そこで、本発明者らは、諸種の発光金属材料やその割合、封入量などについて選択や確認を行い、種々の発光特性において優れた特性が得られる材料を選定することができた。
本発明は、発光金属材料およびその封入割合を規制することにより、効率(90〜130lm/W)、相関色温度(3500〜5000K)、演色性(平均演色評価数(Ra)75〜90)や寿命などの種々の発光特性が優れた白色発光をなすメタルハライドランプなどの高圧放電ランプおよびこの放電ランプを装着した照明装置を提供することを目的とする。
請求項1の発明の高圧放電ランプは、放電空間を形成する容器、この放電容器の両端に気密封止された導入導体およびこの導入導体に接続された一対の電極、上記放電容器内に封入された金属ハロゲン化物および始動ガスを含む放電媒体とからなる発光管と、内部にこの発光管を管軸に沿って配設するとともに気密閉塞された外管と、この外管の端部に封止され、上記発光管の導入導体に電気的に接続するとともに発光管を保持する一対の給電部材とを具備した高圧放電ランプにおいて、上記発光管内に封入された金属ハロゲン化物が、Na、Tl、In、Tmのハロゲン化物からなり、かつ、Tmのハロゲン化物(TmX)に対するInのハロゲン化物(InX)の重量比率(InX/TmX)が、0<InX/TmX≦0.15であることを特徴とする。
この発明の高圧放電ランプは、発光金属材料として青色領域(450nm付近)に発光ピークを呈するInと、青緑色領域(450〜530nm付近)に多数の発光ピークを呈するTmと、緑色領域(535nm付近)に発光ピークを呈するTlと、赤色領域(590nm付近)に発光ピークを呈するNaとの4種類を主成分とするハロゲン化物を封入している。
そして、ハロゲン化インジウムを適量とすることにより色温度の調整作用を奏し、あわせナトリウムのスペクトルによる効率の向上および色温度の調整ならびに希土類金属の連続スペクトルによる高い演色性とが得られる。
また、ハロゲン化インジウムは少量でも存在していれば上記作用を奏するが、ハロゲン化ツリウムに対し15重量%(0.15)を超えると、青色領域でのスペクトルが強くなり過ぎ発光効率を低下させ、発光色が青緑色となる現象が生じる不具合があり、この発光効率の低下と色ずれを考慮すると1〜13重量%程度が好ましい。なお、上記ハロゲン化物のXは、よう素I、臭素Br、塩素Clまたはフッ素Fを指す。
すなわち、上記発光金属を適量封入することにより可視領域に連続した発光スペクトルが得られるとともに、Inは青色発光により光色の調整の作用をなし、また、Tlは光色の調整と効率を高める作用をなし、また、Naは効率を高め立ち消え電圧を低下し点灯方向変動特性を改善する作用をなし、さらに、Tmは演色性を高める作用を奏するなど種々の発光特性にバランスのとれた高圧放電ランプを提供できる。
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
発光管の放電容器を形成する材料としては、サファイヤ、アルミニウム酸化物(アルミナ)、イットリウム−アルミニウム−ガーネットの酸化物(YAG)、イットリウム酸化物(YOX)やアルミニウム窒化物(AlN)などのセラミックスあるいは石英ガラスなどの透光性、耐熱性やハロゲン化物からの耐蝕性が高いものを用いることができる。
放電容器の形状は、円筒形や中央部が膨出した長円形、球形やあるいはこれら形状の複合体などをなし、その両端または一端を直接あるいは端部に接続した小径の筒状体を気密に閉塞した封止部が形成してある。この封止部は、容器がセラミックスの場合は端部を金属製、セラミックス製やサーメット製などの栓体あるいは耐熱性接着剤などの充填剤で閉塞したり、また、石英ガラスなどの場合は圧潰や焼き絞るなどの手段で形成することができる。
また、上記の透光性とは、放電によって発生した光を透過して外部に放出できる程度の光透過性を有し、透明に限らず、光拡散性であってもよい。また、容器端部の小径筒状部など放電による放射を主としていない部分は、遮光性であってもよい。
さらに、本発明において、ランプの定格によっても異なり制限されるものではないが、放電容器の放電空間を形成する長円形、球形や円筒形などをなす部分の内径は4〜30mm程度、内部の全長は30〜90mm程度、内容積は0.02〜5.0cc、好ましくは0.2〜4.5cc程度のものを用いることができる。
一対の電極は、容器内において対峙するよう電極軸が放電容器両端の封止部や小径筒状部内を挿通して封装されており、材料としてはタングステンWまたはドープドタングステンを用いている。電極の先端部は、表面積を大きくして放熱を良好にするために、必要に応じて上記材料からなるコイルを巻装することができる。
また、電極基端の電極軸部は、放電容器に対して電極を所定の位置に固定するとともに、外部から電流を導入するために機能し、その基端部は導入導体の先端に溶接などによって固着することで電気的および機械的に支持されている。
また、導入導体は、電極に接続してこれを支持し電極に放電電流を供給するとともに容器に固定される機能を有し、放電容器がセラミックスの場合は栓体の内外に接続あるいは栓体内を貫通したり、また、小径筒状部内にガラスシール材で気密に封止されていたり、また、石英ガラスの場合は気密封止用のモリブデンMoなどの金属箔に接続され、かつ、放電容器の端部から外部に直接または他の接続導体を介して導出され、発光管を支持するのに利用される。
セラミックス放電容器の場合、この導入導体の材料としては、ニオブNb、タンタルTa、チタンTi、ジルコニウムZr、ハフニウムHfやバナジウムVなどの封着性金属を用いて、棒状体、パイプ状体やコイル状体などに形成されている。そして、その選択はセラミックス放電容器の材料の熱膨張係数などに応じ適宜選ぶことができる。
放電媒体は、発光金属としてナトリウムNa、タリウムTl、インジウムIn、ツリウムTmを主成分としたハロゲン化物および必要に応じアマルガムを含む水銀Hgが封入されるが、セリウムCe、プラセオジムPrやその他の金属のハロゲン化物が少量含まれるのは構わない。また、ハロゲンとしては、よう素I、臭素Br、塩素Clまたはフッ素Fのいずれか一種または複数種を用いることができる。
この金属ハロゲン化物の封入量は、容器内容積1cc当たり2〜20mg程度であり、また、上記Na−Tl−In−Tmのハロゲン化物の比率(重量%)は、発光特性あるいはランプ電力や放電容器の内容積などに応じて決められるが、Naのハロゲン化物が10〜80wt%程度好ましくは20〜70wt%、Tlのハロゲン化物が5〜30wt%程度好ましくは7〜25wt%、Inのハロゲン化物が0.1〜15wt%程度好ましくは0.5〜10wt%、Tmのハロゲン化物が20〜80wt%程度好ましくは40〜70wt%の範囲である。
また、始動および緩衝ガスとしてアルゴンArやネオンNeなどの希ガスが8kPa〜80kPa(パスカル)程度封入され、点灯中約500kPa程度以上の圧力を呈する。なお、この希ガスの封入圧力が8kPa未満であると、パッシェン曲線にもあるように放電開始が困難になり、また、80kPaを超えると始動電圧が高くなって、口金の耐圧を超えてしまう。
外管は、石英ガラス、ほうけい酸ガラスなどの硬質ガラスや半硬質ガラスなどのガラスあるいはセラミックスからなる透光性および耐熱性を有する材料で形成されたA形、AP形、B形、BT形、ED形、R形、T形などをなし、端部の開口部から上記発光管を保持したマウントを入れ、この開口部をバーナで加熱し溶融閉塞してマウントを封止した封止部が形成されている。なお、上記封止部は、T(直管)形などの外管の場合は両端に形成されていてもよい。
また、外管内は真空雰囲気であっても、窒素N2 やアルゴンArなどの希ガスが封入されていてもよい。
給電部材は、1本の単独材料で形成できればよいが、封止部内に封止られる部分はガラスとの気密性やなじみがよい材料を要することから、外管内の給電線部分、封止部の封着部材部分、外管外に導出した外部リード部分など複数の材料を接続して構成するのが妥当で、材料、寸度などの形態は発光管の品種、電力、重量、外管材料などに合わせ適宜選べばよい。
また、端部に小径筒状部を有する放電容器の場合、内部に配設された電極軸と対向する小径筒状部の外面側にコイル状部を巻装し、このコイル状部を内部の電極軸と反対電位側に接続してランプ始動時の補助電極とすることにより、ランプの始動を容易にすることができる。
また、上記給電部材の外管内給電線部分は、モリブデンMoやタングステンWなどの金属材料からなり、発光管両端の導入導体に電気的に接続して給電を行うとともに発光管や中管を管軸に沿って配設保持する支持部材を兼ねている。
さらに、外管内の給電線などに、外管内を清浄にするジルコニウムZr−アルミニウムAl合金などのゲッタを設けておくことは構わない。
さらにまた、必須の部材ではないが発光管を囲繞して容器と同様なセラミックスあるいは石英ガラスや硬質ガラスからなる耐熱透光性の材料からなる中管を設けることができる。この中管により、発光管の保温が行え発光金属を容易に作用させて高効率化や高演色化など発光特性の向上がはかれるとともに万一の発光管容器破損時の防護をなす。また、発光管および中管を電位のかからない部材に支持させることにより、点灯時に光電子作用により発光管容器内からNaイオンなどが抜け出すことを防ぎ、ランプの発光効率の低下を抑制できる。
請求項2の発明の高圧放電ランプは、放電空間を形成する膨出部の両端に設けられた膨出部より内径が小さい一対の小径筒状部を有する透光性セラミックス放電容器、この放電容器の各小径筒状部内に気密封止された導入導体およびこの導入導体に接続され小径筒状部内に延在しているとともに膨出部内に先端を臨ませた一対の電極、上記放電容器内に封入された金属ハロゲン化物および始動ガスを含む放電媒体とからなる発光管と、内部にこの発光管を管軸に沿って配設するとともに気密閉塞された外管と、この外管の端部に封止され、上記発光管の導入導体に電気的に接続するとともに発光管を保持する一対の給電部材とを具備した高圧放電ランプにおいて、上記発光管内に封入された金属ハロゲン化物が、Na、Tl、In、Tmのハロゲン化物からなり、かつ、Tmのハロゲン化物(TmX)に対するInのハロゲン化物(InX)の重量比率(InX/TmX)が、0<InX/TmX≦0.15であることを特徴とする。
発光管を形成する放電容器を透光性セラミックスで形成することにより、石英ガラスに比べ耐熱性および耐蝕性に優れ、発光金属材料と反応して生じる失透現象に伴う光束の低下を抑制できる。したがって、発光管の管壁負荷が高められることで、石英ガラス製の発光管より高い発光効率および色特性が得られる、上記請求項1に記載したと同様な作用を奏する。
また、本発明は上記Naと同様の作用を奏することで知られているカルシウムCaのハロゲン化物をNaのハロゲン化物とともにあるいはNaのハロゲン化物の代替として添加しても差し支えないことを確認した。
請求項3の発明の高圧放電ランプは、発光管内に封入された金属ハロゲン化物が、Ce、Prの少なくとも一種のハロゲン化物を含むことを特徴としている。
Na、Tl、In、Tmのハロゲン化物に、Ce、Prの少なくとも一種のハロゲン化物を添加することにより、発光効率を高める作用を奏する。
また、このCe、Prのハロゲン化物の封入量は、金属ハロゲン化物の総封入量の20重量%未満で、これが20重量%を超えると緑色化が強い発光色となる現象を生じて好ましくない。
請求項4の発明の高圧放電ランプは、発光管内に封入された金属ハロゲン化物が、Na、Tl、In、Tmのハロゲン化物を90重量%以上含むことを特徴としている。
封入された金属ハロゲン化物の総封入量が80重量%以上がNa、Tl、In、Tmのハロゲン化物であっても、放射する初期の分光分布に大きな影響を及ぼさず所望の発光特性が得られる。なお、詳細については後述するが、総封入量の90重量%以上あれば最適な発光特性が得られ、また、点灯経過に伴う消耗などを考慮すると総封入量の95重量%以上であれば安定性を高めることができ好ましい。
請求項5の発明の高圧放電ランプは、発光管内に封入された金属ハロゲン化物が、希土類金属ハロゲン化物を40重量%以上含むことを特徴としている。
封入された金属ハロゲン化物の総封入量の40重量%以上がTmあるいはTmとその他の希土類金属たとえばジスプロシウムDy、ホルミウムHo、セリウムCe、プラセオジムPrやネオジムNdなどのハロゲン化物であれば、白色、かつ、発光効率の高い放射光を発することができる。なお、総封入量の40重量%未満の場合は、所望の発光効率が得られないばかりか色温度が3500K以下と低くなってしまう。
また、この希土類金属のハロゲン化物の封入量が多すぎると、放電容器が希土類金属と反応して光束維持率の低下を招くなどのことがあり、希土類金属ハロゲン化物の封入割合は40〜70重量%程度が好ましかった。
請求項6の発明の高圧放電ランプは、発光管内に封入された金属ハロゲン化物が、Tmのハロゲン化物を20重量%以上含むことを特徴としている。
封入された金属ハロゲン化物の総封入量の20重量%以上がTmハロゲン化物であれば、450〜530nmの青緑色領域のスペクトルを呈し、発光効率を高めるなどの作用を奏する。
また、このTmハロゲン化物の封入量は、放電容器が希土類金属と反応して光束維持率の低下を招くなどのことを考慮すると、Tmの封入割合は20〜70重量%程度が好ましい。
請求項7の発明の高圧放電ランプは、発光管内に封入されたTlのハロゲン化物(TlX)に対するInのハロゲン化物(InX)の重量比率(InX/TlX)が0.05<InX/TlX≦0.5であることを特徴としている。
ハロゲン化タリウムに対するハロゲン化インジウムが5重量%(0.05)未満であると、タリウムの発光スペクトルが強くなり、ランプ光色が緑色になるなどの不具合があり、また、50重量%(0.5)を超えると、発光効率の低下を生じる不具合がある。
封入する金属ハロゲン化物の重量比率を上記範囲内とすることによって、上記請求項1または2に記載したと同様な作用を奏する。
請求項8の発明の高圧放電ランプは、効率が90〜130lm/W、相関色温度が3500〜5000Kで、かつ、平均演色評価数(Ra)が75〜90の放射光を放射することを特徴としている。
上記請求項1ないし7のいずれか一に記載した構成とすることにより、高い効率、相関色温度および平均演色評価数を呈するバランスのとれた高圧放電ランプが得られる。
請求項9の発明の高圧放電ランプは、垂直点灯時と水平点灯時の最大色温度変動値が400K以下であることを特徴としている。
金属ハロゲン化物を封入した放電ランプは、点灯姿勢により最冷部温度が変わりハロゲン化物の蒸気圧が変化して効率や色温度などの発光特性や電気特性も変動するが上記請求項1ないし8に記載した構成とすることにより、ランプの相関色温度変動を400K以下に抑制できる。
この相関色温度変動を400K以下に規制した理由は、400Kを超える温度差は視感によっても明暗差が分かることによる。
請求項10の発明の高圧放電ランプは、定格電力の50〜100%の範囲における動作時において、定格電力での動作に対する最大色温度変動値が400K以下であり、かつ、平均演色評価数の最大変動値が6ポイント以内であることを特徴としている。
これは、発光管の最冷点温度が大きく変化しても、発光分布の変化が小さく、定格電力の50%〜100%の調光点灯においても、上記請求項9に記載と同様に最大色温度変動値が400K以下で、また、平均演色評価数の最大変動値が小さなどランプ特性を著しく低下させることがない。
請求項11の発明の高圧放電ランプは、電圧波形が100Hz〜1 kHzの矩形波で、かつ、安定器からの2次開放電圧が150〜400Vで点灯されることを特徴としている。
この場合に100Hz未満の周波数の点灯では、点灯時にアークに揺らぎが発生する。また、1kHzを超える周波数の点灯では、音響共鳴現象によるアークの揺れが発生するとともに点灯経過に伴う光束の低下、すなわち光束維持率の低下が大きい。
また、2次開放電圧が150〜400Vで点灯され、150V未満の始動ではでは、グロー放電からアーク放電に移行できないという不具合があり、400Vを超える点灯では電極への印加電圧が高すぎるため発光管に黒化を生じるという不具合がある。
請求項12の発明の高圧放電ランプは、定格電力が10〜1000Wであることを特徴
としている。
ランプの定格電力を10〜1000Wとした理由は、従来ランプでは点灯方向が限られるが、本発明の構成とすることにより点灯方向を制限することなく発光特性が高められる。
また、定格電力が10〜1000Wとは、定格が10〜1000W級のランプのことで、±の裕度を有する。
請求項13の発明の高圧放電ランプは、照明装置本体と、この照明装置本体に設けられた請求項1ないし12のいずれか一に記載の高圧放電ランプと、この高圧放電ランプを点灯させる点灯回路手段とを具備していることを特徴としている。
本発明において、照明装置は、高圧放電ランプの発光を何らかの目的で用いるあらゆる装置を含む広い概念である。たとえば、電球形高圧放電ランプ、照明器具、移動体用前照灯、光ファイバー用光源装置、画像投射装置、光化学装置、指紋判別装置などに適用することができる。
「照明装置本体」とは、上記照明装置から高圧放電ランプおよび点灯回路手段を除いた残余の部分をいう。また、この高圧放電ランプの点灯手段としては、ランプを上述した点灯周波数が100Hz〜1kHzの矩形波で点灯することができる。
請求項1の発明によれば、発光金属をNa、In、Tl、Tmのハロゲン化物を主成分として封入したことにより、効率、相関色温度、平均演色評価数(演色性)や寿命などの種々の発光特性が優れたバランスのとれた白色発光をなすメタルハライドランプなどの高圧放電ランプを提供することができる。
請求項2の発明によれば、発光金属をNa、In、Tl、Tmのハロゲン化物を主成分として封入したので、上記請求項1に記載と同様な効果を奏するとともに透光性セラミックスの放電容器を用いることで容器の耐熱性および耐蝕性が向上して、石英ガラスを用いたランプに比べ長寿命の高圧放電ランプを提供することができる。
請求項3の発明によれば、上記発光金属のハロゲン化物にCe、Prなどのハロゲン化物を添加することにより、さらに効率向上のはかれた高圧放電ランプを提供することができる。
請求項4の発明によれば、金属ハロゲン化物の総封入量に対しNa、In、Tl、Tmのハロゲン化物を90重量%以上封入したことにより、効率、相関色温度、平均演色評価数(演色性)や寿命などの種々の発光特性が、ランプの点灯姿勢に拘らず優れたバランスのとれた白色発光をなす高圧放電ランプを提供することができる。
請求項5の発明によれば、金属ハロゲン化物の総封入量に対し希土類金属のハロゲン化物を40重量%以上封入したことにより、平均演色評価数(演色性)の高い高圧放電ランプを提供することができる。
請求項6の発明によれば、金属ハロゲン化物の総封入量に対しTmのハロゲン化物を20重量%以上封入したことにより、平均演色評価数(演色性)が向上できるとともに効率の高い高圧放電ランプを提供することができる。
請求項7の発明によれば、Tlのハロゲン化物(TlX)に対するInのハロゲン化物(InX)の重量比率(InX/TlX)を0.05<InX/TlX≦0.5とすることによって、青緑色、青色および緑色領域における色バランス(発光スペクトル強度のバランス)がよい高圧放電ランプを提供することができる。
請求項8の発明によれば、効率が90〜130lm/W、相関色温度が3500〜5000Kで、かつ、平均演色評価数(Ra)が75〜90の放射光を放射する、一般照明用として使用可能な高圧放電ランプを提供することができる。
請求項9の発明によれば、垂直点灯時と水平点灯時の最大色温度変動値が400K以下であることによって、点灯方向に規制のある点灯器具を選ばず使用可能な高圧放電ランプを提供することができる。
請求項10の発明によれば、調光時など定格電力の50〜100%の範囲における動作時に、色特性が安定した高圧放電ランプを提供することができる。
請求項11の発明によれば、電圧波形が100Hz〜1 kHzの矩形波で、かつ、安定器からの2次開放電圧が150〜400Vで点灯されることにより、点灯中のちらつきを抑制して立ち消えなどの不具合が回避できるとともに光束維持率の向上がはかれた高圧放電ランプを提供することができる。
請求項12の発明によれば、定格電力が10〜1000Wのランプにおいて、効率、相関色温度、平均演色評価数(演色性)や寿命などランプ電力に拘らず種々の発光特性が優れたバランスのとれた白色発光をなす高圧放電ランプを提供することができる。
また、請求項13の発明によれば、上記請求項1ないし12のいずれか一に記載の高圧放電ランプを備えているので、諸発光特性や電気特性に優れた照明器具などの照明装置を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の高圧放電ランプの第1の実施形態を示す概略正面図、図2は図1中の発光管部分を示す拡大断面正面図である。
図において、高圧放電ランプL1は、発光管1A、この発光管1Aを囲繞する中管3、この発光管1Aと中管3を支持するとともに給電をなす一対の給電部材4A,4Bを内部に収容した外管5およびこの外管5の端部に設けられた口金6を主体として構成されている。
発光管1Aは、略球状をなしている膨出部11の両端に連続的な曲面によって繋った小径筒状部12a,12bを連設した透光性セラミックスからなる放電容器1を備え、電極2A,2Bに接続したNbからなる線状の導入導体23a,23bが、小径筒状部12a,12bの先端内を貫通して配設されガラスシール剤13,13により気密に封止られた上下対称構造をしている。
上記各電極2A,2Bは、先端側を膨出部11に臨ませたタングステン線(棒)からなる電極軸21およびこの電極軸21の先端にタングステン線を巻装したコイル状部22から構成され、小径筒状部12a,12b内において電極軸21の基端とモリブデン細線を巻装してコイル状部25a,25bが形成された上記導入導体23a,23bの先端とを突合せ溶接などにより接続して保持されている。
なお、このとき小径筒状部12a,12b内を貫通する電極軸21と小径筒状部12a,12b内壁面との隙間は0.1mm以下となっていて、隙間が大きい場合は、電極軸21にモリブデンなどの細線からなるコイルを巻装して隙間を小さくしてもよく、このコイルの外側面が小径筒状部12a,12bの内面と接触していてもよい。また、上記電極軸21の先端のコイル状電極22は必須のものではなく、電極軸21の先端が電極作用を行うものであってもよい。
また、この発光管1Aの放電容器1内には、放電媒体としてアルゴンなどを含む始動および緩衝ガスならびに発光金属としての金属ハロゲン化物と水銀とが封入されている。
この金属ハロゲン化物は、よう化ナトリウムNaI、よう化タリウムTlI、よう化インジウムInIおよびよう化ツリウムTmI3 を、たとえば重量比(wt%)で30:15:5:50で形成したものからなる。
また、外管5は石英ガラスなどで形成された一端(図において上側)側が閉塞されたBT形をなし、他端(下部)側の開口部から上記発光管1Aを保持したマウントを入れ、この開口部をバーナで加熱しマウントのステム4sを溶着して閉塞した封止部が形成してある。また、外管5内は封止部形成後に排気管(図示しない。)を介し排気された真空雰囲気あるいは窒素N2 やアルゴンArなどが封入された希ガス雰囲気にしてある。
一対の給電部材4A,4Bは、上記マウントのステム4Sに気密封着された封着線から延出した内部リード線41a,41bの一端側に接続され外管5内に延在するモリブデン線などからなる給電線42a,42b部分と、他端側に接続され外管5外に延在するモリブデン線などからなる外部リード(図示しない。)部分と、この一方の給電線42aに設けられた上記発光管1Aや中管3の支持部材43a,43bとで構成されている。
上記一方の給電線42aは略V字形に形成した先端側が離間して並行するよう折曲され、延伸したその先端部がBT形をなす外管5の頂部内壁と弾性的に当接するよう配設されている。また、この並行する給電線42aの中間部には金属板やセラミックス板などを円盤状や帯状などに成形した、ここでは円盤状の支持部材43a,43bが間隔を隔て直接に溶接などの手段で接続したり、固定部材44,…を介し取り着けられ、給電線42a、42a間を強固に保持した構成をなしている。
そして、発光管1Aは放電容器1の小径筒状部12a,12bが、離間した円盤状の支持部材43a,43bの中央に形成した透孔内に挿入して支持されるとともに支持部材43a,43b間に中管3がこの発光管1Aを囲繞した状態で固定部材44,…などを介し配設固定されている。
また、一方の給電線42aに接続した支持部材43aと導入導体23aとが導電線45を介し接続してあり、また、略L字形に折曲げ延伸した他方の給電線42bは先端部に接続した導電線46を介し導入導体23bと接続してある。
したがって、この給電部材4A,4Bの外管5内に延在する給電線42a,42b部分は、発光管1A両端の導入導体23a,23bと電気的に接続して給電を行うとともに発光管1Aを管軸に沿って配設保持している。
そして、この外管5の封止部には、品種や用途に応じて口金6が被冠して設けられるとともに口金6の端子部に外部リード線を接続して放電ランプL1が完成される。
この放電ランプL1は、口金6部がソケットに装着され、図示しない100Hz〜1kHzの矩形波点灯回路装置から通電されると、口金6、給電部材4A,4Bを介し発光管1Aの導入導体23a,23bを経て電極2A,2Bに電圧が印加され先端の電極コイル22,22間で放電を生起し、安定した点灯が行える。
そして、このメタルハライドランプL1は、封入した金属ハロゲン化物がNaI、TlI、InIおよびTmI3 であって、NaIは主として赤色領域に、TlIは主として緑色領域に、InIは主として青色領域に、TmI3 は主として青緑色領域に放射スペクトルを有し、発光効率が90〜130lm/W、相関色温度が3500〜5000K、平均演色評価数(Ra)が75〜90と種々の発光特性において優れた値を示す高い品質のランプL1である。
なお、本発明者が確認したところ、上記発光金属のうちTmI3 に対するInIの重量比率InI/TmI3 を0〜0.15と規制することにより、発光効率を著しく低下させることなく、演色性を高め、かつ、白色の放射光を発する高圧放電ランプL1を提供できることが分った。
また、上記TmI3 に対するInIの重量比率InI/TmI3 を規制するとともに、TlI3 に対するInIの重量比率InI/TlI3 を0.05〜0.5とすることによって、色度座標における黒体放射座標の線(Brack Body Line)に極めて近い座標に位置する赤、緑、青色のバランスのとれた優れた白色光を放射する高圧放電ランプL1を提供できることが分った。
なお、上記実施の形態ではハロゲン化物のハロゲン元素としてよう素Iを用いたが、本発明は臭素Br、塩素Clやフツ素Fなど他のハロゲン元素であってもよく、また、複数種のハロゲン元素からなるものであっても差支えない。
図1および図2に示すものと同構成の高圧放電ランプであって、以下の仕様で試作を行い諸特性について測定した。
実施例1のランプは定格電力が250W、発光管1Aは透光性アルミナセラミックス製で、全長約60mm、膨出部11の外径約16.6mm、内径約14.0mmで内容積約1.5cc、小径筒状部12a,12bの外径約3.0mm、内径約1.2mmで、この発光管1Aの容器1は中管6でほぼ全体を囲ってある。
電極2A,2Bは、タングステンからなる電極軸21の外径約0.6mm、長さ約8mmで、電極コイル状部22は外径約0.2mmのタングステン線を密ピッチで約3ターン巻回され、両者の電極間距離約15mmである。
導入導体23a,23bは、Nbから形成され、外径が約0.9mm、長さが約12mm、モリブデン線を巻回したコイル状部25a,25bは、外径が約0.9mm、長さが約12mmである。
放電媒体としては、始動および緩衝ガスとしてアルゴンを約53kPaと、NaI−TlI−InI−TmI3 のハロゲン化物が約30wt%−約15wt%−約5wt%−約50wt%の割合で約10mgおよび水銀Hg約13mgとが封入してある。
また、外管5は硬質ガラスからなるBT形で、最大部外径約116mm、最大部内径約114mm(肉厚約1.0mm)、全長約250mmである。
また、上記放電ランプL1(実施例1)と同じ金属ハロゲン化物で、その組成比率を変えて封入した本発明に関わるランプ(実施例2〜4)および本発明ランプの比較用として、金属ハロゲン化物を除く他の構成を同じとした放電ランプを試作した。
実施例2は、NaI−TlI−InI−TmI3 のハロゲン化物が約55wt%−約10wt%−約2wt%−約23wt%の割合で封入したランプ、また、実施例3は、NaI−TlI−InI−TmI3 のハロゲン化物が約41wt%−約13wt%−約5wt%−約41wt%の割合で封入したランプ、また、実施例4は、NaI−TlI−InI−TmI3 のハロゲン化物が約22wt%−約20wt%−約6wt%−約52wt%の割合で封入したランプである。
また、比較例1は上述した特許文献1に係わると同様な金属ハロゲン化物で、よう化ナトリウムNaI−よう化タリウムTlI−よう化ディスプロシウムDyI3 を約30wt%−約15wt%−約55wt%の割合で封入したランプ、また、比較例2は公知のランプが用いているハロゲン化物で、よう化ナトリウムNaI−よう化タリウムTlI−よう化セリウムCeIを約30wt%−約15wt%−約55wt%の割合で封入したランプ、また、比較例3はよう化ナトリウムNaI−よう化タリウムTlI−よう化ツリウムTmI3 を約30wt%−約15wt%−約55wt%の割合で封入したランプである。
表1は本発明に関わる実施例1〜4の、表2は従来に関わる比較例1〜3の、各試料につき各10本のランプの平均値で、100時間点灯後の諸特性である。
表1から明らかなように、本発明のランプは、効率、相関色温度、色偏差d.u.v値および平均演色評価数(演色性:Ra)などの発光特性が目標とする範囲内に入り、一般照明用として好適な白色光を放射できる。
なお、本発明者等の試験によると封入するNa−Tl−In−Tmの金属ハロゲン化物の比率(重量%)は、品種や要求される発光特性などに応じて変わるがナトリウムNaのハロゲン化物が10〜80wt%程度好ましくは20〜70wt%、タリウムTlのハロゲン化物が5〜30wt%程度好ましくは7〜25wt%、インジウムInのハロゲン化物が0.1〜15wt%程度好ましくは0.5〜10wt%、ツリウムTmのハロゲン化物が20〜80wt%程度好ましくは40〜70wt%の範囲であった。
これに対し、表2の比較例1のDyI3 を封入したランプは、効率および平均演色評価数(演色性:Ra)の値は高いが、この平均演色評価数(演色性:Ra)が90を超える高過ぎであると90lm/W未満の発光効率となってしまうなどの不具合がある。
また、比較例2のCeI3 を封入したランプは、約120lm/Wの高効率となるが、平均演色評価数(演色性:Ra)が約70と低いとともに色偏差 d.u.v値が高くなることから、著しい緑色発光となり一般照明用ランプとしては不向きである。
また、比較例3のTmI3 を封入したランプは、効率は向上し、比較例3に比較して、演色性は高くなるが緑色の発光となるために色偏差 d.u.v値が黒体放射レベルが大きく外れてしまう。そこで、比較例3のランプにInIを添加した実施例2のランプでは、発光色が緑色となることなく色偏差 d.u.v値が改善されたランプとなった。
なお、実施例1〜4の定格電力250Wに比べて、電力が約1.4倍の定格電力400Wの同種放電ランプを試作した。このランプの諸特性を実施例5としてある。また、表中には特に寿命についてのデータが記述されていないが、実施例も比較例もほぼ同等であったので省略してある。
実施例1〜4と同種の定格電力が400Wのランプについて試作を行い諸特性について測定した。
実施例5の発光管1Aは透光性アルミナセラミックス製で、全長約80mm、膨出部11の外径約22mm、内径約20mmで内容積約4.0cc、小径筒状部12a,12bの外径約2.0mm、内径約1.6mmである。
電極2A,2Bは、タングステンからなる電極軸21の外径約1.0mm、長さ約8mmで、電極コイル状部22は外径約0.3mmのタングステン線を密ピッチで約3ターン巻回され、両者の電極間距離約20mmである。
導入導体23a,23bは、Nbから形成され、外径が約1.5mm、長さが約15mm、モリブデン線を巻回したコイル状部25a,25bは、外径が約1.4mm、長さが約18mmである。
放電媒体としては、始動およびバッファガスとしてアルゴンを約53kPaと、NaI−TlI−InI−TmI3 のハロゲン化物が約30wt%−約15wt%−約5wt%−約50wt%の割合で約15mgおよび水銀Hg約35mgとが封入してある。
また、外管5は石英ガラスからなるBT形で、最大部外径約116mm、最大部内径約114mm(肉厚約1.0mm)、全長約300mmで、この発光管1Aの容器1は中管6でほぼ全体を囲ってある。
そして、この実施例5のランプにおいても表3に示すように、効率、相関色温度、色偏差 d.u.v値および平均演色評価数(演色性:Ra)などの発光特性が目標とする範囲内に入り、一般照明用として好適な白色光を放射できた。(各資料各10本の平均値)
また、本発明は、封入される金属ハロゲン化物がNaI、TlI、InIおよびTmI3 であって、上記実施例1に対しInIが添加され上記物質のうちTmI3 に対するInIの重量比率InI/TmI3 を5wt%/50wt%=0.1とするとともにTlIに対するInIの重量比率InI/TlIを5wt%/15wt%=0.33とすることによって、ランプの点灯方向による相関色温度の変動を400K以下と抑制できた。
すなわち、上記実施例で示す効果のほか、放電ランプは点灯方向が垂直状態と水平状態とでは最冷部温度が変わり、ハロゲン化物の蒸気圧が変化して効率や色温度などの発光特性や電気特性も変わるが、本発明ではランプの色温度変動を抑制することができた。
図3のグラフは、上記実施例1において発光金属(ハロゲン化物)を除き同一構成とした放電ランプであって、NaI、TlI、InIおよびTmI3 の組成比(NaI:TlI:InI:TmI3 =30:15:50:5wt%)を変えずに、CeI3 またはCsIを総重量に対して0〜30wt%の量を封入したときの発光効率の変化を示し、横軸は総重量に対するNaI、TlI、InIおよびTmI3 の重量比率(wt%)を、縦軸は発光効率(lm/W)を対比させてある。
これら各仕様のランプは、封入ハロゲン化物の量に応じて水銀量などを調整して、電気特性などのランプ特性に影響を及ぼすパラメータを極力揃えるようにした。(各資料各5本の点灯初期の平均値と上下限値である。)
この図から明らかなように、希土類金属ハロゲン化物としてCeI3 を加えた場合、その添加量が多いほど発光効率が向上できることが分かった。しかし、後述するように添加量が多くなると点灯初期および点灯経過における色偏差 d.u.v値が+0.01以上となって緑色の発光が強い、所望の光色が得られないという不具合がある。また、希土類金属のハロゲン化物としてCeに代えてPrを加えた場合も同様な作用効果を奏する。
また、CsIを加えた場合、その添加量が20wt%以下であれば所望の発光効率を得られることが分かった。しかし、この添加量が10wt%を超えると、後述するように、寿命中の色特性の低下が著しく、これらを考慮するとNaI、TlI、InIおよびTmI3 の総重量が90wt%以上であるのがよかった。
また、図4のグラフは、上述した図3に説明したNaI、TlI、InIおよびTmI3 の組成比(NaI:TlI:InI:TmI3 =30:15:50:5wt%)を変えずに、CeI3 またはCsIを総重量に対して0〜30wt%の量を封入した放電ランプの点灯初期と点灯500時間後の色温度の変化を示し、横軸は総重量に対するNaI、TlI、InIおよびTmI3 の重量比率(wt%)を、縦軸は色温度Kを対比させてある。なお、図中、白抜き印は点灯初期値、黒印は点灯500時間後値である。
これら各仕様のランプは、封入ハロゲン化物の量に応じて水銀量などを調整して、電気特性などのランプ特性に影響を及ぼすパラメータを極力揃えるようにした。(各資料各5本の平均値である。)
図4から明らかなように、CeI3 またはCsIが20wt%未満加えられた場合、点灯初期において色温度3500〜5000Kの白色光を得られる。しかし、点灯500時間後において平均値的には所望の色温度となるが、ばらつきが大きくなって3500K未満の所望の色温度範囲から外れるランプが発生し好ましくない。
また、図5のグラフは、上述した図3に説明したNaI、TlI、InIおよびTmI3 の組成比(NaI:TlI:InI:TmI3 =30:15:50:5wt%)を変えずに、CeI3 を総重量に対して0〜30wt%の量を封入した放電ランプの点灯初期と点灯500時間後の色偏差の変化を示し、横軸は総重量に対するNaI、TlI、InIおよびTmI3 の重量比率(wt%)を、縦軸は色偏差 d.u.v値を対比させてある。
なお、色偏差 d.u.v値は、+0.01より大きくなると、緑色の発光が強くなり、本発明では d.u.v値の上限値を+0.01とした。なお、これら各仕様のランプは、封入ハロゲン化物の量に応じて水銀量などを調整して、電気特性などのランプ特性に影響を及ぼすパラメータを極力揃えるようにした。(各資料各5本の平均値である。)
図5から明らかなように、CeI3 を20wt%以上加えた場合、点灯初期においては d.u.v値が+0.01を超えないで所望の白色光が得られる。しかし、点灯500時間後において、CeI3 を10wt%以上封入したランプでは d.u.v値が+0.01を超えてしまい緑色の発光が強くなり、所望の白色光が得られないとともにアークが不安定になりちらつきなどの不具合が発生して、CeI3 の封入量は10wt%以下がよかった。
また、図6は上述した封入ハロゲン化物NaI、TlI、InI、TmI3 の総重量およびこれにCeI3 またはCsIを加えた総重量に対してTmI3 の比率を変えたときの発光効率(lm/W)の変化を示し、横軸はNaI、TlI、InI、TmI3 およびCeI3 またはCsIを加えた総重量に対するTmI3 の重量比率(wt%)を、縦軸は発光効率(lm/W)を対比させてある。
これら各仕様のランプは、封入ハロゲン化物の量に応じて水銀量などを調整して、電気特性などのランプ特性に影響を及ぼすパラメータを極力揃えるようにした。(各資料各5本の点灯初期の平均値である。)
封入ハロゲン化物はNaI、TlI、InIの組成比(wt%)が、石英ガラス製容器を用いる発光管で採用しているNaIが10〜80wt%、TlIが5〜50wt%、InIが1〜30wt%程度、すなわちたとえば60:30:10(wt%)のものおよびこれにCeI3 またはCsIを加えた総重量に対してTmI3 の量を変化させたものを用いた。
図6から明らかなように、NaI、TlI、InIの総重量に対しTmI3 を重量比率で20wt%以上にすることにより所望の発光効率が得られ、また、CeI3 またはCsIを加えた場合であっても同様な結果を得ることができた。
また、このTmI3 の添加比率を高くしても同様な結果が得られるが、寿命中に発光管容器とTmとの反応が激しくなり明るさが下がる光束維持率の大幅な低下を来し、TmI3 の最大重量比率は80wt%程度、この容器のエッチングや赤色、緑色、青色のRGBバランスなどを考慮すると20〜70wt%程度が好ましかった。
図7のグラフは上記実施例1の放電ランプL1における、TmI3 に対するInIの重量比率InI/TmI3 (横軸)と、効率lm/W(縦軸)とを対比させたもので、重量比率を0.15以下とすれば効率が所望の90lm/W以上のランプを得ることができる。
また、図8のグラフは上記実施例1の放電ランプL1における、TlIに対するInIの重量比率InI/TlI(横軸)と、効率lm/Wおよび平均演色評価数(演色性:Ra)(横軸)とを対比させたもので、比率が高くなると平均演色評価数(演色性:Ra)は増加するが効率lm/Wが低下するという相反する関係にある。そして、重量比率が0.05以下になると平均演色評価数(演色性:Ra)が80以下になるものもある。また、重量比率が0.5を超えると効率が90lm/W未満となる不具合がある。
また、表4は上記実施例1の放電ランプL1における、TmI
3 に対するInIの重量比率InI/TmI
3 を変化させた場合のランプの点灯姿勢によるランプ電圧(V)と相関色温度(K)とを測定したデータである。
この表4から明らかなように、InI/TmI3 の重量比率が0.2の場合は、垂直方向と水平方向では相関色温度差が532Kあり、その点灯方向によって明暗差があることが視感で分かった。
実施例5と同種の定格電力が400Wのランプについて試作を行い諸特性について測定した。
実施例6のランプの発光管1A、電極2A,2B、導入導体23a,23bおよび外管5の構造や寸法は上記実施例5と同じであるが、発光管1A内に封入した放電媒体としてのハロゲン化物が実施例1〜5とは異なっている。
すなわち、この実施例6のランプL1は、NaI−TlI−InI−TmI3 のハロゲン化物に、さらにCeまたはPrの少なくとも一種の、ここではPrI3 を含むハロゲン化物が封入されている。
このNaI−TlI−InI−TmI3 −PrI3 からなるハロゲン化物の重量割合は約29wt%−約10wt%−約2wt%−約40wt%−約19wt%の割合で約15mgが封入してある。
そして、この実施例6のランプにおいても表3に示すように、効率、相関色温度、色偏差 d.u.v値および平均演色評価数(演色性:Ra)などの発光特性が目標とする範囲内に入り、一般照明用として好適な白色光を放射できた。
この実施例6のランプは、NaI−TlI−InI−TmI3 のハロゲン化物に約19wt%のPrI3 を添加してあり、NaI−TlI−InI−TmI3 のみを封入したランプに比べて、さらに高い発光効率を得ることができた。
なお、ハロゲン化物は上記PrI3 に変えてCeI3 を添加してもあるいはPrI3 、CeI3 の両者を合わせて20重量%未満添加しても、上述したと同様な作用効果が得られた。
また、図9および図10は本発明の高圧放電ランプL2,L3の他の実施の形態を示す正面図で、図中上述した図1および図2に示す放電ランプL1と同一部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図9に示す高圧放電ランプL2は、ランプ定格電力が280〜440Wたとえば400Wで、図2に示す発光管1Aを収容する外管5がT(直管)形をなし、図1と同様に一端側の封止部(図示しない。)にマウントのステム4sが封止され、発光管1Aはこのステム4sに設けられた一対の給電部材4A,4Bの給電線42a,42bに接続支持されている。
さらに詳述すると上記外管5は、熱膨張係数が35×10-7/℃〜60×10-7/℃程度で、歪み点が500℃以下の硬質ガラスからなる最大外径が約65mm、全長が約250mmに形成され、内部に実施例2と同形の透光性セラミックス製の最大外径が約22mm、全長が約80mmの放電容器1を有する発光管1Aが収容されている。なお、発光管1Aを囲繞して設けられた中管3は必須のものではないが、設ける場合は発光管1Aの外面より2mm以上の間隙を隔て配設するのが好ましい。
本発明は、このように外管5形状が変わった構造の場合でも、諸発光特性は上記実施の形態のランプL1と同等で同様な作用効果を呈する。また、この実施例3のランプL2は所望の発光特性が得られる他、器具内点灯において外管5の表面温度を低下でき、ランプL2自体およびこのランプL2を収容する照明器具などのコンパクト化がはかれる利点がある。
また、この図9に示すようなT形の外管5を用いたランプL2の場合、外管5の最大外径DOと放電容器1の最大外径DIおよびランプ定格電力Wとの関係を下記式の範囲内にすることにより、ランプL2の点灯時に発光管1Aの温度を適温に保持して発光効率、相関色温度および平均演色評価数(Ra)の向上がはかれるともに放電容器1の破壊を防止することができる。
(DO−DI)/2W=0.05〜0.087
上式において、値が0.05未満であると、放電容器1と外管5との間隙が狭く接近状態にあるため外管5に過度の温度上昇を来し、外管5の破損や発光管1Aにリークを生じる虞がある。また、値が0.087を超えると、放電容器1と外管5との間隙が広くなるため発光管1Aに温度低下を来し、所望の発光特性が得られない虞がある。
また、図10に示す高圧放電ランプL3は、図2に示す発光管1Aを収容する外管5が石英ガラスからなるT(直管)形をなし、両端に発光管1Aから導出した導入導体23a,23bと接続したモリブデン箔52,52が気密封止された圧潰封止部51,51を備えた構造をなし、諸発光特性は上記実施の形態のランプL1と同様な作用効果を呈する。
図11は、たとえば上記高圧放電ランプL1が用いられた本発明に係わる照明装置8を示す一部断面正面図である。この照明装置8は天井91に埋め込み設置される埋込形照明装置で、天井91側に取り付けられる器具(装置)本体92を有し、この器具(装置)本体92内に設けられたソケット93に上記高圧放電ランプL1の口金6が装着される。また、この器具(装置)本体92内にはランプL1の放射光を下方に反射させる反射鏡94が配設され、この反射鏡94の開口側を覆ってガラスなどからなるカバー部材やレンズなどからなる制光体95が配設されている。
そして、上記高圧放電ランプL1は、器具(装置)本体92やあるいはこの本体92とは別置された安定器などを有する点灯装置と電気的に接続され、この点灯装置からの給電により点灯することができる。
なお、本発明は上記実施の形態に限らず、たとえば発光管は、透光性セラミックス材料で形成したものの他、浸蝕度の低いハロゲン化物が用いられ管壁負荷が小さい場合は石英ガラスからなるものであっても差支えない。
また、照明装置も上記実施の形態に限らず、他の構造や用途をなすものであってもよく、点灯方式も矩形波点灯回路装置を用いるものに限らず、チョークコイル式やトランス式などの磁気励起式の安定器を用いるものであってもよい。
L1,L2,L3:高圧放電ランプ(メタルハライドランプ)、 1A:発光管、 1:放電容器、 11:膨出部、 12a,12b:小径筒状部、 2A,2B:電極、 23a,23b:導入導体、 4A,4B:給電部材、 8:照明装置、 82:器具(装置)本体、