以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明を適用した液滴吐出装置1を模式的に表した平面図である。この液滴吐出装置1は、特殊なインクや発光性の樹脂液等の機能液を機能液滴吐出ヘッド16に導入して、基板等のワークW上に機能液滴による成膜部を形成するものである。
液滴吐出装置1は、機台2と、機台2上の全域に広く載置された描画装置3と、機台2上の端部に設置されたヘッド機能回復装置4と、ヘッド機能回復装置4の各種ユニットを一括載置して機台2上を移動させるメンテナンス系移動テーブル5と、描画装置3とヘッド機能回復装置4との間に配設された機能液滴吐出検査装置6と、を備え、機能液滴吐出検査装置6により機能液滴吐出ヘッド16の吐出特性を検査し、その検査結果に基づいてヘッド機能回復装置4により機能液滴吐出ヘッド16の保守動作を行うと共に、描画装置3によりワークW上に機能液滴による描画を行うようにしている。さらに、図1では図示省略したが、この液滴吐出装置1には、各機能液滴吐出ヘッド16に機能液を供給する給液タンク等を備える機能液供給機構7(図3参照)や、上記の描画装置3や機能液滴吐出検査装置6等の構成装置を統括制御する制御装置8(図3参照)等が組み込まれている。
描画装置3は、X軸テーブル12およびX軸テーブル12に直交するY軸テーブル13から成るXY移動機構11と、Y軸テーブル13に移動自在に取り付けたメインキャリッジ14と、メインキャリッジ14に垂設したヘッドユニット15とを有している。そして、ヘッドユニット15には、サブキャリッジ(図示省略)を介して、機能液滴吐出ヘッド16が搭載されている。この場合、基板であるワークWは、X軸テーブル12の端部に臨む一対のワーク認識カメラ17,17により、X軸テーブル12に位置決めされた状態で搭載されている。なお、機能液滴吐出ヘッド16は、ワークWに対して機能液滴の十分な塗布密度を確保するために副走査方向(Y軸方向)に対して所定角度傾けて配設することが可能である。また、図示のヘッドユニット15には、1個の機能液滴吐出ヘッド16が搭載されているが、これが複数であってもよい。
X軸テーブル12は、X軸方向の駆動系を構成するモータ駆動のX軸スライダ21を有し、これにワークWを吸着搭載する吸着テーブル23およびワークθ軸テーブル24等から成るワークテーブル22を移動自在に搭載して、構成されている。同様に、Y軸テーブル13は、Y軸方向の駆動系を構成するモータ駆動のY軸スライダ31を有し、これにヘッドθ軸テーブル32を介して上記のメインキャリッジ14を移動自在に搭載して、構成されている。
この場合、X軸テーブル12は、機台2上に直接支持される一方、Y軸テーブル13は、機台2上に立設した左右の支柱33,33に支持されている。X軸テーブル12とメンテナンス系移動テーブル5とは、X軸方向に相互に平行に配設されており、Y軸テーブル13は、X軸テーブル12とメンテナンス系移動テーブル5とを跨ぐように延在している。
そして、Y軸テーブル13は、これに搭載したヘッドユニット15を、X軸テーブル12の直上部に位置する描画エリア41と、メンテナンス系移動テーブル5の直上部に位置する機能回復エリア42と、機能液滴吐出検査装置6の直上部に位置する吐出検査エリア43との相互間で、適宜移動させる。すなわち、Y軸テーブル13は、X軸テーブル12に導入したワークWに描画を行う場合には、ヘッドユニット15を描画エリア41に臨ませ、機能液滴吐出ヘッド16の機能回復処理を行う場合には、ヘッドユニット15を機能回復エリア42に臨ませ、機能液滴吐出ヘッド16の各ノズル65の吐出特性を検査する場合には、吐出検査エリア43に臨ませる。
一方、X軸テーブル12の一方の端部は、ワークWをX軸テーブル12にセットするためのワーク導入エリア44となっており、このワーク導入エリア44には、上記一対のワーク認識カメラ17,17が配設されている。そして、この一対のワーク認識カメラ17,17により、吸着テーブル23上に供給されたワークWの2箇所の基準マークが同時に認識され、この認識結果に基づいて、ワークWのアライメントがなされる。
図2に示すように、機能液滴吐出ヘッド16は、いわゆる2連のものであり、2連の接続針52,52を有する機能液導入部51と、機能液導入部51に連なる2連のヘッド基板53と、機能液導入部51の下方(同図では上方)に連なり、内部に機能液で満たされるヘッド内流路が形成されたヘッド本体54と、を備えている。各接続針52は、配管アダプタ(図示省略)を介して機能液を貯留する機能液供給機構7(の給液タンク)に接続されており、機能液導入部51は、各接続針52から機能液の供給を受けるようになっている。また、ヘッド本体54は、圧電振動子等で構成される2連のポンプ部61と、2本のノズル列64,64を相互に平行に形成したノズル面63を有するノズルプレート62と、を有している。各ノズル列64は、多数(180個)のノズル65が等ピッチで並べられて構成されている。
ノズルプレート62はステンレス等で構成されており、そのノズル面63および各ノズル65の内面には共晶メッキにより撥水膜が形成されており、機能液によって侵食されないようになっている。また、各ノズル65の直径は、例えば、25μmである。
ヘッド基板53には、2連のコネクタ66,66が設けられており、各コネクタ66はフレキシブルフラットケーブ(図示省略)を介してヘッドドライバ211(図3参照)に接続されている。そして、後述するタイミング信号供給手段121(図3参照)から出力されたタイミング信号が制御装置8に供給されることにより、ヘッドドライバ211を介して各ポンプ部61に駆動波形が印加される。なお、詳細は後述するが、本実施形態では、タイミング信号供給手段121により、本吐出を行う場合の駆動波形と検査用の微振動波形との2種類の駆動波形が生成される。
ポンプ部61を構成する圧電振動子には、例えば縦振動横効果のピエゾ素子が用いられ、充電されると収縮し、放電すると伸張し、ヘッド内流路を構成する圧力発生室に圧力変動を生じさせるようになっている。そして、吐出する機能液滴の重量を少なくし描画ドット径が小さくなるように、機能液を収容した圧力発生室を膨張させてから収縮させるという、いわゆる「引き打ち」が常用されている。そして、圧力発生室に圧力変動が生ずると、各ノズル65のメニスカスM(図7参照)が一旦引き込まれた後、ノズル65の吐出面(ノズル面63)から突出し、機能液滴が吐出される(詳細は後述する)。このようにして、制御装置8によりヘッドドライバ211を介して機能液滴吐出ヘッド16の駆動が制御されている。
なお、ポンプ部61は、外部から与えられる信号に応じて、圧力発生室に圧力変動を生じさせる素子あれば、他の構成であってもよい。例えば、圧電振動子は、縦振動横効果のピエゾ素子に限らず、たわみ振動型のピエゾ素子でもよい。また、圧電振動子に限らず、磁歪素子等の他の素子を用いてもよい。さらに、ヒータ等の熱源によって機能液を加熱させ、加熱により生じた気泡によって圧力を変化させる構成であってもよい。
ここで、図1を参照して、描画装置3によるワークWへの吐出動作、すなわち描画動作について簡単に説明する。まず、機能液滴を吐出する前の準備として、吸着テーブル23にセットされたワークWの位置補正が、X軸テーブル12によるX軸方向の位置補正およびワークθ軸テーブル24によるθ軸方向の位置補正によりなされると共に、メインキャリッジ14にセットされたヘッドユニット15の位置補正が、Y軸テーブル13によるY軸方向の位置補正およびヘッドθ軸テーブル32によるθ軸方向の位置補正によりなされる。
次に、ワークWをX軸テーブル12により主走査方向(X軸方向)に往復動させると共に、これに同期して機能液滴吐出ヘッド16を選択的に駆動させて、ワークWに対する機能液の吐出が行われる。そして、ワークWを復動させた後、ヘッドユニット15をY軸テーブル13により副走査方向(Y軸方向)に移動させ、再度ワークWの主走査方向への往復移動と機能液滴吐出ヘッド16の駆動とが行われる。そして、これを複数回繰り返すことで、ワークWの端から端まで描画が行われる。
なお、本実施形態の液滴吐出装置1では、X軸方向へのワークWの移動を主走査とし、Y軸方向へのヘッドユニット15の移動を副走査として、描画動作が行われるが、ヘッドユニット15を主走査方向に移動させる構成であってもよい。また、ワークWを固定とし、ヘッドユニット15をX軸方向およびY軸方向に移動させる構成であってもよい。
メンテナンス系移動テーブル5は、機台2本体の長手方向(X軸方向)に延在しており、ヘッド機能回復装置4の各種ユニットを分散して載置する共通ベース71と、共通ベース71をX軸方向にスライド自在に支持する一対のガイドレール72と、モータ駆動のX軸移動機構(図示省略)とを備えており、共通ベース71上に分散して載置されたヘッド機能回復装置4の各種ユニットをX軸方向に移動させる。
ヘッド機能回復装置4は、上記のメンテナンス系移動テーブル5上に互いに隣接して載置した保管ユニット81と、吸引ユニット82と、ワイピングユニット83と、上記のワークテーブル22に配設したフラッシングユニット84と、を備えている。このヘッド機能回復装置4による機能液滴吐出ヘッド16の機能回復処理(保守動作)は、上述したように機能液滴吐出検査装置6の検査結果に基づいて行われると共に、定期的にも行われるものである。
保管ユニット81は、液滴吐出装置1の稼動停止時に、機能液滴吐出ヘッド16のノズル65の乾燥を防止すべくこれを封止する。すなわち、保管ユニット81には、機能液滴吐出ヘッド16に対応する封止キャップ91と、これを昇降させる昇降機構(図示省略)とが設けられており、装置の稼動停止時にヘッドユニット15に臨んで上昇し、機能液滴吐出ヘッド16のノズル面63に封止キャップ91を密着させて、これを封止する。これにより、機能液滴吐出ヘッド16のノズル面63における機能液の溶剤の気化が抑制され、いわゆるノズル詰まりが防止される。
吸引ユニット82は、機能液滴吐出ヘッド16をノズル65側から吸引するものであり、機能液滴吐出ヘッド16内で増粘した機能液を除去するための吸引(クリーニング)を行う場合に用いられる。すなわち、吸引ユニット82には、機能液滴吐出ヘッド16に対応して位置し、底部位に液体吸収材が敷設された吸引キャップ101と、図示しないが、吸引キャップ101を介して機能液滴吐出ヘッド16の吸引を行う吸引ポンプと、吸引キャップ101を昇降させる昇降機構とが設けられており、吸引キャップ101を上昇させ機能液滴吐出ヘッド16のノズル面63に密着させて、ポンプ吸引を行う。そして、吸引した機能液は、後述する機能液回収装置7の回収タンク121に導かれるようになっている。
ワイピングユニット83は、シート供給ユニット111と、拭取りユニット112とを備えており、ワイピングシート113が繰出し且つ巻取り自在に設けられている。また、図示しないが、洗浄液タンクに貯留する洗浄液(機能液の溶媒等)を洗浄液散布ノズルを介してワイピングシート113に供給する洗浄液供給装置を備えている。シート供給ユニット111と拭取りユニット112とは、メンテナンス系移動テーブル5上に、拭取りユニット112を上記の吸引ユニット82側に位置させてX軸方向に並べて配置されており、機能回復エリア42に存するヘッドユニット15に向けてメンテナンス系移動テーブル5の動きにより拭取りユニット112がシート供給ユニット111と一体に払拭方向たるX軸方向の一方(図1では上方)に移動し、洗浄液を染み込ませたワイピングシート113を介して、ヘッドユニット15の機能液滴吐出ヘッド16のノズル面63を払拭する。
これらの各ユニットにより機能液滴吐出ヘッド16の機能回復を行う場合には、メンテナンス系移動テーブル5により吸引ユニット82を機能回復エリア42に移動させると共に、上述したようにY軸テーブル13によりヘッドユニット15を機能回復エリア42に移動させ、機能液滴吐出ヘッド16のクリーニング(ポンプ吸引)を行う。またクリーニングを行った場合には、続いてメンテナンス系移動テーブル5によりワイピングユニット83を機能回復エリア42に移動させ、クリーニングによりノズル面63が汚れた機能液滴吐出ヘッド16のワイピングを行う。
一方、フラッシングユニット84は、上記の描画装置3が描画動作を行う場合、前回の描画動作からかなりの時間が経っていると、ノズル65内の機能液が乾燥により増粘してしまい、ノズル詰まりや過小径の機能液滴が吐出される等の吐出不良が生ずるおそれがあるため、ワークWに吐出する直前に、機能液滴のフラッシング(捨て吐出)を行うためのものである。フラッシングユニット84は、その内部に液体吸収材が敷設された一対のフラッシングボックス116,116を有しており、この一対のフラッシングボックス116,116は、上記のワークテーブル22の吸着テーブル23をX軸方向に挟むように配設されている。すなわち、一対のフラッシングボックス116,116は、X軸テーブル12によりワークテーブル22(ワークW)と共に移動するようになっている。
上述したワークWへの描画動作において、ワークWがセットされたワークテーブル22と共にフラッシングユニット84が往動していくと、最初に図示の上側のフラッシングボックス116がヘッドユニット15の直下を通過する。このとき、機能液滴吐出ヘッド16が多数発の機能液滴のフラッシングを行い、機能液滴吐出ヘッド16は、そのまま通常の液滴吐出動作に移行する。同様に、フラッシングユニット84が復動していくと、最初に図示下側のフラッシングボックス116がヘッドユニット15の直下を通過する。このとき、機能液滴吐出ヘッド16がフラッシングを行い、機能液滴吐出ヘッド16は、そのまま通常の液滴吐出動作に移行する。このようにして、主走査のための往復動中に適宜フラッシングを行うことで、ノズル65のノズル詰まり等を防止することができる。
さらに、ワークWの交換時のように、ワークWに対する機能液の吐出が一時的に休止されるときには、上記の吸引キャップ101をフラッシングボックスとして、機能液滴吐出ヘッド16から僅かに離間させておいてフラッシングを行う。これにより、ノズル詰まりが防止されあるいはノズル詰まりの生じた機能液滴吐出ヘッド16の機能回復が図られる。
なお、このように、フラッシングには、ワークWに機能液を吐出させる直前にフラッシングボックス116に対して行われる吐出前フラッシングと、機能液の吐出を休止するときに吸引キャップ101に対して定期的に行われる定期フラッシングとがある。
ここで、制御装置8により構成される液滴吐出装置1の制御系について説明する。図3に示すように、液滴吐出装置1の制御系は、基本的に、各種データをその操作により入力するキーボードやマウス等を有する入力部201と、機能液滴吐出検査装置6の検査結果等を画面表示するモニター203を有する表示部202と、機能液滴吐出ヘッド16やモニター203等を駆動する各種ドライバを有する駆動部204と、これら各部を含め液滴吐出装置1を統括制御する制御部205と、を備えている。
駆動部204は、機能液滴吐出ヘッド16を吐出駆動制御するヘッドドライバ211と、モニター203を駆動制御するモニタードライバ212と、XY移動機構11の各モータを駆動制御する描画系移動用ドライバ213と、メンテナンス系移動テーブル5を駆動制御するメンテナンス系移動用ドライバ214と、ヘッド機能回復装置4の吸引ユニット82およびワイピングユニット83を駆動制御するメンテナンス用ドライバ215と、機能液滴吐出検査装置6のレーザドップラ振動計131、レーザ距離計132、撮像ユニット133およびXYステージ134(測定系移動手段)をそれぞれ駆動制御する振動計用ドライバ216、距離計用ドライバ217、撮像用ドライバ218および測定系移動用ドライバ219とを備えている。
制御部205は、CPU221と、ROM222と、RAM223と、P−CON224とを備え、これらは互いにバス225を介して接続されている。ROM222は、CPU221で処理する制御プログラムや制御データを記憶する制御プログラム領域や、検査作業や描画作業を行うための制御データ等を記憶する制御データ領域を有している。RAM223は、各種レジスタ群や、オペレーターが入力部201により入力した各種データ等を記憶する記憶部を有し、制御処理のための各種作業領域として使用される。
P−CON224には、駆動部204の各種ドライバや入力部201の他、上記の機能液供給機構7等が接続されている。P−CON224には、CPU221の機能を補うと共に周辺回路とのインターフェース信号を取り扱うための論理回路が、ゲートアレイやカスタムLSIなどにより構成されて組み込まれている。このため、P−CON224には、入力部201からの各種指令や画像データなどをそのままあるいは加工してバスに取り込むと共に、CPU221と連動して、CPU221等からバス225に出力されたデータや制御信号を、そのままあるいは加工して駆動部204に出力する。
そして、CPU221は、上記の構成により、ROM222内の制御プログラムにしたがって、P−CON224を介して各種検出信号、各種指令、各種データ等を入力し、RAM223内の各種データ等を処理した後、P−CON224を介して駆動部204に各種の制御信号を出力することにより、液滴吐出装置1全体を制御している。
例えば、CPU221は、ワークWに対し描画動作を行う場合には、機能液滴吐出ヘッド16の吐出駆動をそれぞれ制御すると共に、XY移動機構11によりワークWおよびヘッドユニット15の走査範囲の移動動作等を制御する。また、機能液滴吐出ヘッド16の機能回復を行う場合には、ヘッド機能回復装置4の機能回復測定エリア42にてXY移動機構11により機能液滴吐出ヘッド16の移動動作を制御すると共に、機能液滴吐出ヘッド16の吐出駆動、メンテナンス系移動テーブル5の移動動作等を制御する。さらに、詳細は後述するが、機能液滴吐出ヘッド16の各ノズル65の吐出特性を検査する場合には、機能液滴吐出検査装置6への微振動波形の印加、レーザドップラ振動計131の測定動作等を制御する。
次に、液滴吐出装置1に備えられる機能液滴吐出検査装置6について詳細に説明する。機能液滴吐出検査装置6は、例えば描画動作(吐出前フラッシング)の直前に、機能液滴吐出ヘッド16の各ノズル65のメニスカスMの変位を複数の変位測定位置において測定し、メニスカスMの立体的変位を求めるものである。
図4に示すように、機能液滴吐出検査装置6は、吐出検査エリア43(図1参照)に位置して、機台2上に固定されたスタンド(図示省略)上に主要部が載置されており、制御装置8にタイミング信号を供給するタイミング信号供給手段121と、機能液滴吐出ヘッド16に対し、ノズル65からの機能液滴の吐出を伴わない微振動波形を印加して、メニスカスMを律動させる微振動波形印加手段と、律動しているメニスカスMの変位を測定するレーザドップラ振動計131や撮像ユニット133等で構成された測定部122と、メニスカスMの立体画像や撮像されたノズル65の撮像画面を表示する上記のモニター203と、ノズル65の撮像画面上で複数の変位測定位置を選択する上記の入力部201(選択手段)と、これらを統括・制御すると共に、メニスカスの立体的変位を表す面データを合成する経過時間面データ合成手段123(面データ合成手段)や変位補正手段124等を有する上記の制御装置8とを備えている。なお、この微振動波形印加手段としては、上記のヘッドドライバ211を機能させている。また、タイミング信号供給手段121は、CPU221等のクロック発生回路から分周により所定のタイミング信号(トリガーパルス)を生成する。
ヘッドドライバ211は、機能液滴吐出ヘッド16の各ポンプ部61に対し、供給されたタイミング信号(PTS)に同期して、タイミング信号の供給から所定時間(例えば2マイクロ秒)後に、駆動波形および微振動波形を選択的に印加する(図5および図6参照)。上述したように、駆動波形は、各ノズル65から機能液滴を吐出させるためのものであり、微振動波形は、各ノズル65から機能液滴を吐出させることなく、メニスカスを律動させるためのものである。
駆動波形は、図5に示すように、その電圧値が中間電位Vmからスタートし(P11)、中間電位Vmから所定の電圧勾配θCM1で(例えば3マイクロ秒かけて)最大電位Vhまで上昇し(P12)、最大電位Vhを所定時間(例えば3マイクロ秒)だけ維持する(P13)。次に、駆動波形の電圧値は、最大電位Vhから所定の電圧勾配θDM1をもって(例えば5マイクロ秒かけて)最低電位Vlまで降下する(P14)。なお、充電時の電圧勾配θCM1よりも放電時の電圧勾配θDM1の方が大きくなるように設定されている。そして、駆動波形は、最低電位Vlを所定時間(例えば3マイクロ秒)だけ保持した後(P15)、再び中間電位Vmまで上昇する(P16)。
駆動波形の印加によるメニスカスM(ノズル65付近の機能液)の状態の変化を図7に示す。中間電位VmにあるP11の状態では、メニスカスMは、ノズルプレート62に形成された撥水膜と機能液との表面張力等によって、ノズル65の吐出面から若干引き込まれた(逆凹形状)状態にある。次に、中間電位Vmから最大電位Vhに上昇するP12の状態では、ポンプ部61が収縮して圧力発生室が膨張し、メニスカスMがノズル65の奥に引き込まれる。P13の状態では、一旦引き込まれたメニスカスMが、引き込まれる直前の位置に復帰しない程度の時間だけ、最大電位Vhを維持する。P14の状態では、メニスカスMをノズル65の奥に引き込んだ状態で、ポンプ部61を最大電位Vhから最低電位Vlまで急速に放電させる。これにより、ポンプ部61が伸張して圧力発生室が収縮し、メニスカスMがノズル65の吐出面から突出し始める。最低電位Vlを維持するP15の状態でも、慣性によりメニスカスMの突出が続く。そして、P16の状態では、メニスカスMが突出した状態でポンプ部61(圧電振動子)を再び中間電位Vmまで充電する。これにより、ポンプ部61が収縮して圧力発生室が膨張し、ノズル65から外部に突出した機能液が引きちぎられて、機能液滴が吐出される。
一方、微振動波形は、図6に示すように、駆動波形と同様に、中間電位Vmからスタートして(P21)、中間電位Vmから所定の電圧勾配θCM2で(例えば3.5マイクロ秒かけて)微振動電位Vvまで上昇する(P22)。そして、この微振動電位Vvを所定時間(例えば3マイクロ秒)維持した後(P23)、所定の電圧勾配θDM2で(例えば3.5マイクロ秒かけて)中間電位Vmまで下降する(P24)。ここで、微振動波形は、機能液滴を吐出しない程度の微振動を与えるものであるから、微振動電位Vvは、駆動波形の最大電位Vhよりも小さい((Vv−Vm)は(Vh−Vm)の1/2程度)。また、微振動波形の充電時の電圧勾配θCM2と放電時の電圧勾配θDM2とは略等しい。
微振動波形の印加によるノズル65付近のメニスカスMの状態の変化を図8に示す。中間電位VmにあるP21の状態では、上記のP11の状態と同様に、メニスカスMはノズル65から若干引き込んだ位置にある。次に、中間電位Vmから微振動電位Vvまでポンプ部61(圧電振動子)を充電すると(P22)、ポンプ部61が収縮して圧力発生室が膨張するため、メニスカスMがノズル65内に引き込まれる。もっとも、微振動電位Vvは最大電位Vhに比べて小さいため、メニスカスMの引き込み量は僅かである。微振動電位Vvを短時間だけ保持するP23の状態では、メニスカスMはノズル65内に少しだけ引き込まれた状態を維持している。そして、微振動電位Vvから中間電位Vmまでポンプ部61(圧電振動子)を放電させるP24の状態では、圧力発生室が収縮するため、メニスカスMはノズル65の吐出面に向けて押し戻される。このように、微振動波形は、浅い放充電を行わせるため、圧力発生室内の圧力変化が少なく、ノズル65から機能液滴を吐出させずにメニスカスMを律動させることができる。
測定部122は、各変位測定位置毎に律動しているメニスカスMの変位を測定するレーザドップラ振動計131と、非律動時におけるメニスカスMとの離間距離を複数の変位測定位置で測定するレーザ距離計132と、レーザドップラ振動計131に搭載されてその対物レンズ154と一体にセンサヘッド部(図示省略)を構成し、ノズル65を下方から撮像する撮像ユニット133と、機能液滴吐出ヘッド16に対し、レーザドップラ振動計131およびレーザ距離計132を一体として移動させるモータ駆動のXYステージ134とを備えている。
なお、詳細は後述するが、この測定部122により測定される複数の変位測定位置は、上記の入力部201の操作により選択され、メニスカスの中心点を含むと共に、当該中心点を中心とした1または複数の同心円上に分布しており、微振動しているメニスカスの立体的変位を適切に捉えることができるようになっている。
レーザドップラ振動計131は、律動しているメニスカスMの変位速度を経時的に複数回に亘って計測し、この複数回の計測結果からメニスカスMの変位を求めるものである。図9は、レーザドップラ振動計131の測定原理を示すブロック図である。レーザドップラ振動計131は、メニスカスMにレーザ光(照射光)を照射する照射部141と、メニスカスMで反射したレーザ光(反射光)と参照するための参照光を生成する参照光生成部142、反射光および参照光を受光する受光部143と、反射光と参照光との干渉光に基づいて、メニスカスMの変位速度を求める信号処理部144とを備えている。
照射部141は、He−Neレーザ(波長632.8nm)等で構成されるレーザ光源151と、レーザ光源151から出射したレーザ光を第1レーザ光と第2レーザ光とに二分する第1スプリッタ152と、二分されたレーザ光のうち一方の第1レーザ光を透過する偏光スプリッタ153と、第1レーザ光を照射光としてメニスカスMに集光する対物レンズ154と、を備えている。対物レンズ154により集光された照射光のスポット径は、略2〜3μmである。そして、メニスカスMから反射されたレーザ光(反射光)が偏光スプリッタ153およびミラー155を介して受光部143の第2スプリッタ156に送られる。
参照光生成部142は、上記の第1スプリッタ152で二分されたレーザ光のうち他方の第2レーザ光の周波数を、音響光学的にシフトする周波数シフタ157を備えている。第2レーザ光は、反射光側の光路長と略同一の光路長にして反射光との干渉性を保持するため、図示せぬ光路を経由した後、周波数シフタ157に入射し、周波数シフタ157で周波数シフトされた第2レーザ光が、参照光として第2スプリッタ156に送られる。
受光部143は、照射部141および参照光生成部142からそれぞれ送られた反射光および参照光を透過して、信号処理部144に入射させる。信号処理部144では、上記の周波数シフタ157により一定の周波数シフトを与えられたレーザ光が参照光として使用され、この参照光とメニスカスMからの反射光とが光干渉を起こす。これにより、正・負の符号をもった速度信号として、メニスカスMの変位速度に比例した電圧信号が得られる。そして、得られた電圧信号を積分処理することによりメニスカスMの変位を算出し、求められたメニスカスMの変位が制御装置8に出力される。なお、メニスカスMの変位速度に比例した電圧信号をそのまま制御装置8に出力し、制御装置8に組み込まれた計算ソフトウェアによりメニスカスMの変位を求めるようにしてもよい。
また、上述したように、レーザドップラ振動計131による変位速度の計測は、第1回目のタイミング信号の印加に対し、タイミング信号の供給から1マイクロ秒後に開始される(同図では、計測のタイミングを矢印で示す。)。すなわち、ヘッドドライバ211からポンプ部61への微振動波形の印加は、タイミング信号の供給から2マイクロ秒後に開始されることから、レーザドップラ振動計131により、メニスカスMが微振動波形の印加によりノズル65内への引き込みを開始する1マイクロ秒前から、メニスカスMの変位の測定が行われる。これによれば、微振動波形の印加によるメニスカスMの律動の開始に合わせて、レーザドップラ振動計131によるメニスカスMの変位の測定を開始できるため、律動しているメニスカスMの変位を的確に測定することができる。なお、タイミング信号の供給から微振動波形が印加されるタイミングおよびレーザドップラ振動計131による測定が開始されるタイミングは、使用する機能液滴吐出ヘッド16や機能液の種類等によって変更可能な構成とすることが好ましい。
図6に示すように、このレーザドップラ振動計131による変位速度の計測は、1回の微振動波形の印加に対し、経時的に複数回に亘って行われる。もっとも、レーザドップラ振動計131が、メニスカスMの微振動の周期(例えば5マイクロ秒)に比べてサンプリング周期の長い(例えば20マイクロ秒)ものである場合には、経時的に複数回に亘る測定を、微振動波形を複数回印加し、各印加に対しタイミングを所定時間(例えば、1マイクロ秒)ずつずらして計測すること行うようにする。すなわち、制御装置8に供給される第1回目のタイミング信号の印加に対しては、タイミング信号の供給から1マイクロ秒後に計測され、第2回目のタイミング信号の印加に対しては、タイミング信号の供給から2マイクロ後に計測され、以後同様に行う。
このようにして測定されたメニスカスMの変位を、タイミング信号および微振動波形のタイムチャートと共に図6に示す。なお、同図のメニスカスMの変位は、機能液滴を正常に吐出し得るノズル65に対し微振動波形を印加した場合のものである。
なお、本実施形態では、外部から画像認識することが困難なノズル65内において、数マイクロ秒という瞬時の周期で律動するメニスカスMの変位を測定するため、その測定手段として、外部からレーザ光を照射して計測でき、且つサンプリング周期の比較的短いレーザドップラ振動計131を用いたが、ノズル65内における瞬時のメニスカスMの律動を観察できるものであれば、他の測定手段を用いてもよい。
レーザ距離計132は、XYステージ134上にレーザドップラ振動計131に併設されている。そして、内部にレーザ発振器を備え、レーザ光を測定として、その反射光の位相を利用して、各変位測定位置において、非律動時におけるメニスカスMとの距離を測定する。この測定結果は、制御装置8に出力される。
なお、非律動時とは、微振動波形を印加する前(または、微振動波形の印加による律動が完全に収束した後)のメニスカスMの状態をいう(図11(a)参照)。また、機能液と機能液滴吐出ヘッド16の種類により非律動時におけるメニスカスMの形状(レーザ距離計132との離間距離)が一定である場合には、逐次レーザ距離計132によりメニスカスMとの離間距離を各変位測定位置で測定しなくともよい。
撮像ユニット133は、レーザドップラ振動計131のセンサヘッド部に搭載され、ノズル65を撮像する照明付きのCCDカメラ(図示省略)と、CCDカメラで画像認識したノズル65の認識画像を例えばテンプレート等により画像処理して、メニスカスMの中心点を検出する画像処理手段162とを備えている。この画像処理手段162は、上記の制御装置8に組み込まれるいわゆる画像処理ソフトウェアで構成されたものである。また、図10に示すように、CCDカメラによるノズル65の撮像結果は、検出された中心点を中心としてノズルを均等に区分する格子状の罫線L(5行5列)と共に、上記のモニタードライバ212を介してモニター203上に表示される。すなわち、ノズル65の撮像画像上で、罫線Lによりノズル65が均等に25個のマス(マトリクス)に区分される。なお、罫線Lは、変位測定位置を適切に選択するため、5行5列以上であることが好ましい。もちろん、モニター203には、機能液滴吐出ヘッド16や機能液の種別、対象ノズル65の番号等も表示される(図示省略)。
そして、入力部201のマウス等により、罫線Lにより区分されたノズル65の画像上で、複数の変位測定位置が選択される。この際、複数の変位測定位置が、メニスカスの中心点を含むと共に、当該中心点を中心とした1または複数の同心円上に分布するように、例えば、罫線Lによって区分された25マスのうち、「行,列」が「2,2」、「2,4」、「3,3」、「4,2」および「4,4」に位置する5マスを選択する(図10では、選択したマスが塗りつぶされている。)。また、検査の目的等に応じて、複数の変位測定位置を任意の位置(例えば、ノズルの周縁部のみ)に分布させてもよい。このように、罫線Lが表示されることで、複数の変位測定位置を任意の位置に適切に分布させることができる。
なお、常に一定の複数の変位測定位置において測定する場合には、複数の変位測定位置を制御装置8に記憶させておき、逐次選択することなく測定されるようにしてもよい。
XYステージ134は、選択された複数の変位測定位置(選択した各マスの中心位置)におけるメニスカスMの変位が順に測定されるように、機能液滴吐出ヘッド16に対しレーザドップラ振動計131およびレーザ距離計132を一体として移動させるものである。すなわち、1の変位測定位置におけるレーザドップラ振動計131との離間距離が測定されるようにレーザ距離計132をレーザドップラ振動計131と共に移動させ、離間距離の測定後、その変位測定位置におけるメニスカスMの変位が測定されるようにレーザドップラ振動計131をレーザ距離計132と共に移動させ、メニスカスMの変位の測定後、次の変位測定位置における離間距離が測定されるようにレーザ距離計132をレーザドップラ振動計131と共に移動させる。
なお、独自のXYステージ134を備える代わりに、機能液滴吐出検査装置6を描画装置3のXテーブル12に搭載し、描画装置3のXY移動機構11を利用することで、機能液滴吐出ヘッド16に対しレーザドップラ振動計131を相対的に移動させる構成であってもよい。また、XYステージ134に加えて、θテーブルを備え、各変位測定位置間を移動するときはXYステージ134を用い、各変位測定位置にレーザ距離計132またはレーザドップラ振動計131を選択的に位置させるときはθテーブルを用いる構成としてもよい。
制御装置8は、各変位測定位置で測定した離間距離に基づいて、各変位測定位置で測定したメニスカスMの変位を補正する変位補正手段124と、変位補正手段124により補正されたメニスカスMの変位のうち、メニスカスMの変位の測定開始後の複数の経過時間(例えば、1マイクロ秒、3マイクロ秒、5マイクロ秒、7マイクロ秒、9マイクロ秒、11マイクロ秒)における複数の経過時間変位量、および複数の変位測定位置の分布とに基づいて、各経過時間におけるメニスカスMの立体的変位を表す経過時間面データを合成する経過時間面データ合成手段123と、合成された複数の経過時間面データに基づいて、メニスカスMの律動をアニメーション化して画像表示する動画表示手段125とを有している。これによれば、律動しているメニスカスMの各経過時間における立体的変位を表す経過時間面データが各経過時間毎に合成されることで、律動しているメニスカスMの立体的変位を各経過時間毎に把握することができる。そして、複数の経過時間面データに基づいて、メニスカスMの律動がアニメーション化されて立体的に動画表示されるため、メニスカスMの立体的変位をより詳細に認識することができる。したがって、メニスカスMがその中心点を中心として点対称に律動しない場合に、その異常を的確且つ容易に把握することができる。
図11は、正常なノズルに対するメニスカスの律動を、経過時間変位量に基づいてアニメーション化して画像表示した画面である。図11からわかるように、正常なノズル65では、メニスカスMがその中心点を中心として点対称に律動している様子を立体的に視認することができる(同図の(b)、(c)、(d)、(e)は、それぞれ図8のP21、P22、P23、P24にほぼ対応する。)。そして、メニスカスMの変位の補正を行うことで、各変位測定位置におけるメニスカスMの絶対的な高さ位置が把握されることから、実際の形状に沿った画像が得られる。すなわち、非律動時のメニスカスMが平坦でない場合であっても(同図(a)参照)、律動しているメニスカスMの立体的変位を精度よく求めることができる。
なお、同図は、罫線Lによって区分された25マスの全てを選択して変位測定位置とした場合のものである。また、同図では、メニスカスの立体的変位が棒グラフ状に表されているが、各変位測定位置における経過時間変位量を演算処理することにより、各変位測定位置を滑らかな曲線で結ぶようにしてもよい。
ここで、機能液滴吐出検査装置6を用いて、機能液滴吐出ヘッド16の各ノズル65の吐出特性を検査する一連の動作について説明する。まず、描画装置3のY軸テーブル13により、ヘッドユニット15を吐出検査エリア43に移動させる(図1参照)。次に、撮像ユニット133により、測定対象となる一方のノズル列64の左端のノズル65を撮像し、その撮像画像上に表示された罫線Lにより区分された25マスのうち、「行,列」が「2,2」、「2,4」、「3,3」、「4,2」および「4,4」に位置する5マスを選択する。続いて、XYステージ134により、1番目の変位測定位置となるマス(「行,列」:「2、2」)にレーザ距離計132を移動して、この変位測定位置におけるメニスカスMとの離間距離を測定する。次に、XYステージ134により、この変位測定位置にレーザドップラ振動計131を移動して、この変位測定位置におけるメニスカスMの変位を測定する。1番目の変位測定位置における離間距離およびメニスカスMの変位の測定が終了すると、XYステージ134により、2番目の変位測定位置となるマス(「行,列」:「2、4」)にレーザ距離計132を移動する。以下、同様にして、1個のノズル65に対し、5つの変位測定位置における測定を行う。
1個のノズル65に対し、5つの変位測定位置における測定が終了すると、XYステージ134により、左端から2番目のノズル65の1番目の変位測定位置となるマス(「行,列」:「2、2」)にレーザ距離計132を移動する。そして、上記のようにして、左端から2番目のノズル65についても、5つの変位測定位置における測定を行う。以下、同様にして、全ノズル65について測定が行われる。
なお、この際、制御装置8は、ヘッドドライバ211を制御して、レーザドップラ振動計131により複数のノズル65のメニスカスMの変位が順に測定される間、測定対象となる各ノズル65を含む全ノズル65に対し微振動波形を印加させるようになっている。これによれば、各メニスカスMを律動させることにより、メニスカスMを構成する機能液が撹拌されて、メニスカスMに新鮮な機能液が供給されることになるため、検査中に機能液が増粘することを効果的に防止できる。したがって、機能液滴吐出検査装置6による検査結果が全ノズル65について正常であれば、検査終了の後、良好なメニスカスMの状態を維持した状態で、即座に描画動作を行うことができる。
続いて、このようにして測定した離間距離およびメニスカスの変位の測定結果に基づいて、経過時間面データを合成する処理について、具体的な例を挙げて説明する。図14に、各変位測定位置におけるレーザ距離計132との離間距離と、補正前のメニスカスMの変位のうち、微振動波形の印加後の各経過時間における変位量(補正前経過時間変位量)とを示す。そして、変位補正手段124により、この離間距離に基づいて補正されたメニスカスMの変位のうち、微振動波形の印加後の各経過時間における変位量(経過時間変位量、同図には50mm分を差し引いた値を示す。)を示す。このように、各変位測定位置において、レーザ距離計132と非律動時のメニスカスMとの離間距離に基づいて、変位補正手段124によりメニスカスMの変位の測定結果を補正して経過時間変位量を求めることで、各変位測定位置におけるメニスカスMの絶対的な高さ位置の変化を、経過時間変位量により把握することができる。
そして、経過時間面データ合成手段123により、複数の経過時間変位量、および複数の変位測定位置の分布(罫線Lの25マスのうち、「行,列」が「2,2」、「2,4」、「3,3」、「4,2」および「4,4」に位置する5マス)とに基づいて、各経過時間(1マイクロ秒、3マイクロ秒、5マイクロ秒、7マイクロ秒、9マイクロ秒、11マイクロ秒)におけるメニスカスMの立体的変位を表す経過時間面データを合成する。すなわち、各経過時間面データは、経過時間変位量(絶対的な高さ位置)を示すデータと、複数の変位測定位置の分布を示すデータとにより構成されている。
なお、経過時間面データ合成手段123により、複数の経過時間変位量に代えて、複数の補正前経過時間変位量に基づいて、各経過時間におけるメニスカスMの立体的変位を表す経過時間面データを合成する構成としてもよい。この場合、メニスカスMが変位から直接経過時間面データが合成されるため、非律動時におけるメニスカスMは平坦なものとして処理される。すなわち、実際には、各変位測定位置におけるメニスカスMは異なる高さ位置から律動を開始するが、同じ高さ位置から律動を開始するものとして処理されることとなる。
このように補正前経過時間変位量に基づいて得られた、異常を示すノズルおよび正常なノズルに対するアニメーション画像を、それぞれ図12および図13に示す。この場合、非律動時のメニスカスMが逆凹形状である(図11(a)参照)にもかかわらず、平坦なものとして処理されるため、メニスカスMの中心点付近において実際よりも下方にへこんだ形状となる。
しかしながら、通常、非律動時のメニスカスMは、その中心点を中心として点対称に逆凹形状を為していることから、メニスカスMの変位の補正を行わない場合であっても、得られる経過時間面データに中心点から軸ブレした歪みはなく、メニスカスがその中心点を中心として点対称に律動しない場合の異常(例えば飛行曲がり)の原因を的確に把握することは可能である。図12からわかるように、異常を示すノズル65では、律動しているメニスカスMの振動方向に軸ブレが生じている。このように、メニスカスMの立体的変位の変位量、振動方向の中心軸からのずれの有無等を観察することにより、機能液中の気泡の有無、ノズル65の内面における機能液塊(機能液の溶剤が揮発して乾燥して生成した塊)の有無を判別することが可能となる。例えば、変位量が少ない場合には、機能液に気泡が混入していることが考えられ、振動方向に軸ブレが生じている場合には、ノズル65の内面に機能液塊が存在することが考えられる。すなわち、描画動作において飛行曲がり等の異常が発生した場合に、機能液滴吐出検査装置6による吐出特性の検査を行うことで、その原因を推測ないし特定することが可能となる。もちろん、経過時間変位量に基づいて得られたアニメーション画像からも、精度良く求められた立体的変位によって、吐出異常の原因を推測ないし特定することが可能である。
なお、本実施形態では、経過時間面データ合成手段123により、各経過時間毎に経過時間面データを合成し、動画表示手段125により、これをアニメーション化したが、経過時間面データ合成手段123に代えて、補正したメニスカスMの変位の最大変位量と、複数の変位測定位置の分布とに基づいて、最大変位時のメニスカスMの立体的変位を表す最大変位面データを合成する最大変位面データ合成手段を備え、また、動画表示手段125に代えて、合成した最大面変位面データに基づいて、メニスカスMの立体画像を表示する静止画像表示手段を備える構成としてもよい。これによれば、最大変位時におけるメニスカスMの変形状態を視覚的に認識することができることから、メニスカスMの律動をアニメーション化せずとも、メニスカスMがその中心点を中心として点対称に律動しないような異常の原因を的確に把握することができる。
そして、この場合も、変位補正手段により測定されたメニスカスMの変位を補正せずに、メニスカスMの変位の測定結果の最大変位量に基づいて、最大変位面データを合成する構成とすることが可能である。
以上説明したように、本発明に係る機能液滴吐出検査装置6によれば、複数の変位測定位置において律動しているメニスカスMの変位を測定することで、律動しているメニスカスMの状態を立体的に把握することができ、機能液滴吐出ヘッド16のノズル65の吐出特性を適切に検査することができる。さらに、レーザ距離計132により、非律動時におけるメニスカスMとの離間距離を複数の変位測定位置で測定し、その離間距離に基づいてメニスカスMの変位の測定結果を補正することで、このメニスカスMの変位を精度よく求めることができる。
ところで、液滴吐出装置1は、上述したように、制御装置8により、機能液滴吐出検査装置6の検査結果に基づいて、機能回復装置4による保守動作を行うように制御されている。例えば、機能液がやや増粘しているノズル65が認められた場合には、吐出前フラッシングを行った後、描画動作を行うようにする。また、機能液がかなり増粘しているノズル65や機能液に気泡が混入しているノズル65が認められた場合には、吸引ユニット82による吸引を行って増粘している機能液を吸い出し、その後ワイピングユニット83によるワイピングを行った上で、描画動作を行うようにする。一方、このような異常を示すノズル65が認められない場合は、即座に描画動作に移行する。これによれば、本発明に係る液滴吐出装置1は、機能液を無駄に消費することなく、機能液滴吐出ヘッド16のノズル65が機能液滴を正常に吐出させ得るか否かを検査できる機能液滴吐出検査6を備えているので、機能液の吐出を伴うことなく検査が可能となり、液滴吐出装置1のランニングコストを削減することができると共に、ノズル65の吐出特性に応じて機能液滴吐出ヘッド16の保守動作を行うことが可能となるため、ノズル65が機能液滴を正常に吐出し得るときに無駄に保守動作を行うことがなく、液滴吐出装置1を効率的に稼動させることができる。
次に、本実施形態の液滴吐出装置1を用いて製造される電気光学装置(フラットパネルディスプレイ)として、カラーフィルタ、液晶表示装置、有機EL装置、プラズマディスプレイ(PDP装置)、電子放出装置(FED装置、SED装置)、さらにこれら表示装置に形成されてなるアクティブマトリクス基板等を例に、これらの構造およびその製造方法について説明する。なお、アクティブマトリクス基板とは、薄膜トランジスタ、および薄膜トランジスタに電気的に接続するソース線、データ線が形成された基板をいう。
まず、液晶表示装置や有機EL装置等に組み込まれるカラーフィルタの製造方法について説明する。図15は、カラーフィルタの製造工程を示すフローチャート、図16は、製造工程順に示した本実施形態のカラーフィルタ500(フィルタ基体500A)の模式断面図である。
まず、ブラックマトリクス形成工程(S11)では、図16(a)に示すように、基板(W)501上にブラックマトリクス502を形成する。ブラックマトリクス502は、金属クロム、金属クロムと酸化クロムの積層体、または樹脂ブラック等により形成される。金属薄膜からなるブラックマトリクス502を形成するには、スパッタ法や蒸着法等を用いることができる。また、樹脂薄膜からなるブラックマトリクス502を形成する場合には、グラビア印刷法、フォトレジスト法、熱転写法等を用いることができる。
続いて、バンク形成工程(S12)において、ブラックマトリクス502上に重畳する状態でバンク503を形成する。即ち、まず図16(b)に示すように、基板501およびブラックマトリクス502を覆うようにネガ型の透明な感光性樹脂からなるレジスト層504を形成する。そして、その上面をマトリクスパターン形状に形成されたマスクフィルム505で被覆した状態で露光処理を行う。
さらに、図16(c)に示すように、レジスト層504の未露光部分をエッチング処理することによりレジスト層504をパターニングして、バンク503を形成する。なお、樹脂ブラックによりブラックマトリクスを形成する場合は、ブラックマトリクスとバンクとを兼用することが可能となる。
このバンク503とその下のブラックマトリクス502は、各画素領域507aを区画する区画壁部507bとなり、後の着色層形成工程において機能液滴吐出ヘッド16により着色層(成膜部)508R、508G、508Bを形成する際に機能液滴の着弾領域を規定する。
以上のブラックマトリクス形成工程およびバンク形成工程を経ることにより、上記フィルタ基体500Aが得られる。
なお、本実施形態においては、バンク503の材料として、塗膜表面が疎液(疎水)性となる樹脂材料を用いている。そして、基板(ガラス基板)501の表面が親液(親水)性であるので、後述する着色層形成工程においてバンク503(区画壁部507b)に囲まれた各画素領域507a内への液滴の着弾位置のばらつきを自動補正できる。
次に、着色層形成工程(S13)では、図16(d)に示すように、機能液滴吐出ヘッド16によって機能液滴を吐出して区画壁部507bで囲まれた各画素領域507a内に着弾させる。この場合、機能液滴吐出ヘッド16を用いて、R・G・Bの3色の機能液(フィルタ材料)を導入して、機能液滴の吐出を行う。なお、R・G・Bの3色の配列パターンとしては、ストライブ配列、モザイク配列およびデルタ配列等がある。
その後、乾燥処理(加熱等の処理)を経て機能液を定着させ、3色の着色層508R、508G、508Bを形成する。着色層508R、508G、508Bを形成したならば、保護膜形成工程(S14)に移り、図16(e)に示すように、基板501、区画壁部507b、および着色層508R、508G、508Bの上面を覆うように保護膜509を形成する。
即ち、基板501の着色層508R、508G、508Bが形成されている面全体に保護膜用塗布液が吐出された後、乾燥処理を経て保護膜509が形成される。
そして、保護膜509を形成した後、カラーフィルタ500は、次工程の透明電極となるITO(Indium Tin Oxide)などの膜付け工程に移行する。
図17は、上記のカラーフィルタ500を用いた液晶表示装置の一例としてのパッシブマトリックス型液晶装置(液晶装置)の概略構成を示す要部断面図である。この液晶装置520に、液晶駆動用IC、バックライト、支持体などの付帯要素を装着することによって、最終製品としての透過型液晶表示装置が得られる。なお、カラーフィルタ500は図16に示したものと同一であるので、対応する部位には同一の符号を付し、その説明は省略する。
この液晶装置520は、カラーフィルタ500、ガラス基板等からなる対向基板521、および、これらの間に挟持されたSTN(Super Twisted Nematic)液晶組成物からなる液晶層522により概略構成されており、カラーフィルタ500を図中上側(観測者側)に配置している。
なお、図示していないが、対向基板521およびカラーフィルタ500の外面(液晶層522側とは反対側の面)には偏光板がそれぞれ配設され、また対向基板521側に位置する偏光板の外側には、バックライトが配設されている。
カラーフィルタ500の保護膜509上(液晶層側)には、図17において左右方向に長尺な短冊状の第1電極523が所定の間隔で複数形成されており、この第1電極523のカラーフィルタ500側とは反対側の面を覆うように第1配向膜524が形成されている。
一方、対向基板521におけるカラーフィルタ500と対向する面には、カラーフィルタ500の第1電極523と直交する方向に長尺な短冊状の第2電極526が所定の間隔で複数形成され、この第2電極526の液晶層522側の面を覆うように第2配向膜527が形成されている。これらの第1電極523および第2電極526は、ITOなどの透明導電材料により形成されている。
液晶層522内に設けられたスペーサ528は、液晶層522の厚さ(セルギャップ)を一定に保持するための部材である。また、シール材529は液晶層522内の液晶組成物が外部へ漏出するのを防止するための部材である。なお、第1電極523の一端部は引き回し配線523aとしてシール材529の外側まで延在している。
そして、第1電極523と第2電極526とが交差する部分が画素であり、この画素となる部分に、カラーフィルタ500の着色層508R、508G、508Bが位置するように構成されている。
通常の製造工程では、カラーフィルタ500に、第1電極523のパターニングおよび第1配向膜524の塗布を行ってカラーフィルタ500側の部分を作成すると共に、これとは別に対向基板521に、第2電極526のパターニングおよび第2配向膜527の塗布を行って対向基板521側の部分を作成する。その後、対向基板521側の部分にスペーサ528およびシール材529を作り込み、この状態でカラーフィルタ500側の部分を貼り合わせる。次いで、シール材529の注入口から液晶層522を構成する液晶を注入し、注入口を閉止する。その後、両偏光板およびバックライトを積層する。
実施形態の液滴吐出装置1は、例えば上記のセルギャップを構成するスペーサ材料(機能液)を塗布すると共に、対向基板521側の部分にカラーフィルタ500側の部分を貼り合わせる前に、シール材529で囲んだ領域に液晶(機能液)を均一に塗布することが可能である。また、上記のシール材529の印刷を、機能液滴吐出ヘッド16で行うことも可能である。さらに、第1・第2両配向膜524,527の塗布を機能液滴吐出ヘッド16で行うことも可能である。
図18は、本実施形態において製造したカラーフィルタ500を用いた液晶装置の第2の例の概略構成を示す要部断面図である。
この液晶装置530が上記液晶装置520と大きく異なる点は、カラーフィルタ500を図中下側(観測者側とは反対側)に配置した点である。
この液晶装置530は、カラーフィルタ500とガラス基板等からなる対向基板531との間にSTN液晶からなる液晶層532が挟持されて概略構成されている。なお、図示していないが、対向基板531およびカラーフィルタ500の外面には偏光板等がそれぞれ配設されている。
カラーフィルタ500の保護膜509上(液晶層532側)には、図中奥行き方向に長尺な短冊状の第1電極533が所定の間隔で複数形成されており、この第1電極533の液晶層532側の面を覆うように第1配向膜534が形成されている。
対向基板531のカラーフィルタ500と対向する面上には、カラーフィルタ500側の第1電極533と直交する方向に延在する複数の短冊状の第2電極536が所定の間隔で形成され、この第2電極536の液晶層532側の面を覆うように第2配向膜537が形成されている。
液晶層532には、この液晶層532の厚さを一定に保持するためのスペーサ538と、液晶層532内の液晶組成物が外部へ漏出するのを防止するためのシール材539が設けられている。
そして、上記した液晶装置520と同様に、第1電極533と第2電極536との交差する部分が画素であり、この画素となる部位に、カラーフィルタ500の着色層508R、508G、508Bが位置するように構成されている。
図19は、本発明を適用したカラーフィルタ500を用いて液晶装置を構成した第3の例を示したもので、透過型のTFT(Thin Film Transistor)型液晶装置の概略構成を示す分解斜視図である。
この液晶装置550は、カラーフィルタ500を図中上側(観測者側)に配置したものである。
この液晶装置550は、カラーフィルタ500と、これに対向するように配置された対向基板551と、これらの間に挟持された図示しない液晶層と、カラーフィルタ500の上面側(観測者側)に配置された偏光板555と、対向基板551の下面側に配設された偏光板(図示せず)とにより概略構成されている。
カラーフィルタ500の保護膜509の表面(対向基板551側の面)には液晶駆動用の電極556が形成されている。この電極556は、ITO等の透明導電材料からなり、後述の画素電極560が形成される領域全体を覆う全面電極となっている。また、この電極556の画素電極560とは反対側の面を覆った状態で配向膜557が設けられている。
対向基板551のカラーフィルタ500と対向する面には絶縁層558が形成されており、この絶縁層558上には、走査線561および信号線562が互いに直交する状態で形成されている。そして、これらの走査線561と信号線562とに囲まれた領域内には画素電極560が形成されている。なお、実際の液晶装置では、画素電極560上に配向膜が設けられるが、図示を省略している。
また、画素電極560の切欠部と走査線561と信号線562とに囲まれた部分には、ソース電極、ドレイン電極、半導体、およびゲート電極とを具備する薄膜トランジスタ563が組み込まれて構成されている。そして、走査線561と信号線562に対する信号の印加によって薄膜トランジスタ563をオン・オフして画素電極560への通電制御を行うことができるように構成されている。
なお、上記の各例の液晶装置520,530,550は、透過型の構成としたが、反射層あるいは半透過反射層を設けて、反射型の液晶装置あるいは半透過反射型の液晶装置とすることもできる。
次に、図20は、有機EL装置の表示領域(以下、単に表示装置600と称する)の要部断面図である。
この表示装置600は、基板(W)601上に、回路素子部602、発光素子部603および陰極604が積層された状態で概略構成されている。
この表示装置600においては、発光素子部603から基板601側に発した光が、回路素子部602および基板601を透過して観測者側に出射されると共に、発光素子部603から基板601の反対側に発した光が陰極604により反射された後、回路素子部602および基板601を透過して観測者側に出射されるようになっている。
回路素子部602と基板601との間にはシリコン酸化膜からなる下地保護膜606が形成され、この下地保護膜606上(発光素子部603側)に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜607が形成されている。この半導体膜607の左右の領域には、ソース領域607aおよびドレイン領域607bが高濃度陽イオン打ち込みによりそれぞれ形成されている。そして陽イオンが打ち込まれない中央部がチャネル領域607cとなっている。
また、回路素子部602には、下地保護膜606および半導体膜607を覆う透明なゲート絶縁膜608が形成され、このゲート絶縁膜608上の半導体膜607のチャネル領域607cに対応する位置には、例えばAl、Mo、Ta、Ti、W等から構成されるゲート電極609が形成されている。このゲート電極609およびゲート絶縁膜608上には、透明な第1層間絶縁膜611aと第2層間絶縁膜611bが形成されている。また、第1、第2層間絶縁膜611a、611bを貫通して、半導体膜607のソース領域607a、ドレイン領域607bにそれぞれ連通するコンタクトホール612a,612bが形成されている。
そして、第2層間絶縁膜611b上には、ITO等からなる透明な画素電極613が所定の形状にパターニングされて形成され、この画素電極613は、コンタクトホール612aを通じてソース領域607aに接続されている。
また、第1層間絶縁膜611a上には電源線614が配設されており、この電源線614は、コンタクトホール612bを通じてドレイン領域607bに接続されている。
このように、回路素子部602には、各画素電極613に接続された駆動用の薄膜トランジスタ615がそれぞれ形成されている。
上記発光素子部603は、複数の画素電極613上の各々に積層された機能層617と、各画素電極613および機能層617の間に備えられて各機能層617を区画するバンク部618とにより概略構成されている。
これら画素電極613、機能層617、および、機能層617上に配設された陰極604によって発光素子が構成されている。なお、画素電極613は、平面視略矩形状にパターニングされて形成されており、各画素電極613の間にバンク部618が形成されている。
バンク部618は、例えばSiO、SiO2、TiO2等の無機材料により形成される無機物バンク層618a(第1バンク層)と、この無機物バンク層618a上に積層され、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶媒性に優れたレジストにより形成される断面台形状の有機物バンク層618b(第2バンク層)とにより構成されている。このバンク部618の一部は、画素電極613の周縁部上に乗上げた状態で形成されている。
そして、各バンク部618の間には、画素電極613に対して上方に向けて次第に拡開した開口部619が形成されている。
上記機能層617は、開口部619内において画素電極613上に積層状態で形成された正孔注入/輸送層617aと、この正孔注入/輸送層617a上に形成された発光層617bとにより構成されている。なお、この発光層617bに隣接してその他の機能を有する他の機能層をさらに形成しても良い。例えば、電子輸送層を形成することも可能である。
正孔注入/輸送層617aは、画素電極613側から正孔を輸送して発光層617bに注入する機能を有する。この正孔注入/輸送層617aは、正孔注入/輸送層形成材料を含む第1組成物(機能液)を吐出することで形成される。正孔注入/輸送層形成材料としては、公知の材料を用いる。
発光層617bは、赤色(R)、緑色(G)、または青色(B)のいずれかに発光するもので、発光層形成材料(発光材料)を含む第2組成物(機能液)を吐出することで形成される。第2組成物の溶媒(非極性溶媒)としては、正孔注入/輸送層617aに対して不溶な公知の材料を用いることが好ましく、このような非極性溶媒を発光層617bの第2組成物に用いることにより、正孔注入/輸送層617aを再溶解させることなく発光層617bを形成することができる。
そして、発光層617bでは、正孔注入/輸送層617aから注入された正孔と、陰極604から注入される電子が発光層で再結合して発光するように構成されている。
陰極604は、発光素子部603の全面を覆う状態で形成されており、画素電極613と対になって機能層617に電流を流す役割を果たす。なお、この陰極604の上部には図示しない封止部材が配置される。
次に、上記の表示装置600の製造工程を図21〜図29を参照して説明する。
この表示装置600は、図21に示すように、バンク部形成工程(S21)、表面処理工程(S22)、正孔注入/輸送層形成工程(S23)、発光層形成工程(S24)、および対向電極形成工程(S25)を経て製造される。なお、製造工程は例示するものに限られるものではなく必要に応じてその他の工程が除かれる場合、また追加される場合もある。
まず、バンク部形成工程(S21)では、図22に示すように、第2層間絶縁膜611b上に無機物バンク層618aを形成する。この無機物バンク層618aは、形成位置に無機物膜を形成した後、この無機物膜をフォトリソグラフィ技術等によりパターニングすることにより形成される。このとき、無機物バンク層618aの一部は画素電極613の周縁部と重なるように形成される。
無機物バンク層618aを形成したならば、図23に示すように、無機物バンク層618a上に有機物バンク層618bを形成する。この有機物バンク層618bも無機物バンク層618aと同様にフォトリソグラフィ技術等によりパターニングして形成される。
このようにしてバンク部618が形成される。また、これに伴い、各バンク部618間には、画素電極613に対して上方に開口した開口部619が形成される。この開口部619は、画素領域を規定する。
表面処理工程(S22)では、親液化処理および撥液化処理が行われる。親液化処理を施す領域は、無機物バンク層618aの第1積層部618aaおよび画素電極613の電極面613aであり、これらの領域は、例えば酸素を処理ガスとするプラズマ処理によって親液性に表面処理される。このプラズマ処理は、画素電極613であるITOの洗浄等も兼ねている。
また、撥液化処理は、有機物バンク層618bの壁面618sおよび有機物バンク層618bの上面618tに施され、例えば四フッ化メタンを処理ガスとするプラズマ処理によって表面がフッ化処理(撥液性に処理)される。
この表面処理工程を行うことにより、機能液滴吐出ヘッド16を用いて機能層617を形成する際に、機能液滴を画素領域に、より確実に着弾させることができ、また、画素領域に着弾した機能液滴が開口部619から溢れ出るのを防止することが可能となる。
そして、以上の工程を経ることにより、表示装置基体600Aが得られる。この表示装置基体600Aは、図1に示した液滴吐出装置1のワークテーブル22に載置され、以下の正孔注入/輸送層形成工程(S23)および発光層形成工程(S24)が行われる。
図24に示すように、正孔注入/輸送層形成工程(S23)では、機能液滴吐出ヘッド16から正孔注入/輸送層形成材料を含む第1組成物を画素領域である各開口部619内に吐出する。その後、図25に示すように、乾燥処理および熱処理を行い、第1組成物に含まれる極性溶媒を蒸発させ、画素電極(電極面613a)613上に正孔注入/輸送層617aを形成する。
次に発光層形成工程(S24)について説明する。この発光層形成工程では、上述したように、正孔注入/輸送層617aの再溶解を防止するために、発光層形成の際に用いる第2組成物の溶媒として、正孔注入/輸送層617aに対して不溶な非極性溶媒を用いる。
しかしその一方で、正孔注入/輸送層617aは、非極性溶媒に対する親和性が低いため、非極性溶媒を含む第2組成物を正孔注入/輸送層617a上に吐出しても、正孔注入/輸送層617aと発光層617bとを密着させることができなくなるか、あるいは発光層617bを均一に塗布できない虞がある。
そこで、非極性溶媒並びに発光層形成材料に対する正孔注入/輸送層617aの表面の親和性を高めるために、発光層形成の前に表面処理(表面改質処理)を行うことが好ましい。この表面処理は、発光層形成の際に用いる第2組成物の非極性溶媒と同一溶媒またはこれに類する溶媒である表面改質材を、正孔注入/輸送層617a上に塗布し、これを乾燥させることにより行う。
このような処理を施すことで、正孔注入/輸送層617aの表面が非極性溶媒になじみやすくなり、この後の工程で、発光層形成材料を含む第2組成物を正孔注入/輸送層617aに均一に塗布することができる。
そして次に、図26に示すように、各色のうちのいずれか(図26の例では青色(B))に対応する発光層形成材料を含有する第2組成物を機能液滴として画素領域(開口部619)内に所定量打ち込む。画素領域内に打ち込まれた第2組成物は、正孔注入/輸送層617a上に広がって開口部619内に満たされる。なお、万一、第2組成物が画素領域から外れてバンク部618の上面618t上に着弾した場合でも、この上面618tは、上述したように撥液処理が施されているので、第2組成物が開口部619内に転がり込み易くなっている。
その後、乾燥工程等を行うことにより、吐出後の第2組成物を乾燥処理し、第2組成物に含まれる非極性溶媒を蒸発させ、図27に示すように、正孔注入/輸送層617a上に発光層617bが形成される。この図の場合、青色(B)に対応する発光層617bが形成されている。
同様に、機能液滴吐出ヘッド16を用い、図28に示すように、上記した青色(B)に対応する発光層617bの場合と同様の工程を順次行い、他の色(赤色(R)および緑色(G))に対応する発光層617bを形成する。なお、発光層617bの形成順序は、例示した順序に限られるものではなく、どのような順番で形成しても良い。例えば、発光層形成材料に応じて形成する順番を決めることも可能である。また、R・G・Bの3色の配列パターンとしては、ストライブ配列、モザイク配列およびデルタ配列等がある。
以上のようにして、画素電極613上に機能層617、即ち、正孔注入/輸送層617aおよび発光層617bが形成される。そして、対向電極形成工程(S25)に移行する。
対向電極形成工程(S25)では、図29に示すように、発光層617bおよび有機物バンク層618bの全面に陰極604(対向電極)を、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法等によって形成する。この陰極604は、本実施形態においては、例えば、カルシウム層とアルミニウム層とが積層されて構成されている。
この陰極604の上部には、電極としてのAl膜、Ag膜や、その酸化防止のためのSiO2、SiN等の保護層が適宜設けられる。
このようにして陰極604を形成した後、この陰極604の上部を封止部材により封止する封止処理や配線処理等のその他処理等を施すことにより、表示装置600が得られる。
次に、図30は、プラズマ型表示装置(PDP装置:以下、単に表示装置700と称する)の要部分解斜視図である。なお、同図では表示装置700を、その一部を切り欠いた状態で示してある。
この表示装置700は、互いに対向して配置された第1基板701、第2基板702、およびこれらの間に形成される放電表示部703を含んで概略構成される。放電表示部703は、複数の放電室705により構成されている。これらの複数の放電室705のうち、赤色放電室705R、緑色放電室705G、青色放電室705Bの3つの放電室705が組になって1つの画素を構成するように配置されている。
第1基板701の上面には所定の間隔で縞状にアドレス電極706が形成され、このアドレス電極706と第1基板701の上面とを覆うように誘電体層707が形成されている。誘電体層707上には、各アドレス電極706の間に位置し、且つ各アドレス電極706に沿うように隔壁708が立設されている。この隔壁708は、図示するようにアドレス電極706の幅方向両側に延在するものと、アドレス電極706と直交する方向に延設された図示しないものを含む。
そして、この隔壁708によって仕切られた領域が放電室705となっている。
放電室705内には蛍光体709が配置されている。蛍光体709は、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの色の蛍光を発光するもので、赤色放電室705Rの底部には赤色蛍光体709Rが、緑色放電室705Gの底部には緑色蛍光体709Gが、青色放電室705Bの底部には青色蛍光体709Bが各々配置されている。
第2基板702の図中下側の面には、上記アドレス電極706と直交する方向に複数の表示電極711が所定の間隔で縞状に形成されている。そして、これらを覆うように誘電体層712、およびMgOなどからなる保護膜713が形成されている。
第1基板701と第2基板702とは、アドレス電極706と表示電極711が互いに直交する状態で対向させて貼り合わされている。なお、上記アドレス電極706と表示電極711は図示しない交流電源に接続されている。
そして、各電極706,711に通電することにより、放電表示部703において蛍光体709が励起発光し、カラー表示が可能となる。
本実施形態においては、上記アドレス電極706、表示電極711、および蛍光体709を、図1に示した液滴吐出装置1を用いて形成することができる。以下、第1基板701におけるアドレス電極706の形成工程を例示する。
この場合、第1基板701を液滴吐出装置1のワークテーブル22に載置された状態で以下の工程が行われる。
まず、機能液滴吐出ヘッド16により、導電膜配線形成用材料を含有する液体材料(機能液)を機能液滴としてアドレス電極形成領域に着弾させる。この液体材料は、導電膜配線形成用材料として、金属等の導電性微粒子を分散媒に分散したものである。この導電性微粒子としては、金、銀、銅、パラジウム、またはニッケル等を含有する金属微粒子や、導電性ポリマー等が用いられる。
補充対象となるすべてのアドレス電極形成領域について液体材料の補充が終了したならば、吐出後の液体材料を乾燥処理し、液体材料に含まれる分散媒を蒸発させることによりアドレス電極706が形成される。
ところで、上記においてはアドレス電極706の形成を例示したが、上記表示電極711および蛍光体709についても上記各工程を経ることにより形成することができる。
表示電極711の形成の場合、アドレス電極706の場合と同様に、導電膜配線形成用材料を含有する液体材料(機能液)を機能液滴として表示電極形成領域に着弾させる。
また、蛍光体709の形成の場合には、各色(R,G,B)に対応する蛍光材料を含んだ液体材料(機能液)を機能液滴吐出ヘッド16から液滴として吐出し、対応する色の放電室705内に着弾させる。
次に、図31は、電子放出装置(FED装置あるいはSED装置ともいう:以下、単に表示装置800と称する)の要部断面図である。なお、同図では表示装置800を、その一部を断面として示してある。
この表示装置800は、互いに対向して配置された第1基板801、第2基板802、およびこれらの間に形成される電界放出表示部803を含んで概略構成される。電界放出表示部803は、マトリクス状に配置した複数の電子放出部805により構成されている。
第1基板801の上面には、カソード電極806を構成する第1素子電極806aおよび第2素子電極806bが相互に直交するように形成されている。また、第1素子電極806aおよび第2素子電極806bで仕切られた部分には、ギャップ808を形成した導電性膜807が形成されている。すなわち、第1素子電極806a、第2素子電極806bおよび導電性膜807により複数の電子放出部805が構成されている。導電性膜807は、例えば酸化パラジウム(PdO)等で構成され、またギャップ808は、導電性膜807を成膜した後、フォーミング等で形成される。
第2基板802の下面には、カソード電極806に対峙するアノード電極809が形成されている。アノード電極809の下面には、格子状のバンク部811が形成され、このバンク部811で囲まれた下向きの各開口部812に、電子放出部805に対応するように蛍光体813が配置されている。蛍光体813は、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの色の蛍光を発光するもので、各開口部812には、赤色蛍光体813R、緑色蛍光体813Gおよび青色蛍光体813Bが、上記した所定のパターンで配置されている。
そして、このように構成した第1基板801と第2基板802とは、微小な間隙を存して貼り合わされている。この表示装置800では、導電性膜(ギャップ808)807を介して、陰極である第1素子電極806aまたは第2素子電極806bから飛び出す電子を、陽極であるアノード電極809に形成した蛍光体813に当てて励起発光し、カラー表示が可能となる。
この場合も、他の実施形態と同様に、第1素子電極806a、第2素子電極806b、導電性膜807およびアノード電極809を、液滴吐出装置1を用いて形成することができると共に、各色の蛍光体813R,813G,813Bを、液滴吐出装置1を用いて形成することができる。
第1素子電極806a、第2素子電極806bおよび導電性膜807は、図32(a)に示す平面形状を有しており、これらを成膜する場合には、図32(b)に示すように、予め第1素子電極806a、第2素子電極806bおよび導電性膜807を作り込む部分を残して、バンク部BBを形成(フォトリソグラフィ法)する。次に、バンク部BBにより構成された溝部分に、第1素子電極806aおよび第2素子電極806bを形成(液滴吐出装置1によるインクジェット法)し、その溶剤を乾燥させて成膜を行った後、導電性膜807を形成(液滴吐出装置1によるインクジェット法)する。そして、導電性膜807を成膜後、バンク部BBを取り除き(アッシング剥離処理)、上記のフォーミング処理に移行する。なお、上記の有機EL装置の場合と同様に、第1基板801および第2基板802に対する親液化処理や、バンク部811,BBに対する撥液化処理を行うことが、好ましい。
また、他の電気光学装置としては、金属配線形成、レンズ形成、レジスト形成および光拡散体形成等の装置が考えられる。上記した液滴吐出装置1を各種の電気光学装置(デバイス)の製造に用いることにより、各種の電気光学装置を効率的に製造することが可能である。
1…液滴吐出装置 3…描画装置 4…ヘッド機能回復装置 6…機能液滴吐出検査装置 8…制御装置 16…機能液滴吐出ヘッド 65…ノズル 121…タイミング信号供給手段 123…経過時間面データ合成手段 125…動画表示手段 131…レーザドップラ振動計 132…レーザ距離計 133…撮像ユニット 134…XYステージ 201…入力部 203…モニター 211…ヘッドドライバ 500…カラーフィルタ 508…着色層 CP…中心点 M…メニスカス W…ワーク