JP4265136B2 - セミプロセス無方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、磁気特性および被膜性能に優れるセミプロセス無方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電磁鋼板は、基本特性である磁気特性に優れることは勿論であるが、モータやトランス等の製造過程では、その他にも種々の特性が要求される。かような製品の製造過程で必要な特性としては、例えば打抜性、溶接性(端面の溶接)、被膜密着性および耐食性等が挙げられる。
打抜性の向上のためには、絶縁被膜中への樹脂成分の添加が有効であることは公知の事実であるが、樹脂の添加は溶接時にブローホールの原因となるため、打抜性と溶接性を両立させることが課題であった。
【0003】
打抜性と溶接性を両立させる方法として、これまでにも、以下に述べるような種々の方法が提案されている。
(1) 鋼板や絶縁被膜に粗度を付ける方法(例えば特公昭60−190572号公報)。
(2) 絶縁被膜中にAlを含有させる方法(例えば特開平9−291368号公報)。
(3) 樹脂の耐熱性を向上させる方法(例えば特開平6−235070号公報)。
(4) 2層コートとする方法(上層に有機層、下層に無機層等)(例えば特公昭49−6743号公報)。
(5) 特殊な樹脂を使用して表層に樹脂を濃化させる方法(例えば特公平4-43715号公報)。
【0004】
このうち、(1) の方法は、高レベルで打抜性と溶接性の両立を図ることが可能であるが、占積率が低下するため磁気特性が損なわれるという問題がある。(2), (3)の方法は、無機コートの優れたTIG 溶接性および有機コートの優れた打抜性に匹敵させるためには、さらなる改善が必要である。(4) の方法は、2コート2ベークとなるため、コストがアップする問題がある。(5) の方法は、特殊な樹脂を使用しなければならず、やはりコストアップが避けられない。
【0005】
ところで、上記した電磁鋼板は、コア製造工程での焼鈍が必須ではないフルプロセス電磁鋼板とかかる焼鈍が必須のセミプロセス電磁鋼板に大別される。セミプロセス電磁鋼板は、焼鈍を行うことによって磁気特性が大きく向上する製品である。
また、かような電磁鋼板の製造に際しては、成分を調整したのち、熱間圧延を施し、ついで熱延板焼鈍を施しまたは施さずに、冷間圧延または温間圧延と焼鈍とを1回または数回行った後に、絶縁被膜処理を施して製造することが多いが、セミプロセス電磁鋼板では、さらに調質圧延等により歪みを与える場合がある。
【0006】
しかしながら、絶縁被膜処理後に調質圧延を行うと、被膜が破壊され、被膜性能が劣化する問題がある。
すなわち、連続焼鈍→調質圧延→絶縁被膜処理という設備構成になっている場合には問題はないものの、調質圧延が別ラインの場合、絶縁被膜処理が調質圧延前になることがあり、被膜性能の劣化が懸念されていた。この問題を避けるためには、連続焼鈍後、別ラインで調質圧延を施したのち、最初のラインに戻すか、またはさらに別ラインで絶縁被膜処理を施す必要が生じるが、このような場合にはいずれにしても、製造コストの上昇が避けられない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、絶縁被膜形成後に調質圧延を行っても優れた被膜性能を維持することができ、従って占積率や溶接性を損なうことなしに、優れた打抜性および耐食性を有し、さらには磁気特性にも優れた、セミプロセス無方向性電磁鋼板の有利な製造方法を提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
さて、発明者らの知見によれば、連続焼鈍→ロールコーター塗布→熱風炉焼き付けの連続ラインで従来の有機無機混合絶縁被膜を形成したのち、圧下率:8%程度の調質圧延を行った場合、耐食性が劣化することが判明した。
そこで、耐食性の劣化が生じた鋼板の表面を顕微鏡観察したところ、表面にクラックが入っていた。従って、調質圧延時に絶縁被膜が鋼板の伸びについていけずに、クラックが入り、そのため耐食性の劣化が生じたものと考えられる。
【0009】
この点について、さらに調査したところ、無機絶縁被膜と有機絶縁被膜で同様の処理を行った場合、無機絶縁被膜では著しく耐食性が劣化したが、有機絶縁被膜では耐食性の劣化はほとんど見られなかった。鋼板表面の顕微鏡観察によれば、有機絶縁被膜では外観に変化が見られなかったのに対し、無機絶縁被膜では著しくクラックが入っていた。
以上の結果から、絶縁被膜を調質圧延に耐えさせるためには、樹脂比率を上げればよいと考えられるが、TIG溶接性の観点や、歪取焼鈍後の被膜性能の観点から、樹脂比率を上げることは好ましくない。
【0010】
そこで、発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、
(1) 1コート1ベークで溶接性を確保しつつ打抜性を確保するためには、被膜中に含有させた樹脂を表層付近に効果的に偏析させること、
(2) また含有する樹脂や、その他の成分によらず、各種の被膜に応用できることが必要と考え、これらの観点から各種の焼き付け方法について綿密な検討を重ねた。
【0011】
その結果、従来多用されてきたガス炉や電気炉のように被膜表面から焼き付けるのではなく、被膜の下層から、すなわち鋼板側から加熱すれば、表層に樹脂が偏析して、打抜性と耐食性が格段に向上することの知見を得た。
また、鋼板側から加熱すると、ブローホールの原因となる低沸点成分が塗膜中から効果的に除去されて、溶接性が向上することも併せて知見された。
さらに、このようにして形成した絶縁被膜付き電磁鋼板は、その後に圧下率:8%程度の調質圧延を施したとしても、表面にクラックが入らず、打抜性や耐食性が劣化しないことが確認された。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0012】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.電磁鋼板用素材に、圧延処理と到達板温:600〜1000℃の焼鈍処理を1回または複数回繰り返して板厚を 0.1〜0.9 mmとしたのち、鋼板温度を60℃以下に冷却し、ついで得られた電磁鋼板の表面に、全樹脂量の50mass%以上が、粒径:30nm以上1μ m 以下のエマルション樹脂、ディスパーション樹脂および粉末樹脂の少なくともいずれかである樹脂と無機成分を含有する水系塗液を塗布し、鋼板側から加熱して焼き付けたのち、圧下率:10%以下の調質圧延を行うことを特徴とする、セミプロセス無方向性電磁鋼板の製造方法。
【0013】
2.上記1において、鋼板側からの加熱手段として、誘導加熱を用いることを特徴とする、セミプロセス無方向性電磁鋼板の製造方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の素材である電磁鋼板については、特に制限はないが、所望特性に応じて適宜成分調整を行うことが好ましい。例えば鉄損の向上には、比抵抗を上昇させることが有効なので、比抵抗向上成分であるSi,Al,Mn,Cr,P ,Ni等を添加することが好ましい。これらの成分比率は、所望する磁気特性に応じて決定すればよい。また、その他の微量成分およびSb,Snなどの偏析元素なども規制するものではないが、C,Sは、溶接性に不利な元素であり、また磁気特性の点からも低下させる方が望ましいので、Cは0.01mass%以下、Sは0.01mass%以下とすることが好ましい。
【0016】
上記のように成分調整したスラブに対して、圧延処理と到達板温:600 〜1000℃の焼鈍処理を1回または複数回繰り返して板厚を 0.1〜0.9 mmとする。ここで、圧延処理とは、熱間圧延および冷間圧延(温間圧延を含む)のことを、また焼鈍処理とは、熱延板焼鈍や中間焼鈍、仕上焼鈍のことを意味する。
ここに、焼鈍処理における焼鈍温度すなわち到達板温が 600℃に満たないと、ほとんど粒成長をしないため意味がなく、一方1000℃超えると粒成長しすぎ、調質圧延後の粒成長による磁気特性の改善代が小さくなるので、到達板温は 600〜1000℃の範囲に限定した。
なお、この時の板厚は最終板厚ではないが、磁気特性の観点からの最終板厚と調質圧延での板厚減少分を考慮して、上記した 0.1〜0.9 mmの範囲の板厚に制御するものとした。
【0017】
ついで、上記のようにして得られた電磁鋼板の温度を、60℃以下まで冷却したのち、該電磁鋼板の表面に、後述するように、全樹脂量の50mass%以上が、粒径:30nm以上1μ m 以下のエマルション樹脂、ディスパーション樹脂および粉末樹脂の少なくともいずれかである樹脂と無機成分を含有する水系塗液を塗布し、鋼板側から加熱して焼き付けたのち、圧下率:10%以下の調質圧延(以下、単に圧下率:10%以下の調質圧延という)を行う。
このように、樹脂と無機成分の水系塗液を鋼板側から加熱して焼き付けることにより、樹脂が表層付近に偏析して打抜性が向上し、その後の調質圧延後においても耐食性の劣化が抑制されるのである。
【0018】
ここに、60℃超の鋼板に水系塗液の塗布を行うと、コーターパン内で水系樹脂が凝集し易くなったり、ピンホールやはじきなどの外観上の問題が発生するため、絶縁被膜塗布前の鋼板温度は60℃以下とした。
また、粒成長性向上効果を付与する調質圧延の圧下率が、10%を超えても磁気特性のそれ以上の向上効果は見られず、また10%超の調質圧延を施した場合、絶縁被膜の焼き付けを鋼板側から行っても耐食性が劣化するおそれがあるため、調質圧延は10%以下に限定した。
【0019】
絶縁被膜用塗液としては、従来から開発されている種々のものが適用可能である。例えば、少なくともクロム酸塩と樹脂を含むコーティング処理液、少なくともリン酸塩と樹脂を含むコーティング処理液、少なくとも無機コロイドと樹脂を含むコーティング処理液など、あらゆる種類のコーティング処理液が適用可能であるが、少なくとも、樹脂と無機物を含み、かつ水に溶解または分散できる水系塗液であることが必要である。また、この水系塗液には、耐熱性や耐食性を向上させる目的で種々の成分を添加することも可能であるし、有機溶剤が添加されていてもよい。
【0020】
ここに、樹脂については、その種類が特に規制されることはなく、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、スチレン樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、尿素樹脂、酢酸ビニル樹脂、アルキッド樹脂、ポリオレフィン樹脂およびポリエステル樹脂等の種々の樹脂が適用可能であり、またこれらは、単体でも、共重合体、混合物としても適用可能である。さらに、水系樹脂であれば、形態はどのようなものでもよく、エマルション樹脂、ディスパーション樹脂および粉末樹脂等、種々の形態が考えられる。
ただし、固形分が存在しない完全な水溶性樹脂のみでは、打抜性の改善効果が小さいので、全樹脂量の50mass%以上は固形分を持つ樹脂(エマルション樹脂、ディスパーション樹脂、粉末樹脂)とする必要がある。
【0021】
なお、上記した固形分の粒径があまりに小さいと打抜性改善効果が小さくなるので、樹脂固形分の粒径は30nm以上とすることが必要である。一方、樹脂粒径の上限は、占積率の観点から1μm 以下とする。
また、水系塗液中における樹脂の濃度は特に規制されることはなく、目的とする目付量が得られる比重とすればよいが、0.5〜40mass%程度含有させることが好適である。
【0022】
上記した水系塗液の塗布方法としては、鋼板上に塗液を塗布することができればどのような方法でも良く、ロールコーター法、バーコーター法、エアーナイフ法およびスプレーコーター法等、各種方法を適用することができる。
【0023】
塗膜の焼き付け方法については、鋼板側(コーティング下層)から加熱する方式とすることが重要である。かような加熱方式としては、鋼板に電流を流したときに発生する渦電流を利用して加熱する誘導加熱方式が特に有利に適合する。この際、誘導加熱の周波数や昇温速度などが特に規制されることはなく、設備面から制約される加熱時間や効率、電磁鋼板の性質(板厚、透磁率等)等に応じて、適宜選択すればよい。
【0024】
ガス炉や電気炉など、従来から多用されてきたコーティング表面から加熱する方式では、昇温速度が速すぎると、最表層が先に乾燥してしまい、内部に低沸点物質(溶媒や反応生成物)が残留して膨れ等の外観不良の原因となっていたのに対し、本発明に従い鋼板側から加熱するとコーティング下層から焼き付けが進行するため、昇温速度が 150℃/s程度の超高速焼き付けでも外観不良は全く発生しない。
ここに、加熱温度すなわち最高到達板温は、 100〜350 ℃程度とするのが好適である。特に好ましくは 150〜300 ℃の範囲である。
【0025】
かくして、鋼板側(コーティング下層)から加熱することにより、コーティング表面から加熱した場合に比べて、打抜性や耐食性が格段に改善され、また溶接性も改善される。この理由は、明確ではないが、発明者らは次のように考えている。
1)コーティング下層から加熱した場合、未凝固の塗膜内で対流が起こり、粉末樹脂やエマルション樹脂、ディスパーション樹脂のように完全溶解ではなく粒子の形態をもっている樹脂が表層近傍に濃縮され、最表層樹脂量が多くなるために、打抜性が向上する。
2)コーティング表面から加熱した場合、表面が先に乾操し、コーティング内部に低沸点成分が残留し易いため、溶接時にガスとなってブローホールの原因となっていたのであるが、鋼板側(コーティング下層)から加熱した場合には、塗膜から低沸点成分が効果的に除去されるので、安定した溶接性が得られる。
3)鋼板面から加熱すると樹脂が表層に濃化するため、その後に10%以下の調質圧延を行っても、表面にクラックが入らず、従って耐食性の劣化は生じない。
【0026】
なお、上記のようにして形成する絶縁被膜の目付量が0.05g/m2未満の場合は、均一塗布が困難なため被膜性能が不安定となり、一方 7.0g/m2超になると被膜密着性が低下するので、絶縁被膜の目付量は乾燥重量で0.05〜7g/m2程度とするのが好ましい。
【0027】
【実施例】
以下、本発明の効果を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1
Si:0.35mass%、Al:0.001 mass%およびMn:0.1 mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になるスラブを、熱間圧延により板厚:2.8 mmの熱延板としたのち、1回冷延法で0.5 mmの最終板厚に仕上げたのち、N2:70 vol%, H2:30 vol%の雰囲気中にて 700℃,15秒の仕上焼鈍を行った。
ついで、30℃に冷却後、得られた鋼板の表面に、固形分換算(エチレングリコールは固形分として計算)で、重クロム酸マグネシウム:50mass%、アクリル/スチレン樹脂エマルション:20mass%、ホウ酸:15mass%、エチレングリコール:15mass%の配合の水系塗液(質量比で水:前記固形分=95:5)を、ロールコーターで塗布し、誘導加熱方式および熱風炉加熱方式により、それぞれ到達板温:300 ℃まで加熱する焼き付け処理を施し、乾燥目付量で片面当たり:0.5 g/m2の絶縁被膜を被成した。
その後、鋼板の一部については、さらに圧下率:4%の調質圧延を行った。
なお、熱風炉加熱では、30秒間で 300℃(平均:9℃/s)まで昇温した。また、誘導加熱方式では、30 kHzの周波数とし、投入電流を変化させることによって昇温速度を種々に変化させ、最高到達板温:300 ℃まで昇温した。
かくして得られた絶縁被膜付き電磁鋼板の打抜性、溶接性および耐食性について調べた結果を、図1(a), (b), (c) にそれぞれ比較して示す。
また、仕上焼鈍後の冷却温度を30〜100 ℃まで変更した場合の外観について調査した結果を、図2に示す。
【0028】
なお、打抜性、溶接性および耐食性は次のようにして評価した。
溶接性
鋼板を厚さが3cmになるように積層し、下記の条件で TIG溶接を行い、ブローホールが発生しない最大溶接速度で評価した。
電極:Th−W 2.6 mmφ
加圧力:10 N/mm2
電流:120 A
シールドガス:Ar(6リットル/min)
打抜性
下記の条件で、初期かえり高さが10μm になるように金型を調整して連続打抜き試験を行い、かえり高さが50μm に達するまでの打抜き回数で評価した。
15mmφスチール鋼ダイス使用
クリアランス:5%
打抜油:使用
耐食性
塩水噴霧試験(JIS Z 2371)5時間後の赤錆発生面積率で評価した。
【0029】
図1(a), (b), (c) に示したとおり、発明例は比較例に比べ、溶接性を劣化させることなしに、打抜性および耐食性の向上を図ることができた。
また、図2に示したとおり、仕上焼鈍後、60℃超の鋼板温度で水系塗料を塗布した場合には、ピンホールなどの外観不良が発生したのに対し、60℃以下まで冷却したのち水系塗料を塗布した場合には、いずれも外観は良好であった。
【0030】
実施例2
Si:3.0 mass%、A1:0.3 mass%およびMn:0.2 mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になるスラブを、熱間圧延により板厚:2.2 mmの熱延板としたのち、1回冷延法で0.35mmの最終板厚に仕上げたのち、N2:70 vol%,H2:30 vol%の雰囲気中にて 900℃,10秒の仕上焼鈍を行った。
ついで、60℃に冷却後、得られた鋼板の表面に、固形分換算で、アルミナ複合シリカ:60mass%、エポキシ樹脂ディスパーション:40mass%の配合の水系塗液(質量比で水:前記固形分=95:5)を、ロールコーターで塗布し、誘導加熱方式および熱風炉加熱方式により、それぞれ到達板温:250 ℃まで加熱する焼き付け処理を施し、乾燥目付量で片面当たり:0.8 g/m2の絶縁被膜を被成した。
その後、鋼板の一部については、さらに圧下率:8%の調質圧延を行った。
なお、熱風炉加熱では、30秒間で 250℃(平均:7.7 ℃/s)まで昇温した。また、誘導加熱方式では、80 kHzの周波数とし、投入電流を変化させることによって昇温速度を種々に変化させ、最高到達板温:250 ℃まで昇温した。
かくして得られた絶縁被膜付き電磁鋼板の打抜性、溶接性および耐食性について調べた結果を、図3(a), (b), (c) にそれぞれ比較して示す。
【0031】
図3(a), (b), (c) に示したとおり、発明例は比較例に比べ、昇温速度に関係なしに、打抜性、溶接性および耐食性とも大幅に改善することができた。
【0032】
実施例3
Si:1.2 mass%、A1:0.2 mass%およびMn:0.1 mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になるスラブを、熱間圧延により板厚:1.6 mmの熱延板としたのち、1回冷延法で0.35mmの最終板厚に仕上げたのち、N2:70 vol%,H2:30 vol%の雰囲気中にて 800℃,10秒の仕上焼鈍を行った。
ついで、30℃に冷却後、得られた鋼板の表面に、固形分換算で、第1リン酸アルミニウム:50mass%、重クロム酸カリウム:15mass%、アクリル/酢酸ビニル樹脂エマルション:30mass%、ホウ酸:5mass%の配合の水系塗液(質量比で水:前記固形分=95:5)を、ロールコーターで塗布し、誘導加熱方式および電気炉加熱方式により、それぞれ到達板温:300 ℃まで加熱する焼き付け処理を施し、乾燥目付量で片面当たり:1.2 g/m2の絶縁被膜を被成した。
その後、鋼板の一部については、さらに圧下率:8%の調質圧延を行った。
なお、熱風炉加熱では、30秒間で 300℃(平均:9℃/s)まで昇温した。また、誘導加熱方式では、30 kHzの周波数とし、投入電流を変化させることによって昇温速度を種々に変化させ、最高到達板温:300 ℃まで昇温した。
かくして得られた絶縁被膜付き電磁鋼板の打抜性、溶接性および耐食性について調べた結果を、図4(a), (b), (c) にそれぞれ比較して示す。
【0033】
図4(a), (b), (c) に示したとおり、発明例は比較例に比べ、昇温速度に関係なしに、打抜性、溶接性および耐食性とも優れた特性値を得ることができた。
【0034】
実施例4
Si:0.1 mass%、A1:0.001 mass%およびMn:0.1 mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になるスラブを、熱間圧延により板厚:2.8 mmの熱延板としたのち、1回冷延法で0.70mmの最終板厚に仕上げたのち、N2:70 vol%, H2:30 vol%の雰囲気中にて 700℃,15秒の仕上焼鈍を行った。
ついで、30℃に冷却後、得られた鋼板の表面に、固形分換算で、重クロム酸アルミニウム:50mass%、ポリエチレン樹脂エマルション:15mass%、第1リン酸アルミニウム:20mass%、エチレングリコール:15mass%の配合の水系塗液(質量比で水:前記固形分=95:5)を、ロールコーターで塗布し、誘導加熱方式および熱風炉加熱方式により、それぞれ到達板温:200 ℃まで加熱する焼き付け処理を施し、乾燥目付量で片面当たり:1.5 g/m2の絶縁被膜を被成した。
その後、鋼板の一部については、さらに圧下率:3%の調質圧延を行った。
なお、熱風炉加熱では、30秒間で 200℃(平均:6℃/s)まで昇温した。また、誘導加熱方式では、10 kHzの周波数とし、投入電流を変化させることによって昇温速度を種々に変化させ、最高到達板温:200 ℃まで昇温した。
かくして得られた絶縁被膜付き電磁鋼板の打抜性、溶接性および耐食性について調べた結果を、図5(a), (b), (c) にそれぞれ比較して示す。
【0035】
図5(a), (b), (c) に示したとおり、発明例は比較例に比べ、溶接性を劣化させることなしに、打抜性および耐食性を向上させることができた。
【0036】
実施例5
Si:0.35mass%、A1:0.003 mass%およびMn:0.1 mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になるスラブを、熱間圧延により板厚:2.6 mmの熱延板としたのち、1回冷延法で0.50mmの最終板厚に仕上げたのち、N2:70 vol%, H2:30 vol%の雰囲気中にて 750℃,30秒の仕上焼鈍を行った。
ついで、30℃に冷却後、30℃に冷却後、得られた鋼板の表面に、固形分換算で、リン酸クロム:90mass%、樹脂:10mass%とし、樹脂組成については、アクリル酸樹脂(水溶性)/アクリルエマルション樹脂(粒径:100 nm)の混合比率を種々に変更し、また不揮発分:3mass%に調整した水系塗液を、ロールコーターで塗布し、誘導加熱方式および電気炉加熱方式により、それぞれ到達板温:300℃まで加熱する焼き付け処理を施し、乾燥目付量で片面当たり:1.0 g/m2の絶縁被膜を被成した。
その後、鋼板の一部については、さらに圧下率:2%の調質圧延を行った。
なお、熱風炉加熱では、30秒間で 300℃(平均:9℃/s)まで昇温した。また、誘導加熱方式では、30 kHzの周波数とし、100 ℃/sの速度で 300℃まで昇温した。
かくして得られた絶縁被膜付き電磁鋼板の打抜性、溶接性および耐食性について調べた結果を、全樹脂中のエマルション樹脂比率との関係で、図6(a), (b),(c) にそれぞれ比較して示す。
【0037】
図6(a), (b), (c) に示したとおり、本発明によれば、全樹脂中のエマルション樹脂比率を上げることにより、溶接性を劣化させることなしに、打抜性および耐食性を効果的に向上させることができた。
【0038】
実施例6
Si:0.2 mass%、A1:0.2 mass%およびMn:0.2 mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になるスラブを、熱間圧延により板厚:2.2 mmの熱延板としたのち、1回冷延法で0.50mmの最終板厚に仕上げたのち、N2:70 vol%,H2:30 vol%の雰囲気中にて 800℃,10秒の仕上焼鈍を行った。
ついで、30℃に冷却後、得られた鋼板の表面に、固形分換算で、アルミナ複合シリカ:60mass%、エポキシ樹脂ディスパーション:40mass%の配合の水系塗液(質量比で水:前記固形分=95:5)を、ロールコーターで塗布し、誘導加熱方式および熱風炉加熱方式により、それぞれ到達板温:250 ℃まで加熱する焼き付け処理を施し、乾燥目付量で片面当たり:0.8 g/m2の絶縁被膜を被成した。
その後、鋼板に対して種々の圧下率で調質圧延を施した。
なお、熱風炉加熱では、30秒間で 250℃(平均:7.7 ℃/s)まで昇温した。また、誘導加熱方式では、80 kHzの周波数とし、投入電流を変化させることによって昇温速度を種々に変化させ、最高到達板温:250 ℃まで昇温した。
かくして得られた絶縁被膜付き電磁鋼板の打抜性、溶接性および耐食性について調べた結果を、図7(a), (b), (c) にそれぞれ比較して示す。
また、窒素雰囲気中にて 750℃,2hの歪取り焼鈍を施したのちの鉄損特性について調べた結果を、図8に示す。
【0039】
図7(a), (b), (c) に示したとおり、発明例は比較例に比べ、昇温速度に関係なしに、打抜性、溶接性および耐食性とも優れた特性値を得ることができた。
また、図8から明らかなように、発明例では比較例に比べて鉄損特性の劣化は生じなかった。
【0040】
【発明の効果】
かくして、本発明によれば、絶縁被膜処理を施した後に調質圧延を行うことが可能となり、しかも打抜性、耐食性および溶接性に優れた電磁鋼板を安定して得ることができ、モーターおよびトランス等の用途に供して極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の、焼き付け時における昇温速度と、かえり高さ50μm までの打抜き回数、限界溶接速度および赤錆発生面積率との関係を示したグラフである。
【図2】 実施例1の、仕上焼鈍後、塗布前の板温と、絶縁被膜の外観との関係を示したグラフである。
【図3】 実施例2の、焼き付け時における昇温速度と、かえり高さ50μm までの打抜き回数、限界溶接速度および赤錆発生面積率との関係を示したグラフである。
【図4】 実施例3の、焼き付け時における昇温速度と、かえり高さ50μm までの打抜き回数、限界溶接速度および赤錆発生面積率との関係を示したグラフである。
【図5】 実施例4の、焼き付け時における昇温速度と、かえり高さ50μm までの打抜き回数、限界溶接速度および赤錆発生面積率との関係を示したグラフである。
【図6】 実施例5の、全樹脂中のエマルション樹脂比率と、かえり高さ50μmまでの打抜き回数、限界溶接速度および赤錆発生面積率との関係を示したグラフである。
【図7】 実施例6の、調質圧延における伸び率と、かえり高さ50μm までの打抜き回数、限界溶接速度および赤錆発生面積率との関係を示したグラフである。
【図8】 実施例6の、調質圧延における伸び率と歪取り焼鈍後の鉄損との関係を示したグラフである。
Claims (2)
- 電磁鋼板用素材に、圧延処理と到達板温:600〜1000℃の焼鈍処理を1回または複数回繰り返して板厚を 0.1〜0.9 mmとしたのち、鋼板温度を60℃以下に冷却し、ついで得られた電磁鋼板の表面に、全樹脂量の50mass%以上が、粒径:30nm以上1μ m 以下のエマルション樹脂、ディスパーション樹脂および粉末樹脂の少なくともいずれかである樹脂と無機成分を含有する水系塗液を塗布し、鋼板側から加熱して焼き付けたのち、圧下率:10%以下の調質圧延を行うことを特徴とする、セミプロセス無方向性電磁鋼板の製造方法。
- 請求項1において、鋼板側からの加熱手段として、誘導加熱を用いることを特徴とする、セミプロセス無方向性電磁鋼板の製造方法。
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