JP4318365B2 - ゴルフボール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、良好な打球感を有するとともに飛距離が大きく、さらにラフからのショットや雨天時のショットにもスピンが大きく、止まりやすいゴルフボールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、液体センターに糸巻き層を形成し、これにバラタカバーを被覆したゴルフボールは打球感、コントロール性に優れていることから上級ゴルファーおよびプロゴルファーに広く使用されていた。しかし係るゴルフボールの構造は製造工程が複雑であることや、耐カット性に劣ることから、最近ではバラタカバーに代わる種々の軟質カバー材が提案されている。
【0003】
たとえば、特開平5−3931号公報にはカバーの基材樹脂に三元共重合体の軟質アイオノマー樹脂を混合する技術が開示されている。しかし、かかる技術では、ウエット時のスピン量はドライ時のスピン量に対し劣るため、スピン保持率の面で不十分であった。
【0004】
また、特開平10−179802号公報ではカバーの基材樹脂が、アイオノマー樹脂とエポキシ基を含有するポリブタジエンブロックを有するスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、またはエポキシ基を含有するポリイソプレンブロックを有するスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体との2成分の加熱混合物を主成分として構成され、カバーを構成する組成物の曲げ剛性率が50〜300MPaで、かつショアD硬度は40〜60であることを特徴とするゴルフボールが提案されている。かかる技術で打球感およびコントロール性が良好で飛行性能および耐カット性が満足できるが、しかしスピン保持率の向上を意図するものではない。
【0005】
さらに特開平9−173504号公報には油状物質を含有する固形ゴムセンターと軟質カバー材を用いることにより、打球感を改善するとともにショートアイアンでのスピン量を増大させることが開示されている。
【0006】
しかしながら固形ゴムセンターの外側に耐油性ゴムや高い硬度のアイオノマー樹脂を用いているため、反撥性および打球感になお改善の余地がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来のゴルフボールの有する問題点を解決し、軟らかく、良好な打球感を有し、かつ飛距離が大きく、さらにラフからのショットや雨天時のショットにもスピン量が大きく、止まりやすいゴルフボールを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明はコアと該コアを被覆するカバーからなるゴルフボールにおいて、前記カバーがアイオノマー樹脂(A成分)と、ゴム成分を有する熱可塑性エラストマーまたはその変性体(B成分)と、該ゴム成分を有する熱可塑性エラストマーまたはその変性体に相溶する樹脂(C成分)との混合物よりなり、前記A成分と前記B成分の混合比(A成分/B成分)が0.25〜4.0の範囲であり、前記C成分と前記B成分の混合比(C成分/B成分)が0.1〜0.9の範囲であることを特徴とするゴルフボールである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、コアと、該コアを被覆するカバーよりなるゴルフボールである。
【0010】
本発明において、カバーの基材樹脂として用いられるアイオノマー樹脂は、たとえばα−オレフィンと炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸との共重合体であってそのカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和して得られる二元共重合体がある。またα−オレフィンと炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数2〜22のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体で、そのカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和して得られるものが挙げられる。そしてそれらの組成比としては、アイオノマー樹脂のベースポリマーがα−オレフィンと炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の場合、α−オレフィンが80〜90重量%で、α,β−不飽和カルボン酸が10〜20重量%であることが好ましい。ベースポリマーがα−オレフィンと炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数2〜22のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の場合、α−オレフィンが70〜85重量%で、α,β−不飽和カルボン酸が5〜30重量%、特に好ましくは、12〜20重量%で、α,β−不飽和カルボン酸エステルが10〜25重量%であることが好ましい。またこれらのアイオノマー樹脂はメルトインデックス(MI)が0.1〜20、特に0.5〜15であることが好ましい。カルボン酸含量またはカルボン酸エステル含量を上記範囲とすることにより反発性を高めることができる。
【0011】
上記α−オレフィンとしては、たとえばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどが用いられ、特にエチレンが好ましい。炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸としては、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸などか用いられ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。また、不飽和カルボン酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸などのメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステルなどが用いられ、特にアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルが好ましい。上記α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体またはα−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、たとえば、ナトリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、マグネシウムイオン、カリウムイオンなどがある。そして、アイオノマー樹脂が、エチレンとアクリル酸またはメタクリル酸との共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したものである場合は、そのメルトインデックスが3〜7で、曲げ剛性率が200〜400MPaのいわゆる高剛性でかつハイフロータイプのものであることが好ましい。
【0012】
上記アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井デュポンケミカル(株)から市販されている二元共重合体のアイオノマー樹脂としてハイミラン1555(Na)、ハイミラン1557(Zn)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM7318(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミランAM7315(Zn)、ハイミランAM7317(Zn)、ハイミランAM7311(Mg)、ハイミランMK7320(K)があり、また三元共重合体のアイオノマー樹脂として、ハイミラン1856(Na)、ハイミラン1855(Zn)、ハイミランAM7316(Zn)などがある。さらにデュポン社から市販されているアイオノマー樹脂としては、サーリン8940(Na)、サーリン8945(Na)、サーリン9910(Zn)、サーリン9945(Zn)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)、三元共重合体系アイオノマー樹脂として、サーリンAD8265(Na)、サーリンAD8269(Na)などがある。
【0013】
エクソン社から市販されているアイオノマー樹脂としては、アイオテック7010(Zn)、アイオテック8000(Na)などがある。なお、上記アイオノマー樹脂の商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、K、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。また、本発明において、カバーの基材樹脂に用いられるアイオノマー樹脂は、上記例示のものを2種以上混合してもよいし、上記例示の1価の金属イオンで中和したアイオノマー樹脂と2価の金属イオンで中和したアイオノマー樹脂を2種以上混合して用いてもよい。
【0014】
次に本発明のカバー材にゴム成分を有する熱可塑性エラストマーまたはその変性体(B成分)を1種以上混合して使用する。ここでゴム成分を有する熱可塑性エラストマーは、ブタジエンブロックあるいはイソプレンブロック等の共役ジエン化合物を有するブロック共重合体である。ここで共役ジエン化合物としては、たとえばブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等の中から1種または2種以上が選択でき、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組合せが好ましい。他のブロック共重合体を構成する成分としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレン等の中から1種または2種以上が選択でき、特にスチレンが好ましい。
【0015】
具体的なブロック共重合体としては、たとえばスチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SIBS構造)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS構造)、そのブタジエンの二重結合部分を水素添加したスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS構造)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS構造)、そのイソプレン二重結合部分を水素添加したスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS構造)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS構造)およびそれらを変性したもの等が挙げられる。
【0016】
なお上記SIBS構造、SBS構造、SEBS構造、SIS構造、SEPS構造、SEEPS構造におけるスチレン(またはこれに代わる単量体)の含量は共重合体中10〜50重量%、特に15〜45重量%の範囲である。10重量%より少ない場合、カバーは軟らかくなりすぎて、耐カット性は低下する傾向にあり、一方50重量%より多い場合はアイオノマー樹脂の軟質化が十分に達成できず、打球感、コントロール性が悪くなる。
【0017】
本発明では、上記SIBS構造、SBS構造、SEBS構造、SIS構造、SEPS構造、SEEPS構造の共重合体の一部にエポキシ基、水酸基、酸無水物、カルボキシル基から選択される官能基で変性された変性体を使用できる。
【0018】
たとえばエポキシ基を含有するポリブタジエンブロックを有するスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS構造)とは、両末端にポリスチレンを持つブロック共重合体で、その中間層がエポキシ基を含有するポリブタジエンであり、そのポリブタジエン部分の二重結合の一部または全部に水素添加したものであってもよく、また、エポキシ基を含有するポリイソプレンブロックを有するスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS構造)とは、両末端にポリスチレンを持つブロック共重合体で、その中間層がエポキシ基を含有するポリイソプレンであり、そのポリイソプレン部分の二重結合の一部または全部に水素添加したものであってもよい。
【0019】
エポキシ化SBS構造またはSIS構造のブロック共重合体のエポキシ基当量は200〜3000であることが好ましい。上記エポキシ基当量が200より少ない場合は、エポキシ基とアイオノマー樹脂中の遊離のカルボキシル基との反応量が少なくなり、アイオノマー樹脂中へのエポキシ化SBS構造またはSIS構造のブロック共重合体の分散性が低下して、耐久性が悪くなるおそれがあり、また、エポキシ基当量が3000より多い場合は、エポキシ基とアイオノマー樹脂中の遊離のカルボキシル基との反応量が多くなりすぎ、流動性が悪くなって、ボールの成形が困難になるおそれがある。
【0020】
水酸基、酸無水物およびカルボキシル基についても前記ブロック共重合体の分子鎖の中間部分または末端に導入される。
【0021】
前記エポキシ化SBS構造またはSIS構造のブロック共重合体の市販品としては、たとえば、ダイセル化学工業(株)からエポフレンドA1010、ESBSなどの商品名で市販されているエポキシ基を含有するポリブタジエンブロックを有するスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS構造)や、ESBS AT018、ESBS AT019などの商品名で市販されているエポキシ基を含有するポリブタジエンブロックの一部に水素添加したスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体などがあり、いずれも本発明において好適に使用される。
【0022】
また上記末端に無水マレイン酸で変性したSBS構造、SIS構造を持つブロック共重合体の市販品としては、たとえばシェルケミカル社からクレイトンの商品名で市販されている。無水マレイン酸は共重合体中0.1〜5.0重量%含まれることが好ましい。
【0023】
また上記一方の末端のみ、または両方の末端に水酸基が付加したSIBS構造またはSEPS構造を持つブロック共重合体の市販品としては、たとえば(株)クラレからHG−252の商品名で市販されている。
【0024】
かかる官能基を有する変性体をアイオノマー樹脂に混合することにより、アイオノマー樹脂のカルボキシル基に上記官能基が反応または相互作用によってカバー材の反発性能を維持しながら軟質化を図ることができる。ここでアイオノマー樹脂(A成分)とB成分の混合比(A成分/B成分)は0.25〜4.0、好ましくは0.4〜2.4の範囲である。
【0025】
本発明においては、上記アイオノマー樹脂とSBS構造またはSIS構造等の熱可塑性エラストマーまたはその変性体とを加熱混合することによって、所望のカバー特性が得られるようになる。加熱混合は、通常混練型二軸押出機、バンバリー、ニーダーなどのインターナルミキサーを用い、たとえば、150〜260℃で加熱混合することによって行なわれる。
【0026】
次に本発明のカバーに使用されるゴム成分を有する熱可塑性エラストマーまたはその変性体に相溶する樹脂(C成分)はそのSP値が7.0〜10.0である樹脂がよい。B成分のSP値は7.0〜10.0であり、それと相溶性を持たせるためにはC成分のSP値は7.0〜10.0がよいからであり、さらに好ましくは7.5〜9.5、さらに8.0〜9.0、特に8.2〜8.6がよい。またB成分のSP値であるSPbとC成分のSP値であるSPcの差である「SPb−SPc」の値は−3〜+3、好ましくは−1.5〜+1.5、特に−1.0〜+1.0がよい。なお、B成分やC成分に2種以上を併用する場合は、その2種以上の成分のSP値の平均値(重量での平均)が上記規定を満たせばよく、さらに好ましくはすべての成分のSP値、および「SPb−SPc」の関係が上記規定を満たすようにするのが好ましい。C成分に使用し得る樹脂としては粘着付与樹脂が使用でき、たとえばクマロン・インデン系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン誘導体、フェノール・ホルムアルデヒト系樹脂、アルキルフェノール系樹脂、石油系樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド系樹脂、ポリブテン等のオリゴマー、液状ポリイソプレンなどの液状ゴム等であるが、特にテルペン樹脂およびロジンエステル系が好適である。
【0027】
上記テルペン樹脂とはテルペン単量体の重合体又はテルペンと第2成分の単量体の共重合体をポリマー鎖に含む重合体であり、一般式(1)で基本構造が示されるテルペン樹脂の他一般式(2)で基本構造が示されるスチレン系テルペン樹脂、さらに一般式(3)で基本構造が示されるフェノール変性テルペン樹脂、さらにこれらの樹脂を水素化した水添テルペン樹脂を包含する。
【0028】
【化1】
【0029】
【化2】
【0030】
【化3】
【0031】
なお一般式(1)〜(3)におけるm,nは整数を示す。
このような樹脂を商品名で例示すると、クマロン樹脂として神戸油化学工業(株)のプロセスレジンA81、プロセスレジンAC5、プロセスレジンTX、大内新興(株)のクマロンCL、日鉄化学(株)のクマロン樹脂NG4がある。またテルペン・フェノール樹脂として住友化学工業(株)のタッキロール101、タッキロール160、タッキロールEP20、タッキロールEP30、住友デュレズ(株)のスミライトレジンPR19900がある。
【0032】
また石油系樹脂としてヤスハラケミカル(株)の水添テルペン樹脂クリアロンP105、荒川化学(株)のアルコンP90、エステルガムH、三井石油化学(株)のペトロジン♯80、ハイレッツG100Xがある。
【0033】
さらにロジン誘導体として、三菱瓦斯化学(株)のニカノールA70、リブナイトのリグノールR70、さらに荒川化学(株)のロジンエステル樹脂がある。
【0034】
これらのC成分はカバーの基材樹脂に混合されるB成分と均一に相溶し、カバーに適度の粘着性を付与し、ゴルフボールを打撃する際にクラブフェース面へのゴルフボールの粘着効果を高めウェットスピン量を増大する。C成分を多くしすぎてB成分と同等レベルの配合量になると、ウェットスピン向上効果は小さくなる。C成分を配合することにより、B成分のゴム成分が可塑化されてウェットスピンが向上すると推測されるが、C成分がB成分に比して多すぎる場合には、余剰なC成分が配合されることになり、ウェットスピン向上の効果は、適正量の場合に比して小さくなる。
【0035】
そして本発明ではゴム成分を有する熱可塑性エラストマーまたはその変性体(B成分)とC成分の混合割合(C成分/B成分)は0.1〜0.9、好ましくは0.2〜0.6の範囲である。特にC成分はA成分とB成分の合計100重量部に対して5〜30重量部配合することにより、反発性能を維持しながらウェットスピン量を増大することができる。
【0036】
さらに本発明のカバーは、スラブ試験片で測定したショアD硬度30〜55、好ましくは40〜50、より好ましくは45〜50を有する。ショアD硬度が30未満では軟らかくなりすぎ、ボール初速は低く、55を超えると逆に、ショートアイアン等による打撃時のスピン量は小さくなる。ここでショアD硬度は厚さ4mmのシート状サンプルを用いてASTMD−2240−68に準じて測定する。
【0037】
また、本発明において、上記カバー用組成物には、主成分としての上記樹脂の他に必要に応じて、硫酸バリウム等の充填剤や二酸化チタン等の着色剤や、その他の添加剤、たとえば分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤ならびに蛍光材料または蛍光増白剤等を、ゴルフボールカバーによる所望の特性が損なわれない範囲で配合してもよい。
【0038】
本発明ではコアは糸巻き芯、あるいはツーピースやスリーピースなどのソリッドボール用コアが使用され糸巻きボール、ソリッドボールのいずれにも採用し得る。ソリッドボールのコアはゴム組成物の架橋物で構成されるが、そのゴム組成物のゴム成分としては、シス−1,4−構造を有するブタジエンゴムを基材とするのが適している。ただし、上記ブタジエンゴムの他にたとえば天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、アクリルニトリルゴムなどをゴム成分100重量部に対して40重量部以下でブレンドしたものであってもよい。
【0039】
前記ゴム組成物に用いられえる架橋剤としてはたとえばアクリル酸、メタクリル酸などのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸と酸化亜鉛などの金属酸化物とをゴム組成物の調製中に反応させてα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩にしたものや、たとえばアクリル酸亜鉛、メタアクリル酸亜鉛などのようなα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩、多官能モノマー、N,N′−フェニルビスマレイミド、イオウなど、通常架橋剤として用いられるものが挙げられるが、特にα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩、特に亜鉛塩が好ましい。たとえばα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩の場合、ゴム成分100重量部に対して20ないし40重量部が好ましく、一方α,β−エチレン性不飽和カルボン酸と金属酸化物とをゴム組成物の調製中に反応させる場合、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸を15〜30重量部と、該α,β−エチレン性不飽和カルボン酸100重量部に対して酸化亜鉛などの金属酸化物を15〜35重量部配合することが好ましい。
【0040】
前記ゴム組成物で用いる充填剤としては、たとえば硫酸バリウム、炭酸カルシウム、クレー、酸化亜鉛などの無機粉末の1種または2種以上を使用することができる。これらの充填剤の配合量はゴム成分100重量部に対して5〜50重量部の範囲が好ましい。
【0041】
また、作業性の改善や硬度調整などの目的で軟化剤や液状ゴムなどを適宜配合してもよいし、また老化防止剤を適宜配合してもよい。
【0042】
また架橋開始剤としては、たとえばジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどの有機過酸化物が用いられる。これらの架橋開始剤の配合量はゴム成分100重量部に対して0.1〜5重量部、特に0.3〜3重量部が好ましい。
【0043】
本発明では前記コアは単一層もしくは比重、硬度等の特性の異なった複合層とすることもできる。この場合、コアの配合は上記配合の記述に限定されるものではない。
【0044】
そして、コアの作製にあたっては、上述の配合材料をロール、ニーダー、バンバリなどを用いてミキシングし、金型を用いて加圧下で145℃〜200℃、好ましくは150℃〜175℃で10分〜40分間加硫してコアを作製する。得られたコアはカバーとの密着をよくするため、表面に接着剤を塗布したりあるいは表面を粗面化してもよい。
【0045】
ここで糸巻き芯およびソリッドコアの直径は36.8〜40.8mm、好ましくは37.6〜40.2mmの範囲で設計される。36.8mm未満ではカバー層が厚くなり反発性が低下し、一方40.8mmを越えると、カバー層が薄くなり成形が困難となる。
【0046】
本発明のカバーの成形は公知の方法を用いて行なうことができる。カバー用組成物を予め半球殻状のハーフシェルに形成し、それを2枚用いてコアを包み、130〜170℃で1〜5分間加圧成形するか、または上記カバー用組成物を直接コア上に射出成形してコアを包み込む方法を用いてもよい。カバーの厚さは1.0〜3.0mm、好ましくは1.3〜2.6mm特に1.6〜2.4mmである。1.0mmより小さいと繰返し打撃した場合にカバー割れが起こりやすくなる欠点を有し、3.0mmより大きいと打球感が悪くなる。さらに、カバー成形時、必要に応じてディンプルを多数表面上に形成する。本発明のゴルフボールは美観を高め、商品価値を上げるために、通常ペイント仕上げ、マーキングスタンプ等を施して市場に投入される。
【0047】
なお、本発明ではカバーは1層とすることもできるが複数層のカバーとして構成することもできる。
【0048】
そして本発明のゴルフボールは、通常ボール直径42.67〜43.00mmの範囲でボール重量45.00〜45.93gの範囲に設計される。
【0049】
【実施例】
実施例1〜4、比較例1〜5
(1) 内層コアの作製
表1に示した配合のコア用ゴム組成物を混練し、金型内で142℃×16分と168℃×8分間加熱プレスすることにより直径39mmのコアを作製した。
【0050】
(2) カバー用組成物の調製
表2に示すカバー用配合材料を二軸混練押出機によりミキシングし、ペレット状のカバー用組成物を得た。押出条件は、
スクリュー径:45mm
スクリュー回転数:200rpm
スクリューL/D:35
であり、配合物は押出機のダイの位置で200〜260℃に加熱された。
【0051】
得られたカバー用組成物を用いて半球殻状のハーフシェルを成形し、これを2枚用いて上記の得られたコアを包み、金型内でプレス熱圧縮成形し、表面にペイントを塗装して、直径42.8mm重量45.4gを有するゴルフボールを作製した。
【0052】
得られたゴルフボールのカバー硬度(ショアD硬度)、飛行性能としてスピン量、ならびに打球感を評価しその結果を表2に示す。
【0053】
なおボールの物性評価は次の方法によって行なった。
(1) 飛行性能、スピン量
ツルーテンパー社製スイングロボットにサンドウェッジクラブを取付け、ゴルフボールをヘッドスピード21m/秒で打撃し、打撃されたゴルフボールに施したマークを連続写真撮影することによってスピン量を求めた。
【0054】
そして測定は通常のドライ条件とボールおよびクラブフェーズを水で濡らしたウエット条件とで測定した。
【0055】
スピン保持率はウエット時のスピン量/ドライ時のスピン量×100の値として定義される。
【0056】
(2) 打球感(衝撃性、反発性)
10名のゴルファーにて、住友ゴム工業製のウッド型ゴルフクラブ(NEW BREED PRO MODEL ♯1)を用いて、衝撃性、および反発性を下記基準で評価し、10名中で最も多かった評価結果をそのクラブの結果とした。
【0057】
(衝撃性)
○ 衝撃が少なくて良好
△ 普通
× 衝撃が大きくて悪い
(反発性)
○ 反発感があり良好
△ 普通
× 重い打球感であり、反発感がなくて悪い
表2に実施例1〜4、および比較例1〜5のゴルフボールの測定結果を示す。実施例のゴルフボールは、比較例のゴルフボールに比べていずれも飛距離、スピン保持率、打球感が優れていることがわかる。
【0058】
比較例1,2は、A成分とB成分の混合比が本発明の範囲外でありWETスピン量が少なく、その結果スピンの保持率が小さくなる。
【0059】
比較例3は、C成分が多すぎるため反発性,打球感は悪く、WETスピン量も少ない。そしてスピン保持率も小さい。
【0060】
比較例4は、C成分が含まれていないので硬度が低下せず、スピンの保持率も低くなった。
【0061】
比較例5は、C成分の配合量が多すぎるため、スピン保持率は低い。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
※1:デュポン社製のナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂、MI=4.8
※2:デュポン社製の亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂、MI=5.2
※3:エクソン社製の亜鉛イオン中和エチレン−アクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
※4:エクソン社製のナトリウムイオン中和エチレン−アクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
※5:三井・デュポン社製の亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸−イソブチルアクリレート三元共重合体系アイオノマー樹脂
※6:(株)クラレ社製の末端に水酸基が付加した水添SIBS(SEEPS−OH)、スチレン含量28wt%、イソプレン/ブタジエン重量比55/45、SP値:7.6
※7:ダイセル化学工業(株)社製エポキシ化SBS、エポキシ当量950〜1050、ブタジエン/スチレン重量比60/40、SP値:9.4
※8:ヤスハラケミカル(株)社製の水添テルペン樹脂、SP値:8.4
※9:荒川化学(株)社製の水添ロジンエステル樹脂、SP値:8.5
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0065】
【発明の効果】
本発明のゴルフボールは、カバー材にアイオノマー樹脂(A成分)とゴム成分を有する熱可塑性エラストマーおよびその変性体(B成分)と該ゴム成分を有する熱可塑性エラストマーおよびその変性体と相溶する樹脂(C成分)を特定割合で配合したため、良好な打球感を有し、ショートアイアン等による打球時にスピン量が大きく、止まりやすく、しかもウエット時のスピン量とドライ時のスピン量に対する比率、すなわちスピン保持率が改善される。
Claims (5)
- コアと、該コアを被覆するカバーからなるゴルフボールにおいて、前記カバーがアイオノマー樹脂(A成分という)とゴム成分を有する熱可塑性エラストマーまたはその変性体(B成分という)と、該ゴム成分を有する熱可塑性エラストマーまたはその変性体に相溶する樹脂(C成分という)との混合物よりなり、
前記B成分のSP値が7.0〜10.0であり、
前記B成分に相溶する樹脂(C成分)がテルペン樹脂および/またはロジンエステル樹脂であり、
前記C成分のSP値が7.0〜10.0であり、
前記A成分と前記B成分の混合比(A成分/B成分)が0.25〜4.0の範囲であり、前記C成分と前記B成分の混合比(C成分/B成分)が0.1〜0.9の範囲であることを特徴とするゴルフボール。 - ゴム成分を有する熱可塑性エラストマーまたはその変性体(B成分)がブタジエンブロックまたはイソプレンブロック等の共役ジエン化合物を有するスチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SIBS構造)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS構造)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS構造)およびそれらをカルボキシル基、エポキシ基、水酸基、酸無水物から選択される官能基で変性された変性体である請求項1記載のゴルフボール。
- C成分の配合量はA成分およびB成分の合計100重量部に対して5〜30重量部である請求項1記載のゴルフボール。
- カバー組成物のショアー硬度が30〜55である請求項1記載のゴルフボール。
- B成分のSP値(SPbという)とC成分のSP値(SPcという)の差である(SPb−SPc)の値が−1.5〜+1.5である請求項1記載のゴルフボール。
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