JP4020634B2 - ゴルフボール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は耐久性および打撃時のフィーリングに優れたゴルフボールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、液体センターに糸巻き層を形成し、これにバラタカバーを被覆したゴルフボールは打球感、コントロール性に優れていることから上級ゴルファーおよびプロゴルファーに広く使用されていた。しかしこの種のゴルフボールの構造は製造工程が複雑であることや、耐久性及び耐擦過傷性に劣ることから、これらの諸特性が総合的に優れた種々のゴルフボールの開発が進められている。
【0003】
特に、ゴルフボールの耐久性を改善する方法として、アクリル酸亜鉛やメタクリル酸亜鉛などの共架橋剤の配合量を多くし、架橋密度を高くすることでエネルギー吸収効果を高めることが試みられている。一方打撃時のフィーリングを改善するために、コアの硬度分布を表面から深さ方向に平坦にする方法も提案されている。この方法では、中心から外側方向に硬くすることを意味するが、硬さにバラツキが生じ、打撃時に柔かい部分に応力集中を生じ、耐久性を低下させることになる。
【0004】
従来から、耐久性、フィーリング性を含む諸特性を総合的に改善する為、種々の提案がなられている。特開昭59−91973号公報には、耐久性および打撃時の感触を改善するため、長さ0.1mm以上の炭素繊維、炭化ケイ素繊維、またはボロン繊維などを少なくとも5wt%含むゴムまたは樹脂よりなる直径36.0〜38mmのソリッドコアを有するゴルフボールが提案されている。
【0005】
特開昭62−64378号公報には、反発特性、スピン性能および耐カットを改善するため、トランスポリイソプレンを主成分とするカバー材に、アミド基を有する微細繊維を配合したゴルフボール用カバー組成物が提案されている。
【0006】
特開昭63−9461号公報には、マルチディンプル方式のゴルフボールの性能、すなわち飛距離を最大限に引き出すカバー材料として、トランスポリイソプレンを主成分とするカバー材100質量部に、トランスポリブタジエン5〜42質量部、アミド基を有する微細繊維1〜15質量部および天然ゴム5〜30質量部を配合したゴルフボール用カバー組成物が提案されている。
【0007】
さらに特開平1−223980号公報には、ボールの飛距離を改善するために、トランス−1,4−ポリイソプレンベースのカバー材中に無機単結晶繊維を配合したカバー材を用いた糸巻きゴルフボールが提案されている。
【0008】
特開平9−173504号公報には油状物質を含有する固形ゴムセンターと軟質カバー材を用いることにより、打球感を改善するとともにショートアイアンでのスピン量を増大させることが開示されている。この技術では固形ゴムセンターの外側に耐油性ゴムや高い硬度のアイオノマー樹脂を用いているため、反発性能および打球感になお改善の余地がある。
【0009】
特開平10−137365号公報には熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーを主材とし繊維状ホウ酸アルミニウムウイスカーを配合し、反発性、耐久性および耐カット性の改善を意図した技術が提案されている。しかしかかる技術は、上記ウイスカーの配合によりカバー材の反発性能を低下することとなる。
【0010】
特開平10−179802号公報ではカバーの基材樹脂が、アイオノマー樹脂とエポキシ基を含有するポリブタジエンブロックを有するスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、またはエポキシ基を含有するポリイソプレンブロックを有するスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体との2成分の加熱混合物を主成分として構成され、カバーを構成する組成物の曲げ剛性率が50〜300MPaで、かつショアD硬度は40〜60であることを特徴とするゴルフボールが提案されている。かかる技術は打球感、スピン性能、飛行性能の改善を意図したものであるが耐カット性は改善の余地がある。
【0011】
特開平10−225532号公報には、耐久性を向上させるため、アイオノマー樹脂を主材とする樹脂材料にホウ酸アルミニウムウイスカーを配合した樹脂組成物よりなるゴルフボール用カバー組成物が提案されている。
【0012】
特許第2676578号公報には、ソフトなフィーリングと耐久性さらに反発性を改善するため、カバー材として、エチレン−不飽和カルボン酸系共重合体に、表面にエポキシ基またはカルボキシル基または酸無水物基を有するゴム状ポリマーのコア(a)とガラス状ポリマーのシェル(b)からなるコアシェルポリマーを配合した組成物が提案されている。
【0013】
一方、日本レオロジー学会誌、Vol.25(1997)には、プラスチック分野の用途として、ゴム・ポリオレフィン・ナイロン三元グラフト共重合体より調整されたミクロ分散系極細繊維強化複合体の開発が報告されている。
【0014】
これらの従来技術では反発性能、スピン性能、耐カット性、耐久性及びフィーリングを総合的に改善することはできない。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来のソリッドゴルフボールの課題であった、耐久性と打撃時のフィーリング性に優れたゴルフボールに関する。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ゴム成分とポリオレフィン成分とナイロン成分よりなる三元複合体含む高分子組成物よりなるゴルフボールである。また本発明はコアと、該コアを被覆するカバーよりなるゴルフボールにおいて、前記コアに、ゴム成分とポリオレフィン成分とナイロン成分よりなる三元複合体含む高分子組成物を用いたことを特徴とするゴルフボールである。
【0017】
ここで高分子組成物は、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、アイオノマー樹脂またはこれらの混合物を含む。そして前記高分子組成物は高分子成分100質量部に対して前記三元複合体を1〜30質量部混合したものが好ましい。更に本発明は、コアと、該コアの外側に配置される中間層と、該中間層を被覆するカバーよりなるゴルフボールにおいて、前記コアおよび/または中間層に、ゴム成分とポリオレフィン成分とナイロン成分よりなる三元複合体含む高分子組成物を用いたことを特徴とするゴルフボールである。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明は、ゴム成分とポリオレフィン成分とナイロン成分よりなる三元複合体含む高分子組成物よりなるゴルフボールである。
【0019】
<三元複合体>
本発明において使用される、三元複合物はゴム成分とポリオレフィン成分さらにナイロン成分の三成分から構成され、これらの三成分はお互いに化学結合したもので、ゴムとポリオレフィンからなるマトリックス中に微細なナイロン繊維が均一に分散した複合材料である。
【0020】
ゴム成分として、天然ゴム、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、NBRの水素添加物(H−NBR)などで、ナイロンと混練、反応時、および紡糸時の高温下においてゲル化が起こらないものに限定される。特に、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)が好適である。
【0021】
ポリオレフィン成分としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンが使用されるが、特にポリプロピレンが好ましい。
【0022】
またナイロン成分としてはナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12が使用され、特にナイロン6が好ましい。そしてこれらの組み合わせ成分比は、ゴルフボールカバー材の要求特性に応じて、適宜調整し得る。この三元複合体は宇部興産(株)によって開発され、大和ポリマー株式会社の販売による商品名がSHPとして知られており、組成比によって、以下のグレードがある。
PA3060:
EPDM/PP/ナイロン6=100/100/100
HA1060:
NR/HDPE/ナイロン6=100/75/87
LA1060:
NR/LDPE/ナイロン6=100/75/87
LA3080:
EPDM/LDPE/ナイロン6=100/40/105
LA5060:
H−NBR/LDPE/ナイロン6=100/100/100
Z040NB:
NBR/LDPE/ナイロン6=100/75/75
ここで、NRは天然ゴム、HDPEは高密度ポリエチレン、LDPEは低密度ポリエチレン、NBRはアクリロニトリル−ブタジエンゴム、H−NBRは水素添加NBRを意味する。そして組成比は質量部で示している。
【0023】
なお、三元複合体に使用されるナイロン繊維の平均径は通常、10μm以下、好ましくは、0.05〜1μmの範囲であり、三元複合体のマトリックスでは、ポリオレフィン成分(例えばHDPE)が連続相を形成している。
【0024】
三元複合体(例えばSHP)を製造するには、通常次の3工程で製造される。
(1) ゴム成分−ポリオレフィン成分の混練・反応工程。
【0025】
(2) ゴム成分−ポリオレフィン成分−ナイロンの混練・反応工程。
(3) 紡糸工程
まず、ゴム、ポリオレフィン及び反応剤を密閉型混練機に投入して、混練・反応物を得る。ここでポリオレフィンが海、ゴムが島の海島構造を形成する。ついでこの混練り・反応物とナイロンを反応剤とともに二軸押出機にフィードし、ゴム−ポリオレフィン−ナイロンの三元グラフト重合体、すなわち三元複合体を得る。グラフト率の調整により、ナイロンは、例えば2〜3μmの粒子としてゴム−ポリオレフィンマトリックスの中に均一に分散する。
【0026】
引き続き二軸押出機の先端に設置されたノズルから押し出し、ドラフトをかけつつ引き取る。この紡糸工程により押し出し物ストランド中のナイロン粒子が変形し繊維状に変換する。ナイロン繊維径はドラフト比に依存するが、生産性を考慮して、通常0.2〜0.3μmに制御される。これらの工程で、ポリオレフィン相は海を形成しているため、粘着性は軽減されペレット化が可能となる。
【0027】
なお、本発明に使用される三元複合体は、日本レオロジー学会誌、Vol.25(1997)275頁〜282頁の記載に基づき製造し、さらに組成物を調整することができる。
【0028】
<高分子成分と三元複合体の混合>
本発明では、三元複合体は、高分子成分100質量部に対して、1〜30質量部の範囲である。好ましくは、2〜25質量部、特に5〜20質量部である。この場合、三元複合体に含まれるナイロン成分の含量が、高分子組成物の補強効果に影響するが、三元複合体の配合量が1質量部未満の場合、ナイロン短繊維による補強効果は少なく、一方30質量部を超えると高分子組成物の硬度が高くなり反撥弾性が低下する。
【0029】
<コアまたはワンピースボールの高分子組成物>
本発明のゴルフボールのコアまたはワンピースボールに前記三元複合体を配合する場合、高分子成分として、通常ゴム成分を含むゴム組成物が用いられる。ここでゴム組成物はゴム成分の架橋物で構成される。そしてゴム成分としては、シス−1,4−構造を有するブタジエンゴムを基材とするのが適している。ただし、上記ブタジエンゴムの他に天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、アクリルニトリルゴムなどをゴム成分中、40質量部%以下でブレンドすることもできる。
【0030】
前記ゴム組成物には架橋剤として、アクリル酸、メタクリル酸などのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸と金属酸化物とをゴム組成物の調製中に反応させてα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩にしたもの、あるいはアクリル酸亜鉛、メタアクリル酸亜鉛などのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩、さらに多官能モノマー、N,N′−フェニルビスマレイミド、イオウなどを架橋剤として用いられる。特にα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩が好適に使用される。
【0031】
たとえばα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩を使用する場合、その配合量はゴム成分100質量部に対して10〜40質量部が好ましい。一方α,β−エチレン性不飽和カルボン酸と金属酸化物とをゴム組成物の調製中に反応させる場合、その配合量はα,β−エチレン性不飽和カルボン酸を15〜30質量部と、該α,β−エチレン性不飽和カルボン酸に対して酸化亜鉛などの金属酸化物を15〜35質量%が好ましい。
【0032】
前記ゴム組成物で用いる充填剤としては、たとえば硫酸バリウム、炭酸カルシウム、クレー、酸化亜鉛などの無機粉末の1種または2種以上を使用することができる。これらの充填剤の配合量はゴム成分100質量部に対して5〜50質量部の範囲が好ましい。また、作業性の改善や硬度調整などの目的で軟化剤や液状ゴムなどを適宜配合してもよいし、また老化防止剤を適宜配合してもよい。
【0033】
また架橋開始剤としては、たとえばジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどの有機過酸化物が用いられる。これらの架橋開始剤の配合量はゴム成分100質量部に対して0.1〜5質量部、特に0.3〜3質量部が好ましい。
【0034】
本発明では前記コアまたはワンピースボールは単一層もしくは比重、硬度等の特性の異なった複合の層で構成することもできる。この場合、コアの配合は上記配合の記述に限定されるものではない。
【0035】
<コアの製法>
コアの製造は、通常高分子成分として前述のジエン系ゴムが使用される。このジエン系ゴムに、前記三元複合体(例えばSHP)を密閉型混練り機に投入し混練りする。このとき混練り温度は三元複合体のナイロンの融点よりも低い温度で行なう必要がある。ナイロンの融点よりも高いと繊維が溶融し、繊維による補強が失われる。しかし混練温度がポリオレフィンの温度よりも低いと三元複合体はゴム中に分散せずペレットのまま残る。この混練り中にマトリックス側において、ポリオレフィンとゴムの相転移がおこり、ポリオレフィンはゴム中に微細に分散する。ついで、その他の配合剤を加えて混合することで、コア組成物が得られる。上記三元複合体の混合と同時、またはその混合後に上述の配合剤をロール、ニーダー、バンバリなどを用いてミキシングし、金型を用いて加圧下で145℃〜200℃、好ましくは120℃〜175℃で10分〜40分間加硫してコアを製造する。得られたコアはカバーとの密着をよくするため、表面に接着剤を塗布したりあるいは表面を粗面化することができる。
【0036】
<コアの硬度分布>
ゴルフボールの圧縮変形は、大きい程打撃時のフィーリングはよくなり、圧縮変形量が同じ場合、硬度分布差が大きい程フィーリングは良くなる。すなわち、コアの表面硬度(Hs)はコア中心硬度(Hc)よりも大きく、そのJIS−C硬度の差が、5〜40、より好ましくは10〜35の範囲とすることで、一層フィーリングは改善される。なおJIS−C硬度は、コアを二分割して、中心から10mmの位置、15mmの位置、15mmの位置を測定し、コアの切断面における硬度は、コア中心からコア表面方向に値が大きくなっていくことが好ましい。
【0037】
<コアの圧縮変形量>
また本発明のコアは、10kgから130kgに荷重を負荷した状態での圧縮変形量は、好ましくは3.0mm〜5.0mm特に3.2mm〜4.5mmの範囲である。3.0mm未満の場合、打撃感が悪くなる傾向にあり、一方、5.0を超えると反発性に不利となる。
【0038】
<コア寸法>
ここでソリッドコアの直径は36.8〜41.4mm、好ましくは37.8〜40.8mmの範囲で設計される。36.8mm未満ではカバー層が厚くなり反発性が低下し、一方41.4mmを越えると、カバー層が薄くなり成形が困難となる。
【0039】
<中間層の組成>
本発明の中間層に用いられる高分子組成物は、前述のコアに用いたゴム組成物のほか、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、アイオノマー樹脂またはこれらの混合物で構成される。
【0040】
ここで熱可塑性樹脂として、オレフィン系熱可塑性樹脂、例えばポレエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂等が使用でき、更にポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂が使用できる。
【0041】
前記熱可塑性エラストマーには、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー及びオレフィン系熱可塑性エラストマーを含む。
【0042】
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーはウレタン構造のハードセグメントとポリエステルまたはポリエーテルのソフトセグメントで構成される。商品名として日本ミラクトラン社のミラクトラン、大日本インキ化学工業社のパンデックス、日本ポリウレタン工業社のパラプレン、ダウケミカルジャパン社のペレセン、BASFジャパン社のエラストラン、協和発酵工業社のエステンおよびエスタロック、日本メグトロン社のアイアンラバー、大日精化工業社のレザミンP、三井日曹ウレタン社のハイプレン、日清紡績社のモビロン、クラレ社のクラミロンU、旭硝子社のユーファインおよびモルセン、住友ベークライト社のスミフレックス、東洋紡績社の東洋紡ウレタン、北辰化学社のイーグルラン、などがある。
【0043】
ポリエステル系熱可塑性エラストマーはポリエステル構造のハードセグメントとポリエーテルまたはポリエステルのソフトセグメントで構成される。具体的商品名としては東レ・デュポン社のハイトレル(Hytrel)、東洋紡績社のペルプレンP.S、大日本インキ化学工業社のグリラックスE、日本ジーイープラスチックス社のレモド(Lomod)、三菱レイヨン社のダイヤアロイR、積水化学工業社のS−TPE、日本ゼオン社のZTPE、帝人社のヌーベラン、日本合成化学社のフレクソマー、日本ミラクトラン社のリベラン、三菱化学社のプリマロイ、などがある。
【0044】
ポリアミド系熱可塑性エラストマーはポリアミドのハードセグメントとポリエーテルまたはポリエステルのソフトセグメントより構成される。その商品名は東レ社のペバックス(Pebax)、ダイセルヒュルズ社のダイアミド・PAE、大日本インキ化学工業社のグリラックスA、三菱エンジニアリングプラスチックス社のノバミッドPAE、宇部興産社のUBE・PAE、Emsジャパン社のグロリンELX、グリラミドELY、積水化学工業社のS−TPAEなどがある。
【0045】
前記オレフィン系熱可塑性エラストマーは、分子鎖中にオレフィン単位を含むもので、いわゆるスチレン系熱可塑性エラストマーを含む概念であり、分子内にソフトセグメントとハードセグメントを有するブロック共重合体を含む。ソフトセグメントとして共役ジエン化合物から得られる、ブタジエンブロックあるいはイソプレンブロック等の単位である。ここで共役ジエン化合物としては、たとえばブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等の中から1種または2種以上が選択でき、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組合せが好ましい。ハードセグメントを構成する成分としては、エチレン、プロピレン、スチレンおよびその誘導体、たとえばα−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレン等の中から1種または2種以上が選択された化合物から得られるポリエチレンブロック、ポリプロピレンブロックまたはスチレンブロック等である。
【0046】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、たとえばスチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SIBS構造)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS構造)、そのブタジエンの二重結合部分を水素添加したスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS構造)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS構造)、そのイソプレン二重結合部分を水素添加したスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS構造)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS構造)およびそれらを変性したもの等が挙げられる。
【0047】
なお上記SIBS構造、SBS構造、SEBS構造、SIS構造、SEPS構造、SEEPS構造におけるスチレン(またはその誘導体)の含量は共重合体中10〜50重量%、特に15〜45重量%の範囲が好ましい。10重量%より少ない場合、カバーは軟らかくなり耐カット性は低下する傾向にあり、一方50重量%より多い場合は、打球感およびコントロール性が充分維持できない。
【0048】
本発明では、上記SIBS構造、SBS構造、SEBS構造、SIS構造、SEPS構造、SEEPS構造の共重合体の一部にエポキシ基、水酸基、酸無水物、カルボキシル基から選択される官能基で変性された変性体を使用できる。
【0049】
たとえばエポキシ基を含有するポリブタジエンブロックを有するスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS構造)とは、両末端にポリスチレンを持つブロック共重合体で、その中間層がエポキシ基を含有するポリブタジエンであり、そのポリブタジエン部分の二重結合の一部または全部に水素添加したものであってもよく、また、エポキシ基を含有するポリイソプレンブロックを有するスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS構造)とは、両末端にポリスチレンを持つブロック共重合体で、その中間層がエポキシ基を含有するポリイソプレンであり、そのポリイソプレン部分の二重結合の一部または全部に水素添加したものであってもよい。
【0050】
エポキシ化されたスチレン系熱可塑性エラストマーは、エポキシ基当量が200〜3000の範囲のものが使用できる。かかるエポキシ化された熱可塑性エラストマーをアイオノマー樹脂等と混合する際、アイオノマー樹脂の遊離のカルボキシル基と反応が生じ、カバー組成物の強度は高くなり、耐カット性が一層改善される。エポキシ等量が200未満の場合、上記耐カット性の効果は少なく、一方、エポキシ基当量が3000より多い場合は、エポキシ基とアイオノマー樹脂中の遊離のカルボキシル基との反応量が多くなりすぎ、流動性が悪くなって、ボールの成形が困難になるおそれがある。水酸基、酸無水物およびカルボキシル基についても前記ブロック共重合体の分子鎖の中間部分または末端に導入される。
【0051】
また前記アイオノマー樹脂としては、たとえばα−オレフィンと炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸との共重合体であってそのカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和して得られる二元共重合体がある。またα−オレフィンと炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数2〜22のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体で、そのカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和して得られるものが挙げられる。
【0052】
そしてそれらの組成比としては、アイオノマー樹脂のベースポリマーがα−オレフィンと炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の場合、α−オレフィンが80〜90重量%で、α,β−不飽和カルボン酸が10〜20重量%であることが好ましい。ベースポリマーがα−オレフィンと炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数2〜22のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の場合、α−オレフィンが70〜85重量%で、α,β−不飽和カルボン酸が5〜30重量%、α,β−不飽和カルボン酸エステルが25重量%以下であることが好ましい。またこれらのアイオノマー樹脂はメルトインデックス(MI)が0.1〜20、特に0.5〜15であることが好ましい。カルボン酸含量またはカルボン酸エステル含量を上記範囲とすることにより反発性を高めることができる。
【0053】
上記α−オレフィンとしては、たとえばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどが用いられ、特にエチレンが好ましい。炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸としては、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸などか用いられ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。また、不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸などのメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステルなどが用いられ、特にアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルが好ましい。
【0054】
上記α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体またはα−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、マグネシウムイオン、カリウムイオンなどがある。
【0055】
そして、アイオノマー樹脂が、エチレンとアクリル酸またはメタクリル酸との共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したものである場合は、そのメルトインデックスが3〜7で、曲げ剛性率が200〜400MPaのいわゆる高剛性でかつハイフロータイプのものであることが好ましい。
【0056】
上記アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井デュポンケミカル(株)から市販されている二元共重合体のアイオノマー樹脂としてハイミラン1555(Na)、ハイミラン1557(Zn)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM7318(Na)、ハイミランAM7315(Zn)、ハイミランAM7317(Zn)、ハイミランAM7311(Mg)、ハイミランMK7320(K)があり、また三元共重合体のアイオノマー樹脂として、ハイミラン1856(Na)、ハイミラン1855(Zn)、ハイミランAM7316(Zn)などがある。
【0057】
さらにデュポン社から市販されているアイオノマー樹脂としては、サーリン8945(Na)、サーリン8940(Na)、サーリン9910(Zn)、サーリン9945(Zn)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)、三元共重合体系アイオノマー樹脂として、サーリンAD8265(Na)、サーリンAD8269(Na)などがある。
【0058】
エクソン社から市販されているアイオノマー樹脂としては、アイオテック7010(Zn)、アイオテック8000(Na)などがある。なお、上記商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、K、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオン種を示している。また、本発明において、カバーの組成物に用いられるアイオノマー樹脂は、上記例示のものを2種以上混合してもよいし、上記例示の1価の金属イオンで中和したアイオノマー樹脂と2価の金属イオンで中和したアイオノマー樹脂を2種以上混合して用いてもよい。
【0059】
<高分子成分の二種類以上の混合>
前記中間層の高分子成分は、二種類以上の熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー、アイオノマー樹脂を混合して用いることができ、その混合割合は中間層の要求特性に応じて適宜調整し得る。
【0060】
<中間層の製造方法>
本発明の中間層の高分子組成物は、ゴムのほか、例えば熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂またはアイオノマー樹脂等が使用されるが、これらの高分子成分と前記三元複合体(例えばSHP)を密閉型混練り機に投入し混練りする。前述の如く、混練り温度は三元複合体のナイロンの融点よりも低い温度で行なう必要がある。ナイロンの融点よりも高いと繊維が溶融し、繊維による補強が失われる。しかし混練温度が三元複合体のポリオレフィンの温度よりも低いと三元複合体はゴム中に分散せずペレットのまま残る。この混練り中にマトリックス側において、ポリオレフィンとゴムの相転移がおこり、ポリオレフィンはゴム中に微細に分散する。ついで、その他の配合剤を加えて混合することで、中間層の高分子組成物が得られる。
【0061】
<カバー材料>
本発明のゴルフボールは、ワンピースボールのほか、コアと該コアを被覆するカバーより構成されるツーピースボール、あるいはコアとその外側の中間層と、それを被覆するカバーのスリーピースボールとすることができる。ここでカバー材料として、前述の熱可塑性樹脂、アイオノマー樹脂およびまたは熱可塑性エラストマー、更にこれらの混合物を用いることができる。好ましくは、アイオノマー樹脂、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマーが使用できる。更に、前記二種類以上の材料を混合して用いることができる。例えば、アイオノマー樹脂に熱可塑性エラストマを混合できる。例えば、熱可塑性エラストマーをアイオノマ樹脂100質量部に対して、50質量部以下混合することで、スピン性能及びフィーリング性を改善できる。
【0062】
上記カバー組成物には、必要に応じて、硫酸バリウム等の充填剤や二酸化チタン等の着色剤や、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤ならびに蛍光材料または蛍光増白剤等を、ゴルフボールカバーによる所望の特性が損なわれない範囲で配合してもよい。
【0063】
<ゴルフボールの製法>
本発明ではカバーをコアーに成形するには公知の方法を用いて行なうことができる。例えば、コアとカバーよりなるツーピースボールの場合、カバー組成物を予め半球殻状のハーフシェルに形成し、それを2枚用いてコアを包み、130〜170℃で1〜5分間加圧成形する。または上記カバー組成物を直接コア上に射出成形してコアを包み込む方法を用いてもよい。カバーの厚さは0.3〜3.5mm、好ましくは1.0〜2.5mmである。0.3mmより小さいと繰返し打撃した場合にカバー割れが起こりやすくなる欠点を有し、3.5mmより大きいと打球感が悪くなる。さらに、カバー成形時、必要に応じてディンプルを多数表面上に形成する。本発明のゴルフボールは美観を高め、商品価値を上げるために、通常ペイント仕上げ、マーキングスタンプ等を施して市場に投入される。
【0064】
本発明のゴルフボールは、コアとして糸巻き芯、単一層、複数層のソリッドコアが使用され、糸巻きボールあるいはソリッドボールのいずれにも採用し得る。
【0065】
なお、本発明ではカバーは1層とすることもできるが複数層のカバーとして構成することもできる。そして本発明のゴルフボールは、通常ボール直径42.67〜43.00mmの範囲でボール重量45.00〜45.93gの範囲に設計される。
【0066】
また本発明のゴルフボールは、10kgから130kgに荷重を負荷した状態での圧縮変形量は、2.0mm〜4.0mm、好ましくは2.5mm〜3.5mの範囲である。2.0mm未満の場合、打撃感が悪くなる傾向にあり、一方、4.0を超えると、打撃時の感触が柔かくなり、さらに反発性が不利となる。
【0067】
【実施例】
実施例1、実施例2、比較例1〜比較例3
(1) コアの作製
表1に示すようにブタジエンゴムを主成分とするコア用ゴム組成物、三元複合体(SHP)を混練し、金型内で170℃で15分間(比較例3はさらに165℃で8分)、加熱成形することにより直径38.5mmの球状ソリッドコアを作製した。得られたソリッドコアの物性を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1に表示した配合成分は次の通りである。
(注1) BR18 :JSR株式会社製のハイシスポリブタジエンゴム
(注2) SHP(LA1060):大和ポリマー株式会社の販売するゴム・ポリオレフィン・ナイロンの三元複合体
(注3) BR10 :JSR株式会社製のハイシスポリブタジエンゴム
(2) カバー用組成物の調製
表1に示すカバー用組成物を二軸混練押出機によりミキシングし、二軸押し出し機でシリンダー温度180℃で押し出した。なおカバー材料として、ハイミラン#1605(三井デュポンポリケミカル株式会社製アイオノマー樹脂)を用いた。
【0070】
表1のカバー用組成物を用いて射出成形にて、ソリッドコアにカバーを被覆し、その後、表面にペイントを塗装して、直径42.7mm、重量45.4gを有するゴルフボールを作製した。
【0071】
実施例3
表1に示すコア配合のゴム組成物を用いて、実施例1と同様にしてソリッドコアを製造した。この場合、ソリッドコアの直径は37.1mmであった。次に表1に示すゴム組成物を用いて、150℃で25分、その後165℃で8分加硫成形して、一対の肉厚が0.5mmの半殻状の中間層を得た。この一対の半殻状の中間層を前記ソリッドコアに被覆して、直径38.1mmのコア/中間層の構造体を得た。その後、実施例1と同様にして、カバーを被覆してゴルフボールを得た。
【0072】
<性能評価方法>
得られたゴルフボールの耐久性及び打撃時のフィーリング性を評価した。
【0073】
(1) 耐久性
ツルーテンパー社製のスイングロボットにメタル製ウッド、一番クラブ(W#1ドライバー)を取り付け、ヘッドスピードを45m/secに設定して各ゴルフボールを打撃し、衝突板に衝突させて評価する。評価はゴルフボールが壊れるまでの打撃回数を測定し、比較例1を100として指数化した。指数の値が大きいほど、ゴルフボールは耐久性に優れている。
【0074】
(2) 打撃時のフィーリング
ゴルファー10名により、メタル製ウッド、一番クラブ(W#1ドライバー)で実打撃を行ない、打撃時の衝撃強さを、次の基準で評価し、最も多い評価をそのボールの衝撃フィーリングとした。
【0075】
○:衝撃が少なくて良い。
△:普通
×:衝撃が大きくて悪い
表1に実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例3のゴルフボールの評価結果を示す。
【0076】
<評価結果>
比較例1〜比較例3は、三元複合体を配合しないゴム組成物のコアを用いており、フィーリングはかなり劣っている。
【0077】
実施例1、実施例2は、ポリブタジエンゴムに三元複合体を配合したゴム組成物をコアに用いており、一方実施例3はポリブタジエンゴムに三元複合体を配合したゴム組成物を中間層に用いている。いずれのゴルフボールも耐久性及びフィーリングがバランス良く改善されている。
【0078】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0079】
【発明の効果】
本発明のゴルフボールは、特に、そのコアおよび/または中間層、またはワンピースボールの組成物として、高分子成分と三元複合体の混合物を用いたため、耐久性及びフィーリングを同時に改善することができる。
Claims (5)
- ゴム、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、アイオノマー樹脂またはこれらの混合物よりなる高分子成分に、ゴム成分とポリオレフィン成分とナイロン成分よりなる三元複合体含む高分子組成物を用いたことを特徴とするゴルフボール。
- コアと、該コアを被覆するカバーよりなるゴルフボールであって、前記コアに、前記三元複合体含む高分子組成物を用いたことを特徴とする請求項1に記載のゴルフボール。
- 高分子組成物は、α、β−エチレン性不飽和カルボン酸の金属塩を高分子成分100質量部に対して、10〜40質量部含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載のゴルフボール。
- 高分子組成物は高分子成分100質量部に対して前記三元複合体を1〜30質量部混合したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のゴルフボール。
- コアと、該コアの外側に配置される中間層と、該中間層を被覆するカバーよりなるゴルフボールにおいて、前記コアおよび/または中間層に、前記三元複合体含む高分子組成物を用いたことを特徴とする請求項1に記載のゴルフボール。
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