本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の大気圧プラズマ放電処理装置は、大気圧または大気圧近傍の圧力下で、少なくとも一方が固体誘電体で被覆された対向する棒電極及びロール電極から構成される放電空間に、珪素化合物及びチタン化合物から選択される少なくとも一種の化合物、及び、水素ガス及び酸素ガスから選択される少なくとも一種のガスを含有する薄膜形成ガスをガス供給部から供給し、該放電空間に高周波電界を発生させることで該ガスを活性化し、連続的に搬送される被処理基材を該ガスに晒すことにより該被処理基材上に薄膜を形成するプラズマ放電処理装置において、前記放電空間及びその周辺部が隔壁によって覆われており、かつ該放電空間近傍に水素、酸素ガス濃度センサーを設置して、水素、酸素ガス濃度をモニターし、水素ガス濃度が1質量%以下でかつ酸素ガス濃度が5質量%以下になるように不活性ガスを該放電空間及びその周辺部に充填する機構を備えることを特徴とする。本発明者は、不活性ガスをプラズマ放電空間に常に安定に充填することにより、プラズマ放電処理開始時の外部空気や残留未反応ガスによる、不安定な放電を回避し、パーティクル故障やヘイズの劣化がない、高精度な薄膜形成が可能になることを見出し本発明を成すに至った。
本発明は後述するフィルム状の長尺基材表面に薄膜を形成することが好ましいが、その表面処理方法により光学フィルムを製造する装置、また、その製造装置を用いた製造方法について、以下にその実施の形態を主要部分であるプラズマ放電処理装置1について図1を用いて説明する。
図1は、プラズマ放電処理装置1の概略構成を表す側面図である。
このプラズマ放電処理装置1は、大気圧または大気圧近傍の圧力下で、放電プラズマを発
生させることによってガスを活性化し、その活性化したガスに基材を晒して、基材上に薄膜を形成する薄膜形成装置である。プラズマ放電処理装置1には、図1に示すように、シート状の基材2をその周面に密着させて搬送する第1電極10が回転自在に設けられている。
図2は、第1電極10を表す斜視図であり、この第1電極10は、導電性の金属質母材11の表面に誘電体12が被覆されたロール状電極である。第1電極10の内部には、表面温度を調節するため、例えば、水やシリコンオイル等の温度調節用の媒体が循環出来るようになっており、この循環部分には、図1に示すように、配管3を介して温度調節装置4が接続されている。また、第1電極10には、第1フィルタ13を介して第1電源14が接続されている。第1電極10の周縁には、基材2を第1電極10の周面に密着させて搬送するために基材用搬送機構15と、基材2上に薄膜を形成するための複数の薄膜形成ユニット20が設けられている。
基材用搬送機構15には、基材2を第1電極10の周面に案内する第1ガイドローラ16及び第1ニップローラ17と、前記周面に密着した基材2を剥がして、次行程まで案内する第2ガイドローラ18と、第1ガイドローラ16、第2ガイドローラ18及び第1電極10を連動するように回転させる駆動源51(図6参照)とが設けられている。ガイドローラ16とニップローラは兼ねても構わない。
図3は薄膜形成ユニット20の側面図であり、図4は薄膜形成ユニット20の正面図である。薄膜形成ユニット20には、第1電極10の周面に対向し、第1電極10よりも幅の大きい一対の小電極(第2電極/棒状電極)21が、間隔aを空けて配置されている。つまり、この一対の小電極21のうち、一方の小電極21が第1の小電極21Aであり、他方の小電極21が第1小電極21Aに隣り合う第2の小電極21Bである。そして、上記した間隔aが放電空間Aであり、放電空間Aを成す第1電極10及び小電極21の対向する面をそれぞれ放電面10a、21aとする。また、一対の小電極21の間には、隙間bが設けられている。図5は、小電極21を表す斜視図であり、小電極21は導電性の金属質母材211の表面に誘電体212が被覆された棒状電極である。小電極21は内部が中空となっており、この中空部分213には、配管5を介して温度調節装置6が接続されている。中空部分213に温度調節用の媒体を流すことにより、電極表面の温度調節が出来るようになっている。また、小電極21の角部(連結角部)215は円弧状に形成されている。つまり、小電極21の四面は角部215を介して連続していることから、放電面10a及び放電面10a以外の表面も連続することになる。そして、各薄膜形成ユニット20の小電極21には、図1に示すように、第2フィルタ22を介して第2電源23が接続されている。
ここで、第1電極10及び小電極21を形成する金属質母材11、211及び誘電体12、212について説明する。
金属質母材11、211と誘電体12、212と組み合わせとしては、両者の間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属質母材11、211と誘電体12、212との線熱膨張係数の差が10×10-6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10-6/℃以下、更に好ましくは5×10-6/℃以下、更に好ましくは2×10-6/℃以下である。尚、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、例えば、a.金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がセラミックス溶射被膜、b.金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がガラスライニング、c.金属質母材がステンレススティールで、誘電体がセラミックス溶射被膜、d.金属質母材がステンレススティールで、誘電体がガラスライニング、e.金属質母材がセラミックス及び鉄の複合材料で、誘電体がセラミックス溶射被膜、f.金属質母材がセラミックス及び鉄の複合材料で、誘電体がガラスライニング、g.金属質母材がセラミックス及びアルミの複合材料で、誘電体がセラミックス溶射皮膜、h.金属質母材がセラミックス及びアルミの複合材料で、誘電体がガラスライニング、等が挙げられる。線熱膨張係数の差という観点では、上記aまたはb及びe〜hが好ましく、特にaが好ましい。
そして、金属質母材11、211は、チタンまたはチタン合金が特に有用である。金属質母材11、211をチタンまたはチタン合金とし、誘電体12、212を上記組み合わせに応じる素材とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることが可能となる。
本発明に有用な電極の金属質母材11、211は、チタンを70質量%以上含有するチタン合金またはチタン金属である。本発明において、チタン合金またはチタン金属中のチタンの含有量は、70質量%以上であれば、問題なく使用出来るが、好ましくは80質量%以上のチタンを含有しているものが好ましい。本発明に有用なチタン合金またはチタン金属は、工業用純チタン、耐食性チタン、高力チタン等として一般に使用されているものを用いることが出来る。工業用純チタンとしては、例えばTIA、TIB、TIC、TID等が挙げられ、いずれも鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等を極僅か含有しているものであり、チタンの含有量は99質量%以上を有している。耐食性チタン合金としては、T15PBを好ましく用いることが出来、上記含有原子の他に鉛を含有しており、チタン含有量は98質量%以上である。また、チタン合金としては、鉛を除く上記の原子の他に、例えば、アルミニウムを含有し、その他バナジウムや錫を含有しているT64、T325、T525、TA3等を好ましく用いることが出来、これらのチタン含有量としては、85質量%以上を含有しているものである。これらのチタン合金またはチタン金属はステンレススティール、例えばAISI316に比べて、熱膨張係数が1/2程度小さく、金属質母材11、211としてチタン合金またはチタン金属の上に施された誘電体12、212との組み合わせがよく、高温、長時間での使用に耐えることが出来る。
一方、誘電体12、212の求められる特性としては、具体的には、比誘電率が6〜45の無機化合物であることが好ましく、また、このような誘電体としては、例えば、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、或いは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等が挙げられる。この中では、セラミックスを溶射したものやガラスライニングにより設けたものが好ましい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体12、212が好ましい。
または、大電力に耐えうる仕様の一つとして、誘電体12、212の空隙率が10体積%以下、好ましくは8体積%以下であることで、好ましくは0体積%を越えて5体積%以下である。また、大電力に耐えうる別の好ましい仕様としては、誘電体12、212の厚みが0.5〜2mmであることである。この膜厚変動は、5%以下であることが望ましく、好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下である。
薄膜形成ユニット20には、図3に示すように、一対の小電極21の隙間bに向けてガスを噴出するガス供給部24が、前記隙間bに対向するように配置されている。これにより隙間bは、放電空間Aにガスを供給する流路Bとなる。ガス供給部24には、内部にガス流路が形成されたノズル本体部25と、ノズル本体部25から流路Bに向けて突出し、ガス流路に連通してガスを噴出するガス噴出部26とが設けられている。
本発明では、以下に述べる小電極21の汚れを防止するクリーニングフィルムユニットを設けることが好ましい。
薄膜形成ユニット20には、小電極21の汚れを防止するクリーニングフィルム27を、小電極21に密着させながら、連続的若しくは間欠的に搬送するフィルム用搬送機構30が各小電極21に応じて設けられている。このフィルム用搬送機構30には、ガス供給部24の近傍で、クリーニングフィルム27を案内する第1フィルム用ガイドローラ31が設けられている。この第1フィルム用ガイドローラ31の上流側には、図示しないクリーニングフィルム27の巻き出しローラ若しくはクリーニングフィルム27の元巻が設けられている。
また、ガス供給部24に対して、第1フィルム用ガイドローラ31よりも遠方には、第2フィルム用ガイドローラ32を介してクリーニングフィルム27を巻き取る巻取部(図示省略)が設けられている。第1フィルム用ガイドローラ31、第2フィルム用ガイドローラ32及びクリーニングフィルム27の全幅は、図4に示すように、第1電極10の全幅よりも長く設定されている。具体的には、クリーニングフィルム27の全幅長は、両端が第1電極10の両端から1〜100mmではみ出すように設定されていることが好ましい。これにより、クリーニングフィルム27が放電空間Aよりも大きくなる。つまり小電極21は、クリーニングフィルム27に覆われることにより、放電プラズマに晒されなくなり、小電極21に対する汚れを防止出来る。また、クリーニングフィルム27のエッジ
が放電空間A内に侵入しないために、放電集中によるアーク放電を防止出来る。
このフィルム用搬送機構30によってクリーニングフィルム27は、巻出ローラから引き出された後、第1フィルム用ガイドローラ31に案内されて、ガス供給部24のノズル本体部25の周縁に接触した後に、小電極21の流路Bを形成する表面21bに密着してから、角部215を介して放電面21aに密着し、第2フィルム用ガイドローラ32に案内されて、巻取部で巻き取られるようになっている。この際、角部215が円弧状に形成されているので、クリーニングフィルム27が前記放電面21a以外の表面21bから放電面21aまで移動する際に引っかかることを防止出来、スムーズに搬送させることが出来る。尚、本実施形態では、小電極21の放電面21aが平面であるが、この放電面21aを、第1電極10の放電面10aに向かって凸となる曲面に形成してもよい。こうし
た場合、小電極21の放電面21aとクリーニングフィルム27との密着性を更に高めることが出来る。更に、本実施の形態では、流路Bを形成する小電極21の表面においても平面であるが、この表面を流路Bの中央に向けて凸となる曲面に形成してもよい。これにより、クリーニングフィルム27を流路B内でも小電極21に密着させながらスムーズに搬送させることが出来、皺やツレの発生を抑制することが出来る。
そして、上記のように、クリーニングフィルム27とノズル本体部25とが接触しているので、ガス供給部24から流路Bまでの空間は、クリーニングフィルム27によって仕切られることになって、ガスが流路B外に流れることを防止出来る。
ここで、クリーニングフィルム27が小電極21に密着していない場合においては、上記のように小電極21の表面が放電面21aとなるが、クリーニングフィルム27が小電極21に密着している場合には、前記放電面21aに密着するクリーニングフィルム27の表面が放電面になる。同様に、基材2が第1電極10の表面に密着していない場合においては、上記のように第1電極10の表面が放電面10aとなるが、基材2が第1電極10に密着している場合には、前記放電面10aに密着する基材2の表面が放電面になる。従って、基材2及びクリーニングフィルム27がそれぞれ第1電極10及び小電極21に密着している場合には、放電空間Aは基材2及びクリーニングフィルム27の表面より形成されることになる。
クリーニングフィルム27は、例えば樹脂フィルム、紙、布、不織布等から形成されている。樹脂としては、例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートまたはセルロースアセテートブチレートのようなセルロースエステル、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールコポリマー、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリメチルアクリレート、アクリレートコ
ポリマー等が挙げられる。そして、更に好ましくは、安価で生産性に優れるポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(PET)及びPETを主体とする樹脂フィルムである。また本発明に用いられるクリーニングフィルム27は、厚みが10〜1000μm、より好ましくは20〜100μmのフィルム状のものが使用されている。また、また材質に求められる性質としては、大気圧プラズマ放電処理を行っている最中は非常に高温となるために、耐熱性即ち熱的寸法安定性に優れたものがよい。更に熱的寸法安定性を向上させるためにアニール処理等を施したものがより好ましい。
プラズマ放電処理装置1には、図6に示すように、各駆動部を制御する制御装置50が設けられている。制御装置50には、駆動源51、記憶部52、第1電源14、第2電源23、ガス供給部24、不活性ガス供給部60、ガス排気部61、温度調節装置4、水素濃度センサー62、酸素濃度センサー63、圧力計64、温度計65、第2フィルム用ガイドローラ32が電気的に接続されている。尚、制御装置50には、これら以外にも薄膜形成装置1の各駆動部などが接続されている。そして、制御装置50は、記憶部52中に書き込まれている制御プログラムや制御データに従ってい各種機器を制御するようになっている。
次に本発明の特徴である前記プラズマ放電処理装置を覆う隔壁を有した装置について説明する。
図7、8、9は本発明に係る隔壁を有した大気圧プラズマ放電処理装置の概念図である。
図7のように、被処理基材となるフィルム基材を抱かせる前記ロール電極10とクリーニングフィルムユニットを有する薄膜形成ユニット(棒電極)20で構成された大気圧プラズマ放電処理装置1と、放電部、棒電極を囲むように内部と外部の空気の出入りを制御する隔壁310を設ける。被処理基材となるフィルムとロール電極は密着しており、フィルムと隔壁は、フィルム表面が擦れない程度に離す。このとき隔壁内部への外気の進入を防ぐため、できる限り隔壁とフィルムは近づけることが好ましい。また、図8のようにフィルムとロール電極の密着性を高めるため、フィルムがロール電極に接する部分において、フィルムをロール電極とで挟むようなニップロール16を設けていることが好ましい。このときニップロールは、外気遮断を兼ねるように設置し、ニップロールと隔壁の間は、これもロール表面をこすらない程度に隙間を開け、なるべく隙間は狭いことが望ましい。
また薄膜形成ガスである放電ガス、原料ガスのガス供給部24とは別に、隔壁内部のガスパージ、ガス組成調整のために、別途パージ用不活性ガスの供給口301を設ける。この供給口を設けることによって、放電ガス、原料ガス供給部では対応出来ない、大流量のガスを隔壁内部に送り込むことが出来、すばやく隔壁内部のガスをパージすることが可能となるだけでなく、放電部のガス組成を一定にしつつ隔壁内部の放電空間周囲のガス組成も調整することが出来る。この不活性ガス供給口は、隔壁内部のどの部分に何箇所設けても良いが、図9で示すように隔壁とフィルム若しくはニップロール16の近傍に設置することによって、外気流入をエアーカーテン状に遮断出来るような形態を取ることが好ましい。供給されるガスについては、不活性ガスを主とし、数、種類、混合比を問わないが、放電の安定性の確保、コスト低減の観点から放電ガスと同一、若しくは放電ガスと窒素を混ぜたものが好ましい。この時のガス混合比としては、放電状態が変化しない程度にすることが好ましい。
排気口302は、隔壁内部のどの部分に設けても良いが、図7、8で示すように、比重の異なるガスを適切に排気するため装置の上下に設けることが好ましく、更に図9で示すような放電空間及びその周辺部近傍に排気口を設けることが好ましい。
即ち、放電空間及びその周辺部のガスの排気口が、最低限隔壁上部と下部の2箇所以上あることが好ましい。上部の排気口は水素等相対的に軽量なガス濃度が高くなり、充満されないようにするためであり、下部の排気口は酸素やアルゴン、原料ガスが溜まらないようになる。このようにして、上部放電区域と下部の放電区域の放電条件が異なってしまうことを防ぐことが出来る。また、排気口の外部に通じる管は、原料ガスの残渣などを不燃ガスに変化させてから外気放出するような機構や、水中に通して、水を多く含んだガスにしてから外部に排出する機構を有してもよい。このように上下に分離排気することによって、水素と可燃性ガスを分離排気出来るために、可燃性ガスを燃焼させてから大気放出させることも安全に出来る。このような機構を有することによって火災などの危険性も予防出来る。
不活性ガスの供給及び排気はいずれも図示していないが、制御装置及びポンプにより流量制御を行う。
次に隔壁内部には、水素濃度センサー62、酸素濃度センサー63が設けられ、隔壁内部の外気の混入若しくは隔壁内部のガス溜りによる水素、酸素などの濃度のモニタリングを行う。このセンサーからの信号を制御装置50に送り、水素、酸素などの特定のガスの濃度上昇を上記の不活性ガス供給装置及び排気装置と連動させることによって制御し、放電空間及びその周辺部を不活性ガスによって充填することを可能にする。センサーはいずれも市販のセンサーを用いればよいが、具体的には、酸素ガス濃度センサーは理研計器社製OS−B11及び酸素ガス指示計理研計器社製OX−571Aを組み合わせて用いればよい。水素ガス濃度の測定については、水素ガス濃度センサーとして、燃焼ガス検知器(理研計器社製HW−6211)と燃焼ガス指示計(理研計器社製GP−571A)を組み合わせて用い、100%LELを水素ガス濃度4質量%、33%LELを水素ガス濃度1.33%として、検量線を作製し測定値より水素ガス濃度を換算する。
本発明では、放電開始時、並びに薄膜形成時において、隔壁内部の水素ガス濃度を1質量%以下でかつ酸素ガス濃度を5質量%以下に制御することによって、本発明の目的であるパーティクル故障のない高精度な薄膜形成が可能となる。
水素ガス濃度は好ましくは0.2質量%以下、また酸素ガス濃度は好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下である。特に、プラズマ放電開始時は、0質量%であることが最も好ましい。
また水素ガス濃度センサー、酸素ガス濃度センサーは、これらのガス濃度モニターとしても使用可能となるため、隔壁の開放機構のロックと連動させることによって、酸欠、危険なガスの吸引防止にもなり、作業者の安全性を確保することにも役立つ。
また、隔壁内部に圧力計64を設けることも好ましい。プラズマ状態は圧力によって変化することが一般に知られているが、圧力計を設け、モニターされた圧力値を制御装置にリンクさせることによって上記の不活性ガス供給装置、排気装置の流量を適切に制御することが出来る。この機構は、隔壁の隙間からの不活性ガスの異常放出を防ぐ安全装置にもなる。よってこの圧力計は必ずしも放電部近傍に存在しなくてもよく、隔壁内部にあればよい。
更に、隔壁内部に温度計65を設け、モニターされた温度を制御装置とリンクさせることも好ましい。放電空間の異常発熱をモニターすることによって、プラズマ処理温度が適切に設定されているかどうか監視出来るうえ、異常発熱があった場合は、薄膜形成ガス及び不活性ガスの供給及び停止を制御出来る機構を有しているため、引火、爆発などの防止することが出来、安全装置にもなる。この温度計の位置は、放電処理部に近い方が好ましい。
図10は、本発明に有用な2重構造の隔壁を有する別のプラズマ放電処理装置の概念図である。
隔壁については、2重構造を有して排気口を有する補助室が設けられていることが好ましい。この2重構造は、隔壁そのものが2重構造を有していても、隔壁が内側の隔壁と外側の隔壁の2つで構成されていても構わない。
全体の好ましい態様としては、圧力を、隔壁内部(A)、補助室内部(B)及び外部(C)のガスまたは大気の圧力を、A≧C>Bにすることが好ましい。
このような態様を取ることによって、隔壁内部の密閉性を高められる他、放電空間周囲に不活性ガスを存在させつつ、不活性ガスが隔壁外側に漏れないようにすることが出来る。このときの圧力差は、放電空間周囲から補助室内部へのガス流れが出来る程度の大きさでよい。補助室内部へ流入したガスまたは大気は混合され、排気口より外部へ排気される。
次に、本発明の表面処理方法に用いられる薄膜形成ガスについて説明する。
本発明により薄膜を形成するため希ガスに有機金属化合物或いは有機物を含有する混合ガスが好ましく用いられる。反応ガスを変更することで光学干渉層(反射防止層)、導電層、帯電防止層、耐透気性層、防汚層などの様々な機能を有する薄膜(層)を形成することが出来る。
本発明のプラズマ放電処理方法により低反射積層体を作製する(反射率を小さくする)ためには、基材上に形成される薄膜の屈折率や膜厚等を所望の値に調整することが好ましく、その観点から、本発明に係る混合ガスは、希ガスと、有機フッ素化合物、珪素化合物またはチタン化合物、特に有機珪素或いはチタン化合物等の有機金属化合物を含有する有機ガスを少なくとも含有したものが用いられる。ここで、混合ガスは、その他の成分として前記記載以外の化合物を含んでいてもよい。
上記のプラズマ放電処理方法によって得られるの薄膜の膜厚としては、1nm〜1000nmの範囲の薄膜が得られる。
本発明に係る薄膜形成において、反射防止層中の低屈折率層に用いる反応ガスは、主に窒素を含むガスであることが好ましい。すなわち、窒素ガスが50体積%以上で含有することが好ましく、さらに好ましくは70体積%以上で含有することが好ましく、さらに好ましくは90体積%〜99.99体積%であることが望ましい。反応ガスには窒素のほかに希ガスを含有していてもよい。
ここで、希ガスとは、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等であり、本発明では、ヘリウム、アルゴン等が窒素に添加されて用いられてもよい。
上記記載の有機フッ素化合物としては、フッ化炭素ガス、フッ化炭化水素ガス等が好ましく用いられる。例えば、4フッ化メタン(CF4)、6フッ化エタン(C2F6)、4フッ化エチレン(CF2CF2)、6フッ化プロピレン(CF3CFCF2)、8フッ化シクロブタン(C4F8)等のフッ化炭素化合物;2フッ化メタン(CH2F2)、4フッ化エタン(CFH2CF3)、4フッ化プロピレン(CF3CH2CH2F)、3フッ化プロピレン(CH2CHCF3)等のフッ化炭化水素化合物、更に、1塩化3フッ化メタン(CClF3)、1塩化2フッ化メタン(CHClF2)、2塩化4フッ化シクロブタン(C4H2Cl2F4)等のフッ化炭化水素化合物のハロゲン化物やアルコール、酸、ケトン等の有機化合物のフッ素置換体が挙げられる。これらは単独でも混合して用いてもよい。
上記記載のフッ化炭化水素ガスとしては、2フッ化メタン、4フッ化エタン、4フッ化プロピレン、3フッ化プロピレン等が挙げられる。
更に、1塩化3フッ化メタン、1塩化2フッ化メタン、2塩化4フッ化シクロブタン等のフッ化炭化水素化合物のハロゲン化物やアルコール、酸、ケトン等の有機化合物のフッ素置換体を用いることが出来るがこれらに限定されない。また、これらの化合物が分子内にエチレン性不飽和基を有していても良い。
上記の化合物は単独でも混合して用いても良い。
混合ガス中に上記記載の有機フッ素化合物を用いる場合、放電プラズマ処理により基材上に均一な薄膜を形成する観点から、混合ガス中の有機フッ素化合物の含有率は、0.01〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
また、有機フッ素化合物が常温、常圧で気体である場合は、混合ガスの構成成分として、そのまま使用出来るので最も容易に本発明の方法を遂行することが出来る。しかし、有機フッ素化合物が常温・常圧で液体または固体である場合には、加熱、減圧等の方法により気化または昇華させて使用すればよく、また、適切な溶剤に溶解して用いてもよい。
上記記載の珪素化合物としては、例えば、ジメチルシラン、テトラメチルシランなどの有機金属化合物、モノシラン、ジシランなどの金属水素化合物、二塩化シラン、三塩化シランなどの金属ハロゲン化合物、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、テトライソプロポキシシランなどのアルコキシシラン、オルガノシランなどの有機珪素化合物が挙げられ、特に有機珪素化合物を用いることが好ましいがこれらに限定されない。また、これらは適宜組み合わせて用いることが出来る。
混合ガス中に上記記載の珪素化合物を用いる場合、放電プラズマ処理により基材上に均一な薄膜を形成する観点から、混合ガス中の珪素化合物の含有率は、0.1〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
上記記載の有機金属化合物としてチタン化合物を用いる場合は、テトラジメチルアミノチタンなどの有機金属化合物、モノチタン、ジチタンなどの金属水素化合物、二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタンなどの金属ハロゲン化合物、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどの金属アルコキシド等の有機チタン化合物を用いることが好ましいがこれらに限定されない。
混合ガス中に上記記載のチタン化合物を用いる場合、放電プラズマ処理により基材上に均一な薄膜を形成する観点から、混合ガス中のチタン化合物の含有率は、0.1〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
上記記載の珪素化合物、チタン化合物などの有機金属化合物としては、取り扱い上の観点から金属アルコキシド等の有機金属化合物が好ましく、腐食性、有害ガスの発生がなく、工程上の汚れなども少ないことから、好ましく用いられる。
また、反応性ガスが、インジウム、亜鉛、スズからなる群から選択された金属を含む化合物を含有する有機物を用いて、これらの金属からなる導電性層或いは帯電防止層等を形成することも出来る。
また、上記記載の混合ガス中に水素ガスを0.1〜10体積%含有させることにより薄膜の硬度を著しく向上させることが出来る。
更に酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素、過酸化水素及びオゾンからなる群から選ばれた非金属ガスを含有することも出来る。
上記記載の珪素化合物、チタン化合物などの有機金属化合物を放電空間へ導入するには、両者は常温常圧で、気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合は、そのまま放電空間に導入出来るが、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用される。珪素化合物、チタン化合物を加熱により気化して用いる場合、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシチタンなどの、常温で液体の沸点が200℃以下である金属アルコキシドが低反射積層体などの製造方法に好適に用いられる。上記金属アルコキシドは、溶媒によって希釈して使用されても良く、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用出来る。尚、これらの希釈溶媒は、プラズマ放電処理中において、分子状、原子状に分解されるため、基材上への薄膜の形成、薄膜の組成などに対する影響は無視出来る。
本発明に係わるプラズマ放電処理方法においては、ヘリウム、アルゴン、ネオンから選択される希ガスとアルコキシシラン等の有機珪素化合物或いはアルコキシチタン等の有機チタン化合物等、有機金属化合物を含有する混合(反応)ガスを用いる事が好ましく、前記希ガスが90〜99.99%、有機金属化合物を0.01〜10%含有するものが好ましい。これを用いて、薄膜が酸化珪素や酸化チタンを主成分として有する薄膜を形成することが好ましい。ここで、『主成分として有する』とは形成された薄膜中の含有量が50質量%以上の場合を表す。
また、上記反射防止層の上に防汚層を設けてもよい。
本発明の反射防止フィルムにおいては、防汚層は含フッ素化合物または含珪素化合物を含有し、膜厚が1〜10nmで、その変動係数が50%未満、好ましくは30%未満、更に好ましくは20%未満である、または密度が1.7〜2.5であることが特徴であり、また、その形成方法として、前述の低屈折率層の上に、気相法、特に大気圧またはその近傍の圧力下で、窒素またはアルゴンと、還元性ガス、含フッ素化合物または含珪素化合物を含有する放電ガスとを電極間に供給し、フッ素または珪素化合物層を形成する本発明の大気圧プラズマ法が好ましい。
基本的なプラズマ放電処理装置の構成としては、図1と同様の形態を用いることが出来る。
はじめに、本発明に用いられる含珪素化合物、特にアルキル基を有する有機珪素化合物について説明する。
防汚性を発現するためには、特に膜の最表面にアルキル基を存在させることが有効であり、原材料にアルキル基を有したものを使用することによって本目的は達成される。アルキル基としては、フルオロアルキル基または炭素と水素のみで構成されたアルキル基いずれでもよい。また、上記の官能基が付与されていれば、化合物中に珪素原子が複数含まれていてもよい。
また、より好ましくは、加水分解性基とアルキル基を共に有する有機珪素化合物を用いることである。本発明でいう加水分解性基とは、水と水素を添加することによって重合を行うことの出来る官能基のことをいい、本発明においては特に限定されないが、好ましくはアルコキシ基、アセチル基が挙げられる。好ましくはアルコキシ基であり、更にエトキシ基を有することが、反応性や原料の物性において好ましい。しかしながら、このような加水分解性基により重合するのみでは酸化珪素が形成されるのみで、このような膜では防汚性が発現されない。
この有機珪素化合物の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ−グリキドキシブチルトリメトキシシラン、δ−グリキドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシエトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリフェノキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン、トリアシルオキシシラン、トリフェノキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシレン、メチルビニルジエトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン、ジフェノキシシラン、ジアシルオキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ヘキサメチルジシロキサン類等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また、単独で使用しても異なる2種以上を同時に使用することも出来る。
上記化合物の中でも、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等好ましく、更に珪素に対してアルキル基を2つ有する化合物が好ましく、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等が、特に好ましい例として挙げられる。
また珪素を含む含フッ素化合物も好ましい。具体的には下記の化合物が挙げられる。
(CF3C2H4)(CH3)2Si−O−Si(CF3C2H4)(CH3)2
C3F7(OC3F6)24O(CF2)2CH2OCH2Si(OCH3)3
CF3(CF2)3(C6H4)C2H4Si(OCH3)3
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH2SiCH3(OCH3)2
CF3(CF2)3(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2
CF3(CF2)5(C6H4)C2H4Si(OC2H5)3
CF3(CF2)3C2H4Si(NCO)3
CF3(CF2)5C2H4Si(NCO)3
C9F19CONH(CH2)3Si(OC2H5)3
C9F19CONH(CH2)3SiCl3
C9F19CONH(CH2)3Si(OC2H5)3
CF3O(CF(CF3)CF2O)6CF2CONH(CH2)3SiOSi(OC2H5)2(CH2)3NHCOCF2(CF(CF3)CF20)6OCF3
C3F7COOCH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2OCOC3F7
CF3(CF2)7CH2CH2O(CH2)3Si(CH3)2OSi(CH3)2(CH2)3OCH2CH2(CF2)7CF3
CF3(CF2)5CH2CH2O(CH2)2Si(CH3)2OSi(CH3)2(OC2H5)
CF3(CF2)5CH2CH2O(CH2)2Si(CH3)2OSi(CH3)(OC2H5)2
CF3(CF2)5CH2CH2O(CH2)2Si(CH3)2OSi(CH3)2OSi(CH3)2(OC2H5)
(CF3CH2)3Si(CH2−NH2)
(CF3CH2)3Si−N(CH3)2
上記化合物の中でも、
CF3(CF2)5(CH2)2Si(OC2H5)3
CF3(CF2)5(CH2)2Si(OC3H7)3
CF3(CF2)7(CH2)2Si(OC2H5)3
CF3(CF2)7(CH2)2Si(OC3H7)3
等が、特に好ましい例として挙げられる。
本発明においては、防汚層の膜厚が1〜10nmであることが好ましい。1nm未満では膜として形成されない領域が発生するようになることがある。また、10nmを越えるとクラックが入りやすくなったり、表面から膜が剥離してしまうことがある。防汚層の平均膜厚は、プラズマ処理条件を調整することにより制御することが出来る。
本発明においては、防汚層の密度は1.7〜3.0である。1.7未満では傷が入りやすいことがある。また、3.0を越えると微細なひび割れが生じることがある。反応ガス中に酸素、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、二酸化窒素、一酸化窒素、水、過酸化水素、オゾン等を0.1〜10体積%含有させることにより薄膜層の密度、硬度等の物性を制御することが出来る。防汚層の密度はGIXA法(斜入射X線分析法)により測定することが出来る。
次に、本発明に係る基材について説明する。
本発明に係る基材としては、セルローストリアセテート等のセルロースエステル支持体、ポリエステル支持体、ポリカーボネート支持体、ポリスチレン支持体、更にこれら支持体の上層にゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂等を塗設した長尺の支持体等を使用することが好ましい。また、本発明に係る基材は、上記の支持体単独で基材として用いても良く、上記の支持体上に防眩層やクリアハードコート層を塗設したり、バックコート層、帯電防止層を塗設したものを基材として用いることが出来る。
上記の支持体(基材としても用いられる)としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートフタレートフィルム、セルローストリアセテート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体からなるフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルム或いはポリアリレート系フィルム等を挙げることが出来る。
これらの素材は単独で或いは適宜混合されて使用することも出来る。中でもゼオノア(日本ゼオン(株)製)、ARTON(日本合成ゴム(株)製)などの市販品を使用することが出来る。更に、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン及びポリエーテルスルフォンなどの固有複屈折率の大きい素材であっても、溶液流延、溶融押し出し等の条件、更に縦、横方向に延伸条件等を適宜設定することにより、得ることが出来る。また、本発明に係る支持体は、上記の記載に限定されない。膜厚としては10μm〜1000μmのフィルムが好ましく用いられる。
本発明に係る支持体としては、中でもセルロースエステルフィルムを用いることが低反射率の積層体が得られるため、好ましく用いられる。本発明に記載の効果を好ましく得る観点から、セルロースエステルとしてはセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく、中でもセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられる。尚、ブチレートを形成するブチリル基としては、直鎖状でも、分岐していてもよい。
プロピオネート基を置換基として含むセルロースアセテートプロピオネートは耐水性に優れ、液晶画像表示装置用のフィルムとして有用である。
本発明に係る基材としてセルロースエステルを用いる場合、セルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフなどを挙げることが出来る。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来る。これらのセルロースエステルは、セルロース原料をアシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて反応させて得ることが出来る。
アシル化剤が酸クロライド(CH3COCl、C2H5COCl、C3H7COCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。具体的には、特開平10−45804号に記載の方法等を参考にして合成出来る。また、本発明に係るセルロースエステルは各置換度に合わせて上記アシル化剤量を調製混合して反応させたものであり、セルロースエステルはこれらアシル基がセルロース分子の水酸基に反応する。セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットに3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が誘導された数を置換度(モル%)という。例えば、セルローストリアセテートはグルコースユニットの3個の水酸基全てにアセチル基が結合している(実際には2.6〜3.0)。
アシル基の置換度の測定方法はASTM−817−96の規定に準じて測定することが出来る。
セルロースエステルの数平均分子量は、70,000〜250,000が、成型した場合の機械的強度が強く、かつ、適度なドープ粘度となり好ましく、更に好ましくは、80,000〜150,000である。
ここで、上記記載のセルロースエステルの数平均分子量は下記のようにして求められる。
《セルロースエステルの数平均分子量の測定》
高速液体クロマトグラフィにより下記条件で測定する。
溶媒 :アセトン
カラム :MPW×1(東ソー(株)製)
試料濃度 :0.2質量/v%
流量 :1.0ml/分
試料注入量:300μl
標準試料 :ポリメタクリル酸メチル(Mw=188,200)
温度 :23℃
これらセルロースエステルは後述するように一般的に流延法と呼ばれるセルロースエステル溶解液(ドープ)を例えば、無限に移送する無端の金属ベルト或いは回転する金属ドラムの流延用支持体(以降、単に支持体ということもある)上に加圧ダイからドープを流延(キャスティング)し製膜する方法で製造されるが、これらドープの調製に用いられる有機溶媒としては、セルロースエステルを溶解出来、かつ、適度な沸点であることが好ましく、例えばメチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることが出来るが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が好ましい有機溶媒(即ち、良溶媒)として挙げられる。
また、下記の製膜工程に示すように、溶媒蒸発工程において支持体上に形成されたウェブ(ドープ膜)から溶媒を乾燥させる時に、ウェブ中の発泡を防止する観点から、用いられる有機溶媒の沸点としては、30〜80℃が好ましく、例えば、上記記載の良溶媒の沸点は、メチレンクロライド(沸点40.4℃)、酢酸メチル(沸点56.32℃)、アセトン(56.3℃)、酢酸エチル(76.82℃)等である。
上記記載の良溶媒の中でも溶解性に優れるメチレンクロライド、酢酸メチルが好ましく用いられ、特にメチレンクロライドが全有機溶媒に対して50質量%以上含まれていることが好ましい。
上記有機溶媒の他に、0.1〜30質量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。特に好ましくは10〜30質量%で前記アルコールが含まれることが好ましい。これらは上記記載のドープを流延用支持体に流延後、溶媒が蒸発を始めアルコールの比率が多くなるとウェブ(ドープ膜)がゲル化し、ウェブを丈夫にし流延用支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらが割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースエステルの溶解を促進する役割もある。
炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等を挙げることが出来る。
これらのうちドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性も良く、かつ毒性がないこと等からエタノールが好ましい。好ましくはメチレンクロライド70〜90質量%に対してエタノール10〜30質量%を含む溶媒を用いることが好ましい。良溶媒としてメチレンクロライドの代わりに酢酸メチルを用いることも出来る。この場合、−100℃〜−10℃に冷却して溶解する冷却溶解法を用いてセルロースエステル溶液を調製することが出来る。
本発明のプラズマ放電処理方法において基材フィルムにセルロースエステルフィルムを用いる場合、このセルロースエステルフィルムには可塑剤を含有するのが好ましい。
可塑剤としては特に限定はないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、等を好ましく用いることが出来る。リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤として、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤として、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤として、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を好ましく用いることが出来る。
これらの可塑剤を単独或いは併用するのが好ましい。
これらの可塑剤の使用量は、フィルム性能、加工性等の点で、セルロースエステルに対して1〜20質量%であることが好ましい。
本発明で用いられる支持体に係る紫外線吸収剤について説明する。
本発明の光学フィルムとしては、液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。
以下に本発明に係る紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171、Ciba製)
UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(TINUVIN109、Ciba製)
更に、以下にベンゾフェノン系化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
本発明で好ましく用いられる上記記載の紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
本発明に係る基材の光学特性としては、面内リターデーションRoは0〜1000nmのものが好ましく用いられ、厚み方向のリターデーションRtは0〜300nmのものが用途に応じて好ましく用いられる。
本発明に係る基材の厚みは10〜200μmであり、好ましくは10〜100μm、更に好ましくは20〜80μmである。幅は0.6〜4m、好ましくは1.4〜3mの広幅フィルムを用いることが生産上好ましい。
本発明のプラズマ放電処理方法は基材の表面に直接薄膜を形成することも可能であるが、基材上に設けられた塗布層の上に本発明の方法で薄膜を形成することも出来る。塗布層の種類については特に限度はなく、例えば塗布で設けた帯電防止層、導電層、ハードコート層、防眩層、光学干渉層、屈折率層、バックコート層等が挙げられる。なかでも特にエチレン性不飽和モノマーを含む成分を重合させて形成した樹脂層上に薄膜を形成するために好ましく用いることが出来る。
エチレン性不飽和モノマーを含む成分を重合させて形成した樹脂層としては、活性線硬化樹脂或いは熱硬化樹脂を構成成分として含有する層が好ましく用いられるが、特に好ましく用いられるのは活性線硬化樹脂層である。
ここで、活性線硬化樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応などを経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよい。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることが出来る。
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、若しくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば、特開昭59−151110号等を参照)。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば、特開昭59−151112号を参照)。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させたものを挙げることが出来る(例えば、特開平1−105738号)。この光反応開始剤としては、ベンゾイン誘導体、オキシムケトン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体等のうちから、1種若しくは2種以上を選択して使用することが出来る。
また、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
これらの樹脂は通常公知の光増感剤と共に使用される。また上記光反応開始剤も光増感剤としても使用出来る。具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。また、エポキシアクリレート系の光反応剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。塗布乾燥後に揮発する溶媒成分を除いた紫外線硬化性樹脂組成物に含まれる光反応開始剤また光増感剤は該組成物の2.5〜6質量%であることが好ましい。
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和2重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、酢酸ビニル、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることが出来る。また不飽和2重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることが出来る。
例えば、紫外線硬化樹脂としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(以上、旭電化工業株式会社製)、或いはコーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(以上、広栄化学工業株式会社製)、或いはセイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(以上、大日精化工業株式会社製)、或いはKRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(以上、ダイセル・ユーシービー株式会社)、或いはRC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)、或いはオーレックスNo.340クリヤ(中国塗料株式会社製)、或いはサンラッドH−601(三洋化成工業株式会社製)、或いはSP−1509、SP−1507(昭和高分子株式会社製)、或いはRCC−15C(グレース・ジャパン株式会社製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(以上、東亞合成株式会社製)或いはこの他の市販のものから適宜選択して利用出来る。
本発明に用いられる活性線硬化樹脂層は公知の方法で塗設することが出来る。
活性線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化皮膜層を形成するための光源としては、紫外線を発生する光源であればいずれでも使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20〜10000mJ/cm2程度あればよく、好ましくは、50〜2000mJ/cm2である。近紫外線領域〜可視光線領域にかけてはその領域に吸収極大のある増感剤を用いることによって使用出来る。
活性線硬化樹脂層を塗設する際の溶媒として前述のバックコート層や導電性微粒子を含有する樹脂層を塗設する溶媒、例えば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の溶媒の中から適宜選択し、或いはこれらを混合し利用出来る。好ましくは、プロピレングリコールモノ(炭素数1〜4のアルキル基)アルキルエーテルまたはプロピレングリコールモノ(炭素数1〜4のアルキル基)アルキルエーテルエステルを5質量%以上、更に好ましくは5〜80質量%以上含有する溶媒が用いられる。
紫外線硬化性樹脂組成物塗布液の塗布方法としては、グラビアコーター、スピナーコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター、リバースコーター、押し出しコーター、エアードクターコーター等公知の方法を用いることが出来る。塗布量はウエット膜厚で0.1〜30μmが適当で、好ましくは、0.5〜15μmである。塗布速度は例えば10〜100m/分で行われる。
紫外線硬化性樹脂組成物は塗布乾燥された後、紫外線を光源より照射するが、照射時間は0.5秒〜5分がよく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率、作業効率とから3秒〜2分がより好ましい。
こうして得た硬化皮膜層に、ブロッキングを防止するため、また対擦り傷性等を高めるために無機或いは有機の微粒子を加えることが好ましい。例えば、無機微粒子としては酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム等を挙げることが出来、また有機微粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、或いはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等を挙げることが出来、紫外線硬化性樹脂組成物に加えることが出来る。これらの微粒子粉末の平均粒径としては、0.005μm〜1μmが好ましく0.01〜0.1μmであることが特に好ましい。
紫外線硬化樹脂組成物と微粒子粉末との割合は、樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜10質量部となるように配合することが望ましい。
このようにして形成された紫外線硬化樹脂を硬化させた層は中心線平均表面粗さRaが0.001〜0.1μmのクリアハードコート層であっても、Raが0.1〜1μm程度の防眩層であってもよい。本発明のプラズマ放電処理方法を用いて、これらの層の上にプラズマ処理することが出来る。特に本発明のプラズマ放電処理方法によれば、表面の凹凸のある基材上に均一な低屈折率層或いは高屈折率層等の光学干渉層等を設けることが出来る。特に、JIS B 0601で規定される中心線平均表面粗さ(Ra)が0.1〜0.5μmの防眩層上に均一にプラズマ放電処理出来るために好ましい。
本発明においては、上記記載のような基材面に対して本発明に係わる薄膜を設ける場合、平均膜厚に対する膜厚偏差を±10%になるように設けることが好ましく、更に好ましくは±5%以内であり、特に好ましくは±1%以内になるように設けることが好ましい。
本発明の表面処理方法を用いて光学フィルムを作製する場合、プラズマ処理する前にプラズマ処理面に紫外線を照射することが、形成される皮膜の密着性に優れるため好ましい。紫外線照射光量としては50〜2000mJ/cm2であることが好ましい。50mJ/cm2未満では、効果が十分ではなく、2000mJ/cm2を越えると基材の変形等が生じる恐れがあり好ましくない。
本発明の光学フィルムを作製する場合、プラズマ処理を行った後に紫外線照射することも、形成された皮膜を早期に安定化させるために有効である。
このため、紫外線照射光量として50〜2000mJ/cm2をプラズマ処理後にプラズマ処理面に照射することが好ましい。これらの処理はプラズマ処理の後、巻き取り工程までの間に行うことが好ましい。また、プラズマ処理後の基材は50〜130℃に調整された加熱ゾーンにおいて1〜30分処理されることが好ましい。
次に、図9で示される隔壁、不活性ガス供給口、排気口、水素濃度センサー、酸素濃度センサー、圧力計、温度計を有し、本実施形態のプラズマ放電処理装置1を組み合わせて薄膜形成を行う方法について説明しながら、薄膜形成に対して好適な各種条件について説明する。
先ず、薄膜形成の開始に伴って、制御装置50は、各ガス供給部24からガスを噴出させて、放電空間Aにガスを供給させる。この際、ガス供給部24から噴出されたガスは、クリーニングフィルム27により仕切られた空間を介して、一対の小電極21により形成された流路Bを通過し、放電空間Aにまで至る。流路Bを形成する小電極21の表面21bには、常にクリーニングフィルム27が密着しているので、その表面21bが流路B内を通過するガスにより汚染されることを防止している。
そして、放電空間Aにガスが供給されると、制御装置50は、水素、酸素濃度センサーにより放電空間及びその周辺部の水素濃度、酸素濃度をモニターし、不足であれば不活性ガス供給口より窒素、アルゴン等の不活性ガスを供給し、水素ガス濃度、酸素ガス濃度が所定の値(1質量%と5質量%)以下になるまで供給を行う。次いで、駆動源51を制御して、第1ガイドローラ16、第2ガイドローラ18及び第1電極10を回転させて、基材2を第1電極10の周面に密着させて搬送させるとともに、第2フィルム用ガイドローラ32を制御して、クリーニングフィルム27を小電極21に表面に密着させて搬送させる。ここでクリーニングフィルム27の搬送速度が、20mm/min〜200m/minとなるように、第2フィルム用ガイドローラ32の回転速度を制御することが好ましい。ここで、小電極21におけるクリーニングフィルム27の張力は、クリーニングフィルム27の材質や厚みが異なることによりその適正値が変動するが、例えばクリーニングフィルム27の材質をPET、厚みを38μmとした場合には、張力の適正値は245mN/mm〜735mN/mmである。張力が245mN/mm未満であるとクリーニングフィルム27は小電極21から浮いてしまい、735mN/mmより大きければ、装置の大型化を招くとともに局部的な伸びが顕在化しツレが発生してしまう。
基材2が搬送されると、制御装置50は、第1電源14及び第2電源23をONにする。これにより、第1電極10からは、第1電源14からの周波数ω1、電界強度V1、電流I1の第1高周波電界が印加される。一方、小電極21からは第2電源23からの周波数ω2、電界強度V2、電流I2の第2高周波電界が印加される。ここで、周波数ω1より周波数ω2の方が高く設定されている。
具体的には、周波数ω1は、200kHz以下であることが好ましく、下限は1kHzである。この電界波形としては、連続波でもパルス波でもよい。一方、周波数ω2は、800kHz以上であることが好ましく、高ければ高いほどプラズマ密度が高くなるものの、上限は200MHz程度である。
また、電極間に放電ガスを供給し、この電極間の電界強度を増大させていき、放電が始まる電界強度を放電開始電界強度IVと定義すると、電界強度V1、V2及び放電開始電界強度IVの関係は、V1≧IV>V2またはV1>IV≧V2を満たすように設定されている。例えば、放電ガスを窒素とした場合には、その放電開始電界強度IVは3.7kV/mm程度であるので、上記の関係により電界強度V1を、V1≧3.7kV/mm、電界強度V2を、V2<3.7kV/mmとして印加すると、窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることが出来る。
そして、電流I1、I2の関係はI1<I2となることが好ましい。第1高周波電界の電流I1は、好ましくは0.3mA/cm2〜20mA/cm2、更に好ましくは1.0mA/cm2〜20mA/cm2である。また、第2高周波電界の電流I2は、好ましくは10mA/cm2〜100mA/cm2、更に好ましくは20mA/cm2〜100mA/cm2である。
このように、第1電極10による第1高周波電界及び小電極21による第2高周波電界が発生されると、放電空間Aには、第1高周波電解と第2高周波電界とが重畳された高周波電界が発生して、ガスと反応し放電プラズマが発生する。放電プラズマが発生するプラズマ空間Hは、図3及び図4に示すように、第1電極10の放電面10a及び小電極21の放電面21aからはみ出してしまうものの、基材2及びクリーニングフィルム27は、第1電極10及び小電極21の放電面10a、21aに密着する前に、第1電極10及び小電極21の放電面10a、21aに連続する放電面10a、21a以外の表面に密着されるために、前記放電面10a、21a以外の表面によって支えられた状態でプラズマ空間Hに進入する。これにより、基材2及びクリーニングフィルム27が熱影響を受けたと
しても均されるため、皺やツレが発生することを防止出来る。
更に、第1電極10及び小電極21は、それぞれ温度調節装置4、6によってその表面温度が制御されているために、基材2及びクリーニングフィルム27がプラズマ空間Hに進入する以前に、放電面10a、21a以外の表面によって予め加熱されることとなる。このため、プラズマ空間Hに基材2及びクリーニングフィルム27が進入したとしても急激かつ過剰に熱影響を受けることを防止出来、放電プラズマの熱による収縮を抑えることが出来る。従って、基材2及びクリーニングフィルム27に皺やツレが発生することを、更に防止することが出来る。特に、小電極21においては、クリーニングフィルム27がプラズマ空間Hに進入する以前に接触する、放電面21a以外の表面が所定の面積を確保しているので、放電面21aに至るまでに、連続的にクリーニングフィルム27
を加熱することが出来、小電極21においても急減に加熱されることはなく、皺やツレの発生を更に抑制することが出来る。尚、連続的に加熱しなくても段階的に加熱してもよい。
そして、基材2がプラズマ空間H内を通過することで、基材2上には薄膜が形成される。
薄膜形成中は、上記水素、酸素濃度センサーにより放電空間及びその周辺部の水素、酸素ガス濃度を検知し、外部からの大気の巻き込みや、未反応のガス濃度変動があった場合は、速やかに不活性ガス供給口より不活性ガスを補填する。更に、隔壁に設けられた排気口より未反応のガス(水素、アルゴン、酸素、原料ガス等)を排気し、放電空間には常に新鮮な反応ガスが供給されるように制御を行う。特にニップロール近傍に設けられた不活性ガス供給口は、エアーカーテンとして外気の進入を防止するのに有効である。
プラズマ放電処理中の基材2の温度によっては、得られる薄膜の物性や組成が変化する場合もあるので、薄膜形成中においても、温度調節装置4によって温度制御された媒体を第1電極10内に循環させて、第1電極10の表面温度を制御し、基材2の温度を適宜調節することが好ましい。ここで、温度調節装置4は、基材2が所定の性能を発揮出来る温度となるように、温度調節用の媒体を20℃〜300℃、好ましくは80℃〜100℃に温度調節している。一方、温度調節装置6においても、温度調節用の媒体を20℃〜300℃、好ましくは80℃〜100℃に温度調節する。ただし、下限温度としては、使用するガスの気化条件温度を下回らないように前記媒体を温度調節しなければならない。
更に、隔壁内部の温度計により、放電部の異常発熱がないことをモニターしておく。
そして、薄膜が形成された基材2は、ガイドローラ18を介して次行程まで搬送される。薄膜形成の終了は、上記手順を逆に行えばよい。
プラズマ放電処理装置のメンテナンスを行う場合は、上記水素、酸素濃度センサーにより、ガス濃度が所定の値(例えば、酸素ガス濃度が19質量%程度)になることを確認後、装置を開放すればよく、安全上にも優れている。
本発明のプラズマ放電処理方法を用いて、支持体上に直接または他の層を介して、前述のような光学干渉層(低、中、光屈折率層)、防汚層、導電性層、帯電防止層、耐透気性層等のような様々な機能を有する均一な薄膜を形成することが出来、これらの層を有する各種の光学フィルム、即ち、反射防止フィルム、低反射防眩フィルム、帯電防止フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、光拡散フィルム等を提供することが出来る。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
実施例1
《防汚性積層体の作製》
[試料1の作製]
〔バックコート層、帯電防止層及びハードコート層の塗設〕
膜厚80μm、巻き長1,000mのセルロースエステルフィルムである8UY(コニカタックKC8UY コニカ(株)製)の幅両端部にそれぞれに加熱したエンボスロールを押し当てながら搬送し、高さ10μm幅1cmのナーリング部を設けた。下記の方法に準じて、セルロースエステルフィルムの一方の面にバックコート層1を、もう一方の面に帯電防止層1を設け、更に帯電防止層1の上にハードコート層1を巻き取ることなく連続的に設けた。
(バックコート層1の塗設)
下記の組成からなるバックコート層1塗布液を、セルロースエステルフィルムのA面にウエット膜厚13μmとなるようにダイコータを用いて塗布し、乾燥温度90℃にて乾燥させバックコート層1を塗設した。
ジアセチルセルロース(置換度2.4) 0.5質量部
アセトン 70質量部
メタノール 20質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 10質量部
超微粒子シリカ アエロジル200(日本アエロジル(株)製)
0.002質量部
(帯電防止層1の塗設)
下記の組成からなる帯電防止層1塗布液を、セルロースエステルフィルムの上記バックコート層1を塗設したのとは反対側の面に、ウエット膜厚12μmとなるようにダイコータを用いて塗布した後、80℃で5分間乾燥して帯電防止層1を設けた。帯電防止層1の表面比抵抗は1×108Ω/cm2(23℃、55%RH)であった。
ジアセチルセルロース(置換度2.4) 0.5質量部
熱可塑性アクリル樹脂(ダイヤナールBR−108(三菱レイヨン(株)製))
0.5質量部
アセトン 30質量部
メタノール 30質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 40質量部
導電性ポリマー樹脂(特開平9−203810号公報に記載のIP−16)
0.5質量部
(ハードコート層1の塗設)
上記帯電防止層1の上に、紫外線硬化樹脂を含むハードコート層1塗布液をダイコータで塗布して80℃で5分間乾燥した後、160mJ/cm2の紫外線を照射し、乾燥膜厚7μmのハードコート層1を設けた。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 100質量部
光反応開始剤 4質量部
(イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製))
酢酸エチル 75質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 75質量部
シリコン化合物 0.5質量部
(BYK−307(ビックケミージャパン社製))
ハードコート層1表面の鉛筆硬度を測定したところ、3Hの硬度を示し、耐擦傷性効果を示した。
〔反射防止層1の形成〕
下記のプラズマ放電処理により、上記ハードコート層1上に下記の特性からなる高屈折率層1、低屈折率層1、高屈折率層2、低屈折率層2の順に設けて反射防止層1を有する巻き長1,000mの光学フィルムを作製した。
高屈折率層1:チタン酸化物層 膜厚23nm 屈折率2.00
低屈折率層1:珪素酸化物層 膜厚29nm 屈折率1.46
高屈折率層2:チタン酸化物層 膜厚77nm 屈折率2.00
低屈折率層2:珪素酸化物層 膜厚85nm 屈折率1.46
(プラズマ放電処理)
〈大気圧プラズマ放電処理装置〉
表1に示した図7、8、9、10の隔壁構造(隔壁、不活性ガス供給口、排気口、水素、酸素ガス濃度センサー、圧力計、温度計、ニップロールを設置)中に、図1で示した大気圧プラズマ放電処理装置をセットし、薄膜形成を行った。尚、比較例として、隔壁構造なしのプラズマ放電処理装置による処理も行った。
また、各層毎に、各1台のプラズマ放電処理装置を使用し、これらを連結して1パスで各層を連続して形成させた。
第1電極となるロール電極10(図2)は、冷媒を循環させることによる電極表面温度の制御手段を有するチタン合金T64製ジャケットロール金属質母材に対して、アルミナ溶射膜を被覆し、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行った。このようにして被覆した誘電体表面を研磨し、平滑にして、Rmax1μmとなるように加工した。最終的な誘電体の膜厚は1mm、誘電体の比誘電率は10であった。更に導電性の金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差は1.7×10-4で、耐熱温度は260℃であった。ロール電極には電極表面温度を制御するための温度制御された冷媒を循環出来るようにし、80℃の温水を供給し、電極温度を制御した。
一方、第2電極の角筒型電極212(図5)は、中空の角筒型のチタン合金T64に対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆し、対向する角筒型固定電極群とした。この角筒型電極の誘電体については上記ロール電極のものと同じである。角筒型電極内部にはそれぞれ電極表面温度を制御するための温度制御された冷媒を循環出来るようにし90℃の温水を供給し、電極温度を制御した。
このロール電極のまわりに角筒型電極を配置した。角筒型固定電極群の放電総面積は、130cm(幅手方向の長さ)×4cm(搬送方向の長さ)×6本(電極の数)であった。
ロール電極のまわりに配置した複数の角筒型固定電極の間隙より、反応ガスの導入を行った。1つの間隙に対して下記の流量で窒素を主成分とする反応ガスを導入した。
プラズマ放電処理装置には、固定電極(角筒型電極)側に、連続周波数13.56MHz、電界強度0.8kV/mm(1/2Vp-p)の高周波電圧(パール工業社製高周波電源 CF−5000−13M)を供給し、ロール電極側には、連続周波数100kHz、電界強度10kV/mm(1/2Vp-p)の高周波電圧(ハイデン研究所製高周波電源 PHK−6k 連続モード)を供給した。また、ロール電極は、ドライブを用いてセルロースエステルフィルムの搬送に同期して回転させた。
ここでいう高周波の電界強度(印加電界強度 1/2Vp-p)とは、下記の方法に従って求めることが出来る。即ち、高周波電界強度(単位:kV/m)は、各電極部の高周波プローブ(P6015A)を設置し、この高周波プローブをオシロスコープ(例えば、Tektronix社製 TDS3012B)に接続して測定した。
尚、固定電極とロール電極の間隙は0.5mm、反応ガスの圧力は大気圧下で行った。プラズマ放電処理に用いた反応ガスの組成を以下に記す。尚、反応ガス中の液体成分は気化器(リンテック社製気化器VU−410)によって蒸気とし、ガス供給系の配管は原料ガスが凝結するのを防止するため保温しながらロール電極のまわりに配置された隣接する角筒型電極の間隙(1mm)より放電部に供給し、1箇所の間隙あたり下記に示したガスの割合で放電部に供給した。
〈放電条件〉
ロール電極側:100kHz 10W/cm2
固定電極(角筒型電極)側:13.56MHz 5W/cm2
〈放電雰囲気〉
水素、酸素ガス濃度センサーにより、隔壁内部の各々のガス濃度を測定し、各々のガス濃度が表1に記載のガス濃度になるように、不活性ガス(窒素ガス)を不活性ガス供給口より供給した後、放電を開始した。
更に薄膜形成中も上記センサーでガス濃度をモニターし、濃度が一定になるように不活性ガスの供給を継続した。
同時に圧力計により隔壁内部の圧力をモニターし、圧力が一定になるように、不活性ガスの供給と隔壁内部のガス排気を排気口から行った。
温度計により、放電部の温度をモニターし、異常発熱が発生しないことを確認しながら放電を行った。
〈低屈折層形成用の反応ガス組成〉
窒素:300L/min
酸素:15L/min
テトラエトキシシラン(蒸気):0.3g/min(リンテック社製気化器VU−410にて気化させた)
ガス温度:90〜100℃
〈高屈折率層形成用の反応ガス組成〉
窒素:300L/min
水素:2L/min
テトライソプロポキシチタン(蒸気):0.2g/min(リンテック社製気化器VU−410にて気化させた)
ガス温度:90〜100℃
〔防汚層1の形成〕
更に、上記プラズマ放電処理装置を用い、上記反射防止層1を形成した基材に、連続して下記条件のプラズマ放電処理を施し、膜厚10nmの防汚層1を形成して、試料1を作製した。放電雰囲気は上記と同様に行った。
〈放電条件〉
高周波電源:13.56MHz
放電密度(W/cm2):2.9
〈防汚層形成用の反応ガス組成〉
アルゴン:300L/min
水素:3L/min
原料:ジメチルジエトキシシラン(蒸気)
供給量(mg/min):1.5
以上により、表1記載の防汚性反射防止フィルム試料No.1〜17を得た。また、プラズマ放電処理後に電極をチエックしたところ、クリーニングフィルムユニットを用いていたため、電極の汚れは無かった。
《防汚性、異物数、ヘイズ、動摩擦係数の評価》
上記得られた試料No.1〜17について、プラズマ放電処理先頭部と最後尾の試料を採取し、下記の評価を行った。
〈防汚性の評価〉
試料表面に黒の油性マジック(ZEBRA社製 マッキー極細)で文字を書いた後、ベンコット(旭化成(株)製BEMCOT M−3)を用いてきれいになるまで拭き取りった。これを同一箇所で複数回繰り返し、下記の基準に則り繰り返しの防汚性の評価を行った。
◎:50回以上繰り返し軽く拭き取り、かつその後にマジックで文字を書こうとすると表面がインクを弾く
○:20回までは繰り返し軽く拭き取り、かつその後にマジックで文字を書こうとすると表面にインクが滲む
△:5回まで繰り返し軽く拭き取り、かつその後にマジックで文字を書こうとすると表面にインクが滲む
〈異物数の評価〉
偏光顕微鏡を用いて、フィルムサイズ10mm×10mmの範囲をクロスニコル下にて倍率100倍で観察し、5μm以上の異物の個数を数えた。
〈ヘイズの評価〉
JIS K7105に準拠し、ヘイズメーターMODEL 1001DP(日本電色工業社製)を用いて、異なる10箇所を測定した平均値を値とした。
〈動摩擦係数の評価〉
フィルム表面と裏面間の動摩擦係数(μ)について、JIS−K−7125(1987)に準じ、フィルムの表裏面が接触するように切り出し、200gの重りを載せ、サンプル移動速度100mm/分、接触面積80mm×200mmの条件で重りを水平に引っ張り、重りが移動中の平均加重(F)を測定し、下記式より求めた。
動摩擦係数=F(gf)/重りの重さ(gf)
各測定の結果を表1に示した。
上表から、比較例である、隔壁構造を有せずにプラズマ放電処理を行った試料No.1、2、及び水素、酸素ガス濃度が高い試料No.3、6、8、11、12、15は、諸特性が劣り、かつ先頭〜後尾で更に特性が劣化していた。
それに対し、本発明の試料No.4、5、7、9、10、13、14、16、17は、防汚性、異物数、ヘイズ、動摩擦係数とも優れており、かつ先頭〜後尾の特性差が小さいことから、薄膜形成が安定に行われていたことが分かった。更に、隔壁構造が図7、8よりも図9、10の構造の方が各特性が優れていることが分かった。
実施例2
実施例1で作製した防汚性反射防止フィルム試料No.1〜17を用いて、偏光板及び画像表示装置を作製した。
a)偏光膜の作製
厚さ120μmの長尺のポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gの比率からなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gの比率からなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し長尺の偏光膜を得た。
b)偏光板の作製
次いで、下記工程1〜5に従って、偏光膜と偏光板用保護フィルムとを貼り合わせて偏光板を作製した。
工程1:長尺のセルロースエステルフィルムと各防汚性反射防止フィルム(試料No.1〜17)とを2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液に60℃で90秒間浸漬し、次いで水洗、乾燥させた。防汚性反射防止フィルムの反射防止層を設けた面には予め剥離性の保護フィルム(ポリエチレン製)を張り付けて保護した。
同様に長尺のセルロースエステルフィルムを2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液に60℃で90秒間浸漬し、次いで水洗、乾燥させた。
工程2:前述の長尺の偏光膜を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒間浸漬した。
工程3:工程2で偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、それを工程1でアルカリ処理したセルロースエステルフィルムと防汚性積層体で挟み込んで、積層配置した。
工程4:2つの回転するローラにて20〜30N/cm2の圧力で約2m/minの速度で貼り合わせた。このとき気泡が入らないように注意して実施した。
工程5:80℃の乾燥機中にて工程4で作製した試料を2分間乾燥処理して、偏光板No.1〜17を作製した。
次いで、市販の液晶表示パネル(NEC製 カラー液晶ディスプレイ MultiSync LCD1525J:型名 LA−1529HM)の最表面の偏光板を注意深く剥離し、ここに偏光方向を合わせた偏光板No.1〜17を張り付けた。
上記のようにして得られた液晶パネルを床から80cmの高さの机上に配置し、床から3mの高さの天井部に昼色光直管蛍光灯(FLR40S・D/M−X 松下電器産業(株)製)40W×2本を1セットとして1.5m間隔で10セット配置した。このとき評価者が液晶パネル表示面正面にいる時に、評価者の頭上より後方に向けて天井部に前記蛍光灯がくるように配置した。液晶パネルは机に対する垂直方向から25°傾けて蛍光灯が写り込むようにして画面の見易さ(視認性)と、液晶パネル表面を指で触れた後、拭き取りを繰り返しての汚れ除去容易性について評価を行った結果、本発明の防汚性反射防止フィルムを用いた画像表示装置は、比較例に対し、視認性に優れ、表面に汚れ(指の皮脂等)が付着しても容易に拭き取ることが出来ることを確認することが出来た。