JP4285131B2 - 分析機器のデータ処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、分光光度計等の分析機器のデータ処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種の分析機器では、汎用のパーソナルコンピュータ(パソコン)上で専用の制御・処理プログラムを実行させ、それによって分析機器により取得されたデータの処理や、分析機器の測定動作の制御等を行うものが多くなっている。こうした分析システムでは、高度で複雑なデータ処理が可能であるほか、データ解析によって得られたグラフやテーブル等を自由に組み合わせたレポート(報告書)を作成するといった機能を追加するのも容易である。
【0003】
例えば非特許文献1には、紫外可視分光光度計を用いた分光分析システムにおけるデータ処理・制御のソフトウエアについて開示されている。即ち、このシステムでは、スペクトル測定、カイネティクス(時間送り)測定、フォトメトリック(定量)測定といった各種の測定及びデータ処理を行うためのソフトウエアとレポートを作成するためのソフトウエアとを備える。レポート作成機能では、オペレータは予め用意されている複数のレポートテンプレートの中から、目的に応じて適当なテンプレートを選択する。各テンプレートには上記のような各種測定・解析処理によって得られるデータ、具体的に例を挙げると、スペクトル、そのスペクトルのピーク検出処理の結果であるピークテーブル、定量分析のための検量線グラフ、検量線を引くためのデータである標準試料データテーブル、等がそれぞれオブジェクトとしてレポート内に貼り付けられるようにリンクされている。従って、上記各種の測定ソフトウエアを利用して必要な測定やデータ処理を実行した後に、レポート作成機能で適当なレポートテンプレートを選択しさえすれば、取得されたデータ(グラフやテーブル等)が自動的に貼り付けられる形式でレポートが完成する。そして、これを印刷することによって印刷物としてレポートを得ることができる。
【0004】
【非特許文献1】
「オールインワンソフトウエアUVProbe」,島津紫外可視分光光度計UV-2450 UV-2550カタログ,株式会社島津製作所,p.6-7
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
レポート作成機能でレポートを作成する際には、他の測定ソフトウエア上で作成されたグラフやテーブル等がファイルとしてハードディスクドライブ等の記憶装置に保存される前であっても、そうしたデータをレポートに利用することが可能である。しかしながら、作業者の何らかの操作上のミスやそれ以外の外的要因(例えば停電等)によって、データを保存する操作を行わないままそのデータを削除・消去してしまったり、或いは編集等によりそのデータを改変してしまったりした場合、レポートが印刷物として残った状態で、その印刷時のデータに関する電子的な記録が記憶装置内に存在しないという状況が発生する。
【0006】
米国の食品医薬品局(FDA)が近年、発行した規制21CFR Part11(電子記録と電子署名に関する規制)に対応しようとする場合、レポート等の印刷物に対して署名が行われるときには、そこに含まれるデータも電子形態で完全に保管することが義務付けられている。しかしながら、従来のデータ処理装置では、上述したような場合に印刷物と電子データとが一致しないという状況が発生してしまうという問題があり、上記規制に適合しない場合があり得る。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、作業者が取得する印刷物としてのレポートに含まれる各種データが電子データとして必ず保存されることを保証し得る分析機器用データ処理装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために成された本発明は、分析機器での測定により取得された測定データやそれを処理することによって得られる解析データ等の各種データを記載したレポートを作成し、該レポートを印刷する機能を有する分析機器のデータ処理装置において、
a)前記レポートの印刷の指示に対応して、該レポートに記載される各種データが不揮発性の記憶装置に保存済みであるか否かを判定する保存確認手段と、
b)該保存確認手段により少なくとも一部のデータが未保存であると判定されたときに、印刷動作に先立って又は遅くとも印刷動作と同時にその未保存のデータを不揮発性の記憶装置に保存する保存実行手段と、
を備えることを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態、及び効果】
本発明に係るデータ処理装置では、作業者の操作により、測定データや解析データ等の各種のデータを1つのレポートにまとめることが可能であるが、こうしたレポート作成作業の後に印刷の指示が行われると、保存確認手段a)は、印刷しようとするレポートに含まれる各種データが不揮発性の記憶装置(殆どの場合にはパソコンに内蔵されたハードディスク駆動装置)に保存済みであるか否かを判定する。これらデータの一部が未だ上記記憶装置に保存されておらず、一時的な記憶素子(通常はRAM)に保持されている状態である場合には、停電等の意図せぬ事態や、未保存のままでのプログラムの終了操作等によって、上記データが保存されないまま消失してしまう恐れがある。そこで、未保存のデータが存在する場合、保存実行手段b)は、印刷動作に先立って又は遅くとも印刷動作と同時に未保存のデータを上記記憶装置に自動的に保存する。それによって、作業者がレポートを印刷物として入手する時点では、該レポートに含まれる各種データは必ず上記記憶装置に保存された状態となる。
【0010】
従って、本発明に係る分析機器のデータ処理装置によれば、レポートの印刷後に、何らかの操作上のミスや停電等の外的要因が発生した場合でも、印刷したレポートに含まれるデータに対応する電子的な記録は、ハードディスク駆動装置等の記憶装置に必ず保存されており、米国食品医薬品局の規制に適合することができる。また、こうしたデータの保存は作業者の作業に頼らずに必要に応じて自動的に行われるので、作業者に対して何ら負担を与えることがなく、本来の測定作業に集中することができるという効果も奏する。
【0011】
また、本発明に係る分析機器のデータ処理装置においては、
c)前記各種データを取得するための測定や処理の実行に先立ち、前記不揮発性の記憶装置に保存する際の格納先及び保存時のファイル名を含む保存時情報の入力を作業者に対して要求する保存時情報要求手段と、
d)前記保存時情報が取得された後に始めて前記測定や処理の実行を許可する制御手段と、
を更に備える構成とすることが好ましい。
【0012】
ここで、保存時情報要求手段c)は具体的には、例えば表示画面上に保存時情報の入力を要求する表示を行う手段とすることができる。即ち、この構成によれば、レポートの印刷が指示されたとき、そのレポートに記載するデータに未保存のものがあった場合でも、そのデータの格納先(例えばフォルダ等)やファイル名は既に確定しているから、未保存データを自動的にそのファイル名を付してその格納先に保存することができる。
【0013】
具体的な例を挙げると、分光光度計において、例えば、複数の指定波長における測光値を順次測定してゆくといった測定や、既存の又は測定により新規に作成した検量線を用い複数の未知試料の測光値からそれぞれ濃度を順次算出するといった定量解析処理では、データが取得される毎に所定のテーブルにその内容を1行ずつ追記してゆくような場合がある。こうした場合、従来は、最終的に完成したテーブルを記憶装置に保存する際に始めて、そのデータファイルのファイル名を付けている。そのため、そうした測定の途中でレポートの印刷が指示されても、作業者が意図するような格納先にデータを保存することができなかった。それに対し、上記構成によれば、作業者が意図する格納先に意図するファイル名を付けてデータを自動保存することができる。
【0014】
【実施例】
本発明に係るデータ処理装置の一実施例を備える分光測定システムについて、図1〜図4を参照しながら説明する。
【0015】
本実施例の分光測定システムは、図1に示すように、試料に対して分光測定を実行して測定データを取得するための分光測定部1と、その分光測定部1の動作を制御するとともに測定データを受け取って各種のデータ処理を実行するデータ処理・制御部2とから成る。データ処理・制御部2は、CPUを中心とする中央制御部20、中央制御部20での各種処理に際して一時的にデータを記憶しておくためのメモリ(RAM)21、データを保存したり後記各種プログラムを格納しておくためのハードディスク駆動装置(HDD)等の記憶装置22、キーボードやマウス等のポインティングデバイスである入力部23、CRTやLCDである表示部24、プリンタである印刷部25、等をハードウエアとして備えるパソコンであって、このパソコンにオペレーティングシステム(OS)をインストールし、更にそのOS上で所定の処理・制御プログラムを動作させることにより、処理・制御に関する各種機能を達成する。
【0016】
図2は、処理・制御プログラムによって中央制御部20で実行される特徴的な機能を示すブロック構成図である。即ち、分光測定部1との信号のやりとりによって測定や処理を実行する測定・処理機能部30として、スペクトル測定機能部31、カイネティクス測定機能部32、フォトメトリック測定機能部33を独立に備え、この測定・処理機能部30により取得された各種データを利用してレポートを作成するためにレポート作成機能部34を備える。レポート作成機能部34は、作成するレポートの種類や目的等に応じて多数のテンプレートをテンプレート保存部35に保持している。テンプレートの詳細は後で説明する。
【0017】
上記構成を有する本実施例の分光測定システムにおいて、未知試料に対して定量測定を行ってレポートを作成し、それを印刷物として出力するまでの手順の一例について、図3及び図4を参照して説明する。図3はその手順を示すフローチャート、図4は処理動作を説明するための概念図である。
【0018】
まず、スペクトル測定機能部31を利用して、分析対象である未知試料のスペクトルを測定する(ステップS1)。即ち、作業者はスペクトル測定のための測定パラメータとして、波長範囲や波長ステップなどを入力部23により設定し、測定の開始を指示する。これを受けて中央制御部20の制御の下に、分光測定部1は未知試料に対してスキャン測定を実行し、所定の波長ステップ毎に測光値を取得する。データ処理・制御部2にあっては、この測光値に基づき吸光又は透過スペクトル等のスペクトル311が作成され、表示部24の画面上に表示される。また、ピーク検出処理が指定されている場合には、そのスペクトルのカーブから自動的にピークを判定し、ピーク位置の波長を列記したピークテーブル312が作成される。
【0019】
上記のようなスペクトル測定時に分光測定部1から送られてきたデータはメモリ21に一時的に記憶されるが、こうしたデータの取得が終了すると、表示部24の画面にはそれらデータを保存するためのファイル名と保存場所(保存先フォルダ等)の入力を指示するダイアログボックスが開き、作業者がファイル名及び保存場所を入力すると、記憶装置22内のその保存場所に該当する領域ににそのファイル名が付いた状態でデータファイルが格納される(ステップS2)。
【0020】
作業者は表示部24の画面上でスペクトル311やピークテーブル312を確認し、検量線を作成するのに適当な波長λを決める(ステップS3)。通常、スペクトルに現れる最大のピークの波長を指定するが、これに限るものではない。波長λを決めたならば、次に、今度はフォトメトリック測定機能部33を利用した測定を行うべく測定パラメータを入力部23で設定し、測定の開始を指示する(ステップS4)。すると、測定の開始に先立って、フォトメトリック測定データを保存するためのファイル名と保存場所(保存先フォルダ等)の入力を指示するダイアログボックスが表示部24の画面上に現れる(ステップS5)。作業者が入力部23から適宜のファイル名及び保存場所を入力すると(ステップS6)、中央制御部21の制御の下に測定が開始される。
【0021】
即ち、分光測定部1では、指定された波長λにおいて標準試料の濃度を複数段階に変化させたときの測光値がそれぞれ測定されるとともに、指定された波長λにおける未知試料の測光値が測定される(ステップS7、S8)。これにより、データ処理・制御部2では、濃度と測光値との関係を列記した標準試料テーブル331や1乃至複数の未知試料の測光値を列記した未知試料テーブル332が作成され、表示部24の画面上に表示される。その後、上記標準試料の測光値を用いて検量線333が作成され(ステップS9)、その検量線333を参照して、未知試料の測光値から試料濃度つまり定量値が算出される(ステップS10)。なお、この段階では、特に作業者がデータ保存の操作を行わない限り、フォトメトリック測定によって得られたデータはメモリ21に一時的に保持された状態で存在している。このとき、例えばメモり21が一杯である等の理由で一時的に記憶装置22が利用される場合があり得るが、これはメモリ21の代わりの一時的記憶であっていわゆる「保存」とは異なる。
【0022】
こうした測定の後、レポート作成機能部34を利用して、作業者は分析に関するレポートを作成する。このとき、テンプレート保存部35に用意されている多数のレポートテンプレートから適宜のものを選択する(ステップS11)。もちろん、既存のテンプレートを利用することなく、作業者自らがレポートのレイアウトを決めてもよい。レポートテンプレートでは、図4に示すように、規定の枠内に複数(この例では4個)のリンクオブジェクトの貼付枠が予め設定されており、各リンクオブジェクト枠は、上記スペクトル測定、カイネティクス測定又はフォトメトリック測定により得られた、例えば上記のような各データやファイル名等を呼び出してきて貼り付けるように設定されている。図4に示す例では、
リンクオブジェクト1:データファイルBのファイル名
リンクオブジェクト2:データファイルAのスペクトル311
リンクオブジェクト3:データファイルBの検量線333
リンクオブジェクト4:データファイルBの未知試料テーブル332
がそれぞれオブジェクトとして設定されている。リンクオブジェクトはレポートテンプレート毎に異なるので、レポートの目的や測定の種類に応じて、適宜のテンプレートを選択すればよい。
【0023】
さらに、このレポートにはリンクオブジェクトにより貼り付けられるデータ以外に、適宜のコメント文等の文字データを書き込むことができるようになっているから、作業者は必要に応じてこうしたデータを入力する(ステップS12)。レポート作成が終了すると、そのレポートを印刷部25から出力すべく、作業者は入力部23から印刷の指示を行う(ステップS13)。この指示を受けると中央制御部20は、レポートに記載されるデータが未保存データを含むか否かを判定する(ステップS14)。この場合、データファイルBが未保存であると判断されるから、ステップS15へと進んでその未保存データを記憶装置22に格納する。データ未保存であってもステップS6において既にファイル名及び保存場所が決められているから、ここでは作業者に対して何らの指示を仰ぐことなく、自動的に保存を実行することができる。そして、保存が終了するとその直後に印刷を実行する(ステップS16)。一方、ステップS14において未保存データがないと判断されると、そのまま印刷を実行する。
【0024】
以上のように、本実施例による分光測定システムでは、レポートの印刷が指示されたときにそのレポートに記載されるデータが未保存であるか否かがチェックされ、未保存データがある場合にはそのデータの保存動作が自動的、つまり作業者の操作を経ることなく行われ、その後に印刷が実行される。従って、印刷物としてレポートが得られるときには、そのレポートに記載されているデータは必ず記憶装置22に保存された状態となっており、レポートに対応したデータを電子的な記録として残すことができる。
【0025】
なお、上記実施例では、フォトメトリック測定が終了した後にレポートを作成する手順であったが、例えば多数の未知試料を順番に測定して定量結果を得るような場合に、他の未知試料の測定が終了していなくとも所望の未知試料の測定が終了した時点でレポートの印刷を指示して実行する等してもよい。このような場合には、その時点までに取得されたデータが予め設定された保存場所に一旦保存される。
【0026】
また、上記実施例は本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変更、修正、追加を行っても本発明に包含されることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るデータ処理装置を適用した一実施例である分光測定システムの概略構成図。
【図2】 本実施例の分光測定システムにおいて中央制御部で実行される特徴的な機能を示すブロック構成図。
【図3】 本実施例の分光測定システムにおいて定量測定結果を含むレポートを印刷物として出力するまでの手順を示すフローチャート。
【図4】 本実施例の分光測定システムにおける処理動作を説明するための概念図。
【符号の説明】
1…分光測定部
2…データ処理・制御部
20…中央制御部
21…メモリ
22…記憶装置
23…入力部
24…表示部
25…印刷部
30…測定・処理機能部
31…スペクトル測定機能部
32…カイネティクス測定機能部
33…フォトメトリック測定機能部
34…レポート作成機能部
35…テンプレート保存部
Claims (2)
- 分析機器での測定により取得された測定データやそれを処理することによって得られる解析データ等の各種データを記載したレポートを作成し、該レポートを印刷する機能を有する分析機器のデータ処理装置において、
a)前記レポートの印刷の指示に対応して、該レポートに記載される各種データが不揮発性の記憶装置に保存済みであるか否かを判定する保存確認手段と、
b)該保存確認手段により少なくとも一部のデータが未保存であると判定されたときに、印刷動作に先立って又は遅くとも印刷動作と同時にその未保存のデータを不揮発性の記憶装置に保存する保存実行手段と、
を備えることを特徴とする分析機器のデータ処理装置。 - c)前記各種データを取得するための測定や処理の実行に先立ち、前記不揮発性の記憶装置に保存する際の格納先及び保存時のファイル名を含む保存時情報の入力を作業者に対して要求する保存時情報要求手段と、
d)前記保存時情報が取得された後に始めて前記測定や処理の実行を許可する制御手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の分析機器のデータ処理装置。
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