JP4333444B2 - 伸び特性、伸びフランジ特性、引張疲労特性および耐衝突特性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、引張強度(TS)が 780 MPa以上の高強度において、伸び特性、伸びフランジ特性、引張疲労特性および耐衝突特性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法に関するものである。
本鋼板は、例えば自動車用のフレームやアンダーボディー等のように、良好な成形性のみならず、引張疲労特性や耐衝突特性が必要とされる部品に適用して好適なものである。
上述したような用途には、TSが 780 MPa程度のいわゆるTS780MPa級鋼では成形が困難なため、従来はTSがせいぜい 590 MPa程度のいわゆるTS590MPa級鋼熱延板が使用されてきた。また、TS780MPa級鋼を使用する場合、当然、従来のTS590MPa級鋼よりも板厚が薄くされるため、部材としてみた場合に、これまでのTS780MPa級鋼では引張疲労特性の点に問題を残していた。
しかしながら、近年、自動車の耐衝突特性向上のために、自動車用鋼板の高強度化が推進され、引張疲労特性が必要とされる部位にも、TS780MPa級鋼の使用が検討され始めている。また、それらの部品は、従来、耐衝突特性が特に必要とされてはいなかったのであるが、近年はこれらの部品についても自動車の衝突時にキャビンの変形を防止するために、耐衝突特性が必要とされるようになった。さらに、成形性の面からは、これらの部品には、伸びおよび伸びフランジ特性が必要とされる。
伸びを向上させる手段としては、特許文献1に開示のような、残留オーステナイトを利用した技術が挙げられる。
しかしながら、残留オーステナイトは、伸び特性の改善には有効であるものの、伸びフランジ成形性に問題がある。すなわち、伸びフランジ性は、主相とその他の相(第2相)の間の硬度差が小さいほど良好なのであるが、残留オーステナイト鋼は第2相が硬質で主相であるフェライトとの硬度差が大きくなるため、伸びフランジを劣化させる。
一方、焼戻しマルテンサイトやベイナイト単相組織鋼は主相と第2相間の硬度差が小さいため、伸びフランジ成形性は良好であるが、伸び特性に劣るという問題がある。
従って、伸び特性と伸びフランジ特性を両立させるためには、主相と第2相の硬度差の小さい複合組織鋼とする必要がある。
特許文献2には、フェライトを析出強化して第2相のマルテンサイトとの硬度差を減少した複合組織鋼板に関する技術が開示されているが、この技術はTS:50 kgf/mm2(490 MPa)〜60 kgf/mm2(590MPa)程度の強度の鋼板を得ようとするものにすぎず、最近の要求には対応できない。また、TS:780 MPa程度の鋼板について開示されているものは、伸びは20%程度であり、この点もさらなる向上が必要である。
これらの問題点を解決するために、特許文献3では、TiとMoもしくはWをを含有する炭化物を析出させた析出強化フェライトに加えて、残留オーステナイト、ベイナイトの3相もしくはそれにマルテンサイトを加えた4相からなる鋼板についての技術が開示されている。この特許文献3の実施例によると、板厚:3.2mmで伸び:30%以上、伸びフランジ特性の指標である穴広げ率:65%以上を達成しているが、引張疲労特性については必ずしも十分とはいえなかった。
その他、特許文献4には、TS×伸び(El)≧246000 MPa・%かつ穴広げ率≧70%を達成する技術が開示されている 。
また、特許文献5には、フェライトおよび第2相の粒径を微細にし、さらに残留オーステナイトを利用することにより、伸びおよび伸びフランジ性をともに向上させる技術が開示されているが、この技術は、スラブ加熱温度が低温であるため、圧延荷重が大きく、ロールの磨耗が激しく、製造に従来よりも余分なコストがかかるという不利がある。
そして、これらの技術はいずれも、疲労特性の向上については何ら考慮が払われていない。
疲労特性を向上させるための技術としては、特許文献6に、表層および内層の組織分率をコントロールすることにより、伸びおよび疲労特性を向上させる技術が開示されている。しかしながら、この特許文献6では、伸びフランジ成形性の向上については何ら考慮が払われていない。
次に、耐衝突特性の観点から見ると、乗客の生存空間を確保するために自動車のキャビンの変形を抑制することが要求される部材は、衝突エネルギーを吸収するための部材と比べると、同じ衛突時間でも変形量が小さいために到達ひずみ速度が小さく、10/s程度での吸収エネルギーが重要となる。
耐衝突特性を向上させる手段としては、特許文献7に、残留オーステナイトとマルテンサイトとアシキュラーフェライトからなる組織の鋼に関する技術が開示されている。この技術では、耐衝突特性は、ひずみ速度:2000/sでの動的n値を向上させることにより、鋼材のエネルギー吸収量を増加させることが検討されている。このひずみ速度:2000/sでの吸収エネルギーは、部材自身が変形することにより自動車の衝突時の衝突エネルギーを吸収するために必要な特性である。衝突エネルギー吸収用部材は、短時間に大変形するため、変形ひずみ速度が102/s, 103/sに達する。そのため、102/s,103/sでの吸収エネルギーや静動比を向上させる必要があった。しかしながら、自動車の耐衝撃性向上のためには、乗客の生存空間を確保するために部品を変形させずにキャビンを保護することも重要である。このような箇所に使用される部材は、上述したとおり、衝突エネルギー吸収部材と比較して同じ衝突時間でも変形量が小さいために到達ひずみ速度が小さく、10/s程度での吸収エネルギーが重要なのであるが、特許文献7では、ひずみ速度が10/s程度における耐衝突特性の向上策については何ら言及されていない。
特開平7−62485号公報 特開平9−263885号公報 特開2003−321738号公報 特開平11−189842号公報 特開2001−220648号公報 特開平11−241141号公報 特開平11−189842号公報
本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、TSが 780 MPa以上の高強度鋼において、伸び特性、伸びフランジ特性および引張疲労特性を向上させ、さらに自動車のキャビンの変形を阻止するためにひずみ速度が10/sでの耐衝突特性に向上させた高強度熱延鋼板を、その有利な製造方法と共に提案することを目的とする。
本発明における目標特性(板厚:2.0mmで)は次のとおりである。
・引張強度(TS)≧ 780 MPa
・伸び特性:伸び(El)≧ 27 %
・伸びフランジ特性:穴広げ率(λ)≧ 60 %
・引張疲労特性:引張疲労の耐久比〔疲労限(FL)とTSの比(FL/TS)〕≧0.75
・耐衝突特性:ひずみ速度:10/sでの真ひずみ 0.1までの吸収エネルギー≧ 80 MJ/m3
さて、発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、TiとMoの複合添加鋼において、鋼組織を制御すると共に、フェライト中にTi,Mo,Cからなる析出物を析出させ、その粒径および分散状態を厳密に制御することにより、伸び特性、伸びフランジ特性および引張疲労特性が格段に向上し、さらに良好な耐衝突特性、具体的にはひずみ速度:10/sでの真ひずみ0.1までの吸収エネルギーが80 MJ/m3以上の高特性が得られることの知見を得た。
また、かかる組織を形成するためには、仕上圧延後に、急冷→空冷一急冷からなる制御冷却を行い、かつスラブ加熱温度に応じて空冷開始温度を制御すること、さらにはコイルに巻取った後の冷却速度を制御することが、重要であることを見出した。
これはおそらく、スラブ加熱温度により、スラブ中に存在するTiを含む炭化物の溶解量が変化し、その結果、仕上圧延後の冷却中(特に空冷中)にフェライト中に析出する析出物のサイズや分布状態が大きく影響を受けるためと考えられる。また、コイル巻取り後の冷却速度は、残留オーステナイトに加えてマルテンサイトを生成させるために必要であるものと考えられる。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
(1)質量%で、
C:0.08%超、0.2%以下、
Si:0.3%以上、2.0%以下、
Mn:0.3%以上、2.0%以下、
P:0.06%以下、
S:0.01%以下、
Al:0.05%以下、
Ti:0.03%以上、0.2%以下および
Mo:0.03%以上、0.5%以下
を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、組織全体に対する体積占有率で、フェライト:40%以上、93%以下、残留オーステナイト:4%以上、15%以下、マルテンサイト:3%以上、12%以下、残部:ベイナイトの鋼組織になり、フェライト中にTi,Mo,Cからなる析出物を含み、かかる析出物の平均直径が20nm以下、析出物間の平均間隔が60nm以下であることを特徴とする伸び特性、伸びフランジ特性、引張疲労特性および耐衝突特性に優れた高強度熱延鋼板。
(2)質量%で、
C:0.08%超、0.2%以下、
Si:0.3%以上、2.0%以下、
Mn:0.3%以上、2.0%以下、
P:0.06%以下、
S:0.01%以下、
Al:0.05%以下、
Ti:0.03%以上、0.2%以下および
Mo:0.03%以上、0.5%以下
含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になるスラブを、1150℃超の温度に加熱し、仕上温度がAr3点以上、(Ar3点+100℃)以下の条件で仕上圧延を終了した後、Ar3点未満でかつ(スラブ加熱温度/1.9+80)℃以上、(スラブ加熱温度/1.5+20)℃以下の温度まで平均冷却速度:20℃/s以上で冷却し、ついで3〜15秒間の空冷後、300℃以上、500℃以下まで20℃/s以上の平均冷却速度で冷却したのち、巻取り、ついで200℃まで平均冷却速度:20℃/hr以上の速度で冷却することを特徴とする伸び特性、伸びフランジ特性、引張疲労特性および耐衝突特性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
本発明に従い、Ti,Mo複合添加鋼において、鋼組織をフェライト+残留オーステナイト+マルテンサイト(+ベイナイト)とし、かつフェライト中にTi, Mo, Cを含む析出物を微細に分散させることにより、TSが 780 MPa以上の高強度鋼において、優れた伸び特性、伸びフランジ特性、引張疲労特性および耐衝突特性を得ることができ、その結果、自動車用部品の板厚低減および自動車の衝突安全性向上が可能となり、自動車車体の高性能化に大きく貢献する。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、鋼板および鋼スラブの成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.08%超、0.2%以下
Cは、析出物をフェライト中に析出させつつ、さらに適量の残留オーステナイトおよびマルテンサイトを確保するために必要な元素であり、そのためには0.08%超の含有が必要である。しかしながら、含有量が0.2%を超えると溶接性が劣化するため、上限を0.2%とした。好ましくは0.10〜0.16%の範囲である。
Si:0.3%以上、2.0%以下
Siは、伸びおよび穴広げ率を向上させ、さらに残留オーステナイトを生成させるために有効な元素である。しかしながら、含有量が0.3%未満では所定量の残留オーステナイトが得られず、一方2.0%を超えて多量に含有させると表面性状が著しく劣化し、耐食性も低下するため、Si量は0.3%以上、2.0%以下とする。好ましくは0.5〜1.5%の範囲である 。
Mn:0.3%以上、2.0%以下
Mnは、強度上昇のために添加する。しかしながら、含有量が0.3%に満たないとその添加効果に乏しく、一方含有量が2.0%を超える過剰な添加は溶接性を著しく低下させるため、Mn量は0.3%以上、2.0%以下とする。好ましくは0.5〜1.5%の範囲である。
P:0.06%以下
Pは、旧オーステナイト粒界に偏析して低温靭性を劣化させるだけでなく、鋼中に偏析して鋼板の異方性を大きくし加工性を低下させので、極力低減する方が好ましいが、0.06%までは許容される。好ましくは0.04%以下とする。
S:0.01%以下
Sが旧オーステナイト粒界に偏析したり、またはMnSが多量に生成した場合には、低温靭性が低下し、寒冷地で使用し難くなるため、その混入は極力低減することが好ましいが、0.01%までは許容される。好ましくは0.004%以下である。
Al:0.05%以下
Alは、鋼の脱酸剤として添加され、鋼の清浄度を向上させるのに有効な元素である。この効果を得るためには0.001%以上含有させることが好ましいが、0.05%を超えると介在物が多量に発生し、鋼板の疵の原因になるので、Alの上限は0.05%とする。
Ti:0.03%以上、0.2%以下
Tiは、フェライトを析出強化する上で非常に重要な元素である。TS:780 MPa以上を達成するためには、0.03%以上のTiを含有させることが必要であり、含有させる量が多いほど析出物が増加し強度は上昇する。しかしながら、0.2%を超えて多量に含有してもその効果が飽和するため、上限を0.2%とした。好ましくは0.05〜0.15%の範囲である。
Mo:0.03%以上、0.5%以下
Moは、炭化物の析出に大きく影響する。Moが含有されていない場合、強度上昇量が少ない。TS≧780 MPaを達成するためには0.03%以上のMo量が必要であり、Mo含有量が多いほど析出物が増加し強度は上昇する。しかしながら、0.5%を超えて多量に含有させてもその効果が飽和するため、上限を0.5%とした。好ましくは0.05〜0.3%の範囲である。
次に、鋼組織の限定理由について説明する。
フェライト:40%以上、93%以下
組織全体に対する体積占有率で、フェライトが40%未満の場合、硬質な第2相が過多となり、伸びフランジ特性が低下する。一方、93%を超えた場合には、残留オーステナイトおよびマルテンサイトが少なすぎて伸び特性や耐衝突特性が向上しない。より好適な範囲は60%以上、90%以下である。
残留オーステナイト:4%以上、15%以下
組織全体に対する体積占有率で、残留オーステナイトが4%未満では、伸び特性が低下し、一方15%を超えると伸びフランジ特性が劣化する。より好適な範囲は5%以上、12%未満である。
マルテンサイト:3%以上、12%以下
組織全体に対する体積占有率で、マルテンサイトが3%未満では、耐衝突特性が向上せず、一方12%を超えると伸びフランジ性が劣化する。より好適な範囲は5%以上、10%以下である。
鋼組織の残部は、実質的にベイナイトとなる。なお、ここで、その他パーライト等が混入する場合があるが、これらの総量が3%未満であれば許容でき、鋼組織の残部は実質的にベーナイトであるといえる。
フェライト中に含まれるTi,Mo,Cからなる析出物の平均直径が20nm以下で、かつ析出物間の平均間隔が60nm以下
Ti,Mo,Cのいずれかを含まない炭化物では、所望の引張疲労限が達成できない。また、析出物の平均直径が20nm超、析出物間の平均間隔が60nm超では同じく所望の引張疲労限が得られず、また伸びフランジ性も低下する。なお、析出物の平均直径の好適範囲は10nm以下、平均間隔は40nm以下である。
本発明では、Ti,Mo,Cからなる析出物は、主にフェライト中に析出する。この理由は、フェライトにおけるCの固溶限がオーステナイトより小さく、過飽和のCはフェライト中に析出し易いためと考えられる。実際、鋼板から作製した薄膜試料を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察した結果、フェライト中に該析出物が認められた。
次に、本発明の製造工程について説明する。
なお、本発明の製造に用いられるスラブの組成は、前述した鋼板の組成と同様であるので、限定理由の説明は省略する。
本発明における溶製法は、通常の方法で良く、特に限定しない。転炉または電気炉で溶製し、取鍋精錬、脱ガス処理等を施し、連鋳法あるいは造塊法によってスラブとし、熱間圧延に供する。
スラブ加熱温度(SRT):1150℃超
TiおよびMoは、スラブ中ではほとんどが炭化物として存在している。熱間圧延後にフェライト中に目標どおりに析出させるためには、Ti系炭化物を一旦溶解させる必要がある。そのためには1150℃を超える温度(好ましくは1200℃以上)に加熱する必要がある。1150℃以下では、TiおよびCの固溶量が少なく、熱延後に析出するTi−Mo系炭化物が少なくなるため、析出物の平均間隔が広くなり、伸びフランジ性および疲労特性が劣化する。なお、1300℃を超えてスラブ加熱を行っても特性はほとんど変化せず、コストアップの要因となるので、スラブ加熱温度の上限は1300℃程度とするのが好適である。
仕上圧延温度:Ar3点以上、(Ar3点+100℃)以下
圧延温度がAr3点未満では、(フェライト+オーステナイト)2相域での圧延となり、この場合にはフェライト中のひずみが解放され難いため、伸び特性が劣化する。また、フェライト中に含まれる析出物が粗大化し、伸びフランジ特性および疲労特性が劣化する。一方、(Ar3点+100℃)を超える条件で圧延すると、組織が粗大化し、必要量の残留オーステナイトが得られなくなる。従って、仕上圧延温度は、Ar3点以上、(Ar3点+100℃)以下の範囲に限定した。
Ar3点未満でかつ(スラブ加熱温度/1.9+80)℃以上、(スラブ加熱温度/1.5+20)℃以下の温度まで平均冷却速度:20℃/s以上で冷却
所定の特性を発現させるためには、フェライト中に炭化物を絶妙に析出させる必要があり、そのためには、仕上圧延後の冷却速度および空冷温度域を上記範囲にコントロールすることが重要である。
仕上圧延後の平均冷却速度が20℃/sに満たないと、析出物が粗大化し伸びフランジ特性および引張疲労特性が劣化する。
また、この冷却の停止温度域すなわち空冷の温度域も重要で、かかる温度域をAr3点未満でかつ(スラブ加熱温度/1.9+80)℃以上、(スラブ加熱温度/1.5+20)℃以下とすることによって、フェライト中にTi,Mo,Cを含む析出物を、それらの平均直径が20nm以下で、かつそれらの平均間隔が60nm以下となる状態で、析出させることができる。
ここに、上記の冷却の停止温度域すなわち空冷の温度域をスラブ加熱温度との関係で定めた理由は、スラブ加熱温度が高いほど、スラブ中の析出物が多く溶解し、その溶解量に応じて空冷中における析出物の生成条件が変わるため、スラブ加熱温度によって空冷温度域を変化させる必要があると考えられるからである。
なお、上記冷却の停止温度域は、この考えに基づき種々の実験を行って求めたものである。また、上記冷却の停止温度域をAr3点未満としたのは、フェライト中に炭化物を析出する必要があるためである。
図1に、スラブ加熱温度および冷却停止温度が、フェライト中に析出するTi,Mo,Cを含む析出物の平均直径および平均間隔に及ぼす影響について調べた結果を整理して示す。なお、図中〇印は、析出物の平均直径が20nm以下でかつ平均間隔が60nm以下の場合を、また□印は、析出物の平均直径および平均間隔の少なくともいずれかが適正範囲を逸脱した場合を示す。またこの調査において、冷却停止温度は全てAr3点未満の温度とした。
同図から明らかなように、本発明で所望する析出物の析出状態が得られるのは、スラブ加熱温度が1150℃超で、かつ冷却停止温度域が(スラブ加熱温度/1.9+80)℃以上、(スラブ加熱温度/1.5+20)℃以下の範囲を満足する場合であることが分かる。
なお、上記の冷却過程における冷却手段としては、水冷を用いた制御冷却などが有利に適合する。
空冷時間:3〜15秒
空冷時間が、3秒未満では40%以上のフェライトが生成せず、伸び特性が劣化する。一方、15秒を超えると析出物が粗大化し、伸び特性および伸びフランジ特性が劣化するので、空冷時間は3〜15秒間とした。
300℃以上、500℃以下まで20℃/s以上の平均冷却速度で冷却し、巻取る。
上記の空冷後、巻取りまでの平均冷却速度が20℃/s未満では、パーライトが生成するため、特性が劣化する。巻取り温度が、500℃超または300℃未満では所定量の残留オーステナイトが得られない。好ましい温度域は350℃以上、450℃以下である。
巻取り後、200℃まで平均冷却速度:20℃/hr以上
巻取り後の平均冷却速度が20℃/hr以上未満では所定量のマルテンサイトが生成せず、耐衝突特性の向上が望めない。好適範囲は60℃/hr以上である。
なお、巻取り後の冷却は、例えばミスト雰囲気等で強制冷却を行えばよい。
表1に示す成分組成になる鋼を転炉で溶製し、連続鋳造によりスラブとしたのち、該スラブを、表2に示す条件で熱間圧延→冷却→巻取り→冷却を行って、板厚:2.0mmの熱延鋼板とした。
なお、表2中のAr3は、Ar3=910−203×√C+44.7×Si+31.5×Mo(ここで、C,Si,Moは各元素の含有量(質量%))により求めた値である。
かくして得られた熱延鋼板のミクロ組織、引張特性、伸びフランジ特性、引張疲労特性および耐衝突特性について調べた結果を、表3に示す。
鋼組織および材料特性の測定方法は次のとおりである。
(1)引張特性は、圧延方向に垂直な方向を長手方向として採取したJIS5号試験片を用いてJIS Z 2241に準拠した方法で行った。
(2) 穴広げ試験は、日本鉄鋼連盟規格JFS-T1001-1996に準拠じて試験を行った。
(3) 残留オーステナイト量は、熱延板を板厚1/4位置まで研削した後、化学研磨によりさらに0.1mm研磨した面について、X線回折装置でMoのKα線を用いて、fcc鉄の(200),(220),(311)面とbcc鉄の(200),(211),(220)面の積分強度を測定し、これらから 残留オーステナイトの分率を求め、残留オーステナイトの体積占有率とした。
(4) フェライト量は、3%ナイタール溶液で組織を現出し、画像処理によりフェライト部分の面積率を定量化し、これをフェライトの体積占有率とした。
(5) マルテンサイト量は、4%ピクリン酸アルコールと2%ピロ硫酸ナトリウムを1対1に混合した腐食液でマルテンサイトのみを白く現出させた組織写真を用い、画像処理により白い部分の面積率を定量化し、これをマルテンサイトの体積占有率とした。
(6) また、上記フェライトおよびマルテンサイトの組織観察時にフェライト、マルテンサイト以外の残余の組織の種類についても観察も行い、得られた熱延鋼板においてパーライト等の分率は3%未満であり、フェライト、マルテンサイト以外の残部は実質的に残留オーステナイトとベイナイトであることを確認した。
(7) 析出物観察は、透過型電子顕微鏡により20万倍以上でフェライト組織観察を行った。Ti,Mo等の組成は、TEMに装備されたエネルギー分散型X線分光装置(EDX)による分析から決定した。析出物の直径は画像処理により、析出物を円とみなしたときの平均直径を求めた。析出物間隔は電子顕微鏡写真上の300nm四方の領域に存在する析出物の個数を数え、試料の膜厚を測定して析出物をカウントした試料の体積を計算し、析出物が均一分散したときの間隔を計算により求め、析出物平均間隔とした。
(8) 引張疲労試験は、応力比R0.05の条件で行い、繰り返し数107での疲労限(FL)を求め、耐久比(FL/TS)を求めた。なお、応力比Rとは、最小繰返し応力/最大繰返し応力で定義される値である。
(9) ひすみ速度:10/sでの引張試験には、鷺宮製作所製の検力台ブロック式材料試験機を用い、真ひずみ0.1までの吸収エネルギーを真応力−真ひずみ曲線から求めた。なお、引張の方向は圧延方向と垂直な方向とした。
Figure 0004333444
Figure 0004333444
Figure 0004333444
表3に示したとおり、発明例はいずれも、板厚:0.2mmで、TSが 780MPa以上、Elが27%以上、穴広げ率が60%以上、疲労試験における耐久比(FL/TS))が0.75以上という優れた特性が得られ、またひずみ速度:10/sでの真ひずみ 0.1までの吸収エネルギーも80 MJ/m3以上と良好であった。
スラブ加熱温度および冷却停止温度が、フェライト中に析出するTi、Mo、Cを含む析出物の平均直径および平均間隔に及ぼす影響を示したグラフである。

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C:0.08%超、0.2%以下、
    Si:0.3%以上、2.0%以下、
    Mn:0.3%以上、2.0%以下、
    P:0.06%以下、
    S:0.01%以下、
    Al:0.05%以下、
    Ti:0.03%以上、0.2%以下および
    Mo:0.03%以上、0.5%以下
    を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、組織全体に対する体積占有率で、フェライト:40%以上、93%以下、残留オーステナイト:4%以上、15%以下、マルテンサイト:3%以上、12%以下、残部:ベイナイトの鋼組織になり、フェライト中にTi,Mo,Cからなる析出物を含み、かかる析出物の平均直径が20nm以下、析出物間の平均間隔が60nm以下であることを特徴とする伸び特性、伸びフランジ特性、引張疲労特性および耐衝突特性に優れた高強度熱延鋼板。
  2. 質量%で、
    C:0.08%超、0.2%以下、
    Si:0.3%以上、2.0%以下、
    Mn:0.3%以上、2.0%以下、
    P:0.06%以下、
    S:0.01%以下、
    Al:0.05%以下、
    Ti:0.03%以上、0.2%以下および
    Mo:0.03%以上、0.5%以下
    含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になるスラブを、1150℃超の温度に加熱し、仕上温度がAr3点以上、(Ar3点+100℃)以下の条件で仕上圧延を終了した後、Ar3点未満でかつ(スラブ加熱温度/1.9+80)℃以上、(スラブ加熱温度/1.5+20)℃以下の温度まで平均冷却速度:20℃/s以上で冷却し、ついで3〜15秒間の空冷後、300℃以上、500℃以下まで20℃/s以上の平均冷却速度で冷却したのち、巻取り、ついで200℃まで平均冷却速度:20℃/hr以上の速度で冷却することを特徴とする伸び特性、伸びフランジ特性、引張疲労特性および耐衝突特性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
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