JP4310859B2 - ソフトクラッシュ検出方法および装置、ならびにエアバッグ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はソフトクラッシュ検出方法および装置に関するものであり、特に、検出の迅速化に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ソフトクラッシュは、衝突による車体の前後方向減速度(ノイズが除去された減速度であり、以下特に必要がない限り単に減速度と称する)の変化に基づいて規定される衝突の一種である。ソフトクラッシュの場合、減速度は、一旦、増大した後、減少し、再度増大して極大値が2つ、極小値が1つ生ずるとともに、1回目の増大による減速度の極大値より、2回目の増大による減速度の極大値の方が大きい特徴を有する。ポール衝突がソフトクラッシュの一例である。ポール衝突は、車両の幅方向の中央部が電柱等強固な衝突対象物であるポールにぶつかる衝突であり、まず、バンパがポールに衝突し、その後、バンパの背後にある部材の弾性変形および塑性変形に伴って車体が前進し、エンジンが衝突して止まる。バンパがポールに衝突することにより減速度が増大し、その後、車体前部の変形により減速度が減少し、エンジンとの衝突により再度増大した後、減少するが、エンジンはバンパより強度が大きく、エンジンの衝突により生ずる減速度の方が大きいのである。ソフトクラッシュの他の例としては、車両の衝突後、衝突対象物が車両の進行方向に倒れ込む形態や、車両が衝突物の下にもぐり込む形態等があり、これらにおいても、減速度がポール衝突の場合に類似の変化を示す。
それに対し、正突の場合は、減速度の増減が1回生ずるのみである。正突は、車両の左右のサイドフレームが衝突対象物に同時に衝突する衝突であるが、サイドフレームは固いため、サイドフレームと衝突対象物との衝突により車両は停止し、短時間で大きい減速度が1回生ずる。
【0003】
このように車両の衝突には種々の形態があるため、車両の衝突に基づいてエアバッグ装置等の乗員保護装置を作動させる場合、衝突形態に応じた態様で乗員保護装置を作動させることが望ましい。そのため、例えば、特開平10−152014号公報に記載の乗員保護装置においては、車両中央にフロアセンサを設けるとともに、車両前部の左右にそれぞれサテライトセンサを設け、フロアセンサによる車体の前後方向減速度の検出と、サテライトセンサによる基準値以上の衝撃の発生の検出とに基づいて衝突の形態を判別し、衝突形態に応じて、異なる減速度で乗員保護装置を作動させるようにされている。このようにすれば、種々の形態の衝突時に乗員保護装置を適切に作動させることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果】
本発明は、以上の事情を背景とし、ソフトクラッシュを従来よりさらに良好に検出する方法および装置を提供することを課題としてなされたものであり、本発明によって、下記各態様のソフトクラッシュ検出方法および装置が得られる。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも本発明の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組合わせが以下の各項に記載のものに限定されると解釈されるべきではない。また、1つの項に複数の事項が記載されている場合、それら複数の事項を常に一緒に採用しなければならないわけではなく、一部の事項のみを取り出して採用することも可能である。
(1)少なくとも、
車体の運転席近傍に配設されたメインセンサの検出値に基づく車体中央部の平滑化された前後方向減速度が予め設定された増大開始判定値を最初に超えた時点以後の最初の極大値である中央第1極大値が中央第1設定減速度より大きく、中央第2設定減速度より小さいという第1条件と、
前記メインセンサの検出値に基づく車体中央部の平滑化された前後方向減速度の、前記増大開始判定値を最初に超えた時点から前記中央第1極大値に達する時点までの平均値で、前記中央第1極大値に達した時点から最初の極小値である中央第1極小値に達する時点までの平均値を割った極大値前後比が第1設定比より小さいという第2条件と、
車体左前部に配設されたサブセンサの検出値に基づく平滑化された前後方向減速度の、その前後方向減速度が前記増大開始判定値を最初に超えた時点から、その時点以後の最初の極大値である左第1極大値に達する時点までの平均値と、車体右前部に配設されたサブセンサの検出値に基づく平滑化された前後方向減速度の、その前後方向減速度が前記増大開始判定値を最初に超えた時点から、その時点以後の最初の極大値である右第1極大値に達する時点までの平均値との、小さい方を大きい方で割った平均値左右比が予め設定された第2設定比より大きいという第3条件と
の3条件が全て満たされた時点に、ソフトクラッシュが発生したと検出することを特徴とするソフトクラッシュ検出方法。(請求項1)。
ソフトクラッシュが生ずれば、平滑化された前後方向減速度は、予め設定された増大開始判定値を超えた後、前述のように、減速度の増減が2回生じ、極大値が2つ、極小値が1つ得られるとともに、最初に生ずる第1極大値は、次に生ずる第2極大値より小さい。また、ソフトクラッシュは左右対称の衝突、すなわち車両の左右にそれぞれ生ずる衝撃がほぼ同じである衝突である。第1ないし第3の各条件はそれぞれ、これらの特徴に基づいてソフトクラッシュを検出するように設定されている。
第1条件における中央第1設定減速度は、ソフトクラッシュの検出に基づいて作動する作動装置、例えば、エアバッグ装置にエアバッグを膨張させることが必要なほどの衝撃が車体に加えられたか否かを判定し得る大きさであって、ソフトクラッシュによる減速度の第1極大値であれば、超える大きさに設定され、中央第2設定減速度は、正突を排除することができる大きさに設定される。前述のように、正突時には短時間で大きい減速度が1回生ずるのみであるが、サイドフレームはバンパより固いため、正突による減速度の最大値はソフトクラッシュによる減速度の第1極大値より大きい。したがって、中央第2設定減速度は正突による減速度であれば超え、ソフトクラッシュによる減速度の第1極大値は超えない大きさに設定され、正突を排除するようにされている。
第2条件は、ソフトクラッシュの場合、減速度は、中央第1極大値が生じた後、再度、減少から増大に転じ、中央第1極大値から時間をおいて中央第1極小値が生ずることに基づいて設定されている。中央第1極大値は、衝突対象物とバンパとの衝突により短時間で生ずるが、エンジンとの衝突により、再度、増大するまでに時間があり、中央第1極小値に達するまで比較的小さい減速度が続く。そのため、中央第1極大値までの減速度と、中央第1極大値から中央第1極小値までの減速度とをそれぞれ平均して比較すれば、後者の平均値は前者の平均値より小さいことが多い。車両によっては後者の方が大きいこともないではないが、両者の比は車両によってほぼ決まった値になる。それに対し、正突の場合は、衝突対象物とサイドフレームとの衝突により、車両が停止し、減速度は短時間で減少するため、中央第1極大値から中央第1極小値までの減速度の平均値は、中央第1極大値までの減速度の平均値に対して、ソフトクラッシュ時には生じない大きな値になる。また、路面が悪路である場合には、減速度の増減が連続して生じるのが普通であるため、極大値,極小値が生じても極大値前後比は大きな値になる。したがって、第1設定比は、この事情に鑑み、極大値前後比により、ソフトクラッシュを他の衝突や衝撃とは区別し得る大きさに設定される。車両の種類に応じて設定されることが特に望ましい。
第3条件は、ソフトクラッシュが左右対称の衝突である特徴に基づいて設定されている。ソフトクラッシュにより車体の左右両側にそれぞれ生ずる減速度はほぼ等しい。したがって、左右比が1に近いほど左右対称性が高く、第2設定比は1より小さいが、1に近い値に設定される。左右比を求めるための車体左右前部の各前後方向減速度は、例えば、左右比を第2設定比と比較する際に得られるサブセンサの検出値でもよく、この比較が行われるまでに検出された全部の検出値の積分値でもよく、平均値でもよい。請求項1に記載の発明おいては、車体左右前部の前後方向減速度がそれぞれ増大開始判定値を最初に超えた時点から、その時点以後の最初の極大値である左右の第1極大値に達する時点までの平均値が使用される。
これら第1ないし第3の各条件をいずれも満たせば、ソフトクラッシュの特徴をすべて備えており、ソフトクラッシュが発生したとすることができる。
なお、メインセンサやサブセンサの出力の平滑化は、メインセンサやサブセンサの出力信号をフィルタ回路等の平滑化回路により平滑化して行ってもよく、メインセンサやサブセンサの出力信号をデジタル化した検出値をデジタルフィルタ手段や勾配制限手段により平滑化して行ってもよい。
メインセンサおよびサブセンサにより検出される値がそれぞれ、ノイズを含まない値であれば、平滑化手段を設けることは不可欠ではないが、ノイズを含むことが多い。したがって、平滑化手段によってセンサの出力を平滑化すれば、ノイズが低減させられ、ソフトクラッシュの発生がより正確に検出される。
(2)車体の運転席近傍に配設されたメインセンサの出力に基づいて車体中央部の平滑化された前後方向減速度である中央減速度を取得する中央減速度取得手段と、
その中央減速度取得手段により取得された前記中央減速度が予め設定された増大開始判定値を最初に超えた時点以後の最初の極大値である中央第1極大値を取得する中央第1極大値取得手段と、
前記中央減速度取得手段により取得された前記中央減速度が前記中央第1極大値に達した時点以後の最初の極小値である中央第1極小値を取得する中央第1極小値取得手段と、
前記中央減速度取得手段により取得された前記中央減速度の、前記増大開始判定値を最初に超えた時点から前記中央第1極大値に達する時点までの平均値である極大値前平均値と、前記中央第1極大値に達した時点から前記中央第1極小値に達する時点までの平均値である極大値後平均値とを取得する中央減速度平均値取得手段と、
車体左前部に配設されたサブセンサの検出値に基づく車体左前部の平滑化された前後方向減速度である左減速度を取得する左減速度取得手段と、
その左減速度取得手段により取得された前記左減速度が前記増大開始判定値を最初に超えた時点以後の最初の極大値である左第1極大値を取得する左第1極大値取得手段と、
車体右前部に配設されたサブセンサの検出値に基づく車体右前部の平滑化された前後方向減速度である右減速度を取得する右減速度取得手段と、
その右減速度取得手段により取得された前記右減速度が前記増大開始判定値を最初に超えた時点以後の最初の極大値である右第1極大値を取得する右第1極大値取得手段と、
少なくとも、(1)前記中央第1極大値が中央第1設定減速度より大きく、中央第2設定減速度より小さいという第1条件と、(2)前記極大値前平均値で前記極大値後平均値を割った極大値前後比が第1設定比より小さいという第2条件と、(3)前記左減速度が前記増大開始判定値を最初に超えた時点から前記左第1極大値に達する時点までの左減速度の平均値と、前記右減速度が前記増大開始判定値を最初に超えた時点から前記右第1極大値に達する時点までの右減速度の平均値との、小さい方を大きい方で割った左右比が第2設定比より大きいという第3条件との3条件が全て満たされた時点に、ソフトクラッシュが発生したと判定する判定手段と
を含むことを特徴とするソフトクラッシュ検出装置(請求項2)。
車体の運転席近傍に配設されたメインセンサおよび車体左右の前部にそれぞれ配設されたサブセンサは、ソフトクラッシュ検出装置の構成要素であっても、構成要素でなくてもよい。後者の場合には、メインセンサおよびサブセンサを備えた装置から前後方向の減速度を取得すればよいのである。
本態様によれば、例えば、 (1)項に関連して説明した作用および効果が得られる。
(3) (2)項に記載のソフトクラッシュ検出装置と、
エアバッグと、
そのエアバッグを異なる速さで膨らませ得るインフレータと、
前記ソフトクラッシュ検出装置によりソフトクラッシュが検出された場合に、前記エアバッグを前記異なる速さのうち真ん中以上の速さで膨らませるインフレータ制御装置と
を含むエアバッグ装置(請求項3)。
インフレータは複数段階に異なる速度でエアバッグを膨らませ得るものでも、連続的に変化する速度で膨らませ得るものでもよい。高速と低速との2段階でエアバッグを膨らませ得るインフレータにおいては、真ん中以上の速さとは高速のことであり、高速,中速および低速の3段階でエアバッグを膨らませ得るインフレータにおいては、中速または高速のことである。ただし、ソフトクラッシュにおいては、最高速でエアバッグを膨らませることが望ましい場合が多い。
インフレータは、エアバッグを膨らませる速度が同じものを複数設け、それらのうち、同時にエアバッグを膨らませるインフレータの数を異ならせることにより、エアバッグの膨張速度を異ならせてもよく、あるいはエアバッグを膨らませる速度が異なるインフレータを複数設け、必要な膨張速度に応じて選択的に使用してもよく、あるいはインフレータを1つで膨張速度を複数段階あるいは無段階で変えることができるものとし、必要な速度でエアバッグを膨らませるようにしてもよい。
(2)項に記載のソフトクラッシュ検出装置によれば、ソフトクラッシュは、中央第1極小値が生ずるまで検出されず、正突等に比較して検出に時間がかかる。しかし、ソフトクラッシュの検出時にはエアバッグが真ん中以上の速さで膨らませられるため、十分乗員を保護し得る。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、エアバッグ装置におけるソフトクラッシュの検出を例に取り、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に記載の実施形態の中には、補正により特許請求の範囲に記載の発明の実施形態ではなくなったものも存在するが、特許請求の範囲に記載の発明の理解を高める上で有用であると思われるため、そのまま残すこととする。
図1に示すように、本実施形態の乗員保護装置たるエアバッグ装置10は、制御装置たる電子制御ユニット12およびエアバッグ14を有している。電子制御ユニット12は、マイクロコンピュータ16(以下、マイコン16と略称する)および2個の駆動回路18を有している。マイコン16は、PU(プロセッシングユニット)20,ROM22,RAM24,それらを接続するバス26および入出力回路であるI/O回路28を含み、車両30の左右方向の中央部にあって車体を構成する部材であるフロアトンネル上であって、運転席近傍に設けられている。
【0006】
マイコン16には、I/O回路28により、メインセンサたるフロアセンサ32および2個のサブセンサたるフロントセンサ34,36の各検出信号が入力される。フロアセンサ32は、図2に示すように、マイコン16と共にフロアトンネル上に設けられ、運転席近傍に配設されている。フロアセンサ32は、本実施形態においては減速度センサにより構成され、車体中央部であって運転席近傍の前後方向の減速度を検出する。フロアセンサ32の出力信号は、本実施形態においては、専用の電子回路であってアナログ回路により構成されるカルマンフィルタにより平滑化され、その平滑化された信号がマイコン16に入力される。
【0007】
2個のフロントセンサ34,36はそれぞれ、車両30の左右両側にそれぞれ設けられて車体を構成するサイドフレームに設けられ、車体左右前部に設けられている。これらフロントセンサ34,36はそれぞれ、本実施形態においては減速度センサにより構成され、車体左右前部の前後方向の減速度を検出する。左右の各フロントセンサ34,36の検出信号は、本実施形態においては、専用の電子回路であってアナログ回路により構成されるカルマンフィルタによって平滑化されるとともに、図示は省略するが、フロントセンサ34,36と共に車両左右前部に設けられたマイクロコンピュータにより複数段階、例えば12段階のレベルに分けられ、例えば、電流通信によりマイコン16に入力される。本実施形態においては、フロアセンサ32,フロントセンサ34,36,これらセンサの出力信号を平滑化するカルマンフィルタは、マイコン16および駆動回路18と共に電子制御ユニット12を構成している。以下、フロントセンサ34を左フロントセンサ34,フロントセンサ36を右フロントセンサ36と称する。
【0008】
また、マイコン16は、I/O回路28から駆動回路18に起動信号を出力し、インフレータ44にガスを発生させて前記エアバッグ14を膨張させる。本実施形態においては、インフレータ44は2個設けられ、気体供給装置46を構成している。2個のインフレータ44はそれぞれ、点火装置48およびガス発生剤(図示省略)を有し、駆動回路18はマイコン16からの起動信号によって点火装置48に通電し、点火させる。それによりガス発生剤に点火され、ガスが発生してエアバッグ14に供給され、エアバッグ14が膨張させられる。2個のインフレータ44に同時にガスを発生させれば、エアバッグ14に高速でガスが供給されてエアバッグ14は高速で膨張させられ、2個のインフレータ44に時間差を有してガスを発生させれば、エアバッグ14に低速でガスが供給されてエアバッグ14は低速で膨張させられる。気体供給装置46は多段インフレータにより構成されているのであり、気体供給装置46の高速でのガス供給をハイモード、低速でのガス供給をローモードと称する。
【0009】
前記マイコン16のROM22には、図3ないし図8にそれぞれフローチャートで表すメインルーチン,ソフトクラッシュ検出ルーチン,車体中央部減速度極大値・極小値等取得ルーチン,左右減速度比取得ルーチンおよびソフトクラッシュ判定ルーチンを始めとする種々のルーチンが記憶されている。また、RAM24には、図9に示すように、検出値積分値メモリ60等がワーキングメモリと共に設けられている。PU20は、RAM24を使用しつつ、上記ルーチンを実行する。
【0010】
ソフトクラッシュの検出は、ソフトクラッシュ発生時には減速度が特有の波形を描いて変化することに基づいて行われる。ソフトクラッシュ発生時におけるフロアセンサ32,左右のフロントセンサ34,36の出力信号をフィルタによって平滑化すれば、図10に示すように、車体中央部においても、車体左右前部においてもそれぞれ、一旦、増大した後、減少し、再度増大する波形を描いて変化するとともに、1回目の増減により生ずる最大値である第1極大値は、2回目の増減により生ずる最大値である第2極大値より小さい。本実施形態のエアバッグ装置10が設けられた車両においては、エンジンが車両前部であって、バンパから離れた位置に設けられており、バンパの中央部が衝突対象物(例えば電柱)に衝突した後、車両の前部の弾性変形および塑性変形に伴って車体がさらに前進し、その後、強度の大きいエンジンが衝突対象物に衝突することにより、2回目の大きい減速度の増大が生ずるのである。また、車体左右の前部は、車体中央部より先に衝突対象物に衝突するため、減速度は、車体左右前部において車体中央部より先に生ずる。
【0011】
この減速度の変化に基づいて、ソフトクラッシュ検出の条件が3つ設定されている。第1条件は、車体中央部の前後方向減速度の第1極大値が第1設定減速度より大きく、第2設定減速度より小さいことであり、第2条件は、車体中央部の前後方向減速度の、第1極大値までの平均値で、第1極大値から最初の極小値である第1極小値までの平均値を割った極大値前後比が第1設定比より小さいことであり、第3条件は、車体左右前部の前後方向減速度のうち、小さい方の前後方向減速度を大きい方の前後方向減速度で割った左右比が第2設定比より大きいことである。
【0012】
ソフトクラッシュの一例は、前述のように、ポール衝突であるが、その他の形態のソフトクラッシュも本発明に従って検出可能である。その一例は、特殊な形態のアンダライド衝突である。アンダライド衝突は、衝突対象物が、例えばトラックのように、地面との距離が大きい部分を有し、車両が衝突対象物と地面との間に突っ込む衝突であるが、車両が突っ込む際、フロントガラスではなく、車両前部のバンパおよびサイドフレームより上の部分が衝突対象物に衝突すれば、ソフトクラッシュが生ずる。減速度が、一旦、増大し、減少した後、再び増大し、上記3つの条件を満たす衝突であれば、ソフトクラッシュとして検出され得るのである。
【0013】
図示しないイグニッションスイッチがONにされ、電源が投入されれば、図3に示すメインルーチンが実行される。メインルーチンのステップ1(以下、S1と略記する。他のステップについても同じ。)において初期設定が行われ、メモリのクリア,初期値の設定,フラグおよびカウンタのリセット等が行われる。次いでS2が実行され、第4フラグF4 がセットされているか否かの判定が行われる。第4フラグF4 はセットにより、ソフトクラッシュ,正突等,各種の衝突が検出されたことを表すが、初期設定においてリセットされており、S2の判定結果はNOとなり、S3においてソフトクラッシュの検出が行われ、S4において正突の検出が行われ、S5においてソフトクラッシュおよび正突以外の衝突の検出が行われる。
【0014】
そして、S6において車体中央部の前後方向の減速度が点火判定しきい値(S6では、「しきい値」と略記されている)より大きいか否かの判定が行われる。車体中央部の前後方向の減速度は、フロアセンサ32の平滑化された出力信号を読み込むことにより得られる。点火判定しきい値はRAM24の点火判定しきい値メモリ97に記憶されており、点火判定しきい値メモリ97には、初期設定において初期値が記憶されている。この初期値は、本実施形態では、複数種類の衝突についてそれぞれ設定された点火判定しきい値のうち、最大の値である。
【0015】
減速度が点火判定しきい値以下であればS6の判定結果はNOになってルーチンの実行はS2に戻る。減速度が点火判定しきい値より大きければ、S6の判定結果がYESになってS7が実行され、気体供給装置46の作動モードがハイモードか否かの判定が行われる。この判定は、気体供給装置作動モードメモリ99の内容に従って行われる。気体供給装置作動モードメモリ99には、本実施形態においては、初期設定においてローモードが記憶されている。作動モードがハイモードであれば、S7の判定結果はYESになってS8が実行され、ハイモード点火指令が出力される。2つの駆動回路18に同時に起動信号が出力されるのであり、エアバッグ14が高速で膨張させられる。また、ローモードであれば、S7の判定結果はNOになってS9が実行され、ローモード点火指令が出力される。2つの駆動回路18に時間をおいて起動信号が出力され、エアバッグ14が低速で膨張させられるのである。
【0016】
上記第4フラグF4 のセット,点火判定しきい値の設定,気体供給装置46の作動モードの設定は、S3,S4,S5においてそれぞれ実行される衝突検出ルーチンのいずれにおいても、衝突の検出に基づいて行われる。各衝突検出ルーチンのいずれかにおいて衝突が検出されて第4フラグF4 がセットされれば、S2の判定結果がYESになってS3〜S5がスキップされ、以後、いずれのルーチンにおいても衝突の検出は行われず、気体供給装置46は、最も早く検出された衝突に基づいて設定された点火判定しきい値により決まる時期に、設定されたモードで作動させられ、エアバッグ14が膨張させられる。以下、図4ないし図8に表すフローチャートに基づいてソフトクラッシュの検出を説明する。正突の検出およびその他の衝突の検出は、本発明とは直接関係がないため、説明を省略するが、正突の場合、気体供給装置46の作動モードはローモードに設定される。なお、正突の場合、衝突状況、例えば車両の走行速度に応じてローモードとハイモードとが選択されるようにしてもよい。
【0017】
ソフトクラッシュ検出ルーチンにおいては、図4に示すように、S11において車体中央部減速度極大値・極小値等の取得が行われ、S12において左右減速度比の取得が行われ、S13においてソフトクラッシュの判定が行われる。
【0018】
図5のフローチャートに基づいて、車体中央部減速度極大値・極小値等の取得を説明する。
車体中央部減速度極大値・極小値等取得ルーチンにおいては、フロアセンサ32の検出値に基づいて第1極大値および第1極小値等が取得される。フロアセンサ32の検出値をすべて記憶して第1の極大値および極小値を取得してもよいが、記憶容量が多くなる。そのため、本実施形態においては、フロアセンサ32の検出値を設定数ずつ積分して車体中央部の前後方向減速度の平均値を求め、相前後する減速度平均値を比較して減速度の増大から減少への転換を検出し、それにより第1極大値を取得し、減速度の減少から増大への転換を検出して第1極小値をけんしけづうにされている。また、第1極大値取得まで、減速度を積分するとともに積分時間を計測して減速度の平均値を取得するとともに、第1極大値の取得後、第1極小値の検出まで減速度を積分するとともに積分時間を計測して、第1極大値から第1極小値までの減速度平均値を取得する。左右減速度比を取得するためのフロントセンサ34,36の検出値に基づく車体左右前部の各前後方向減速度の第1極大値の検出および減速度平均値の取得についても同じである。
【0019】
まず、S21においてフロアセンサ32の平滑化された検出値(減速度)が読み込まれる。次いでS22が実行され、第1カウンタC1 のカウント値C1 が設定値以上であるか否かの判定が行われる。検出値の読込みおよび積分が設定回数(図示の例では4回)行われたか否かの判定が行われるのである。S22の判定結果は当初はNOであり、S23が実行され、S21において読み込まれたフロアセンサ32の平滑化された検出値が積分される。検出値積分値メモリ60に記憶された値に、S21において読み込まれた値が順次加算され、再び検出値積分値メモリ60に記憶されるのである。また、検出値積分値メモリ60は初期設定においてクリアされていて、初期値は0である。第1カウンタC1 のカウント値C1 が1増加させられ、検出値の積分回数がカウントされる。
【0020】
フロアセンサ32の検出値の積分回数は、相前後する2つの減速度平均値の比較により、減速度の増大から減少への転換および減少から増大への転換を検出し得る回数に設定されている。フロアセンサ32により検出される減速度は、平滑化しても未だ多少のノイズ成分を含んでおり、必ずしも単調には増大し、あるいは減少しない。そのため、設定回数は、ノイズ成分による増減があっても、減速度が第1極大値に達するまでは、相前後して得られる2つの減速度平均値の大きさが反転することなく単調に増加し、第1極大値に達した後は単調に減少するように設定される。
【0021】
検出値の積分が設定回数行われるまで、S21〜S23が繰返し実行される。検出値の読込みおよび積分が設定回数行われれば、S22の判定結果がYESになってS24が実行され、積分値が平均されて今回減速度メモリ62に記憶される。平均値は、積分値を積分回数で割ることにより求められる。この平均値を減速度Gc とする。減速度Gc を今回減速度メモリ62に記憶して減速度Gc(t)とする際、今回減速度メモリ62に記憶されている今回減速度Gc(t)が先回減速度メモリ64に移されて先回減速度Gc(t-1)とされる。S24においてはまた、検出値積分値メモリ60がクリアされる。
【0022】
次いでS25が実行され、第1フラグF1 がセットされているか否かの判定が行われる。第1フラグF1 は初期設定においてリセットされており、S25の判定結果はNOになってS26が実行され、減速度Gc が増大開始判定値Gthmin より大きいか否かの判定が行われる。増大開始判定値Gthmin は、減速度の実質的な増大が始まったか否かを判定し得る大きさに設定されている。車体に対する衝撃は、車両衝突時に限らず、例えば、路面の凹凸等によっても付与されるが、これが小さいものであれば、減速度Gc は増大開始判定値Gthmin 以下であり、S26の判定結果はNOになって極大値取得等の処理は行われない。
【0023】
減速度Gc が増大開始判定値Gthmin より大きければ、S26の判定結果はYESになってS27が実行され、第1フラグF1 がセットされて減速度Gc が増大開始判定値Gthmin を超えたことが記憶される。次いでS28が実行され、第2フラグF2 がセットされているか否かの判定が行われる。第2フラグF2 は、セットにより、減速度の第1極大値が取得されたことを記憶するが、初期設定においてリセットされており、S28の判定結果はNOになってS29が実行され、今回のルーチンの実行によりS24において演算された今回減速度Gc(t)が先回のルーチンの実行によりS24において演算された先回減速度Gc(t-1)以上であるか否かの判定が行われる。減速度が増大していれば、今回減速度Gc(t)は先回減速度Gc(t-1)より大きく、S29の判定結果はYESになってS30が実行され、S24において演算された減速度Gc(t)が極大値メモリ70に記憶されている値と置き換えられる。今回減速度Gc(t)が先回減速度Gc(t-1)以上であることにより極大値メモリ70に記憶される値は、今回減速度Gc(t)が先回減速度Gc(t-1)以上であると判定された時点での減速度の最大値であり、Gcmaxで表す。max は、maximum の略である。次いでS31が実行され、減速度Gc(t)が積分されて第1減速度積分値メモリ66に記憶される。減速度Gc(t)の積分は、第1減速度積分値メモリ66に記憶された積分値に、S24において算出した減速度Gc(t)(今回減速度メモリ62に記憶されている)を加算することにより行われる。第1減速度積分値メモリ66は、初期設定においてクリアされていて、初期値は0である。また、第2カウンタC2 のカウント値C2 が1増加させられる。最大値Gcmaxの更新が行われた回数がカウントされ、それにより、減速度が増大し始めてから、第1極大値が得られるまでの時間が計測されるのである。
【0024】
前後方向減速度が増大から減少に転ずるまで、S21〜S25,S28〜S31が繰返し実行される。フロアセンサ32により検出された減速度は、平滑化されるとともにS21〜S24において積分されて平均化されているため、減速度は最初の極大値である第1極大値に達するまで単調に増大し続け、前後方向減速度が増大から減少に転じたとき、第1極大値が取得される。減速度が増大から減少に転ずれば、今回減速度Gc(t)が先回減速度Gc(t-1)より小さくなる。そのため、S29の判定結果がNOになってS32が実行され、第2フラグF2 がセットされて第1極大値Gcmax1 が得られたことが記憶される。それにより、次にS28が実行されるとき、その判定結果はYESになってS30は実行されない。極大値メモリ70に記憶された最大値Gcmaxの更新は行われないのであり、S29の判定結果がNOになったときに極大値メモリ70に記憶されていた値が第1極大値Gcmax1 に確定する。なお、このmax は、maximal の略である。
【0025】
S32においてはまた、第1極大値Gcmax1 が取得されるまでの車体中央部の前後方向減速度の平均値Gcamax が演算され、第1減速度平均値メモリ74に記憶される。この演算は、第1減速度積分値メモリ66に記憶された積分値を、第2カウンタC2 のカウント値C2 で割ることにより行われる。第1極大値の取得は、減速度Gc が増大開始判定値Gthmin より大きい場合に行われ、第1極大値を取得するまでの時間は、減速度Gc が増大開始判定値Gthmin より大きくなった状態から計測されるため、増大開始判定値Gthmin を超える以前の時間は減速度の平均値Gcamax の演算に使用されない。ソフトクラッシュ検出のために第1極大値が取得されるほどの衝撃により生じた減速度および時間に基づいて、減速度の第1極大値までの平均値が演算されるのであり、その衝撃が生ずる以前に生じた減速度,時間も含めて平均値が演算されることがなく、ソフトクラッシュ検出の対象となる衝撃について減速度の第1極大値までの平均値が正確に演算される。
【0026】
次いで、S35が実行され、減速度Gc(t)の積分値が求められるとともに、第3カウンタC3 のカウント値C3 が1増加させられる。積分は、第2減速度積分値メモリ68に記憶された値に、S24において算出した今回減速度Gc(t)を加算することにより行われ、演算値は第2減速度積分値メモリ68に記憶される。第2減速度積分値メモリ68は初期設定においてクリアされていて、初期値は0である。第1極大値Gcmax1 が得られた後、第1極大値Gcmax1 から最初の極小値である第1極小値Gcmin1 が検出されるまでの減速度の積分値の演算および時間の計測が行われるのである。第1極小値Gcmin1 のmin は、minimal の略である。
【0027】
第2フラグF2 がセットされることにより、次にS28が実行されるとき、その判定結果はYESになってS33が実行され、今回減速度Gc(t)が先回減速度Gc(t-1)以下であるか否かの判定が行われる。減速度は、第1極大値から最初の極小値である第1極小値まで単調に減少し続けるため、S33の判定結果はYESになってS35が実行される。そして、減速度が減少から増大に転じてS33の判定結果がNOになるまで、S21〜S25,S28,S33,S35が繰返し実行され、減速度Gc(t)の積分および積分時間の計測が行われる。
【0028】
減速度が減少から増大に転ずれば、今回減速度Gc(t)が先回減速度Gc(t-1)より大きくなり、S33の判定結果がNOになり、減速度が極小値に達したことがわかる。そして、S36が実行され、第1極大値取得から第1極小値取得までの減速度の平均値Gcamin が演算され、第2減速度平均値メモリ76に記憶されるとともに、第3フラグF3 がセットされて、平均値Gcamin が得られたことが記憶される。平均値Gcamin の演算は、第2減速度積分値メモリ68に記憶された積分値を、第3カウンタC3 のカウント値C3 で割ることにより行われる。なお、第1極大値Gcmaxが得られた後、減速度が減少して増大開始判定値Gthmin 以下になることがあっても、第1フラグF1 がセットされているため、S24において算出された減速度Gc と増大開始判定値Gthmin との比較は行われず、第1極小値の検出が行われる。
【0029】
S11の実行後、S12において左右減速度比取得ルーチンが実行される。左右減速度比取得ルーチンにおいては、左フロントセンサ34および右フロントセンサ36の各検出値に基づいて、車体左右前部の各前後方向減速度の第1極大値が求められるとともに、それら第1極大値が取得されるまでの減速度の平均値が算出され、左右の各減速度の平均値の比を算出することにより、車体左右前部の減速度の比(左右比)が算出される。車体左右前部の各前後方向減速度の第1極大値および減速度の平均値はいずれも、車体中央部の前後方向減速度の第1極大値および第1極大値が取得されるまでの減速度の平均値と同様に取得されるため、説明は省略する。
【0030】
左右減速度比取得ルーチンに特有の部分を説明する。車体左前部と車体右前部とについてそれぞれ別々に減速度の平均値が取得され、その取得は、第5,第7フラグF5 ,F7 をセットすることにより記憶される。車体左右の各前部について減速度の平均値が取得されれば、S54,S66の判定結果がいずれもYESになってS67が実行され、左右減速度比(左右比)が演算されるとともに、左右減速度比メモリ98に記憶される。この記憶は、演算した左右減速度比を、現に左右減速度比メモリ98に記憶されている値に代えて左右減速度比メモリ98に記憶することにより行われる。なお、左右減速度比メモリ98には、初期設定において、初期値、例えば、衝突の左右対称性を判定するための第2設定比(第2設定比については後述する)より必ず小さくなる値に設定されている。その後、第9フラグF9 がセットされて左右減速度比が取得されたことが記憶される(S68)。
【0031】
左右減速度比が得られたならば、第9フラグF9 がセットされることにより、S41の判定結果がYESになってS69が実行され、設定時間が経過したか否かの判定が行われる。この時間の計測は、例えば、PU20に設けられた計時手段たるタイマを用いて行われる。S69の判定結果は当初はNOであり、ルーチンの実行は終了する。
【0032】
ソフトクラッシュの判定が行われず、左右減速度比がその判定に使われることなく、設定時間が経過すれば、S69の判定結果はYESになってS70が実行され、左右減速度比を取得するために用いられた各種フラグ,カウンタがリセットされるとともに、左右減速度比を取得するために用いられたメモリであって、左右減速度比メモリ98を除くメモリがクリアされて、再度、左右減速度比の取得が行われるようにされる。衝撃によっては、車体の左右前部において減速度が増大開始判定値を超えて第1極大値が取得され、左右減速度比が演算されても、車体中央部においては減速度が増大開始判定値を超えず、第1極大値が取得されなくてソフトクラッシュの判定が行われないことがある。そのため、演算された左右減速度比がソフトクラッシュの判定に使用されたか否かを監視、検出し、使用されなかった場合には、左右減速度比を新たに取得し、使用されなかった左右減速度比を捨てるようにしなければ、車体中央部の前後方向減速度の第1極大値が得られてソフトクラッシュの判定が行われるとき、その判定に用いられる左右減速度比と、第1極大値とは、異なる衝撃により得られた値となってソフトクラッシュを正しく判定することができない。そのため、左右減速度比が取得された後、設定時間の経過を待ち、左右減速度比がソフトクラッシュの判定に使用されなければ、再度、取得が行われるようにされている。S69において待たれる設定時間は、ソフトクラッシュであれば、左右減速度比が得られた後、次の衝撃によって左右減速度比が得られる前に、現に得られている左右減速度比を取得させた衝撃により、車体中央部の前後方向減速度の第1極大値が得られる長さに設定されている。減速度を生じさせた衝撃がソフトクラッシュであれば、設定時間が経過する前に、あるいは設定時間が経過しても、次に左右減速度比が得られる前に、車体中央部の前後方向減速度の第1極大値が得られ、同じ衝撃によって得られた左右減速度比,第1極大値および極大値前後比を用いてソフトクラッシュの判定が行われる。設定時間が経過しても、次に左右減速度比が取得されるまでは、先に取得された左右減速度比が左右減速度比メモリ98に記憶されており、ソフトクラッシュの判定を行うことができる。
設定時間が経過する前にソフトクラッシュの判定が行われた場合、後述するように、ソフトクラッシュではないと判定されれば、S70におけると同様にフラグのリセット等が行われ、再度、左右減速度比の取得が行われるようにされる。また、ソフトクラッシュであると判定されれば、その後は左右減速度比の取得は行われない。
この設定時間は、ソフトクラッシュであれば、左右減速度比が得られたときから、車体中央部の前後方向減速度の第1極大値が得られるまでの時間よりやや長い時間としてもよい。
【0033】
S12の実行後、S13においてソフトクラッシュ判定ルーチンが実行される。ソフトクラッシュ判定ルーチンにおいては、図8に示すように、S71において第2フラグF2 がセットされているか否かの判定が行われる。車体中央部の前後方向減速度の第1極大値Gcmax1 が得られているか否かの判定が行われるのである。この判定結果は第1極大値Gcmax1 が得られるまでNOであり、S71が繰返し実行される。
【0034】
第1極大値Gcmax1 が得られれば、S71の判定結果がYESになってS72が実行され、第10フラグF10がセットされているか否かの判定が行われる。第10フラグF10は、ソフトクラッシュの第1条件および第3条件が満たされた場合にセットされるが、初期設定においてリセットされており、S72の判定結果はNOになってS73が実行され、第1極大値Gcmax1 が第1設定減速度Gth1 より大きいか否かの判定が行われる。第1極大値Gcmax1 は、ソフトクラッシュ時にバンパに発生する応力の大小に対応するが、発生応力は車両の走行速度に比例する。したがって、ソフトクラッシュが発生すればエアバッグ14を膨らませるべき走行速度を決めれば、第1極大値Gcmax1 が決まり、第1設定減速度Gth1 は、エアバッグを膨張させるべきソフトクラッシュ時の第1極大値Gcmax1 であれば必ず超える値(すなわちエアバッグ14を膨張させるべき車両の走行速度に応じて決まる第1極大値Gcmax1 より小さく、前記増大開始判定値Gthmin より大きい値)に設定されている。第1極大値Gcmax1 が第1設定減速度Gth1 以下であれば、ソフトクラッシュではなく、S73の判定結果はNOになってS80が実行され、メモリのクリア,カウンタおよびフラグのリセットが行われて、再度、ソフトクラッシュの検出が行われるようにされる。クリアされるのは、第1極大値,左右減速度比,極大値前後比の取得に使用されるメモリであるが、左右減速度比メモリ98は初期値が設定される。点火判定しきい値メモリ97,気体供給装置作動モードメモリ99の各内容は初期設定のままである。ソフトクラッシュではなく、路面の凹凸等による衝撃等によって生じた減速度であっても、増大開始判定値Gthmin を超えれば、第1極大値の取得が行われるが、第1条件を満たさないことにより、ソフトクラッシュと判定されることが回避される。第2,第3条件についても同じであり、それらの条件が満たされない場合にはメモリのクリア等が行われ、再度、ソフトクラッシュの検出が行われるようにされる。
【0035】
第1極大値Gcmax1 が第1設定減速度Gth1 より大きければ、S73の判定結果はYESになってS74が実行され、第1極大値Gcmax1 が第2設定減速度Gth2 より小さいか否かの判定が行われる。第2設定減速度Gth2 は、正突を排除する値に設定されている。前述のように、正突時には、大きい減速度が短時間で生ずるため、第2設定減速度Gth2 は、図10に示すように、ソフトクラッシュによる第1極大値Gcmax1 では超えないが、正突により生ずる減速度であれば超える値に設定されている。
【0036】
第1極大値Gcmax1 が第2設定減速度Gth2 以上であれば、ソフトクラッシュではなく、S74の判定結果はNOになってS80が実行される。第1極大値Gcmax1 が第2設定減速度Gth2 より小さければ、S74の判定結果がYESになってS75が実行され、左右減速度比メモリ98に記憶された左右減速度比が第2設定比より大きいか否かの判定が行われる。左右減速度比が1に近いほど、左右対称性が高く、第2設定比は、本実施形態においては、0.8とされている。
【0037】
左右減速度比が第2設定比以下であれば、ソフトクラッシュではなく、S75の判定結果がNOになってS80が実行される。左右減速度比が第2設定比より大きければ、S75の判定結果がYESになってS76が実行され、第10フラグF10がセットされる。ソフトクラッシュの第1,第3条件が満たされたことが記憶されるのである。次いでS77が実行され、第3フラグF3 がセットされているか否かの判定が行われる。車体中央部の前後方向減速度の第1極大値から第1極小値までの減速度の平均値が取得されているか否かの判定が行われるのである。この平均値が取得されていなければ、第3フラグF3 はセットされず、S77の判定結果はNOになる。そして、S71,S72,S77が繰返し実行され、上記平均値の取得が待たれる。
【0038】
平均値が取得され、第3フラグF3 がセットされれば、S77の判定結果はYESになってS78が実行され、極大値前後比が第1設定比より小さいか否かの判定が行われる。極大値前後比は、前記S32,S36においてそれぞれ演算されて第1,第2の各減速度平均値メモリ74,76に記憶されている減速度平均値Gcamax ,Gcamin を使用し、第1極大値Gcmax1 までの減速度平均値Gcamax で、第1極大値Gcmax1 から第1極小値Gcmin1 までの減速度平均値Gcamin を割ることにより求められる。ソフトクラッシュであれば、〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果〕の(1)項において説明したように、第1極大値Gcmax1 までの減速度と、第1極大値Gcmax1 から第1極小値Gcmin1 までの減速度とをそれぞれ平均して比較すれば、後者の平均値は前者の平均値より小さいことが多いのに対し、正突の場合や路面が悪路である場合には、極大値前後比は大きな値になる。第1設定比は、この事情に鑑み、減速度平均値Gcamin と減速度平均値Gcamax との比によってソフトクラッシュを検出し得る値に設定され、車両の種類に応じて設定され、1前後の値に設定されている。
【0039】
なお、前述のように、減速度の積分および第1極大値取得までの時間の計測は、減速度Gc が増大開始判定値Gthmin を超えたときから行われ、第1極大値が取得されるまでの減速度平均値Gcamax は、減速度Gc が増大開始判定値Gthmin を超えるまでの減速度および時間を含むことなく、求められている。減速度Gc が増大開始判定値Gthmin を超えるまでの減速度および時間を含んで第1極大値が取得されるまでの減速度の平均値Gcamax を求めれば、平均値Gcamax は小さくなり、ソフトクラッシュであっても極大値前後比が第1設定比より小さくならず、ソフトクラッシュが検出され損なう恐れがあのに対し、減速度Gc が増大開始判定値Gthmin を超えるまでの時間を含むことなく、第1極大値が取得されるまでの減速度の平均値Gcamax が求められるため、極大値前後比が第1設定比より小さいか否かの判定が正確に行われる。
【0040】
極大値前後比が第1設定比以上であれば、ソフトクラッシュではなく、S78の判定結果はNOになってS80が実行される。極大値前後比が第1設定比より小さければ、S78の判定結果はYESになる。これによりソフトクラッシュの3つの条件がすべて満たされたのであり、S79が実行され、第4フラグF4 がセットされて衝突の検出が記憶されるとともに、点火判定しきい値および気体供給装置46の作動モードが設定される。ソフトクラッシュにおける点火判定しきい値は、例えば、図10に示すように、第1極大値Gcmax1 より大きく、前記第2設定減速度Gth2 より小さい値に設定され、点火判定しきい値メモリ97に記憶される。また、作動モードはハイモードに設定され、気体供給装置作動モードメモリ99に記憶される。
【0041】
ソフトクラッシュが検出されれば、メインルーチンにおいてS6が実行されるとき、減速度はソフトクラッシュの検出に基づいて設定された点火判定しきい値と比較される。この点火判定しきい値は、第1極大値より大きく、第2設定減速度より小さく設定されていて、正突等、ソフトクラッシュ以外の衝突の検出により設定される点火判定しきい値より小さい。そのため、ソフトクラッシュは、第1極小値が生ずるまでは検出されず、正突等に比較して検出に時間がかかるが、検出後は点火の遅れが回避される。減速度が点火判定しきい値を超えるまで、S2,S6が繰返し実行され、点火判定しきい値を超えれば、S6の判定結果はYESになってS7が実行される。気体供給装置46の作動モードはハイモードに設定されているため、S7の判定結果はYESになってS8が実行され、2つの駆動回路18に同時に起動信号が出力される。それにより、2個のインフレータ44が同時に点火装置48を作動させ、エアバッグ14が高速で膨張させられる。そのため、上記のようにソフトクラッシュの検出は、正突に比較して時間がかかるが、上記点火遅れの回避と相俟って、十分、乗員を保護することができる。
【0042】
このように条件を3つ設けてソフトクラッシュを検出することにより、例えば、図11に二点鎖線で示すように、路面状態が悪く、それによって減速度が増減して極大値および極小値が2つずつ生ずることがあっても、それによるソフトクラッシュの検出は回避し得る。この場合には、第1,第3条件を満たすことがあっても、第1極大値から第1極小値までの時間が短く、また、第1極小値が大きいため、極大値前後比が第1設定比より大きくなるからである。なお、図11において実線で示すのは、比較的低速時に生じたソフトクラッシュによる減速度の変化である。また、横軸のVNは、車体中央部の前後方向減速度の積分値である。
【0043】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、マイコン16のフロアセンサ32の平滑化された検出値を読み込む部分(S21を実行する部分)が車体中央部減速度取得手段を構成し、RAM24を使用してS29,S30を実行する部分が第1極大値取得手段を構成し、RAM24を使用してS33を実行する部分が第1極小値取得手段を構成し、S31,S32,S35,S36を実行する部分が減速度平均値取得手段を構成し、S43〜S53,S55〜S65を実行する部分が左右前部減速度取得手段を構成し、RAM24を使用してS67,S73,S74,S75,S78を実行する部分が判定手段を構成し、S8,S9を実行する部分および駆動回路18がインフレータ制御装置を構成している。また、S69,S70を実行する部分が、左右減速度比再取得起動手段,左右減速度比更新手段,左右減速度比捨手段ないし左右減速度比使用監視手段を構成している。さらに、フロアセンサ32およびフロントセンサ34,36の各検出値を平滑化するカルマンフィルタが平滑化手段を構成し、本実施形態においては、これらフロアセンサ32,フロントセンサ34,36およびカルマンフィルタは、上記車体中央部減速度取得手段等と共にソフトクラッシュ検出装置を構成している。
【0044】
上記実施形態においては、増大してきた車体中央部の前後方向減速度が、1回でも増大から減少に転じたとき、すなわち第1極大値メモリに記憶されている値が1回でも、直後に演算された減速度より大きくなったときに第1極大値が確定されるようにされていたが、極大値メモリに記憶されている最大値が、連続して設定回数、次に検出された減速度より大きい場合に、前後方向減速度が増大から減少に転じたとし、第1極大値を取得するようにしてもよい。第1極小値については、極小値メモリに記憶されている最小値が、連続して設定回数、次に検出された減速度より小さい場合に、前後方向減速度が減少から増大に転じたとし、第1極小値を取得するようにしてもよい。その例を図12ないし図15に基づいて説明する。
【0045】
本実施形態は、車体中央部減速度極大値・極小値等取得ルーチン,左右減速度比取得ルーチンおよびRAMの構成が異なることを除いて、上記実施形態と同様に構成されており、同じ部分については図示および説明を省略する。また、左右減速度比取得ルーチンにおける極大値および減速度平均値の取得は、上記実施形態におけると同様に、車体中央部減速度極大値・極小値等取得ルーチンにおける第1極大値および減速度平均値の取得と同様に行われるため、ルーチンの図示および説明を省略し、RAMの構成の一部を図14に示す。
【0046】
車体中央部の前後方向減速度の第1極大値の取得を概略的に説明すれば、フロアセンサの複数の検出値を積分して平均し、平均された減速度が1つ得られる毎に極大値メモリに記憶されている最大値と比較し、その最大値が上記減速度以上である状態が設定回数(N回とする)連続すれば、最大値を第1極大値に確定する。第1極大値に確定される減速度が取得されてから、N個(上記設定回数と同じ個数)の減速度が取得されたときに第1極大値が確定されるのである。また、第1極大値取得までの減速度平均値を演算するための減速度の積分は、極大値メモリに記憶されている最大値との大小が比較される最新の減速度から、N個分、逆上った減速度について行われる。そのため、最新の減速度から逆上ってN個の減速度が別々のメモリに記憶されて積分が行われるようにされ、極大値が取得されたとき、減速度積分値は、ちょうど極大値に確定された減速度を積分した値となる。
【0047】
最大値が第1極大値に確定されるために減速度以上となる設定回数を3回とした場合を例に取り、図15に基づいて簡単に説明する。図15(a)に示すように、後に第1極大値に確定される減速度Gc(t)は、現に極大値メモリに記憶されている減速度(例えば、Gc(t-1)とする)と比較され、その減速度より大きいため、代わって極大値メモリに記憶される。そして、減速度の積分は、3つ前の減速度Gc(t-3)について行われる。なお、図15(a)において記号S1 は、減速度Gc(t-3)を加算するまでの減速度の積分値を表す。積分を3回前の減速度について行うのは、減速度が増大から減少に転じたと判定するために、極大値メモリに記憶された値が、連続して次の減速度以上となる回数が3回に設定されているからであり、この積分のため、減速度Gc(t)から逆上って3個の減速度がメモリに別々に記憶される。また、減速度が増大開始判定値を超えてから、減速度の最大値が得られるまでの時間をカウンタによりカウントされる値C1 とすれば、減速度Gc(t-3)が得られたときの時間は(C1 −3)である。
【0048】
図15(b)に示すように、減速度Gc(t)の次に演算された減速度Gc(t+1)は、極大値メモリに記憶されている減速度Gc(t)と比較されるが、減速度Gc(t+1)の方が小さいため、極大値は更新されない。減速度の積分は、減速度Gc(t+1)の3つ前の減速度Gc(t-2)について行われ、積分値S2 (S1 にGc(t-3)を加算した積分値)に減速度Gc(t-2)が加算され、積分値S3 が得られる。そして、図15(c)に示すように、減速度Gc(t+1)の次に演算された減速度Gc(t+2)も減速度Gc(t)より小さいため、極大値は更新されず、減速度の積分は、減速度Gc(t+2)の3つ前の減速度Gc(t-1)について行われる。さらに、図15(d)に示すように、減速度Gc(t+2)の次に演算された減速度Gc(t+3)も減速度Gc(t)より小さいため、極大値は更新されない。このとき、極大値メモリに極大値として記憶されている減速度Gc(t)は、連続して3回、減速度Gc(t+1),Gc(t+2),Gc(t+3)より大きいことがわかり、第1極大値に確定される。また、減速度の積分は、減速度Gc(t+3)の3つ前の減速度Gc(t)について行われ、第1極大値が確定されたとき、ちょうど第1極大値である減速度を加算した積分値が得られ、第1極大値取得までの減速度の平均値は、この積分値を、減速度Gc(t+3)が演算されたときのカウント値C4 から3を引いた値であって、第1極大値減速度Gc(t)が演算されたときのカウント値C1 で割ることにより求められる。
【0049】
車体中央部減速度極大値・極小値等取得ルーチンに基づいて第1極大値等の取得を説明する。このルーチンにおいて、減速度が増大から減少に転じたことを判定するために、極大値メモリに記憶されている最大値が、連続して、次に演算された減速度より大きくならなければならない回数は、例えば3回とする。S101ないしS103は、前記実施形態の車体中央部減速度極大値・極小値等取得ルーチンのS21〜S23と同様に実行され、検出値の読込みおよび積分が設定回数行われる。検出値の読込みおよび積分が設定回数、例えば2回行われたならば、S102の判定結果がYESになってS104が実行され、積分値が平均される。この平均値を減速度Gc とする。S104においてはまた、減速度Gc の積分が行われ、第1減速度メモリ104に記憶された値が、減速度積分値メモリ112に記憶された値に加えられる。積分は、第1〜第3減速度メモリ104〜108に記憶された減速度のうち、最も古い減速度であって、S104において演算された減速度Gc(t)から3個、逆上った値について行われる。積分後、第1減速度メモリ104に記憶された値が消去されるとともに、第2,第3減速度メモリ106,108にそれぞれ記憶されている値が、第1,第2減速度メモリ104,106に移され、新たに演算された減速度Gc が第3減速度メモリ108に記憶される。そして、検出値積分値メモリ102がクリアされるとともに、第9カウンタC9 のカウント値C9 が1増加させられる。減速度Gc の積分時間が計測されるのである。
【0050】
次に、S105〜S107が前記S25〜S27と同様に実行され、減速度の実質的な増大が始まったか否かの判定が行われる。但し、本実施形態においては、増大開始判定値Gthmin は、前記実施形態の増大開始判定値Gthmin より大きくされ(第1設定減速度Gth1 より小さいことは同じである)、減速度が増大するときには、第1〜第3減速度メモリ104〜108に記憶された3個の減速度のうち、最新の減速度Gc(t)は超えるが、その1つ前に得られた減速度Gc(t-1)は超えない大きさに設定されている。そのため、減速度Gc(t)が増大開始判定値Gthmin を超えたときには、減速度は確実に増大状態にあり、それより前に取得された3個の減速度(増大開始判定値Gthmin を超えた減速度が演算されたときに第1〜第3減速度メモリ104〜108に記憶されていた3個の減速度)も、全部が減速度の増大時の値である可能性が大きい。また、極大値取得時における減速度の積分および減速度平均値の演算を、最初に増大開始判定値を超えた減速度の演算時より逆上って3個の減速度および時間を含んで行うために、S107において減速度積分値メモリ112はクリアされるが、第1〜第3減速度メモリ104〜108はクリアされず、第9カウンタC9 のカウント値C9 が3にリセットされる。
【0051】
増大開始判定値Gthmin を超える減速度Gc が生ずれば、S106の判定結果はYESになってS108が実行され、第11フラグF11がセットされる。そして、S109が実行され、第12フラグF12がセットされているか否かの判定が行われるが、第12フラグF12は初期設定においてリセットされているため、S109の判定結果はNOになってS110が実行され、減速度Gc が極大値メモリ118に記憶されている最大値Gcmax以上であるか否かの判定が行われる。減速度Gc が最大値Gcmax以上であれば、S110の判定結果はYESになってS111が実行され、減速度Gc が最大値Gcmaxと置き換えられ、新たに最大値Gcmaxとされるとともに、第10カウンタC10がリセットされる。第10カウンタC10は、最大値Gcmaxが新たに得られた減速度Gc より大きく、連続して最大値Gcmaxの更新が行われない回数をカウントするため、最大値Gcmaxが更新された場合にはリセットされるのである。
【0052】
それに対し、減速度Gc が最大値Gcmaxより小さければ、S110の判定結果はNOになってS112が実行され、第10カウンタC10のカウント値C10が1増加させられる。新たに算出された減速度Gc が最大値Gcmaxより小さく、最大値Gcmaxの更新が行われない回数がカウントされるのである。そして、S113が実行され、カウント値C13が予め設定された回数、例えば3回以上であるか否かの判定が行われる。
【0053】
減速度が増減を繰返しながら増大すれば、第1極大値が得られる前に、減速度が極大値メモリ118に記憶された値より小さくなることがあるが、その場合には、第10カウンタC10のカウント値C10が3になる前に減速度が極大値メモリ118に記憶されている最大値Gcmax以上になり、S111において第10カウンタC10がリセットされ、減速度の増大から減少への転換の判定がやり直される。
【0054】
極大値メモリ118に記憶されている最大値Gcmaxが、連続して、直後に演算された3個の減速度Gc(t)より大きくなれば、S113の判定結果はYESになってS114が実行され、第12フラグF12がセットされる。それにより次にS109が実行されるとき、その判定結果はYESになり、S110〜S114は実行されない。極大値メモリ118に記憶されている最大値の更新は行われないのであり、S113の判定結果がYESになったときに極大値メモリ118に記憶されている最大値Gcmaxが第1極大値Gcmax1 として取得される。極大値メモリ118に記憶されている最大値が第1極大値であると判定するために、直後に演算された減速度より大きくなる回数は、減速度の増大から減少への転換を確実に検出し得る回数に設定すればよい。
【0055】
S114においてはまた、第1極大値取得までの減速度平均値Gcamax が演算される。この演算は、減速度積分値メモリ112に記憶された積分値を、第9カウンタC9 のカウント値C9 から3を引いた値で割ることにより行われる。積分は、最新の減速度Gc(t)から3つ逆上った減速度について行われるため、S113の判定結果がYESになったとき、減速度積分値は、ちょうど、極大値メモリ118に記憶されている第1極大値Gcmax1 が積分された値になっており、この値を第9カウンタC9 のカウント値C9 から3を引いた値、すなわち第1極大値が演算されたときの第9カウンタC9 のカウント値で割ることにより、第1極大値Gcmax1 までの減速度の平均値が得られる。この演算により得られた値は第1減速度平均値メモリ122に記憶される。さらに、極大値取得時の減速度積分値が極大値取得時減速度積分値メモリ114に記憶され、第9カウンタC9 のカウント値C9 、すなわち極大値取得時の時間が極大値取得時間メモリ116に記憶される。また、第10カウンタC10がリセットされる。さらに、極小値メモリ120の値が第1極大値Gcmax1 にセットされる。
【0056】
なお、前述のように、S106の判定において、減速度Gc が増大開始判定値Gthmin 以下であるとき、S107において減速度積分値メモリ112はクリアされるが、第1〜第3減速度メモリ104〜108はクリアされず、第9カウンタC9 のカウント値C9 は3にリセットされる。そのため、減速度の積分値および積分時間には、最初に増大開始判定値Gthmin を超えた減速度から逆上って3個分の減速度および時間が含まれることとなり、増大開始判定値を超えない減速度も含んで第1極大値取得までの減速度平均値が演算される。前述のように、増大開始判定値Gthmin は比較的高く設定されていて、最初に増大開始判定値Gth min を超えた減速度の前に取得された3つの減速度も増大状態にある値である可能性が高く、これら減速度も含めて平均値が演算されることにより、減速度平均値がより正確に取得される。S106の実行により、ソフトクラッシュ以外の原因によって生じた微小な減速度が排除されることは、前記実施形態におけると同じである。
【0057】
第12フラグF12のセットにより、S109の判定結果がYESになってS115〜119が実行され、第1極小値が取得される。第1極小値は、第1極大値と同様に、極小値メモリ120に記憶されている極小値と、直後に演算された減速度との比較により取得される。S104において得られた減速度Gc(t)は極小値メモリ120に記憶されている最小値と比較される。減速度Gc(t)が最小値Gcmin以下であれば、その減速度Gc(t)が極小値メモリ120に記憶されている最小値Gcminと置き換えられる。最小値Gcminが連続して設定回数、例えば3回、減速度Gc(t)より大きくなるまで、S101〜S105,S109,S115〜S118が繰返し実行され、減速度の積分,積分時間の計測が行われる。減速度の積分は、極小値メモリ120に記憶されている減速度から3個逆上った減速度について行われる。最小値Gcminが3回連続して減速度Gc(t)より大きい状態が続けば、S118の判定結果がYESになり、この際に極小値メモリ120に記憶されている最小値Gcminが第1極小値に確定される。そして、S119が実行され、第1極大値取得から第1極小値取得までの減速度平均値が演算される。この演算は、減速度積分値メモリ112に記憶された減速度積分値から、極大値取得時減速度積分値メモリ114に記憶された極大値取得時の減速度積分値を引いた値を、S118の判定結果がYESになったときの第9カウンタC9 のカウント値C9 から、極大値取得時間メモリ116に記憶された極大値取得までの第9カウンタC9 のカウント値を引いた値で割ることにより行われる。そして、第10カウンタC10がリセットされる。なお、ソフトクラッシュ判定ルーチンにおいて、第1ないし第3条件が満たされないとき、メモリのクリア等が行われるが、本実施形態においては、第1〜第3減速度メモリ104〜108はクリアされず、第9カウンタC9 は3にリセットされる。その他のメモリはクリアされ、フラグはリセットされ、カウンタは0にリセットされる。
【0058】
このように仮に極大値,極小値とした減速度を複数個の減速度と比較して極大値および極小値を取得するようにすれば、減速度が極大値より小さい状態あるいは極小値より大きい状態が1回生ずることによって極大値,極小値が確定されることはなく、より確実に極大値,極小値を取得することができる。この際、複数の検出値を積分して平均値を求め、この平均値を極大値と比較するのに代えて、センサの平滑化された検出値であって、平均化されていない減速度を極大値と比較して第1極大値を取得するようにしてもよい。
【0059】
上記各実施形態において、左右減速度比は、車体左右前部についてそれぞれ、前後方向減速度の第1極大値が得られたときの減速度平均値に基づいて演算されていたが、いずれか一方について第1極大値が検出されたとき、左右減速度比を演算するようにしてもよい。その例を図16および図17に表すフローチャートに基づいて説明する。なお、これらフローチャートを実施するためのRAMの構成は、フラグ,カウンタを除いて図1ないし図11に示す実施形態と同じであるため図示を省略する。
【0060】
本実施形態の左右減速度比取得ルーチンにおいては、車体左右前部についてそれぞれ、別々に、左,右の各フロントセンサの複数の検出値を積分して平均値を求め(S202〜S205,S212〜214)、その平均により得られる減速度が増大開始判定値を超えて実質的に増大してきたとき(S206〜S208,S215〜S217)、相前後する2つの減速度を比較して第1極大値を検出する(S209,S218)。但し、左右の減速度の一方が増大開始判定値を超えていなくても、他方において超えていれば、一方においても第1極大値の検出を開始する(S206,S215)。そして、減速度が増大している間は、減速度を積分するとともに、積分時間をカウンタによって計測し(S210,S219)、左右の減速度の一方において第1極大値が検出されたとき、左右の各減速度の平均値を演算し、左右減速度比を演算してメモリに記憶する(S220,S221)。なお、演算した左右減速度比を左右減速度比メモリに記憶する際、現に左右減速度比メモリに記憶されている値に代えて記憶する。そして、フラグのセットにより(S222)、左右減速度比が得られたことが記憶され、S223,S224が前記実施形態のS69,S70と同様に実行されて、設定時間の経過が待たれ、設定時間が経過すれば、フラグのリセット等が行われる。本実施形態においては、マイコンのS202〜S220を実行する部分が左右前部減速度取得手段を構成している。
【0061】
左右減速度比は、車体中央部の前後方向減速度の第1極大値が取得されたときに取得するようにしてもよい。その例を図18に示すフローチャートに基づいて説明する。図18に示すフローチャートを実行するためのRAMの構成は、図示は省略するが、図1ないし図11に示す実施形態のRAMのうち、左右の各フロント用の今回減速度メモリ,先回減速度メモリを除くメモリを有するとともに、左右いずれのフロントセンサにより検出された減速度が増大開始判定値を超えたかを記憶するメモリを有し、第1〜第7カウンタおよび第1〜第10フラグに代えて、第15カウンタ,第16カウンタおよび第16フラグを有する構成とされている。
【0062】
本実施形態の左右減速度比取得ルーチンにおいては、フロントセンサの検出値の読込み,車体前部の前後方向減速度の検出値の積分,積分回数のカウント,減速度平均値の演算,減速度の積分,積分回数のカウントが、左右同時に行われる(S301〜S304,S309,S310)。積分回数のカウントは左右共通のカウンタを用いて行われるが、積分,演算は左右別々に行われ、得られた値は、左,右、それぞれ専用のメモリに記憶される。また、減速度の積分および積分回数のカウントは、車体左右前部の各前後方向減速度の一方が増大開始判定値を超えたときに開始され、第16フラグF16のセットにより、減速度が増大開始判定値を超えたことが記憶されるとともに、左右いずれのフロントセンサにより検出された減速度が増大開始判定値を超えたかがメモリに記憶される(S305〜S308)。
【0063】
そして、減速度の積分および積分回数のカウントが行われた(S309,S310)後、車体中央部の前後方向減速度の第1極大値が取得されたか否かの判定が行われる(S311)。前述のように、この第1極大値が取得されたならば、フラグがセットされるようにされており、S311の判定は、このフラグがセットされているか否かにより行われる。第1極大値が取得されていなければ、S311の判定結果はNOになってS317が実行され、カウント値C16が設定値Cth以上であるか否かの判定が行われる。減速度が増大開始判定値を超えてから、設定時間以上経過したか否かの判定が行われるのであり、S317の判定結果は当初はNOとなる。S317の判定を行う理由は後に説明する。
【0064】
減速度が増大開始判定値を超えて第16フラグF16がセットされることにより、次にS305が実行されるとき、その判定結果はYESになってS314が実行され、増大開始判定値を超える減速度を検出したフロントセンサの検出値により得られる減速度が増大開始判定値以下になったか否かの判定が行われる。減速度は、増大した後、減少するが、増大開始判定値より大きければ、S314の判定結果はNOになってS309が実行される。
【0065】
車体中央部の前後方向減速度の第1極大値が取得されるまで、S301〜S305,S314,S309〜S311,S317が繰返し実行される。減速度が増大開始判定値を超えた後、第16カウントC16のカウント値C16が設定値Cth以上になる前であって、増大開始判定値を超える減速度を検出したフロントセンサの検出値に基づいて得られる減速度Gf が増大開始判定値Gthmin 以下になる前に、第1極大値が取得されれば、S311の判定結果がYESになってS312が実行され、左右減速度の各平均値が演算された後、S313が実行され、それら平均値に基づいて左右減速度比が演算され、現に左右減速度比メモリに記憶されている値に代えて左右減速度比メモリに記憶される。
【0066】
それに対し、第1極大値が取得される前に、上記減速度が増大開始判定値以下になれば、S314の判定結果がYESになってS315が実行され、増大開始判定値を超える減速度を検出したフロントセンサの検出値により得られる減速度の積分値SG が設定積分値SGTH より大きいか否かの判定が行われる。減速度の積分値SG が設定積分値SGTH 以下であれば、S315の判定結果はNOになってS316が実行され、左右両方の減速度積分値メモリがクリアされるとともに、第16カウンタC16,第16フラグF16がリセットされる。減速度の積分値SG が設定積分値SGTH 以下であれば、減速度が増大開始判定値を超える衝撃が生じたが、その衝撃は小さく、ソフトクラッシュにより生じた衝撃ではないのであり、左右減速度比取得のために演算してきた値等を捨てて、ソフトクラッシュの判定には使われないようにし、再度、左右減速度比を取得するための演算,判定等が行われるようにされるのである。
【0067】
それに対し、減速度積分値SG が設定積分値SGTH より大きければ、S315の判定結果はYESになってS310が実行される。この場合には、減速度が増大開始判定値を超えてから、増大開始判定値以下になるまでに得られた減速度積分値はそのまま残しておき、減速度の積分は行わず、時間のみを計測し(S310)、第1極大値が取得される前に設定時間が経過したか否かの判定が行われる(S311,S317)。減速度積分値SG が設定積分値SGTH より大きければ、その減速度積分値は、ソフトクラッシュによって生じた可能性があり、残しておくのであるが、減速度が増大開始判定値を超えてから、設定時間経過しても第1極大値が取得されなければ、減速度積分値は、ソフトクラッシュによって得られた値ではないとし、クリアして実際のソフトクラッシュ発生時における左右減速度比の取得に使用されないようにされる。
【0068】
カウント値C16が設定値Cth以上になる前に第1極大値が取得されれば、S311の判定結果がYESになってS312,S313が実行され、左右減速度比が演算,記憶される。第1極大値の取得に基づいて左右減速度比が演算されるため、左右減速度比が取得されたときには、必ず、ソフトクラッシュの判定が行われる。そして、ソフトクラッシュでなければ、ソフトクラッシュ判定ルーチンにおいフラグのリセット等が行われ、再度、左右減速度比の取得が行われるようにされる。このように、本実施形態においては、マイコンのS302〜S312を実行する部分が左右前部減速度取得手段を構成している。
【0069】
なお、上記各実施形態のいくつかにおいては、左右減速度比の取得後、ソフトクラッシュの判定が行われることなく、設定時間が経過すれば、再度、左右減速度比の取得が行われるようにされ、一旦、取得した左右減速度比がソフトクラッシュの判定に使われなければ、左右減速度比の取得をやり直し、先に取得した左右減速度比を捨てることにより、ソフトクラッシュの判定は同じ衝撃により得られた左右減速度比,車体中央部の前後方向減速度の第1極大値および極大値前後比を用いて行われるようにされていたが、設定時間の経過を待つことに限らず、例えば、車体前部について検出された前後方向減速度の第1極大値が設定値以下であるか否かを判定し、設定値以下であれば、左右減速度比の取得をやり直すようにしてもよい。
左右前部のいずれか一方について前後方向減速度の第1極大値が検出されたときに左右減速度比を演算する場合には、その第1極大値が得られたときに設定値と比較し、設定値以下であれば、左右減速度比の取得をやり直す。また、左右前部の両方について前後方向減速度の第1極大値が検出されたときに左右減速度比を演算する場合には、両方の第1極大値をそれぞれ設定値と比較し、少なくとも一方が設定値以下であれば、左右減速度比の取得をやり直す。
第1極大値が設定値と比較され、設定値以下であって左右減速度比の取得がやり直されるとき、まだ、減速度は減少状態にあるため、例えば、第1極大値を、相前後して取得された2つの減速度を比較し、後に取得された減速度が先に取得された減速度より小さいことによって検出する場合には、第1極大値が設定値以下であると判定された後、直ちに次の第1極大値の取得(左右減速度比の取得)を開始することができる。この場合、減速度が減少から増大に転ずるまでの間、取得された各減速度がいずれも第1極大値とされ、設定値と比較されるが、これらはすべて設定値以下であるため、左右減速度比が演算されることはなく、左右減速度比の取得が繰返し開始されるからである。そして、減速度が減少から増大に転ずれば、第1極大値が得られるまで、設定値との比較は行われず、減速度が増大から減少に転じて第1極大値が得られたとき、設定値と比較される。第1極大値が設定値以下であると判定された場合、第1極大値(左右減速度比)の再度の取得開始を、例えば、時間を設定して待たなくて済む。
設定値を超える第1極大値が生ずれば、左右減速度比が演算される。この場合、左右減速度比の取得後、取得された左右減速度比がソフトクラッシュの判定に使用されたか否かを監視し、使われなければ、再度、左右減速度比の取得をやり直し、使われなかった左右減速度比を捨てるようにすることが望ましい。ソフトクラッシュが生ずるまで、設定値を超える第1極大値が生じなければ、左右減速度比は初期値のままであり、ソフトクラッシュによる衝撃によって初めて左右減速度比が演算されるとともに、同じ衝撃による車体中央部の前後方向減速度の第1極大値,極大値前後比が取得されてソフトクラッシュの判定が行われることとなり、左右減速度比がソフトクラッシュの判定に使用されたか否かを監視することは不可欠ではない。それに対し、車体左右前部の前後方向減速度の第1極大値が設定値を超えて左右減速度比は演算されたが、車体中央部の前後方向減速度の第1極大値は取得されない場合があれば、左右減速度比の取得後、その左右減速度比がソフトクラッシュの判定に使用されたか否かを監視し、使用されなければ左右減速度比の取得をやり直し、実際にソフトクラッシュが生じた場合に、同じ衝撃に基づいて取得された左右減速度比,車体中央部の前後方向減速度の第1極大値および極大値前後比を用いてソフトクラッシュの判定が行われるようにするのである。この監視は、例えば、左右減速度比の取得後、ソフトクラッシュの判定が行われない状態が設定時間継続するか否かにより行われる。設定時間は、例えば、ソフトクラッシュであれば、左右減速度比が得られたときから、車体中央部の前後方向減速度の第1極大値が得られるまでの時間よりやや長い時間とされる。
【0070】
また、図16および図17に示す実施形態において第1極大値は、図12ないし図15に示す実施形態における第1極大値の取得と同様にして検出してもよい。
【0071】
さらに、上記各実施形態においてフロントセンサ34,36は、検出値をレベル化して出力するものとされていたが、レベル化せず、検出した減速度をそのままの値で出力し、マイクロコンピュータに供給するセンサとしてもよい。
【0072】
さらに、フロアセンサ32,フロントセンサ4,36の検出値を平滑化する平滑化手段は、カルマンフィルタを、ソフトウェアにより実現されるデジタルフィルタにより構成したものとしてもよい。
【0073】
また、上記各実施形態においては、乗員保護機構部としてエアバッグを備えたエアバッグ装置を例に取って説明したが、乗員保護機能を異にする複数種類の乗員保護機構部を備えた乗員保護装置に本発明を適用することも可能である。複数の乗員保護機構部は、ソフトクラッシュあるいは正突等他の形態の衝突の検出に基づいてそれらを選択的に作動させてもよく、全部を作動させてもよい。全部を作動させる場合、同時に作動させてもよく、あるいは時期をずらして作動させてもよい。エアバッグ以外の乗員保護機構部には、例えば、プリテンショナ付シートベルト装置のプリテンション機構部、自動ドアロック解除機構部等がある。プリテンショナ付シートベルト装置は、シートベルト,シートベルト巻取装置,プリテンショナおよびインフレータ等を含み、そのうちプリテンショナおよびインフレータがプリテンション機構部を構成する。プリテンショナは、シートベルト巻取シャフトとシリンダとの間に設けられたクラッチを含み、非作動時にはシリンダの駆動力がシートベルト巻取シャフトに伝達されないようにされている。衝突により規定以上の衝撃が発生するとインフレータが点火され、高圧ガスを発生してシリンダのピストンを移動させ、それによりクラッチがシリンダの駆動力をシートベルト巻取シャフトに伝達する状態とされ、シートベルト巻取シャフトが回転させられてシートベルトが巻き取られ、乗員を拘束する。自動ドアロック解除機構部は、衝突時に自動ドアロック装置を自動的に解除する機構である。
複数種類の乗員保護機構部の使い分けは、衝突形態,車両の走行速度,衝撃の大きさ,車両に対する乗員の相対移動速度(車両の減速度の積分)等に応じて為される。例えば、衝突時における車両の走行速度が低い場合には、プリテンション機構部を作動させ、高い場合にはエアバッグを作動させる。走行速度は、乗員保護装置が作動する車両そのものの速度でもよく、衝突対象物との相対速度でもよい。また、衝突時の衝撃が比較的小さい時期にまずプリテンション機構部を作動させ、さらに大きくなればエアバッグをも作動させる。乗員保護機構部の種類に応じて、それぞれ作動判定用のしきい値を設定すればよい。
【0074】
さらに、ソフトクラッシュの検出および乗員保護機構部の作動判定と、正突等、ソフトクラッシュ以外の衝突の検出および乗員保護機構部の作動判定とは、それぞれ独立した電子制御ユニットにより行うようにしてもよい。この場合、エアバッグ等の乗員保護機構部は、2つの電子制御ユニットからそれぞれ発せられる指令のうち、早期に発せられる指令に従って作動させられる。
【0075】
また、本発明に係るソフトクラッシュ検出方法および装置は、プリテンショナ付シートベルト装置等のエアバッグ以外の乗員保護機構部をエアバッグと共に、あるいはエアバッグに代えて含む乗員保護装置のためのソフトクラッシュの検出に用いてもよく、乗員保護装置以外にソフトクラッシュの検出を必要とする装置において実施し、設けてもよい。
【0076】
以上、本発明のいくつかの実施形態を詳細に説明したが、これは例示に過ぎず、本発明は、前記〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態であるソフトクラッシュ検出装置を含むエアバッグ装置を概略的に示すブロック図である。
【図2】上記エアバッグ装置を備えた車両を示す平面図である。
【図3】上記エアバッグ装置の電子制御ユニットを構成するマイクロコンピュータのROMに記憶されたメインルーチンを表すフローチャートである。
【図4】上記メインルーチンを構成するソフトクラッシュ検出ルーチンを表すフローチャートである。
【図5】上記ソフトクラッシュ検出ルーチンを構成する車体中央部減速度極大値・極小値等取得ルーチンを表すフローチャートである。
【図6】上記ソフトクラッシュ検出ルーチンのROMに記憶された左右減速度比取得ルーチンの一部を表すフローチャートである。
【図7】上記左右減速度比取得ルーチンの残りを表すフローチャートである。
【図8】上記ソフトクラッシュ検出ルーチンを構成するソフトクラッシュ判定ルーチンを表すフローチャートである。
【図9】上記マイクロコンピュータのRAMのうち、本発明に関連の深い部分を概略的に示すブロック図である。
【図10】ソフトクラッシュ時におけるフロアセンサおよび左右の各フロントセンサの検出値を示すグラフである。
【図11】ソフトクラッシュ時における車体中央部の前後方向減速度の変化を悪路による衝撃発生時の車体中央部の前後方向減速度の変化と共に示すグラフである。
【図12】本発明の別の実施形態であるエアバッグ装置の電子制御ユニットを構成するマイクロコンピュータのROMに記憶された車体中央部減速度極大値・極小値等取得ルーチンの一部を表すフローチャートである。
【図13】図12に示す車体中央部減速度極大値・極小値等取得ルーチンの残りを表すフローチャートである。
【図14】図12に示すルーチンが記憶されたROMを有するマイクロコンピュータのRAMのうち、本発明に関連の深い部分を取り出して概略的に示すブロック図である。
【図15】図12に示すルーチンにより行われる第1極大値の取得および減速度平均値の演算を説明する図である。
【図16】本発明の別の実施形態であるエアバッグ装置の電子制御ユニットを構成するマイクロコンピュータのROMに記憶された左右減速度比取得ルーチンの一部を表すフローチャートである。
【図17】図16に示す左右減速度比取得ルーチンの残りを表すフローチャートである。
【図18】本発明の別の実施形態であるエアバッグ装置の電子制御ユニットを構成するマイクロコンピュータのROMに記憶された左右減速度比取得ルーチンを表すフローチャートである。
【符号の説明】
10:エアバッグ装置 12:電子制御ユニット 14:エアバッグ
16:マイクロコンピュータ 32:フロアセンサ 34,36:フロントセンサ 44:インフレータ 48:点火装置
Claims (3)
- 少なくとも、
車体の運転席近傍に配設されたメインセンサの検出値に基づく車体中央部の平滑化された前後方向減速度が予め設定された増大開始判定値を最初に超えた時点以後の最初の極大値である中央第1極大値が中央第1設定減速度より大きく、中央第2設定減速度より小さいという第1条件と、
前記メインセンサの検出値に基づく車体中央部の平滑化された前後方向減速度の、前記増大開始判定値を最初に超えた時点から前記中央第1極大値に達する時点までの平均値で、前記中央第1極大値に達した時点から最初の極小値である中央第1極小値に達する時点までの平均値を割った極大値前後比が第1設定比より小さいという第2条件と、
車体左前部に配設されたサブセンサの検出値に基づく平滑化された前後方向減速度の、その前後方向減速度が前記増大開始判定値を最初に超えた時点から、その時点以後の最初の極大値である左第1極大値に達する時点までの平均値と、車体右前部に配設されたサブセンサの検出値に基づく平滑化された前後方向減速度の、その前後方向減速度が前記増大開始判定値を最初に超えた時点から、その時点以後の最初の極大値である右第1極大値に達する時点までの平均値との、小さい方を大きい方で割った平均値左右比が予め設定された第2設定比より大きいという第3条件と
の3条件が全て満たされた時点に、ソフトクラッシュが発生したと検出することを特徴とするソフトクラッシュ検出方法。 - 車体の運転席近傍に配設されたメインセンサの出力に基づいて車体中央部の平滑化された前後方向減速度である中央減速度を取得する中央減速度取得手段と、
その中央減速度取得手段により取得された前記中央減速度が予め設定された増大開始判定値を最初に超えた時点以後の最初の極大値である中央第1極大値を取得する中央第1極大値取得手段と、
前記中央減速度取得手段により取得された前記中央減速度が前記中央第1極大値に達した時点以後の最初の極小値である中央第1極小値を取得する中央第1極小値取得手段と、
前記中央減速度取得手段により取得された前記中央減速度の、前記増大開始判定値を最初に超えた時点から前記中央第1極大値に達する時点までの平均値である極大値前平均値と、前記中央第1極大値に達した時点から前記中央第1極小値に達する時点までの平均値である極大値後平均値とを取得する中央減速度平均値取得手段と、
車体左前部に配設されたサブセンサの検出値に基づく車体左前部の平滑化された前後方向減速度である左減速度を取得する左減速度取得手段と、
その左減速度取得手段により取得された前記左減速度が前記増大開始判定値を最初に超えた時点以後の最初の極大値である左第1極大値を取得する左第1極大値取得手段と、
車体右前部に配設されたサブセンサの検出値に基づく車体右前部の平滑化された前後方向減速度である右減速度を取得する右減速度取得手段と、
その右減速度取得手段により取得された前記右減速度が前記増大開始判定値を最初に超えた時点以後の最初の極大値である右第1極大値を取得する右第1極大値取得手段と、
少なくとも、(1)前記中央第1極大値が中央第1設定減速度より大きく、中央第2設定減速度より小さいという第1条件と、(2)前記極大値前平均値で前記極大値後平均値を割った極大値前後比が第1設定比より小さいという第2条件と、(3)前記左減速度が前記増大開始判定値を最初に超えた時点から前記左第1極大値に達する時点までの左減速度の平均値と、前記右減速度が前記増大開始判定値を最初に超えた時点から前記右第1極大値に達する時点までの右減速度の平均値との、小さい方を大きい方で割った左右比が第2設定比より大きいという第3条件との3条件が全て満たされた時点に、ソフトクラッシュが発生したと判定する判定手段と
を含むことを特徴とするソフトクラッシュ検出装置。 - 請求項2に記載のソフトクラッシュ検出装置と、
エアバッグと、
そのエアバッグを異なる速さで膨らませ得るインフレータと、
前記ソフトクラッシュ検出装置によりソフトクラッシュが検出された場合に、前記エアバッグを前記異なる速さのうち真ん中以上の速さで膨らませるインフレータ制御装置と
を含むエアバッグ装置。
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