従来、例えば電子写真方式を利用して転写材(紙、OHTシート、光沢フィルム等)上に画像を形成する、プリンタ(例えば、レーザービームプリンタ、LEDプリンタ等)、複写機、ファクシミリ装置、ワードプロセッサ等の画像形成装置が広く用いられている。
電子写真方式の画像形成装置では、一般に円筒型の電子写真感光体(感光ドラム)とされる像担持体上に静電像(潜像)を形成し、この静電像を現像剤としての樹脂等から成るトナー粒子により現像する。そして、トナー粒子による画像(トナー像)は、静電的な力を利用して紙等の転写材上に転写される。その後、トナー像は、定着装置にて加えられる熱と圧力により転写材上に溶融固着(定着)され、安定した状態となる。近年、電子写真方式の画像形成装置では、カラー対応、高速化等の高機能化が進んでいる。
カラー画像形成装置などの複数種類のトナー像を重ね合わせることにより転写材上に画像を形成する画像形成装置には、次のような方式のものがある。先ず、像担持体上に逐次に形成されるトナー像を、その都度、転写部において転写材担持体上に担持された転写材上に転写し、転写材上で複数種類のトナー像を重ね合わせる方式(直接転写方式)がある。又、像担持体上に逐次に形成されるトナー像を、その都度、1次転写部において中間転写体上に転写して、中間転写体上で複数種類のトナー像を重ね合わせ、その後この多重トナー像を一括して転写材上に2次転写する方式(中間転写方式)がある。従来、像担持体から転写されるトナー像を直接又は転写材を介して担持する転写体としての転写材担持体、中間転写体には、複数のローラに張架されて無端移動するベルト、即ち、搬送ベルトや中間転写ベルトが広く用いられている。
又、複数種類のトナーを用いる画像形成装置としては、所謂、タンデム型の画像形成装置が、高速性という点で特に優れている。以下、転写材担持体を用いる直接転写方式を採用したタンデム型のカラー画像形成装置を例に説明する。
タンデム型の画像形成装置では、像担持体として例えば円筒型の電子写真感光体(感光ドラム)と、感光ドラム上にトナーを供給する現像手段としての現像器等と、を備えた複数の像形成ユニットが搬送ベルトの搬送方向に沿って直列に配置される。各像形成ユニットの感光ドラム上には、それぞれ異なる種類のトナー(例えば、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの各色のトナー)によりトナー像が形成される。そして、各像形成ユニットの感光ドラムから、バイアスが印加される転写手段の作用により、搬送ベルト上の転写材にトナー像が順次に重ね合わせて転写される。その後、転写材は搬送ベルトから分離され、定着装置によってその上にトナー像が溶融固着された後、装置外に排出される。一方、転写材に転写されずに感光ドラム上に残留したトナー(転写残トナー)は、クリーニングブレード等の清掃部材を備える清掃手段としてのクリーナにより感光ドラム上から除去される。以下、像形成ユニットと、それに対応する各転写手段を含めた部分を像形成ステーションという。
上述の如き電子写真方式の画像形成装置において、試験画像を用いた自己調整機能を備えたものがある。つまり、電子写真方式の画像形成装置では、周囲環境や使用状態の変化によりトナー像の濃度や、諧調特性(γ特性)が影響を受けて、出力画像の濃度や色度の変動が発生することがある。そこで、非画像形成時において定期的に搬送ベルト上に試験画像(検知パターン)を形成し、その濃度を搬送ベルトに隣接して設けられた光学センサにて検知する。そして、その検知結果に基づいて画像形成条件を微調整する。従来、多くの電子写真方式の画像形成装置は、このようにして常に安定した濃度とγ特性を維持する仕組み(画像濃度制御機構)を有している。
更に、タンデム型の画像形成装置においては、複数色のトナー像を精度良く重ね合わせるため、各色の画像形成タイミングを精密に制御する必要がある。そのため、専用の試験画像を搬送ベルト上に形成し、それを光学センサで検知した結果に基づいて、各色の画像形成タイミングを微調整する。従来、多くのタンデム型の画像形成装置は、このようにして色ずれを防止する仕組み(色ずれ制御機構、レジストレーション制御機構)を有している。
ところで、画像形成装置内でのジャム(転写材が搬送経路中で詰まること)等が発生した場合や、画像が紙サイズをはみ出した場合、又は、濃度制御等で搬送ベルトに試験画像を直接形成した場合には、搬送ベルト上にトナーが残留する。そのため、このトナーをクリーニングする手段が必要である。
従来、搬送ベルト上に残留したトナーやごみ等を、感光ドラムに転写し、感光ドラムのクリーナで回収する方法が知られている。つまり、搬送ベルトのクリーニング時には、搬送ベルト及び感光ドラムが駆動される。そして、例えば搬送ベルトの搬送方向において4個の像形成ステーションを有する画像形成装置において、最上流の像形成ステーション(第1の像形成ステーション)では、転写手段に通常の転写時とは逆のマイナスナス極性のバイアスが印加される。搬送ベルトの搬送方向において次の像形成ステーション(第2の像形成ステーション)では、転写手段に通常の転写時と同じプラス極性のバイアスが印加される。同様に、第3、第4の像形成ステーションにおいても、それぞれ転写手段にマイナス極性、プラス極性のバイアスが印加される。このように、搬送ベルトの移動方向に沿って、像形成ステーションごとに交互に極性の異なるバイアスが転写手段に印加される。これにより、マイナス極性を持った多くの残留トナーやごみは、第1、第3の像形成ステーションにて、又プラス極性のものは第2、第3の像形成ステーションにてそれぞれ感光ドラムへ逆転写され、搬送ベルト上から除去される。感光ドラム上へ移動したこれら残留物質は、最終的に感光ドラム上から付着物を除去するクリーナによって回収される。
しかしながら、搬送ベルトを採用した画像形成装置において、定期的に上述の如き搬送ベルトのクリーニング動作を実行しているにもかかわらず、使用中に搬送ベルト上に汚れが徐々に付着し、成長することがある。付着した汚れはやがて搬送ベルトの表面に強く固着して成長し、除去が非常に困難な状態となる。
発明者らの検討によれば、汚れの成分は主に炭酸カルシウムであり、使用紙種によってはタルクやカオリンが含まれる場合がある。又、低温低湿度環境で発生レベルが目立って悪い傾向にある。これら汚れの固着の原理は次のように考えられる。
先ず、転写材と搬送ベルトとの間に働く吸着力により、転写材を搬送ベルトから分離する際に、一部の紙粉は転写材から剥離し、搬送ベルト上に付着したまま残留してしまう。特に、低温低湿度環境では、紙や搬送ベルトにおいて吸着に寄与する実電荷や分極電荷の減衰が少なく、吸着力が強く働く。そのため、上述のような紙粉の剥離が起こりやすい。更に、紙の吸湿度合いが少ないことから、紙繊維と填料との付着力(タック性)に乏しく、填料が紙粉としてより剥離しやすくなる。
このようにして搬送ベルト上に残留した汚れは、搬送ベルトへの吸着力が働いているため、前述したような搬送ベルトのクリーニング動作では除去できず、長期に搬送ベルト上にとどまるうちに固着することがある。このような汚れの固着が始まると、搬送ベルトの表面の離型性が著しく低下すため、更に紙粉やごみの付着を加速してしまうという悪循環に陥りやすくなる。
汚れの付着による弊害は、前述のような試験画像を用いた自己調整機能による濃度制御や色ずれ制御において顕著に影響が現れる。これらの制御では、前述のとおり搬送ベルト上に試験画像を形成し、それを光学センサで検知する。図8は、一例として、正反射光を検知するタイプの光学センサの一例の概略構成を示す。図示の通り、光学センサ30は、LED等の発光素子301で発した光を搬送ベルト表面に照射し、その正反射光の量をフォトダイオード等の受光素子302で検知する。つまり、トナーのない部分では、平滑な搬送ベルトの表面で光が反射するため正反射光が多い。一方、トナーの多いところでは細かいトナー粒子の表面や、トナー内の色剤(顔料)で反射されることで乱反射光が多くなるため、正反射成分は減少する。このような相関から、試験画像の有無や濃度を検知することができる。
ところが、搬送ベルトに汚れが付着していると、汚れによる乱反射により、正反射光量が減少する。そのため、試験画像の検知精度が低下し、正確な濃度制御や色ずれ制御が行えなくなってしまう。
又、汚れの付着レベルが更に悪化すると、搬送ベルトの表面の電気的抵抗が変わり、又汚れの付着による凹凸で搬送ベルトの表面の平滑性も失われる。そのため、通常のトナー像の転写材への転写時において、場所により転写電界や転写圧力に斑が生じる。そして、それが画像斑となって現れることがある。
又、転写材の搬送ベルトへの吸着力も低下し、搬送力が不安定となるため、色ずれレベル悪化や、転写材のしわが発生する場合がある。
一方、搬送ベルトの汚れ対策として、搬送ベルトのために専用のクリーナを設け、弾性ゴムブレード(クリーニングブレード)などの清掃部材を搬送ベルト上に当接させて、汚れを搬送ベルト上から強制的にかきとることが考えられる。しかしながら、この場合、専用のクリーナの追加によりコストが上昇する。又、このような専用のクリーナで回収した廃トナーや汚れを収容するための廃トナー容器が別途必要となる。このため、この廃トナー容器の交換時に使用者の手を煩わせてしまう。更に、搬送ベルト上に清掃部材を当接させることにより、搬送ベルトの駆動トルクが重くなり、搬送ベルトのスリップや破断が発生しやすくなる。
上述の搬送ベルトの場合と同様に、転写材が接触した状態から剥離される際の紙粉の付着などによる、ベルト上の汚れの問題は、転写体として中間転写体を用いる中間転写方式の画像形成装置においてもある。
ところで、特許文献1は、ベルトの清掃用に設けられたクリーニングブレードの先端に紙粉などが引っ掛かることによるベルトの表面の傷を防止するために、転写材が担持される直前のベルト上の位置にトナー像を形成し、そのトナーをクリーニングブレードに潤滑剤として供給することを開示する。斯かる従来技術では、ベルトの清掃用に専用のクリーナが必要である。又、ベルト上に形成されるトナー像は、クリーニングブレードに潤滑剤として供給する程度のものであり、ベルト上に付着した紙粉などの付着物とトナー像とを混合してより効果的に除去することはできない。
特開平11−258919号公報
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
[画像形成装置の全体構成及び動作]
先ず、図1を参照して本実施例の画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。図1は、本実施例の画像形成装置100の要部概略断面を示す。本実施例の画像形成装置100は、画像形成装置本体(装置本体)に通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ、原稿読み取り装置、デジタルカメラなどの外部機器からの画像情報信号に応じて、電子写真方式を利用してのフルカラー画像を転写材に形成することのできるフルカラーレーザービームプリンタである。又、本実施例の画像形成装置100は、高速性という点で特に優れているタンデム方式を採用している。
画像形成装置100は、複数の画像形成部として、それぞれマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの各色のトナー像を形成するための第1の像形成ステーションPM、第2の像形成テーションPC、第3の像形成ステーションPY、第4の像形成ステーションPKを独立して有する。転写材1は、転写材担持体としての搬送ベルト(静電吸着搬送ベルト)7により担持搬送され、各々の像形成ステーションを順次通過する。例えば、フルカラー画像の形成時には、転写材1が各像形成ステーションを通過する度に、各色トナー像が転写材1上に重ねて転写される。これにより、転写材1上にフルカラー画像が形成される。
尚、以下更に詳しく説明するが、本実施例では、各像形成ステーションの基本的構成及び動作は、トナーの種類が異なることを除いて実質的に同一である。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用の要素であることを示すために符号に与えた添え字M、C、Y、Kは省略して総括的に説明する。
像形成ステーションPには、像担持体として回転可能なドラム型の電子写真感光体、即ち、感光ドラム9が設けられている。感光ドラム9の外周に沿って、感光ドラム9を帯電させる帯電手段としての帯電ローラ10、感光ドラム9に形成された静電像を現像する現像手段としての現像器12、感光ドラム9上のトナーを除去する清掃手段としてのクリーナ14が配置されている。更に、各像形成ステーションPには、感光ドラム9に画像情報に応じて変調されたレーザーを照射し得るように、露光手段(画像書き込み装置)としてのレーザー露光光学系(レーザースキャナー)11が設けられている。本実施例では、帯電ローラ10、レーザー露光光学系11、現像器12により、感光ドラム9上にトナー像を形成する像形成手段8が構成される。
現像器12は、トナーを収容するトナー収納容器(容器)12bと、この容器12b内のトナーを担持搬送して感光ドラム9に供給する現像剤担持体(現像ローラ)12aとを有する。本実施例では、現像器12内には現像剤として負帯電性のトナーが収納されている。そして、現像バイアス出力手段としての現像バイアス電源(図示せず)から現像ローラ12aに現像バイアスが印加されることで、現像ローラ12aと感光ドラム9との対向部(現像領域)において、現像ローラ12a上のトナーが感光ドラム9上に転移し、静電像はトナーとして可視化される。
クリーナ14は、感光ドラム9に当接する清掃部材としてのクリーニングブレード14aと、クリーニングブレード14bによって感光ドラム9上から除去されたトナーなどを収容する廃トナー容器14bと、を有する。
各像形成ステーションPの感光ドラム9に対向するように、感光ドラム9から転写されるトナー像を直接又は転写材1を介して担持する転写体として、搬送ベルト7が配置されている。搬送ベルト7は、複数のローラとして駆動ローラ5と従動ローラ6との2個のローラにより張架されている。搬送ベルト7は、駆動ローラ5に駆動力が伝達されることで、図中矢印で示す方向に周回移動(回転)する。各像形成ステーションPは、搬送ベルト7の移動方向に沿って一列に配置されている。
又、各像形成ステーションPには、搬送ベルト1の内周面側に、転写手段としての転写ローラ13が配置されている。転写ローラ13は、搬送ベルト7を感光ドラム9に向けて押圧し、感光ドラム9と搬送ベルト7とが接触する転写部(転写ニップ)Nを形成している。転写ローラ13は、バイアスが印加されることで転写部Nにおいて感光ドラム9と転写体7との間でトナーを移動させる。
例えば、フルカラー画像形成動作時には、先ず、マゼンタ用の像形成ステーションである第1の像形成ステーションPMにおいて、図中矢印方向に周速(表面移動速度:画像形成装置100のプロセススピードに相当)180mm/sにて回転駆動される感光ドラム9が、帯電ローラ10によって−500Vに一様帯電される。この時、帯電ローラ10には、帯電バイアス出力手段としての帯電バイアス電源(図示せず)から帯電バイアスが印加される。次いで、レーザー露光光学系11による走査光で、感光ドラム9の表面にマゼンタ画像に対応する静電像(潜像)が形成される。走査光による露光によりできた潜像部の電位はおよそ−200Vである。一方、現像ローラ12a上には負の極性に帯電されたマゼンタトナーが一定量供給されており、又現像ローラ12aには現像バイアスが印加されている。この状態で現像バイアスを帯電電位と露光部電位の間の適切な値に設定することで、感光ドラム9上の潜像に選択的にトナーを付着させ、静電像を現像することができる。
このようにして感光ドラム9上に形成されたマゼンタトナー像は、搬送ベルト7が感光ドラム9の周速と同じ周速(表面移動速度)で駆動されることにより、搬送ベルト7に吸着保持されて感光ドラム9と同じ速度で搬送されてくる転写材1上へ、静電的に転写される。この時、転写ローラ13には、転写バイアス出力手段としての転写バイアス電源23により出力された、トナーの正規の帯電極性(本実施例では負極性)とは逆極性である+1500Vの転写バイアスが印加される。即ち、転写バイアス電源23によりトナーの正規の帯電極性とは逆極性のバイアスが出力されることで、所定の極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーを感光ドラム9から搬送ベルト7方向へ向かわせる方向の電界が転写部Nに形成される。尚、転写材1上に転写されずに感光ドラム9上に残留したトナーは、クリーニングブレード14aによりかきとられ、廃トナー容器14bへ回収される。
以上の工程がシアン、イエロー、ブラック用の各像形成ステーションである第2、第3、第4の像形成ステーションPC、PY、PKでも同様に行われ、転写材1上にフルカラートナー像が形成される。その後、転写材1は、搬送ベルト7から分離されて、定着手段としての定着装置15へと搬送される。そして、定着装置15によりトナー像は転写材1上に溶融固着され、装置の出力画像となる。転写材1は、その後装置外に排出される。
搬送ベルト7としては、長期使用によるベルトの伸びや変形が発生しにくく、かつ裂けにくい樹脂材料を、抵抗調整して用いることができる。本実施例では、カーボン粒子分散により体積抵抗値が1.0×1011Ωcm程度に調整された、厚さ100μmのポリイミド樹脂製単層ベルトを用いた。搬送ベルト7の材料としては、この他、例えば、PVdF(ポリ弗化ビニリデン樹脂)、ETFE(四弗化エチレン−エチレン共重合樹脂)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネートなどの樹脂フィルムを用いることができる。或いは、搬送ベルト7として、厚さ0.5〜2mm程度の、例えばEPDMなどとされるゴムの基層の上に、例えばウレタンゴムにPTFEなどのフッ素樹脂を分散したものを被覆して用いた2層ベルト等を用いることもできる。又、ベルト材料の抵抗調整方法としては、イオン導電物質の分散による方法を用いても良い。
搬送ベルト7への転写材1の吸着は、従動ローラ6に対向する位置で搬送ベルト7に当接する、吸着補助手段としての吸着ローラ3により補助される。つまり、図示しない給紙機構から供給された紙等の転写材1は、搬送ベルト7への導入時に、吸着ローラ3と搬送ベルト7との接触部(吸着ニップ)を通過する。吸着ローラ3には、吸着バイアス出力手段としての吸着バイアス電源(図示せず)から+1500Vのバイアスが印加されている。このバイアスによる電界と電荷供給により、転写材1と搬送ベルト7の静電分極が促進され、転写材1が搬送ベルト7に吸着される。
尚、本実施例の画像形成装置100は、搬送ベルト7上に試験画像を形成し、試験画像を検知手段としての光学センサ30により検知した結果に応じて画像形成条件を調整する画像濃度制御機構、及び試験画像を光学センサ30により検知した結果に応じて画像形成タイミングを調整する色ずれ調整機構を備えている。以下、これら画像濃度制御機構及び色ずれ調整機構を総称してキャリブレーション機構という。本実施例では、従動ローラ6に巻き付けられている状態の搬送ベルト7の表面に対向して、光学センサ30が配置されている。詳しくは後述するように、本実施例では、光学センサ30は、搬送ベルト7の移動方向と交差(略直交)する方向(以下「スラスト方向」という。)において、搬送ベルト7の両端部近傍にそれぞれ1個ずつ設けられている。光学センサ30は、上記のキャリブレーション機構の実行時に、搬送ベルト7上に形成された試験画像を検知する。光学センサ30の構造は、図8を参照して説明した従来のものと同様である。
[転写体清掃工程]
次に、本実施例において最も特徴的な、転写体清掃工程(ベルトクリーニング動作)について説明する。
本実施例の画像形成装置100は、転写材1にトナー像を転写して出力する通常のプリント用の画像形成時、キャリブレーション機構の実行時(つまり、試験画像形成時)以外のタイミングで以下に説明するベルトクリーニング動作が行われるベルトクリーニングモードを有する。ベルトクリーニング動作では、搬送ベルト7の清掃用の所定のトナー像(以下「クリーニング用トナー像」という。)T(図3)を搬送ベルト7上に転写し、汚れをクリーニング用トナー像Tのトナーと共に感光ドラム9へ逆転写して回収する。
本実施例におけるベルトクリーニング動作の基本動作は次の通りである。
(1)通常のプリント用の画像形成時と同様に、感光ドラム9、現像器12、搬送ベルト7を駆動し、帯電、現像、転写の各バイアスも印加する。
(2)各像形成ステーションPにて、通常のプリント用の画像形成時と同様のプロセスにて、感光ドラム9上にクリーニング用トナー像Tを形成する。
(3)転写バイアス電源23より出力される、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)である+1500Vの転写バイアスを、転写ローラ13に印加する。転写バイアス電源23によりトナーの正規の帯電極性とは逆極性のバイアスが出力されることで、所定の極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーを感光ドラム9から搬送ベルト7方向に向かわせる方向の電界が転写部Nに形成される。これにより、クリーニング用トナー像Tを搬送ベルト7上に直接転写する。
(4)クリーニング用トナー像Tの転写開始から搬送ベルト7の1周後に、搬送ベルト7上のトナーを、紙粉や汚れ物質などの異物と同時に感光ドラム9に逆転写する。
(5)感光ドラム9上に戻されたトナー、異物をクリーナ14により回収する。
図3は、クリーニング用トナー像Tが転写された搬送ベルト7を展開して示す。上記(2)の工程において、クリーニング用トナー像Tは、スラスト方向において、少なくとも光学センサ30が対向する搬送ベルト7上の領域、即ち、搬送ベルト7上の光学センサ30の検知領域dに接触する領域を含む感光ドラム9上の領域に形成することが好ましい。これにより、光学センサ30の検知精度を良好に維持することができる。又、搬送ベルト7の画像形成に寄与する領域の広範囲領域をクリーニングできるように、クリーニング用トナー像Tのスラスト方向における幅tは、試験画像よりは広いことが好ましく、画像形成領域(同方向における装置の最大画像形成幅)g以上であることがより好ましい。当然、スラスト方向におけるクリーニング用トナー像Tの幅tは、同方向における搬送ベルト7の幅w以下である。
又、搬送ベルト7の移動方向におけるクリーニング用トナー像の長さlは、1回又は複数回のベルトクリーニング動作によって、搬送ベルト7の移動方向の全域にクリーニング用トナー像Tが接触するように設定することが好ましい。
本実施例では、クリーニング用トナー像Tのスラスト方向の幅tは、同方向における画像形成の最大幅gと同じ210mmとした。一方、クリーニング用トナー像Tの、搬送ベルト7の周方向(移動方向)の長さlは180mmとした。又、クリーニング用トナー像Tは、ベタ画像(最大濃度レベルの画像)とした。
又、本実施例では、4つの像形成ステーションPのトナーをバランス良く、略均一に消費するために、このクリーニング用トナー像Tのサイズは、4色全て同じとした。又、本実施例では、各色のクリーニング用トナー像Tが搬送ベルト7上において重ならないように、各像形成ステーションPにおけるクリーニング用トナー像Tの形成タイミングを調整した。これにより、搬送ベルト7の周方向の、より広範囲にクリーニング用トナー像Tを形成できる。
本実施例における搬送ベルト7の周長は720mmであり、上記の4色分のクリーニング用トナー像T(図3中Tm、Tc、Ty、Tk)を重ねずに並べることで、1回のベルトクリーニング動作において、ちょうど搬送ベルト1周分のトナー像を搬送ベルト7上に形成することができる。つまり、像形成ステーションPの数をn、搬送ベルト7の周長をLとした場合、本実施例では、搬送ベルト7上に形成する各色のクリーニング用トナー像の周方向の長さlは、L/nとした。
尚、後述のように、各色のクリーニング用トナー像Tを搬送ベルト7上で重ねないようにすることは、トナーを有効に利用することができる点で好ましい。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば1回のベルトクリーニング動作で確実に搬送ベルト7の周方向において1周分のクリーニング用トナー像Tを形成するなどのために、各色のクリーニング用トナー像の周方向の長さlをL/n以上として、搬送ベルト7の周方向において、隣接する異なる色のクリーニング用トナー像Tの先端と後端の所定範囲を重ねるようにしてもよい。
又、上記(4)〜(5)の工程においては、本実施例では、次のようにして搬送ベルト7上のトナー、異物を感光ドラム9に逆転写して回収する。感光ドラム9の帯電電位は、−500Vに保たれる。そして、搬送ベルト7の移動方向において最上流の像形成ステーションPM、及び3番目の像形成ステーションPYでは、転写ローラ13に、転写バイアス電源23から出力された、トナーの正規の帯電極性(本実施例では負極性)と同極性である−2500Vのバイアス(逆バイアス)が印加される。一方、搬送ベルト7の移動方向において上流から2番目、4番目の像形成ステーションPC、PKでは、転写ローラ13に、転写バイアス電源23から出力された、トナーの正規の帯電極性(本実施例では負極性)とは逆極性である+1500Vのバイアスが印加される。
これにより、1番目、3番目の像形成ステーションPM、PYでは、転写バイアス電源23によりトナーの正規の帯電極性と同極性のバイアスが出力されることで、マイナス極性に帯電した多くのトナーや異物を搬送ベルト7から感光ドラム9に向かわせる方向の電界が転写部Nに形成され、このトナーや異物が感光ドラム9に転写されて回収される。逆に、2番目、4番目のステーションPC、PKでは、転写バイアス電源によりトナーの正規の帯電極性とは逆極性のバイアスが出力されることで、プラス極性に帯電したトナーや異物を搬送ベルト7から感光ドラム9に向かわせる方向の電界が転写部Nに形成され、このトナーや異物が感光ドラム9に転写されて回収される。
このように、本実施例では、搬送ベルト7に転写されたクリーニング用トナー像Tを感光ドラム1に逆転写させる時に、第1、第3の像形成ステーションPM、PYの感光ドラム9と搬送ベルト7との間に形成される電界と、第2、第4の像形成ステーションPC、PKの感光ドラム9と搬送ベルト7との間に形成される電界の向きが逆とされる。
上述のようなバイアスの印加方法によって、効率的に搬送ベルト7上のトナー、異物を感光ドラム9に逆転写させて回収することができる。しかし、上記(4)の工程において各像形成ステーションPの転写ローラ13に印加されるバイアスの極性は、搬送ベルト7の移動方向に沿って交互に逆極性とされる態様に限定されるものではない。所望により、全ての像形成ステーションPにおいて、転写ローラ13に同極性、特に、トナーの正規の帯電極性とは逆極性のバイアスが印加されるようにしてもよい。又、転写ローラ13に同極性のバイアスが印加される像形成ステーションPが2個以上連続して配置されていてもよい。但し、異なる極性のトナー、異物を効果的に搬送ベルト7から感光ドラム9へと逆転写させられるように、転写ローラ13に印加されるバイアスの極性が異なる像形成ステーションPが、複数の像形成ステーションのうち少なくとも1つ含まれていることが好ましい。又、上記(4)の工程のために、搬送ベルト7を複数回周回させ、1個の像形成ステーションPにおける転写ローラ13に印加されるバイアスの極性を、複数回周回させる間に変更する(例えば、2周する間に交互に極性を切り替える)こともできる。
次に、以上のようなベルトクリーニング動作を実行することにより、搬送ベルト7上の紙粉等の汚れが除去される仕組みを説明する。
先ず、搬送ベルト7上にクリーニング用トナー像(ベタ画像)Tを転写する際に、転写部Nの圧力で搬送ベルト7上に付着している紙粉や汚れ物質などの異物とトナーとが密着して混ざり合う状態となる。特に、本実施例では、4箇所の像形成ステーションPがあるため、搬送ベルト7の異物は、回収までに4箇所の転写部Nを通過し、そのたびに加圧による混合が繰り返される。
又、紙粉の成分の一つである炭酸カルシウムは、プラス極性に帯電しやすい傾向があり、マイナス極性のトナー粒子とはお互いを引き付ける状態となっている。このような混合状態において、搬送ベルトの1周後にトナーを感光ドラム9へ逆転写する際には、再度、圧力が加わり、上記の混合が促進される。その上で、トナーに混ざり合った紙粉や汚れが、トナーと共に感光ドラム9上に回収され、搬送ベルト7上から除去される。
以上のようなベルトクリーニング動作の実施タイミングは任意であるが、本実施例では、現像器12からの劣化トナー吐き出し動作のタイミングに合わせ、通常のプリント用の画像形成動作を200回行う毎に1回行うこととした。
つまり、像形成ステーションP内において、現像器12が備える現像ローラ12a上に供給されたトナーが長期間現像されないまま留まると、やがてトナーの劣化が起こることがある。そして、トナーの劣化が起こると、その帯電特性が変化し、正確な画像形成が行えなくなることがある。このような問題は、特に低印字率の画像形成を繰り返した場合に顕著に発生しやすい。そこで、従来、所定の期間(例えば、所定の画像形成回数)ごとに現像ローラ上のトナーを強制的に感光ドラム上に移し、そのトナーを感光ドラム上のトナーを除去するクリーナで回収するという、現像剤吐き出し機構を備えた画像形成装置がある。現像剤吐き出し機構によれば、長期間現像ローラ上に残留したトナーを排除し、現像ローラ上のトナーをリフレッシュすることができる。
本実施例の画像形成装置100においても、上記の如き現像剤吐き出し機構を備えている。そして、斯かる現像剤吐き出し動作のタイミングに合わせてベルトクリーニング動作を行う。即ち、現像剤吐き出し動作において感光ドラム9上に供給されるトナー像の全部又は一部を、クリーニング用トナー像Tを形成するために使用する。これにより、現像器12から吐き出される、本来なら捨ててしまうトナー(劣化したトナーを含む)を、搬送ベルト7のクリーニング用として積極的に活用することができる。従って、正常なトナーをベルトクリーニング動作のために消費する必要が減り、現像器12内のトナーを有効に使用することができる。
本実施例では、以上のような基本動作のベルトクリーニング動作時に、以下詳しく説明するように感光体ドラム9の周速と搬送ベルト7の周速との間に周速差を設けることにより、搬送ベルト7上の汚れを除去性能を更に向上させる。
ここで、従来、通常のプリント用の画像形成時において、感光ドラム9の周速と、搬送ベルト7の周速との間に周速差を設けることがある。もちろん、周速差を設けない場合もあり、周速差を0%と設定をする場合もある。本実施例では、通常のプリント用の画像形成時及び試験画像の形成時における感光ドラム9の周速と搬送ベルト7の周速との周速差は0%である。この周速差を設ける場合、一般に周速差は2〜3%とされる。
尚、周速差は、感光ドラムの周速V1に対して、搬送ベルトの周速V2との差分を%表示した値、つまり|V2−V1|/V1*100で求められる値と定義する。
本実施例において、ベルトクリーニング動作時に感光ドラム9と搬送ベルト7との間に設けられる周速差は、上記同様の2〜3%であっても構わないが、好ましくは更に大きな周速差、つまり10〜400%の周速差を設ける。これより周速差が小さいと周速差を設けることによる効果は弱くなる。一方、これより周速差が大きいと、過度の摺擦により感光ドラム表面にダメージを与えることがある。より好ましくは、50%〜200%の周速差を設ける。このように、本実施例では、ベルトクリーニング動作時に感光ドラム9と搬送ベルト7との間に設けられる周速差は、少なくとも通常のプリント用の画像形成時において搬送ベルト7上の転写材1へ感光ドラム9上のトナーを転写する時の感光ドラム9と搬送ベルト7との間の周速差よりも大きくする。
つまり、ベルトクリーニング工程において、少なくとも感光ドラム9上に形成されたクリーニング用トナー像Tを搬送ベルト7に転写する時(即ち、上記(3)の工程)の感光ドラム9の周速と搬送ベルト7の周速との周速差を、通常のプリント用の画像形成時において搬送ベルト7上の転写材1へ感光ドラム9上のトナーを転写する時の感光ドラム9の周速と搬送ベルト7の周速との周速差とは異ならせる。更に、搬送ベルト7上のクリーニング用トナー像Tを感光ドラム9上へ逆転写する時(即ち、上記(4)の工程)の感光ドラム9の周速と搬送ベルト7の周速との周速差を、通常のプリント用の画像形成時において搬送ベルト7上の転写材1へ感光ドラム9上のトナーを転写する時の感光ドラム9の周速と搬送ベルト7の周速との周速差とは異ならせることができる。本実施例では、ベルトクリーニング動作時には、上記(1)〜(5)の工程の間、全ての像形成ステーションPにおいて、感光ドラム9と搬送ベルト7との間に周速差を設ける。
具体的には、本実施例では、ベルトクリーニング動作時には、搬送ベルト7を180mm/sの周速で駆動するのに対し、感光ドラム9がその半分の90mm/sの周速(周速差100%)で駆動する。ベルトクリーニング動作においては、形成したトナー像のずれなどを気にする必要が無いため、このような周速差を設けられる。
これにより、ベルトクリーニング動作にて、クリーニング用トナー像Tを搬送ベルト7上へ転写する時、後続の下流側の像形成ステーションPの転写部Nを通過する時、及び搬送ベルト7から感光ドラム9へクリーニング用トナー像Tを逆転写する時の各々で、転写部Nでの加圧力と摺擦応力がトナーと異物の混合層に働く。その結果、トナーと異物との両者がより混合しやすくなる。このことに加え、擦り応力が働く中、トナー層自らが研磨剤のように働くことで、搬送ベルト7上に固着しかけた紙粉や汚れ物質などの異物を剥ぎ取ることができる。特に、クリーニング用トナー像Tを搬送ベルト7上へ転写する時には、トナーを搬送ベルト7上へ補給しながら、異物と混合するので、異物と混ざりやすい。
以上、換言すれば、本実施例の画像形成装置100は、搬送ベルト7上の転写材1へ感光ドラム9上のトナーを転写する第一のモードと、感光ドラム9上のトナーを搬送ベルト7上に転写する第二のモードと、を有しており、感光ドラム9の周速と搬送ベルト7の周速との周速差が、第一のモードと第二のモードでは異なる。又、画像形成装置100は、搬送ベルト7上のトナーを感光ドラム9上へ逆転写する第三のモードを有しており、第三のモードにおける逆転写時の感光ドラム9の周速と搬送ベルト7の周速との周速差を、第一のモードにおける感光ドラム9上から搬送ベルト7上の転写材1へトナーを転写する時の周速差と異ならせることができる。
図4は、本実施例の概略制御態様を示す。画像形成装置100の動作は、装置本体に設けられたコントローラ部50が統括的に制御する。コントローラ部50は、演算部、記憶部、制御部を備えており、記憶部に記憶されたプログラムに従って通常の画像形成動作、キャリブレーション機構の動作等を制御すると共に、上述のようなベルトクリーニング動作を制御する。コントローラ部50は、搬送ベルト7上の位置を検知する図示しないベルト位置検知手段の検知結果に応じて、各像形成ステーションPクリーニング用トナー像の形成タイミングを制御する。又、本実施例では、コントローラ部50は、ベルトクリーニング動作の工程に応じて転写バイアス電源23の出力バイアスの値、極性を変更するバイアス変更手段としての機能を備えている。
又、コントローラ部50は、図4に示すように感光ドラム9の駆動手段としての感光体駆動モータ51、搬送ベルト7の駆動手段としてのベルト駆動モータ52をそれぞれ制御して、通常のプリント用の画像形成時(更にはキャリブレーション機構の実行時)と、ベルトクリーニング動作時とで感光ドラム9と搬送ベルト7との周速差を変更する周速差変更手段としての機能を有する。
本実施例による効果を確認した。気温15°、湿度10%RHの低温低湿度環境にて、普通紙(ゼロックス4024 75g/m2紙)を連続して通紙し、200枚に1回、ベルトクリーニング動作を行った。ここで、比較の目的で、本実施例に従ってクリーニング動作時に感光ドラム9と搬送ベルト7との間に周速差を設けた場合(実施例1)と、その周速差を設けない場合(比較例1)との両方について試験を行った。そして、通紙を続けた場合の、搬送ベルト7の表面の正反射光量の推移を観察した。更に、比較の目的で、ベルトクリーニング動作を行わない従来の画像形成装置(従来例)についても同様の通紙試験を行った。従来例の画像形成装置は、ベルトクリーニング動作を行わないことを除いて本実施例の画像形成装置と実質的に同じであった。結果を図2に示す。
尚、図2の横軸は通紙枚数であり、縦軸は反射光量である。反射光量は、試験画像を検知するために設けられている光学センサ30(つまり、受光素子であるフォトダイオード302)の出力電圧値として示した。ここでは、この出力電圧の数値が大きいほど正反射光量が多いことを表している。従来例における通紙枚数と反射光量の関係の推移は破線で示し、比較例1における推移は一点鎖線にて示し、本実施例における推移は実線にて示した。
図2から分かるように、初期状態では、実施例1、比較例1、従来例のいずれにおいても出力電圧値は共に2.2Vであるが、耐久と共に搬送ベルト7の汚れで正反射が減少してくる。そして、従来例では、反射光量(電圧値)が0.6Vまで低下し、20000枚通紙した時点以降において、濃度制御や色ずれ制御に問題が生じた。一方、比較例1では、反射光量が1.5V程度で安定していることが分かる。更に、実施例1では、50000枚通紙後の正反射光量(電圧値)は1.6Vであり、比較例1を更に上回る汚れ防止効果を確認することができた。実施例1では、50000枚通紙した時点でも、濃度制御や色ずれ制御に全く問題が見られなかった。
以上説明したように、本実施例によれば、ベルトクリーニング動作時にトナー像を搬送ベルト7上に直接転写し、汚れをトナー像と共に感光ドラム9へ逆転写して回収する。又、ベルトクリーニング動作時に、少なくともトナー像を搬送ベルト7上に転写する時、更にはこのトナー像を感光ドラム9へ逆転写する時の感光ドラム9の周速と搬送ベルト7の周速との周速差を、通常のプリント用の画像形成時の感光ドラム9の周速と搬送ベルト7の周速との周速差と異ならせる。これにより、特別な部材の追加を伴うことなく、紙粉等の汚れを搬送ベルト7上から除去することができる。従って、搬送ベルト7の汚れに起因する濃度制御、色ずれ調整の精度不良や、転写時の斑や、転写材1のしわの発生を防止することができる。又、搬送ベルト7のために専用の廃トナー容器を設ける必要はなく、この廃トナー容器のための装置内のスペース、又この廃トナー容器の交換にかかる手間などは不要である。又、本実施例では、ベルトクリーニング動作時に形成するクリーニング用トナー像Tを、搬送ベルト7上で極力重ねないようにすることで、より少ないトナー量で、より広い搬送ベルト7上の領域にクリーニング用トナー像Tを形成することができる。これにより、トナーを有効に使用して、搬送ベルト7上の汚れの除去を行うことができる。
尚、上記本実施例では、1回のベルトクリーニング動作で、搬送ベルト7の1周分のクリーニング用トナー像Tを形成したが、本発明はこれに限定されるものではない。つまり、1回のベルトクリーニング動作で搬送ベルト7の全周分のクリーニング用トナー像Tを形成せずに、定期的に行なわれる数回のベルトクリーニング動作に分けて、搬送ベルト7の1周分のクリーニング用トナー像Tを形成してもよい。例えば、複数回のベルトクリーニング動作において、毎回場所を変えた搬送ベルト7上の位置に、クリーニング用トナー像Tを形成することができる。又は、複数回のベルトクリーニング動作において、搬送ベルト7上のランダムな位置にトナー像を形成することで、最終的に搬送ベルト7の全周分のクリーニングを行なうようにしても良い。又、本実施例では、1回のベルトクリーニング動作で全ての像形成ステーションPにより全色のクリーニング用トナー像Tを形成したが、本発明はこの態様に限定されるものではない。例えば、装置が備える複数の像形成ステーションのうち、1回のベルトクリーニング動作につき1色又はいずれか一部の複数色のクリーニング用トナー像Tのみを形成し、複数回のベルトクリーニング動作で全色のクリーニング用トナー像を形成するようにしてもよい。又、いずれかの色のクリーニング用トナー像Tを形成しないようにしてもよい。いずれかの色のクリーニング用トナー像が、1回又は複数回のベルトクリーニング動作によって、搬送ベルト7の移動方向の全域にクリーニング用トナー像が接触するようにすればよい。
又、上記本実施例では、搬送ベルト7上に形成するクリーニング用トナー像Tを、各色間で重ならないよう形成したが、逆に、複数色のトナー像を積極的に重ねるよう形成しても良い。この場合、搬送ベルト7上に形成されるクリーニング用トナー像Tの単位面積あたりのトナー量が増すため、汚れをトナー層に取り込む効果が高くなる。そのため、ベルトクリーニング動作1回あたりの汚れ除去能力が高くなる効果がある。特に、スラスト方向において、搬送手段等の転写材1に接触する部材が配置されている位置など、装置の構成上(局所的に)汚れの発生しやすい場所がある場合がある。例えば、スラスト方向において、給紙ローラ位置に対応する搬送ベルト7上の位置などは紙粉が発生しやすい。このような場合、ベルトクリーニング動作時に、その部分については複数色のトナー像を重ねて形成することで、クリーニング効果を集中させることができる。
尚、本実施例では感光ドラム9の周速よりも搬送ベルト7の周速を速くすることで感光ドラム9と搬送ベルト7との間に周速差を設けたが、本実施例とは逆に、搬送ベルト7の周速を感光ドラム9の周速より遅くすることで、感光ドラム9と搬送ベルト7との間に周速差を設けても良い。但し、本実施例のように、搬送ベルト7を感光ドラム9よりも速く駆動する方が、少ないトナー量で広範囲の搬送ベルト7の表面をクリーニングすることができる点、又搬送ベルト7のクリーニングに要する時間を短縮できる点で有利である。
実施例2
次に、本発明の更に他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本構成は実施例1のものと同様である。従って、実施例1の画像形成装置と実質的に同一又は相当する機能を有する要素には同一の符号を付して詳しい説明は省略する。本実施例は、ベルトクリーニング動作時に、実施例1と同様に感光ドラム9と搬送ベルト7との間に周速差を設ける一方、感光ドラム9上に形成されたクリーニング用トナー像Tを搬送ベルト7上には転写しない点で実施例1と異なっている。このベルトクリーニング動作時の感光ドラム9の周速と搬送ベルト7の周速との周速差は、実施例1と同様に、通常のプリント用の画像形成時の感光ドラム9の周速と搬送ベルト7の周速との周速差と異ならせる。
図5は本実施例に従ってベルトクリーニング動作を実行中である、1つの像形成ステーションPの様子を示す。本実施例におけるベルトクリーニング動作の手順は次の通りである。
(1)搬送ベルト7を180mm/sの周速で駆動し、一方、感光ドラム9を90mm/sの周速で駆動する。
(2)感光ドラム9と搬送ベルト7との間に周速差を設けた状態で、実施例1と同様にして、感光ドラム9上にクリーニング用トナー像Tを形成する。この時、転写ローラ13に印加するバイアス(転写バイアス)はOFF(0V)とされるか、又は転写ローラ13にトナーの正規の帯電極性(本実施例では負極性)と同極性である−2000Vのバイアスが印加される。即ち、感光ドラム9上のトナーに、搬送ベルト7に向かう方向の電界が作用しない状態とされる(つまり、搬送ベルト7と感光ドラム9の間には、通常のプリント用の画像形成時において搬送ベルト7上の転写材1へ感光ドラム9上のトナーを転写する時と逆向きの電界が形成される。)。
(3)この状態で、転写部Nに、感光ドラム9上に形成されたクリーニング用トナー像Tを通過させる。これにより、感光ドラム9上のクリーニング用トナー像Tは、搬送ベルト7上にほとんど転写されずに、搬送ベルト7との間に周速差を持った状態で、転写部Nを通過する。そして、クリーニング用トナー像Tが転写部Nを通過する際に、トナーが研磨剤のように搬送ベルト7上の異物と擦れ合い、搬送ベルト7上の異物が擦り取られる。
(4)転写部Nを通過した、トナー、及び搬送ベルト7から擦り取られた異物を、感光ドラム9のクリーナ14により回収する。
尚、搬送ベルト7上に微少量移動したトナーや、擦り取り切れなかった異物などの付着物をクリーニングするために、実施例1における、搬送ベルト7から感光ドラム9へのトナーの回収工程と同様にして搬送ベルト7上からこれらの付着物を回収する動作を続けて行っても良い。
即ち、本実施例では、画像形成装置100は、搬送ベルト7上の転写材1へ感光ドラム9上のトナーを転写する第一のモードと、感光ドラム9上のトナーを転写材1または搬送ベルト7へ転写せずに感光ドラム9と搬送ベルト7の間を通過させる第二のモードと、を有しており、感光ドラム9の周速と搬送ベルト7の周速との周速差が、第一のモードと第二のモードでは異なる。
本実施例によれば、感光ドラム9の表面に連れまわるトナー層と、搬送ベルト7上の汚れ等の異物の間に周速差を設けられるため、異物を剥ぎ取る摺擦応力がより強くなる。これにより、特に、搬送ベルト7上に強く固着しかけた異物を除去する能力が優れている。又、搬送ベルト7上に多量のトナーを移動させないことで、搬送ベルト7上に移動したトナーを回収する工程での負荷を軽減でき、或いは、工程自体を省略することが可能となる。
又、本実施例のベルトクリーニング動作で、転写ローラ13にトナーの正規の帯電極性と同極性である負極性のバイアスを印加することにより、次のような効果が付随する。
つまり、クリーニング用トナー像Tが転写部Nを通過する際、又はその直前において、負極性のバイアスが転写ローラ13に印加されることにより、トナーに付着している帯電制御剤や、流動性付与剤などの外部添加剤のうち、トナーの帯電極性と逆極性のものが搬送ベルト7上に多く移動する。その結果、転写部Nにおいては、クリーニング用トナー像Tと搬送ベルト7上の異物との間にこれら添加剤が介在する状態となる。添加剤としては、シリカや金属酸化物など硬い物質が用いられる。これら物質が介在することで、クリーニング時に搬送ベルト7上の異物を研磨して擦り取り除去する効果がより高くなる。
更に、転写部Nを通過したクリーニング用トナー像Tが感光ドラム9に回収される際にも、次のような効果が得られる。つまり、通常のプリント用の画像形成時には、トナーの正規の帯電極性とは反対極性である正極性の転写バイアスが印加されることにより、トナー粒子単体は転写材1へ転写される。一方、トナーの外部添加剤は、感光ドラム9に残る割合がより高い。その状態で感光ドラム9のクリーニングを繰り返すことで、感光ドラム9のクリーナ14が備えるクリーニングブレード14aに外部添加剤が付着して成長し、やがてスジ状のクリーニング不良が発生する場合がある。
本実施例のベルトクリーニング動作において、転写ローラ13にトナーの帯電極性と同極性である負極性のバイアスが印加されると、転写部Nを通過した後の感光ドラム9上には、外部添加剤が搬送ベルト7上に移動させられることで外部添加剤の量が減らされた多量のトナー像を形成される。このような状態にて、クリーナ14による感光ドラム9上からのトナーの回収過程を行うと、一度に、添加剤量の少ない多量のトナーがクリーニングブレード14aを通過する。そして、そのトナーの流れの勢いで、クリーニングブレード14aに付着していた添加剤が除去される。その結果、感光ドラム9のクリーニング不良も防止することができる。
本実施例の制御態様は、実施例1と概略同様である。本実施例では、コントローラ部50が兼ねるバイアス変更手段は、ベルトクリーニング動作時に、転写バイアス電源23を制御して、バイアス印加をOFF、つまり接地状態とすることができる。
尚、本実施例において感光ドラム9上に形成するクリーニング用トナー像Tの領域は、実施例1で説明したのと同様とすることができる。
より具体的には、本実施例では、クリーニング用トナー像Tのスラスト方向の幅tは、実施例1と同様に、画像形成の最大幅と同じ210mmとした。又、各像形成ステーションPによる搬送ベルト上のクリーニング領域が重ならないようにするため、実施例1と同様に、各像形成ステーションPの数をn、搬送ベルト7の周長をLとした場合、各像形成ステーションPがトナー像を通過させクリーニングを行う搬送ベルト上の領域長さをL/nとして、各像形成ステーションPにおける感光ドラム9上へのクリーニング用トナー像Tの形成タイミングの調整を行った。
このようにすることで、本実施例では、1回のベルトクリーニング動作で、搬送ベルト7の1周分のクリーニングを行うことができる。但し、前述したように、定期的に行なわれる数回のベルトクリーニング動作に分けて、例えば毎回場所を変えた位置のクリーニングを行ったり、又は搬送ベルト7上のランダムな位置をクリーニングすることで、最終的に搬送ベルト全周分のクリーニングを行なうようにしても良い。又、本実施例では搬送ベルト7上のクリーニング領域を、各像形成ステーションP間で重ならないようにしたが、前述のように、逆に複数の像形成ステーションP間で搬送ベルト7上のクリーニング領域が重なるようにして、1回あたりのクリーニング効果を集中させ、高めることもできる。
又、実施例1と同様に、本実施例では感光ドラム9の周速よりも搬送ベルト7の周速を速くすることで感光ドラム9と搬送ベルト7との間に周速差を設けたが、本実施例とは逆に、搬送ベルト7の周速を感光ドラム9の周速より遅くすることで、感光ドラム9と搬送ベルト7との間に周速差を設けても良い。
実施例3
次に、本発明の更に他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本構成は実施例1のものと同様である。従って、実施例1の画像形成装置と実質的に同一又は相当する機能を有する要素には同一の符号を付して詳しい説明は省略する。本実施例では、ベルトクリーニング動作において、搬送ベルト7上にクリーニング用トナー像Tを転写した後、このクリーニング用トナー像Tを感光ドラム9上に逆転写して回収するまでの間に、搬送ベルト7を1回以上空回転させる点で実施例1とは異なる。
具体的には、本実施例におけるベルトクリーニング動作の手順は次の通りである。
(1)実施例1と同様にして、感光ドラム9、現像器12、搬送ベルト7を駆動し、帯電、現像、転写の各バイアスも印加する。
(2)実施例1と同様にして、各像形成ステーションPにて、通常の画像形成プロセスと同様に、感光ドラム9上にクリーニング用トナー像Tを形成する。
(3)実施例1と同様にして、転写バイアス電源23から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)である+1500Vの転写バイアスを転写ローラ13に印加する。
(4)次いで、本実施例では、搬送ベルト7を1回転以上(本実施例では1回転)空回転させる動作が追加される。搬送ベルト7の空回転周回では、転写バイアス電源23から転写ローラ13に印加されるバイアスは、トナーの正規の帯電極性と逆極性である+1500Vに維持される。即ち、転写部Nにおいて搬送ベルト7上のトナーには、搬送ベルト7に向かう方向の電界が作用した状態のままとされる(つまり、搬送ベルト7と感光ドラム9の間には、通常のプリント用の画像形成時において搬送ベルト7上の転写材1へ感光ドラム9上のトナーを転写する時と同じ向きの電界が形成される。)。
(5)空回転周回の終了後には、実施例1と同様にして、搬送ベルト7上のトナーを紙粉や汚れ物質などの異物と同時に感光体9に逆転写する。
(6)感光ドラム9上に戻されたトナー、異物をクリーナにより回収する。
尚、本実施例においても、実施例1と同様に、ベルトクリーニング動作時に、少なくともトナー像を搬送ベルト7上に転写する時、更にはこのトナー像を感光ドラム9へ逆転写する時の感光ドラム9の周速と搬送ベルト7の周速との周速差を、通常のプリント用の画像形成時の感光ドラム9の周速と搬送ベルト7の周速との周速差と異ならせる。更に、本実施例では、搬送ベルト7の空回転時にも、感光ドラム9と搬送ベルト7との間の周速差を、トナー像を搬送ベルト7上に転写する時或いはトナー像を感光ドラム9へ逆転写する時と同様に、通常のプリント用の画像形成時の感光ドラム9の周速と搬送ベルト7の周速との周速差と異ならせることができる。
以上、換言すれば、本実施例の画像形成装置100は、搬送ベルト7上の転写材1へ感光ドラム9上のトナーを転写する第一のモードと、感光ドラム9上のトナーを搬送ベルト7上に転写する第二のモードと、搬送ベルト7上のトナーを感光ドラム9上へ逆転写する第三のモードと、を有しており、第三のモードの前に、搬送ベルト7上に転写されたトナーが搬送ベルト7と感光ドラム9の間を通過する。そして、感光ドラム9の周速と搬送ベルト7の周速との周速差が、第一のモードと第二のモードでは異なっており、更に、感光ドラム9の周速と搬送ベルト7の周速との周速差を、搬送ベルト7上に転写されたトナーが搬送ベルト7と感光ドラム9の間を通過する時の周速差と、第一のモードにおける周速差とで異ならせることができる。
このような動作により、上記(4)工程において、マイナス極性のトナー像を搬送ベルト7上に保持したまま、各像形成ステーションPの転写部Nを通過させることができる。その分、搬送ベルト7上のトナー層は、転写部Nにおける加圧力と摺擦力をより多くの回数受けることができる。つまり、トナーと紙粉等の汚れとの混合が進むことになり、搬送ベルト7上のクリーニングの効果を更に高めることができる。又、クリーニング用トナー像Tが転写部Nを通過するときに感光ドラム9と搬送ベルト7との間に周速差を設けることで、搬送ベルト7上の紙粉等の汚れをより効果的に除去することができる。
実施例4
次に、本発明の更に他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本構成は実施例1のものと同様である。従って、実施例1の画像形成装置と実質的に同一又は相当する機能を有する要素には同一の符号を付して詳しい説明は省略する。本実施例では、ベルトクリーニング動作において、4個の像形成ステーションPのうち、搬送ベルト7の移動方向において上流側の第1、第2の像形成ステーションPM、PCのみ、搬送ベルト7との感光ドラム9との間に周速差を設ける。
より具体的には、本実施例では、搬送ベルト7を180mm/sの周速で駆動するのに対し、第1、第2の像形成ステーションPM、PCでは感光ドラム9をその半分の90mm/sで駆動する。一方、第1、第2の像形成ステーションPM、PCより下流側に位置する第3、第4の像形成ステーションPY、PKでは、感光ドラム9を搬送ベルト7の周速と同じ180mm/sで駆動する。
実施例1で説明したように、全ての像形成ステーションPにおいて感光ドラム9と搬送ベルト7との間に周速差を設ける方法では、汚れをトナー層の中に取り込む効果が特に優れている。しかし、実施例1の方法では、搬送ベルト7に対して感光ドラム9の回転速度を遅くしているため、単位時間あたりに転写部Nを通過する感光ドラム9の表面積が減少する。このことから、まれに搬送ベルト7上のトナーを感光ドラム9上へ十分回収しきれない場合が発生することが想定される。
そこで、本実施例では、第1、第2の像形成ステーションPM、PCについては、感光ドラム9の周速を90mm/sとし、搬送ベルト7上のクリーニング用トナー像Tの感光ドラム9への回収時における搬送ベルト7との周速差を維持して、少しでも汚れとトナー層の混合を促進する。
一方、第3、第4の像形成ステーションPY、PKについては、搬送ベルト7上のクリーニング用トナー像Tの感光ドラム9への回収時における搬送ベルト7上のクリーニング用トナー像Tの回収能力を優先させ、感光ドラム9の周速をより速い180mm/s(搬送ベルト7の周速と同じ)とする。
以上、本実施例によれば、実施例1と同様に高い搬送ベルト7上の汚れ除去能力を維持しつつ、しかも搬送ベルト7上に直接転写したクリーニング用トナー像Tの回収能力を高めることができる。
尚、本実施例の変形例として、ベルトクリーニング動作におけるトナー像の転写時と、トナー像の回収時とで、1個の像形成ステーションPにおける感光ドラム9及び/又は搬送ベルト7の駆動速度を切り替えて、感光ドラム9と搬送ベルト7との周速差を変更することができる。例えば、ベルトクリーニング動作において搬送ベルト7の周速を180mm/sで一定とするのに対し、搬送ベルト7へのクリーニング用トナー像Tの転写時には、各像形成ステーションPの感光ドラム9の周速を90mm/sとして、感光ドラム9と搬送ベルト周速差の大きい状態で行う。一方、搬送ベルト7から感光ドラム9にクリーニング用トナー像Tを転写して回収する時には、感光ドラム9の周速を180mm/sに切り替え、回収能力の高い状態で行う。斯かる構成とすることによっても、上記同様の効果が期待できる。
又、上述では、感光ドラム1と搬送ベルト7との周速差を変更する態様を、一方で周速差を設け、他方では周速差を設けないものとして説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、一方においてより大きい第1の周速差を設け、他方において第1の周速差よりも小さい第2の周速差を設けるようにしてもよい。
実施例5
本実施例の画像形成装置の基本構成は実施例1〜4と同様である。本実施例では、ベルトクリーニング動作時に形成するクリーニング用トナー像Tの他の実施例について説明する。本実施例では、クリーニング用トナー像Tを、スラスト方向において、濃度制御時及び色ずれ制御時に光学センサ30が検知する領域又はその付近に限定する。
図6は本実施例においてベルトクリーニング動作時にクリーニング用トナー像Tを形成する搬送ベルト7上の領域を示したものである(実施例2のようにトナーを転写しない場合には、感光ドラム9上のクリーニング用トナー像が擦れる搬送ベルト7上の領域である)。
本実施例では、濃度制御時や色ずれ制御時に試験画像を検知するための光学センサ30を、画像形成領域内における両端部付近に1つずつ設けている。各々の光学センサ30の検知領域dを図6中に示す。これに対し、クリーニング用トナー像Tを形成する領域tは、図示のとおり光学センサ30の検知領域dを含むよりやや広い領域とした。より具体的には、本実施例では実際の光学センサ30の検知領域dは、スラスト方向において幅2mmである。これに対し、スラスト方向におけるクリーニング用トナー像Tの幅tは10mmとした。これにより、確実に異物が検知領域dに侵入しないよう余裕を持たせている。
このように、本実施例では、クリーニング用トナー像Tを光学センサ30の検知領域d付近に集中させる。これにより、少ないトナー量でありながら、最も搬送ベルト7の汚れの影響を受けて問題が発生しやすい、搬送ベルト7の表面の光学センサ30の検知領域dを、集中してクリーニングすることができる。このため、これまでの実施例同様に問題の発生を抑えながらも、ベルトクリーニング動作で使用するトナーの消費量を極力抑制する効果が得られる。尚、搬送ベルト7の移動方向におけるクリーニング用トナー像Tの長さlは、上記各実施例と同じである。
実施例6
本実施例は、実施例5と同様に、ベルトクリーニング動作時に形成されるクリーニング用トナー像Tを、スラスト方向において光学センサ30の検知領域dへ集中させる実施例の変形例である。本実施例では、スラスト方向において光学センサ30の検知領域d以外の領域にも、より薄い濃度ではあるもののクリーニング用トナー像Tを形成する。
つまり、本実施例のクリーニング用トナー像Tの形成領域を図7に示す。本実施例では、スラスト方向において、画像形成領域g内において、光学センサ30の検知領域d以外の領域にも、低濃度ではあるがトナー像を形成する。即ち、本実施例のクリーニング用トナー像Tは、スラスト方向において、よりトナー量の多い第1のトナー像領域(検知領域dを含む領域)T1と、この第1のトナー像領域よりもトナー量が少ない第2のトナー像領域T2とを有する。これにより、実施例5と同様の効果、つまりトナーの消費を抑えながら、搬送ベルト7の汚れによる光学センサ30の検知精度の低下を防止できる効果が得られることに加え、光学センサ30の検知領域d外への汚れ付着も軽減できる。このため、搬送ベルト7の過度の汚れが原因で通常のトナー像の転写時に発生する、転写斑や、転写材1と搬送ベルト7の吸着不良を防止することができる。
以上、本発明を具体的な実施例に則して説明したが、本発明は上記各実施例の態様に限定されるものではないことを理解されたい。
例えば、上記各実施例では、転写体が搬送ベルトである場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者には周知のように、転写体として中間転写体を備える中間転写方式の画像形成装置がある。
図9は、転写体として中間転写体を備える画像形成装置200の一例の概略構成を示す。図9の画像形成装置200において、図1に示す画像形成装置100と実質的に同一又は相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付し、詳しい説明は省略する。図9の画像形成装置200は、感光ドラム1からトナー像が転写される転写体として、感光ドラム1に接触して周回移動する、ベルト状の中間転写体、即ち、中間転写ベルト70を有する。そして、図9の画像形成装置200は、図1の画像形成装置100における転写ローラ13に相当する、転写手段としての一次転写ローラ13を有する。一次転写ローラ13は、転写バイアス出力手段としての一次転写バイアス電源23からバイアスが印加されることで、転写部である一次転写ニップN1において、感光ドラム9と中間転写ベルト70との間でトナー像を移動させる。これにより、各像形成ステーションPの感光ドラム9から中間転写ベルト70上にトナー像を順次に転写(一次転写)することができる。中間転写ベルト70上に形成されたトナー像は、中間転写ベルト70と二次転写ローラ71とが接触する二次転写ニップN2において、二次転写ローラ71に印加される二次転写バイアスの作用によって転写材1上に転写(二次転写)される。
上記各実施例と同様に、中間転写方式の画像形成装置200では、通常のプリント用の画像形成時或いは試験画像の形成時に、感光ドラム9と中間転写ベルト70との間に周速差が設けられることがある。もちろん、この周速差が設けられないこともある。又、図9の画像形成装置200においても、図1の画像形成装置100と同様に、中間転写ベルト70上に試験画像を形成して、これを光学センサ30で検知し、画像形成条件等を制御する。
そして、このような中間転写方式の画像形成装置200においても、二次転写部N2において転写材1が中間転写ベルト70に接触した後分離されることから、紙粉等の異物の付着が起こることがある。従って、斯かる画像形成装置200においても、上記各実施例と同様にベルトクリーニング動作を行うことで、上記各実施例にて説明したのと同様の作用効果を奏し得る。
即ち、画像形成装置200は、感光ドラム9上から中間転写ベルト70上へトナーを転写して中間転写ベルト70上のトナーを転写材1へ転写する第一のモードと、感光ドラム9上のトナーを中間転写ベルト70上へ転写して中間転写ベルト70上のトナーを感光ドラム9上へ逆転写する第二のモードと、を有しており、実施例1にて説明したのと同様に、感光ドラム9上から中間転写ベルト70上へトナーを転写する時の中間転写ベルト70の周速と感光ドラム9の周速との周速差が、第一のモードと第二のモードとでは異なる。上記各実施例にて説明したその他特徴あるベルトクリーニング動作についても、搬送ベルト7を中間転写ベルト70と読み替え、又転写手段としての転写ローラ13を一次転写ローラとして読み替えることにより、実質的に同じものを中間転写方式の画像形成装置200においても適用することができる。上記各実施例の直接転写方式の画像形成装置100において搬送ベルト7上の転写材1に感光ドラム上のトナーを転写する動作は、中間転写方式の画像形成装置200においては、中間転写ベルト上に感光ドラム9上のトナーを転写する動作に相当する。
尚、中間転写ベルト70上に形成されたクリーニング用トナー像Tが二次転写部N2を通過する場合には、二次転写ローラ71を中間転写ベルト70から退避させるなどしてもよい。