(前提事項)
本発明の各実施形態を説明するに当たっての前提事項について説明する。
通常、フォトマスクは縮小投影型の露光機で使用されるため、マスク上のパターン寸法を議論する場合には縮小倍率を考慮しなければならない。しかし、以下の各実施形態を説明する際には、混乱を避けるため、形成しようとする所望のパターン(例えばレジストパターン)と対応させてマスク上のパターン寸法を説明する場合、特に断らない限り縮小倍率で該寸法を換算した値を用いている。具体的には、M分の1縮小投影システムにおいて、幅M×100nmのマスクパターンによって幅100nmのレジストパターンを形成した場合にも、マスクパターン幅及びレジストパターン幅は共に100nmであると表現する。
また、本発明の各実施形態においては、特に断らない限り、M及びNAは露光機の縮小投影光学系の縮小倍率及び開口数をそれぞれ表し、λは露光光の波長を表すものとする。
また、本発明の各実施形態において、種々の光学特性に関する効果が得られるパターン寸法を規定する場合において当該パターン寸法の上限のみを記載している場合、当該パターン寸法の下限は0.02×λ/NA×Mであるとする。その理由は、単独で存在するパターンの寸法が0.02×λ/NA×M程度以下になると、当該パターンが開口部であっても又は遮光部であっても、当該パターンによって有意な光学特性的効果が得られることがないことは経験的上明らかなためである。例えば、パターン寸法が0.8×λ/NA×M以下で特定の効果が得られると記載している場合、当該特定の効果が得られるパターン寸法の範囲は0.02×λ/NA×M以上で且つ0.8×λ/NA×M以下であること意味することになる。
また、本発明の各実施形態において、パターン形成については、レジストの非感光領域がレジストパターンとなるポジ型レジストプロセスを想定して説明する。尚、ポジ型レジストプロセスに代えてネガ型レジストプロセスを用いる場合、ネガ型レジストプロセスにおいては、レジストの非感光領域が除去されるので、ポジ型レジストプロセスにおけるレジストパターンをスペースパターンと読み替えればよい。
また、本発明の各実施形態において、フォトマスクとしては透過型マスクを前提として説明する。尚、透過型マスクに代えて反射型マスクを前提とする場合、反射型マスクにおいては、透過型マスクの透光領域及び遮光領域がそれぞれ反射領域及び非反射領域となるので、透過型マスクの透過現象を反射現象と読み替えればよい。具体的は、透過型マスクの透過性基板を、露光光を反射する反射性膜が表面に形成された基板と読み替え、透光部又は透光領域を反射部又は反射領域と読み替え、遮光部を非反射部と読み替えればよい。さらに、透過型マスクにおける光を部分的に透過する領域を反射型マスクにおける光を部分的に反射する領域と読み替えればよく、透過率を反射率と読み替えればよい。また、半遮光部を半反射部と読み替えればよい。尚、反射型マスクにおいて、位相シフター部とは、反射部で反射される光に対して位相差を生じるように光を反射する領域である。
また、以下の各実施形態においてマスクパターンの透過率を議論する場合、マスクパターン各部の絶対的な透過率ではなく、透過性基板の露光光に対する透過率を基準(100%)とした相対透過率を用いる。従って、透過型マスクに代えて反射型マスクを対象として透過率を反射率に読み替える場合においても、マスクパターン各部の絶対的な反射率ではなく、反射性膜が表面に形成された基板の露光光に対する反射率を基準(100%)とした相対反射率を用いる。
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係るフォトマスクについて図面を参照しながら説明する。
図1(a)は所望のレジストパターン形状を表す図であり、図1(b)は第1の実施形態に係るフォトマスクの平面図である。尚、図1(b)において、透過性基板については斜視図的に示している。
図1(a)に示すように、所望のパターンはレジストパターン110である。
図1(b)に示すように、透過性基板100上の十分に広い領域に亘って透光部104(透過性基板100の露出領域)が設けられている。また、露光によりウェハ上に形成しようとするレジストパターン(所望のパターン)110と対応する位置の透過性基板100上には、遮光部101と半遮光部102とからなるマスクパターンが設けられている。本実施形態においては、当該マスクパターンの周縁部(外形領域の全体)に半遮光部102を設けると共に、当該マスクパターンの中心部に遮光部101を設ける。すなわち、遮光部101は半遮光部102に取り囲まれている。尚、本実施形態のマスクパターンは、比較的太い線幅のパターンの形成におけるMEFの低減を実現するためのものである。
尚、遮光部101とは実質的に光を透過させない部分である。但し、実用上、遮光部101が露光光に対して1%程度の透過率を有していてもよいが、その場合においても、遮光部101の効果は透過率が0%の遮光部と実質的に同等であるものとする。また、半遮光部102は部分的に光を透過させる部分である。別の表現をするならば、半遮光部102は、同時に存在する遮光部101よりも光を透過させ、且つ、同時に存在する透光部104よりも光を透過させない部分である。ここで、半遮光部102を透過する光と透光部104を透過する光とは同位相の関係(具体的には両者の位相差が(−30+360×n)度以上で且つ(30+360×n)度以下(但しnは整数)となる関係)にある。
図1(c)は、図1(b)の平面図に示すフォトマスクの断面構成の一例を示している。具体的には、図1(c)は、図1(b)に示される線分ABに対応する部分の断面構造を表している。図1(c)に示すように、透光部104は透過性基板100の露出領域である。透過性基板100としては例えば石英基板等を用いることができる。半遮光部102は、例えばMoよりなる金属薄膜107を半遮光膜として透過性基板100上に堆積することによって形成されている。金属薄膜107の構成材料としては、Moの他に例えばTa等を用いることができる。具体的には、厚さ10〜30nm程度の金属薄膜107によって、波長193nmの光に対して5〜50%程度の透過率を実現することができる。遮光部101は、金属薄膜107の上に例えばCr膜106を遮光膜としてさらに積層することによって形成されている。具体的には、厚さ50nm程度のCr膜106を単独で例えば石英基板である透過性基板100上に堆積した場合、波長193nmの光に対して1%程度の透過率を持つ遮光部101を実現でき、厚さ100nm程度のCr膜106を単独で例えば石英基板である透過性基板100上に堆積した場合、波長193nmの光に対して0.1%未満の透過率を持つ遮光部101を実現できる。よって、本実施形態のように、例えばMoよりなる金属薄膜107の上にCr膜106を積層した場合には、実質的に光を透過させない遮光部101を実現できる。
以下、上記のように構成された本実施形態のフォトマスクが、ウェハ上にパターンを形成する上で優れたパターン形成特性、特にMEF低減効果を発揮することをシミュレーション結果に基づいて説明する。まず、本実施形態に関するシミュレーション結果について説明する前に、MEFについてシミュレーション結果を用いて簡単に解説する。尚、以下の説明においては、特に断らない限り、シミュレーションにおける光学計算の露光条件は、露光波長λが193nm、開口数NAが0.85である。また、照明条件としては、外径の干渉度が0.8、内径の干渉度が0.53となる2/3輪帯照明を用いる。
図2(a)は「MEF」を説明するために用いるマスクパターンを示しており、図2(a)に示すマスクパターンは、例えばCr等の遮光部よりなる幅Lのライン状パターンである。
図2(b)のグラフは、図2(a)のマスクを露光したときにウェハ上に形成されるパターンの寸法をシミュレーションにより求めた結果を示しており、具体的には、マスクパターンの幅L(以下、マスク幅Lと称する)を変化させた場合におけるウェハ上に形成されるパターンの寸法(CD値)の変化をプロットしたものである。図2(b)に示すように、マスク幅Lが小さくなると、CD値が急激に減少し、マスク幅Lが100nmよりも小さくなると、パターンが形成されなくなる。
上記の現象をわかりやすくするために、下記(式1)に示すように、「MEF」を定義する。
MEF=ΔCD/ΔL ・・・ (式1)
(式1)に示すように、MEF(マスクエラーファクター)は、マスク幅Lの変化に対するCD値の変化の割合を表す。
図2(c)のグラフは、(式1)によるMEFの計算結果をそれぞれのマスク幅Lに対してプロットしたものである。図2(c)に示すように、マスク幅Lが小さくなるとCD値が急激に減少するという前述の現象は、MEFの増加によってもたらされる現象であることが分かる。
MEFが増加すると、マスク幅における誤差が強調され、所望のCD値とは異なるCD値となってしまうため、CD値を高精度に制御することが困難となる。極端な場合、細線パターンを形成しようとしても、パターンが形成されない状況に陥る。よって、CD値を高精度に制御するためにはMEFの値は小さいことが好ましいことが分かる。図2(c)に示すように、遮光部を単純にマスクパターンとして用いる場合、比較的太いパターンの形成においてMEFは1前後の値となり、所望の解像限界を実現できないほど大きな値となる。
次に、本実施形態のマスクパターンに関するシミュレーション結果について説明する。図3は当該シミュレーションに用いるマスクパターンを示しており、当該マスクパターンは幅Lのライン状パターンであり、幅Wの遮光部101と、遮光部101を囲む半遮光部102とから構成されている。また、半遮光部102における遮光部101の両側(幅方向の両側)に設けられた部分の幅はDである。すなわち、マスクパターンは幅Lについて、L=W+2×Dの関係が成り立つ。ここで、MEFは、ウェハ上に形成されるパターンの寸法(CD)がW及びDのそれぞれから受ける影響として、下記の(式2)及び(式3)のように定義される。
遮光部101の寸法Wの変化がCDに与える影響(Wに対するCD値の変化率)
→MEF(W)=ΔCD(W,D)/ΔW ・・・ (式2)
半遮光部102の寸法Dの変化がCDに与える影響(Dに対するCD値の変化率)
→MEF(D)=ΔCD(W,D)/ΔD ・・・ (式3)
図4のグラフは、図3のパターンにおいてWをW=200nmと固定した状態でDを0から200nmまで変化させたとき、つまりLを200nmから400nmまで変化させたときのCD値のシミュレーション結果を示している。図4においては、半遮光部102の露光光に対する透過率をそれぞれ10%、25%、40%としたときのCD値のシミュレーション結果を示している。また、図4においては、参考のため、Crのみによって形成された遮光パターンの幅Lを200nmから400nmまで変化させたときのCD値のシミュレーション結果を示している。図4に示すように、半遮光部102の透過率が高くなるに従って、CD値のLへの依存性、つまりCD値のDへの依存性(グラフの傾き)が低くなる。このことから、半遮光部102の透過率を高く設定する程、(式3)に示すMEF(D)を減少させることができ、1以下のMEFを実現できることがわかる。具体的には、半遮光部102の透過率を25%に設定すると、MEF(具体的にはMEF(D))を通常値(つまり図2(c)に示すCrマスクの幅が比較的大きい場合のMEFの値)のほぼ半分の0.50程度まで低減できる。また、半遮光部102の透過率を10%に設定した場合のMEF(具体的にはMEF(D))は0.79程度であり、半遮光部102の透過率を40%に設定した場合のMEF(具体的にはMEF(D))は0.25程度である。すなわち、半遮光部102の透過率が10%程度以上あれば、十分なMEF低減効果が得られる。
図4に示す結果から、本実施形態のフォトマスクを用いることにより、半遮光部102の幅Dを変化させることによって、1よりも小さいMEFでCD値を制御できることが分かる。
図5のグラフは、図3のパターンにおいてLをL=400nmと固定した状態でWを400から200nmまで変化させたときのCD値のシミュレーション結果を示している。ここで、L=400nmの状態でWを400nmから200nmに減少させることは、半遮光部102が占める領域を0nmから200nmに増加させることを意味している。図5においても、半遮光部102の露光光に対する透過率をそれぞれ10%、25%、40%としたときのCD値のシミュレーション結果を示している。また、図5においては、参考のため、Crのみによって形成された遮光パターンの幅Lを400nmから200nmまで変化させたときのCD値のシミュレーション結果を示している(但し図5の横軸にはWのみを示している)。図5に示すように、半遮光部102の透過率が低くなるに従って、CD値のWへの依存性、つまりグラフの傾きが低くなる。このことから、半遮光部102の透過率を低く設定する程、(式4)に示すMEF(W)を減少させることができ、1以下のMEFを実現できることがわかる。具体的には、半遮光部102の透過率を25%に設定すると、MEF(具体的にはMEF(W))を通常値(図2(c)に示すCrマスクの幅が比較的大きい場合のMEFの値)のほぼ半分の0.57程度まで低減できる。また、半遮光部102の透過率を10%に設定した場合のMEF(具体的にはMEF(W))は0.28程度であり、半遮光部102の透過率を40%に設定した場合のMEF(具体的にはMEF(W))は0.82程度である。すなわち、半遮光部102の透過率が40%程度以下あれば、十分なMEF低減効果が得られる。
図4及び図5に示す結果から、遮光部のみからなる従来のマスクパターンの外形領域に半遮光部を設けた本実施形態のフォトマスクによれば、遮光部の寸法及び半遮光部の寸法をそれぞれ変化させることにより、ウェハ上に形成されるパターンのCD値を制御することが可能となる。このとき、半遮光部の透過率を25%に設定すると、ウェハ上に形成されるパターンのCD値における遮光部の寸法及び半遮光部の寸法のそれぞれに対するMEFは共に通常値(図2(c)に示すCrマスクの幅が比較的大きい場合のMEFの値)の半分程度まで低減される。具体的には、本実施形態のフォトマスクにおける半遮光部の透過率としては25%程度が最適であり、25%の上下10%程度までの範囲(15%以上で且つ35%以下の範囲)が好ましい。また、図4及び図5に示すように、透過率25%の上下15%程度までの範囲(10%以上で且つ40%以下の範囲)でも十分なMEF低減効果が得られる。
以上に説明した本実施形態の効果をもう少し原理的に説明する。半遮光部の露光光に対する透過率が25%であるということは、半遮光部を透過する光のエネルギーが透光部を透過する光のエネルギーの25%であるという意味である。また、光のエネルギーは光の振幅の二乗に比例するため、半遮光部を透過する光のエネルギーが透光部を透過する光のエネルギーの25%であるということは、半遮光部を透過する光の振幅が透光部を透過する光の振幅の50%であるという意味である。半遮光部を透過する光の振幅が透光部を透過する光の振幅の50%であれば、半遮光部のマスク幅が変化することが光学像に与える影響は、当該変化分のマスク幅の遮光部が透光部に置き換わってしまうことが光学像に与える影響の半分となる。よって、露光の際に遮光部によって生じる遮光像が透光部によって生じる透光像に遷移する領域である遮光部の外形領域を本実施形態のように半遮光部に置き換えることによって、MEFを半減させることができると考えられる。
また、上記の原理より、露光光の振幅において20%以上の変化があれば、露光において当該変化によって有意な差を生じると考えられる。よって、半遮光部を用いることによって、遮光部を用いた場合と比べて有意な差を生じさせるためには、言い換えると、遮光部と比べて半遮光部によって十分有利なMEF低減効果を得るためには、半遮光部を透過する光の振幅が透光部を透過する光の振幅の20%以上であることが望ましい。また、半遮光部を用いることによって、透光部を用いた場合と比べて有意な差を生じさせるためには、半遮光部を透過する光の振幅が透光部を透過する光の振幅の80%以下であることが望ましい。よって、半遮光部の露光光に対する透過率としては、原理的には、4%以上で且つ64%以下であることが望ましい。
また、半遮光部は、遮光部により生じる遮光像と透光部により生じる透光像との中間的な光学像を生じるものであるから、本実施形態のマスクパターンの外形領域に設けられる半遮光部の幅は、透光部により生じる透光像と遮光部により生じる遮光像との間の遷移領域の幅(具体的にはλ/NA)以下であることが好ましい。但し、「前提事項」で説明したように、有意な光学的効果を得るためには、半遮光部の幅は0.02×λ/NA以上であることが望ましいことは言うまでもない。
また、図4及び図5に示すシミュレーション結果に基づいて、露光光に対する半遮光部の透過率が10%以上で且つ40%以下であれば十分なMEF低減効果が得られることを示してきたが、半遮光部の透過率はこの範囲に限定されるものではない。具体的には、前述のように、本発明の原理的には、4%以上で且つ64%以下であれば有意なMEF低減効果が得られる。
尚、本実施形態において、マスクパターンの外形領域に設けられる半遮光部102の輪郭と、マスクパターンの中心部に設けられる遮光部101の輪郭とが相似形であったが、本実施形態の効果を得るためには、前述のように、マスクパターンの外形領域(つまり遮光部101の周辺)にλ/NA以下の幅の半遮光部102を設けさえすればよい。よって、半遮光部102の輪郭と遮光部101の輪郭とが相似形でなくてもよい。
また、本実施形態において、マスクパターンの外形領域の全体に半遮光部102を設けたが、これに代えて、マスクパターンの外形領域のうち特にMEFを低減させたい部分のみに半遮光部を設けてもよい。特にMEFを低減させたい部分としては、例えば他のマスクパターンとの近接に起因してMEFが増加する領域がある。一般的には、回折現象が顕著になる寸法(つまり0.4×λ/NA)までマスクパターン同士が近接すると、MEFの増加が顕著になる。
ところで、通常のLSI用のマスクパターンに対しては近接効果補正を行う必要がある。近接効果補正を行う際には、所望のパターン寸法を実現するためにマスクパターンの変形を行う必要がある。このとき、本実施形態のように、マスクパターンの外形領域の全体に半遮光部を配置している場合には、言い換えると、遮光部の全周囲を半遮光部によって取り囲んでいる場合には、半遮光部の幅のみを調整することによって近接効果補正を実施できるようになる。これにより、遮光部パターン及び半遮光部パターンという2種類の異なる特性のパターンを同時に変形することなく近接効果補正を実施できるようになるので、近接効果補正を容易に行うことができる。すなわち、本実施形態において、近接効果補正の観点からは、マスクパターンの外形領域である遮光部の全周囲を半遮光部によって取り囲むことが望ましい。
また、本実施形態において、マスクパターンの中心部には遮光部101のみを設けたが、MEF低減効果を得るためには、マスクパターンの外形領域を構成する半遮光部の内部に遮光部が存在すれば良いのであって、例えばレジストを感光させない程度の微小な透光部や半遮光部がマスクパターンの中心部に存在していても良いことは言うまでもない。
(第1の実施形態の第1変形例)
以下、本発明の第1の実施形態の第1変形例に係るフォトマスクについて図面を参照しながら説明する。
図6(a)は所望のレジストパターン形状を表す図であり、図6(b)は第1の実施形態の第1変形例に係るフォトマスクの平面図である。尚、図6(b)において、透過性基板については斜視図的に示している。
図6(a)に示すように、露光によりウェハ上に形成しようとする所望のパターン120は細線パターンと太いパターンとからなる。また、図6(b)に示すように、透過性基板100上の十分に広い領域に透光部104が設けられていると共に、透過性基板100上における所望のパターン120と対応する位置には、矩形状の遮光部101と矩形状の位相シフター部103とからなるマスクパターンが設けられている。ここで、細線パターン(例えば露光波長以下の幅を持つ微細なパターン)の形成には、露光光に対して高い透過率を持つ位相シフター部103を用い、太いパターン(例えば露光波長よりも十分に大きい幅を持つパターン)の形成には、遮光部101を用いる。また、太いパターンの形成に、遮光部101に代えて、露光光に対して低い透過率を持つ位相シフター部を用いてもよい。
本変形例の特徴は、マスクパターンのうち遮光部101の周縁部(外形領域)のみに半遮光部102を設けることである。言い換えると、位相シフター部103(遮光部101との接続部分を除く)の周縁部(外形領域)には半遮光部102を設けない。
本変形例によると、遮光部101による太いパターンの形成におけるMEFの低減を実現することができる。
(第1の実施形態の第2変形例)
以下、本発明の第1の実施形態の第2変形例に係るフォトマスクについて図面を参照しながら説明する。
図7(a)は所望のレジストパターン形状を表す図であり、図7(b)は第1の実施形態の第2変形例に係るフォトマスクの平面図である。尚、図7(b)において、透過性基板については斜視図的に示している。
図7(a)に示すように、所望のパターンはレジストパターン110である。
図7(b)に示すように、透過性基板100上の十分に広い領域に亘って透光部104が形成されている。また、露光によりウェハ上に形成しようとするレジストパターン(所望のパターン)110と対応する位置の透過性基板100上には、遮光部101と半遮光部102とからなるマスクパターンが設けられている。本変形例においても、第1の実施形態と同様に、当該マスクパターンの周縁部(外形領域の全体)に半遮光部102を設ける。
本変形例が第1の実施形態と異なっている点は、マスクパターン外形領域に配置された半遮光部102の内側に配置されている遮光部101の内部にさらに半遮光部102が設けられていることである。
以上に説明した本変形例の構成によって、第1の実施形態と同様の効果、つまり比較的太い線幅のパターンの形成におけるMEFの低減を実現できるという効果に加えて、比較的太い線幅の複数のパターンを密集状態で形成する場合に焦点深度(DOF)を向上させることができるという効果も得ることができる。
図7(c)は、図7(b)の平面図に示すフォトマスクの断面構成の一例を示している。具体的には、図7(c)は、図7(b)に示される線分ABに対応する部分の断面構造を表している。図7(c)に示すように、透光部104は、透過性基板である例えば石英基板105の露出領域である。ここで、本変形例のフォトマスクの断面構成が、図1(c)に示す第1の実施形態のフォトマスクの断面構成と異なっている点は、遮光部101となるCr膜106の中心部を除去することによって当該箇所の金属薄膜(半遮光膜)107を露出させていることである。これにより、遮光部101の内部に半遮光部102を形成することが可能となる。
以下、上記のように構成された本変形例のフォトマスクが、ウェハ上にパターンを形成する上で第1の実施形態よりも優れたパターン形成特性を発揮することをシミュレーション結果に基づいて説明する。尚、本変形例において、マスクパターンにおける遮光部の外側の外形領域に半遮光部を設けることによりMEFの低減効果が得られることは第1の実施形態と同様であるので、以下、マスクパターンの外形領域に設けた半遮光部と同様の半遮光部を遮光部の内部にも設けることによって、本変形例の固有の効果であるDOFの向上効果が得られることについて説明する。また、マスクパターンの外形領域に設ける半遮光部と、遮光部の内部に設ける半遮光部とは必ずしも同一材料から構成される必要はないが、当該両半遮光部を同一材料から構成することによって、フォトマスクの断面構成を簡単にすることができる。これにより、MEFの低減効果とDOFの向上効果とを簡単な断面構成を有するマスクによって同時に実現することが可能になる。
図8は上記シミュレーションに用いるマスクパターンを表している。図8に示すように、透過性基板100上には、間隔Sで隣り合う2つのライン状パターンからそれぞれ構成されるマスクパターンA、B、Cが設けられている。また、透過性基板100上の十分に広い領域に亘って、透過性基板100の露出領域である透光部104が設けられている。
具体的には、マスクパターンAは、ライン状の遮光部101と、その両側に設けられた幅Dの半遮光部102とからなる。すなわち、マスクパターンAは、基本的に第1の実施形態のマスクパターンと同じ構成を有しているので、第1の実施形態で説明したように、幅Dはλ/NA以下であることが望ましい。
また、マスクパターンBはマスクパターンAの構成に加えて、ライン状の遮光部101の中心部に設けられた半遮光部102を有している。すなわち、マスクパターンBは、そ中心部と外形領域とにそれぞれ配置された半遮光部102の間に遮光部101が設けられ構成を有している。ここで、後述するように、DOF向上効果を得るためには、マスクパターンの中心部及び外形領域のそれぞれに配置された半遮光部の間に、λ/NA以下の幅Qを持つ遮光部101を設けることが望ましい。
また、マスクパターンCはマスクパターンBの構成に加えて、遮光部101の内部に設けた半遮光部102の中心部に設けられた遮光部101をさらに有している。マスクパターンCにおいても、DOF向上効果を得るためには、その外形領域に設けられた半遮光部102と、遮光部101の内部に設けられた半遮光部102(幅:R)とは、λ/NA以下の幅Qを持つ遮光部101を挟んで配置されていることが望ましい。
図9(a)及び(b)は、図8に示すマスクパターンA〜CにおいてS=50nm、D=30nm、Q=150nm、R=230nmとした場合における各種シミュレーションの結果を表す図である。ここで、当該シミュレーションにおいて半遮光部の露光光に対する透過率を10%に設定した。
図9(a)は、図8に示すマスクパターンA、B、Cにおける線分A1−A2、B1−B2、C1−C2と対応する結像位置での光強度分布をシミュレーションした結果を示している。図9(a)においては、各マスクパターンA〜Cのそれぞれについてシミュレーションした光強度分布曲線を示している。また、図9(a)においては、現像時にレジストを溶解させるのに必要なエネルギー値も合わせて示している。尚、図9(a)において、横軸の位置0は、各マスクパターンA〜Cを構成する一対のライン状パターンの間の中心位置であり、縦軸の光強度は、露光光の強度を1としたときの相対光強度である。図9(a)に示すように、マスクパターンA〜Cのいずれによっても、同じ寸法分のレジストを溶解させることができる。すなわち、マスクパターンA〜Cのいずれによっても、ウェハ上に同じ寸法のスペースパターンを形成することができる。
図9(b)は、図8に示すマスクパターンA、B、Cのそれぞれによってウェハ上にスペースパターンを形成する場合におけるフォーカス特性をシミュレーションした結果を表している。一般に、パターン形成においては、露光時にフォーカスが変動してもパターン寸法(CD)が変動しないことが望まれる。そこで、例えばベストフォーカスでパターン寸法が90nmとなる場合において、パターン寸法変動の許容範囲(寸法精度)が±10%であるとして、90nm±9nmの範囲内のパターン寸法を実現できるフォーカス変動の最大幅を焦点深度(DOF)と定義する。このDOFの値が大きい程、フォーカス変動に伴うパターン寸法変動が少なく、高い寸法精度でのパターン形成が可能になることを意味する。図9(b)には、マスクパターンAについて上述の定義によるDOFの範囲を示しているが、図9(b)に示すように、マスクパターンB及びCによるDOFはマスクパターンAと比べて向上している。その理由は、第1の実施形態のマスクパターン構成において遮光部の内部にも半遮光部を設けることにより、当該半遮光部(マスクパターン内部の半遮光部)を透過する光の回折現象によってDOF特性が向上するためである。
以上に説明したように、本変形例のように、遮光部を有するマスクパターンの外形領域に半遮光部を設ける構成に加えて、当該遮光部の内部にもさらに半遮光部を設けることにより、第1の実施形態と同様のMEFの低減効果に加えてDOFの向上効果も得られる。
尚、本変形例において、十分なDOFの向上効果を得るためには、遮光部の内部に設けられた半遮光部を透過する光の回折波が、マスクパターン外側の透光部を透過する光の回折波と互いに影響し合う必要があるため、マスクパターンの外形領域及び内部領域のそれぞれに設けられた半遮光部の間に配置される遮光部の寸法(幅)はλ/NA以下であることが望ましい。
また、この場合、半遮光部の露光光に対する透過率が20%程度になると、当該半遮光部を透過した光によってレジストが感光する可能性が高くなるので、レジストの感光を防止するためには、マージンを考慮して、半遮光部の露光光に対する透過率は15%以下であることが望ましい。このようにすると、遮光部の内部に設けた半遮光部の寸法がλ/NAよりも十分に大きい場合にも、当該半遮光部を透過する光がレジストを感光させることはない。よって、マスクパターン毎にレジストを感光させないためのマスク寸法の上限を考慮する必要がなくなるため、マスクレイアウトを構成する上での自由度が高くなるので、マスクレイアウトの構成を容易に行うことができる。極端なケースとしては、マスクパターン内部における外形領域から所定の寸法以上離れた領域を全て半遮光部に設定しても良い。すなわち、図7(b)や図8のパターンBのような構成を用いてもよい。
また、本変形例において、マスクパターンの外形領域に設けられる半遮光部の露光光に対する透過率の好ましい範囲(MEF低減効果を考慮した好ましい範囲)については第1の実施形態と同様である。また、マスクパターンの外形領域に設けられる半遮光部の幅の好ましい範囲(MEF低減効果を考慮した好ましい範囲)についても第1の実施形態と同様(具体的にはλ/NA以下)である。
また、本変形例においても、第1の実施形態と同様に、マスクパターンの外形領域に設けられる半遮光部102の輪郭と、その内側に設けられる遮光部101の輪郭とは相似形でなくてもよい。
また、本変形例においても、第1の実施形態と同様に、マスクパターンの外形領域の全体に半遮光部102を設けたが、これに代えて、マスクパターンの外形領域のうち特にMEFを低減させたい部分のみに半遮光部を設けてもよい。但し、近接効果補正の観点からは、マスクパターンの外形領域の全体に半遮光部を配置すれば、半遮光部の幅のみの調整によって近接効果補正を容易に行うことができる。
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係るフォトマスクについて図面を参照しながら説明する。
図10(a)は所望のレジストパターン形状を表す図であり、図10(b)は第2の実施形態に係るフォトマスクの平面図である。尚、図10(b)において、透過性基板については斜視図的に示している。
図10(a)に示すように、所望のパターンはレジストパターン130である。
図10(b)に示すように、透過性基板100上の十分に広い領域に亘って透光部104が設けられている。また、露光によりウェハ上に形成しようとするレジストパターン(所望のパターン)130と対応する位置の透過性基板100上には、遮光部101と半遮光部102と位相シフター部103とからなるマスクパターンが設けられている。ここで、本実施形態のマスクパターンは、第1の幅L1を持つ第1のパターン領域201と、第1の幅L1よりも大きい第2の幅L2を持つ第2のパターン領域202とから構成されている。第1のパターン領域201においては、外形領域に半遮光部102が配置されていると共に中心部に矩形状の位相シフター部103が配置されている。第2のパターン領域202においては、外形領域に半遮光部102が配置されていると共に中心部に矩形状の遮光部101が配置されている。尚、本実施形態のマスクパターンは、細線パターンから比較的太い線幅のパターンまでが混在する複数のパターンの形成において、任意の線幅のパターンの形成におけるMEFの低減を実現するためのものである。
尚、本実施形態における遮光部101及び半遮光部102のそれぞれの定義は第1の実施形態と同様である。また、位相シフター部103は光を透過させるが、位相シフター部103を透過する光と、透光部104を透過する光とは反対位相の関係(具体的には両者の位相差が(150+360×n)度以上で且つ(210+360×n)度以下(但しnは整数)となる関係)にある。
また、本実施形態を含め、後述する全ての実施形態では特に断らない限り、位相シフター部は露光光に対して透光部(透過性基板)と同程度の透過率を有するものとして取り扱うが、位相シフター部の透過率は特に限定されるものではない。但し、位相シフター部における反対位相で光を透過させるという特性を利用するためには、位相シフター部の透過率は少なくとも半遮光部の透過率よりも大きいことが好ましく、透過性基板の透過率と同等か又はその半分程度以上の透過率を有する材料によって半遮光部を構成することが好ましい。
図10(c)は、図10(b)の平面図に示すフォトマスクの断面構成の一例を示している。具体的には、図10(c)は、図10(b)に示される線分AB及び線分CDのそれぞれに対応する部分の断面構造を表している。図10(c)に示すように、透光部104は、透過性基板である例えば石英基板105の露出領域である。半遮光部102は、第1の実施形態と同様に、例えばMoよりなる金属薄膜107を半遮光膜として石英基板105上に堆積することによって形成されている。また、遮光部101も、第1の実施形態と同様に、金属薄膜(半遮光膜)107の上に例えばCr膜106を遮光膜としてさらに積層することによって形成されている。さらに、半遮光部102の内部に設けられる位相シフター部103は、石英基板105上に堆積された金属薄膜(半遮光膜)107に開口部を設け、且つ当該開口部に位置する石英基板105を透過光の位相が反転する分だけ掘り下げることによって形成されている。このように位相シフター部103を形成した場合には、透過性基板である石英基板105の掘り下げ部105aをそのまま位相シフター部103として利用できる。すなわち、透過性基板と同一材料を用いて位相シフター部103を形成することが可能となる。また、石英基板105上に積層された金属薄膜(半遮光膜)107とCr膜(遮光膜)106との2層膜を加工することによって、半遮光部102、位相シフター部103及び遮光部101の3種類の領域を持つマスクパターンを形成することが可能となる。
以下、上記のように構成された本実施形態のフォトマスクが、ウェハ上にパターンを形成する上で優れたパターン形成特性を発揮すること、特にMEFの低減効果を発揮することをシミュレーション結果に基づいて説明する。尚、本実施形態のマスクパターンにおいて、図10(b)に示す第2のパターン領域202については、第1の実施形態のマスクパターンと同様に、遮光部を有するマスクパターンの外形領域に半遮光部を設けることによってMEFの低減効果が得られることは明らかであるので、以下の説明においては、図10(b)に示す第1のパターン領域201のマスクパターン構成によって、MEFの低減効果が得られることを示す。まず、本実施形態に関するシミュレーション結果について説明する前に、位相シフター部をマスクパターンに用いた場合におけるMEFについてシミュレーション結果を用いて簡単に解説する。
図11(a)は「MEF」を説明するために用いるマスクパターンを示しており、図11(a)に示すマスクパターンは、位相シフター部よりなる幅Lのライン状パターンである。ここで、当該位相シフター部の露光光に対する透過率は100%であるとする。
図11(b)のグラフは、図11(a)のマスクを露光したときにウェハ上に形成されるパターンの寸法をシミュレーションにより求めた結果を示しており、具体的には、マスクパターンの幅L(以下、マスク幅Lと称する)を変化させた場合におけるウェハ上に形成されるパターンの寸法(CD値)の変化をプロットしたものである。図11(b)に示すように、遮光部をマスクパターンに用いた場合(図2(b)参照)と異なり、マスク幅Lが大きくなるに従ってCD値が増加する領域と、マスク幅Lが大きくなるに従ってCD値が減少する領域とが存在する。図11(b)に示すように、本シミュレーション例では、マスク幅Lが80nm付近でCD値が60nm程度と最大になる一方、マスク幅Lが80nmから増加しても減少してもCD値が減少している。
図11(c)のグラフは、MEFの計算結果(第1の実施形態と同様に(式1)によって計算される)をそれぞれのマスク幅Lに対してプロットしたものである。図11(c)に示すように、本シミュレーション例では、マスク幅Lが80nm付近でMEF≒0となる。すなわち、マスク幅Lが80nm付近では、マスクパターン寸法が変化しても、ウェハ上に形成されるパターンの寸法が変化しない。これは、高精度なパターン形成を行う上では理想的な状態である。
上述のように、マスクパターンに位相シフター部を用いた場合には、MEF≒0となる現象が現れる。但し、これは非常に限定された条件下での現象であり、CD制御を容易に行えるのは、MEFが1以下で且つ0よりも大きい範囲である。その理由は、MEFは1よりも小さいことが望ましいが、MEFが負の値となる状態においては、マスク幅を増加させてもCD値が減るために、CD制御を行う上では不都合であるからである。また、本シミュレーション例では、マスク幅Lをどんな値に設定したとしても、60nmよりも大きいCD値を実現することはできない。すなわち、マスク幅Lの調整によっては任意のCD値を実現できない。本シミュレーション例において、MEFが1よりも小さく且つ0よりも大きい範囲は、マスク幅Lが63nmから80nmまでの間だけであり、当該マスク幅Lによって実現できるCD値は55nmから60nmまでの範囲に限定されている。
以上の説明は、位相シフター部の露光光に対する透過率が100%であることを前提としたものであったが、以下、位相シフター部が露光光に対して100%以外の透過率を有する場合について説明する。図12(a)は「MEF」を説明するために用いるマスクパターンを示しており、図12(a)に示すマスクパターンは、位相シフター部よりなる幅Lのライン状パターンである。ここで、当該位相シフター部の露光光に対する透過率をTとする。図12(b)のグラフは、図12(a)のマスクを露光したときにウェハ上に形成されるパターンの寸法をシミュレーションにより求めた結果を示しており、具体的には、マスクパターンの幅L(以下、マスク幅Lと称する)を変化させた場合におけるウェハ上に形成されるパターンの寸法(CD値)の変化を様々な透過率Tを持つ位相シフター部についてプロットしたものである。尚、透過率Tが0%であるとは、遮光部であることを意味する。図12(b)に示すように、本シミュレーション例では、透過率Tが36%以下になると、MEF≒0(つまりCD値の極大状態)にならない。すなわち、MEFの低減効果は、マスクパターン内に透過率の異なる位相シフター部を混在させたとしても、非常に限定されたCD値についてのみ得られるものである。実際、本願発明者の経験によれば、MEFの低減は0.3×λ/NA以下のCD値についてのみ実現できるものである。
次に、本実施形態のマスクパターンの第1のパターン領域201(図10(b)参照)に関するシミュレーション結果について説明する。図13(a)は当該シミュレーションに用いるマスクパターンを示しており、当該マスクパターンは幅Lのライン状パターンであり、幅Uの位相シフター部と、当該位相シフター部を囲む半遮光部とから構成されている。また、半遮光部における位相シフター部の両側(幅方向の両側)に設けられた部分の幅はDである。すなわち、マスクパターンは幅Lについて、L=U+2×Dの関係が成り立つ。ここで、位相シフター部の露光光に対する透過率は100%であり、半遮光部の露光光に対する透過率は16%である。
図13(b)のグラフは、図13(a)のマスクパターンを露光したときにウェハ上に形成されるパターンの寸法(CD値)を様々なマスク幅Lについてシミュレーションした結果を示している。ここで、半遮光部の幅Dを0nmから72nmまでの種々の値に固定した状態で位相シフターの幅Uを変化させることにより、マスク幅Lを変化させ、当該変化に対するCD値の依存性を図13(b)に示している。図13(b)に示すように、半遮光部の幅Uを大きくするに従って、MEF≒0となる現象(つまりCD値が極大になる現象)がより大きなCD値において現れることが分かる。すなわち、本実施形態の構成のマスクパターンを用いる場合には、目的とするCD値に応じて半遮光部幅を変更することによって、比較的広い範囲のCD値に対してMEF≒0を実現できることが分かる。実際、本願発明者が調べたところ、100nm(0.1μm)以上のCD値についてまでMEF≒0を実現できると共に、0.4×λ/NA以上のCD値においてもMEFの低減を実現できる。
以上に説明した、本実施形態のマスクパターンの第1のパターン領域201(図10(b)参照)の特性についてさらに詳しく説明するために、第1の実施形態と同様に、下記の(式4)及び(式5)のようにMEFを定義する。
位相シフター部の寸法Uの変化がCDに与える影響(Uに対するCD値の変化率)
→MEF(U)=ΔCD(U,D)/ΔW ・・・ (式4)
半遮光部の寸法Dの変化がCDに与える影響(Dに対するCD値の変化率)
→MEF(D)=ΔCD(U,D)/ΔD ・・・ (式5)
尚、図13(b)のグラフでMEF≒0という場合、正確にはMEF(U)≒0を意味する。
図14(a)は、本実施形態のマスクパターンの第1のパターン領域201(図10(b)参照)に関するシミュレーションに用いるマスクパターンを示しており、当該マスクパターンは幅Lのライン状パターンであり、幅Uの位相シフター部と、当該位相シフター部を囲む半遮光部とから構成されている。また、半遮光部における位相シフター部の両側(幅方向の両側)に設けられた部分の幅はDである。すなわち、マスクパターンは幅Lについて、L=U+2×Dの関係が成り立つ。ここで、位相シフター部の露光光に対する透過率は100%であり、半遮光部の露光光に対する透過率はT%である。
図14(b)のグラフは、図14(a)のパターンにおいてCD値=65nmとなる種々のUとDとの組み合わせについてMEF(U)とMEF(D)とを計算してMEF(U)とMEF(D)との相関関係をプロットした結果を示している。尚、図14(b)においては、半遮光部の露光光に対する透過率Tを0%、10%、25%、40%のそれぞれに設定した場合の上記プロット結果を示している。また、透過率Tが0%であるとは、遮光部であることを意味する。図14(b)に示すように、MEF(U)=0のときにMEF(D)=0となるわけではないが、半遮光部の露光光に対する透過率Tが高くなるに従って、MEF(U)=0のときのMEF(D)の値が小さくなることが分かる。
以上に説明したように、本実施形態によると、位相シフター部103を有するマスクパターン(正確には図10(b)に示す第1のパターン領域201)の外形領域に半遮光部102を設けているため、位相シフター部103及び半遮光部102のそれぞれの寸法を変化させることによって、ウェハ上に形成されるパターンのCD値を制御することが可能となる。さらには、目的とするCD値に応じた適切な半遮光部の幅及び位相シフター部の幅を選ぶことにより、MEFを大幅に低減できる。具体的には、図14(b)に示すように、半遮光部102の露光光に対する透過率Tを25%に設定した場合には、位相シフター部103の幅Uに対してMEF(U)≒0となり、半遮光部102の幅Dに対してMEF(D)≒0.15となる。
上記の本実施形態の効果をもう少し原理的に説明する。位相シフター部と半遮光部とをマスクパターンとして用いた場合の光学像は、マスクパターンの外側を回折する光とマスクパターンの内部を透過する光との干渉によって形成される。すなわち、マスクパターンの外側を回折する光とマスクパターンの内部を透過する光とがそれぞれマスクパターンの中心部と対応するウェハ位置に投影されたときに干渉効果によってこれらの光が互いに最も打ち消し合う状態が、コントラストが最大となる状態である。従って、当該状態を実現する位相シフター部の幅がそれより大きくなっても小さくなっても投影像(光学像)のコントラストは低下するので、言い換えると、ウェハ上に形成されるパターンの寸法(CD値)が減少するので、このコントラストが最大となる状態において位相シフター部のマスク寸法に対してMEF≒0(正確にはMEF(U)≒0)となる。
よって、目的とするCD値をCD1としたときに当該CD値に対してMEF≒0を実現する位相シフター部の幅をU1、その外側の半遮光部の幅をD1とすると共に、目的とするCD値をCD2(CD2>CD1)としたときに当該CD値に対してMEF≒0を実現する位相シフター部の幅をU2、その外側の半遮光部の幅をD2とすると、U2<U1、D1<D2の関係が成り立つ。すなわち、より大きいCD値を実現するためには、より細い位相シフター部を用いればよい。
尚、マスクパターンの外側を回折する光とマスクパターンの内部を透過する光との干渉効果を十分に得るためには、位相シフター部とマスクパターン周辺の透光部との間の距離は0.4×λ/NA以下であることが望ましい。すなわち、前記幅Dは、回折現象が顕著になる0.4×λ/NA以下の寸法であることが望ましい。しかしながら、本実施形態においては、位相シフター部とマスクパターン周辺の透光部との間の半遮光部も光を部分的に透過させるので、前記幅Dは0.4×λ/NA以下の寸法に限定されるものではない。但し、「前提事項」で説明したように、有意な光学的効果を得るためには、マスク幅Lは0.02×λ/NA以上であることが望ましいことは言うまでもない。
以上に説明したように、本実施形態のマスクパターンにおいて、λ/NA以下の第1の幅L1を持つ第1のパターン領域201を位相シフター部103と半遮光部102とによって構成し、λ/NAよりも大きい第2の幅L2を持つ第2のパターン領域202を遮光部101と半遮光部102とによって構成することにより、両方の領域においてMEFを低減できる。
尚、本実施形態のマスクパターンの構成においては、位相シフター部103の周辺に設ける半遮光部102の露光光に対する透過率が高くなるに従って、MEF低減効果が高くなる一方、半遮光部102の露光光に対する透過率が比較的低い(例えば下限の4%である)場合にも十分なMEF低減効果が得られる。よって、第1のパターン領域201の半遮光部102と第2のパターン領域202の半遮光部102とを同一材料によって構成する場合には、当該半遮光部102の最適な透過率を第2のパターン領域202のマスクパターンのMEF低減効果を最適化できるように決めればよい。すなわち、本実施形態のフォトマスクにおいても、第1の実施形態のフォトマスクと同様に、半遮光部の露光光に対する透過率としては25%程度が最適であり、25%の上下10%程度までの範囲(15%以上で且つ35%以下の範囲)が好ましい。また、透過率25%の上下15%程度までの範囲(10%以上で且つ40%以下の範囲)でも十分なMEF低減効果が得られる。さらに、半遮光部の透過率はこの範囲に限定されるものではなく、第1の実施形態と同様に、原理的には、4%以上で且つ64%以下であれば有意なMEF低減効果が得られる。
また、本実施形態において、遮光部101と半遮光部102とから構成される第2のパターン領域202のマスクパターンの中心部には遮光部101のみを設けたが、MEF低減効果を得るためには、マスクパターンの外形領域を構成する半遮光部の内部に遮光部が存在すれば良いのであって、例えばレジストを感光させない程度の微小な透光部や半遮光部がマスクパターンの中心部に存在していても良いことは言うまでもない。
さらに、本実施形態において、第1の実施形態の第2変形例と同様に、第2のパターン領域202のマスクパターンの外形領域(遮光部101の周囲)に設けられた半遮光部102に加えて、当該遮光部101の内部に半遮光部を設けることによって、MEF低減効果とDOF向上効果とを同時に得ることができる。この場合、当該半遮光部の露光光に対する透過率は15%以下であることが望ましい。但し、半遮光部による有効な効果を得るためには、透過率は4%以上であることが望ましい。このようにすると、遮光部の内部に設けた半遮光部の寸法がλ/NAよりも十分に大きい場合にも、当該半遮光部を透過する光がレジストを感光させることはない。よって、マスクパターン毎にレジストを感光させないためのマスク寸法の上限を考慮する必要がなくなるため、マスクレイアウトを構成する上での自由度が高くなるので、マスクレイアウトの構成を容易に行うことができる。
また、本実施形態においては、例えば図15(a)に示すような、位相シフター部103と遮光部101とがそれぞれ個別に半遮光部102によって取り囲まれたマスクパターン構成を前提としてきた。しかし、これに代えて、図15(b)に示すような、位相シフター部103と遮光部101とが接した状態で両方の部分が半遮光部102によって取り囲まれたマスクパターン構成を採用した場合にも、本実施形態と同様の効果が得られる。また、図15(c)に示すように、位相シフター部103と遮光部101とが接した状態で両方の部分が半遮光部102によって取り囲まれたマスクパターンにおいて、位相シフター部103と遮光部101との境界が例えば0.1×λ/NA程度移動して、位相シフター部領域が遮光部領域内部に入り込んだとしても、当該マスクパターンにより形成される投影像には殆ど影響を及ぼさない。また、図15(d)に示すように、位相シフター部103と遮光部101とが接した状態で両方の部分が半遮光部102によって取り囲まれたマスクパターンにおいて、位相シフター部103と遮光部101との境界が例えば0.1×λ/NA程度移動して、位相シフター部103となるべき領域が遮光部101になったとしても、当該マスクパターンにより形成される投影像には殆ど影響を及ぼさない。しかしながら、マスク検査上の観点からは、図15(c)の遮光部101に見られる微小な凹パターン301や、図15(d)の遮光部101に見られる微小な凸パターン302は好ましいものではない。また、位相シフター部103と遮光部101とが接していると、位相シフター部103や遮光部101の加工において、両者の境界形成における位置ずれに起因して遮光部101に微小な凹凸パターンが発生しやすくなる。一方、図15(a)に示すように、遮光部101と位相シフター部103との間に半遮光部102の一部分が介在すると、当該半遮光部102の一部分は位相シフター部103や遮光部101を加工する場合におけるマージン領域となる。すなわち、図15(a)〜(d)に示す各マスクパターンによってウェハ上に投影される光学像は殆ど同等であるが、マスク加工上は、図15(a)に示すような、位相シフター部103と遮光部101とがそれぞれ別個に半遮光部102に取り囲まれているマスクパターン構成が好ましい。
また、本実施形態において、マスクパターンの外形領域に設けられる半遮光部102の輪郭と、マスクパターンの中心部に設けられる遮光部101又は位相シフター部103の輪郭とが相似形であったが、これに代えて、半遮光部102の輪郭と遮光部101又は位相シフター部103の輪郭とが相似形でなくてもよい。
また、本実施形態において、マスクパターンの外形領域の全体に半遮光部102を設けたが、これに代えて、マスクパターンの外形領域のうち特にMEFを低減させたい部分のみに半遮光部を設けてもよい。但し、マスクパターンの外形領域の全体に半遮光部102を配置している場合には、言い換えると、遮光部101及び位相シフター部103の全周囲を半遮光部102によって取り囲んでいる場合には、半遮光部102の幅のみを調整することによって近接効果補正を容易に実施できるようになる。
以下、近接効果補正(OPC)について簡単に説明する。一般に、LSI形成用のマスクパターンに対してはOPC処理が施される。通常のフォトリソグラフィでは、同じマスク寸法のマスクパターンによって形成されるパターンであっても、そのパターン形状やその周辺の他のパターンに依存して、ウェハ上でのパターン寸法(CD値)や形状が異なってしまうという現象が発生する。この現象が近接効果と呼ばれており、この近接効果によって発生するCD値や形状の変動を、マスクパターンの寸法や形状の補正により補償する処理をOPC処理と呼んでいる。
本実施形態のマスクパターンに対してOPC処理を行う場合、マスクパターンの外形領域に配置される半遮光部のマスク寸法を補正してもよいし、又はマスクパターンの中心部に配置される位相シフター部若しくは遮光部のマスク寸法を補正してもよい。しかし、位相シフター部が設けられたマスクパターンにおいては、マスクパターンの周辺を透過した回折光とマスクパターン内の位相シフター部を透過した光との干渉効果を利用して、MEF≒0となる位相シフター部の寸法を設定するので、MEF≒0の状態を維持しながらOPC処理を行うためには、MEF≒0となる位相シフター部の寸法を変更することなくOPC処理を実施することが望ましい。すなわち、本実施形態のマスクパターンに対しては、半遮光部のマスク寸法の補正のみによってOPC処理を行うことが望ましい。
図16(a)は、図10(a)に示す本実施形態のマスクパターンに対して半遮光部102のマスク寸法の補正によるOPC処理を行った結果を示している。
図16(a)に示すように、位相シフター部103が設けられたラインパターン(図10(a)の第1のパターン領域201)の外形領域には、位相シフター部103の輪郭形状とほぼ相似形状の輪郭を有する半遮光部102が設けられていると共に、当該ラインパターンの端部にはライン幅よりも大きい幅を持つハンマー形状の半遮光部102が設けられている。このハンマー形状の半遮光部102は次の目的のために設けられる。すなわち、孤立した細線パターン(図10(a)の第1のパターン領域201)の端部が透光部に囲まれているために、当該端部周辺の透光部から当該端部の裏側に回り込む回折光が過剰となり、それにより転写パターン(ウェハ上に転写されるパターン)の当該ライン端部に対応する部分が後退して形成されてしまうことを防止するためである。
また、図16(a)に示すように、遮光部101が設けられたパターン(図10(a)の第2のパターン領域202)の外形領域には、遮光部101の輪郭形状とほぼ相似形状の輪郭を有する半遮光部102が設けられていると共に、直角又は鋭角となる角部にはセリフ(serif )パターンとなる半遮光部102が設けられている。このセリフパターンとなる半遮光部102は、前述のハンマー形状の半遮光部102と同様の目的のために設けられる。すなわち、遮光部101が設けられたパターン(図10(a)の第2のパターン領域202)の角部が透光部に囲まれているために、当該角部周辺の透光部から当該角部の裏側に回り込む回折光が過剰となり、それにより転写パターン(ウェハ上に転写されるパターン)の当該ライン角部に対応する部分が後退して形成されてしまうことを防止するためである。
以上のように、本実施形態のマスクパターンにおける半遮光部102に、ライン端部に位置するハンマー形状のパターンや角部に位置するセリフ(serif )パターンを設けることにより、位相シフター部103や遮光部101を変形することなく、OPC処理を実施できるようになる。尚、周辺パターンとの近接関係を考慮して、本実施形態のマスクパターンの外形領域に配置される半遮光部102の幅を補正することによって、OPC処理を実施してもよい。
図16(b)は、本実施形態と同様のマスクパターン構成(遮光部101と半遮光部102と位相シフター部103とからなる構成)をゲートコンタクトパターンに適用した場合において半遮光部102のマスク寸法の補正によるOPC処理を行った結果を示している。尚、図16(b)に示すマスクパターンにおいては、コンタクト部分と対応する領域を遮光部101のみによって構成し、ゲート部分と対応する領域を位相シフター部103と半遮光部102とによって構成している。具体的には、位相シフター部103が設けられたライン状のゲート部分の外形領域には、位相シフター部103の輪郭形状とほぼ相似形状の輪郭を有する半遮光部102が設けられていると共に、当該ラインパターンの端部にはライン幅よりも大きい幅を持つハンマー形状の半遮光部102が設けられている。
以下、本発明の第2の実施形態に係るフォトマスクの作成方法について図面を参照しながら説明する。
図37は本実施形態に係るフォトマスクの作成方法によって形成しようとするフォトマスクの平面図である。図37に示すフォトマスクの基本構成は、図10(b)に示す第2の実施形態に係るフォトマスクの基本構成と同様である。すなわち、図37に示すフォトマスクに設けられているマスクパターンは、第1の幅L1を持つ第1のパターン領域201と、第1の幅L1よりも大きい第2の幅L2を持つ第2のパターン領域202とから構成されている。第1のパターン領域201においては、外形領域に半遮光部102が配置されていると共に中心部に矩形状の位相シフター部103が配置されている。第2のパターン領域202においては、外形領域に半遮光部102が配置されていると共に中心部に矩形状の遮光部101が配置されている。尚、図37において、透過性基板100(透光部104)の図示を省略している。
図38(a)〜(i)は本実施形態に係るフォトマスクの作成方法の各工程を示す断面図(図37のAB線の断面構成を示す)であり、図39(a)〜(f)はそれぞれ図38(b)、(c)、(e)、(f)、(h)、(i)の断面図に対応する平面図である。
まず、図38(a)に示すように、透過性基板である例えば石英基板105上に半遮光膜として例えばMoよりなる金属薄膜107及び遮光膜として例えばCr膜106を順次形成した後、Cr膜106の上にレジスト膜151を形成する。
次に、図38(b)及び図39(a)に示すように、リソグラフィによりレジスト膜151をパターン化して、遮光部101となる領域及び半遮光部102となる領域をそれぞれ覆うレジストパターン151Aを形成する。
次に、レジストパターン151AをマスクとしてCr膜106及び金属薄膜107に対して順次エッチングを行って、図38(c)及び図39(b)に示すように、透光部104となる領域及び位相シフター部103となる領域のそれぞれに位置するCr膜106及び金属薄膜107を除去した後、レジストパターン151Aを除去する。すなわち、透光部104となる領域及び位相シフター部103となる領域のそれぞれにおいては石英基板105の表面が露出する。
次に、図38(d)に示すように、パターニングされたCr膜106の上及び石英基板105の上にレジスト膜152を形成した後、図38(e)及び図39(c)に示すように、リソグラフィによりレジスト膜152をパターン化して、透光部104となる領域を覆うレジストパターン152Aを形成する。ここで、位相シフター部103となる領域の近傍(マスク合わせマージン程度)を除くCr膜106(遮光部101となる領域及び半遮光部102となる領域をそれぞれ覆う)がレジストパターン152Aによって覆われていてもよい。
次に、レジストパターン152A及びCr膜106の一部分をマスクとして石英基板105に対してエッチングを行って、位相シフター部103となる領域に位置する石英基板105を透過光の位相が反転する分だけ掘り下げ、それによって、図38(f)及び図39(d)に示すように、位相シフター部103となる掘り下げ部105aを形成した後、レジストパターン152Aを除去する。このとき、掘り下げ部105aの開口幅は、Cr膜106の開口幅と実質的に同じになる。
次に、図38(g)に示すように、パターニングされたCr膜106の上及び掘り下げ部105aを含む石英基板105の上にレジスト膜153を形成した後、図38(h)及び図39(e)に示すように、リソグラフィによりレジスト膜153をパターン化して、遮光部101となる領域を覆うレジストパターン153Aを形成する。
次に、レジストパターン153AをマスクとしてCr膜106(遮光部101となる領域及び半遮光部102となる領域をそれぞれ覆う)に対してエッチングを行って、図38(i)及び図39(f)に示すように、半遮光部102となる領域に位置するCr膜106を除去した後、レジストパターン153Aを除去する。これにより、遮光部101となる領域のみにCr膜106が残り、半遮光部102となる領域において金属薄膜107が露出し、図37に示すフォトマスクが完成する。
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係るフォトマスクについて図面を参照しながら説明する。
図17(a)は所望のレジストパターン形状を表す図であり、図17(b)は第3の実施形態に係るフォトマスクの平面図である。尚、図17(b)において、透過性基板については斜視図的に示している。
図17(a)に示すように、所望のパターンはレジストパターン110である。
図17(b)に示すように、透過性基板100上の十分に広い領域に亘って透光部104が設けられている。また、露光によりウェハ上に形成しようとするレジストパターン(所望のパターン)110と対応する位置の透過性基板100上には、第1の実施形態と同様に、遮光部101と半遮光部102とからなるマスクパターンが設けられている。本実施形態においては、第1の実施形態と同様に、当該マスクパターンの周縁部(外形領域の全体)に半遮光部102を設けると共に、当該マスクパターンの中心部に遮光部101を設ける。すなわち、遮光部101は半遮光部102に取り囲まれている。尚、遮光部101及び半遮光部102のそれぞれの定義は第1の実施形態と同様である。
本実施形態が第1の実施形態と異なっている点は、レジストパターン(所望のパターン)110と対応するマスクパターンの周辺に、つまり当該マスクパターンの外形領域に配置された半遮光部102の周辺に、透光部104の一部分を介して半遮光部102が設けられていることである。尚、マスクパターンの外形領域に配置された半遮光部102と、その周辺に配置された半遮光部102との間に位置する透光部104の幅は、後述するように、λ/NA以下であることが望ましい。
図17(c)は、図17(b)の平面図に示すフォトマスクの断面構成の一例を示している。具体的には、図17(c)は、図17(b)に示される線分ABに対応する部分の断面構造を表している。図17(c)に示すように、透光部104は、透過性基板である例えば石英基板105の露出領域である。マスクパターンの外形領域に配置された半遮光部102、及びその周辺に配置された半遮光部102はいずれも、第1の実施形態と同様に、例えばMoよりなる金属薄膜107を半遮光膜として透過性基板100上に堆積することによって形成されている。遮光部101も、第1の実施形態と同様に、金属薄膜107の上に例えばCr膜106を遮光膜としてさらに積層することによって形成されている。すなわち、本実施形態のフォトマスクの断面構成が第1の実施形態と異なっている点は、第1の実施形態のマスクパターンの周辺に追加的に設けられた半遮光部102が、マスクパターンの外形領域に配置された半遮光部102と同様に、金属薄膜(半遮光膜)107から構成されていることである。
尚、本実施形態において、マスクパターンの外形領域に配置される半遮光部102と、マスクパターンの周辺に設けられる半遮光部102とを必ずしも同一材料から構成する必要はないが、両方の半遮光部102を同一材料から構成することによって、マスクの断面構成を簡単にすることができる。
以下、上記のように構成された本実施形態のフォトマスクによって、第1の実施形態と比べてさらに小さいMEFでCD値の調整が可能になることをシミュレーション結果を参照しながら説明する。
図18(a)及び(b)は、本実施形態のマスクパターンに関するシミュレーション結果を説明するための図である。具体的には、図18(a)は当該シミュレーションに用いるマスクパターンを示しており、当該マスクパターンはライン状パターンであり、幅Lの遮光部(例えばCr膜から構成される)と、当該遮光部を囲む半遮光部とから構成されている。ここで、当該半遮光部における遮光部の両側(幅方向の両側)に設けられた部分の幅はDである。さらに、マスクパターンの周辺、つまりマスクパターンの外形領域に配置された半遮光部の周辺には、幅Sの透光部を介して幅Hの半遮光部が設けられている。尚、図18(a)に示すマスクパターンにおいては、半遮光部の露光光に対する透過率を16%に、遮光部の幅Lを200nmに、半遮光部の幅Dを40nmにそれぞれ設定した。また、マスクパターンの周辺に設けられた半遮光部の幅Hについては、その透過率(つまり16%)に起因してレジストパターンが形成されないように150nmに設定した。
図18(b)のグラフは、図18(a)のマスクパターンを露光したときにウェハ上に形成されるパターンの寸法(CD値)をシミュレーションにより求めた結果であり、具体的には、上記透光部の幅Sを100nmから340nmまで変化させながらウェハ上にパターンを形成した場合における当該パターンの寸法(CD値)をプロットした様子を示している。
図18(b)に示すように、透光部の幅Sが100nmから200nm程度まで増加する間にCD値が10nm程度減少している。また、透光部の幅Sが200nmを超えると、CD値はほとんど変化しない。すなわち、透光部の幅Sが100nmから200nmまでの範囲においては、透光部の幅Sに依存したMEF(S)は−0.1程度である。従って、遮光部と半遮光部とからなるライン状のマスクパターンの周辺にさらに半遮光部を設け、当該半遮光部とライン状のマスクパターンとの間の透光部の幅Sを変化させることによりCD値を調整する場合には、非常に小さいMEFでCD値の制御が可能となる。
上記の効果は、マスクパターンのマスク幅が固定されている場合にも、マスクパターン周辺の透光部を透過する光の強度を増加させることによって、CD値を変化させることが可能となることを意味している。一方、透光部の幅がλ/NA(上記シミュレーション例ではλ/NA=227nm)を超えると、透光部を透過する光が飽和してCD値が変化しなくなる。言い換えると、外形領域に半遮光部が配置されたマスクパターンの端部からλ/NA以下の位置に他の半遮光部(少なくとも一部分)を設けることによって、小さいMEFでCD値の調整が可能となる。
尚、本実施形態において、マスクパターンの外形領域に設けられた半遮光部と、マスクパターンの周辺に設けられた半遮光部との間に位置する透光部の幅はλ/NA以下であればよいのであって、マスクパターンを取り囲む透光部における全ての部分の幅が同じである必要はなく、λ/NA以下の範囲内で透光部の各部分の幅が異なっていてもよい。
また、本実施形態において、マスクパターンの周辺に設けられる半遮光部の露光光に対する透過率が高くなるに従って、当該半遮光部の寸法が変化したときの光学像に与える影響が小さくなるので、MEF低減効果は向上する。但し、マスクパターンの周辺に設けられる半遮光部の露光光に対する透過率が低透過率(例えば半遮光部の透過率の下限4%)である場合にも、十分なMEF低減効果が得られる。よって、マスクパターンの外形領域に設けられる半遮光部と、マスクパターンの周辺に設けられる半遮光部とを同一材料によって構成する場合には、両半遮光部の露光光に対する透過率の最適条件を、第1の実施形態と同様に、マスクパターンの外形領域に設けられる半遮光部によるMEF低減効果を最適化できるように決めればよい。
また、本実施形態において、マスクパターンの外形領域に設けられる半遮光部102の輪郭と、マスクパターンの中心部に設けられる遮光部101の輪郭とが相似形であったが、本実施形態の効果を得るためには、前述のように、マスクパターンの外形領域(つまり遮光部101の周辺)にλ/NA以下の幅の半遮光部102を設けさえすればよい。よって、半遮光部102の輪郭と遮光部101の輪郭とが相似形でなくてもよい。
また、本実施形態において、マスクパターンの外形領域の全体に半遮光部102を設けたが、これに代えて、マスクパターンの外形領域のうち特にMEFを低減させたい部分のみに半遮光部を設けてもよい。但し、マスクパターンの外形領域の全体に半遮光部102を配置している場合には、言い換えると、遮光部101の全周囲を半遮光部102によって取り囲んでいる場合には、半遮光部102の幅のみを調整することによって近接効果補正を容易に実施できるようになる。
さらに、本実施形態において、第1の実施形態の第2変形例と同様に、マスクパターンの外形領域(遮光部101の周囲)に設けられた半遮光部102に加えて、当該遮光部101の内部に半遮光部を設けることによって、MEF低減効果とDOF向上効果とを同時に得ることができる。この場合、当該半遮光部の露光光に対する透過率は15%以下であることが望ましい(但し、半遮光部による有効な効果を得るためには透過率は4%以上であることが望ましい)。このようにすると、遮光部の内部に設けた半遮光部の寸法がλ/NAよりも十分に大きい場合にも、当該半遮光部を透過する光がレジストを感光させることはない。よって、マスクパターン毎にレジストを感光させないためのマスク寸法の上限を考慮する必要がなくなるため、マスクレイアウトを構成する上での自由度が高くなるので、マスクレイアウトの構成を容易に行うことができる。
また、本実施形態においては、半遮光部(具体的にはマスクパターン周辺に設けられる半遮光部)の露光光に対する透過率として25%以上の値を用いることによって、下記のような効果が得られる。一般に、半遮光部の露光光に対する透過率が20%程度になると、当該半遮光部を透過した光によってレジストが感光する可能性が高くなるので、半遮光部の露光光に対する透過率を25%にすれば、マージンを十分に確保した状態で当該半遮光部を透過した光によってレジストを感光させることができる。すなわち、マスクパターンの周辺部に設けられる半遮光部については、レジストパターンを形成しない程度の幅(つまりレジストが感光される程度の幅)で設ける必要があるが、当該半遮光部の露光光に対する透過率として25%以上の値を用いれば、λ/NA以上の十分に大きい寸法の半遮光部を用いることができる。これにより、レジストパターンを形成しないための(つまりレジストを感光させないための)マスク寸法の上限をマスクパターン毎に考慮する必要がなくなるため、マスクレイアウトを構成する上での自由度が高くなるので、マスクレイアウトの構成を容易に行うことができる。極端なケースとしては、例えば図19に示すように、マスクパターン及びそれを囲む透光部を除くその他の領域を覆うマスクのバックグランドとして半遮光部102を設けても良い。但し、半遮光部による有効な効果を得るためには、半遮光部の露光光に対する透過率は64%以下であることが望ましい。
また、本実施形態においては、所望のパターンに対応するマスクパターンの各辺と平行に1.0×λ/NA以下の幅を持つ透光部104を設ければよいのであって、例えば図20に示すように、マスクパターンの角部の近傍において透光部104のない領域(当該領域の幅は解像限界の半分以下つまり0.2×λ/NA以下である)を設けても良い。なぜなら、解像限界の半分以下の寸法であれば、レジストパターン形成に影響を及ぼさないからである。言い換えると、本実施形態においては、マスクパターンの各辺を複数の矩形状の透光部によって囲むと共に、マスクパターンの外形領域に配置された半遮光部と、マスクパターンの周辺に配置された半遮光部(図20の場合はマスクのバックグランドとなる半遮光部)とがマスクパターンの角部の近傍において接続されていてもよい。このようにすると、所望のパターンに対応するマスクパターンにおけるライン端部や角部が透光部によって囲まれることがないので、マスクパターン周辺におけるこれらの部分の近傍を透過する光が過剰となる事態を回避できる。
(第3の実施形態の変形例)
以下、本発明の第3の実施形態の変形例に係るフォトマスクについて図面を参照しながら説明する。
図21(a)は所望のレジストパターン形状を表す図であり、図21(b)は第3の実施形態の変形例に係るフォトマスクの平面図である。尚、図21(b)において、透過性基板については斜視図的に示している。
図21(a)に示すように、所望のパターンはレジストパターン130である。
図21(b)に示すように、透過性基板100上の十分に広い領域に亘って透光部104が形成されている。また、露光によりウェハ上に形成しようとするレジストパターン(所望のパターン)130と対応する位置の透過性基板100上には、遮光部101と半遮光部102と位相シフター部103とからなるマスクパターンが設けられている。ここで、本変形例のマスクパターンは、第2の実施形態と同様に、第1の幅L1を持つ第1のパターン領域201と、第1の幅L1よりも大きい第2の幅L2を持つ第2のパターン領域202とから構成されている。第1のパターン領域201においては、外形領域に半遮光部102が配置されていると共に中心部に位相シフター部103が配置されている。第2のパターン領域202においては、外形領域に半遮光部102が配置されていると共に中心部に遮光部101が配置されている。尚、本変形例における遮光部101、半遮光部102及び位相シフター部103のそれぞれの定義は第2の実施形態と同様である。
本変形例が第2の実施形態と異なっている点は、レジストパターン(所望のパターン)130と対応するマスクパターンの周辺に、つまり当該マスクパターンの外形領域に配置された半遮光部102の周辺に、透光部104の一部分を介して半遮光部102が設けられていることである。尚、マスクパターンの外形領域に配置された半遮光部102と、その周辺に配置された半遮光部102との間に位置する透光部104の幅は、第3の実施形態と同様に、λ/NA以下であることが望ましい。
図21(c)は、図21(b)の平面図に示すフォトマスクの断面構成の一例を示している。具体的には、図21(c)は、図21(b)に示される線分AB及び線分CDのそれぞれに対応する部分の断面構造を表している。図21(c)に示すように、透光部104は、透過性基板である例えば石英基板105の露出領域である。マスクパターンの外形領域に配置された半遮光部102、及びその周辺に配置された半遮光部102はいずれも、第2の実施形態と同様に、例えばMoよりなる金属薄膜107を半遮光膜として透過性基板100上に堆積することによって形成されている。また、遮光部101も、第2の実施形態と同様に、金属薄膜(半遮光膜)107の上に例えばCr膜106を遮光膜としてさらに積層することによって形成されている。さらに、半遮光部102の内部に設けられる位相シフター部103は、石英基板105上に堆積された金属薄膜(半遮光膜)107に開口部を設け、且つ当該開口部に位置する石英基板105を透過光の位相が反転する分だけ掘り下げることによって形成されている。すなわち、位相シフター部103は石英基板105の掘り下げ部105aである。
以上のように、本変形例のフォトマスクの断面構成が第2の実施形態と異なっている点は、第2の実施形態のマスクパターンの周辺に追加的に設けられた半遮光部102が、マスクパターンの外形領域に配置された半遮光部102と同様に、金属薄膜(半遮光膜)107から構成されていることである。
尚、本変形例において、マスクパターンの外形領域に配置される半遮光部102と、マスクパターンの周辺に設けられる半遮光部102とを必ずしも同一材料から構成する必要はないが、両方の半遮光部102を同一材料から構成することによって、第3の実施形態と同様に、マスクの断面構成を簡単にすることができる。
以下、上記のように構成された本変形例のフォトマスクによって、第2の実施形態と比べてさらに小さいMEFでCD値の調整が可能になることをシミュレーション結果を参照しながら説明する。尚、本変形例のマスクパターンにおいて、図21(b)に示す第2のパターン領域202については、第3の実施形態のマスクパターンと同様に、遮光部を有するマスクパターンの外形領域に半遮光部を設けることによってMEFの低減効果が得られることは明らかであるので、以下の説明においては、図21(b)に示す第1のパターン領域201のマスクパターン構成によって、上記効果が得られることを示す。
図22(a)及び(b)は、本変形例のマスクパターン(第1のパターン領域201)に関するシミュレーション結果を説明するための図である。具体的には、図22(a)は当該シミュレーションに用いるマスクパターンを示しており、当該マスクパターンはライン状パターンであり、幅Uの位相シフター部と、当該位相シフター部を囲む半遮光部とから構成されている。ここで、当該半遮光部における位相シフター部の両側(幅方向の両側)に設けられた部分の幅はDである。さらに、マスクパターンの周辺、つまりマスクパターンの外形領域に配置された半遮光部の周辺には、幅Sの透光部を介して幅Hの半遮光部が設けられている。尚、図22(a)に示すマスクパターンにおいては、半遮光部の露光光に対する透過率を16%に、位相シフター部の幅Uを50nmに、半遮光部の幅Dを30nmにそれぞれ設定した。また、マスクパターンの周辺に設けられた半遮光部の幅Hについては、その透過率(つまり16%)に起因してレジストパターンが形成されないように150nmに設定した。
図22(b)のグラフは、図22(a)のマスクパターンを露光したときにウェハ上に形成されるパターンの寸法(CD値)をシミュレーションにより求めた結果であり、具体的には、上記透光部の幅Sを100nmから340nmまで変化させながらウェハ上にパターンを形成した場合における当該パターンの寸法(CD値)をプロットした様子を示している。
図22(b)に示すように、透光部の幅Sが100nmから200nm程度まで増加する間にCD値が5nm程度減少している。また、透光部の幅Sが200nmを超えると、CD値はほとんど変化しない。すなわち、透光部の幅Sが100nmから200nmまでの範囲においては、透光部の幅Sに依存したMEF(S)は−0.05程度である。従って、位相シフター部と半遮光部とからなるライン状のマスクパターンの周辺にさらに半遮光部を設け、当該半遮光部とライン状のマスクパターンとの間の透光部の幅Sを変化させることによりCD値を調整する場合には、非常に小さいMEFでCD値の制御が可能となる。
尚、本変形例においても、第3の実施形態と同様に、外形領域に半遮光部が配置されたマスクパターンの端部からλ/NA以下の位置に他の半遮光部(少なくとも一部分)を設けることによって、小さいMEFでCD値の調整が可能となる。
また、本変形例においても、第3の実施形態と同様に、マスクパターンの外形領域に設けられた半遮光部と、マスクパターンの周辺に設けられた半遮光部との間に位置する透光部の幅はλ/NA以下であればよいのであって、マスクパターンを取り囲む透光部における全ての部分の幅が同じである必要はなく、λ/NA以下の範囲内において透光部の各部分の幅が異なっていてもよい。
また、本変形例において、マスクパターンの周辺に設けられる半遮光部の露光光に対する透過率が高くなるに従って、当該半遮光部の寸法が変化したときの光学像に与える影響が小さくなるので、MEF低減効果は向上する。但し、マスクパターンの周辺に設けられる半遮光部の露光光に対する透過率が低透過率(例えば半遮光部の透過率の下限4%)である場合にも、十分なMEF低減効果が得られる。よって、マスクパターンの外形領域に設けられる半遮光部と、マスクパターンの周辺に設けられる半遮光部とを同一材料によって構成する場合には、両半遮光部の露光光に対する透過率の最適条件を、第2の実施形態と同様に、マスクパターンの外形領域に設けられる半遮光部によるMEF低減効果を最適化できるように決めればよい。
また、本変形例において、マスクパターンの外形領域に設けられる半遮光部102の輪郭と、マスクパターンの中心部に設けられる遮光部101又は位相シフター部103の輪郭とが相似形であったが、これに代えて、半遮光部102の輪郭と遮光部101又は位相シフター部103の輪郭とが相似形でなくてもよい。
また、本変形例において、マスクパターンの外形領域の全体に半遮光部102を設けたが、これに代えて、マスクパターンの外形領域のうち特にMEFを低減させたい部分のみに半遮光部を設けてもよい。但し、マスクパターンの外形領域の全体に半遮光部102を配置している場合には、言い換えると、遮光部101及び位相シフター部103の全周囲を半遮光部102によって取り囲んでいる場合には、半遮光部102の幅のみを調整することによって近接効果補正を容易に実施できるようになる。
さらに、本変形例において、第2の実施形態の変形例と同様に、マスクパターンの外形領域(遮光部101及び位相シフター部103の周囲)に設けられた半遮光部102に加えて、当該遮光部101の内部に半遮光部を設けることによって、MEF低減効果とDOF向上効果とを同時に得ることができる。ここで、当該半遮光部をマスクパターン外形領域の半遮光部102と同一材料から構成する場合には、第2の実施形態の変形例と同様に、当該半遮光部の露光光に対する透過率は4%以上で且つ15%以下であることが望ましい。
また、本変形例において、半遮光部(具体的にはマスクパターン周辺に設けられる半遮光部)の露光光に対する透過率として25%以上の値(但し64%以下であることが望ましい)を用いることによって、下記のような効果が得られることは第3の実施形態と同様である。すなわち、マスクパターンの周辺部に設けられる半遮光部については、レジストパターンを形成しない程度の幅(つまりレジストが感光されない程度の幅)で設ける必要があるが、当該半遮光部の露光光に対する透過率として25%以上の値を用いれば、λ/NA以上の十分に大きい寸法の半遮光部を用いることができる。これにより、レジストパターンを形成しないための(つまりレジストを感光させないための)マスク寸法の上限をマスクパターン毎に考慮する必要がなくなるため、マスクレイアウトを構成する上での自由度が高くなるので、マスクレイアウトの構成を容易に行うことができる。極端なケースとしては、例えば図23に示すように、マスクパターン及びそれを囲む透光部を除くその他の領域を覆うマスクのバックグランドとして半遮光部102を設けても良い。
マスクのバックグランドとして半遮光部102を設ける場合において複数のマスクパターンが配置される場合、各マスクパターンの外形領域に設けられる半遮光部と、各マスクパターンの周辺に設けられる半遮光部との間に位置する透光部の幅がλ/NA以下であればよいことから、例えば図24に示すように、マスクパターン間距離が2×λ/NA以上である領域の中心部には半遮光部102を設ける一方、マスクパターン間距離が2×λ/NAよりも小さい領域には半遮光部を設けなくてもよい。
また、本変形例においては、所望のパターンに対応するマスクパターンの各辺と平行に1.0×λ/NA以下の幅を持つ透光部104を設ければよいのであって、例えば図25に示すように、マスクパターンの角部の近傍において透光部104のない領域(当該領域の幅は解像限界の半分以下つまり0.2×λ/NA以下である)を設けても良いことは第3の実施形態と同様である。言い換えると、マスクパターンの各辺を複数の矩形状の透光部によって囲むと共に、マスクパターンの外形領域に配置された半遮光部と、マスクパターンの周辺に配置された半遮光部(図25の場合はマスクのバックグランドとなる半遮光部)とがマスクパターンの角部の近傍において接続されていてもよい。このようにすると、所望のパターンに対応するマスクパターンにおけるライン端部や角部が透光部によって囲まれることがないので、マスクパターン周辺におけるこれらの部分の近傍を透過する光が過剰となる事態を回避できる。
以上、主に本変形例のフォトマスクの平面構成について説明してきたが、以下、本変形例のフォトマスクの断面構成についても詳細に説明する。図26(a)〜(d)及び図27(a)、(b)は、図21(b)に示される線分AB及び線分CDのそれぞれに対応する部分の断面構成のバリエーションを示している。
尚、第1〜第3の各実施形態においても、各実施形態のフォトマスクを実現する典型的な断面構成について説明してきたが、以下に説明する断面構成のバリエーションは全ての実施形態において共通のバリエーションとみなすことができる。すなわち、図26(a)〜(d)及び図27(a)、(b)に示す断面構成は本変形例(第3の実施形態の変形例)の平面図である図21(b)に対応したものであるが、他の実施形態の断面構成のバリエーションとみなす場合には、図26(a)〜(d)及び図27(a)、(b)に示す断面構成から他の実施形態において不要な構成要素を省略すればよい。
まず、図26(a)に示すフォトマスクの断面構成(図21(c)に示した本変形例のフォトマスクの断面構成)は、第1〜第3の各実施形態においても典型的な断面構成例として説明してきたものである。図26(a)に示すように、透過性基板である例えば石英基板105の上には、透光部との間で露光光に対して同位相の位相差(つまり(−30+360×n)度以上で且つ(30+360×n)度以下(但しnは整数)の位相差)を生じる半透明の半遮光膜(金属薄膜)107が形成されている。以下、同位相の位相差を生じるとは、(−30+360×n)度以上で且つ(30+360×n)度以下(但しnは整数)の位相差を生じることを意味するものとする。第1〜第3の各実施形態では、この「同位相」の定義に合致する半遮光膜の典型例として、nが0となる金属薄膜を用いている。ここで、透光部104は石英基板105の露出領域であり、半遮光部102は、石英基板105上に堆積された半遮光膜(金属薄膜)107の露出領域である。また、石英基板(透過性基板)105における位相シフター部103の形成領域は、透光部との間で露光光に対して反対位相の位相差(つまり(150+360×n)度以上で且つ(210+360×n)度以下(但しnは整数)の位相差)を生じる厚さだけ掘り下げられている。これにより、位相シフター部103が石英基板105の掘り下げ部105aとして形成される。以下、反対位相の位相差を生じるとは、(150+360×n)度以上で且つ(210+360×n)度以下(但しnは整数)の位相差を生じることを意味するものとする。また、遮光部101は、上記半遮光膜(金属薄膜)107の上に露光光を実質的に透過させない遮光膜(Cr膜)106をさらに積層することによって形成されている。
以上の図26(a)に示す構成によると、半遮光膜の上に遮光膜を積層した基板を用意し、適宜これらの膜を除去し、さらには透過性基板を掘り下げることによって、透光部104、遮光部101、半遮光部102及び位相シフター部103からなる任意のレイアウトが形成可能となる。特に半遮光膜として金属薄膜を用いれば、半遮光膜の加工精度が向上する。よって、図26(a)に示す構成によれば、マスクパターンの外形領域に配置される半遮光部の加工精度を向上させることができる。
次に、図26(b)に示すフォトマスクの断面構成においては、透過性基板である例えば石英基板105の上に、当該石英基板105の露出領域との間で露光光に対して反対位相の位相差を生じる位相シフト膜108(露光光に対する透過率は石英基板105と同等)が形成されている。ここで、透光部104は、石英基板105上に堆積された位相シフト膜108の露出領域であり、位相シフト部103は、位相シフト膜103が選択的に除去された石英基板105の露出領域である。また、位相シフト膜108の上には、透光部との間で露光光に対して同位相の位相差を生じる半透明の半遮光膜107がさらに積層されている。ここで、半遮光部102は、位相シフト膜108上に形成された半遮光膜107の露出領域である。さらに、遮光部101は、上記半遮光膜107の上に露光光を実質的に透過させない遮光膜106をさらに積層することによって形成されている。
以上の図26(b)に示す構成によると、位相シフト膜108を用いることにより、位相シフター部103の位相が位相シフト膜108の膜厚によって決定される。よって、石英基板105等の透過性基板の掘り下げ深さによって位相シフター部103の位相を制御する場合と比べて、位相シフター部103の位相制御の精度が向上する。
次に、図26(c)に示すフォトマスクの断面構成においては、透過性基板である例えば石英基板105の上に、当該石英基板105の露出領域との間で露光光に対して反対位相の位相差を生じる半透明の位相シフト膜109が形成されている。ここで、透光部104は、位相シフト膜109が選択的に除去された箇所に位置する石英基板105が反対位相の位相差を生じる深さだけ掘り下げられた領域である。また、位相シフター部103は、位相シフト膜109が除去された石英基板105の露出領域であり、半遮光部102は、石英基板105上に堆積された位相シフト膜109の露出領域である。さらに、遮光部101は、上記位相シフト膜109の上に露光光を実質的に透過させない遮光膜106をさらに積層することによって形成されている。
ところで、本発明のフォトマスクの平面構成においては、本発明の原理より、透光部について位相シフター部よりも微細なパターンが必要となることはない。また、一般に、位相シフター部となる透過性基板の掘り下げ部はエッチング工程によって形成される。しかし、エッチング工程において加工パターンが微細になると、当該パターンの寸法に依存して掘り下げ深さが変化するマイクロローディング効果が発生する。それに対して、図26(c)に示す構成によると、石英基板105等の透過性基板の掘り下げ部が位相シフター部ではなく透光部となると共に、前述のように、本発明のフォトマスクの構成おいては、透光部について位相シフター部よりも微細なパターンが必要となることはない。このため、透過性基板を掘り下げる際にマイクロローディング効果を回避できるので、マスク加工が容易になる。
次に、図26(d)に示すフォトマスクの断面構成においては、透過性基板である例えば石英基板105の上に、当該石英基板105の露出領域との間で露光光に対して反対位相の位相差を生じる位相シフト膜108(露光光に対する透過率は石英基板105と同等)が形成されている。ここで、透光部104は石英基板105の露出領域であり、位相シフター部103は、石英基板105上に堆積された位相シフト膜108の露出領域である。また、位相シフト膜108の上には、透光部104との間で露光光に対して反対位相の位相差を生じる半透明の位相シフト膜109がさらに積層されている。ここで、半遮光部102は、位相シフト膜108の上に形成された位相シフト膜109の露出領域である。さらに、遮光部101は、上記位相シフト膜109の上に露光光を実質的に透過させない遮光膜106をさらに積層することによって形成されている。
以上の図26(d)に示す構成によると、半遮光部102及び位相シフター部103のそれぞれの位相が透過性基板上に堆積される膜の膜厚によって制御されるので、高精度な位相制御が可能となる。
次に、図27(a)に示すフォトマスクの断面構成においては、透過性基板である例えば石英基板105の上に、透光部104との間で露光光に対して同位相の位相差を生じる半透明の半遮光膜107が形成されている。ここで、透光部104は石英基板105の露出領域であり、半遮光部102は、石英基板105上に堆積された半遮光膜107の露出領域である。また、半遮光膜107の上には、透光部104との間で露光光に対して反対位相の位相差を生じる位相シフト膜108(露光光に対する透過率は石英基板105と同等)が形成されている。ここで、位相シフター部103は、半遮光膜107上に堆積された位相シフト膜108の露出領域である。また、遮光部101は、上記位相シフト膜108の上に露光光を実質的に透過させない遮光膜106をさらに積層することによって形成されている。
以上の図27(a)に示す構成によると、透光部104、位相シフター部103及び半遮光部102のそれぞれの位相を独立に制御できるので、各部分の間の位相差が正確に設定されたフォトマスクを実現することができる。
次に、図27(b)に示すフォトマスクの断面構成においては、透過性基板である例えば石英基板105の上に、当該石英基板105の露出領域との間で露光光に対して反対位相の位相差を生じる半透明の位相シフト膜109が形成されている。ここで、透光部104は、位相シフト膜109が選択的に除去された箇所に位置する石英基板105が反対位相の位相差を生じる厚さだけ掘り下げられている領域である。また、上記位相シフト膜109の上には、石英基板105の露出領域との間で露光光に対して反対位相の位相差を生じる位相シフト膜108(露光光に対する透過率は石英基板105と同等)が積層されている。ここで、半遮光部102は、石英基板105上に形成された位相シフト膜109の露出領域であり、位相シフター部103は、位相シフト膜109の上にさらに積層された位相シフト膜108の露出領域である。また、遮光部101は、上記位相シフト膜108の上に露光光を実質的に透過させない遮光膜106をさらに積層することによって形成されている。
ところで、図26(b)〜(d)及び図27(a)、(b)に示す断面構成を有するフォトマスクにおいては、反対位相の位相差を生じる位相シフター部となる膜の膜厚や、同位相の位相差を生じる半遮光部となる膜の膜厚として、位相調整のために数百nm程度必要である。それに対して、図26(a)に示す断面構成を有するフォトマスクにおいては、半遮光部102として、高々数十nm程度の厚さの薄膜を用いるため、マスク加工のためのパターニングにおいて微細加工が容易となる。ここで、当該薄膜として使用できる金属材料としては、例えば、Cr(クロム)、Ta(タンタル)、Zr(ジルコニュウム)、Mo(モリブデン)及びTi(チタン)等の金属並びにそれらの合金がある。具体的な合金としてはTa−Cr合金がある。また、金属とシリコンとの化合物であるZr−Si、Mo−Si及びTi−Si等を用いてもよい。
以上のように、図26(a)に示す断面構成を有するフォトマスクによると、加工対象となる膜が金属薄膜107であるため、マスク加工における微細加工が容易となる。従って、本発明の効果を得るために、透光部104と位相シフター部103との間に半遮光部となる非常に微細なパターンを設ける必要がある場合、図26(a)に示す断面構成を有するフォトマスクは特に優れたマスクとなる。
尚、図26(a)〜(d)及び図27(a)、(b)の各フォトマスクにおいて、半遮光膜及び位相シフト膜等を単層膜として説明してきたが、これらの膜が多層膜として構成されていてもよいことは言うまでもない。
以下、本発明を反射型マスクに適用した実施例について説明する。「前提事項」で説明したように、透過型マスクに代えて反射型マスクを対象とする場合、図1(b)等に示す各実施形態のフォトマスクの平面構成について透過型マスクを前提として説明した内容において、透光部又は透光領域を反射部又は反射領域と読み替え、遮光部を非反射部と読み替え、半遮光部を半反射部と読み換え、透過率を反射率と読み替えればよい。但し、位相シフター部はそのまま位相シフター部である。
次に、図21(b)に示す本変形例(第3の実施形態の変形例)のフォトマスクの平面構造を上記のように「反射型マスク」とみなした場合における当該平面構造を実現するための断面構造について説明する。図28は、図21(b)に示す本変形例のフォトマスク(反射型マスク)における線分AB及び線分CDのそれぞれに対応する部分の断面構成の一例を示している。尚、図28に示す断面構成は本変形例の平面図である図21(b)に対応したものであるが、他の実施形態の断面構成のバリエーションとみなす場合には、図28に示す断面構成から他の実施形態において不要な構成要素を省略すればよい。
図28に示すフォトマスクの断面構成においては、基板500の上に、露光光を反射する第1の反射層501が形成されていると共に、第1の反射層501の上に、第1の反射層501で反射される光に対して反対位相で光を反射する第2の反射層502が形成されている。尚、基板500の露出領域は、遮光部101に代わる非反射部101’である。また、基板500の構成材料としては、例えば酸化シリコン系の化合物等を使用できる。さらに、第1の反射層501及び第2の反射層502のそれぞれの反射面の高さは、位相にして(180度±30度+360度×n(nは整数))だけ互いに異なっていればよい。ここで、透光部104に代わる反射部104’は、基板500上に形成された第1の反射層501の露出領域であり、位相シフター部103に代わる位相シフター部103’は、第1の反射層501上に形成された第2の反射層502の露出領域である。さらに、第2の反射層502の上に光を部分的に吸収する吸収層503を選択的に積層することによって、半遮光部102に代わる半反射部102’が形成されている。
以上のように、本発明を反射型マスクに適用した場合にも、透過型マスクに適用した場合と同様の効果が得られる。すなわち、マスクパターンの外形領域又はその周辺に半反射部を設けることにより、細線パターンを含む様々な寸法を有するパターンを同時に形成する際に、任意の寸法のパターンの形成に対してMEFの低減が可能となるので、所望の寸法のパターンをウェハ上に精度良く形成することができる。
尚、図28に示す構成において、非反射部101’として基板500の露出領域を用いたが、これは一例であって、非反射部101’は基板500における反射層501及び502が存在しない領域であればよい。
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態に係るパターン形成方法、具体的には第1〜第3の実施形態又はそれらの変形例のいずれかに係るフォトマスク(以下、本発明のフォトマスクと称する)を用いたパターン形成方法について図面を参照しながら説明する。
図29(a)〜(d)は、第4の実施形態に係るパターン形成方法の各工程を示す断面図である。
まず、図29(a)に示すように、基板600上に、例えば金属膜又は絶縁膜等の被加工膜601を形成した後、図29(b)に示すように、被加工膜601の上に、例えばポジ型のレジスト膜602を形成する。
次に、図29(c)に示すように、本発明のフォトマスク、例えば図1(c)に示す断面構成を有する第1の実施形態に係るフォトマスクを介して露光光603をレジスト膜602に対して照射する。これにより、当該フォトマスクを透過した露光光604によってレジスト膜602が露光される。このとき、前記フォトマスクにおけるマスクパターンは、透過性基板である石英基板105上に形成された半遮光膜107の露出領域よりなる半遮光部と、半遮光膜107上に形成された遮光膜106の露出領域よりなる遮光部とから構成されている。すなわち、前記マスクパターンの外形領域には半遮光部が配置されていると共に前記マスクパターンの中心部には遮光部が配置されている。
尚、図29(c)に示す露光工程では、例えば斜入射露光(斜入射照明)用の光源を用いてレジスト膜602に対して露光を行なう。このとき、図29(c)に示すように、現像工程でレジストが溶解するに足りる露光エネルギーが照射されるのは、前記フォトマスクにおける前記マスクパターン以外の領域と対応するレジスト膜602の潜像部分602aのみである。
次に、レジスト膜602に対して現像を行なって潜像部分602aを除去することにより、図29(d)に示すように、前記フォトマスクにおける前記マスクパターンと対応するレジストパターン605を形成する。
以上に説明した本実施形態によると、本発明のフォトマスク(具体的には第1〜第3の実施形態又はそれらの変形例に係るフォトマスク)を用いたパターン形成方法であるため、第1〜第3の実施形態又はそれらの変形例と同様の効果が得られる。
また、本実施形態において、レジストが塗布された基板(ウェハ)に対して本発明のフォトマスクを介して露光を行う際に斜入射露光用の光源を用いると、特に位相シフター部を有する第2の実施形態及び第3の実施形態の変形例のフォトマスクによって、微細パターン形成においても高いコントラストの遮光像が得られるので、より微細なパターンの形成が可能となる。ここで、斜入射露光用の光源とは、図30(a)に示すような通常露光用の光源に対して、垂直入射成分(光源からフォトマスクに対して垂直に入射する露光光の成分)が取り除かれた、例えば図30(b)〜(d)に示すような光源を意味する。代表的な斜入射露光用の光源としては、図30(b)に示す輪帯露光用の光源、並びに図30(c)及び(d)に示す四重極露光用の光源がある。尚、目的のパターンに若干依存するが、一般に、輪帯露光用の光源よりも四重極露光用の光源の方がコントラストの強調又はDOFの拡大において効果的である。
(第5の実施形態)
以下、本発明の第5の実施形態に係るマスクデータ作成方法について図面を参照しながら説明する。本実施形態は、第1〜第3の実施形態又はそれらの変形例に係るフォトマスク(以下、本発明のフォトマスクと称する)のマスクデータ作成を行うものでもある。
図31は、本実施形態のマスクデータ作成方法の基本フローを示す図である。また、図32(a)は、本発明のフォトマスクによって形成しようとする所望のパターン、具体的には、本発明のフォトマスクのマスクパターンと対応する設計パターンの一例を示している。すなわち、図32(a)に示すパターン701〜703が、本発明のフォトマスクを用いた露光においてレジストを感光させたくない領域に相当するパターン、つまりレジストパターンである。さらに、図32(b)、図33(a)、(b)、図34(a)、(b)及び図35はそれぞれ、本実施形態のマスクデータ作成方法の各工程における具体的なマスクパターン作成例を示す図である。
尚、本実施形態でパターン形成について説明する場合、特に断らない限り、ポジ型レジストプロセスの使用を前提として説明を行う。すなわち、現像によりレジスト感光領域が除去され且つレジスト非感光領域がレジストパターンとして残存することを想定して説明を行う。従って、ポジ型レジストプロセスに代えてネガ型レジストプロセスを使用する場合には、レジスト感光領域がレジストパターンとして残存し且つレジスト非感光領域が除去されること以外は同様に考えればよい。
まず、ステップS1において、所望のパターン、例えば図32(a)に示すパターン701〜703を、マスクデータ作成に用いるコンピュータに入力する。このとき、マスクパターンを構成する位相シフター部及び半遮光部のそれぞれの透過率を設定しておく。また、必要に応じて、事前に所望のパターンの変形、つまりパターン各部の拡大又は縮小を行ってもよい。
次に、ステップS2において、露光条件、並びに上記の位相シフター部及び半遮光部のそれぞれの透過率等のマスクパラメータに基づき、パターン701〜703のそれぞれを、図32(b)に示すように、位相シフター部を設ける第1のパターン領域711と、遮光部を設ける第2のパターン領域712とに分類する。このとき、パターンを分類する方法としては、例えばパターン701〜703に対して所定の線幅L0を設定し、L0以下の細い線幅を持つ領域を第1のパターン領域711とし、L0よりも大きい線幅を持つ領域を第2のパターン領域712としてもよい。
次に、ステップS3において、図33(a)に示すように、第1のパターン領域711の内部に、透光部を透過する露光光に対して反転位相で露光光を透過させる位相シフター部721を設けると共に、第2のパターン領域712の内部に遮光部722を設ける。ここで、第1のパターン領域711の内部に設ける位相シフター部721については、第1のパターン領域711が、L1(L1≦L0)の線幅を持つ第1シフター領域と、L2(L1<L2≦L0)の線幅を持つ第2シフター領域とを有する場合、第1シフター領域の内部に設ける位相シフター部721の幅U1は、第2シフター領域の内部に設ける位相シフター部721の幅U2よりも大きいことが好ましい(第2の実施形態参照)。
次に、ステップS4において、図33(b)に示すように、第1のパターン領域711及び第2のパターン領域712のそれぞれの外形領域に、透光部を透過する露光光に対して同位相で且つ部分的に露光光を透過させる半遮光部723を設ける。すなわち、ステップS3で設定した位相シフター部721及び遮光部722のそれぞれを取り囲むように半遮光部723を設定する。このとき、半遮光部723の寸法を所望のレジストパターンを形成できるように設定することが望ましいが、本実施形態では後のステップで近接効果補正(OPC)を行うので、ステップS4では半遮光部723を暫定的な寸法に設定してもよい。
次に、必要に応じて、ステップS5において、図34(a)に示すように、遮光部721の内部に半遮光部724を設けてもよい。
次に、必要に応じて、ステップS6において、図34(a)に示すように、第1のパターン領域711及び第2のパターン領域712のそれぞれの外形領域に配置された半遮光部723の周辺に透光部を介して他の半遮光部725を設けてもよい。
尚、上記ステップS5及びS6は適宜省略可能である。
次に、ステップS7において、本発明のフォトマスクを用いて露光を行ったときに、フォトマスクのマスクパターンと対応して、所望の寸法を持つレジストパターンが形成されるように、マスクパターンの寸法調整を行う処理(つまりOPC処理)の準備を行う。本実施形態では、既にステップS4までに位相シフター部721及び遮光部722の寸法を決定しているので、OPC処理では、半遮光部723の寸法のみを調整することにより、所望のCDを実現できるフォトマスクデータの作成を行う。そのため、例えば図34(b)に示すように、ステップS4で第1のパターン領域711及び第2のパターン領域712のそれぞれの外形領域に配置した半遮光部723の輪郭をCD調整エッジ731〜733に設定する。すなわち、CD調整エッジ731〜733の分割及び/又は移動によって、マスクパターンの外形形状を変形してOPC処理を行う。尚、マスクパターンの各辺上に位置するCD調整エッジ731〜733を分割し、分割によって細分化されたエッジをその単位で移動させてもよい。
次に、ステップS8、ステップS9及びステップS10において、OPC処理(例えばモデルベースOPC処理)を行う。具体的には、ステップS8において、光学原理及びレジスト現像特性並びに必要であればエッチング特性等を考慮したシミュレーションによって、本発明のフォトマスクにより形成されるレジストパターンの寸法(正確にはレジスト非感光領域の寸法)を予測する。続いて、ステップS9において、予測されたパターンの寸法が所望のターゲットパターンの寸法と一致しているかどうかを調べる。一致しない場合、ステップS10において、パターンの予測寸法と所望の寸法との差に基づきCD調整エッジ731〜733を移動させることによって、マスクパターンの外形領域に配置された半遮光部723の外形形状を変形させ、それによりマスクパターンの変形を行う。
ここで、本実施形態の特徴は、マスクパターン内部に設ける位相シフター部及び遮光部のそれぞれの形状をステップS3で所望のパターン寸法に応じて決定し、マスクパターン外形領域を構成する半遮光部の形状のみをステップS8〜S10で変化させることにより、所望の寸法を持つパターンを形成できるマスクパターンを実現することである。すなわち、ステップS8〜S10を、パターンの予測寸法と所望の寸法とが一致するまで繰り返すことにより、最終的にステップS11において、所望の寸法を持つパターンを形成できるマスクパターンを出力する。図35は、ステップS11で出力されたマスクパターンの一例を示している。図35に示すように、位相シフター部821、遮光部822、半遮光部823〜825のそれぞれとなる領域を表すパターンデータの作成が行われている。
以上に説明した、本実施形態に係るマスクデータ作成方法により作成されたマスクパターンを備えた本発明のフォトマスクを用いて、レジストが塗布されたウェハに対して露光を行うと、次のような効果が得られる。すなわち、マスクパターンの外形領域又はその周辺に半遮光部を設けることにより、細線パターンを含む様々な寸法を有するパターンを同時に形成する際に、任意の寸法のパターンの形成に対してMEFの低減が可能となるので、所望の寸法のパターンをウェハ上に精度良く形成することができる。
また、本実施形態によると、本発明のフォトマスクにおいてはマスクパターン外形領域に対するMEFが低減されているため、OPC処理におけるマスク寸法の補正誤差に起因して発生するウェハ上のCD値の形成誤差を低減することができる。
尚、本実施形態において、透過型のフォトマスクを対象として説明を行ってきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば透過率を反射率と読み替える等して、露光光の透過現象を全て反射現象に置き換えて考えれば、反射型マスクを対象とした場合にも、本実施形態と同様のマスクデータ作成を行うことができることは言うまでもない。