JP4323148B2 - n−アルカノイル化ヒアルロン酸もしくはその塩およびその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、n−アルカノイル化ヒアルロン酸もしくはその塩およびその製造法に関する。さらに詳しくは、疎水部位と親水部位を併せ持ち、医療品、食品、化粧品分野などの新しい素材として有用なn−アルカノイル化ヒアルロン酸もしくはその塩およびその製造法に関する
【0002】
【従来の技術】
ヒアルロン酸はN−アセチルーD−グルコサミンとD−グルクロン酸が交互に結合してできた直鎖状の高分子多糖であり、多数の遊離カルボキシル基と多数の遊離ヒドロキシル基を有するために水に対する親和性に富み、任意の量の水に溶けて高粘度の水溶液を形成する。この遊離カルボキシル基と遊離ヒドロキシル基を封鎖する事により物性の異なるヒアルロン酸を入手することが期待される。そのため、医療品、食品、化粧品分野などに使用することを目的として、ヒアルロン酸またはその塩(以下、「ヒアルロン酸(塩)」と記述することがある)の化学修飾が行われている(例えば、特許文献1,2参照。)。しかしながら、従来の何れの反応も水分子の存在する系での反応であり、ヒアルロン酸(塩)の化学修飾に適用しうる有機反応が制限されていた。このため、医療品、食品、化粧品分野などの新しい素材となる疎水部位と親水部位を併せ持つ新しいタイプのヒアルロン酸(塩)の製造は非常に困難であった。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−309902号公報
【特許文献2】
特開平8−53501号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、医療品、食品、化粧品分野などの新しい素材として有用な、疎水部位と親水部位を併せ持つ新しいタイプのヒアルロン酸(塩)について鋭意研究した。その結果、ヒアルロン酸(塩)とカチオン性化合物との複合体を非水系溶媒に溶解し、次いで該複合体をn−アルカノイル基を有する酸ハロゲン化物と反応させることにより、疎水域と親水域を併せ持つ新しいタイプのヒアルロン酸(塩)が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
以上の記述から明らかなように、本発明の目的は、医療品、食品、化粧品分野などの新しい素材として有用な、疎水部位と親水部位を併せ持つ新しいタイプのヒアルロン酸(塩)、特に、非水系での製造であるため発熱物質、抗原性物質などの混入が少なく、さらに体内で代謝されるため特に医薬分野で、例えば手術時等の保湿剤、潤滑剤、創傷被覆剤、さらにはDDS(ドラッグデリバリーシステム)材料として利用できるヒアルロン酸(塩)およびその製造法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の(1)〜(10)で示される。
(1)下記一般式(1)で表されるn−アルカノイル化ヒアルロン酸もしくはその塩。
(式中、R1、R2、R3、およびR4はそれぞれ水素または直鎖状のC5〜C15のn−アルカノイル基を表し、R5は水素、金属陽イオン、またはカチオン性化合物を表し、nは2〜7,500の整数を表す。)。
【0006】
(2)n−アルカノイル基が、下記一般式(2)で表されるn−アルカノイル基である前記(1)記載のn−アルカノイル化ヒアルロン酸もしくはその塩。
CH3−(CH2)m−CO− (2)
(式中、mは4〜10の整数を表す。)。
【0007】
(3)カチオン性化合物が第4級アンモニウム塩である前記(1)記載のn−アルカノイル化ヒアルロン酸もしくはその塩。
【0008】
(4)第4級アンモニウム塩がジステアリルジメチルアンモニウム塩である前記(3)記載のn−アルカノイル化ヒアルロン酸もしくはその塩。
【0009】
(5)ヒアルロン酸もしくはその塩とカチオン性化合物との複合体を非水系溶媒中でハロゲン化n−アルカノイルと反応させることを特徴とする下記一般式(3)で表されるn−アルカノイル化ヒアルロン酸もしくはその塩の製造法。
(式中、R1、R2、R3、およびR4はそれぞれ水素またはC4〜C18のn-アルカノイル基を表し、R5は水素、金属陽イオン、またはカチオン性化合物を表し、nは2〜7,500の整数を表す。)。
【0010】
(6)ハロゲン化n−アルカノイルが、下記一般式(4)で表されるハロゲン化n−アルカノイルである前記(5)記載のn-アルカノイル化ヒアルロン酸もしくはその塩の製造法。
CH3−(CH2)m−CO−A (4)
(式中、mは3〜15の整数を表し、Aはハロゲンを表す。)。
【0011】
(7)ハロゲン化n−アルカノイルが、下記一般式(5)で表されるハロゲン化n−アルカノイルである前記(5)記載のn−アルカノイル化ヒアルロン酸もしくはその塩の製造法。
CH3−(CH2)m−CO−A (5)
(式中、mは4〜10の整数であり、Aはハロゲンを表す。)。
【0012】
(8)非水系溶媒がDMF,エタノール、メタノール、アセトン、クロロホルム、トルエン、塩化メチレンまたはヘプタンから選ばれた1種以上の溶媒である前記(5)記載のn−アルカノイル化ヒアルロン酸もしくはその塩の製造方法。
【0013】
(9)カチオン性化合物が第4級アンモニウム塩である前記(5)記載のn−アルカノイル化ヒアルロン酸もしくはその塩の製造法。
【0014】
(10)第4級アンモニウム塩がジステアリルジメチルアンモニウム塩である前記(9)記載のn−アルカノイル化ヒアルロン酸もしくはその塩の製造法。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明に使用するヒアルロン酸(塩)は特に限定されるものではなく、鶏の鶏冠など各種動物組織由来であっても、ヒアルロン酸(塩)の生産能を有する微生物由来であってもよいが、本発明に使用するヒアルロン酸(塩)は微生物由来であることが好ましい。ヒアルロン酸生産能を有する微生物としては、例えばストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・エクイシミリス(Streptococcus equisimilis)、ストレプトコッカス・エクイ(Streptococcus equi)、ストレプトコッカス・デイスガラクテイエ(Streptococcus dysgalactiae)、ストレプトコッカス・ズーエピデミカス(Streptococcus zooepidemicus)などを挙げることができる。
【0016】
微生物による生産は、例えば、1リットル当たりブドウ糖20〜30g、酵母エキス5g、リン酸1カリウム3g、リン酸2カリウム2g、チオ硫酸ナトリウム0.1g、硫酸マグネシュウム7水塩0.1g、亜硫酸ナトリウム0.02g、塩化コバルト0.01g、塩化マンガン0,01g、泡消剤5gを含む培地に予め準備しておいた種菌を添加し、pH6.0〜8.5、好ましくは7.0、培養温度25℃〜40℃、好ましくは30℃〜35℃で1〜3日間振とう培養もしくは通気培養し、ヒアルロン酸(塩)を該培養液中に生成蓄積させ、該培養液を遠心分離もしくはろ過して菌体を除去した後、ろ過液を限外ろ過もしくは透析することによって低分子量物質を除去し、低分子量物質を除去したろ過液に塩化ナトリウムを溶解後、水溶性有機溶剤を添加してヒアルロン酸ナトリウムを沈殿させ、該沈殿を遠心分離回収後、真空乾燥する方法を挙げることができる。また、和光純薬製、ナカライテスク製、東京化成製、生化学工業製、シグマ製など市販の試薬グレードのヒアルロン酸(塩)を使用しても特に差し支えない。
【0017】
また、本発明において原料として使用するヒアルロン酸(塩)はHPLC法により測定される平均分子量が、少なくとも5000から150万のものが好ましい。該HPLCによる平均分子量の測定には、多糖類の分子量測定に適する任意のカラムを用いることができるが、例えばShodex Ionpak KS806およびIonpak KS-G等のカラムを用いることが好ましい。この場合、溶出液としては0.2mol/L の塩化ナトリウム水溶液を用い、流速1.0ml/分で流し、ヒアルロン酸(塩)の検出は206nmで行うことができる。該平均分子量は極限粘度で求めた分子量既知のヒアルロン酸ナトリウムで作製した検量線を用いて計算により求めることができる。
【0018】
陽イオンとしては、アルカリ金属イオン、カリウムイオン,ナトリウムイオンなどを挙げることができ、本発明においてはナトリウムイオンが好ましい。
【0019】
本発明において用いるカチオン性化合物は、具体的には第4級アンモニウム塩、アミノ基を2個以上有するアミノ酸、ペプチド、ポリアミノ酸の塩、およびアミノ基を有する糖質の塩などを挙げることができ、好ましくは第4級アンモニウム塩である。
【0020】
第4級アンモニウム塩としては、アルキル基のうちの少なくとも1個が炭素数8個以上からなるものが好ましい。具体的には、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド(Distearyldimethylammonium Chloride)、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライド(Dioleyldimethylammonium Chloride)、セチルピリジニウムクロライド(Cetylpyridinium Chloride)、セチルトリメチルアンモニウムクロライド(Cetyltrimethylammonium Chloride)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(Cetyltrimethylammonium Bromide)、ジテトラデシルジメチルアンモニウムブロマイド(Ditetradecyldimethylammonium Bromide)、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(Didodecyldimethylammonium Bromide)、ジデシルジメチルアンモニウム ブロミド(Didecyldimetylammonium Bromide)、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド(Octadecyltrimethylammonium Chloride)、ノルマルオクタデシルトリメチルアンモニウムブロミド(n−Octadecyltrimethylammonium Bromide)、トリドデシルメチルアンモニウムクロライド(Tridodecylmethylammonium Chloride)、トリオクチルメチルアンモニウムブロミド(Trioctylmethylammonium Bromide)、ジオクタノイルL−アルファーフォスファチジルコリン(Dioctanoyl L−α−Phosphatidylcholine)、ジラウロイル、L−アルファーフォスファチジルコリン(Dilauroyl L−α−Phosphatidylcholine)、ジパルミトイル D,L−アルファーフォスファチジルコリン(Dipalmitoyl D,L−α−Phosphatidylcholine)、1,2−ジミリストイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(1,2−Dimyristoyl−3−Trimethylammonium Propane)、1,2―ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(1,2−Dioleoyl−3−Trimethylammonium Propane)、1,2−ジパルミトイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(1,2−Dipalmitoyl−3−Trimethylammonium Propane)、1,2−ジステアロイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(1,2−Distearoyl−3−Trimethylammonium Propane)、ベンザルコニウムクロライド(Benzalkonium Chloride)、ベンゼトニウムクロライド(Benzethonium Chloride)などを挙げることができる。
【0021】
ヒアルロン酸(塩)とカチオン性化合物との複合体とはヒアルロン酸のアニオン性部位(カルボキシル基)とカチオン性化合物とがイオン的に結合したものを言い、その調製法の一例を以下に示す。
【0022】
<ヒアルロン酸(塩)とカチオン性化合物との複合体の調製法>
(A) ヒアルロン酸(塩)を蒸留水またはこれに相当する純水に0.01〜10重量%の濃度、好ましくは0.05〜1重量%の濃度になるように溶解する。なお、本発明において、蒸留水に相当する純水とは、例えば、連続イオン交換(Electric Deionization)および逆浸透(Reverse Osmosis)等により精製した水を意味する。
(B) 一方、ヒアルロン酸(塩)と複合体を形成させるカチオン性化合物、好ましくは第4級アンモニウム塩を蒸留水または純水に添加し、均一に分散させる。
【0023】
(B)で調製したカチオン性化合物の水溶液中のカチオン基と、(A)で調製したヒアルロン酸(塩)の水溶液中のカルボキシル基とのモル比が、0.5〜5:1、好ましくは0.7〜1.5:1、例えば1:1になるように2つの水溶液を混合する。
【0024】
なお、混合する際の温度は室温でも良いが、好ましくは使用するカチオン性化合物のゲル−液晶転移温度以上に両液を加温して行う。
【0025】
混合により発生した水不溶物は通常化学実験で使用する分離法、例えば遠心分離、吸引ろ過、加圧ろ過等の方法で混合液より回収する。回収した水不溶物は、当該カチオン性化合物のゲル−液晶転移温度以上に加温した蒸留水または純水にて洗浄した後、乾燥に供する。乾燥は、通常化学実験で使用する乾燥手段、例えば常圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等により行うことができる。
【0026】
また、本発明において使用しうる非水系溶媒は、例えば、DMF,エタノール、メタノール、アセトン、クロロホルム、塩化メチレン、トルエン、ヘプタン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、DMSO、THF等、またはこれらの2種以上の混合溶媒が包含される。DMF,エタノール、メタノール、アセトン、クロロホルム、塩化メチレン、トルエンもしくはヘプタン、またはこれらの混合溶媒が好ましい。
【0027】
非水系溶媒に溶解させるヒアルロン酸(塩)とカチオン性化合物との複合体の濃度は、特に限定するものではないが、1〜1000mmol/Lの範囲であることが好ましい。
【0028】
該複合体の非水系溶媒への溶解後に行うO−アシル化反応(n−アルカノイル化反応)としては、ピリジンなど塩基性溶剤の存在下、ハロゲン化n−アルカノイルを用いるO−アシル化法(Schotten−Baumann法)などを挙げることができる。ここで、ハロゲン化n−アルカノイルとしては具体的には、n−ブチリルクロライド、n−ヘキサノイルクロライド、n−オクタノイルクロライド、n−デカノイルクロライド、n−ドデカノイルクロライド、n−ステアロイルクロライド等を挙げる事ができ、C4〜C18、好ましくはC5〜C17、より好ましくはC6〜C12のハロゲン化n−アルカノイルである。
【0029】
例えば、O-アシル化反応がn−ドデカノイル化、即ちn−ドデカノイル化ヒアルロン酸(塩)の製造の場合は、上述のように得られたヒアルロン酸(塩)のカチオン性化合物複合体を窒素雰囲気下、DMFに溶解し、ピリジン、n−ドデカノイルクロライドを加え攪拌し、反応液に酢酸ナトリウム飽和エタノールを加え、析出した沈殿をアセトン/水(9/1)で洗浄後、真空乾燥し、n−ドデカノイル化ヒアルロン酸(塩)を得ることができる。
【0030】
本発明のn−アルカノイル化ヒアルロン酸(塩)の用途は、特に限定されるものではないが、医薬品、食品、化粧品分野などに用いられる各種材料として使用可能である。特に本発明のn−アルカノイル化ヒアルロン酸(塩)は、非水系での製造であるため発熱物質、抗原性物質などの混入が少なく、さらに体内で代謝されるため特に医薬分野で、例えば手術時等の保湿剤、潤滑剤、創傷被覆剤、さらにはDDS(ドラッグデリバリーシステム)材料として用いることが可能である。中でもその子宮内における分解速度が、人体(子宮)内のバイオリズムと高い相関性を示すことが期待されていることから、例えば子宮内膜症治療薬を担持する子宮内もしくは膣内埋植用製剤のデバイスとして極めて有効である。
【0031】
【実施例】
以下、実施例をもって本発明を詳細に説明する。
各種のn−アルカノイル化ヒアルロン酸(塩)の製造例を以下に示す。
実施例1
1.n−ブチリル化ヒアルロン酸(塩)の製造
1−1. ヒアルロン酸とジステアリルジメチルアンモニウムクロライド錯体の作製
ヒアルロン酸ナトリウム(チッソ CHA、極限粘度より求めた平均分子量5万、以下、「CHA」と記載する)1.8gを純水300mlに溶解するとともに、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド(以下、DSCと略する)2.47gを560mlの純水にケン濁させた。両液を45℃に加温後攪拌しながら混合し、5分間攪拌を続けた。発生した錯体を遠心分離(5000rpm、室温)にて回収し、45℃の温水にて洗浄した。洗浄終了後、一夜凍結乾燥し、その後、50℃で一夜真空乾燥し、ヒアルロン酸とジステアリルジメチルアンモニウムクロライド錯体(以下CHA−DSCと略する)を得た。収量3.3g、収率85%。
【0032】
1−2.n−ブチリル化ヒアルロン酸の合成
得られたCHA−DSC464mgを窒素雰囲気下、DMF30mlに攪拌溶解させ、目的のDSに必要な量のn−ブチリルクロライド、ピリジンを加え60℃、2時間攪拌した。反応終了後、酢酸ナトリウム飽和エタノール溶液(60 ml)を加え、ゲルを析出させると共にDSCを除去した。これをアセトン/水=9:1の溶液で5回洗浄後、60℃で真空乾燥し、白色固体のn−ブチリル化ヒアルロン酸を得た。
【0033】
実施例2
n−ヘキサノイル化ヒアルロン酸の合成
実施例1の1−1.に準拠して得たCHA−DSC464mgを窒素雰囲気下、DMF30mlに攪拌溶解させ、目的のDSに必要な量のn−ヘキサノイルクロライド、ピリジンを加え60℃、2時間攪拌した。反応終了後、酢酸ナトリウム飽和エタノール溶液(60 ml)を加え、ゲルを析出させると共にDSCを除去した。これをアセトン/水=9:1の溶液で5回洗浄後、60℃真空乾燥し白色固体のn−ヘキサノイル化ヒアルロン酸を得た。
【0034】
実施例3
n−オクタノイル化ヒアルロン酸の合成
実施例1の1−1.に準拠して得たCHA−DSC464mgを窒素雰囲気下、DMF30mlに攪拌溶解させ、n−オクタノイルクロライド16.3mg、ピリジン30mlを加え60℃、2時間攪拌した。反応終了後、酢酸ナトリウム飽和エタノール溶液(60 ml)を加え、ゲルを析出させると共にDSCを除去した。これをアセトン/水=9:1の溶液で5回洗浄後、60℃真空乾燥し白色固体のn−オクタノイル化ヒアルロン酸を得た。
【0035】
実施例4
n−デカノイル化ヒアルロン酸の合成
実施例1の1−1.に準拠して得たCHA−DSC464mgを窒素雰囲気下、DMF30mlに攪拌溶解させ、n−デカノイルクロライド19.1mg、ピリジン30mlを加え60℃、2時間攪拌した。反応終了後、酢酸ナトリウム飽和エタノール溶液(60 ml)を加え、ゲルを析出させると共にDSCを除去した。これをアセトン/水=9:1の溶液で5回洗浄後、60℃真空乾燥し白色固体のn−デカノイル化ヒアルロン酸を得た。
【0036】
実施例5
n−ドデカノイル化ヒアルロン酸の合成
実施例1の1−1.に準拠して得たCHA−DSC464mgを窒素雰囲気下、DMF30mlに攪拌溶解させ、n−ドデカノイルクロライド21.9mg、ピリジン30mlを加え60℃、2時間攪拌した。反応終了後、酢酸ナトリウム飽和エタノール溶液(60 ml)を加え、ゲルを析出させると共にDSCを除去した。これをアセトン/水=9:1の溶液で5回洗浄後、60℃真空乾燥し白色固体のn−ドデカノイル化ヒアルロン酸を得た。
【0037】
実施例6
n−ステアロイル化ヒアルロン酸の合成
実施例1の1−1.に準拠して得たCHA-DSC464mgを窒素雰囲気下、60 ℃でDMF 30 mlに溶解し、ピリジン,目的のDSに必要な量のステアロイルクロライドを加え、2 hr攪拌した。反応溶液に酢酸ナトリウム飽和エタノール60 ml加え、析出した沈殿をアセトン / 水 (9 / 1 ) で5回洗浄した。これを真空乾燥して白色固体のn−ステアロイル化ヒアルロン酸を得た。
なお、ここでいうDSとは各反応条件のHA−DSCと酸ハロゲン化物のモル比で実施した際の理論上のヒアルロン酸二糖単位当たり存在する4個の水酸基へのアルカノイル基の導入割合を表わす。
【0038】
実施例7
実施例1〜6で得られた各n−アルカノル化ヒアルロン酸の溶解性及びゲル化の評価
各n−アルカノル化ヒアルロン酸5mgを各溶剤1mlに添加、試験管ミキサーで均一にした後、室温で一日放置し、その状態を観察し、その結果を表1〜3に示した。
各表中で溶液特性の表現は以下の状態を意味する
可溶:溶媒に完全に溶解し、ゲル等の形成しない状態
不溶:白色固体のまま溶媒に溶解しない状態
S−G(ゾル-ゲル):溶媒中に細かいゲルを形成した状態
不均一G(不均一ゲル):ゲルではあるが均一性を欠くゲル
G(ゲル):均一のゲル
【0039】
表 1 各種n−アルカノイル化ヒアルロン酸の溶解特性
【0040】
表 2 DSが異なるn-ブチリル化およびヘキサノイル化ヒアルロン酸の溶解特性
【0041】
表 3 DSの異なるn-ステアロイル化ヒアルロン酸の溶解特性
【0042】
【発明の効果】
本発明のn−アルカノイル化ヒアルロン酸もしくはその塩は、、疎水域と親水域を併せ持つ新しいタイプのヒアルロン酸(塩)であり、医療品、食品、化粧品分野などの新しい素材として極めて有用である。特に本発明のn−アルカノイル化ヒアルロン酸(塩)は、非水系での製造であるため発熱物質、抗原性物質などの混入が少なく、さらに体内で代謝されるため特に医薬分野で、例えば手術時等の保湿剤、潤滑剤、創傷被覆剤、さらにはDDS(ドラッグデリバリーシステム)材料として利用できる。また、本発明のn−アルカノイル化ヒアルロン酸もしくはその塩の製造法は、ヒアルロン酸(塩)とカチオン性化合物との複合体を非水系溶媒に溶解し、次いで該複合体をn−アルカノイル基を有する酸ハロゲン化物と反応させることにより、疎水部位と親水部位を併せ持ち、医療品、食品、化粧品分野などの新しい素材として有用なヒアルロン酸(塩)を容易に製造することができる。
Claims (5)
- ハロゲン化n−アルカノイルが、下記一般式(4)で表されるハロゲン化n−アルカノイルである請求項1記載のn−アルカノイル化ヒアルロン酸もしくはその塩の製造法。
CH3−(CH2)m−CO−A (4)
(式中、mは3〜15の整数であり、Aはハロゲンを表す。)。 - ハロゲン化n−アルカノイルが、下記一般式(5)で表されるハロゲン化n−アルカノイルである請求項1記載のn−アルカノイル化ヒアルロン酸もしくはその塩の製造法。
CH3−(CH2)m−CO−A (5)
(式中、mは4〜10の整数であり、Aはハロゲンを表す。)。 - 非水系溶媒がDMF,エタノール、メタノール、アセトン、クロロホルム、トルエン、塩化メチレンまたはヘプタンから選ばれた1種以上の溶媒である請求項1記載のn−アルカノイル化ヒアルロン酸もしくはその塩の製造方法。
- 第4級アンモニウム塩がジステアリルジメチルアンモニウム塩である請求項1記載のn−アルカノイル化ヒアルロン酸もしくはその塩の製造法。
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