JP4311885B2 - 可塑性油脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ベーカリー製品に用いて好適な可塑性油脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
通常、可塑性油脂組成物において耐熱保型性を改善する手段としては、多量の乳化剤を用いたり、高融点油脂を用いることなどで対処してきた。しかしながら、多量の乳化剤を用いると風味の発現性が悪く、高融点油脂を多く用いると口溶けが悪くなるなどの問題があった。
【0003】
また、ロールイン用油脂組成物においても、ベーカリー製品製造工程のホイロ工程でオイルオフしにくいロールイン用油脂組成物とするため、ロールイン用油脂組成物に多量の乳化剤や高融点油脂を用いるなどの手段が取られてきた。しかしながら、一般の可塑性油脂組成物の場合と同様に、乳化剤を多量に使用することにより、最終的なベーカリー製品において風味が出にくくなり、高融点油脂を多く使用すると口溶けが悪くなるという欠点があった。
【0004】
また、夏場における油脂組成物の保型性を維持する手段として、特開昭64−47342号公報には、結晶性αマルトースを15〜30重量%使用することで、35〜38℃においてオイルオフが非常に少ない油脂組成物を提供できることが開示されている。しかし、該公報は、マルトースを溶解せず、マルトースの結晶構造間に油脂を保持することで保型性を高めることを目的としたものである。また、該公報では、結晶性αマルトースを多量に配合しなければならず、そのため甘い油脂組成物となってしまっていた。
【0005】
また、特開平4−248948号公報には、特定のSFI値を有する油脂からなる油相と、糖濃度が30重量%以上の液糖からなる水相との油中水型乳化物であるロールイン用油脂組成物が開示されている。しかし、該公報のロールイン用油脂組成物も、糖濃度が高いため甘いロールイン用油脂組成物となってしまっていた。
【0006】
従って、本発明の目的は、耐熱保型性が良好で、口溶け及び風味も優れており、且つ低温でも軟らかく、伸展性に優れ、特にロールイン用油脂組成物として好適であり、ベーカリー製品に用いた場合、ホイロ工程においてオイルオフが少なく、しかも風味良好なベーカリー製品を得ることができる可塑性油脂組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、マルトース又はトレハロース1〜10重量%、並びに水を含有し、対水糖濃度が30重量%未満であり、乳化形態が油中水型であることを特徴とする可塑性油脂組成物を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の可塑性油脂組成物を詳細に説明する。
マルトース又はトレハロースの配合量は、本発明の可塑性油脂組成物中、1〜10重量%、好ましくは3〜8重量%、さらに好ましくは3〜5重量%である。上記糖の配合量が1重量%よりも少ないと、耐熱保型性が悪いので好ましくなく、また上記糖の配合量が10重量%を超えると、上記糖の甘味が明らかに感じられ、可塑性油脂組成物の使用用途が限定されるので好ましくない。
【0009】
本発明では、上記の糖として、液状のもの、粉末状のものの何れを用いてもよい。
【0010】
また、水の配合量は、本発明の可塑性油脂組成物中、好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは10〜30重量%、最も好ましくは10〜20重量%である。ここでいう水の配合量とは、配合する水の他、配合材料に由来する水分を含めたものである。
【0011】
本発明の可塑性油脂組成物は、対水糖濃度が30重量%未満、好ましくは15〜28重量%、さらに好ましくは20〜28重量%とする。ここでいう対水糖濃度とは、可塑性油脂組成物に含まれる水の重量(配合する水及び配合材料に由来する水分の合計量)に対する糖(可塑性油脂組成物に配合するすべての糖)の重量の割合を示すものである。
上記対水糖濃度が30重量%以上であると、甘い可塑性油脂組成物となり、使用用途が限定されるので好ましくない。
【0012】
また、本発明の可塑性油脂組成物は、甘味度を好ましくは40以下、さらに好ましくは30以下、最も好ましくは25以下となるように調整するのがよい。ここでいう甘味度とは、10重量%スクロース溶液の甘さを100とした時の相対値を示すものである。
【0013】
本発明の可塑性油脂組成物に用いられる油脂としては、特に制限されるものではなく、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油などの各種植物油脂、動物油脂並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。油脂の配合量は、本発明の可塑性油脂組成物中、好ましくは50〜90重量%、さらに好ましくは60〜85重量%である。
【0014】
本発明の可塑性油脂組成物は、配合油脂のSFC(固体脂含量)が、10℃で好ましくは15〜70%、さらに好ましくは15〜50%、最も好ましくは15〜40%、また30℃で好ましくは3〜25%、さらに好ましくは3〜20%、最も好ましくは3〜15%となるように、上記油脂を配合するのがよい。
特に、本発明の可塑性油脂組成物をロールイン用油脂組成物として使用する場合には、上記SFCが、10℃で好ましくは20〜60%、さらに好ましくは20〜50%、最も好ましくは20〜40%、また20℃で好ましくは10〜40%、さらに好ましくは10〜30%、最も好ましくは10〜20%、さらに30℃で好ましくは3〜25%、さらに好ましくは5〜20%、最も好ましくは10〜15%となるように、上記油脂を配合するのがよい。
【0015】
上記SFCは、次のようにして測定する。即ち、配合油脂を60℃に30分保持し、油脂を完全に融解し、そして0℃に30分保持して固化させる。さらに25℃に30分保持し、テンパリングを行い、その後、0℃に30分保持する。これをSFCの各測定温度に30分保持後、SFCを測定する。
【0016】
その他、本発明の可塑性油脂組成物に含有させることができる成分としては、例えば、乳化剤、増粘安定剤、エカトリアル水酸基を1分子中に平均7個以上有する糖以外の糖類や糖アルコール類、食塩や塩化カリウムなどの塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸などの酸味料、ステビア、アスパルテームなどの甘味料、β―カロチン、カラメル、紅麹色素などの着色料、トコフェロール、茶抽出物などの酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、卵及び各種卵加工品、着香料、乳製品、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類などの食品素材や食品添加物が挙げられる。
【0017】
上記乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、サポニン類などがあげられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。本発明ではこれらの乳化剤のうち合成乳化剤を用いないのが好ましく、天然乳化剤、例えばレシチンを用いることにより良好な風味発現性を有することができる。上記乳化剤の配合量は、本発明の可塑性油脂組成物中、好ましくは0.05〜3重量%、さらに好ましくは0.1〜1重量%である。また、本発明の可塑性油脂組成物において、上記乳化剤が必要でなければ用いなくてもよい。
【0018】
上記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉などがあげられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。上記増粘安定剤の配合量は、特に制限はないが、本発明の可塑性油脂組成物中、好ましくは0〜10重量%、さらに好ましくは0〜5重量%である。また、本発明の可塑性油脂組成物において、上記増粘安定剤が必要でなければ用いなくてもよい。
【0019】
上記のエカトリアル水酸基を1分子中に平均7個以上有する糖以外の糖類や糖アルコール類としては、上白糖、グラニュー糖、粉糖、ブドウ糖、果糖、蔗糖、乳糖などがあげられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。ただしエカトリアル水酸基を1分子中に平均7個以上有する糖以外の糖類や糖アルコールを本発明の可塑性油脂組成物で用いる場合は、本発明の可塑性油脂組成物の対水糖濃度が30重量%未満となるように配合する必要がある。
【0020】
また、本発明の可塑性油脂組成物は、特にロールイン用油脂組成物として用いる場合、その硬さが、好ましくは5℃で1000〜5000g/cm2 、10℃で500〜3000g/cm2 、さらに好ましくは5℃で1500〜4000g/cm2 、10℃で1000〜2500g/cm2 、最も好ましくは5℃で2000〜3000g/cm2 、10℃で1000〜2000g/cm2 とするのがよい。硬さが5℃で5000g/cm2 を超えたり、10℃で3000g/cm2 を超えてしまうと、ロールイン用油脂組成物として使用したときに伸展性が悪くなりやすく、低温での可塑性が不十分となりやすい。また、硬さがが5℃で1000g/cm2 未満であったり、10℃で500g/cm2 未満であったりすると、パフ性の良好なベーカリー製品が得られにくい。
【0021】
上記硬さは、レオメーター(不動工業製)を用いて、例えば次のように測定する。測定試料(縦4cm×横4cm×高さ3cm)を各測定温度に1時間放置し、レオメーターにて、直径5mmの円板型アダプターを用い、試料台上昇速度20mm/分で最大応力を測定し、これを硬さとする。
【0022】
次に本発明の可塑性油脂組成物の製造方法を説明する。
本発明の可塑性油脂組成物は、配合油脂と、マルトース又はトレハロースを1〜10重量%含有し、対水糖濃度が30重量%未満である水相とを乳化し、必要により殺菌処理を行う。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。
次に、急冷可塑化工程に供する。急冷可塑化する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えばボテーター、コンビネーター、パーフェクターなどのマーガリン製造機やプレート型熱交換機などがあげられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターの組み合わせがあげられる。
また、本発明の可塑性油脂組成物を製造する際の何れかの製造工程で、窒素、空気などを含気させても、含気させなくても構わない。
【0023】
得られた本発明の可塑性油脂組成物は、マーガリンタイプであり、またその乳化形態は、油中水型である。
【0024】
また、本発明の可塑性油脂組成は、ロールイン用油脂組成物とする場合、その形状を、シート状、ブロック状、円柱状などの形状としてもよい。各々の形状についての好ましいサイズは、シート状:縦50〜1000mm、横50〜1000mm、厚さ1〜50mm、ブロック状:縦50〜1000mm、横50〜1000mm、厚さ50〜500mm、円柱状:直径1〜25mm、長さ5〜100mmである。
【0025】
本発明の可塑性油脂組成物は、食パン、菓子パン、デニッシュ、クロワッサン、パイ、フランスパン、シュー、ドーナツ、ケーキ、クラッカー、クッキー、ハードビスケットなどのベーカリー製品に、スプレッド用、練り込み用、ロールイン用、バタークリーム用として用いることができる。また、その際の本発明の可塑性油脂組成物の使用量は、使用用途により異なるものであり、特に限定されるものではない。
【0026】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例により何等制限されるものではない。
【0027】
なお、下記の実施例及び比較例において、デニッシュは下記に示す配合及び製法により製造し、評価に供した。
配合
強 力 粉 60 重量部
薄 力 粉 40 重量部
食 塩 1.2重量部
砂 糖 20 重量部
脱脂粉乳 4 重量部
マーガリン(練り込み用油脂) 12 重量部
卵(正味) 25 重量部
イースト 5 重量部
イーストフード 0.1重量部
水 30 重量部
ロールイン用油脂組成物 50 重量部
製法
ロールイン用油脂組成物及びマーガリン(練り込み用油脂)以外の原料を、縦型ミキサーにて低速及び中速でミキシングして得た生地に、練り込み油脂を加え、さらにミキシングした後、冷蔵庫内で生地をリタードする。この生地にロールイン用油脂組成物をのせ、常法によりロールイン(3つ折り3回)し、成型、ホイロ、焼成する。
【0028】
(実施例1)
パーム硬化油45重量%、大豆硬化油25重量%及び大豆油30重量%を混合し、配合油脂を得た。この配合油脂81重量%にレシチン0.5重量%及び香料0.5重量%を混合溶解した油相と、水13重量%、食塩1重量%及びマルトース4重量%とを、常法により、油中水型の乳化物とし、急冷可塑化工程にかけ、シート状のロールイン用油脂組成物(本発明の可塑性油脂組成物)を得た。
このロールイン用油脂組成物は、甘味度が13、配合油脂のSFCが10℃で36%、20℃で16%、30℃で9%、水分が13重量%、対水糖濃度が24重量%であった。また、このロールイン用油脂組成物の硬さ(5℃、10℃、15℃及び20℃それぞれにおける硬さ)は下記表1に示した。このロールイン用油脂組成物は、低温でも軟らかく、伸展性に優れたものであった。
このロールイン用油脂組成物を用い、上記の配合及び製法にてデニッシュを製造した。このデニッシュを製造する際のホイロ工程において、オイルオフは見られなかった。また、得られたデニッシュについて風味評価を実施したところ、下記表1に示すように、風味の発現性が良好であった。
【0029】
(実施例2)
パーム硬化油45重量%、ナタネ硬化油15重量%及び大豆油40重量%を混合し、配合油脂を得た。この配合油脂64重量%に発酵バター20重量%、レシチン0.5重量%及び香料0.5重量%を混合溶解した油相と、水9重量%、食塩1重量%、脱脂粉乳1重量%及びマルトース4重量%とを、常法により、油中水型の乳化物とし、急冷可塑化工程にかけ、シート状のロールイン用油脂組成物(本発明の可塑性油脂組成物)を得た。
このロールイン用油脂組成物は、甘味度が15、配合油脂のSFCが10℃で44%、20℃で18%、30℃で12%、水分が12重量%、対水糖濃度が27重量%であった。また、このロールイン用油脂組成物の硬さ(5℃、10℃、15℃及び20℃それぞれにおける硬さ)は下記表1に示した。このロールイン用油脂組成物は、低温でも軟らかく、伸展性に優れたものであった。
このロールイン用油脂組成物を用い、上記の配合及び製法にてデニッシュを製造した。このデニッシュを製造する際のホイロ工程において、オイルオフは見られなかった。また、得られたデニッシュについて風味評価を実施したところ、下記表1に示すように、風味の発現性が良好であった。
【0030】
(実施例3)
牛脂硬化油25重量%、牛脂25重量%及び豚脂50重量%を混合し、配合油脂を得た。この配合油脂69重量%にレシチン0.5重量%及び香料0.5重量%を混合溶解した油相と、水20重量%、食塩2重量%、脱脂粉乳3重量%及びマルトース5重量%とを、常法により、油中水型の乳化物とし、急冷可塑化工程にかけ、直径5mm、長さ40mmの円柱状に成型したロールイン用油脂組成物(本発明の可塑性油脂組成物)を得た。
このロールイン用油脂組成物は、甘味度が23、配合油脂のSFCが10℃で45%、20℃で20%、30℃で10%、水分が20重量%、対水糖濃度が25重量%であった。また、このロールイン用油脂組成物の硬さ(5℃、10℃、15℃及び20℃それぞれにおける硬さ)は下記表1に示した。このロールイン用油脂組成物は、低温でも軟らかく、伸展性に優れたものであった。
このロールイン用油脂組成物を用い、上記の配合及び製法にてデニッシュを製造した。このデニッシュを製造する際のホイロ工程において、オイルオフは見られなかった。また、得られたデニッシュについて風味評価を実施したところ、下記表1に示すように、風味の発現性が良好であった。
【0031】
(実施例4〜6)
実施例1〜3においてマルトースをトレハロースに置き換えたほかは、実施例1〜3と同様の配合及び製法によりロールイン用油脂組成物(本発明の可塑性油脂組成物)をそれぞれ製造した。なお配合油脂のSFCは実施例1〜3と同様であった。
得られたロールイン用油脂組成物の硬さ(5℃、10℃、15℃及び20℃それぞれにおける硬さ)は下記表1に示した。これらのロールイン用油脂組成物は、低温でも軟らかく、伸展性に優れたものであった。
これらのロールイン用油脂組成物を用い、上記の配合及び製法にてデニッシュをそれぞれ製造した。これらのデニッシュを製造する際のホイロ工程において、オイルオフは見られなかった。また、得られたデニッシュについて風味評価を実施したところ、下記表1に示すように、何れも風味の発現性が良好であった。
【0032】
(実施例7)
パーム硬化油25重量%、大豆硬化油15重量%及び大豆油30重量%に発酵バター11重量%、レシチン0.3重量%及びフレーバー0.5重量%を加えた油相と、水12.7重量%に食塩1.5重量%及びマルトース4重量%を加えた水相とを、常法により、油中水型の乳化物とし、急冷可塑化工程にかけ、練り込み用油脂組成物(本発明の可塑性油脂組成物)を得た。
この練り込み用油脂組成物は、甘味度が14、配合油脂のSFCが10℃で39%、30℃で6%、水分が15重量%、対水糖濃度が22重量%であった。また、この練り込み用油脂組成物は、耐熱保型性に優れ、また口溶け、風味とも良好なものであった。さらに、この練り込み用油脂組成物を用いて菓子パンを製造したところ、風味の発現性が良好であった。
【0033】
(実施例8)
実施例7におけるマルトース4重量%をマルトース2重量%及びトレハロース2重量%に置き換えたほかは、実施例7と同様の配合及び製法により練り込み用油脂組成物(本発明の可塑性油脂組成物)を得た。
この練り込み用油脂組成物も、耐熱保型性に優れ、また口溶け、風味とも良好なものであった。さらに、この練り込み用油脂組成物を用いて菓子パンを製造したところ、風味の発現性が良好であった。
【0034】
(比較例1)
実施例1で得られた油相82重量%と、水13重量%、食塩1重量%及びスクロース(エカトリアル水酸基を1分子中に7個以上有しない)4重量%とを、常法により、油中水型の乳化物とし、急冷可塑化工程にかけ、ロールイン用油脂組成物を得た。
このロールイン用油脂組成物は、甘味度が40、配合油脂のSFCが10℃で36%、20℃で16%、30℃で10%、水分が13重量%、対水糖濃度が24重量%であった。また、このロールイン用油脂組成物の硬さ(5℃、10℃、15℃及び20℃それぞれにおける硬さ)は下記表1に示した。このロールイン用油脂組成物は、低温でも軟らかく、伸展性に優れたものであった。
しかし、このロールイン用油脂組成物を用い、上記の配合及び製法にてデニッシュを製造したところ、ホイロ工程においてオイルオフが見られた。また、得られたデニッシュについて風味評価を実施したところ、風味に甘味が目立つものであった。
【0035】
(比較例2)
実施例2で得られた油相85重量%と、水13重量%、食塩1重量%及び脱脂粉乳1重量%とを、常法により、油中水型の乳化物とし、急冷可塑化工程にかけ、ロールイン用油脂組成物を得た。
このロールイン用油脂組成物は、甘味度が2、配合油脂のSFCが10℃で44%、20℃で18%、30℃で12%、水分が16重量%、対水糖濃度が3重量%であった。また、このロールイン用油脂組成物の硬さ(5℃、10℃、15℃及び20℃それぞれにおける硬さ)は下記表1に示した。このロールイン用油脂組成物は、低温でも軟らかく、伸展性に優れたものであった。
しかし、このロールイン用油脂組成物を用い、上記の配合及び製法にてデニッシュを製造したところ、ホイロ工程においてオイルオフが見られた。また、得られたデニッシュについて風味評価を実施したところ、実施例2で得られたデニッシュと比較すると充分に乳風味が発現していなかった。
【0036】
(比較例3)
実施例3で得られた油相70重量%と、水15重量%、食塩1重量%、脱脂粉乳2重量%及びマルトース12重量%とを、常法により、油中水型の乳化物とし、急冷可塑化工程にかけ、ロールイン用油脂組成物を得た。
このロールイン用油脂組成物は、甘味度が44、配合油脂のSFCが10℃で45%、20℃で20%、30℃で12%、水分が15重量%、対水糖濃度が46重量%であった。また、このロールイン用油脂組成物の硬さ(5℃、10℃、15℃及び20℃それぞれにおける硬さ)は下記表1に示した。このロールイン用油脂組成物は、低温でも軟らかく、伸展性に優れたものであった。
このロールイン用油脂組成物を用い、上記の配合及び製法にてデニッシュを製造したところ、ホイロ工程においてオイルオフは見られなかったが、得られたデニッシュについて風味評価を実施したところ、風味に甘味が目立つものであった。
【0037】
(比較例4)
実施例7で得られた油相70重量%と、水12重量%に食塩1重量%、脱脂粉乳2重量%及びマルトース15重量%を加えた水相とを、常法により、油中水型の乳化物とし、急冷可塑化工程にかけ、練り込み用油脂組成物を得た。
この練り込み用油脂組成物は、甘味度が54、配合油脂のSFCが10℃で39%、30℃で6%、水分が13重量%、対水糖濃度が55重量%であった。
この練り込み用油脂組成物は、実施例7の練り込み用油脂組成物と比較すると、甘味の目立つものであり、耐熱保型性が悪いものであった。
【0038】
なお、実施例及び比較例における可塑性油脂組成物の配合油脂のSFCは、次のようにして測定した。配合油脂を60℃に30分保持し、油脂を完全に融解し、そして0℃に30分保持して固化させる。さらに25℃に30分保持し、テンパリングを行い、その後、0℃に30分保持する。これをSFCの各測定温度に30分保持後、SFCを測定した。
【0039】
【表1】
【0040】
焼成品(デニッシュ)の風味評価の基準は下記の通りである。
○:10人中7〜10人が美味しいと判断
△:10人中4〜6人が美味しいと判断
×:10人中0〜3人が美味しいと判断
【0041】
【発明の効果】
本発明の可塑性油脂組成物は、耐熱保型性が良好で、口溶け及び風味も優れており、且つ低温でも軟らかく、伸展性に優れ、特にロールイン用油脂組成物として好適であり、ベーカリー製品に用いた場合、ホイロ工程においてオイルオフが少なく、しかも風味良好なベーカリー製品を得ることができる。
Claims (6)
- マルトース又はトレハロース1〜10重量%、並びに水を含有し、対水糖濃度が30重量%未満であり、乳化形態が油中水型であることを特徴とする可塑性油脂組成物。
- 合成乳化剤を含有しない請求項1記載の可塑性油脂組成物。
- ロールイン用油脂組成物である請求項1又は2記載の可塑性油脂組成物。
- 配合油脂のSFC(固体脂含量)が、10℃で15〜70%、30℃で3〜25%である請求項1〜3の何れかに記載の可塑性油脂組成物。
- 配合油脂と、マルトース又はトレハロースを1〜10重量%含有し、対水糖濃度が30重量%未満である水相とを乳化し、油中水型の乳化物とし、急冷可塑化することを特徴とする可塑性油脂組成物の製造方法。
- 請求項1〜4の何れかに記載の可塑性油脂組成物を用いたベーカリー製品。
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