JP4342027B2 - Timp修飾体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、メタロプロテイナーゼの組織性阻害剤(tissue inhibitor of metalloproteinases)(以下、「TIMP」と言う)の新規修飾体に関する。
【0002】
【従来の技術】
転移は、悪性の癌の特徴であり、患者の生命を最も脅かす病態であり、この転移を抑えることが癌治療の重要な目的の一つである。しかしながら、この転移を完全に抑える治療法はなく、外科手術、放射線治療や化学療法を行いつつ、いわゆる対処療法的に治療を施しているのが現状である。しかしながら、近年、転移のメカニズムが徐々に明らかになりつつあり、癌の転移能力の反映として、細胞外マトリックス(extracellular matrix)(以下、「ECM」と言う)の分解系が注目されている。
【0003】
より詳細には、癌細胞は原発部位で増殖を開始し、その一部の細胞は周りの細胞との接着を断ち、腫瘍組織より逸脱できるようになる。しかしながら、腫瘍組織は密なECMに囲まれており、物理的な運動による破壊だけでなく、それらを酵素分解しなければそこから離脱することはできない。転移性癌細胞は、この障壁となっているECMを分解する酵素を産生しながら組織の中を移動しはじめる。さらに遠隔移動するため、癌細胞は強固なECMで構成される血管壁を破り、血流に入る。その後、転移先の血管壁内膜に接着し、そして血管外へ脱出するために、再び血管壁ECMを酵素分解し、さらに周辺ECMを分解しながら組織中に浸潤する(細胞工学 Vol.17 No.4 1998,p.523−533)。
【0004】
このような一連の過程のなかで、ECMの分解は、癌細胞の転移を研究、診断等する上で、最も重要であると考えられている。マトリックスメタロプロテイナーゼ(以下、「MMP」と言う)(Docherty,A.J.P.,O’Connell,J.,Crabbe,T.,Angal,S.および Murphy,G.(1992)Trends Biotechnol.10,200−207)は、ECMの成分を分解する、一群の亜鉛依存性エンドペプチダーゼである。MMPは、形態形成、血管形成、組織修復および腫瘍浸潤などの生理学的および病理学的条件下の組織再構築において本質的な役割を果たしている(Docherty,A.J.P.ら,(1992)Trends Biotechnol.10,200−207 同上; Matrisian,L.M.(1992)Bioessays 14,455−463; Stetler−Stevenson,W.G.,Aznavoorian,S.,および Liotta,L.A.(1993)Annu.Rev.Cell Biol.9,541−573)。大部分のMMPはチモーゲンとして分泌され、そしてセリンプロテアーゼまたは若干の活性MMPによって活性化される。
【0005】
MMPは現在までに、約20種類発見されており、それぞれ特徴的な基質特異性を保持しており、各種コラーゲン、糖タンパク質、プロテオグリカンなどを分解する。MMPはその基質特異性、存在形態により大別されている。例えば、MMP−2および−9は、ゼラチンを基質とするため、ゼラチナーゼ群として、各々ゼラチナーゼA、ゼラチナーゼBとも呼ばれている。また、MMP−14ないし−17は、膜結合型であり、MT−MMP(membrane type−MMP)群と呼ばれる。MMP−14ないし−17は、各々MT1−MMP、MT2−MMP、MT3−MMPおよびMT4−MMPとも呼ばれる。以上の他、コラゲナーゼ群(MMP−1、MMP−8、MMP−13およびMMP−18)、ストロムライシン群(MMP−3およびMMP−10)なども存在する。
【0006】
活性化されたMMPの活性は、メタロプロテイナーゼの組織性阻害剤(以下、「TIMP」という)として知られる一群の内因性特異的阻害剤によって調節される。TIMPはこれまでに4種類同定されており、MT−MMP以外のMMPはそれら4種類のTIMPにより効率よく阻害される。MT−MMPについては選択性があり、TIMP−2とTIMP−3には効率よく阻害される一方、TIMP−1によってはほとんど阻害されない。TIMPは基本的にN末端領域とC末端領域の構造を有する。MMPの阻害活性はTIMPのN末端領域にあり、C末端領域を有しないような組換えTIMPでもMMPを阻害できる。
TIMPのMMP阻害活性機構についての知見
TIMPによるMMPの阻害活性の機構については、これまでの研究により仮説が考えられている。例えば、TIMP−2およびTIMP−1については以下に記載するようにいくらか知見が得られている。
【0007】
MMP系列の中で、ゼラチナーゼA(MMP−2)およびゼラチナーゼB(MMP−9)は、基底膜の主成分であるIV型コラーゲンに対するそれらの強い活性のために、基底膜を越えた腫瘍細胞の浸潤において特に重要である(Liotta,L.A.(1986)Cancer Res.46,1−7; Collier,I.E.,Wilhelm,S.M.,Eisen,A.Z.,Marmer,B.L.,Grant G.A.,Seltzer,J.L.,Kronberger,A.,He,C.,Bauer,E.A.,および Goldberg,G.I.(1988)J.Biol.Chem.263,6579−6587; Wilhelm,S.M.,Collier,I.E.,Marmer,B.L.,Eisen,A.Z.,Grant G.A.,および Goldberg,G.I.(1989)J.Biol.Chem.264,17213−17221)。MMPの他のチモーゲンとは異なり、プロゼラチナーゼAは、セリンプロテアーゼまたは可溶性MMPによって活性化されることはないが、癌細胞および線維芽細胞の表面上でMMP様活性によって活性化されると報告された(Overall,C.M.,および Sodek,J.(1990)J.Biol.Chem.265,21141−21151; Brown,P.D.,Levy,A.T.,Margulies,I.M.,Liotta,L.A.,および Stetler−Stevenson,W.G.(1990)Cancer Res.50,6184−6191; Ward,R.V.,Atkinson,S.J.,Slocombe,P.M.,Docherty,A.J.,Reynolds,J.J.,および Murphy,G.(1991)Biochim.Biophys.Acta.1079,242−246;Azzam,H.S. および Thompson,E.W.(1992)Cancer Res.52,4540−4544)。
【0008】
Sato ら(Sato,H.,Takino,T.,Okada,Y.,Cao,J.,Shinagawa,A.,Yamamoto,E.,および Seiki,M.(1994)Nature 370,61−65)は、細胞表面上のプロゼラチナーゼAの活性化因子としてMT−MMPと称される新規の膜型MMPを確認した。プロゼラチナーゼAの細胞媒介活性化には、2段階の過程が含まれ、最初に、プロゼラチナーゼAのAsn−37とLeu−38との間のペプチド結合におけるMT−MMPで触媒された切断が、チモーゲンを中間型に変換し、そして次に、Asn−80−Tyr−81結合の自己触媒的切断が、その中間型を成熟型に変換する(Strongin,A.Y.,Marmer,B.L.,Grant,G.A.,および Goldberg,G.I.(1993)J.Biol.Chem.268,14033−14039)。いくつかの研究は、双方の段階が細胞表面上への(プロ)ゼラチナーゼAの結合によって大きく促進されるので、細胞表面上の(プロ)ゼラチナーゼAの受容体がその活性化に重要であるということを示唆している。ゼラチナーゼAのカルボキシ末端のヘモペキシン様ドメインは、細胞表面との相互作用に不可欠であると報告されている(Strongin,A.Y.,Marmer,B.L.,Grant,G.A.,および Goldberg,G.I.(1993)J.Biol.Chem.268,14033−14039; Strongin,A.Y.,Collier,I.,Bannikov,G.,Marmer,B.L.,Grant,G.A.,および Goldberg,G.I.(1995)J.Biol.Chem.270,5331−5338)。
【0009】
また、最近の研究(Brooks,P.C.,Silletti,S.,von Schalscha,T.L.,Friedlander,M.,および Cheresh,D.A.(1996)Cell 92,391−400; Kinoshita,T.,Sato,H.,Takino,T.,Itoh,M.,Akizawa,T.,および Seiki,M.(1996)Cancer Res.56,2535−2538; Pei,D.Q.,および Weiss,S.J.(1996)J.Biol.Chem.271,9135−9140; Will,H.,Atkinson,S.J.,Butler,G.S.,Smith,B.,および Murphy,G.(1996)J.Biol.Chem.271,17119−17213; Lichte,A.,Kolkenbrock,H.,および Tschesche,H.(1996)FEBS Lett.397,277−282)は、MT−MMPの膜貫通領域を欠いた変異体が、プロゼラチナーゼAをその中間型へと変換するが、成熟型へはほとんど変換しないことを示唆している。部位特異的変異導入技術によって活性部位残基を置換した変異プロゼラチナーゼAの細胞性プロセッシングは、その変異体の成熟型を産生しないということも報告されている(Atkinson,S.J.,Crabbe,T.,Cowell,S.,Ward,R.V.,Butler,M.J.,Sato,H.,Seiki,M.,Reynolds,J.J.,および Murphy,G.(1995)J.Biol.Chem.270,30479−30485; Sato,H.,Takino,T.,Kinoshita,T.,Imai,K.,Okada,Y.,Stetler−Stevenson,W.G.,および Seiki,M.(1996)FEBS Lett.385,238−240)。
【0010】
これらの研究は、中間型ゼラチナーゼAの成熟型への変換のために細胞に結合したゼラチナーゼAの活性が重要であることを示唆している。
一方、TIMPとMMPとの複合体の結晶構造についても研究がなされている。
【0011】
TIMP−1とストロムライシンとの間に形成された複合体の結晶構造は、TIMP−1のNH2末端のCys−1の遊離α−アミノ基およびカルボニル酸素がストロムライシンの触媒亜鉛原子を配位しており、したがって、阻害作用に関与していることを示唆する(Gomis−Ruth,F.X.,Maskos,K.,Betz,M.,Bergner,A.,Huber,R.,Suzuki,K.,Yoshida,N.,Nagase,H.,Brew,K.,Bourenkov,G.P.,Bartunik,H.,および Bode,W.(1997)Nature 389,77−81)。ごく最近、TIMP−2とMT1−MMPの触媒ドメインとの間に形成された複合体の結晶構造も確認された(Fernandez−Catalan,C.,Bode,W.,Huber,R.,Turk,D.,Calvete,J.J.,Lichte,A.,Tschesche,H.,および Maskos,K.(1998)EMBO J.17,5238−5248)。しかしながら、一方、2種類のMMP−TIMP複合体の結晶構造は、TIMPが、対応するMMPと広範囲に接触していることも示すというデータもある。
【0012】
また、従来、ジエチルピロカーボネートを用いるTIMP−1の化学修飾は、阻害活性を消滅させると報告されてきた。修飾される残基は、TIMP−1のHis−95、His−144およびHis−164であり、His−95の修飾は、活性の低下に関与していると考えられる(Williamson,R.A.,Smith,B.J.,Angal,S.,および Freedman,R.B.(1993)Biochim.Biophys.Acta.1203,147−154)。しかしながら、部位特異的変異導入による研究は、His−95のグルタミンへの置換が、TIMP−1の阻害活性に影響を与えないことを示した(Williamson,R.A.,Smith,B.J.,Angal,S.,および Freedman,R.B.(1993)Biochim.Biophys.Acta.1203,147−154)。さらに、H95Q変異体は、ジエチルピロカーボネート処理に対してなお感受性である。これまでのところ、TIMP−1活性に対するジエチルピロカーボネートの作用については説明されていない。
【0013】
このように、TIMPのMMPの阻害活性機構について、TIMPがMMPと複合体を形成することが知られており、そして、当該複合体の形成にはTIMPのN末端領域が関与していると推定されていた。しかしながら、その詳細は不明であり、またこのような機構の解明から癌の転移を有効に抑制する方法も得られていなかった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、新規なTIMP修飾体を提供することを目的とする。本発明のTIMP修飾体は、TIMPのNH2末端α-アミノ基を電子吸引基で修飾し、メタロプロテイナーゼとの結合性を実質的に消失していることを特徴とする。
【0015】
本発明のTIMP修飾体は、好ましくは、TIMP−2修飾体である。
本発明において、好ましくは、前記電子吸引基はカルバミル基である。
本発明は、また、前記TIMP修飾体を加えることにより、in vitroでTIMPを含む複合体の形成を阻害する方法を提供する。
【0016】
本発明の阻害方法において、好ましくは、前記TIMP修飾体はTIMP2修飾体であり、前記複合体はMT−MMP、TIMP−2およびゼラチナーゼAを含む複合体である。
【0017】
本発明は、さらに、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のTIMP修飾体を含む、薬学的に受容可能な担体と共に含む医薬用組成物を提供することを目的とする。
【0018】
本発明の医薬用組成物は、好ましくは、癌の転移抑制または血管新生抑制のために用いられる。
【0019】
【発明を解決するための手段】
本発明者らは、TIMPのMMPの阻害活性機構を解明し、癌の浸潤・転移および血管内皮細胞の浸潤によって引き起こされる血管新生等の諸現象を有効に抑制するために鋭意研究につとめた結果、本発明を想到した。以下、より詳細に説明する。
【0020】
本発明者らは、TIMPのうち、TIMP−2につき以下のような仮説に基づき研究を行った。TIMP−2のNH2末端の反応性部位は、MT−MMPの活性部位に結合してプロテアーゼ−阻害剤複合体を形成し、一方、TIMP−2のCOOH末端部分は、ゼラチナーゼAのヘモペキシン様ドメインに対して親和性を有する。したがって、MT−MMPとTIMP−2との間に形成された複合体は、プロゼラチナーゼAの受容体として作用するという仮説が立てられる。この仮説は、MT−MMPの過発現が細胞表面上でのゼラチナーゼAの蓄積を引き起こすという知見によって支持されると考えられる(Sato,H.,Takino,T.,Okada,Y.,Cao,J.,Shinagawa,A.,Yamamoto,E.,および Seiki,M.(1994)Nature 370,61−65)。
【0021】
TIMP−2は、プロゼラチナーゼAの細胞媒介活性化における二機能調節因子である。Stronginら(Strongin,A.Y.,Collier,I.,Bannikov,G.,Marmer,B.L.,Grant,G.A.,および Goldberg,G.I.(1995)J.Biol.Chem.270,5331−5338)は、少量のTIMP−2が、MT−MMP含有細胞膜によるプロゼラチナーゼAの活性を促進するが、過剰のTIMP−2はMT−MMP活性を強く阻害することを示した。これは、TIMP−2のMT−MMPに対する結合がプロゼラチナーゼAに受容体を与える反面、MT−MMPの触媒活性は阻害するためであると説明されうる。
【0022】
本発明者は、ヒト癌細胞系におけるゼラチナーゼA、TIMP−2および3種類のMT−MMPの発現レベルを検討し、そしてプロゼラチナーゼAの活性化が、培地中に分泌されたTIMP−2のレベルとのみ強い逆の相関関係を有することを発見した。これにより、TIMP−2はプロゼラチナーゼAの活性化の重要な調節因子であることが示唆された(Shofuda,K.,Moriyama,K.,Nishihashi,A.,Higashi,S.,Mizushima,H.,Yasumitsu,H.,Miki,K.,Sato,H.,Seiki,M.,および Miyazaki,K.(1998)J.Biochem.(東京)124,462−470)
また、前述したTIMPとMMPとの複合体の結晶構造のデータによれば、
TIMP−1もTIMP−2もNH2末端のCys−1のα−アミノ基およびカルボニル酸素が、プロテアーゼの触媒亜鉛と相互作用していると推定され、よって、TIMPのNH2末端のCys−1による触媒亜鉛原子のキレート化は、MMP活性の阻害に共通の機序であると考えられる。
【0023】
上述のような仮説に基づき、本発明者はTIMP−2において、MMPとの結合に関与していると予測されるNH2末端部位を修飾したTIMP−2修飾体を製造した。そして、プロゼラチナーゼAの細胞媒介活性化に対するTIMP−2修飾体の作用について検討した。その結果、シアネートイオンでTIMP−2を処理したところ、マトリライシンまたはゼラチナーゼAに対する阻害活性の低下をもたらすことを見出した。TIMP−2修飾体の構造的および機能的分析により、阻害活性の低下はTIMP−2のNH2末端Cys−1のα−アミノ基のカルバミル化によることが示された(実施例)。
【0024】
従って、本発明はTIMPのMMPとの結合に関与するNH2末端を修飾し、MMPとの結合性を実質的に消失しているTIMP修飾体を提供する。
既に記載したように、TIMPは既に4つの型が発見されており、TIMP−1ないしTIMP−4と命名されている。それらのアミノ酸配列を各々配列表の配列番号1ないし4に示す。いずれの型も前駆体として産生され、後にシグナル配列が切断されて成熟体となる。シグナル配列の切断は、いずれの型もアラニンとシステインの間で起こる。即ち、TIMP−1では、アミノ酸残基番号で第23番目と第24番目の間が、TIMP−2では第26番目と第27番目の間が、TIMP−3では第23番目と第24番目の間が、そして、TIMP−4では第29番目と第30番目の間が切断される。よって、成熟体はいずれもN末端がシステイン残基となる。
【0025】
TIMPは、T98Gヒトグリア芽腫細胞、HT1080ヒト繊維肉腫細胞系の馴化培地等の材料より、公知の方法(Miyazaki,K.,Funahashi,K.,Numata,Y.,Koshikawa,N.,Akaogi,K.,Kikkawa,Y.,Yasumitsu,H.,および Umeda,M.(1993)J.Biol.Chem.268,14387−14393;ならびにCollier,I.E.,Wilhelm,S.M.,Eisen,A.Z.,Marmer,B.L.,Grant G.A.,Seltzer,J.L.,Kronberger,A.,He,C.,Bauer,E.A.,および Goldberg,G.I.(1988)J.Biol.Chem.263,6579−6587)を用いて精製することができる。または、本明細書の配列表に記載されているように、アミノ酸配列も公知であり、遺伝子工学的手法により産生させることもできる。遺伝子工学的手法によるタンパク質の産生は当業者に熟知されており、当業者は本明細書に基づいて、TIMPを得ることが可能である。
【0026】
本発明のTIMP修飾体は、好ましくは、TIMP−2の修飾体である。しかしながら、本発明のTIMP修飾体は特定の型のTIMPに限定されず、TIMP−1等他の修飾体も含まれる、配列表の配列番号No.1ないしNo.4に記載されたアミノ酸配列からも、特にNH2末端領域の配列は相同性が高いことがわかる。さらに、前述したように、MMPとの結合体は、TIMP−1、TIMP−2のいずれもNH2末端のCys−1のα−アミノ基およびカルボニル酸素が、プロテアーゼの触媒亜鉛と相互作用していると推定され、よって、TIMPのNH2末端のCys−1による触媒亜鉛原子のキレート化は、MMP活性の阻害に共通の機序であると考えられる。よって、いずれのTIMPにおいても共通してNH2末端を修飾することにより、MMPとの結合性を実質的に消失すると考えられる。
【0027】
本発明においては、上述したように、成熟TIMPの遊離NH2末端を修飾する。修飾は、電子吸引性の基であれば既知のものを用いることができる。例えば、限定されるわけではないが、カルバミル基、アセチル基、アミジノ基、トリニトロフェニル基等である。カルバミル基が好ましい。
【0028】
電子吸引性の基による末端NH2の修飾は、特に限定されず、公知の方法を用いることによって行える。例えば、カルバミル基によって修飾する場合、先ず、水溶液中、KNCOを用いて、20℃から40℃、好ましくは25℃から37℃で、10分から5時間、好ましくは20分から30分間反応させる。緩衝液としては、トリス−HCl、ヘペス(Hepes)−ナトリウム、リン酸緩衝液等を用いることができる。pHは、7.0−8.5の範囲内である。次いで、ヒドロキシアミン塩酸塩等のヒドロキシルアミンの塩を添加し反応を停止させることにより、カルバミル基導入量を調節することができる。反応は、10℃から25℃、好ましくは20℃から25℃で、30分から2時間、好ましくは60分から2時間行う。
【0029】
さらに、電子吸引性の基を導入された修飾TIMPを、アフィニティーカラム等により、非修飾TIMPと分離することができる。アフィニティーカラムの担体に固定する物質としては、各TIMPのNH2末端の反応性部位とのみと結合性を有するもの、例えば、TIMP−2の場合は、マトリライシン、ストロムライシン等を固定化物質として使用できる。
【0030】
上述のようにして得られた本発明のTIMP修飾体は、末端NH2が修飾されているため、MMPと結合することができず、よって複合体を生成できない。例えば、本明細書の実施例において、1個のカルバミル化されたα−アミノ基を有する修飾TIMP−2は、マトリライシンとの親和性をもたなかった。理論にしばられるわけではないが、TIMPの末端NH2を電子吸引性の基で修飾することにより、アミノ基のNα窒素の塩基度の減少がもたらされ、これによりNα窒素がMMPの触媒中心である亜鉛原子に配位できないようにさせ、それによってTIMP−2の阻害活性を消滅させると考えられる(図7A)。
【0031】
一方、本発明のTIMP修飾体はC末端側は修飾されていない。よって、本発明ではTIMPのC末端領域の関与する反応は阻害されない点をその特徴の一つとする。例えば、TIMP−1とTIMP−2は、活性型となる前の潜在型(プロ型)MMPとも複合体を形成することが知られており、TIMP−1は潜在型MMP−9と、TIMP−2はプロゼラチナーゼA(潜在型MMP−2)と、C末端領域同士の親和性により結合することが知られている(Birkedal−Hansen,H.,Moore,W,G.,Bodden,M.K.ら:Crit.Rev.Oral Biol.Med.4,197−250(1993); Nagae,H.:Biol.Chem.378,151−160(1997))。即ち、TIMP−2は、N末端領域でMT1−MMPと結合し、一方、C末端側でプロゼラチナーゼAと結合し、三分子複合体を形成すると推測されている。プロゼラチナーゼAが活性型のゼラチナーゼAになるためには、当該三分子複合体を形成することが必要であるとするモデルが考えられている(図7B)。
【0032】
本発明のTIMP修飾体は、末端NH2を修飾されており、MMP、例えば、TIMP−2の場合はMT1−MMPと結合できない一方、C末端は修飾されていないので、プロゼラチナーゼAとの結合が可能である(図5)。よって、プロゼラチナーゼAとの結合において天然のTIMP−2と競合する一方、MT1−MMPとは結合せず、TIMPを含む複合体の形成を阻害する。従って、このようなTIMPの複合体の形成により促進される反応が、調節、抑制される。一方、NH2末端が結合するMMP自体の酵素活性機能には無関係である。例えば、本発明のTIMP−2修飾体は、MT1−MMPの触媒活性を阻害することなく、プロゼラチナーゼAの活性化を阻害できる(図7A)。このようにTIMP−2修飾体は、MT1−MMPのプロテアーゼ活性自体と、TIMPと結合して複合体を形成し、プロゼラチナーゼAの活性化を促進する機能とを区別する有用な手段である。
【0033】
本発明は、さらに、本発明のTIMP修飾体を含む、薬学的に受容可能な担体と共に含む医薬用組成物を提供する。
本発明の医薬用組成物は、MMPが関与する癌の転移および血管新生の抑制、並びにこれらに伴う疾患を予防、治療するために有用である。具体的には、特に、胃癌、大腸癌、肺癌、頭頸部癌、脳腫瘍、乳癌、甲状腺癌、前立腺癌、卵巣癌、膵癌等の癌の転移およびそれにおける血管新生等の予防、治療に有用である。
【0034】
本発明の組成物は、薬学的に受容可能な担体との混合物中に、TIMPの治療上有効な量を含む。本発明の組成物は、全身的にまたは局所的に、経口的または静脈内、皮下内、筋肉内等の非経口的に投与しうる。
【0035】
経口的に投与される場合、錠剤、散剤、液状等公知の所望の形態を採用しうる。製剤化には、賦形剤、希釈剤、潤滑剤、結合剤、流動助剤、崩壊剤、界面活性剤等、公知の所望の製剤化のための補助剤を使用しうる。
【0036】
また、非経口的に投与可能なTIMPタンパク質溶液の調剤は、pH、等張性、安全性等を考慮し、当業者の技術範囲内において行いうる。
本発明の組成物の用量用法は、薬剤の作用、例えば、患者の症状の性質および/もしくは重度、体重、性別、食餌、投与の時間、並びに他の臨床的作用を左右する種々の因子を考慮し、診察する医師により決定されうる。当業者は、これらの要素に基づき、本発明の組成物の用量を決定することができる。
以下、実施例によって本発明を説明するが、実施例は例証のためのものであり、本発明を制限するものではない。本発明の範囲は、請求の範囲の記載に基づいて判断される。さらに、当業者は本明細書の記載に基づいて、容易に修正、変更を加えることが可能である。
【0037】
【実施例】
本願明細書に記載する実施例は、下記の「実験手順」によって行った。
実験手順
材料
用いられた材料の由来は次の通りであった。Peptide Institute,Inc.(大阪,日本)からの3167−v(7−メトキシクマリン−4−イル)アセチル−Arg−Pro−Lys−Pro−Tyr−Ala−ノルバリル−Trp−Met−Nε−(2,4−ジニトロフェニル)−リシンアミド);和光純薬株式会社(大阪)からのシアン酸カリウム;東京化成(東京,日本)からのp−アミノフェニル酢酸第二水銀(APMA);Pharmacia Fine Chemicals(ウプサラ,スウェーデン)からのCNBr活性セファロース4B;Beckman(フラートン,CA)からの Ultrasphere ODS 5U(2.0×150mm)。N−トシル−L−フェニルアラニンクロロメチルケトンで処理されたウシ膵臓トリプシンは、Worthington(フリーホールド,NJ)から購入され;植物レクチンコンカナバリンA(IV型,実質的に炭水化物不含)は Sigma(セント・ルイス,MO)から;ゼラチンは Difco(デトロイト,MI)からであった。組換えヒトマトリライシンは、オリエンタル酵母工業株式会社製(滋賀,日本)のものを使用した。他の化学薬品は全て、分析用または商業的に入手可能なものを使用した。
タンパク質
TIMP−2不含およびTIMP−2結合型のプロゼラチナーゼAは、前に記載されたように(Miyazaki,K.,Funahashi,K.,Numata,Y.,Koshikawa,N.,Akaogi,K.,Kikkawa,Y.,Yasumitsu,H.,および Umeda,M.(1993)J.Biol.Chem.268,14387−14393)、T98Gヒトグリア芽細胞腫細胞系の馴化培地(以下、「CM」と言う)から別個に精製した。TIMP−2は、Collier ら(Collier,I.E.,Wilhelm,S.M.,Eisen,A.Z.,Marmer,B.L.,GrantG.A.,Seltzer,J.L.,Kronberger,A.,He,C.,Bauer,E.A.,および Goldberg,G.I.(1988)J.Biol.Chem.263,6579−6587)の方法にしたがってSynChropak RP−4 逆相カラム(SynChrom;ラフィエット,IN)を用いて、TIMP−2結合プロゼラチナーゼAから精製した。プロゼラチナーゼAに対するウサギ抗血清は、公知の方法を用いて製造したものを使用した。
KNCOを用いるTIMP−2の化学修飾
50μlの1.0M KNCOを、0.1M NaClおよび0.01%NaN3を含有する50mMトリス−HCl(pH7.5)(トリス緩衝食塩水;TBS)中に500ピコモルのTIMP−2を含有した200μlのタンパク質溶液に対して加えた。その混合物を37℃で0分間、30分間、60分間、120分間および240分間インキュベートした。インキュベーション後、反応混合物から得られた50μlの各試料を20μlの1.0Mヒドロキシルアミン塩酸塩(pH8.0)と混合し、そして25℃で1時間インキュベートして修飾反応を終結させた。得られた反応混合物をTBSに対して4℃で透析した。
化学修飾後のTIMP−2の阻害活性の検定
種々の条件下でのTIMP−2の修飾後、種々の濃度のTIMP−2修飾体を、10mM CaCl2および0.01%のBrij35を含有する90μlのTBS中のマトリライシン(33nM)と一緒に37℃で15分間インキュベートした。それら混合物を、10μlの1mMの3167vと一緒に加え、そして更に40分間インキュベートした。その反応物を、100μlの0.1M EDTA(pH7.5)を加えることによって終結させた。マトリライシンによって加水分解された3167vの量を、360nmでの励起および460nmでの発光を用いて蛍光定量法によって測定した。酵素非存在下で加水分解された3167vの量を、加水分解された基質の全量から差引いた。TIMP−2(150μg)を、500μlのTBS中0.2M KNCOと一緒に37℃で25分間インキュベートした。この処理は、TIMP−2の阻害活性の50%減少を引き起こした。
部分カルバミル化後の活性および不活性TIMP−2の分離
KNCOで処理したTIMP−2試料を、0.2Mヒドロキシルアミン塩酸塩と一緒に25℃で1時間更にインキュベートした後、10mM CaCl2含有TBSに対して4℃で充分に透析した。活性TIMP−2と不活性TIMP−2を分離するために、マトリライシン100μgを500μlのCNBr活性セファロース4Bに対して結合させたマトリライシン−セファロース4Bカラムに対してその反応混合物を加え、そして不活性TIMP−2を含有する流出(flow−through)画分を集めた。10mM CaCl2含有TBSでカラムを洗浄後、吸着した試料(活性TIMP−2)を、4Mグアニジン塩酸塩および20mM EDTAを含有するTBSで溶離した。溶離後、そのカラムを、10mM CaCl2および50μM ZnCl2を含有するTBSで、次いで10mM CaCl2含有TBSで逐次的に洗浄して、固定されたマトリライシンを再生した。流出画分および溶離画分中のTIMP−2試料を、リン酸緩衝溶液に対して別々に透析した。
TIMP−2修飾体によるゼラチナーゼA活性の阻害検定
TIMP−2不含型のプロゼラチナーゼAを、前に記載されたように(Miyazaki,K.,Funahashi,K.,Numata,Y.,Koshikawa,N.,Akaogi,K.,Kikkawa,Y.,Yasumitsu,H.,および Umeda,M.(1993)J.Biol.Chem.268,14387−14393)、1mM APMAと一緒に37℃で1時間インキュベートすることによって活性化させた。活性型ゼラチナーゼA(89nM)を、10mM CaCl2および0.01%Brij35を含有する90μlのTBS中の種々の濃度のTIMP−2のKNCO処理誘導体と一緒に37℃で15分間インキュベートした。それら混合物を、10μlの1mM3167vと一緒に加え、そして更に40分間インキュベートした。100μlの0.1M EDTA(pH7.5)を加えることによって反応を終結させた。加水分解された3167vの量を上記のように測定した。
マトリライシン結合画分およびマトリライシン非結合画分中のKNCOで処理された型のTIMP−2の還元およびS−カルボキサミドメチル化
マトリライシン結合画分およびマトリライシン非結合画分中のKNCOで処理された型のTIMP−2それぞれ(10μM)を、4Mグアニジン塩酸塩および20mM EDTAを含有するTBS中100mMジチオトレイトールと一緒に50℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、それら試料を氷水の容器に移し、そして240mMヨードアセトアミドと一緒に更にインキュベートした。2時間後、試料をTBSに対して透析した。
細胞培養物並びにCMおよび細胞溶解産物の調製
HT1080線維肉腫細胞系を、10%ウシ胎児血清(FCS)を補足したダルベッコ修飾イーグル培地およびハムのF12培地(Gibco;グランド・アイランド,NY)の1:1混合物、DME/F12中で半密集まで増殖させた。それら細胞を血清不含DME/F12で3回洗浄し、そして血清不含DME/F12中の種々の濃度のTIMP−2またはTIMP−2修飾体および一定濃度のコンカナバリンA(100μg/ml)の存在下で培養を更に続けた。24時間後、得られたCMを集め、遠心分離によって清澄にし、そして蒸留水に対して4℃で透析した。次に、試料を凍結乾燥させ、そして50mMトリス−HCl(pH6.8)、2%ドデシル硫酸ナトリウムおよび10%グリセロールから成る少量のドデシル硫酸ナトリウム試料採取用緩衝液中に溶解させた。これら手順により、初期CMを20倍に濃縮した。細胞溶解産物を調製するために、細胞をリン酸緩衝溶液で3回洗浄後、少量のドデシル硫酸ナトリウム試料採取用緩衝液中に溶解させた。
リガンドブロッティング分析
TIMP−2またはTIMP−2修飾体を、非還元条件下においてドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した。電気泳動後、ゲル上のタンパク質を、Bio−Rad Mini Trans−Blot 装置(リッチモンド,CA)を用いてニトロセルロース膜上に移した。その膜を、5%脱脂乳含有TBSを用いて室温で12時間遮断し、0.05%トゥイーン(Tween)20、10mM CaCl2および0.1%ウシ血清アルブミンを含有するTBS(TBS−トゥイーン)で洗浄後、TBS−トゥイーン中においてプロゼラチナーゼA(5μg/ml)と一緒に室温でインキュベートした。3時間後、膜をTBS−トゥイーンで洗浄し、そしてTBS−トゥイーンで1000倍に希釈された抗プロゼラチナーゼA抗血清と一緒に3時間インキュベートした。TBS−トゥイーンで洗浄後、膜を1000倍希釈ビオチニル化抗ウサギIgG抗体(Vector Laboratories;バーリンゲーム,CA)とインキュベートし、TBS−トゥイーンで洗浄後、アビジン−アルカリ性ホスフェート(Vector)と一緒に室温で1時間インキュベートした。その膜を充分に洗浄後、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸およびニトロブルーテトラゾリウムを含有する反応混合物中でインキュベートして、膜上に着色生成物を生じさせた。
ゼラチンザイモグラフィー
ザイモグラフィーは、Miyazakiら(Miyazaki,K.,Hattori,Y.,Umenishi,F.,Yasumitsu,H.,およびUmeda,M.(1990)Cancer Res.50,7758−7764)に記載されたように、ゼラチン1mg/mlを含有する10%ポリアクリルアミドゲル上で行った。
アミノ末端配列分析
試料を、Applied Biosystems 477A 気相シークエンサーで分析した。フェニルチオヒダントイン誘導体を、Applied Biosystems 120A PTH 分析器を用いてオンラインシステムで検出した。
質量分析
TIMP−2のトリプシンペプチド(10ピコモル/μl)を、等容量のα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸溶液(α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸10mgを、0.1%トリフルオロ酢酸含有50%アセトニトリル1ml中に溶解させた)と一緒に混合した。試料/マトリックス溶液を、飛翔質量分析(flight mass spectrometry)のマトリックス介助レーザー脱離イオン化時間のために試料プレート上に滴下した後、周囲条件下で乾燥させた。質量スペクトルは、Voyager−DE(商標)STR システム(PerSeptive Biosystems,Inc.;フレーミンハム,MA)で得られた。
実施例
阻害活性に対するTIMP−2のKNCO処理の効果
TIMP−1とストロムライシンとの間に形成される複合体の最近確認された結晶構造は、TIMP−1のNH2末端のCys−1のα−アミノ基が、ストロムライシンの活性部位の触媒亜鉛原子に対して結合し、したがって、TIMP−1の阻害作用において本質的な役割を果たすことを示唆している(Gomis−Ruth,F.X.,Maskos,K.,Betz,M.,Bergner,A.,Huber,R.,Suzuki,K.,Yoshida,N.,Nagase,H.,Brew,K.,Bourenkov,G.P.,Bartunik,H.,および Bode,W.(1997)Nature 389,77−81)。TIMP−2のNH2末端部分の構造はTIMP−1のそれと相同であるので、TIMP−2のCys−1のα−アミノ基は、TIMP−1のそれに対応して、TIMP−2の阻害作用に重要でありうる。この可能性を検討するために、本発明者は、種々の条件下においてTIMP−2をKNCOで処理することによってCys−1のα−アミノ基をカルバミル化することを試みた。そしてTIMP−2修飾体を、3167vのマトリライシンに触媒された加水分解を阻害するそれらの能力について調べた。図1Aで示されるように、TIMP−2とKNCOとのインキュベーションは、阻害のIC50値の増加をもたらした。このIC50は、マトリライシンの活性の50%阻害を与えるTIMP−2修飾体の濃度を示している。KNCOとのインキュベーション時間に対するIC50の逆の値をプロットした場合、1/IC50値は、KNCOとのインキュベーション時間の増加に伴って減少し、そして1/IC50値の50%減少は、インキュベーション時間が25分である場合に観察された(図1B)。TIMP−2の阻害活性は、KNCOとの4時間のインキュベーション後に消滅した。
TIMP−2の部分修飾後の活性および不活性画分の分離
「実験手順」で記載されたように、TIMP−2を0.2M KNCOを用いて37℃で25分間処理した。この修飾は、TIMP−2の50%阻害活性の減少をもたらした(図1)。次に、部分修飾されたTIMP−2を、マトリライシン−セファロース4Bカラムで分離した。分離後、マトリライシン結合画分およびマトリライシン非結合画分はほぼ同量のタンパク質を含有し(データは示されていない)、分離前の修飾TIMP−2の約50%は、マトリライシンに対してほとんど親和性がなかったことが示唆された。マトリライシン結合画分および天然TIMP−2は、3167vのマトリライシンに触媒された加水分解を阻害する同様の能力を示した(図2A)。対照的に、マトリライシン非結合画分は、阻害活性がなかった。マトリライシン非結合画分は、APMA活性ゼラチナーゼAに対しても不活性であった(図2B)。これらデータは、TIMP−2のKNCOでの処理が、TIMP−2の末端NH2の修飾をもたらし、したがって、プロテアーゼ阻害複合体の形成を妨げるという知見と一致する。
TIMP−2の阻害活性の減少に関与する修飾部位の決定
阻害活性の減少に関与する修飾部位を決定するために、マトリライシン結合画分およびマトリライシン非結合画分中の試料を還元し且つS−カルボキサミドメチル化した後、トリプシン消化を施し、その後、消化物を逆相HPLCによって分離した。2種類の溶離プロフィール間で認められる違いは、マトリライシン結合画分およびマトリライシン非結合画分それぞれからのB−20およびU−21のピークだけであった(図3AおよびB)。それらペプチドの質量分析(図4AおよびB)は、B−20およびU−21の分子質量がそれぞれ、2345.22および2388.26であることを示した。測定された分子質量に基づき、B−20は、ヒトTIMP−2の残基1ないし20に該当するペプチドとされる。もう一方で、B−20とU−21との間の分子質量の差はカルバミル付加物の質量に相当し、U−21は、1個のカルバミル化アミノ基を有するTIMP−2の残基1ないし20に該当するペプチドであることが示唆される。
【0038】
更に、B−20についてのNH2末端配列分析においてTIMP−2の残基1ないし19に該当する配列が決定されたが、第1番目、第3番目および第13番目の残基は、S−カルボキサミドメチルシステインのフェニルチオヒダントイン誘導体として検出された。一方、U−21のNH2末端配列分析において、アミノ酸のフェニルチオヒダントイン誘導体は検出されなかった。これらの結果は、B−20およびU−21が、残基1ないし20に該当するTIMP−2のNH2末端部分から誘導されたペプチドであること、およびU−21のCys−1のα−アミノ基はカルバミル化されていることを示している。
これらの結果は、TIMP−2のNH2末端のCys−1のα−アミノ基のカルバミル化が、TIMP−2の失活をもたらすということも示唆している。
プロゼラチナーゼA結合能力に対するTIMP−2のKNCO処理の効果
MMP阻害活性に加えて、TIMP−2は、プロゼラチナーゼAのヘモペキシン様ドメインと相互作用する能力も有する。TIMP−2のカルバミル化がプロゼラチナーゼA結合能力に影響を与えるかどうか調べるために、KNCOで処理されたTIMP−2のマトリライシン結合画分およびマトリライシン非結合画分並びに天然TIMP−2のプロゼラチナーゼA結合能力について、「実験手順」で記載のリガンドブロッティング分析を用いて試験した。図5で示されるように、天然TIMP−2並びにマトリライシン非結合画分中のKNCO処理されたTIMP−2およびマトリライシン結合画分中のそれは、プロゼラチナーゼAと結合する同様の能力を有し、TIMP−2のカルバミル化が、プロゼラチナーゼAとの相互作用にほとんど影響しないことが示唆された。
プロゼラチナーゼAの細胞媒介活性化に対するTIMP−2修飾体および天然TIMP−2の効果
MT−MMPとTIMP−2との間に形成された複合体は、プロゼラチナーゼAの受容体として作用し、そしてその三分子複合体の形成は、プロゼラチナーゼAの細胞媒介活性化に不可欠であるという仮説が立てられた(Strongin,A.Y.,Marmer,B.L.,Grant,G.A.,および Goldberg,G.I.(1993)J.Biol.Chem.268,14033−14039; Strongin,A.Y.,Collier,I.,Bannikov,G.,Marmer,B.L.,Grant,G.A.,およびGoldberg,G.I.(1995)J.Biol.Chem.270,5331−5338; Kinoshita,T.,Sato,H.,Okada,A.,Ohuchi,E.,Imai,K.,Okada,Y.,および Seiki,M.(1998)J.Biol.Chem.273,16098−16103)。カルバミル化されたTIMP−2のマトリライシン非結合画分は、MMPの活性部位と相互作用する反応性部位を失っているが、プロゼラチナーゼA結合部位を保持しているので、TIMP−2修飾体は、プロゼラチナーゼAの限られた数のTIMP−2結合部位に関して競合することによってその三分子複合体の形成を妨げることができると考えられる。この可能性を検討するために、種々の濃度の修飾型および非修飾型のTIMP−2並びに天然TIMP−2を、コンカナバリンAで刺激されたHT1080細胞のCMに対して加え、そして細胞溶解産物中の様々な種類の内因性ゼラチナーゼAおよびCM中のそれらを、ゼラチンザイモグラフィーによって分析した。図6Aで示されるように、細胞に結合した成熟型のゼラチナーゼAは、マトリライシン非結合画分中の不活性のTIMP−2修飾体の濃度の増加に伴って徐々に減少した。細胞溶解産物中のプロゼラチナーゼAおよびプロゼラチナーゼBは、TIMP−2修飾体によって影響されなかった。これら検出されたチモーゲンは、細胞から分泌される前のタンパク質でありうる。CM中では、ゼラチナーゼAの中間型はTIMP−2修飾体の存在下、顕著に減少しなかったものの、成熟型はTIMP−2修飾体の濃度が36nMまたはそれ以上まで増加するに伴いほとんど消滅した。一方、プロゼラチナーゼAの量はTIMP−2の濃度の増加に伴って増加した(図6B)。これは、内因性プロゼラチナーゼAの中間型への変換は部分的に阻害されたが、中間型の成熟型への変換は、高濃度のTIMP−2修飾体の存在下において強く阻害されたことを示唆した。CM中の成熟型ゼラチナーゼAの消失は、細胞結合成熟型の減少と平行していた。したがって、中間型の成熟型への変換は、細胞に結合した活性ゼラチナーゼAに依存しうる。もう一方において、マトリライシン結合画分中の活性TIMP−2を濃度を変化させながらHT1080細胞の培養物中に加えた場合、細胞結合成熟型のゼラチナーゼAは、4.5nMの活性TIMP−2で僅かに増加した後、更に高濃度では急激に減少した(図6A)。CM中のゼラチナーゼAの成熟型および中間型両方が消失したが、プロゼラチナーゼAは、活性TIMP−2の濃度の増加に伴って増加した。よって、プロゼラチナーゼAのMT−MMPによるプロセシングは、活性TIMP−2の存在下で阻害されたことが示唆された。CM中のゼラチナーゼAの成熟型および中間型の消失は、細胞結合成熟型の減少とも平行していた。活性TIMP−2によるプロゼラチナーゼAのプロセッシングの阻害は、細胞結合プロゼラチナーゼAの量の増加を伴わなかったので、細胞結合チモーゲンは、高濃度のTIMP−2存在下、細胞表面から遊離すると考えられる。
【0039】
細胞結合ゼラチナーゼAに対する作用およびプロゼラチナーゼAの細胞媒介活性化に対するマトリライシン結合画分中の活性TIMP−2の作用は、天然TIMP−2の作用とほぼ同様であった(データは示されていない)。
以上の実施例において、TIMP−2修飾体を、コンカナバリンAで刺激されたHT1080細胞の培地に対して加えた場合、内因性プロゼラチナーゼAの中間型への変換は部分的に阻害され、その中間型の成熟型への変換は強く阻害された。本発明のTIMP−2修飾体は、細胞表面上での活性型ゼラチナーゼAの蓄積をも妨げた。理論に縛られるわけではないが、本発明者は、TIMP−2修飾体によるゼラチナーゼAのヘモペキシン様ドメインの占有が、ゼラチナーゼAを細胞表面上に保持できないようにさせ、それによってゼラチナーゼAの中間型からその成熟型への自己触媒的変換を妨げると推測している。
【0040】
本発明者は、ゼラチナーゼAの中間型の成熟型への変換がゼラチナーゼAの細胞に結合した活性に依存しているので、TIMP−2修飾体による細胞に結合した活性型ゼラチナーゼAの喪失は、成熟型の生産の阻害を引き起こすということも考えている。実際、高濃度のTIMP−2修飾体の存在下において、CM中の成熟型ゼラチナーゼAの消失は、細胞に結合した活性ゼラチナーゼAの減少と平行していた(図6)。
【0041】
MT−MMP、TIMP−2および(プロ)ゼラチナーゼAから成る三分子複合体の形成の重要性を考えると、TIMP−2によるプロゼラチナーゼAの細胞媒介活性化の阻害は、二つの別の方法で説明できると考えられる。一つの解釈は、過剰のTIMP−2が、MT−MMPの活性部位および(プロ)ゼラチナーゼAのヘモペキシン様ドメイン中のTIMP−2結合部位両方を占有し、それによって三分子複合体の形成を妨げるということである(図7B)。もう一つの解釈は、TIMP−2がMT−MMPの触媒活性を阻害し、それによってプロゼラチナーゼAのタンパク質分解過程を阻害するということである。
【0042】
本発明者は、天然TIMP−2もTIMP−2修飾体も、細胞結合プロゼラチナーゼAを増加させることなく、細胞表面上での活性ゼラチナーゼAの蓄積を防止しうることを発見した。これらデータは、三分子複合体の形成の防止が、TIMP−2によるプロゼラチナーゼAの細胞媒介活性化の阻害の原因となることを示唆している。
【0043】
過剰天然TIMP−2は、ゼラチナーゼAの中間型の生産を阻害したが、TIMP−2修飾体は阻害しなかった。したがって、TIMP−2によるMT−MMPの触媒活性の阻害は、プロゼラチナーゼAのプロセッシングの阻害の原因となるということも考えられる。CM中の成熟型および中間型ゼラチナーゼAの消失並びに細胞に結合した活性ゼラチナーゼAの減少は、同様の濃度の非修飾TIMP−2で認められたので(図6)、三分子複合体の形成の防止およびMT−MMP活性の阻害は、臨界的濃度のTIMP−2存在下、同時に起こりうる(図7B)。それら機序の両方が、TIMP−2がプロゼラチナーゼAの細胞媒介活性化の調節因子になり得る要因であると考えられる。
【0044】
図面の詳細な説明
図1は、TIMP−2の阻害活性に対するKNCOの効果を示す。TIMP−2(2μM)を、TBS中0.2M KNCOと一緒に37℃で0分間(●)、30分間(○)、60分間(▲)、120分間(△)および240分間(x)インキュベートした。インキュベーション後、それぞれの試料をヒドロキシルアミン塩酸塩で処理し、そして「実験手順」で記載されたようにTBSに対して透析した。パネルAでは、マトリライシン(30nM)を、種々の濃度のTIMP−2のKNCOで処理された誘導体の存在下において0.1mMの3167vと一緒に37℃で40分間インキュベートした。反応混合物は全て、TBS、10mM CaCl2および0.01%Brij35を含有した。マトリライシンによって加水分解された3167vの量を100%として、各濃度のTIMP−2のKNCO処理誘導体の存在下でマトリライシンによって加水分解された3167vの相対量を縦座標で示す。パネルBでは、KNCOとのインキュベーション時間に対するパネルAで得られたIC50の逆の値をプロットしている。IC50は、マトリライシンの活性の50%阻害を与えるTIMP−2のKNCO処理誘導体の濃度を示す。
【0045】
図2は、マトリライシン結合画分およびマトリライシン非結合画分中のKNCOで処理された型のTIMP−2の阻害活性を示す。KNCOでの処理後、部分修飾されたTIMP−2を、「実験手順」で記載されたようにマトリライシン−セファロース4Bカラムを用いて分離した。マトリライシン(30nM,パネルA)およびAPMA活性化ゼラチナーゼA(80nM,パネルB)をそれぞれ、マトリライシン結合(●)およびマトリライシン非結合(○)画分中の種々の濃度のKNCOで処理された型のTIMP−2の存在下において、0.1mMの3167vと一緒に37℃で40分間インキュベートした。反応混合物は全て、TBS、10mM CaCl2および0.01%Brij35を含有した。酵素によって加水分解された3167vの量を100%として、各濃度のKNCO処理型TIMP−2の存在下で酵素によって加水分解された3167vの相対量を縦座標で示す。
【0046】
図3は、マトリライシン結合画分およびマトリライシン非結合画分中のKNCOで処理された型のTIMP−2のトリプシンペプチドのHPLC分離を示す。マトリライシン結合(パネルA)およびマトリライシン非結合(パネルB)画分中のKNCOで処理された型のTIMP−2をそれぞれ、「実験手順」で記載されたように還元し且つS−カルボキサミドメチル化した後、1:100(w/w)の酵素対基質比のトリプシンを用いて37℃で24時間消化した。消化物を Ultrasphere ODS 5Uカラム(2.0×150mm)に加え、そして0.05%トリフルオロ酢酸を含有するアセトニトリルの直線勾配を用いて0.5ml/分の流速で溶離した。カラム溶出液を206nmで監視したが(実線)、破線はカラム基材中のアセトニトリルの百分率を示す。
【0047】
図4は、B20およびU−21の質量スペクトルを示す。ODSカラムから得られたピークB−20(パネルA)およびU−21(パネルB)を、マトリックス溶液として10mg/mlのα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸/50%アセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸を用いて、マトリックス介助レーザー脱離イオン化時間の飛翔質量分析に供した。
【0048】
図5は、マトリライシン結合画分およびマトリライシン非結合画分中のKNCOで処理された型のTIMP−2のプロゼラチナーゼA結合能力を示す。マトリライシン非結合画分(N末端修飾されたTIMP−2)およびマトリライシン結合画分(非修飾TIMP−2)中のKNCOで処理された型のTIMP−2並びに天然TIMP−2の指定量を、「実験手順」で記載されたようにリガンドブロッティング分析に供した。縦座標は、kDaの分子寸法を示す。
【0049】
図6は、コンカナバリンAで刺激されたHT1080細胞の溶解産物およびCM中でのプロゼラチナーゼAのプロセッシングに対するN末端修飾および非修飾TIMP−2の効果を示す。HT1080細胞を、血清不含培地中において、マトリライシン非結合画分(N末端修飾TIMP−2)およびマトリライシン結合画分(非修飾TIMP−2)中の指定された濃度のKNCOで処理された型のTIMP−2並びに一定濃度(100μg/ml)のコンカナバリンAと一緒にインキュベートした。細胞溶解物(パネルA)およびCM(パネルB)を、インキュベートされた細胞から調製し、そして「実験手順」で記載されたようにゼラチンザイモグラフィーに供した。くさび形は、66kDaのプロゼラチナーゼA(上段)、59kDaの中間型(中段)および57kDaの成熟型(下段)のゼラチン分解バンドを示す。90kDaの矢印は、プロゼラチナーゼBのゼラチン分解バンドを示す。縦座標、kDaでの分子寸法。
【0050】
図7は、MT−MMP、TIMP−2および(プロ)ゼラチナーゼAから成る三分子複合体の形成に対するTIMP−2修飾体および天然TIMP−2の阻害作用についての仮説モデルを示す。
【0051】
パネルAにおいて、TIMP−2修飾体は、(プロ)ゼラチナーゼAのヘモペキシン様ドメインに関して競合することにより、MT−MMP、TIMP−2および(プロ)ゼラチナーゼAから成る三分子複合体の形成を阻害する。TIMP−2修飾体は、MT−MMPの活性部位と相互作用できない。パネルBにおいて、過剰量の天然TIMP−2は、MT−MMPの活性部位および(プロ)ゼラチナーゼAのヘモペキシン様ドメイン両方を占有することによって三分子複合体の形成を阻害する。図中、H2Nは、TIMP−2のNH2末端のCys−1のα−アミノ基を、H2NCONHは、TIMP−2のNH2末端のCys−1がカルバミル化されたα−アミノ基を、そして、Zn2+は、メタロプロテイナーゼの触媒亜鉛原子を示す。
【0052】
【効果】
本発明者は、TIMPによるMMPの活性化機構を解明し、TIMP修飾体によりTIMPの複合体の形成により促進される反応を調節、抑制することが可能となった。一方、NH2末端が結合するMMP自体の酵素活性機能は影響を受けない。例えば、本発明のTIMP−2修飾体は、MT1−MMPの触媒活性を阻害することなく、プロゼラチナーゼAの活性化を阻害できる(図7A)。
【0053】
癌の転移の研究において、MMP活性を直接阻害する金属酵素阻害剤が数多く研究・試験されている。例えば、BE−16627B、S1−27等である。しかしながら、これらのMMP阻害剤は、MMP活性を広範囲に阻害してしまうため、種々の副作用が指摘されている。
【0054】
また、TIMPを含む複合体の生成を阻害するためには、例えば、天然TIMPを過剰に投与する方法も考えられる(図7B)。しかしながら、この方法は、臨界量まではむしろ複合体の生成を促進する可能性がある。また、過剰量のTIMPによりMMP活性自体が阻害される可能性がある。
【0055】
これらに対し、本発明のTIMP修飾体は、このようにMMP自体の酵素活性を阻害せず、TIMPの型により特異的に潜在型MMPの活性化を阻害できる。よって、上述のような副作用等の問題も生ぜず、また試験用の試薬としても有用である。
【0056】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、TIMP−2の阻害活性に対するKNCOの効果を示す。
【図2】図2は、マトリライシン結合画分およびマトリライシン非結合画分中のKNCOで処理された型のTIMP−2の阻害活性を示す。
【図3】図3は、マトリライシン結合画分およびマトリライシン非結合画分中のKNCOで処理された型のTIMP−2のトリプシンペプチドのHPLC分離を示す。
【図4】図4は、B20およびU−21の質量スペクトルを示す。
【図5】図5は、マトリライシン結合画分およびマトリライシン非結合画分中のKNCOで処理された型のTIMP−2のプロゼラチナーゼA結合能力を示す。
【図6】図6は、コンカナバリンAで刺激されたHT1080細胞の溶解産物およびCM中でのプロゼラチナーゼAのプロセッシングに対するN末端修飾および非修飾TIMP−2の効果を示す。
【図7】図7は、MT−MMP、TIMP−2および(プロ)ゼラチナーゼAから成る三分子複合体の形成に対するTIMP−2修飾体および天然TIMP0−2の阻害作用についての仮説モデルを示す。

Claims (7)

  1. TIMPのNH2末端α−アミノ基を電子吸引基で修飾し、メタロプロテイナーゼとの結合性を実質的に消失しているTIMP修飾体。
  2. TIMP修飾体がTIMP−2修飾体である、請求項1に記載のTIMP修飾体。
  3. 前記電子吸引基がカルバミル基である、請求項1または2に記載のTIMP修飾体。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載のTIMP修飾体を加えることにより、in vitroでTIMPを含む複合体の形成を阻害する方法。
  5. 前記TIMP修飾体がTIMP−2修飾体であり、前記複合体がMT−MMP、TIMP−2およびゼラチナーゼAを含む複合体である、請求項4に記載の阻害方法。
  6. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載のTIMP修飾体を含む、薬学的に受容可能な担体と共に含む医薬用組成物。
  7. 癌の転移抑制または血管新生抑制のために用いる請求項6に記載の医薬用組成物。
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