の樹脂成分100重量部中、2〜40重量部であり、好ましくは5〜30重量部である。配合量が少ないと、制振性の向上が期待できず、また、多いと、弾性率の低下が著しく、いずれも好ましくない。
【0023】
さらに、本発明組成物に必要に応じ添加しうる他の成分として、例えば、熱可塑性樹脂に周知の酸化防止剤、耐候性改良剤、増核剤、耐衝撃改良剤、可塑剤、流動性改良剤等が使用できる。また、実用のために、各種着色剤、及びそれらの分散剤なども周知のものが使用できる。
【0024】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアリレンスルフィド等の他の熱可塑性樹脂を添加することができる。これらの配合量はポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対して0〜30重量部の範囲が好ましい。
【0025】
また、本発明では、難燃性を付与する為に難燃剤を添加する。本発明で用いる難燃剤としては、各種公知のものを用いることができ、特に限定されるものでは無く、その配合量は目的とする難燃レベルを得るために必要とされる量である。好ましくは、リン系、ハロゲン系、無機系の難燃剤、難燃助剤、及びこれらを併用して用い、ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対して、1〜50重量部である。
【0026】
本発明の制振性に優れたOA機器部品用成形体としては、熱可塑性樹脂組成物における諸性質が所定の範囲内になければならない。
(1)ASTM D790による23℃の曲げ弾性率は1,500MPa以上であり、好ましくは2,000MPa以上、とりわけ好ましくは2,800MPa以上である。曲げ弾性率が1,500MPa未満だと剛性が不足し、OA機器部品用には不適である。
(2)23℃の減衰比は1.0以上であり、好ましくは1.5以上である。減衰比が1.0未満だと制振性能が不足する。ここで減衰比は、加速度ピックアップセンサーを取り付けた試験片にインパルスハンマーで振動を与え、ピックアップ及び、インパルスハンマーに取り付けた力センサーからの信号から計算することができ、一次固有振動数での減衰比が用いられる。
(3)ASTM D648による18.6kg/cm2での熱変形温度が80℃以上であり、好ましくは90℃以上、とりわけ好ましくは100℃以上である。熱変形温度が80℃未満だと使用時の熱により変形が生じ、OA機器部品用には不適である。
(4)曲げ弾性率と減衰比の積が13,280MPa以上である。曲げ弾性率と減衰比は相反する関係にあり、13,280MPa未満ではそのバランスが悪く、OA機器部品用には不適である。
【0027】
本発明において熱可塑性樹脂組成物を調製するための方法としては、各種混練機、例えば、一軸及び多軸混練機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダープラストグラム等で、上記成分を混練した後、冷却固化する方法や適当な溶媒、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素及びその誘導体に上記成分を添加し、溶解する成分同志あるいは、溶解する成分と不溶解成分を懸濁状態でまぜる溶液混合法等が用いられる。工業的コストからは、溶融混練法が好ましいが限定されるものではない。
【0028】
本発明の制振性に優れたOA機器部品用成形体を成形する方法は、特に限定されるものでなく、熱可塑性樹脂組成物について一般に用いられている成形法、例えば、射出成形、中空成形、押し出し成形、シート成形、熱成形、回転成形、積層成形等の成形方法が適用できる。
【0029】
【実施例】
以下、本発明を、実施例及び比較例によって、詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものでは無い。
【0030】
以下の実施例及び比較例において、各成分及び略号は、次に示すものを用いた。
1.ポリフェニレンエーテル
PPE :ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエ−テル)(三菱ガス化学社製 30℃クロロホルム中で測定した固有粘度が0.40dl/gのもの)
2.ポリスチレン
PS :三菱化学社製 商品名ダイヤレックスHF77
3.熱可塑性エラストマー
ハイブラー:スチレン−イソプレンブロック共重合体(クラレ社製 商品名ハイブラーVS−1 1,2−ビニルおよび/または3,4−ビニル構造を有する構成単位の割合70重量%、ガラス転移点8℃)
クレイトン:水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(シェル化学社製 商品名クレイトンG1651 1,2−ビニルおよび/または3,4−ビニル構造を有する構成単位の割合0%、ガラス転移点−60℃)
4.難燃剤
TPP :トリフェニルフォスフェート
5.無機充填材
ガラス繊維:平均直径10μm、長さ3mmのE−ガラス繊維
マイカ :平均粒径50μmのマイカ
【0031】
実施例3〜5、比較例A、B、1〜5
表1に示す配合で、二軸押出機(日本製鋼所製)を用いて、シリンダー温度210℃、スクリュー回転数250rpmで溶融混練し、樹脂組成物を得た。次に、この樹脂組成物を、シリンダー温度280℃、金型温度60℃の条件でインライン式射出成形機(型締め力50T)を用いて、テストピースを射出成形にて作成し、後記の方法で評価を行った。結果を表1に示す。
なお、比較例4のみは、射出成形機のシリンダー温度を220℃、金型温度を40℃とした。。
【0032】
比較例6
ガラス繊維30%強化PBT(三菱エンジニアリングプラスチックス社製 ノバデュール5010GN1−30)を、シリンダー温度255℃、金型温度80℃の条件でインライン式射出成形機(型締め力50T)を用いて、テストピースを射出成形にて作成し、後記の方法で評価を行った。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
(1) アイゾット衝撃試験
ASTM D256に従い、切り欠き付きアイゾット衝撃試験を行った。
(2) 曲げ弾性率
ASTM D790による曲げ試験法に従い、三点曲げ試験を行った。
(3) 熱変形温度
ASTM D648に従い、18.6kg/cm2 の条件で、荷重たわみ試験を行った。
【0035】
(4) 減衰比
上記条件で作成したASTM試験片(1/2”幅×1/4”厚)を、図1に示す様にバイスで固定し、末端に加速度ピックアップセンサーを張り付けた。次いでインパルスハンマー(小野測器社製GK3100)で試験片を叩き振動を与え、ピックアップ及び、インパルスハンマーに取り付けた力センサーからの信号をFFTアナライザー(小野測器社製CF−350Z)に入力し、材料の伝達関数G(t)を求めた。
G(t)=X(t)/F(t) X(t):出力信号 F(t):入力信号
求められた伝達関数G(t)から半値幅法によって一次固有振動数での減衰比を計算した。
【0036】
(5) 寸法精度
シリンダー温度280℃(実施例1〜5、比較例1〜3、5)、220℃(比較例4)、260℃(比較例6)、金型温度60℃(実施例1〜5、比較例1〜3、5)、40℃(比較例4)、80℃(比較例6)の条件でインライン式射出成形機(型締め力100T)を用いて、100mm×100mm×2mm厚の平板をフィルムゲートで射出成形にて作成し、定盤上ですきまを測定し、反りとした。
(6) MFR
ASTM D1238に従い、280℃、5kgの条件で測定した。
【0037】
【発明の効果】
上記実施例からも明らかなように、本発明の成形体は、優れた機械的強度、耐熱性、寸法精度に加えて、制振性にも優れており、今後制振性の要求が厳しくなるOA機器部品に最適なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】減衰比の測定装置の概念図。
Claims (2)
- 下記配合の樹脂成分(1)〜(2)、難燃剤(3)およびガラス繊維(4)を含むポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなり、
下記熱可塑性エラストマー(2)が、1,2−ビニルおよび/または3,4−ビニル構造を有する構成単位を50重量%以上含むスチレン−イソプレンブロック共重合体であり、
該樹脂組成物におけるASTM D790による23℃の曲げ弾性率が1,500MPa以上、23℃の減衰比が1.0以上、ASTM D648による熱変形温度が100℃以上かつ曲げ弾性率と減衰比の積が13,280MPa以上であることを特徴とする制振性に優れたOA機器部品用成形体。
樹脂成分100重量部の配合:
(1)ポリフェニレンエーテル系樹脂 60〜98重量部
内訳: ポリフェニレンエーテル 10〜100重量%
スチレン系樹脂 0〜 90重量%
(2)熱可塑性エラストマー 2〜40重量部
難燃剤およびガラス繊維の配合:
(3)難燃剤 ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対して1〜50重量部
(4)ガラス繊維 マイカを併用する場合はこれも含めて、組成物中5〜55重量% - 上記熱可塑性エラストマーのDSCにて測定したガラス転移温度が−30〜50℃の間にあることを特徴とする請求項1に記載の制振性に優れたOA機器部品用成形体。
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