実施の形態1.
図1はこの発明を実施するための実施の形態1に係る加熱調理器1の全体構成を示す斜視図である。本実施の加熱調理器1はいわゆるIHクッキングヒータであり、箱状の本体2の天面に、調理鍋等の被加熱物(図示せず)を載置して加熱調理を行うものである。本体2の天面に備えた非磁性材よりなる耐熱ガラスにて形成されたトッププレート3は外周に設けられた枠体4に保持されている。また、本体2内にはトッププレート3に載置された被加熱物を電磁誘導加熱によって加熱する左ヒータ加熱部5aと右ヒータ加熱部5bが加熱調理器1の手前側左右に設けられているとともに、中央ヒータ加熱部5cが左ヒータ加熱部5aと右ヒータ加熱部5bとの中間奥に設けられている。
一方、例えば両面焼きが可能なロースター部10は、後述するように調理庫40を有している。調理庫40内と連通する排気口(図示せず)が本体2の天面の奥左側に設けられており、その排気口を排気口フィルター8bで被っている。ロースター部10で調理される被調理物は扉20を介して調理庫40内に出し入れされる。
吸気口フィルター8aは本体2天面の奥右側に設けられ、加熱調理器1内の電気回路等の発熱要素を冷却する外気を取り入れる吸気口(図示せず)を被っている。本体2内部では、送風ファン(図示せず)よりなる気流発生手段によって吸気口から外気を取り入れて気流を発生し、加熱調理器1の制御処理を行う制御手段11を有する基板や電気回路等の発熱要素を冷却して、本体2の手前側面の排気穴(図示せず)から外部に放出する。なお、吸気口フィルター8aおよび排気口フィルター8bは、加熱調理器1内部に埃、異物等が進入するのをを防止するために設けている。
トッププレート3周囲の枠体4手前側(使用者側)に設けられた上面操作部9aには、ロースター部10及び各ヒータ加熱部5a〜5cの入/切や火力調節等の操作ボタンが配設されている。また、ロースター部10の右側に設けられた前面操作部9bには、加熱調理器1全体をオン/オフするメイン操作ボタンと、各ヒータ加熱部5a〜5cをオン/オフすると共に火力(出力)の設定を行う回転式操作ボタンが配設されている。火力表示ランプ6a、6b、6cはそれぞれ、左ヒータ加熱部5a、右ヒータ加熱部5b、中央ヒータ加熱部5cの火力を表示する。また、本体2天面の手前側近傍にある表示部7a、7b、7cはそれぞれ、左ヒータ加熱部5a、右ヒータ加熱部5b、中央ヒータ加熱部5c(ロースター部10)の使用状況を表示する。
図2は加熱調理器1のロースター部10の構造を表す図である。本実施の形態の加熱調理器1のロースター部10はロースター(グリル)にオーブン機能を有しており、被調理物を調理庫40内に置いたまま、所定の温度まで調理庫40内を暖めて予熱を行った後、被調理物を本加熱することができ、グリル調理と同じ感覚でオーブン調理を行うことができる。
ロースター部10は、前面に開口部41、後面に排気風路口46を備えた板金で形成される調理庫40内に、調理庫40内の温度を上昇させ、また被調理物を直接又は間接的に加熱するための加熱手段となる上ヒータ42及び下ヒータ43(以下、特に区別しない場合には加熱ヒータという)を備えている。また、後述するように、検出した温度に基づく信号を送信する、例えばサーミスタ等の温度検出手段である温度センサ44、45(以下、特に区別しない場合には単に温度センサという)も調理庫40の奥側、扉側に備えている。そして、扉20は、調理庫40の開口部41を開口させたり塞いだりする扉本体21とハンドル22、フレーム23で構成される。扉本体21には、調理庫内における被調理物の状態を確認するために耐熱ガラス製の調理庫窓21aが設けられている。さらにフレーム23には被調理物を載せる焼き網31を載置するトレー30がセットされる。
図3はロースター部10を含む加熱調理器1の断面図である。トッププレート3下に配設された加熱コイル54には、調理鍋等の被加熱物(図示せず)を電磁誘導加熱するための高周波電流が流れる。加熱調理器1の本体2内における加熱コイル54の下方には、ロースター部10の調理庫40が配設されている。調理庫40内には加熱ヒータ(上ヒータ42、下ヒータ43)、トレー30、焼き網31、温度センサ等が配されている。そして、調理庫40の前面側にはロースター扉20、後面には排気風路口46を備えており、排気風路口46を介して排気風路47がつながっている。この排気風路47には後述する排気ファン52が設けられており、調理庫40内の例えば魚を加熱したときに発生する煙等を本体2上面にある排気口より強制排出させる。
図4は加熱調理器1のロースター部10の回路構成を示すブロック図である。操作入力手段9は、上面操作部9aに対応する手段であり、ロースター部10の入/切、オーブン機能の選択、調理温度、調理時間等を設定する。表示手段7は表示部7cに対応し、例えば、ロースター部10の状況を表示する。
例えば、マイクロコンピュータ等で構成される制御手段11は、操作入力手段9から送信される信号、例えばオーブン調理を指示する信号、設定温度、設定調理時間のデータを含む信号を受信し、指示、データに基づいて処理を行う。また、予熱、調理等の時間管理を行うための計時手段となる調理タイマ12に計時を行わせ、計時に基づく時間から判断等を行う。一方、温度検出手段49から送信される信号(例えばデジタル信号等)に基づいて温度センサの検出に基づく温度のデータを得(以下、温度を検出するといい、この温度を検出温度という)、その温度に基づく処理を行う。また、ヒータ駆動手段48に指示を含む信号を送信し、ヒータ駆動手段48を介して加熱ヒータへの通電(電力供給)を制御することにより、調理庫40内に置かれた被調理物に対して設定温度に基づく加熱制御を行う。さらにファン駆動回路53に指示を含む信号を送信し、ファン駆動回路53を介して排気ファン52を駆動制御して、調理庫40内の空気を強制排出させる。そして、以上のような処理に基づく表示信号を表示手段7に送信し、ロースター部10の状況を表示手段7に表示させる。制御手段11は、送信される信号に含まれるデータ、処理手順等を一時的、長期的に記憶する記憶手段11aを有しているものとする。制御手段11は、記憶手段11aに記憶されたプログラムに基づく手順により、加熱調理器1に関する処理を実行し、例えばデータとして物理量(時間、温度等)を処理するものとする。ここでは、制御手段11を1つで構成しているが、例えば、加熱調理器1全体に関して制御を行う制御手段と、ロースター部10に関する制御を行う制御手段との2段構成等にしてもよい。
図5は本発明の実施の形態1における、加熱調理器1のオーブン調理時の調理庫40内の温度制御処理を説明するフローチャートである。図5に基づいて制御手段11を中心とするロースター部10におけるオーブン調理時の温度制御処理について説明する。なお、以下、調理庫40内の温度という場合には、調理庫40内の中央部分の温度をいうものとする。
被調理物が調理庫40内(焼き網31)に載置される。そして、操作入力手段9からオーブン調理を指示する信号が送信され、さらに、設定された調理温度、調理時間を含む信号が送信されると、制御手段11は、まず最初に温度を検出し、記憶手段11aに検出温度(以下、この検出温度を特に初期検出温度という)をデータとして記憶する(ステップ1)。ここで、特に明示しない限り、温度を検出する度に、記憶手段11aに検出温度をデータとして記憶するものとし、記憶手段11aには、少なくとも前回の温度検出に係る直近の検出温度のデータも記憶されているものとする。そして、調理タイマ12に計時を開始させて調理時間のカウントをスタートさせる(ステップ2)。さらに、ヒータ駆動手段48に指示を含む信号を送信して、ヒータ駆動手段48を介して加熱ヒータに通電を開始し、調理庫40内の加熱を開始させる(ステップ3)。ここで、オーブン調理時の場合、被調理物を焦がさないようにしつつ、調理庫40内の温度を素早く高めるため、上ヒータ42による加熱量が下ヒータ43による加熱量を越えないようにする。予熱目標温度と検出温度とを比較し(ステップ4)、検出温度が予熱目標温度より低い場合には予熱目標温度を目標温度とする予熱制御に移行する。ここで、目標温度とは、調理庫40内の温度を設定温度にするために、制御手段11の制御により検出温度を上昇させる目標(基準)となる温度である。目標温度と設定温度との温度関係については特に定めるものではないが、本実施の形態のような加熱ヒータ、温度センサの配設位置の場合、目標温度は設定温度よりも低い温度に設定される。また、予熱目標温度とは、設定温度に基づいてあらかじめ定めた目標温度よりもさらに低い目標温度である。ここで、ステップ1の後でステップ4が行われることを前提として、ステップ1〜ステップ4までの手順を入れ替えることもできる。
図6は調理庫40内の温度と検出温度の変動例を示すグラフである。加熱ヒータに囲まれて高温になる調理庫40内の中央部分の領域と比較して、温度センサが設けられている調理庫40の壁面近傍の温度(検出温度)は、壁面となる板金や扉20部分からの放熱等により低温となる。また、検出温度は、加熱ヒータが通電されて調理庫40内の温度が上昇する場合に、庫内中央付近の温度よりも遅れて上昇する。これは温度センサの持つ時定数による遅れだけでなく、調理庫40内中央付近の空気が加熱ヒータによりはやく暖まるのに対して、調理庫40内周辺の温度はやや遅れて温度上昇するためである。そのため、図6のように、調理庫40内の温度が低い状態から調理庫40内を急に加熱すると、目標温度に検出温度が達したとき(図6のT2の時点)には、調理庫40内の温度はすでに設定温度を超過しており、その時点で加熱ヒータへの通電を停止したとしても、被調理物を設定温度よりも高温で加熱するため、焦がしてしまう等の問題が生じる(図6のパターン1)。特に本実施の形態のように、誘導加熱機器のビルトイン式に設けられ、本来的にロースター機器として用いる場合は、調理庫40の容積が小さく、スペースが限られており、加熱ヒータと被調理物との距離も近くなる。また、調理庫40内の温度を設定温度に戻すまでに時間を要するため、その分、調理庫40内の温度を一定に保つための制御に遅れが生じる。
そこで、本実施の形態では、加熱開始時における検出温度が目標温度よりも所定の温度以上低い場合(図6に示した例では予熱目標温度より低い場合)には、予熱目標温度を基準として加熱ヒータの通電制御を行う(図6のパターン2)。予熱目標温度に達したと判断したとき(図6のT1の時点)に加熱ヒータの通電を停止するように制御すれば、調理庫40内の温度が設定温度を大幅に上回る、いわゆるオーバーシュートを防ぎ、より早く所望の制御に移行することができる。
図7は設定温度に対して定められる検出温度の目標となる目標温度及びその目標温度に対応する予熱目標温度の一例を表す表である。例えば設定温度が150℃の場合、その目標温度は101℃、予熱目標温度は91℃としている。つまり、検出温度が101℃であれば、設定温度が150℃であることになる。設定温度が200℃の場合、その目標温度は137℃、予熱目標温度は91℃としている。また、設定温度が250℃の場合には目標温度を173℃、予熱目標温度は115℃としている。これらの設定温度に対する目標温度および予熱目標温度は、調理庫40の容積、加熱ヒータの配設位置、温度センサの配設位置等、場合によっては調理庫40内に置かれる被調理物によっても異なる。そこで、調理庫40内の中央付近の温度と温度センサで検出される温度を、例えば種々の被調理物を調理庫40内に入れ、調理実験により実測する等して、ロースター部10の種類に応じて設定温度、目標温度及び予熱目標温度の関係を適切な値で設定するとよい。
次に、図5のフローチャートのステップ5以下で行われる予熱制御について説明する。予熱制御においては、温度を検出し(ステップ5)、検出温度と予熱目標温度とを比較する(ステップ6)。検出温度が予熱目標温度に満たなければ、調理タイマ12の計時に基づき、調理庫40内の加熱開始からの経過時間が所定の予熱時間を経過していないかを判断する(ステップ7)。経過していると判断すれば一定温度制御に移行する。予熱時間を経過していないと判断すれば、加熱ヒータの加熱制御を行い(ステップ8)、ステップ5に戻って処理を続ける。
図8は検出温度、予熱目標温度(目標温度)と加熱ヒータへの通電との関係を表す図である。加熱ヒータへの通電制御については、予熱目標温度と検出温度の差に基づき、電力供給を調整する。例えば図8の例では、予熱目標温度と検出温度の差が20℃以上あった場合には、加熱ヒータに600Wの電力供給を行い、20℃未満であれば300Wの電力供給を行って、加熱ヒータによる加熱出力(発熱)を制御する。0℃以下であれば加熱ヒータ電力供給を行わない。
一方、図5のフローチャートのステップ6において、検出温度が予熱目標温度以上であると判断した場合、加熱ヒータへの通電を一旦停止する(ステップ9)。そして、温度を検出し(ステップ10)、検出温度が設定温度に対応する目標温度(図7参照)に達したかどうかを判断する(ステップ11)。検出温度が目標温度に達したものと判断すると、調理庫40内の温度は設定温度以上であるとして、一定温度制御に移行する。
一方、検出温度が目標温度未満であると判断すると、例えば記憶手段11aに記憶された直近の検出温度との差を算出することで、検出温度が降下の傾向にあるか否か判断する(ステップ12)。検出温度が降下の傾向にない(上昇しているもの)と判断した場合には、調理庫40内の温度に対し、温度センサによる温度検出が遅れて追従している途中の状態であり、現時点では検出温度に基づいては実際の調理庫40内の温度を把握できないものと判断する。一方、検出温度が降下したものと判断した場合には、温度センサによる温度検出が調理庫40内の実際の温度に追従できており、実際の調理庫40内温度を把握できるものと判断して、一定温度制御に移行する。また、ステップ9において加熱ヒータへの通電を停止したが、その停止から所定時間経過したかどうかを判断する(ステップ13)。所定時間経過した場合にも、温度センサによる検出温度は調理庫40内の実際の温度にほぼ追従した状態になっているとし、一定温度制御に移行する。
一定温度制御においては、例えば、ステップ8で説明した加熱制御について、予熱目標温度を目標温度に変更して、前述した図8に示すように、目標温度と検出温度との差に基づく加熱ヒータの通電制御を行う(ステップ14)。また、調理タイマ12の計時に基づき、加熱開始からの経過時間が、操作入力手段9を介して使用者が設定した調理時間に達したか否かを判断する(ステップ15)。調理時間に達していないと判断すれば、温度を検出し(ステップ16)、検出温度に基づいてステップ14の加熱ヒータの通電制御を行う。一方、設定した調理時間に達したと判断すれば、加熱ヒータへの通電を停止する(ステップ17)。さらに、調理タイマ12を停止(ステップ18)して、表示手段7に表示信号を送信し、調理完了の旨を表示させ(ステップ19)、場合によっては音を鳴動等させて報知して、温度制御処理(調理)を終了する。
図9は予熱目標温度と調理開始時の温度との関係を表す表である。今まで特に示さなかったが、例えば、加熱ヒータによる加熱を行って調理庫40内の温度が設定温度に達した時の検出温度は、加熱開始時の調理庫40内の温度により多少異なる傾向がある。そこで、図9に示すように、設定温度に対し、加熱開始時における検出温度に応じて予熱目標温度を複数設定することで、オーバーシュートを防ぎ、加熱庫40内の温度をより設定温度に近い状態とすることができる。例えば、図9では、設定温度が200℃である場合に、初期検出温度が55℃未満であれば予熱目標温度を83℃とし、55℃以上75℃未満であれば87℃とし、初期検出温度が75℃以上91℃以下であれば91℃に設定することを表している。
調理庫40内の温度を設定温度にするため、温度センサによる検出温度が目標温度となるように制御手段11が温度制御処理を行うが、調理開始の際の調理庫40内の温度が低い状態から目標温度になるように加熱ヒータに通電して急に温度を上昇させると、検出温度が目標温度に達したときには、調理庫40内の温度がすでに設定温度を大きく超過する可能性が高い。
以上のように、実施の形態1の加熱調理器1によれば、制御手段11が、調理開始の際における検出温度が目標予熱温度よりも低いと判断すると、設定温度に対して低く設定した目標温度に対してその温度よりもさらに低い予熱目標温度になるまで、加熱ヒータに通電して加熱させた後、目標温度に達するように加熱ヒータへの通電制御を行うようにして、検出温度を基準となる目標温度にするまでに、少なくとも1段階(ステップ)を経てから目標温度にするようにしたので、オーバーシュートを防ぎ、被調理物が焦げるのを防ぐことができる。また、超過分の温度を元に戻すまでの時間をなくす又は少なくすることができるので、より速く目標温度を基準とした一定温度制御に移行することができる。したがって、所望の調理を行うことができる。そして、制御手段11が以上のような温度制御処理を行えることで、特に被調理物を調理庫40内に置いたまま、ロースター(グリル)と同じ感覚で、一連のオーブン調理を行うことができ、予熱等も含めたトータルの調理時間の設定を行え、また調理操作を一度ですませることができる。その際、調理タイマ12を用いて時間の管理を行うことで、調理の仕上がりをよくすることができる。
また、予熱制御において、予熱目標温度以上になった(予熱目標温度に達した)と判断して、加熱ヒータへの通電を一旦停止した後に、
(1)検出温度がそれ以前の検出温度との関係で降下に転じた
(2)目標予熱温度よりも高い目標温度(本来基準となる温度)以上になった
(3)調理タイマ11の計時に基づいて所定時間が経過した
と判断した場合には、検出温度が調理庫40内の実際の温度に追従できており、かつオーバーシュートが防げたものとして、基準となる目標温度に検出温度を合わせていくために、加熱センサへの通電制御を行う一定温度制御に移行するようにしたので、完全に温度制御ができる状態であると判断してから所定の温度制御に移行することで、所望の調理を実現することができる。また、以上は例えば予熱目標温度に達していなくても、所定の時間が経過すれば同様とすることができる。
実施の形態2.
図10は、本発明の実施の形態2における加熱調理器1における温度制御処理を示すフローチャートである。本実施の形態における加熱調理器1の構成は実施の形態1と同様であるため、図1等を用いることとし、説明を省略する。図10に示したフローチャートに基づいて、実施の形態2におけるオーブン調理時のロースター部10での温度制御処理について説明する。
被調理物が調理庫40内(焼き網31)に載置される。そして、操作入力手段9からオーブン調理を指示する信号が送信され、さらに、設定された調理温度、調理時間を含む信号が送信されると、制御手段11は、まず最初に温度を検出し、記憶手段11aに初期検出温度をデータとして記憶する(ステップ101)。また、調理タイマ12に計時を開始させて調理時間のカウントをスタートさせる(ステップ102)。さらに、ヒータ駆動手段48に指示を含む信号を送信して、ヒータ駆動手段48を介して加熱ヒータに通電を開始し、調理庫40内の加熱を開始させる(ステップ103)。そして、予熱目標温度と検出温度とを比較し(ステップ104)、検出温度が予熱目標温度より低い場合には予熱目標温度を目標温度とする予熱制御に移行する。ここで、ステップ1の後でステップ4が行われることを前提として、ステップ101〜ステップ104までの手順を入れ替えることもできる。
予熱制御において、制御手段11は温度を検出する(ステップ105)。本実施の形態では、温度センサ44及び45の検出温度の差を算出し、その差(又はその絶対値)が所定値以上であるか否か判断する(ステップ106)。温度差が所定値以上であると判断すると、調理庫40内において温度分布のむらが大きいとして、その旨を示す出力制限フラグ(制御手段11が有している)をセットする(ステップ107)。一方、検出温度の差が所定値未満と判断すると出力制限フラグをクリアする(ステップ108)。
次に、検出温度の時系列的な変化を利用し、温度上昇率、温度変化率等に基づいて検出温度に対して補正を行い、補正温度を(データとして)算出する(ステップ109)。これは、検出温度が実際の調理庫40内の温度変化に対して遅れて変化することに対応させるためである。検出温度が上昇中であれば補正温度が検出温度よりも高めになるように、また、検出温度が下降中であれば補正温度が検出温度より低めになるように補正を行う(例えば、補正温度=検出温度+検出温度変化×α=検出温度+(検出温度−前回検出温度)×αとする(α>0))。その補正温度を予熱目標温度と比較し(ステップ110)、予熱目標温度以上であると判断すると一定温度制御に移行する。
一方、補正温度が予熱目標温度未満であると判断すると、出力制限フラグの状態を判断し(ステップ111)、クリアされた状態であれば、通常の加熱をさせる加熱出力レベル(例えば600W)となるように加熱ヒータへの通電を制御する(ステップ112)。一方、出力制限フラグがセットされている場合には、低加熱をさせる低加熱出力レベル(例えば300W)となるように加熱ヒータへの通電を制御し(ステップ113)、再度予熱制御を行う(ステップ105)。
温度一定制御処理においても、まず、制御手段11は温度を検出する(ステップ114)。そして、温度センサ44及び45の検出温度の差を算出し、その差が所定値以上であるか否か判断する(ステップ115)。本実施の形態では、所定値をステップ106の所定値と同じ値とするが、異なるものとしてもよい。検出温度差が所定値以上であると判断すると出力制限フラグをセットする(ステップ116)。検出温度の差が所定値未満と判断すると出力制限フラグをクリアする(ステップ117)。
次に、調理タイマ12の計時に基づいて加熱開始からの経過時間が、操作入力手段9を介して使用者が設定した調理時間に達したか否か判断し(ステップ118)、達していなければステップ110と同様に検出温度を補正して補正温度を算出する(ステップ119)。そして、補正温度と設定温度に対応する目標温度とを比較し(ステップ120)、補正温度が目標温度以上であると判断すると加熱ヒータへの通電を停止する(ステップ121)。
一方、補正温度が目標温度未満であると判断すると、出力制限フラグの状態を判断し(ステップ122)、クリアされた状態であれば、通常の加熱をさせる加熱出力レベル(例えば600W)となるように加熱ヒータへの通電を制御する(ステップ123)。出力制限フラグがセットされている場合には、低加熱をさせる低加熱出力レベル(例えば300W)となるように加熱ヒータへの通電を制御し(ステップ124)、再度温度一定制御を行う(ステップ126)。
また、ステップ118において、経過時間が設定した調理時間に到達したと判断すると、加熱ヒータへの通電を停止する(ステップ125)。さらに、調理タイマを停止(ステップ126)して、表示手段7に表示信号を送信し、調理完了の旨を表示させ(ステップ127)、場合によっては音を鳴動等させて報知して、温度制御処理(調理)を終了する。
以上のように実施の形態2の加熱調理器1によれば、制御手段11が、温度センサによる検出温度に基づいて、補正温度を算出するようにしたので、検出温度の時間遅れによる実際の温度との乖離を低減し、調理庫40の実際の温度に近い補正温度による温度制御処理により、より応答良くすることができ、調理庫40内の温度の過昇を防ぐことができる。これにより、所望の調理を行うことができる。また、制御手段11は、温度センサ44、45によるそれぞれの検出温度の差を算出し、検出温度の差が大きければ調理庫40内の温度分布にむらが大きいとして、局所的に温度が高くなるのを防ぐため、低加熱となるように加熱ヒータへの通電を制御し、検出温度の差が小さければ通常の通電制御を行うようにしたので、むらを防ぐことができる。
実施の形態3.
図11は本発明の実施の形態3におけるロースター部10の構成を示す図である。図11では、特に調理庫40内における各手段の位置関係も示す。ここで、図11において図1〜図3(実施の形態1)と同一又は対応する部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
本実施の形態においては、排気風路口46は調理庫40の後面(扉20の対面となる)で、扉20側から見て右側寄りの位置に設けられている。また、排気風路口46と連通する排気風路47上には脱煙触媒フィルタ50が設けられており、その脱煙触媒フィルタ50を加熱する触媒ヒータ51も設けられている。強制排気を行うための排気ファン52は、脱煙触媒フィルタ50(触媒ヒータ51)よりも排気口側に設けられている。
本実施の形態においては、温度センサ44(第1の温度センサ)は、調理庫40内後面左側(後面において排気風路口46と反対側)の位置に設けられている。また、温度センサ45(第2の温度センサ)は、扉20の近傍であって、かつ排気風路口46と略対角(略対角線上)の位置(つまり扉20(前面)側から見た場合に左寄り)の位置に設けられている。
図12は本実施の形態のロースター部10における構成を示す側面図である。温度センサ44及び温度センサ45は、上ヒータ42と下ヒータ43との略中間に位置する高さに配設して、加熱ヒータからの輻射の影響を抑えると共に、焼き網31上に載せられる被調理物の高さに合わせ、被調理物にできるだけ近い条件における温度を検出できるようにしている。
図13はロースター部10における調理庫40内の空気の流れを示す図である。矢印が調理庫40内の空気の流れを示している。調理庫40内の空気は加熱ヒータで加熱されることによって膨張し、また、被調理物からの水蒸気等が発生することで、排気風路口46、排気風路47から自然に排気される。また、排気風路47上に設けた排気ファン51が駆動することにより、調理庫40内の空気は強制的に排出される。ここで、調理庫40内の空気の流れは排気風路口46で大きくなる。また、調理庫40内中央部A及び排気風路口46と略対角に位置するロースター扉20近傍(温度センサ45の位置C)で比較的大きくなり、調理庫40内後面の排気風路口46反対側(温度センサ44の位置B)においては小さくなる。
ここで調理庫40内の中央部Aは上ヒータ42及び下ヒータ43に囲まれて温度が高くなりやすい。一方、扉20近傍では外気の流入や調理庫窓21a(ガラス面)から外部への放熱が大きく、温度センサ45による検出温度は低めとなる。また、調理庫40の後面部分は壁面からの放熱が調理庫窓21aより小さく、また、位置Bにおける空気の動きが小さいので、温度センサ44による検出温度は、温度センサ45による検出温度と比較して、やや高めで安定した温度となる。
このように調理庫40内においては温度分布は均一でなく、温度勾配を有するので、温度センサの配設位置に応じ、同じ設定温度に対しても別個に目標温度(予熱目標温度)を設定した上で温度制御処理を行うことで、より精度の高い温度制御が調理庫40内(特に中央部A)において可能となる。
図14は実施の形態3におけるロースター部10のオーブン調理時における温度制御加熱処理を示すフローチャートである。図14に示したフローチャートに基づいて、実施の形態3におけるオーブン調理時のロースター部10での温度制御処理について説明する。
被調理物が調理庫40内(焼き網31)に載置される。そして、操作入力手段9からオーブン調理を指示する信号が送信され、さらに、設定された調理温度、調理時間を含む信号が送信されると、制御手段11は、まず最初に、温度センサに基づく温度を検出し、記憶手段11aに初期検出温度をデータとして記憶する(ステップ201)。また、調理タイマ12に計時を開始させて調理時間のカウントをスタートさせる(ステップ202)。さらに、ヒータ駆動手段48に指示を含む信号を送信して、ヒータ駆動手段48を介して加熱ヒータ及び触媒ヒータ51に通電を開始し、調理庫40内の加熱を開始させる(ステップ203)。そして、予熱目標温度と検出温度とを比較し(ステップ204)、検出温度が予熱目標温度より低い場合には予熱目標温度を目標温度とする予熱制御に移行する。ここで、ステップ1の後でステップ4が行われることを前提として、ステップ201〜ステップ204までの手順を入れ替えることもできる。
図15は温度センサ毎の設定温度における目標温度及び予熱目標温度の一例を示す表である。加熱庫40内後面に配された温度センサ44の位置Bと、扉20近傍に配された温度センサ45の位置Cでは、前述したように検出温度に差が生じるため、本実施の形態では、各設定温度に対し、温度センサ毎に別個の目標温度と予熱目標温度を定める。図15の表に係るデータは、記憶手段11aに記憶されており、判断の際に参照される。図15に示すように、温度センサ45が配されている位置Cは、扉20近傍であるため外気が流入しやすく、また、調理庫窓21a等からの放熱が大きいため、同じ設定温度に対してであっても、温度センサ44と比較して目標温度及び予熱目標温度を低く設定している。ステップ204においては、温度センサ44及び温度センサ45による検出温度のいずれもが、それぞれに設定した予熱目標温度に満たなかったと判断した場合に予熱制御に移行する。
予熱制御において、制御手段11は、再度それぞれの温度センサによる温度を検出する(ステップ205)。それぞれの検出温度に対し、その検出温度の変化に基づいて補正を行い補正温度を算出する(ステップ206)。補正温度の算出方法については、実施の形態2で説明した方法と同じであるので説明を省略する。
図16は加熱ヒータへの通電を説明するための図である。各検出温度に基づいて算出した補正温度が、それぞれに設定した予熱目標温度以上か否か判断し(ステップ207)、何れの補正温度も予熱目標温度未満であると判断すると、加熱ヒータへの通電を制御し(ステップ208)、再度予熱制御を行う(ステップ205)。ここで、図16に示すように、補正温度が予熱目標温度より低いと判断した場合、制御手段11は、予熱目標温度と補正温度との差に比例した(補正温度−予熱目標温度の大きい方の値を基準とする)通電を行い、加熱出力制御を行うものとする。なお、本実施の形態では加熱ヒータへの電力供給の上限を600Wとしている。
一方、ステップ207において、各検出温度に基づいて算出した補正温度の少なくとも一方がそれぞれに設定した予熱目標温度以上であると判断すると、加熱ヒータへの通電を停止し(ステップ209)、さらに調理時間の補正を行う(ステップ210)。調理時間の補正は、調理開始時の調理庫40内温度の違いによる被調理物の焼き上がりの差を抑えるためのもので、特に調理開始時の調理庫40内温度が低い場合に調理時間を補償するために行うものである。
図17は調理時間補正の係数を表す表である。本実施の形態における調理時間の補正は、調理タイマ12の計時に基づいて、調理開始から予熱制御終了までの時間(予熱制御を行った時間)に対し、調理開始時における初期検出温度と予熱目標温度の差に応じて、図17に示すような係数を乗ずることにより行うものとする。例えば、予熱目標温度と初期検出温度の差が50℃であった場合、予熱制御を行った時間に0.85を乗ずることにより、実際に予熱制御を行った時間の85%を、予熱制御を行った時間であるとして補正することで、調理時間(一定温度制御の時間(本加熱))を、予熱制御を行った時間の15%延長する。
そして、再度それぞれの温度センサによる温度を検出する(ステップ211)。また、それぞれの検出温度に対し、その検出温度の変化に基づいて補正を行い補正温度を算出する(ステップ212)。算出方法については前述したものと同様である。そして、何れかの補正温度がそれぞれに設定した目標温度以上であるか(ステップ213)、また、補正温度−予熱目標温度の値の大きい方が、前回算出した値に比して減少したかを判断する(ステップ214)。これらの条件のうち、どちらかの条件を満たしたものと判断すると、一定温度制御に移行する。どちらの条件も満たしていないと判断すれば、どちらかの条件を満たしたものと判断するまで、検出温度の補正及び判断を続ける(ステップ211〜214)。
一定温度制御においては、最初にファン駆動回路53に指示を含む信号を送信し、ファン駆動回路53を介して排気ファン52を駆動させ、調理庫40内の空気を強制排気させる(ステップ215)。次いで、再度それぞれの温度センサによる温度を検出する(ステップ216)。また、それぞれの検出温度に対し、その検出温度の変化に基づいて補正を行い補正温度を算出する(ステップ217)。そして、補正温度に基づいて加熱ヒータへの通電を制御する(ステップ218)。ここで、ステップ218では、図16に示した方法で加熱ヒータへの通電を行うが、制御手段11は、目標温度と補正温度との差に比例した(補正温度−目標温度の大きい方の値を基準とする)通電制御をし、加熱出力制御を行うものとする。このとき、補正温度が目標温度以上であると判断すると、通電を一旦停止するようにする。
次いで、調理タイマ12の計時に基づいて加熱開始からの経過時間が、操作入力手段9を介して使用者が設定した調理時間に達したか否か判断し(ステップ219)、達していなければ、調理時間に達したと判断するまで、上記のステップ215〜ステップ218までの処理を繰り返す。
経過時間が設定した調理時間に到達したと判断すると、加熱ヒータへの通電を停止する(ステップ220)。さらに、調理タイマを停止(ステップ221)して、表示手段7に表示信号を送信し、調理完了の旨を表示させ(ステップ222)、場合によっては音を鳴動等させて報知して、温度制御処理(調理)を終了する。
図18は調理庫40内の位置における排気流量と検出温度との関係を示すグラフである。図18(a)は排気流量が大きい場合、図18(b)は排気流量が小さい場合を表している。本実施の形態では、調理庫40内温度を温度センサ44と温度センサ45とに基づく検出温度に対し、それぞれ目標温度、予熱目標温度を設定して、何れかの検出温度(補正温度)が目標温度や予熱目標温度を越えるか否かで制御している。
調理庫40内の中央部A、温度センサ44が配設されている位置B、温度センサ45が配設されている位置Cのそれぞれの温度の関係は、図18に示すように、調理庫内の空気が流れ易く排気流量の大きい場合と、調理庫内の空気が流れ難く排気流量の小さい場合とで異なる。排気流量の大小は排気による調理庫40内の放熱量の大きさにも関連する。排気流量が大きい場合には排気による放熱量も大きく、放熱分を補うために加熱ヒータの加熱量が大きめになる。それとと共に、調理庫40内の空気の流れが大きい位置では温度が低めとなる。したがって、対流が大きくなりやすい位置にある温度センサ45と対流が小さな位置にある温度センサ44とによる検出温度の差は大きくなる。排気流量が小さい場合には、その逆であり、加熱ヒータの加熱量が小さく、検出温度の差は小さくなる。
以上のように実施の形態3によれば、被調理物の大きさや形状、排気ファンの動作状態により排気流量(空気の流れる速度)が変わり、温度センサによる検出温度も影響をうけるが、本実施の形態では、調理庫40内における空気の流れ(排気流量)の影響を受けやすい位置(図13の位置C)と、影響を受けにくい位置(図13の位置Bに、それぞれ温度センサ44、45を配置している。そのため、例えば、条件判断においてどちらかの検出温度が条件満たせばよい場合、排気流量が大きければ、主として温度センサ44による検出温度で判断等がなされ、排気流量が小さい場合には主として温度センサ45による検出温度で判断等がなされる(温度センサ45の目標温度が温度センサ44の目標温度より低い)ので、排気流量の影響を考慮した温度制御処理が可能となる。そして、設定温度に対し、目標温度と予熱目標温度とをそれぞれ別個に定め、温度センサ44、45による検出温度がそれぞれ基準とする目標温度と予熱目標温度を異ならせるようにしたので、その位置に合った基準により、条件判断、制御等を行うことができる。
また、調理開始時に調理庫40内の温度が低く、予熱制御を行った場合には、調理時間の補正を行い、予熱制御を行った時間の範囲内で、本加熱の時間を増やし、調理時間を補償するようにしたので、調理開始時の調理庫40内の温度の違いによる本加熱の時間差を抑え、所望の調理結果を得ることができる。また、予熱制御中は排気ファン52を駆動させず、温度一定制御になってから排気ファン52を駆動させるようにしたので、予熱制御の際、強制排気による調理庫40の熱量放出を抑えることができ、すばやく、効率よく、温度を上昇させて予熱制御を終了させることができる。
実施の形態4.
図19は本発明の実施の形態4におけるロースター部10のオーブン調理時における温度制御加熱処理を示すフローチャートである。本実施の形態においてロースター部10の構成は実施の形態3と同様であるため、図11等を用い説明を省略する。図19に示したフローチャートに基づいて、実施の形態4における制御手段11によるロースター部10におけるオーブン調理時の温度制御処理について説明する。
被調理物が調理庫40内(焼き網31)に載置される。そして、操作入力手段9からオーブン調理を指示する信号が送信され、さらに、設定された調理温度、調理時間を含む信号が送信されると、制御手段11は、まず最初に、温度センサに基づく温度を検出し、記憶手段11aに初期検出温度をデータとして記憶する(ステップ301)。また、調理タイマ12に計時を開始させて調理時間のカウントをスタートさせる(ステップ302)。さらに、ヒータ駆動手段48に指示を含む信号を送信して、ヒータ駆動手段48を介して加熱ヒータ及び触媒ヒータ51に通電を開始し、調理庫40内の加熱を開始させる(ステップ303)。そして、予熱目標温度と検出温度とを比較し(ステップ304)、検出温度が予熱目標温度より低い場合には予熱目標温度を目標温度とする予熱制御に移行する。ここで、ステップ1の後でステップ4が行われることを前提として、ステップ301〜ステップ304までの手順を入れ替えることもできる。
ステップ304においては、温度センサ44及び温度センサ45による検出温度のいずれもが、それぞれに設定した予熱目標温度に満たなかったと判断した場合に予熱制御に移行する。予熱制御において、制御手段11は、ファン駆動回路53に指示を送信し、排気ファン52を低速駆動させる(ステップ305)。また、再度それぞれの温度センサによる温度を検出する(ステップ306)。各検出温度が、それぞれに設定した予熱目標温度以上か否か判断し(ステップ307)、何れの検出温度も予熱目標温度未満であると判断すると、加熱ヒータへの通電制御を行う(ステップ308)。そして、温度センサ44、45に基づくどちらかの検出温度が予熱目標温度以上になったと判断するまで加熱ヒータへの通電を行う(ステップ306〜308)。加熱ヒータへの通電制御については、実施の形態3で説明したことと同様の制御を行うので説明を省略する。
一方、ステップ307において、各検出温度の少なくとも一方が予熱目標温度以上であると判断すると、加熱ヒータへの通電を停止し(ステップ309)、再度それぞれの温度センサによる温度を検出する(ステップ310)。さらに、それぞれ検出温度−予熱目標温度の値を算出し、大きい方の値について、前回算出した値に比して減少したかどうかを判断する(ステップ311)。減少していないと判断すれば、減少したものと判断するまで検出温度に基づく判断を繰り返す(ステップ310〜311)。一方、減少したものと判断すると、調理タイマ12の計時に基づく調理時間の補正を行って(ステップ312)、一定温度制御に移行する。
図20は予熱制御時における温度センサによる検出温度の変動を示す図である。図20に基づいて実施の形態5に係る調理時間の補正方法について説明する。上述したように、検出温度が予熱目標温度に到達したと判断すると、加熱ヒータへの通電を停止する(図19のステップ309)。これにより、調理庫40内においては、温度上昇は停止するが、温度センサに基づく検出温度の変動は、調理庫40内の温度の変動に遅れて追従するため、検出温度は加熱ヒータへの通電停止後もしばらく上昇し続けた後に下降に転じる。
ここで、図20から考えてみると、T0(=T1×(予熱目標温度−初期検出温度)/(ピーク検出温度−初期検出温度))の時点において、調理庫40内の温度センサ周辺の実際の温度は既に予熱目標温度に達していると考えられる。そこで、この時間T0に所定の係数(1以下)を乗じた値を予熱制御終了までの時間から減じ、その時間を予熱制御を行った時間であるとして補正することで、調理時間(一定温度制御の時間(本加熱))を延長する補正を行う。
一定温度制御において、制御手段11は、ファン駆動回路53に指示を送信し、排気ファン52を高速駆動させる(ステップ313)。そして、再度それぞれの温度センサによる温度を検出し(ステップ314)、加熱ヒータの通電制御を行い(ステップ315)、調理時間に到達したかどうかを判断し(ステップ316)、調理時間に到達したと判断するまで繰り返す。
また、ステップ316において、経過時間が設定した調理時間に到達したと判断すると、加熱ヒータへの通電を停止する(ステップ317)。さらに、調理タイマを停止(ステップ318)して、表示手段7に表示信号を送信し、調理完了の旨を表示させ(ステップ319)、場合によっては音を鳴動等させて報知して、温度制御処理(調理)を終了する。
以上のように、実施の形態4の加熱調理器1によれば、制御手段11は、温度センサ44、45による初期検出温度に基づいて、調理開始時に調理庫40内の温度が低い場合には、設定した調理温度より低い予熱目標温度を目標(基準)とする予熱制御を行うことで調理庫内の温度過昇を防止し、その際、予熱制御中は排気ファン52を低速駆動させるようにしたので、強制排気による調理庫40の熱量放出を抑えることができ、すばやく、効率よく、温度を上昇させて予熱制御を終了させることができる。また、調理開始時の検出温度と、予熱制御終了後のピーク温度に基づいて、調理時間を補正するようにしたので、調理開始時の調理庫40内の温度の違いによる本加熱の時間差を抑え、所望の調理結果を得ることができる。
実施の形態5.
上述した実施の形態では、予熱制御を行うか否か判断する温度も、予熱制御における基準となる予熱目標温度としたが、本発明はこれに限定するものではなく、予熱目標温度とは異なる所定の温度にしてもよい。
実施の形態6.
上述の実施の形態では、IHクッキングヒーターを加熱調理器1として、加熱調理器1が有するロースター部10における制御について説明したが、これに限定するものではない。例えば、ロースター単体の加熱調理器においても適用することができる。
1 加熱調理器、2 本体、3 トッププレート、4 枠体、5a 左ヒータ加熱部、5b 右ヒータ加熱部、5c 中央ヒータ加熱部、6a,6b,6c 火力表示ランプ、7 表示手段、7a,7b,7c 表示部、8a 吸気口フィルター、8b 排気口フィルター、9 操作入力手段、9a 上面操作部、9b 前面操作部、10 ロースター部、11 制御手段、11a 記憶手段、12 調理タイマ、20 扉、21 扉本体、21a 調理庫窓、22 ハンドル、23 フレーム、30 トレー、31 焼き網、40 調理庫、41 開口部、42 上ヒータ、43 下ヒータ、44、45 温度センサ、46 排気風路口、47 排気風路、48 ヒータ駆動手段、49 温度検出手段、50 脱煙触媒フィルタ、51 触媒ヒータ、52 排気ファン、53 ファン駆動回路、54 加熱コイル。