次に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1(a)は本発明を光ファイバ通信システムに適用した第1の実施形態よる偏波無依存型多心光アイソレータ1の平面図、同図(b)はその側面図である。偏波無依存型多心光アイソレータ1は、光ファイバアレイ2,ルチル結晶3,石英ガラス板4並びに半波長板5,集束性ロッドレンズ6,空隙7,着磁ガーネット結晶8及び全反射鏡9がこの順に配列されて構成されている。
光ファイバアレイ2は、光軸が互いに平行な2対の光ファイバ10,11及び光ファイバ12,13が、同一平面上に250[μm]の等間隔に並列配置されて一体化されている。各対の一方の光ファイバ10及び12は、順方向の光信号を入射する入射光ファイバを構成しており、各対の他方の光ファイバ11及び13は、光ファイバ10及び12から入射した順方向の光信号を出射する出射光ファイバを構成している。光ファイバ10,11,12及び13の各一端10a,11a,12a及び13aは、図示しない多心または単心のフェルールで固定されており、光ファイバアレイ2を介して光ファイバからなる光信号路に接続されている。また、光ファイバ10,11,12及び13の各他端10b,11b,12b及び13bは、光ファイバアレイ2の端面2aに配置されている。この端面2aは、光ファイバ10〜13のそれぞれの光軸を含む平面に対して垂直で、いずれの光軸に対しても垂直に研磨されて形成されており、ルチル結晶3,石英ガラス板4及び半波長板5の各光入出力端面3a,3b,4a,4b,5a,5b、及び集束性ロッドレンズ6の石英ガラス板4並びに半波長板5に対峙する端面6aは、それぞれ端面2aにほぼ平行に配置されている。
ルチル結晶3は、厚さ300[μm]の複屈折結晶であり、順方向から入射される光信号A及び光信号Bをそれぞれ常光線Oと異常光線Eとに分離する偏波分離素子を構成している。このルチル結晶3は、その結晶光学軸3cに平行な方向の偏波を有する光信号A及び光信号Bの常光線Oまたは異常光線Eに対して空間変位3dを作用させる。ルチル結晶3の結晶光学軸3cは、常光線O及び異常光線Eの分離方向が、光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面に垂直で、光ファイバ10〜13の各光軸に平行な面内に配置されるように、配向されている。
ルチル結晶3と集束性ロッドレンズ6との間には、光ファイバ10及び12から入射された光信号A及び光信号Bが通過する位置に、順方向または逆方向の伝搬方向によって常光線O及び異常光線Eの偏波方向を逆に回転させる偏波面回転素子である半波長板5が配置されている。また、全反射鏡9で反射した反射光信号A及び反射光信号Bが通過する位置に、非晶性光学素子である石英ガラス板4が配置されている。石英ガラス板4は、順方向動作において、入力光ファイバ10及び12から入射された光信号A及び光信号Bのみが半波長板5を通過し、全反射鏡9から反射された反射光信号A及び反射光信号Bのみが通過するように半波長板5と並列配置されている。半波長板5の光軸は、分離されて順方向に進む常光線Oの偏波方向に対して反時計方向に22.5°の角度で配向されており、半波長板5は、光信号A及び光信号Bが同図(a)に矢示する順方向に伝搬する場合、常光線O及び異常光線Eの偏波方向をそれぞれ反時計方向に45°回転させ、光信号A及び光信号Bが後述する図3(a)に矢示する逆方向に伝搬する場合、常光線O及び異常光線Eの偏波方向をそれぞれ時計方向に45°回転させる。
集束性ロッドレンズ6は、位相差が約π/2の屈折率分布型ロッドレンズからなり、常光線O及び異常光線Eの集光状態を変換する集光手段を構成している。この集束性ロッドレンズ6は、常光線O及び異常光線Eが順方向に伝搬するときはこれらの各光線O,Eを平行光線に変換してから近接させて集光し、逆方向に伝搬するときは、端面6a側において、これらの各光線O,Eを平行光線に変換すると共に遠ざける。また、集束性ロッドレンズ6の集束中心光軸6cは、光ファイバ10〜13の各光軸と平行であり、かつ、光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面に垂直で光ファイバ10〜13の各光軸間の中心線2cを含む平面上に配置されている。また、この集束中心光軸6cは、端面6a側において、対の一方の光ファイバ10の光軸側を伝搬する常光線O及び異常光線E、並びに、対の他方の光ファイバ11の光軸側を伝搬する常光線O及び異常光線Eの4つの各光線から、ほぼ等距離の位置に配置されている。さらに、他の対の一方の光ファイバ12の光軸側を伝搬する常光線O及び異常光線E、並びに、他の対の他方の光ファイバ13の光軸側を伝搬する常光線O及び異常光線Eの4つの各光線からも、ほぼ等距離の位置に配置されている。
着磁ガーネット結晶8は、本実施形態においては予め磁化されており、常光線O及び異常光線Eの偏波方向を、その伝搬方向に関係なく、常に一定の反時計方向に22.5°だけ回転させる非相反偏波面回転素子を構成している。また、集束性ロッドレンズ6と着磁ガーネット結晶8との間には、断熱手段として約200[μm]の空隙7が設けられている。全反射鏡9は、着磁ガーネット結晶8の集束性ロッドレンズ6と対峙する面と反対側の面が蒸着加工されて形成されている。全反射鏡9は、着磁ガーネット結晶8から出射される光信号の常光線O及び異常光線Eを反射して反射光信号とし、この反射光信号を再び着磁ガーネット結晶8に入射させる反射手段を構成している。
次に、上記の構成において、波長1.55[μm]の光信号A及び光信号Bが偏波無依存型多心光アイソレータ1を順方向に伝搬する場合の動作について説明する。前述した図1には、光信号Aが光ファイバ10から順方向に入射されたときの光信号経路、及び光信号Bが光ファイバ12から順方向に入射されたときの光信号経路が示されている。また、図2(a)〜(i)には、図1に示すFA,FB,FC,FD,FE,FF,FG,FH,FJの各位置における光信号Aの常光線O及び異常光線Eの偏波状態と配置関係とが示されており、同図(j)〜(r)には、これら各位置における光信号Bの常光線O及び異常光線Eの偏波状態と配置関係とが示されている。図2は、図1において光ファイバアレイ2側からルチル結晶3側を見た状態で表示されており、紙面に垂直な方向が光ファイバ10〜13の各光軸方向になっている。また、同図において、水平に描かれた点線は光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面、垂直に描かれた一点鎖線は、光ファイバアレイ2の前述した中心線2cを通り、光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面に垂直な平面を示す。この平面は集束性ロッドレンズ6の集束中心光軸6cを含んでいる。
光ファイバ10の他端10bから順方向に入射された光信号Aは、始めにルチル結晶3の端面3aに垂直に入射される。図2(a)には、このときの光信号Aの偏波状態及び配置関係が示されており、常光線Oと異常光線Eとは直交している。前述したように、ルチル結晶3の結晶光学軸3cは光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面に垂直な方向に配向されているため、光信号Aは、ルチル結晶3を通過する際に、結晶光学軸3cに平行な方向の偏波を有する異常光線Eが、結晶光学軸3cに垂直な方向の偏波を有する常光線Oから空間変位3dを受け、常光線O及び異常光線Eは、図2(b)に示すように、光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面に対して垂直な方向に分離される。
分離された常光線O及び異常光線Eは半波長板5の端面5aに垂直に入射される。このとき、前述したように半波長板5の光軸は、図2(b)に示す状態の常光線Oの偏波方向に対して反時計方向に22.5°の角度で配向されているため、常光線O及び異常光線Eの偏波方向は、図2(c)に示すように、それぞれ反時計方向に45°回転される。
半波長板5を通過した常光線O及び異常光線Eは、次に、集束性ロッドレンズ6の端面6aに垂直に入射される。その際、常光線O及び異常光線Eは、光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面に平行で集束性ロッドレンズ6の集束中心光軸6cを含む平面を、常光線Oと異常光線Eとがほぼ等間隔に上下で挟む位置に入射される。このとき、常光線O及び異常光線Eは集束中心光軸6cからほぼ等距離の位置にある。集束性ロッドレンズ6内において常光線O及び異常光線Eは、平行光線に変換され、進むに連れて互いに近接するとともに集束中心光軸6cにも近接し、約1°の出射角でレンズ端面から出射される。このときの常光線O及び異常光線Eの状態が図2(d)に示されている。
集束性ロッドレンズ6のレンズ端面から出射された常光線O及び異常光線Eは、次に、約200[μm]の空隙7を通過して着磁ガーネット結晶8に入射される。常光線O及び異常光線Eは、この着磁ガーネット結晶8によってその偏波方向が反時計方向に22.5°回転される。着磁ガーネット結晶8からの光信号Aは、次に、全反射鏡9によって反射されるが、この全反射鏡9上では、常光線O及び異常光線Eの位置は、図2(e)に示すように、ほぼ一致する。
次に、全反射鏡9によって反射された常光線O及び異常光線Eは、再び着磁ガーネット結晶8に入射され、この着磁ガーネット結晶8によってさらに反時計方向に22.5°回転される。着磁ガーネット結晶8を往復して通過することで、各光線O,Eはそれぞれの偏波方向が反時計方向に45°回転されたことになり、半波長板5での45°の回転と合わせると、結果的に反時計方向に90°回転されたことになる。この状態が図2(f)に示されている。
また、全反射鏡9での反射により、集束性ロッドレンズ6の集束中心光軸6cを通り光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面に垂直な面内では、常光線O及び異常光線Eは物理的位置が入れ替えられるが、各々の偏波状態は反射前と同じ状態を保持している。また、光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面に平行な面内では、常光線O及び異常光線Eは集束性ロッドレンズ6の集束中心光軸6cを挟んで、光ファイバ10側から光ファイバ11側に空間位置が入れ替えられる。
次に、着磁ガーネット結晶8から出射した常光線O及び異常光線Eは、約200[μm]の空隙7を通過して集束性ロッドレンズ6に入射される。集束性ロッドレンズ6の効果により、常光線O及び異常光線Eは平行光線に変換され、進むに連れて互いに離されるとともに集束中心光軸6cからも離される。このときの状態が図2(g)に示されている。続いて、常光線O及び異常光線Eは石英ガラス板4を通過するが、各光線の偏波方向は影響されない。このときの状態が図2(h)に示されている。
次に、常光線O及び異常光線Eはルチル結晶3の端面3bに垂直に入射される。ルチル結晶3内において、常光線Oは、その偏波方向が90°回転されてルチル結晶3の結晶光学軸3cに平行な方向の偏波を有する状態になっているため、空間変位作用を受ける。しかし、異常光線Eは、その偏波方向が90°回転されてルチル結晶3の結晶光学軸3cに垂直な方向の偏波を有する状態になっているため、空間変位作用を受けずに通過する。従って、空間変位を受けた常光線Oは、図2(i)に示すように、異常光線Eと再結合する。再結合した常光線O及び異常光線Eは光ファイバ11に入射し、順方向の出力光信号として外部の光信号路へ伝送される。
また、光ファイバ12の他端12bから順方向に入射された光信号Bは、図2(j)〜(r)に示すように、光信号Aの外側で光信号Aと同様な経路で伝搬する。つまり、光信号Bは、始めにルチル結晶3の端面3aに垂直に入射される。図2(j)には、このときの光信号Bの偏波状態及び配置関係が示されており、常光線Oと異常光線Eとは直交している。常光線O及び異常光線Eは、図2(k)に示すように、ルチル結晶3内で光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面に対して垂直な方向に分離された後、図2(l)に示すように、半波長板5によりそれぞれ反時計方向に45°回転される。続いて、集束性ロッドレンズ6内に入射された常光線O及び異常光線Eは、図2(m)に示すように変換されてレンズ端面から出射される。そして、空隙7を通過してから、着磁ガーネット結晶8に入射され、偏波方向が反時計方向に22.5°回転される。続いて、常光線O及び異常光線Eは全反射鏡9により反射される。図2(n)に示すように、この全反射鏡9上では常光線O及び異常光線Eの位置はほぼ一致する。
次に、全反射鏡9によって反射された常光線O及び異常光線Eは、再び着磁ガーネット結晶8によってさらに反時計方向に22.5°回転される。この状態が図2(o)に示されている。続いて、常光線O及び異常光線Eは、空隙7を通過した後、集束性ロッドレンズ6の効果により、図2(p)に示すように変換される。この後、石英ガラス板4を通過するが各光線の偏波方向は影響されない。このときの状態が図2(q)に示されている。この後、ルチル結晶3内において、常光線Oはルチル結晶3により空間変位作用を受けるが、異常光線Eは空間変位作用を受けずに通過するため、図2(r)に示すように、常光線Oと異常光線Eとは再結合する。再結合した常光線O及び異常光線Eは光ファイバ13に入射し、順方向の出力光信号として外部の光信号路へ伝送される。
次に、波長1.55[μm]の光信号A及び光信号Bが偏波無依存型多心光アイソレータ1を逆方向に伝搬する場合の動作について説明する。図3には、光信号Aが光ファイバ11から逆方向に入射されたときの光信号経路、及び光信号Bが光ファイバ13から逆方向に入射されたときの光信号経路が示されており、同図(a)は偏波無依存型多心光アイソレータ1の平面図、同図(b)はその側面図である。なお、同図において図1と同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。また、図4(a)〜(i)には、図3に示すBA,BB,BC,BD,BE,BF,BG,BH,BJの各位置における光信号Aの常光線O及び異常光線Eの偏波状態と配置関係とが示されており、同図(j)〜(r)には、これら各位置における光信号Bの常光線O及び異常光線Eの偏波状態と配置関係とが示されている。図4は、上述の図2と同様に、光ファイバアレイ2側からルチル結晶3側を見た状態で表示されており、紙面に垂直な方向が光ファイバ10〜13の各光軸方向になっている。また、同図においても、水平に描かれた点線は光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面、垂直に描かれた一点鎖線は、光ファイバアレイ2の中心線2cを通り、光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面に垂直な平面を示す。この平面は集束性ロッドレンズ6の集束中心光軸6cを含んでいる。
図3に示すように波長1.55[μm]の光信号Aは光ファイバ11の他端11bから逆方向に入射され、始めにルチル結晶3の端面3aに垂直に入射される。このときの状態が図4(a)に示されており、常光線Oと異常光線Eとは直交している。ルチル結晶3に入射された光信号Aは、前述したようにルチル結晶3内において、図4(b)に示すように、結晶光学軸3cに平行な方向の偏波を有する異常光線Eが、結晶光学軸3cに垂直な方向の偏波を有する常光線Oからの空間変位3dを受け、常光線Oと異常光線Eとは光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面に対して垂直な方向に分離される。続いて、分離された常光線O及び異常光線Eは石英ガラス板4を通過するが、常光線O及び異常光線Eの偏波方向は影響されず、回転しない。このときの状態が図4(c)に示されている。
次に、石英ガラス板4から出射した常光線O及び異常光線Eは、集束性ロッドレンズ6の端面6aに垂直に入射される。その際、常光線O及び異常光線Eは、光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面に平行で集束性ロッドレンズ6の集束中心光軸6cを含む平面を、ほぼ等間隔に上下で挟む位置に入射される。このとき、常光線O及び異常光線Eは、集束性ロッドレンズ6の集束中心光軸6cからほぼ等距離の位置にある。集束性ロッドレンズ6内において常光線O及び異常光線Eは、平行光線に変換され、進むに連れて互いに近接するとともに集束中心光軸6cにも近接し、約1°の出射角でレンズ端面から出射される。このときの常光線O及び異常光線Eの状態が図4(d)に示されている。
集束性ロッドレンズ6のレンズ端面から出射された常光線O及び異常光線Eは、約200[μm]の空隙7を通過して着磁ガーネット結晶8に入射される。入射された常光線O及び異常光線Eは、この着磁ガーネット結晶8によってその偏波方向が反時計方向に22.5°回転される。着磁ガーネット結晶8からの光信号Aは、次に、全反射鏡9によって反射されるが、この全反射鏡9上では常光線O及び異常光線Eの位置は、図4(e)に示すように、ほぼ一致する。全反射鏡9によって反射された常光線O及び異常光線Eは、反射光信号Aになって再び着磁ガーネット結晶8に入射され、この着磁ガーネット結晶8によってさらに反時計方向に22.5°回転される。着磁ガーネット結晶8を往復して通過することで、結果的に各光線O,Eはその偏波方向が反時計方向に45°回転されたことになる。このときの状態が図4(f)に示されている。
また、全反射鏡9での反射により、集束性ロッドレンズ6の集束中心光軸6cを通り光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面に垂直な面内では、常光線O及び異常光線Eは物理的位置が入れ替えられるが、各々の偏波状態は反射前と同じ状態を保持している。また、光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面に平行な面内では、常光線O及び異常光線Eは集束性ロッドレンズ6の集束中心光軸6cを挟んで、光ファイバ11側から光ファイバ10側に空間位置が入れ替えられる。
次に、着磁ガーネット結晶8から出射した常光線O及び異常光線Eは、約200[μm]の空隙7を通過して集束性ロッドレンズ6に入射される。常光線O及び異常光線Eは、集束性ロッドレンズ6の効果により平行光線に変換され、進むに連れて互いに離されるとともに集束中心光軸6cからも離される。このときの状態が図4(g)に示されている。
続いて、分離された常光線O及び異常光線Eは半波長板5の端面5bに垂直に入射されるが、半波長板5は、図4(g)に示す状態の常光線Oの偏波方向に対して−22.5°の角度で光軸が配向されているため、常光線O及び異常光線Eの偏波方向は反時計方向に−45°回転される。この結果、半波長板5によって回転される偏波方向の角度−45°と、着磁ガーネット結晶8によって回転される偏波方向の角度45°とが相殺され、常光線O及び異常光線Eの偏波方向の回転角度の総和は0°になる。この状態が図4(h)に示されている。
半波長板5を通過した常光線O及び異常光線Eは、次にルチル結晶3の端面3bに垂直に入射される。このとき、常光線Oは、ルチル結晶3の結晶光学軸3cに垂直な方向の偏波を有する状態になっているため、空間変位作用を受けずに通過する。また、異常光線Eは、ルチル結晶3の結晶光学軸3cに平行な方向の偏波を有するため、図4(i)に示すように、常光線Oから離れる空間変位作用を受ける。この結果、常光線O及び異常光線Eは再結合されず、いずれも光ファイバ10から30[μm]程度ずれるため、光ファイバ10には入射されない。このため、光信号Aについての逆方向のアイソレーションが実現される。
また、光ファイバ13の他端13bから逆方向に入射された光信号Bは、図4(j)〜(r)に示すように、光信号Aの外側で光信号Aと同様な経路で伝搬する。つまり、光信号Bは、始めにルチル結晶3の端面3aに垂直に入射される。図4(j)には、このときの光信号Bの偏波状態及び配置関係が示されており、常光線Oと異常光線Eとは直交している。常光線O及び異常光線Eは、図4(k)に示すように、ルチル結晶3内で光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面に対して垂直な方向に分離される。分離された常光線O及び異常光線Eは、図4(l)に示すように、偏波方向が回転しない状態で石英ガラス板4を通過した後、集束性ロッドレンズ6により、図4(m)に示すように変換される。続いて、常光線O及び異常光線Eは、空隙7を通過した後、着磁ガーネット結晶8により偏波方向が反時計方向に22.5°回転されてから全反射鏡9によって反射される。図4(n)に示すように、この全反射鏡9上では常光線O及び異常光線Eの位置はほぼ一致する。
次に、全反射鏡9によって反射された常光線O及び異常光線Eは、再び着磁ガーネット結晶8によってさらに反時計方向に22.5°回転される。この状態が図4(o)に示されている。続いて、常光線O及び異常光線Eは、空隙7を通過し、集束性ロッドレンズ6の効果により、図4(p)に示すように変換される。この後、図4(q)に示すように、常光線O及び異常光線Eは半波長板5によりそれぞれ反時計方向に−45°回転される。この後、ルチル結晶3内において、常光線Oは空間変位作用を受けずに通過するが、異常光線Eはルチル結晶3により空間変位作用を受けるため、図4(r)に示すように、常光線Oと異常光線Eとは再結合されず、光ファイバ12には入射されない。このため、光信号Bについての逆方向のアイソレーションが実現される。
このような本発明の第1の実施形態による偏波無依存型多心光アイソレータ1によれば、上述したように、光ファイバ10〜13から順方向に出射される光信号A及び光信号Bは、ルチル結晶3内において、常光線O及び異常光線Eが、2対の光ファイバ10,11及び光ファイバ12,13の各光軸を含む平面に垂直で、これら各光軸に平行な方向に分離される。また、集束性ロッドレンズ6の端面6aにおいて、これら常光線O及び異常光線Eの各光軸は、集束性ロッドレンズ6の集束中心光軸6cとほぼ平行になると共に、集束中心光軸6cからほぼ等距離に位置する。また、全反射鏡9で反射した反射光信号のこれら常光線O及び異常光線Eも、集束性ロッドレンズ6の端面6aにおいて、その各光軸が集束中心光軸6cとほぼ平行になると共に、集束中心光軸6cからほぼ等距離に位置し、ルチル結晶3内において、2対の光ファイバ10,11及び光ファイバ12,13の各光軸を含む平面に垂直で、これら各光軸に平行な方向で再結合する。このため、複数の光アイソレータ部分で共通する機能を発揮する、ルチル結晶3,半波長板5,集束性ロッドレンズ6,着磁ガーネット結晶8,及び全反射鏡9といった機能構成部品を変更することなく、入射光ファイバ及び出射光ファイバの対の数を増減させるだけで、光信号路数の調整を行うことが出来る。従って、光信号路を増設しても機能構成部品が大型化しない、しかも、光信号路の増設時に機能構成部品を交換する必要がなく、増設変更に手間がかからない偏波無依存型の光アイソレータアレイ1が提供される。また、一方の対の光ファイバ10と光ファイバ11との間、及び他方の対の光ファイバ12と光ファイバ13との間において、再結合が行われるルチル結晶3まで伝搬する常光線O及び異常光線Eの光路長に差はほぼ無く、偏波モード分散の発生はほぼ無い。従って、ルチル結晶3まで常光線O及び異常光線Eとが伝搬するのに要する時間の差は0.01[psec]以下となってほぼ無く、10[Gb/s]以上の高速光伝送装置内にこの偏波無依存型多心光アイソレータ1を適用する場合、その使用個数などの制限も無い。
また、上記の実施形態において、半波長板5及び石英ガラス板4の位置を入れ替えても、光信号に対する作用は変わらず、これらの位置を入れ替えることが可能である。つまり、ルチル結晶3と集束性ロッドレンズ6との間に、入射した光信号A及び光信号B、または反射した反射光信号A及び反射光信号Bの一方が通過する位置に半波長板5が配置され、他方が通過する位置に石英ガラス板4が配置されていればよい。いずれの配置においても、光ファイバ10から入射された光信号A及び光ファイバ12から入射された光信号Bは、その常光線O及び異常光線Eがルチル結晶3で分離された直後にその偏波方向が半波長板5によって45°回転されるか、ルチル結晶3で分離されて全反射鏡9で反射した後に、その偏波方向が半波長板5によって45°回転される。
また、上記の実施形態においては、集束性ロッドレンズ6と着磁ガーネット結晶8との間に約200[μm]の空隙7が設けられているため、着磁ガーネット結晶8の鉄成分が波長0.98[μm]光を吸収して熱を発生しても、この熱は、空隙7により、着磁ガーネット結晶8に隣接する集束性ロッドレンズ6に伝導されにくくなる。このため、着磁ガーネット結晶8とこれに隣接する集束性ロッドレンズ6とを接着する接着剤などが、発熱の温度上昇により変質劣化して特性変化が発生することはない。波長0.98[μm]で100[mW]の光を24時間実際に照射したところ、照射の前後で特性変化がないことを確認した。
また、上記の実施形態においては、全反射鏡9が、着磁ガーネット結晶8の集束性ロッドレンズ6に対峙する面と反対側の面が蒸着加工されて形成されているため、着磁ガーネット結晶8の集束性ロッドレンズ6に対峙する面と反対側の面がそのまま全反射鏡9として機能する。このため、新たに着磁ガーネット結晶8に隣接させて別体の反射手段を設ける必要が無くなり、偏波無依存型多心光アイソレータ1をコンパクトに構成することが出来る。
また、上記の実施形態においては、着磁ガーネット結晶8が予め磁化されているため、着磁ガーネット結晶8が有する磁界によって、着磁ガーネット結晶8を通過する光信号の偏波方向を回転させることができる。このため、外部から着磁ガーネット結晶8に磁界を印加する装置を設ける必要がなくなり、偏波無依存型多心光アイソレータ1をコンパクトに構成することが出来る。
次に、本発明を光ファイバ通信システムに適用した第2の実施形態による偏波無依存型多心光アイソレータ20について説明する。
図5(a)は、本実施形態による偏波無依存型多心光アイソレータ20の平面図、同図(b)はその側面図である。なお、本実施形態による偏波無依存型多心光アイソレータ20の以下の説明においては、第1の実施形態による偏波無依存型多心光アイソレータ1の各構成要素と同一または相当する構成要素には同一の符号を用いてその説明は省略する。
偏波無依存型多心光アイソレータ20は、光ファイバアレイ22,ルチル結晶3,石英ガラス板4並びに半波長板5,集束性ロッドレンズ26,空隙7,着磁ガーネット結晶8及び全反射鏡9がこの順に配列されて構成されている。光ファイバアレイ22は、第1の実施形態と同様、光軸が互いに平行な2対の光ファイバ10,11及び光ファイバ12,13が、同一平面上に250[μm]の等間隔に並列配置されて一体化されている。
本実施形態における偏波無依存型多心光アイソレータ20は、光ファイバアレイ22の端面22aが光ファイバ10〜13の各光軸に垂直な平面に対して8°傾けられて形成されており、ルチル結晶3,石英ガラス板4及び半波長板5の各光入出力端面3a,3b,4a,4b,5a,5bは、光ファイバアレイ22の端面22aに平行に、つまり8°傾けられて配置されている。さらに、集束性ロッドレンズ26の石英ガラス板4並びに半波長板5に対峙する端面26aは、光ファイバアレイ22の端面22aほぼ平行になるように、8°傾けられて形成されている。そして、半波長板5は、光信号A及び光信号Bが8°斜め入射した場合に光軸が合わせてある。これら以外の構成は、第1の実施形態における偏波無依存型多心光アイソレータ1と同じ構成となっている。
上記の構成において、波長1.55[μm]の光信号A及び光信号Bが偏波無依存型多心光アイソレータ20を順方向に伝搬する場合の動作について説明する。上述した図5には、光信号Aが光ファイバ10から順方向に入射されたときの光信号経路、及び光信号Bが光ファイバ12から順方向に入射されたときの光信号経路が示されている。また、図6(a)〜(i)には、図5に示すFA,FB,FC,FD,FE,FF,FG,FH,FJの各位置における光信号Aの常光線O及び異常光線Eの偏波状態と配置関係とが示されており、同図(j)〜(r)には、これら各位置における光信号Bの常光線O及び異常光線Eの偏波状態と配置関係とが示されている。同図は、前述の図2,図4と同様に、光ファイバアレイ22側からルチル結晶3側を見た状態で表示されており、紙面に垂直な方向が光ファイバ10〜13の各光軸方向になっている。また、同図においても、水平に描かれた点線は光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面、垂直に描かれた一点鎖線は、光ファイバアレイ22の中心線2cを通り、光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面に垂直な平面を示す。この平面は集束性ロッドレンズ26の集束中心光軸6cを含んでいる。
図5に示すように、光ファイバ10の他端10bから順方向に入射された光信号Aは、始めにルチル結晶3の端面3aに所定角度で入射される。図6(a)には、このときの光信号Aの偏波状態及び配置関係が示されており、常光線Oと異常光線Eとは直交している。前述したように、ルチル結晶3の結晶光学軸3cは光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面に垂直な方向に配向されている。このため、光信号Aは、ルチル結晶3を通過する際に、結晶光学軸3cに平行な方向の偏波を有する異常光線Eが、結晶光学軸3cに垂直な方向の偏波を有する常光線Oから空間変位3dを受け、常光線O及び異常光線Eは、図6(b)に示すように、光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面に対して垂直な方向に分離される。
分離された常光線O及び異常光線Eは半波長板5の端面5aに所定角度で入射される。半波長板5の光軸は、図6(b)に示す状態の常光線Oの偏波方向に対して反時計方向に22.5°の角度で配向されているため、常光線O及び異常光線Eの偏波方向は、図6(c)に示すように反時計方向に45°回転される。
続いて、常光線O及び異常光線Eは集束性ロッドレンズ26の端面26aに入射される。その際、常光線O及び異常光線Eは、光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面に平行で集束性ロッドレンズ26の集束中心光軸26cを含む平面を、ほぼ等間隔に上下で挟む位置に入射される。このとき、常光線O及び異常光線Eは集束中心光軸6cからほぼ等距離の位置にある。集束性ロッドレンズ26内において常光線O及び異常光線Eは、平行光線に変換され、進むに連れて互いに近接するとともに集束中心光軸6cにも近接し、約1°の出射角でレンズ端面から出射される。このときの常光線O及び異常光線Eの状態が図6(d)に示されている。
集束性ロッドレンズ26のレンズ端面から出射された常光線O及び異常光線Eは、次に、約200[μm]の空隙7を通過して着磁ガーネット結晶8に入射される。常光線O及び異常光線Eは、この着磁ガーネット結晶8によってその偏波方向が反時計方向に22.5°回転される。着磁ガーネット結晶8からの光信号Aは、次に、全反射鏡9によって反射されるが、この全反射鏡9上では、常光線O及び異常光線Eの位置は、図6(e)に示すように、ほぼ一致する。
全反射鏡9によって反射された常光線O及び異常光線Eは、再び着磁ガーネット結晶8に入射され、この着磁ガーネット結晶8によってさらに反時計方向に22.5°回転される。着磁ガーネット結晶8を往復して通過することで、各光線O,Eはそれぞれの偏波方向が反時計方向に45°回転されたことになり、半波長板5での45°の回転と合わせると、結果的に反時計方向に90°回転されたことになる。この状態が図6(f)に示されている。
また、全反射鏡9での反射により、集束性ロッドレンズ26の集束中心光軸6cを通り光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面に垂直な面内では、常光線O及び異常光線Eは物理的位置が入れ替えられるが、各々の偏波状態は反射前と同じ状態を保持している。また、光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面に平行な面内では、常光線O及び異常光線Eは集束性ロッドレンズ26の集束中心光軸6cを挟んで、光ファイバ10側から光ファイバ11側に空間位置が入れ替えられる。
次に、着磁ガーネット結晶8から出射した常光線O及び異常光線Eは、約200[μm]の空隙7を通過して集束性ロッドレンズ26に入射される。集束性ロッドレンズ26の効果により、常光線O及び異常光線Eは、平行光線に変換され、進むに連れて互いに離されるとともに集束中心光軸6cからも離される。このときの状態が図6(g)に示されている。続いて、常光線O及び異常光線Eは石英ガラス板4を通過するが、各光線の偏波方向は影響されない。このときの状態が図6(h)に示されている。
次に、常光線O及び異常光線Eはルチル結晶3の端面3bに所定角度で入射される。ルチル結晶3内において、常光線Oは、その偏波方向が90°回転されてルチル結晶3の結晶光学軸3cに平行な方向の偏波を有する状態になっているため、空間変位作用を受ける。しかし、異常光線Eは、その偏波方向が90°回転されてルチル結晶3の結晶光学軸3cに垂直な方向の偏波を有する状態になっているため、空間変位作用を受けずに通過する。従って、空間変位を受けた常光線Oは、図6(i)に示すように、異常光線Eと再結合する。再結合した常光線O及び異常光線Eは光ファイバ11に入射し、順方向の出力光信号として外部の光信号路へ伝送される。
また、光ファイバ12の他端12bから順方向に入射された光信号Bは、図6(j)〜(r)に示すように、光信号Aの外側で光信号Aと同様な経路で伝搬する。つまり、光信号Bは、始めにルチル結晶3の端面3aに所定角度で入射される。図6(j)には、このときの光信号Bの偏波状態及び配置関係が示されており、常光線Oと異常光線Eとは直交している。常光線O及び異常光線Eは、図6(k)に示すように、ルチル結晶3内で光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面に対して垂直な方向に分離された後、図6(l)に示すように、半波長板5によりそれぞれ反時計方向に45°回転される。続いて、集束性ロッドレンズ6内に入射された常光線O及び異常光線Eは、図6(m)に示すように変換されてレンズ端面から出射される。そして、空隙7を通過してから、着磁ガーネット結晶8に入射され、偏波方向が反時計方向に22.5°回転される。続いて、常光線O及び異常光線Eは全反射鏡9により反射される。図6(n)に示すように、この全反射鏡9上では常光線O及び異常光線Eの位置はほぼ一致する。
次に、全反射鏡9によって反射された常光線O及び異常光線Eは、再び着磁ガーネット結晶8によってさらに反時計方向に22.5°回転される。この状態が図6(o)に示されている。続いて、常光線O及び異常光線Eは、空隙7を通過した後、集束性ロッドレンズ6の効果により、図6(p)に示すように変換される。この後、石英ガラス板4を通過するが各光線の偏波方向は影響されない。このときの状態が図6(q)に示されている。この後、ルチル結晶3内において、常光線Oはルチル結晶3により空間変位作用を受けるが、異常光線Eは空間変位作用を受けずに通過するため、図6(r)に示すように、常光線Oと異常光線Eとは再結合する。再結合した常光線O及び異常光線Eは光ファイバ13に入射し、順方向の出力光信号として外部の光信号路へ伝送される。
次に、波長1.55[μm]の光信号A及び光信号Bが偏波無依存型多心光アイソレータ20を逆方向に伝搬する場合の動作について説明する。図7には、光信号Aが光ファイバ11から逆方向に入射されたときの光信号経路、及び光信号Bが光ファイバ13から逆方向に入射されたときの光信号経路が示されており、同図(a)は偏波無依存型多心光アイソレータ20の平面図、同図(b)はその側面図である。なお、同図において図5と同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。また、図8(a)〜(i)には、図7に示すBA,BB,BC,BD,BE,BF,BG,BH,BJの各位置における光信号Aの常光線O及び異常光線Eの偏波状態と配置関係とが示されており、同図(j)〜(r)には、これら各位置における光信号Bの常光線O及び異常光線Eの偏波状態と配置関係とが示されている。図8は、前述の図2,図4,図6と同様に、光ファイバアレイ22側からルチル結晶3側を見た状態で表示されており、紙面に垂直な方向が光ファイバ10〜13の各光軸方向になっている。また、同図においても、水平に描かれた点線は光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面、垂直に描かれた一点鎖線は、光ファイバアレイ22の中心線2cを通り、光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面に垂直な平面を示す。この平面は集束性ロッドレンズ26の集束中心光軸6cを含んでいる。
図7に示すように波長1.55[μm]の光信号Aは光ファイバ11から逆方向に出射され、始めにルチル結晶3の端面3aに所定角度で入射される。このときの状態が図8(a)に示されており、常光線Oと異常光線Eとは直交している。ルチル結晶3に入射された光信号Aは、前述したようにルチル結晶3内において、図8(b)に示すように、結晶光学軸3cに平行な方向の偏波を有する異常光線Eが、結晶光学軸3cに垂直な方向の偏波を有する常光線Oからの空間変位を受け、常光線Oと異常光線Eとは光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面に対して垂直な方向に分離される。続いて、分離された常光線O及び異常光線Eは石英ガラス板4を通過するが、常光線O及び異常光線Eの偏波方向は影響されず、回転しない。このときの状態が図8(c)に示されている。
次に、石英ガラス板4から出射した常光線O及び異常光線Eは、集束性ロッドレンズ26の端面26aに所定角度で入射される。その際、常光線O及び異常光線Eは、光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面に平行で集束性ロッドレンズ26の集束中心光軸6cを含む平面を、ほぼ等間隔に上下で挟む位置に入射される。このとき、常光線O及び異常光線Eは、集束性ロッドレンズ26の集束中心光軸6cからほぼ等距離の位置にある。集束性ロッドレンズ26内において常光線O及び異常光線Eは、平行光線に変換され、進むに連れて互いに近接するとともに集束中心光軸6cにも近接し、約1°の出射角でレンズ端面から出射される。このときの常光線O及び異常光線Eの状態が図8(d)に示されている。
集束性ロッドレンズ26のレンズ端面から出射された常光線O及び異常光線Eは、約200[μm]の空隙7を通過して着磁ガーネット結晶8に入射される。入射された常光線O及び異常光線Eは、この着磁ガーネット結晶8によってその偏波方向が反時計方向に22.5°回転される。着磁ガーネット結晶8からの光信号Aは、次に、全反射鏡9によって反射されるが、この全反射鏡9上では常光線O及び異常光線Eの位置は、図8(e)に示すように、ほぼ一致する。全反射鏡9によって反射された常光線O及び異常光線Eは、再び着磁ガーネット結晶8に入射され、この着磁ガーネット結晶8によってさらに反時計方向に22.5°回転される。着磁ガーネット結晶8を往復して通過することで、結果的に各光線O,Eはその偏波方向が反時計方向に45°回転されたことになる。このときの状態が図8(f)に示されている。
また、全反射鏡9での反射により、集束性ロッドレンズ26の集束中心光軸6cを通り光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面に垂直な面内では、常光線O及び異常光線Eは物理的位置が入れ替えられるが、各々の偏波状態は反射前と同じ状態を保持している。また、光ファイバ10,11のそれぞれの光軸を含む平面に平行な面内では、常光線O及び異常光線Eは集束性ロッドレンズ26の集束中心光軸6cを挟んで、光ファイバ11側から光ファイバ10側に空間位置が入れ替えられる。
次に、着磁ガーネット結晶8から出射した常光線O及び異常光線Eは、約200[μm]の空隙7を通過して集束性ロッドレンズ26に入射される。常光線O及び異常光線Eは、集束性ロッドレンズ26の効果により平行光線に変換され、進むに連れて互いに離されるとともに集束中心光軸6cからも離される。このときの状態が図8(g)に示されている。
続いて、分離された常光線O及び異常光線Eは半波長板5の端面5bに所定角度で入射されるが、半波長板5は、図8(g)に示す状態の常光線Oの偏波方向に対して−22.5°の角度で光軸が配向されているため、常光線O及び異常光線Eの偏波方向は反時計方向に−45°回転される。この結果、半波長板5によって回転される偏波方向の角度−45°と、着磁ガーネット結晶8によって回転される偏波方向の角度45°とが相殺され、常光線O及び異常光線Eの偏波方向の回転角度の総和は0°になる。この状態が図8(h)に示されている。
半波長板5を通過した常光線O及び異常光線Eは、次にルチル結晶3の端面3bに所定角度で入射される。このとき、常光線Oは、ルチル結晶3の結晶光学軸3cに垂直な方向の偏波を有する状態になっているため、空間変位作用を受けずに通過する。また、異常光線Eは、ルチル結晶3の結晶光学軸3cに平行な方向の偏波を有するため、図8(i)に示すように、常光線Oから離れる空間変位作用を受ける。この結果、常光線O及び異常光線Eは再結合されず、いずれも光ファイバ10から30[μm]程度ずれるため、光ファイバ10には入射されない。このため、光信号Aについての逆方向のアイソレーションが実現される。
また、光ファイバ13の他端13bから逆方向に入射された光信号Bは、図8(j)〜(r)に示すように、光信号Aの外側で光信号Aと同様な経路で伝搬する。つまり、光信号Bは、始めにルチル結晶3の端面3aに所定角度で入射される。図8(j)には、このときの光信号Bの偏波状態及び配置関係が示されており、常光線Oと異常光線Eとは直交している。常光線O及び異常光線Eは、図8(k)に示すように、ルチル結晶3内で光ファイバ10〜13の各光軸を含む平面に対して垂直な方向に分離される。分離された常光線O及び異常光線Eは、図8(l)に示すように、偏波方向が回転しない状態で石英ガラス板4を通過した後、集束性ロッドレンズ26により、図8(m)に示すように変換される。続いて、常光線O及び異常光線Eは、空隙7を通過した後、着磁ガーネット結晶8により偏波方向が反時計方向に22.5°回転されてから全反射鏡9によって反射される。図8(n)に示すように、この全反射鏡9上では常光線O及び異常光線Eの位置はほぼ一致する。
次に、全反射鏡9によって反射された常光線O及び異常光線Eは、再び着磁ガーネット結晶8によってさらに反時計方向に22.5°回転される。この状態が図8(o)に示されている。続いて、常光線O及び異常光線Eは、空隙7を通過し、集束性ロッドレンズ26の効果により、図8(p)に示すように変換される。この後、図8(q)に示すように、常光線O及び異常光線Eは半波長板5によりそれぞれ反時計方向に−45°回転される。この後、ルチル結晶3内において、常光線Oは空間変位作用を受けずに通過するが、異常光線Eはルチル結晶3により空間変位作用を受けるため、図8(r)に示すように、常光線Oと異常光線Eとは再結合されず、光ファイバ12には入射されない。このため、光信号Bについての逆方向のアイソレーションが実現される。
このような本発明の第2の実施形態による偏波無依存型多心光アイソレータ20においても、第1の実施形態における偏波無依存型多心光アイソレータ1と同様な作用効果が得られる。
さらに、本実施形態による偏波無依存型多心光アイソレータ20によれば、光ファイバアレイ22の端面22aが光ファイバ10〜13の各光軸に垂直な平面に対して8°傾けられており、ルチル結晶3及び半波長板5の各光入出力端面3a,3b,5a,5b、並びに集束性ロッドレンズ26の半波長板5に対峙する端面26aが、光ファイバアレイ22の端面22aにほぼ平行に配置,形成されている。このため、光ファイバ10〜13から入射された入射光信号Aや入射光信号B及びこれらが全反射鏡9で反射した反射光信号Aや反射光信号Bが、ルチル結晶3及び半波長板5の各光入出力端面3a,3b,5a,5b並びに集束性ロッドレンズ26の半波長板5に対峙する端面26aで反射して生じる反射光は、元の方向に戻ることがなくなり、出射元の各光ファイバ10〜13内に入射されなくなる。このため、光ファイバ10〜13から入射された入射光信号A,B及び全反射鏡9で反射した反射光信号A,Bが各端面3a,3b,5a,5b及び26aで反射して生じる反射光の影響は低減される。従って、光ファイバ10〜13に接続される光装置へ反射光が入力されることが少なくなり、光信号が順方向に伝搬するときに反射光が光装置のノイズにならなくなる。
なお、上記の各実施形態においては、2対の光ファイバ10,11及び光ファイバ12,13が光ファイバアレイ2に並列配置されている場合を説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、必要に応じて、光ファイバの対の数を選択することが出来る。
図9は、アレイ本体に開口したキャピラリ、すなわち、毛管状の穴によって入射光ファイバ10,12・・・及び出射光ファイバ11,13・・・が同一平面上で等間隔に固定された光ファイバアレイ2を、各光ファイバ10〜13の光軸に垂直な面で切断した断面図である。同図(a)は、2本の光ファイバ10,11間の中心を中心線2cとして合計2n(n≧2)本のn対の光ファイバを、n本ずつ左右に振り分けて配置した場合を示している。同図(b)は、1本の光ファイバの光軸を中心線2cとして同じく合計2n本のn対の光ファイバを、n本ずつ左右に振り分けて配置した場合を示している。光ファイバアレイ2は、アレイ本体に開口したキャピラリに各入射光ファイバ10,12・・・及び各出射光ファイバ11,13・・・が挿入されて構成されたり、または、アレイ本体に切削加工されたV溝に各入射光ファイバ10,12・・・及び各出射光ファイバ11,13・・・が載置され固定されて構成される。
この構成によれば、n対の入射光ファイバ10,12・・・及び出射光ファイバ11,13・・・間の間隔は、光ファイバアレイ2の1本の光ファイバを中心線2cとして対称に配置された2本の光ファイバ間の距離、または、光ファイバアレイ2の2本の光ファイバ10,11間の中心を中心線2cとして対称に配置された2本の光ファイバ間の距離になる。従って、偏波無依存型多心光アイソレータ1,20の使用用途や使用スペースに応じて、対の入射光ファイバ10,12・・・及び出射光ファイバ11,13・・・間の間隔を選択することが出来る。また、偏波無依存型多心光アイソレータ1,20は、光信号路を構成する複数本の光ファイバと、アレイ本体のキャピラリまたはV溝に整列させられた光ファイバを介して接続される。このため、偏波無依存型多心光アイソレータ1,20は光信号路を構成する複数本の光ファイバと容易に接続可能となる。また、光ファイバアレイ2を、心数の異なる他の光ファイバアレイと交換するだけで、容易に、信号路数の異なる偏波無依存型多心光アイソレータ1,20を構成することが出来る。
また、上記各実施形態では、一方の対の入射光ファイバ10及び出射光ファイバ11と、他方の対の入射光ファイバ12及び出射光ファイバ13とを同一平面上に並列配置した場合について説明した。しかし、これら各対の光ファイバ10〜13は必ずしも同一平面上にある必要はなく、一方の対の入射光ファイバ10及び出射光ファイバ11と、他方の対の入射光ファイバ12及び出射光ファイバ13とがそれぞれ異なる平面上に配置されていてもよい。また、各光ファイバ10〜13は必ずしも等間隔に配置されていなくてもよく、対となる入射光ファイバと出射光ファイバとが光ファイバアレイ2の中心線2cから等間隔にあればよい。
また、上記の各実施形態においては、光ファイバ10から出射された光信号A及び光ファイバ12から出射された光信号Bが通過する側に半波長板5を配置した場合を説明したが、前述したように、全反射鏡9で反射した反射光信号A及び反射光信号Bが通過する側に配置しても構わない。さらに、半波長板5と対にして石英ガラス板4を用いる代わりに偏波方向を回転させない媒質を用いることも可能である。
また、非相反偏波面回転素子として着磁ガーネット結晶8を使用したが、使用する光信号波長において、偏波を22.5°回転させる非相反偏波面回転素子であれば他の媒質を用いることも可能である。例えば、非相反偏波面回転素子が磁性体で覆われている構成、すなわち、着磁されていない非相反偏波面回転素子に所定の磁界を与える磁石を、素子の外部に設置することも可能である。また、集光手段として屈折率分布型の集束性ロッドレンズ6,26を用いたが、各光ファイバ10〜13から入射された光信号A及び光信号Bがルチル結晶3によって常光線Oと異常光線Eとに分離される場合、常光線O及び異常光線Eの分離方向が光ファイバ10〜13の対の各光軸を含む平面に対して直交するようにルチル結晶3の結晶光学軸3cが配向され、常光線O及び異常光線Eがそれぞれレンズの中心光軸からほぼ等距離の位置に配置されている限りにおいて、多くの異なる集光手段が使用可能である。
また、上述の第2の実施形態では、光ファイバアレイ22の端面22a、並びにルチル結晶3,石英ガラス板4,半波長板5の各光入出力端面3a,3b,4a,4b,5a,5b、及び集束性ロッドレンズ26の端面26aを光ファイバ10,11,12,13の光軸に垂直な平面に対して8°傾けた場合について説明したが、3〜16°の範囲で傾けるようにしてもよい。
上記のいずれの場合においても、上記の各実施形態と同様な作用効果が得られる。