JP4356278B2 - 表面処理方法、防眩層の形成方法、防眩層フィルム及び防眩性低反射フィルム - Google Patents
表面処理方法、防眩層の形成方法、防眩層フィルム及び防眩性低反射フィルム Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、大気圧または大気圧近傍の圧力下において反応性ガスをプラズマ状態にし、基材に曝すことによって、基材表面に微細な形状の加工を施す表面処理方法、防眩層の形成方法、形成された防眩層を有する防眩層フィルム及び防眩性低反射フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、薄型軽量ノートパソコンの開発が進んでいる。それに伴って、液晶表示装置等の表示装置で用いられる偏光板の保護フィルムもますます薄膜化、高性能化への要求が強くなってきている。
最近、視認性向上のために反射防止層または防眩層を付与したディスプレイが多く使用されている。反射防止層や防眩層は用途に応じてさまざまな種類や性能の改良がなされ、これらの機能を有する種々の前面板を液晶ディスプレイの偏光子等に貼り合わせることで、ディスプレイに視認性向上のために反射防止機能または防眩機能等を付与する方法が用いられている。これら、前面板として用いる光学用フィルムには、塗布またはスパッタリング等で形成した反射防止層または防眩層が設けられている。
【0003】
防眩層は、表面に反射した像の輪郭をぼかすことによって反射像の視認性を低下させて、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイといった画像表示装置などの使用時に反射像の映り込みが気にならないようにするものである。
表面に適切な凹凸を設けることによって、このような性質を持たせることができる。従来、このような凹凸を形成する方法としては、例えば、特開昭59−58036号等で開示されているような微粒子を塗布液に添加する方法が用いられている。このほか、特開平6−234175号で開示されているエンボス加工する方法、特開昭63−298201号で開示されているあらかじめ型を転写させる方法等が知られている。しかしながら、上述のエンボス加工では、微細な凹凸を形成することが困難で、そのため、ぎらつきを防止するのには不十分であり、また、微粒子を塗布液に添加する方法では、微粒子のみで必要な凹凸を形成するため、多量の微粒子を添加する必要があり、塗布層内部で表面の凹凸とは無関係な散乱が生じてしまい、この結果、透過画像もぼけてしまうという問題点があった。また、上述の技術においては、しばしば塗布むらを発生することがあり、生産性に劣るという欠点を有しており、早急な改良手段の開発が要望されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、煩雑な工程を経ることなく、基材上に防眩性に対して理想的な凹凸を形成する表面処理方法、防眩層の形成方法、形成された防眩層を有する防眩層フィルム及び防眩性低反射フィルムを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の表面処理方法は、プラズマ耐性が異なる複数の物質により炭素含有率が5〜20%の不均一な組成に制御された薄膜を基材の表面に形成した被処理物を、大気圧または大気圧近傍の圧力下においてプラズマ状態の反応性ガスに曝す大気圧プラズマ処理によって、前記薄膜に凹凸及び空隙を形成して該薄膜を防眩層とすることを特徴とする。
請求項2記載の表面処理方法は、請求項1記載の表面処理方法であって、
前記物質のうちの少なくとも一つが、前記大気圧プラズマ処理によってガス化しやすい物質であることを特徴とする。
【0006】
請求項3記載の表面処理方法は、請求項1記載の表面処理方法であって、
前記物質のうちの少なくとも一つが有機物であることを特徴とする。
【0007】
請求項4記載の表面処理方法は、請求項1〜3のいずれか一つに記載の表面処理方法であって、
前記薄膜が、塗布により不均一組成を有するように生成されることを特徴とする。
請求項5記載の表面処理方法は、請求項1〜3のいずれか一つに記載の表面処理方法であって、
前記薄膜が、プラズマ処理により不均一組成を有するように生成されることを特徴とする。
請求項6記載の表面処理方法は、請求項1〜5のいずれか一つに記載の表面処理方法であって、
少なくとも一種類の不活性ガスと前記反応性ガスとを含む混合ガスを用いて前記大気圧プラズマ処理を行うことを特徴とする。
【0008】
請求項7記載の表面処理方法は、請求項6記載の表面処理方法であって、
前記反応性ガスに、酸素またはフッ素を含む化合物からなるガスが含まれることを特徴とする。
請求項8記載の防眩層の形成方法は、請求項1〜7のいずれか一つに記載の表面処理方法により、前記基材の表面に防眩層を形成することを特徴とする。
【0009】
請求項9記載の防眩層フィルムは、請求項8記載の防眩層の形成方法により形成された防眩層を有することを特徴とする。
請求項10記載の防眩性低反射フィルムは、請求項9記載の防眩層フィルムの上面に反射防止層を備えることを特徴とする。
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明者は、防眩性に対して理想的な凹凸を形成する為には、基材(被処理物)表面の組成に炭素成分由来の有機物を含有する基材を用いて、その表面にプラズマ密度の高い大気圧プラズマ処理を施すことで、均一に凹凸及び空隙を形成できることを見い出した。
また、大気圧プラズマにより凹凸及び空隙が形成されるメカニズムとしては、炭素などの有機物成分がプラズマのエネルギーにより結合を切断され、雰囲気中の酸素、基材中の酸素などと結合して二酸化炭素などのガスとなって基材を離脱するためと考えられる。
【0011】
また、本発明においては、プラズマ処理あるいは塗布により、基材の表面付近に意図的にガス化しやすい炭素などの有機物成分を残留させた製膜処理を施すことが特徴である。
意図的に基材の表面付近に有機物成分を残留させる薄膜の形成方法としては、塗布や、あるいは周知のプラズマ放電処理装置を用い、電極に印加する高周波電圧の周波数、プラズマの投入出力密度を制御することが最も簡便に行えるため操作しやすい。そのほかの方法としては、ガス濃度などのガス条件を調整する方法、プラズマ印加電圧のパルス化による正味の投入出力を低下させる方法などがあるが、意図的に有機物成分を残留させる方法であれば上記に限定されない。
【0012】
このようにして意図的に有機物成分を残留させた基材に対して、大気圧プラズマ処理(製膜条件とは別の処理条件が好ましい)を施すことで防眩層として理想的な表面凹凸を有する表面を形成できる。
また、大気圧または大気圧近傍の圧力下でプラズマ処理(大気圧プラズマ処理)を施し、薄膜表面に凹凸及び空隙を形成するので、薄膜の表面処理の工程を、防眩層フィルムや防眩性低反射フィルム製造に要する他の工程とインライン化することができる。従って、煩雑な工程を経ることなく、連続的に一環した加工により防眩層フィルムや防眩性低反射フィルムを製造でき、生産性を向上させることができる。
請求項1に係る表面処理方法では、少なくとも表面付近にプラズマ耐性が異なる複数の物質による不均一な組成を有する被処理物の表面を、大気圧または大気圧近傍の圧力下においてプラズマ状態の反応性ガスに曝す大気圧プラズマ処理によって、該被処理物表面に凹凸及び空隙を形成することを特徴とする。
【0013】
そして、プラズマ耐性が異なる複数の物質のうちの少なくとも一つが、大気圧プラズマ処理によってガス化しやすい物質、例えば、炭素成分由来の有機物であることが好ましい。
また、大気圧プラズマ処理を行う際には、基材の温度をガラス転移温度以下にすることが好ましい。
そして、有機物中の炭素含有量を制御するものとすれば、大気圧プラズマ処理による基材表面の凹凸及び空隙の形成量を制御できる。
なお、プラズマ処理とは、処理雰囲気の圧力について限定するものではなく、大気圧下のみならず、真空や高圧下におけるプラズマ処理を含むものである。
また、不均一組成とは、プラズマ耐性(プラズマに対するエッチング耐性)が異なる複数の物質による組成を指す。
【0014】
以下、本発明に係る基材の表面処理方法、防眩層の形成方法、形成された防眩層を有する防眩層フィルム及び防眩性低反射フィルムについて、その好ましい実施の形態を図を用いて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、また、以下の説明では、用語等に対する断定的な表現があるが、本発明の好ましい例を示すものであり、本発明の用語の意義や技術的な範囲を限定するものではない。
本実施の形態では、基材の表面に、ガス化しやすい炭素成分由来の有機物を含有する薄膜を形成し、この薄膜の表面を大気圧プラズマ処理することで、均一な凹凸を備える防眩層を有した防眩層フィルムを形成している。詳しい説明は後述するが、薄膜の種類としては、SiO2やTiO2等を含有する薄膜が挙げられる。なお、基材表面に薄膜を形成する前に、予め基材の表面に、例えば、押し出しコーターやグラビアコーター等の公知の方法を用いてクリアハードコート層を塗布しておくことが好ましい。
【0015】
図1は、プラズマ放電処理容器20の一例を示す概略図であり、本実施の形態において用いるプラズマ放電処理装置10(図6を参照)では、図2に示すプラズマ放電処理容器20を用いている。
【0016】
図1において、長尺フィルム状の基材Fは搬送方向(図中、時計回り)に回転するロール電極21に巻回されながら搬送される。固定されている電極22は複数の円筒から構成され、ロール電極21に対向させて設置される。ロール電極21に巻回された基材Fは、ニップローラ23a、23bで押圧され、ガイドローラ24で規制されてプラズマ放電処理容器20によって確保された放電処理空間に搬送され、放電プラズマ処理され、次いで、ガイドローラ25を介して次工程に搬送される。また、仕切板26は前記ニップローラ23bに近接して配置され、基材Fに同伴する空気がプラズマ放電処理容器20内に進入するのを抑制する。
【0017】
この同伴される空気は、プラズマ放電処理容器20内の気体の全体積に対し、1体積%以下に抑えることが好ましく、0.1体積%以下に抑えることがより好ましい。前記ニップローラ23bにより、それを達成することが可能である。
【0018】
尚、放電プラズマ処理に用いられる混合ガス(不活性ガスと、反応性ガスである有機フッ素化合物、チタン化合物または珪素化合物等を含有する有機ガス)は、給気口27からプラズマ放電処理容器20に導入され、処理後のガスは排気口28から排気される。
【0019】
図2は、上述のように、プラズマ放電処理容器20の他の例を示す概略図であり、図1のプラズマ放電処理容器20では円柱型の固定電極22を用いているのに対し、図2に示すプラズマ放電処理容器20では角柱型の固定電極29を用いている。
【0020】
図1に示した円柱型の電極22に比べて、図2に示した角柱型の電極29は、放電範囲を広げる効果があるので、本発明の表面処理方法に好ましく用いられる。
【0021】
図3(a)、(b)は、上述の円筒型のロール電極21の一例を示す概略図、図4(a)、(b)は、円筒型の固定電極22の一例を示す概略図、図5(a)、(b)は、角柱型の固定電極29の一例を示す概略図である。
【0022】
図3(a)において、アース電極であるロール電極21は、金属等の導電性母材21aに対しセラミックスを溶射後、無機材料を用いて封孔処理したセラミック被覆処理誘電体21bを被覆した組み合わせで構成されているものである。セラミック被覆処理誘電体21bを片肉で1mm被覆し、ロール径を被覆後200φとなるように製作し、アースに接地してある。また、図3(b)に示すように、金属等の導電性母材21Aへライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体21Bを被覆した組み合わせでロール電極21を構成してもよい。ライニング材としては、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、ゲルマン酸塩系ガラス、亜テルル酸塩ガラス、アルミン酸塩ガラス、バナジン酸塩ガラス等が好ましく用いられるが、この中でもホウ酸塩系ガラスが加工し易いので、更に好ましく用いられる。金属等の導電性母材21a、21Aとしては、銀、白金、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属等が挙げられるが、加工の観点からステンレスが好ましい。また、溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、更に好ましく用いられる。尚、本実施の形態においては、ロール電極の母材21a、21Aは、冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材を使用している(不図示)。
【0023】
図4(a)、(b)および図5(a)、(b)は、印加電極である固定の電極22、電極29であり、上記記載のロール電極21と同様な組み合わせで構成されている。
【0024】
印加電極に電圧を印加する電源としては、特に限定はないが、パール工業製高周波電源(200kHz)、パール工業製高周波電源(800kHz)、日本電子製高周波電源(13.56MHz)、パール工業製高周波電源(150MHz)等が使用できる。
【0025】
図6は、本発明に用いられるプラズマ放電処理装置10の一例を示す概念図である
。図6において、プラズマ放電処理容器20の部分は図2の記載と同様であるが、更に、ガス発生装置40、電源50、電極冷却ユニット70等が装置構成として配置されている。電極冷却ユニット70の冷却剤としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が用いられる。
【0026】
図6に記載の電極21、29は、図3、図5に示したものと同様であり、対向する電極間のギャップは、例えば1mm程度に設定される。
上記電極間の距離は、電極の母材に設置した固体誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定される。上記電極の一方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体と電極の最短距離、上記電極の双方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.5mm〜20mmが好ましく、特に好ましくは1mm±0.5mmである。
【0027】
前記プラズマ放電処理容器20内にロール電極21、固定電極29
を所定位置に配置し、ガス発生装置40で発生させた混合ガスを流量制御し、ガス充填手段41を介して給気口27よりプラズマ放電処理容器20内に入れ、前記プラズマ放電処理容器20内をプラズマ処理に用いる混合ガスで充填し排気口28より排気する。次に電源50により電極21、29に電圧を印加し、ロール電極21はアースに接地し、放電プラズマを発生させる。ここでロール状の元巻き基材60より基材Fを供給し、ガイドローラ24を介して、プラズマ放電処理容器20内の電極間を片面接触(ロール電極21に接触している)の状態で搬送される。そして、基材Fは搬送中に放電プラズマにより表面が放電処理され、表面に混合ガス中の反応性ガス由来の有機物を含有した薄膜が形成された後、ガイドローラ25を介して、次工程に搬送される。ここで、基材Fはロール電極21に接触していない面のみ放電処理がなされる。
【0028】
電源50より固定電極29に印加される電圧の値は適宜決定される
が、例えば、電圧が0.5〜10kV程度で、電源周波数は100kHzを越えて150MHz以下に調整される。ここで電源の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードとパルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用しても良いが連続モードの方がより緻密で良質な膜が得られる。
【0029】
プラズマ放電処理容器20はパイレックス(R)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたは、ステンレスのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けても良く、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとっても良い。
【0030】
また、放電プラズマ処理時の基材への影響を最小限に抑制するために、放電プラズマ処理時の基材の温度を常温(15℃〜25℃)〜200℃未満の温度に調整することが好ましく、更に好ましくは常温〜100℃に調整することである。上記の温度範囲に調整する為、必要に応じて電極、基材は冷却手段で冷却しながら放電プラズマ処理される。
【0031】
本実施の形態においては、上記のプラズマ処理が大気圧または大気圧近傍で行われるが、上述のように、真空や高圧下においてプラズマ処理を行ってもよい。なお、大気圧近傍とは、20kPa〜110kPaの圧力を表すが、本発明に記載の効果を好ましく得るためには、93kPa〜104kPaが好ましい。また、薄膜を塗布などの周知の手段により形成してもよい。
【0032】
また、本発明の薄膜形成方法に係る放電用電極においては、電極の少なくとも基材と接する側のJIS B 0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下になるように調整されることが、本発明に記載の効果を得る観点から好ましいが、更に好ましくは、表面粗さの最大値が8μm以下であり、特に好ましくは、7μm以下に調整することである。
【0033】
また、JIS B 0601で規定される中心線平均表面粗さ(Ra)は0.5μm以下が好ましく、更に好ましくは0.1μm以下である。
【0034】
本発明において使用するガスは、基材上に設けたい薄膜の種類によって異なるが、基本的に、不活性ガスと、薄膜を形成するための反応性ガスの混合ガスである。反応性ガスは、混合ガスに対し、0.01〜10体積%含有させることが好ましい。薄膜の膜厚としては、0.1nm〜1000nmの範囲の薄膜が得られる。
【0035】
上記不活性ガスとは、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が挙げられるが、本発明に記載の効果を得るためには、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられる。
【0036】
例えば、反応性ガスとしてジンクアセチルアセトナート、トリエチルインジウム、トリメチルインジウム、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、エトラエチル錫、エトラメチル錫、二酢酸ジ−n−ブチル錫、テトラブチル錫、テトラオクチル錫などから選択された少なくとも1つの有機金属化合物を含む反応性ガスを用いて、導電性膜あるいは帯電防止膜、あるいは反射防止膜の中屈折率層として有用な金属酸化物層を形成することができる。
【0037】
また、フッ素含有化合物ガスを用いることによって、基材表面にフッ素含有基を形成させて表面エネルギーを低くし、撥水性表面を得る撥水膜を得ることが出来る。フッ素元素含有化合物としては、6フッ化プロピレン(CF3CFCF2)、8フッ化シクロブタン(C4F8)等のフッ素・炭素化合物が挙げられる。安全上の観点から、有害ガスであるフッ化水素を生成しない6フッ化プロピレン、8フッ化シクロブタンを用いる。
【0038】
また、分子内に親水性基と重合性不飽和結合を有するモノマーの雰囲気下で処理を行うことにより、親水性の重合膜を堆積させることもできる。上記親水性基としては、水酸基、スルホン酸基、スルホン酸塩基、1級若しくは2級又は3級アミノ基、アミド基、4級アンモニウム塩基、カルボン酸基、カルボン酸塩基等の親水性基等が挙げられる。又、ポリエチレングリコール鎖を有するモノマーを用いても同様に親水性重合膜を堆積が可能である。
【0039】
上記モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸カリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、アリルアルコール、アリルアミン、ポリエチレングリコールジメタクリル酸エステル、ポリエチレングリコールジアクリル酸エステルなどが挙げられ、これらの少なくとも1種が使用できる。
【0040】
また、有機フッ素化合物、珪素化合物またはチタン化合物を含有する反応性ガスを用いることにより、反射防止膜の低屈折率層または高屈折率層を設けることが出来る。
【0041】
有機フッ素化合物としては、フッ化炭素ガス、フッ化炭化水素ガス等が好ましく用いられる。フッ化炭素ガスとしては、4フッ化炭素、6フッ化炭素、具体的には、4フッ化メタン、4フッ化エチレン、6フッ化プロピレン、8フッ化シクロブタン等が挙げられる。前記のフッ化炭化水素ガスとしては、2フッ化メタン、4フッ化エタン、4フッ化プロピレン、3フッ化プロピレン等が挙げられる。
【0042】
更に、1塩化3フッ化メタン、1塩化2フッ化メタン、2塩化4フッ化シクロブタン等のフッ化炭化水素化合物のハロゲン化物やアルコール、酸、ケトン等の有機化合物のフッ素置換体を用いることが出来るがこれらに限定されない。また、これらの化合物が分子内にエチレン性不飽和基を有していても良い。前記の化合物は単独でも混合して用いても良い。
【0043】
混合ガス中に上記記載の有機フッ素化合物を用いる場合、放電プラズマ処理により基材上に均一な薄膜を形成する観点から、混合ガス中の有機フッ素化合物の含有率は、0.1〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
【0044】
また、係る有機フッ素化合物が常温、常圧で気体である場合は、混合ガスの構成成分として、そのまま使用できるので最も容易に本発明の方法を遂行することができる。しかし、有機フッ素化合物が常温・常圧で液体又は固体である場合には、加熱、減圧等の方法により気化して使用すればよく、また、又、適切な溶剤に溶解して用いてもよい。
【0045】
混合ガス中に上記記載のチタン化合物を用いる場合、放電プラズマ処理により基材上に均一な薄膜を形成する観点から、混合ガス中のチタン化合物の含有率は、0.1〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
【0046】
また、上記記載の混合ガス中に水素ガスを0.1〜10体積%含有させることにより薄膜の硬度を著しく向上させることが出来る。
また、混合ガス中に酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、窒素から選択される成分を0.01〜5体積%含有させることにより、反応促進され、且つ、緻密で良質な薄膜を形成することができる。
【0047】
上記記載の珪素化合物、チタン化合物としては、取り扱い上の観点から金属水素化合物、金属アルコキシドが好ましく、腐食性、有害ガスの発生がなく、工程上の汚れなども少ないことから、金属アルコキシドが好ましく用いられる。
また、上記記載の珪素化合物、チタン化合物を放電空間である電極間に導入するには、両者は常温常圧で、気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合は、そのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用される。珪素化合物、チタン化合物を加熱により気化して用いる場合、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシチタンなど、常温で液体で、沸点が200℃以下である金属アルコキシドが反射防止膜の形成に好適に用いられる。上記金属アルコキシドは、溶媒によって希釈して使用されても良く、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用できる。尚、これらの希釈溶媒は、プラズマ放電処理中において、分子状、原子状に分解される為、基材上への薄膜の形成、薄膜の組成などに対する影響は殆ど無視することが出来る。
【0048】
上記記載の珪素化合物としては、例えば、ジメチルシラン、テトラメチルシランなどの有機金属化合物、モノシラン、ジシランなどの金属水素化合物、二塩化シラン、三塩化シランなどの金属ハロゲン化合物、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジエトキシシランなどのアルコキシシラン、オルガノシランなどを用いることが好ましいがこれらに限定されない。また、これらは適宜組み合わせて用いることが出来る。
【0049】
混合ガス中に上記記載の珪素化合物を用いる場合、放電プラズマ処理により基材上に均一な薄膜を形成する観点から、混合ガス中の珪素化合物の含有率は、0.1〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
【0050】
上記記載のチタン化合物としては、テトラジメチルアミノチタンなどの有機金属化合物、モノチタン、ジチタンなどの金属水素化合物、二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタンなどの金属ハロゲン化合物、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどの金属アルコキシドなどを用いることが好ましいがこれらに限定されない。
【0051】
反応性ガスに有機金属化合物を添加する場合、例えば、有機金属化合物としてLi,Be,B,Na,Mg,Al,Si,K,Ca,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Rb,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Cd,In,Ir,Sn,Sb,Cs,Ba,La,Hf,Ta,W,Tl,Pb,Bi,Ce,Pr,Nd,Pm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luから選択される金属を含むことができる。より好ましくは、これらの有機金属化合物が金属アルコキシド、アルキル化金属、金属錯体から選ばれるものが好ましい。
次に、本発明に用いることができる基材について説明する。
本発明に用いることができる基材としては、フィルム状のもの、レンズ状等の立体形状のもの等、薄膜をその表面に形成できるものであれば特に限定はない。基材が電極間に載置できるものであれば、電極間に載置することによって、基材が電極間に載置できないものであれば、発生したプラズマを当該基材に吹き付けることによって薄膜を形成すればよい。
【0052】
基材を構成する材料も特に限定はないが、大気圧または大気圧近傍の圧力下であることと、低温のグロー放電であることから、樹脂を好ましく用いることができる。好ましくは、フィルム状のセルローストリアセテート等のセルロースエステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、更にこれらの上にゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂等を塗設したもの等を使用することが出来る。また、これら基材は、支持体上に防眩層やクリアハードコート層を塗設したり、バックコート層、帯電防止層を塗設したものを用いることが出来る。
【0053】
上記の支持体(基材としても用いられる)としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートフタレートフィルム、セルローストリアセテート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体からなるフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルムあるいはポリアリレート系フィルム等を挙げることができる。
【0054】
これらの素材は単独であるいは適宜混合されて使用することもできる。中でもゼオネックス(日本ゼオン(株)製)、ARTON(日本合成ゴム(株)製)などの市販品を好ましく使用することができる。更に、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン及びポリエーテルスルフォンなどの固有複屈折率の大きい素材であっても、溶液流延、溶融押し出し等の条件、更には縦、横方向に延伸条件等を適宜設定することにより、得ることが出来る。また、本発明に係る支持体は、上記の記載に限定されない。膜厚としては10μm〜1000μmのフィルムが好ましく用いられる。
【0055】
また、基材上に設ける薄膜が反射防止膜である場合には、支持体としては、中でもセルロースエステルフィルムを用いることが低い反射率の積層体が得られる為、好ましい。本発明に記載の効果を好ましく得る観点から、セルロースエステルとしてはセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく、中でもセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられる。
【0056】
本発明において、反射防止膜を有する基材として上記セルロースエステルフィルムを用いる場合、このセルロースエステルフィルムには可塑剤を含有するのが好ましい。
【0057】
可塑剤としては特に限定はないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などを好ましく用いることが出来る。リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤として、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤として、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤として、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を好ましく用いることができる。
その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。
【0058】
ポリエステル系可塑剤として脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合体を用いることが出来る。脂肪族二塩基酸としては特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸などを用いることが出来る。グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコールなどを用いることが出来る。これらの二塩基酸及びグリコールはそれぞれ単独で用いても良いし、二種以上混合して用いても良い。
【0059】
これらの可塑剤の使用量は、フィルム性能、加工性等の点で、セルロースエステルに対して1〜20質量%であることが好ましい。
【0060】
また、薄膜が反射防止膜である場合、基材(支持体単独の場合もある)としては、液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
【0061】
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。又、特開平6−148430号記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。
【0062】
又、本発明の支持体に用いることのできる紫外線吸収剤は特願平11−295209号に記載されている分配係数が9.2以上の紫外線吸収剤を含むことが、プラズマ処理工程の汚染が少なく、また、各種塗布層の塗布性にも優れる為好ましく、特に分配係数が10.1以上の紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
【0063】
可塑剤や紫外線吸収剤吸収剤を含むセルロースエステルフィルムを基材として用いた場合、これらがブリードアウトするなどによって、プラズマ処理部に付着するなどして工程を汚染し、これがフィルムに付着する可能性が考えられる。この問題を解決するためには、支持体がセルロースエステルと可塑剤を有し、80℃、90%RHで時間処理した前後の質量変化が±2質量%未満である支持体を用いることが好ましい(保留性)。このようなセルロースエステルフィルムは特願2000−338883号記載のセルロースエステルフィルム等が好ましく用いられる。又、この目的のために特開平6−148430号、特願2000−156039号記載の高分子紫外線吸収剤(または紫外線吸収性ポリマー)が好ましく用いることができる。高分子紫外線吸収剤としては、PUVA−30M(大塚化学(株)製)などが市販されている。特開平6−148430号の一般式(1)あるいは一般式(2)あるいは特願2000−156039の一般式(3)(6)(7)記載の高分子紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
【0064】
薄膜が反射防止膜である場合の基材の光学特性としては、面内リターデーションR0は0〜1000nmのものが好ましく用いられ、厚味方向のリターデーションRtは0〜300nmのものが用途に応じて好ましく用いられる。又、波長分散特性としてはR0(600)/R0(450)は0.7〜1.3であることが好ましく、特に1.0〜1.3であること好ましい。
【0065】
ここで、R0(450)は波長450nmの光による3次元屈折率測定に基づいた面内リターデーション、R0(600)は波長600nmの光による3次元屈折率測定に基づいた面内リターデーションを表す。
【0066】
薄膜が反射防止膜である場合、基材と放電プラズマ処理により形成される薄膜との密着性を向上させる観点から、1種以上のエチレン性不飽和モノマーを含む成分を重合させて形成した層に、上記記載の放電プラズマ処理をして形成されたものであることが好ましく、特に、前記エチレン性不飽和モノマーを含む成分を重合させて形成した層をpH10以上の溶液で処理した後に放電プラズマ処理することにより、さらに密着性が改善されるため好ましい。pH10以上の溶液としては、0.1〜3mol/Lの水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム水溶液等が好ましく用いられる。
【0067】
エチレン性不飽和モノマーを含む成分を重合させて形成した樹脂層としては、活性線硬化樹脂あるいは熱硬化樹脂を構成成分として含有する層が好ましく用いられるが、特に好ましく用いられるのは活性線硬化樹脂層である。
【0068】
ここで、活性線硬化樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応などを経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよい。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることが出来る。
【0069】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば、特開昭59−151110号等を参照)。
【0070】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば、特開昭59−151112号を参照)。
【0071】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させたものを挙げることが出来る(例えば、特開平1−105738号)。この光反応開始剤としては、ベンゾイン誘導体、オキシムケトン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体等のうちから、1種もしくは2種以上を選択して使用することが出来る。
【0072】
また、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
【0073】
これらの樹脂は通常公知の光増感剤と共に使用される。また上記光反応開始剤も光増感剤としても使用出来る。具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。また、エポキシアクリレート系の光反応剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。塗布乾燥後に揮発する溶媒成分を除いた紫外線硬化性樹脂組成物に含まれる光反応開始剤又光増感剤は該組成物の2.5〜6質量%であることが好ましい。
【0074】
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、酢酸ビニル、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることが出来る。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることができる。
【0075】
例えば、紫外線硬化樹脂としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(以上、旭電化工業株式会社製)、あるいはコーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(以上、広栄化学工業株式会社製)、あるいはセイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(以上、大日精化工業株式会社製)、あるいはKRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(以上、ダイセル・ユーシービー株式会社)、あるいはRC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)、あるいはオーレックスNo.340クリヤ(中国塗料株式会社製)、あるいはサンラッドH−601(三洋化成工業株式会社製)、あるいはSP−1509、SP−1507(昭和高分子株式会社製)、あるいはRCC−15C(グレース・ジャパン株式会社製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(以上、東亞合成株式会社製)あるいはこの他の市販のものから適宜選択して利用できる。
【0076】
本発明に用いられる活性線硬化樹脂層は公知の方法で塗設することができる。活性線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化皮膜層を形成するための光源としては、紫外線を発生する光源であればいずれでも使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20〜10000mJ/cm2程度あればよく、好ましくは、50〜2000mJ/cm2である。近紫外線領域〜可視光線領域にかけてはその領域に吸収極大のある増感剤を用いることによって使用出来る。
【0077】
活性線硬化樹脂層を塗設する際の溶媒として前述のバックコート層や導電性微粒子を含有する樹脂層を塗設する溶媒、例えば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の溶媒の中から適宜選択し、あるいはこれらを混合し利用できる。好ましくは、プロピレングリコールモノ(炭素数1〜4のアルキル基)アルキルエーテルまたはプロピレングリコールモノ(炭素数1〜4のアルキル基)アルキルエーテルエステルを5質量%以上、さらに好ましくは5〜80質量%以上含有する溶媒が用いられる。
【0078】
紫外線硬化性樹脂組成物塗布液の塗布方法としては、グラビアコーター、スピナーコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター、リバースコーター、押し出しコーター、エアードクターコーター等公知の方法を用いることが出来る。塗布量はウェット膜厚で0.1〜30μmが適当で、好ましくは、0.5〜15μmである。塗布速度は好ましくは10〜60m/分で行われる。
【0079】
紫外線硬化性樹脂組成物は塗布乾燥された後、紫外線を光源より照射するが、照射時間は0.5秒〜5分がよく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率、作業効率とから3秒〜2分がより好ましい。
【0080】
こうして得た硬化皮膜層に、ブロッキングを防止するため、また対擦り傷性等を高めるために無機あるいは有機の微粒子を加えることが好ましい。例えば、無機微粒子としては酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム等を挙げることができ、また有機微粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、あるいはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等を挙げることができ、紫外線硬化性樹脂組成物に加えることが出来る。これらの微粒子粉末の平均粒径としては、0.005μm〜1μmが好ましく0.01〜0.1μmであることが特に好ましい。紫外線硬化樹脂組成物と微粒子粉末との割合は、樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜10質量部となるように配合することが望ましい。
【0081】
このようにして形成された紫外線硬化樹脂を硬化させた層は中心線表面粗さRaが1〜50nmのクリアハードコート層であっても、Raが0.1〜1μm程度の防眩層であってもよい。
以上のようにして、基材の表面に紫外線硬化樹脂を硬化させた層が塗布され、さらに、その上面にプラズマ放電処理装置10によりプラズマ処理を施すことで有機物成分が残留した薄膜を形成する。そして、この薄膜の表面に大気圧プラズマ処理を施すことで、薄膜中の有機物成分をガス化させ、薄膜表面に、防眩性に対して理想的な均一な凹凸及び空隙が形成される。
薄膜の表面に施される大気圧プラズマ処理の条件としては、上述のように、プラズマ放電処理装置を用いて、有機物成分が残留した薄膜を形成する際のプラズマ処理の条件とは異なるものとすることが好ましい。
【0082】
また、大気圧プラズマ処理により凹凸が形成された薄膜(防眩層フィルム)の表面に、低屈折率層や高屈折率層等の屈折率が異なる光学干渉層を積層して防眩性低反射フィルムを形成してもよい。
以下に、防眩性低反射フィルムの好ましい構成例i)〜v)を示す。なお、/は積層されていることを示す。
i)バックコート層/支持体/防眩層/高屈折率層/低屈折率層
ii)バックコート層/支持体/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
iii)バックコート層/支持体/防眩層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
iv)バックコート層/支持体/帯電防止層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
v)帯電防止層/支持体/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
なお、汚れや指紋のふき取りが容易となるように、最表面の低屈折率層の上に防汚層を設けることが好ましい。
【0083】
防汚層は、例えば、図6に示したプラズマ放電処理装置10を用いて、下記の処理条件で大気圧プラズマ処理により製膜することもできる。
(電源周波数とメーカー)
13.56MHz(パール工業製)
(放電出力密度)
4W/cm2
(ガス条件)
ガス1:アルゴン…99.8体積%
ガス2:6フッ化プロピレン 0.2体積%
【0084】
また、構成例iv)及びv)に示した耐電防止層は、例えば、図6に示したプラズマ放電処理装置10を用いて、下記の処理条件で大気圧プラズマ処理にて製膜することもできる。
(電源周波数とメーカー)
13.56MHz(パール工業製)
(放電出力密度)
4W/cm2
(ガス条件)
ガス1:アルゴン…99.5体積%
ガス2:テトラブチル錫にアルゴンをバブリング
トリエチルインジウムにアルゴンをバブリング
これら2つのバブリングにより含まれるテトラブチル錫とトリエチルインジウムの蒸気を混合したもの。 0.5体積%
【0085】
光学干渉層の塗布による製膜方法は、以下の手順による。
(中屈折率層の塗設)
上述の防眩膜上に、下記中屈折率層組成物を塗布し、100℃で5分間乾燥させた後、高圧水銀ランプ(80W)を用いて紫外線を180mJ/cm2照射して硬化させ、中屈折率層(厚さは77nm、屈折率は1.70)を設ける。
(中屈折率層組成物)
テトラ(n)ブトキシチタン 250質量部
末端反応性ジメチルシリコーンオイル(日本ユニカー社製 L−9000)0.5質量部
アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製 KBE903)22質量部
UV硬化性エポキシ樹脂(旭電化社製 KR500) 21質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 4850質量部
イソプロピルアルコール 4900質量部
【0086】
(高屈折率層の塗設)
上記形成した中屈折率層の上に、下記高屈折率層組成物を塗布し、100℃で5分間乾燥させた後、高圧水銀ランプ(80W)を用いて紫外線を180mJ/cm2照射して硬化させ、高屈折率層(厚さは65nmで、屈折率は1.85)を設けた。
(高屈折率層組成物)
テトラ(n)ブトキシチタン 310質量部
末端反応性ジメチルシリコーンオイル(日本ユニカー社製 L−9000)0.4質量部
アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製 KBE903)4.8質量部
UV硬化性エポキシ樹脂(旭電化社製 KR500) 4.6質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 4800質量部
イソプロピルアルコール 4900質量部
【0087】
(低屈折率層の塗設)
上記形成した高屈折率層の上に、下記低屈折率層組成物を塗布し、100℃で5分間乾燥させた後、120℃で5分間熱硬化させ、更に高圧水銀ランプ(80W)を用いて紫外線を180mJ/cm2照射し、低屈折率層(厚さは95nmで、屈折率1.45)を設けた。
(低屈折率層組成物)
テトラエトキシシラン加水分解物(*1) 1020質量部
末端反応性ジメチルシリコーンオイル(日本ユニカー社製 L−9000)0.42質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 2700質量部
イソプロピルアルコール 6300質量部
*1:テトラエトキシシラン加水分解物の調製
テトラエトキシシラン300gとエタノール455gを混合し、これに0.5質量%クエン酸水溶液295gを添加した後、室温にて1時間攪拌することでテトラエトキシシラン加水分解物を調製した。
【0088】
また、光学干渉層のプラズマ処理による製膜方法は、上述の防眩層の上に、図6に示したプラズマ放電処理装置10を用い、以下の手順による。
(高屈折率層)
希ガス:アルゴン
反応ガス:水素ガス(アルゴンに対し1%)
反応ガス:テトライソプロポキシチタン蒸気(100℃に加熱後、アルゴンガスにてバブリング)
放電密度:450W・min/m2
処理速度:30m/min
(低屈折率層)
希ガス:アルゴン
反応ガス:水素ガス(アルゴンに対し1%)
反応ガス:テトラエトキシシラン蒸気(アルゴンガスにてバブリング)
放電密度:400W・min/m2
処理速度:30m/min
【0089】
なお、基材面に対して薄膜を設ける場合、平均膜厚に対する膜厚偏差を±10%になるように設けることが好ましく、更に好ましくは±5%以内であり、特に好ましくは±1%以内になるように設けることが好ましい。
【0090】
また、基材表面の薄膜をプラズマ処理する前に、プラズマ処理面に紫外線を照射することが形成される皮膜の密着性に優れるため好ましい。紫外線照射光量としては50〜2000mJ/cm2であることが好ましい。50mJ/cm2未満では、効果が十分ではなく、2000mJ/cm2を越えると基材の変形等が生じる恐れがあり好ましくない。紫外線照射後、1時間以内にプラズマ処理することが好ましく、特に紫外線照射後10分以内にプラズマ処理することが好ましい。プラズマ処理前の紫外線の照射は、前述の紫外線硬化樹脂の硬化のための紫外線照射と同時に行ってもよく、その場合、硬化のために最低限必要な紫外線照射量よりも多くすることが好ましい。
また、プラズマ処理を行った後に紫外線照射することも、形成された皮膜を早期に安定化させるために有効である。
【0091】
このため、紫外線照射光量として50〜2000mJ/cm2をプラズマ処理後にプラズマ処理面に照射することが好ましい。これらの処理はプラズマ処理の後、巻き取り工程までの間に行うことが好ましい。また、プラズマ処理後の基材は50〜130℃に調整された乾燥ゾーンにおいて1〜30分処理されることが好ましい。
【0092】
反射防止膜を有する基材は、両面にプラズマ処理が施されていることが処理後のカールが少なくなるため好ましい。裏面のプラズマ処理は別々に行ってもよいが、両面同時にプラズマ処理を行うことが好ましく、低反射加工側の裏面側には、プラズマ処理による裏面加工を行うことが好ましい。例えば、特願2000−273066号記載の易接着加工、特願2000−80043号記載の帯電防止加工があげられるが、特にこれらに限定されない。
【0093】
反射防止膜を有する基材は、屈折率が1.6〜2.3の酸化チタンを主成分とする高屈折率層、屈折率が1.3〜1.5の酸化ケイ素を主成分とする低屈折率層を長尺フィルム状の基材表面に連続して設けることが好ましい。これにより各層の間の密着性が良好となる。好ましくは基材フィルム上に紫外線硬化樹脂層を設けた後、直ちにプラズマ処理によって高屈折率層及び低屈折率層を設けることがより好ましい。
【0094】
また、前記高屈折率層が酸化チタンを主成分とし、屈折率が2.2以上であることが特に好ましい。
【0095】
反射防止膜の高屈折率層及び低屈折率層の炭素含有率は、ともに0.2〜5質量%であることが下層との密着性と膜の柔軟性のために好ましい。より好ましくは炭素含有率は0.3〜3質量%である。すなわち、プラズマ処理によって形成された層は有機物(炭素原子)を含んでいるため、その範囲が膜に柔軟性を与えるため、膜の密着性に優れ好ましい。炭素の比率が多くなりすぎると経時で屈折率が変動しやすくなる傾向があり、好ましくない。
【0096】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
1.基材フィルム(セルロースエステルフィルム)の作製
以下に示す方法に従って、基材であるセルロースエステルフィルムを作製した。
(1)ドープCの調製
(酸化ケイ素分散液Aの調製)
アエロジル200V(日本アエロジル(株)製) 1kg
エタノール 9kg
上記素材をディゾルバで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリン型高圧分散装置を用いて分散を行った。
【0097】
(添加液Bの調製)
セルローストリアセテート(アセチル置換度:2.65) 6kg
メチレンクロライド 140kg
上記素材を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解、濾過した。これに10kgの上記酸化ケイ素分散液Aを撹拌しながら加えて、さらに30分間撹拌した後、濾過し、添加液Bを調製した。
【0098】
(ドープ原液Cの調製)
メチレンクロライド 440kg
エタノール 35kg
トリアセチルセルロース(アセチル置換度:2.65)100kg
トリフェニルフォスフェート 8kg
エチルフタリルエチルグリコレート 3kg
チヌビン326(チバスペシャルティケミカルズ社製) 0.4kg
チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ社製) 0.9kg
チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ社製) 0.9kg
溶剤を密閉容器に投入し、攪拌しながら素材を投入し、加熱、撹拌しながら、完全に溶解、混合した。ドープを流延する温度まで下げて一晩静置し、脱泡操作を施した後、溶液を安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープ原液Cを調製した。
【0099】
更に溶液100kgあたり添加液Bを2kgの割合で添加し、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機H−Mixer、SWJ)で十分混合し、濾過し、ドープCを調製した。
【0100】
(2)ドープEの調製
(酸化ケイ素分散液Aの調製)
アエロジルR972V(日本アエロジル(株)製)
(一次粒子の平均径16nm) 1kg
エタノール 9kg
上記素材をディゾルバで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリン型高圧分散装置を用いて分散を行った。
【0101】
(添加液Dの調製)
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度:2.0、プロピオニル基置換度:0.8) 6kg
酢酸メチル 100kg
エタノール 40kg
上記の素材を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解、濾過した。これに10kgの上記酸化ケイ素分散液Aを撹拌しながら加えて、さらに30分間撹拌した後、濾過し、添加液Dを調製した。
【0102】
(ドープ原液Eの調製)
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度:2.0、プロピオニル基置換度:0.8) 100kg
酢酸メチル 290kg
エタノール 85kg
KE−604(荒川化学工業) 15kg
PUVA−30M(大塚化学(株)製) 5kg
溶剤を密閉容器に投入し、攪拌しながら素材を投入し、加熱、撹拌しながら、完全に溶解、混合した。ドープを流延する温度まで下げて一晩静置し、脱泡操作を施した後、溶液を安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープ原液Eを調製した。
【0103】
更に溶液100kgあたり添加液Dを2kgの割合で添加し、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機Hi−Mixer、SWJ)で十分混合し、濾過し、ドープEを調製した。
【0104】
(3)ドープGの調製》
(酸化ケイ素分散液Fの調製)
アエロジル200V(日本アエロジル(株)製) 1kg
エタノール 9kg
上記素材をディゾルバで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリン型高圧分散装置を用いて分散を行った。
【0105】
(添加液Eの調製)
セルローストリアセテート(アセチル置換度:2.88) 6kg
メチレンクロライド 140kg
上記素材を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解、濾過した。これに10kgの上記酸化ケイ素分散液Fを撹拌しながら加えて、さらに30分間撹拌した後、濾過し、添加液Eを調製した。
【0106】
(ドープ原液Gの調製)
メチレンクロライド 440kg
エタノール 35kg
トリアセチルセルロース(アセチル置換度:2.88)100kg
トリフェニルフォスフェート 9kg
エチルフタリルエチルグリコレート 4kg
チヌビン326(チバスペシャルティケミカルズ社製) 0.4kg
チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ社製) 0.9kg
チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ社製) 0.9kg
溶剤を密閉容器に投入し、攪拌しながら素材を投入し、加熱、撹拌しながら、完全に溶解、混合した。ドープを流延する温度まで下げて一晩静置し、脱泡操作を施した後、溶液を安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープ原液Gを調製した。
【0107】
更に溶液100kgあたり添加液Eを2kgの割合で添加し、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機Hi−Mixer、SWJ)で十分混合し、濾過し、ドープGを調製した。
尚、上記記載のドープC、E、Gの各々の調製に用いたセルロースエステルの置換度の測定は、ASTM−D817−96に規定の方法に準じて行った。
【0108】
(4)セルロースエステルフィルムの作製
上記で調製したドープC、E及びGを用いて下記のようにしてセルロースエステルフィルムを作製した。
【0109】
ドープEを濾過した後、ベルト流延装置を用い、ドープ温度35℃で30℃のステンレスバンド支持体上に均一に流延した。その後、剥離可能な範囲まで乾燥させた後、ステンレスバンド支持体上からウェブを剥離した。このときのウェブの残留溶媒量は35%であった。
【0110】
ステンレスバンド支持体から剥離した後、幅方向に保持しながら115℃で乾燥させた後、幅保持を解放して、ロール搬送しながら120℃の乾燥ゾーンで乾燥を終了させ、フィルム両端に幅10mm、高さ5μmのナーリング加工を施して、膜厚80μmのセルロースエステルフィルムを作製した。フィルム幅は1300mm、巻き取り長は1500mとした。
【0111】
上記で得られたセルロースエステルフィルムについては、下記の方法で保留性を評価した。その結果、80℃、90%RHの条件下で48時間放置した前後の質量変化から求められた保留性は0.4%であった。
【0112】
(5)保留性の評価方法
試料を10cm×10cmのサイズに断裁し、23℃、55%RHの雰囲気下で24時間放置後の質量を測定して、80℃、90%RHの条件下で48時間放置した。処理後の試料の表面を軽く拭き、23℃、55%RHで1日放置後の質量を測定して、以下の方法で保留性(質量%)を計算した。
保留性={(放置前の質量−放置後の質量)/放置前の質量}×100
【0113】
2.プラズマ処理による製膜
上述のようにして得られた膜厚80μmのセルロースエステルフィルム上に、図6に示すプラズマ放電処理装置10を用い、下記に示すプラズマ処理条件下により膜厚4μmのSiO2を主成分とする製膜を行い、基材フィルム1〜6を作製した。
【0114】
プラズマ処理条件
(プラズマ電源周波数とメーカー)
13.56MHz(パール工業製)
800kHz(パール工業製)
100kHz(ハイデン研究所製)
50kH(神鋼電機製)
(放電出力条件)
2W/cm2、4W/cm2、8W/cm2
ここで、単位のW/cm2とは印加出力(単位W)を放電面積(cm2)で除したもの。
(ガス条件)
ガス1:アルゴン…99.25体積%
ガス2:酸素…混合ガス全体に対して0.5体積%
ガス3:テトラエトキシシラン蒸気…混合ガス全体に対して0.25体積%
上記ガス1〜3を放電空間直前で均一に混合させ、反応ガスとした。
ガス3は60℃に加熱したテトラエトキシシラン(液体)をガス1の一部を使ってバブリングすることによりテトラエトキシシラン蒸気を供給することができる。
【0115】
なお、プラズマ放電処理装置10のロール電極21は、冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材に対して、セラミック溶射によりアルミナを1mm被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行い、表面を平滑にしてRmax5μmとした誘電体(比誘電率10)を有するロール電極25を製作しアース(接地)した。一方、印加電極としては、中空の角型のステンレスパイプに対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆し、対向する電極群とした。
【0116】
次に、セルロースエステルフィルム上に下記のクリアハードコート層を塗布し、クリアハードコート層上に、上記基材フィルム1〜6と同様に製膜を行い、基材フィルム7〜12を作製した。
(クリアハードコート層の生成方法)
下記のクリアハードコート層塗布組成物をウェット膜厚で13μmとなるように押し出しコーターでコーティングし、次いで80℃に設定された乾燥部で乾燥した後、120mJ/cm2で紫外線照射し、乾燥膜厚で4μm、算術平均粗さ(Ra)15nmのクリアハードコート層を作製する。
(クリアハードコート層塗布組成物)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分 20質量部
ジメトキシベンゾフェノン光反応開始剤 4質量部
酢酸エチル 50質量部
メチルエチルケトン 50質量部
イソプロピルアルコール 50質量部
【0117】
次に、作製した基材フィルム1〜12の炭素含有率を、以下の測定方法により測定した。
(1)炭素含有率を、XPS表面分析装置を用いて測定する。
XPS表面分析装置としては、特に限定なく、いかなる機種も使用することができるが、本実施例においてはVGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いた。X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定した。
エネルギー分解能は、清浄なAg3d5/2ピークの半値幅で規定したとき、1.5〜1.7eVとなるように設定した。測定をおこなう前に、汚染による影響を除くために、薄膜の膜厚の10〜20%の厚さに相当する表面層をエッチング除去する必要がある。表面層の除去には、希ガスイオンが利用できるイオン銃を用いることが好ましく、イオン種としては、He、Ne、Ar、Xe、Krなどが利用できる。本測定おいては、Arイオンエッチングを用いて表面層を除去した。
【0118】
(2)結合エネルギー0eVから1100eVの範囲を、データ取り込み間隔1.0eVで測定し、いかなる元素が検出されるかを求めた。
(3)次に、検出された、エッチングイオン種を除く全ての元素について、データの取り込み間隔を0.2eVとして、その最大強度を与える光電子ピークについてナロースキャンをおこない、各元素のスペクトルを測定した。
得られたスペクトルは、測定装置、あるいは、コンピューターの違いによる含有率算出結果の違いを生じせしめなくするために、VAMAS−SCA−JAPAN製のCOMMON DATA PROCESSING SYSTEM (Ver.2.3以降が好ましい)上に転送した後、同ソフトで処理をおこない、炭素含有率の値を原子数濃度(atomic concentration)として求めた。
【0119】
定量処理をおこなう前に、各元素についてCount Scaleのキャリブレーションをおこない、5ポイントのスムージング処理をおこなった。定量処理では、バックグラウンドを除去したピークエリア強度(cps*eV)を用いた。バックグラウンド処理には、Shirleyによる方法を用いた。Shirley法については、D.A.Shirley,Phys.Rev.,B5,4709(1972)を参考にすることができる。
【表1】
【0120】
3.防眩層フィルムの作製
上記の基材フィルム1〜12に対して、図6に示すプラズマ放電処理装置10を用い、下記に示すプラズマ処理条件下により、防眩層フィルム1〜24を作製した。
(プラズマ電源周波数とメーカー)
13.56MHz(パール工業製)
(放電出力条件)
8W/cm2
(ガス条件1)
ガス1:アルゴン…98.0体積%
ガス2:酸素…混合ガス全体に対して2.0体積%
上記ガス1〜2を均一に混合させて放電空間に供給し、反応ガスとした。
(ガス条件2)
ガス1:アルゴン…98.0体積%
ガス2:CF4…混合ガス全体に対して1.0体積%
ガス3:酸素…混合ガス全体に対して1.0体積%
【0121】
上記のようにして作製した防眩層フィルムに対して、中心線平均粗さ(Ra)、防眩性、ギラツキ感、表面均一性、の評価を行ない、結果を表2に示した。
(Raの測定方法)
中心線平均表面粗さRa(μm)は、非接触3次元表面解析装置(WYKO社RST/PLUS)を用いて、299.4μm×232.4μmの面積のRaを測定した。なおRaの定義は、JIS表面粗さ(B0601)に従った。測定は、30cm×30cmの各試料について、3cm間隔で碁盤目状に100分割し、各正方形領域の中心について測定を行ない、100回の測定からその平均値と標準偏差を求めた。中心線平均表面粗さ(Ra)は、得られた粗さ曲線からその中心線の方向に測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をX軸、縦倍率の方向をY軸、粗さ曲線をY=f(X)で表したとき、下記式によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表した。
【数1】
【0122】
(防眩性の評価方法)
作製した試料面に、ルーバーなしのむき出し蛍光灯(8000cd/m2)を映し、その蛍光灯反射像のボケの程度を、以下に示す基準に従い、目視観察にて防眩性ランクを評価した。
◎:蛍光灯像の輪郭がまったくわからない。
○:蛍光灯像の輪郭が僅かに見える。
△:蛍光灯像はボケてはいるが、輪郭が識別できる。
×:蛍光灯像がほとんどボケない。
【0123】
(ギラツキ感の評価方法)
上記により作製した試料面に、ルーバーを有する蛍光灯の拡散光を映し、表面のギラツキ感を、以下に示す基準に従い、目視観察にてギラツキ感ランクを評価した。
◎:ギラツキがまったく認められない。
○:ほとんどギラツキが認められない。
△:僅かにギラツキが認められる。
×:明らかにギラツキが認められる。
【0124】
(表面均一性の評価方法)
上記により作製した試料表面を背後よりフラットな拡散光を照射し、以下に示す基準に従い、表面の面状態を目視観察にて表面均一性ランクを評価した。
○:ムラが観察されない。
×:明らかにムラが観察される。
【表2】
【0125】
本発明による防眩層フィルムは、防眩性に優れ、ギラツキ感もなく、かつ表面均一性に優れていることが確認された。
【0126】
【発明の効果】
本発明によれば、煩雑な工程を経ることなく、基材上に防眩性に対して理想的な凹凸及び空隙を形成する表面処理方法及び防眩層の形成方法を提供でき、また、これら表面処理方法及び防眩層の形成方法により形成された防眩層を有する防眩層フィルム及び防眩性低反射フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】プラズマ放電処理容器の一例を示す概略図である。
【図2】プラズマ放電処理容器の他の一例を示す概略図である。
【図3】円筒型のロール電極の一例を示す斜視図(a)及び(b)である。
【図4】固定型の円筒型電極の一例を示す斜視図(a)及び(b)である。
【図5】固定型の角柱型電極の一例を示す斜視図(a)及び(b)である。
【図6】プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
F 基材
20 プラズマ放電処理容器
21、22、29 電極
21a、21A、22a、22A、29a、29A 金属等の導電性母材
21b、22b、29b セラミック被覆処理誘電体
21B、22B、29B ライニング処理誘電体
23a、23b ニップローラー
24、25 ガイドローラー
26 仕切板
27 給気口
28 排気口
40 ガス発生装置
41 ガス充填手段
50 電源
70 電極冷却ユニット
Claims (10)
- プラズマ耐性が異なる複数の物質により炭素含有率が5〜20%の不均一な組成に制御された薄膜を基材の表面に形成した被処理物を、大気圧または大気圧近傍の圧力下においてプラズマ状態の反応性ガスに曝す大気圧プラズマ処理によって、前記薄膜に凹凸及び空隙を形成して該薄膜を防眩層とすることを特徴とする表面処理方法。
- 請求項1記載の表面処理方法であって、
前記物質のうちの少なくとも一つが、前記大気圧プラズマ処理によってガス化しやすい物質であることを特徴とする表面処理方法。 - 請求項1記載の表面処理方法であって、
前記物質のうちの少なくとも一つが有機物であることを特徴とする表面処理方法。 - 請求項1〜3のいずれか一つに記載の表面処理方法であって、
前記薄膜が、塗布により不均一組成を有するように生成されることを特徴とする表面処理方法。 - 請求項1〜3のいずれか一つに記載の表面処理方法であって、
前記薄膜が、プラズマ処理により不均一組成を有するように生成されることを特徴とする表面処理方法。 - 請求項1〜5のいずれか一つに記載の表面処理方法であって、
少なくとも一種類の不活性ガスと前記反応性ガスとを含む混合ガスを用いて前記大気圧プラズマ処理を行うことを特徴とする表面処理方法。 - 請求項6記載の表面処理方法であって、
前記反応性ガスに、酸素またはフッ素を含む化合物からなるガスが含まれることを特徴とする表面処理方法。 - 請求項1〜7のいずれか一つに記載の表面処理方法により、前記基材の表面に防眩層を形成することを特徴とする防眩層の形成方法。
- 請求項8記載の防眩層の形成方法により形成された防眩層を有することを特徴とする防眩層フィルム。
- 請求項9記載の防眩層フィルムの上面に反射防止層を備えることを特徴とする防眩性低反射フィルム。
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