JP4258891B2 - 防湿紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐ブロッキング性に優れ、かつ古紙回収性に優れた易離解性の防湿紙に関し、特に塗工紙の包装材として使用した場合、被包装物である塗工紙に悪影響を生じることがない防湿紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
防湿・防水性及び古紙回収性としての離解性に優れた紙及びその製造方法として、防湿層にワックス系エマルジョン単独若しくは合成樹脂エマルジョンとの混合液を利用したもの(特公平3-10759号公報)や、ワックス系エマルジョンと合成樹脂エマルジョンの混合液を利用したもの(特公平2-1671号公報、特開平6-200498号公報)がある。これらの方法によって製造される防湿・防水紙は防湿・防水性については既存の防湿紙並みの性能が得られているが、耐滑り性、耐ブロッキング性、離解性に関しては十分なものではなかった。
【0003】
特に、合成樹脂エマルジョンとワックス系エマルジョンとの2成分系の塗工により得られる防湿紙は、ワックス系エマルジョンの配合比率が耐ブロッキング性、耐滑り性、防湿性等の品質に影響を与えることが判明している。すなわち、ワックス系エマルジョンの配合比率が多いと防湿性は良好になるが、防湿層及び防湿層が接触する他の紙の面の静摩擦係数及び動摩擦係数が低下し、滑りやすいものとなる。逆に、ワックス系エマルジョンの配合比率が少ないとワックスに起因する滑りは減少するが、主に合成樹脂由来のブロッキングが防湿層と裏面あるいは防湿層が接触する製品等の間で発生し、耐ブロッキング性が劣るものとなる。
【0004】
この問題を解決するため、特開平8-226096号公報では、ワックスに起因する滑りや合成樹脂由来のブロッキングを防止するために、防湿層に重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウム、タルク等の無機系顔料を配合し、顔料粒子を防湿層より突出させることで表面に凹凸を保たせ、防湿層と防湿層が接触する他の製品等の間の表面接触面積を減少させることにより、ワックス転移に起因する滑りを防ぐ防滑性や耐ブロッキング性の向上を図っている。しかしながら、例えば、この防湿紙を用いて塗工紙を包装した場合、防湿層より突出した無機系顔料が塗工紙の塗工層に食い込むことによりブロッキングを生じたり、防湿紙の防湿層と塗工紙の塗工層とが擦れることによって塗工層表面に傷が付き、塗工紙の印刷性を低下させるといった問題が生じる。
【0005】
この様に防湿紙としての各種性能、特に包装する製品に悪影響を及ぼすことなく防湿性と耐ブロッキング性を両立させた性能を防湿紙に付与させることは非常に難しいものであり、これらの防湿紙が包装用途等に使用される場合、被包装物との間でのブロッキングによる作業上のトラブルや、擦れ等により被包装物表面に傷がつくことに起因した印刷性の低下などの問題のため、防湿紙を用いた包装において包装可能な製品が限定されてしまっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、古紙回収性としての離解性及び防湿・防水性能を維持しながら、耐ブロッキング性に優れ、また、包装時に被包装物への悪影響のない、特に塗工紙等の包装材においてはその印刷性を低下させることのない、より広範な製品の包装用途に使用可能な防湿紙を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決する手段として、紙基材の少なくとも片面に、固形分比率で合成樹脂100重量部に対しワックス1〜20重量部含有する防湿層を設けた防湿紙において、該防湿層が合成樹脂100重量部に対し平均粒径が5〜70μmである有機系顔料を0.1〜50重量部含有し、さらに、前記有機系顔料を構成するモノマーの少なくとも1つのモノマーが前記合成樹脂を構成するモノマーと同種とするものである。有機系顔料の形状はその成分と製法の特性から球状であって無機系顔料のように角がなく、かつ硬度が低いために、無機系顔料のように防湿層より突出した顔料が被包装物、例えば塗工紙の塗工層に食い込むことによってブロッキングを生じたり、防湿紙と塗工紙とが擦れることによって塗工紙の塗工層に傷が付き、塗工紙の印刷性を低下させたりすることがない。そしてなおかつ防湿層より突出した顔料の凹凸により、防湿層と接触する面との接触面積を減少させることができるため、耐ブロッキング性に優れ、包装材として使用した場合被方法物へ悪影響を生ずることのないなど、より広範な用途に使用可能な防湿紙を提供することが可能となる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の防湿紙の防湿層は合成樹脂、ワックス及び有機系顔料から成るものである。本発明で使用し得る合成樹脂は、水中離解性を有し、ワックスを配合することによって高度な防湿性を発現することが必要である。そのような性能を有する樹脂としては、スチレン・アクリル系樹脂やスチレン・ブタジエン系樹脂等が挙げられる。具体的には、スチレン及びスチレン誘導体、ブタジエン及びブタジエン誘導体、アクリル酸(メタクリル酸)及び、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステルやメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステルなどを共重合した樹脂である。
【0009】
本発明では、上述の性能を有する合成樹脂であれば何れも使用可能であるが、特に防湿性能を重視する際には使用する有機系顔料との組み合わせが重要なポイントとなる。本発明者らが鋭意検討した結果、有機系顔料を構成するモノマーの少なくとも1つを合成樹脂を構成するモノマーと同種のモノマーとすることにより、より好ましい効果が得られることが明らかとなった。例えば、使用される合成樹脂がスチレン・アクリル系樹脂であれば有機系顔料はスチレン系樹脂かアクリル系樹脂で構成されているものが好ましく、用いられる合成樹脂がスチレン・ブタジエン系樹脂であればスチレン系樹脂やブタジエン系樹脂で構成されているものが好ましい。有機系顔料が、合成樹脂を構成するモノマーの少なくとも1種のモノマーから構成されているものは、合成樹脂と有機系顔料の接着面が強固となり、温度変化等で微小なひびが入ることが抑制されるため、合成樹脂を構成するモノマーを含まないものに比べて、防湿層としての造膜性に優れており、よりバリヤー性の高い防湿層を形成することが可能になると考えられる。なお、これら有機系顔料は2種以上併用することも可能である。
【0010】
本発明で使用し得るワックスは、パラフィン系ワックス、ポリエチレン系ワックス、マイクロクリスタリン系ワックス等の公知のワックスを使用することができるが、2種以上のワックスを混合して使用することも可能である。
【0011】
合成樹脂とワックスとの配合割合は固形分比率で合成樹脂100重量部に対して、ワックス1〜20重量部とする必要がある。ワックスの配合割合が1重量部未満では防湿性が劣り、20重量部を超えると防湿性は良好であるが、ワックスに起因する滑りが大きくなり、また、塗料の造膜性が低下するために好ましくない。
【0012】
本発明で使用し得る有機系顔料の平均粒径は5〜70μmであることが必要である。平均粒径が5μm未満になると顔料が防湿層より十分に突出しなくなり、凹凸が少なくなるために十分な耐ブロッキング性を得ることができない場合が生じる。また、平均粒径が70μmを超えると十分な耐ブロッキング性は得られるが、塗工の際にスクラッチやストリークなどによる塗工面の不均一が生じやすくなり、防湿性能への影響を考慮するとやはり好ましくない。
【0013】
有機系顔料の配合割合は固形分比率で合成樹脂100重量部に対して、有機系顔料が0.1〜50重量部である必要がある。有機系顔料の配合割合が0.1重量部未満では耐ブロッキング性が劣り、50重量部を超すと耐ブロッキング性は良好であるが、防湿層の造膜性が低下し、十分な防湿性を得ることができなくなるために好ましくない。
【0014】
有機系顔料の分散方法には特に制限はないが、耐ブロッキング性、防滑性の観点からは有機系顔料が均一に分散していることが好ましく、分散剤の使用も可能であるが、防湿性等の品質を考慮すると分散剤は少量の添加が好ましい。通常、合成樹脂とワックスはエマルジョンの状態で供給されており、これを適宜混合して紙基材に塗布し、乾燥して防湿塗工層を形成させる。有機系顔料は合成樹脂とワックスの混合エマルジョン液中に分散すればよいが、この時エマルジョンが破壊されてしまうような強い攪拌はしてはならない。
【0015】
本発明の防湿層の紙基材への塗工量は3〜30g/m2とすることが好ましく、5〜25g/m2が特に好ましい。塗工量が3g/m2未満では防湿性等の品質が十分ではなく、30g/m2を超えると乾燥能力への負担及び各種原価が高くなり、製造上好ましくない。
【0016】
また、本発明の防湿層には、製造コストの低減等を目的として重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウム、タルク等の無機系顔料を混合して使用することも可能である。ただし、無機系顔料の平均粒径は、有機系顔料の平均粒径と同等かそれより小さいことが必要である。無機系顔料の平均粒径が有機系顔料の平均粒径より大きい場合、内容物への悪影響、例えば塗工紙等の包装時に無機系顔料が塗工紙の塗工層に埋没することによりブロッキングを生じたり、防湿紙と塗工紙が擦れることによって塗工層に傷が付き、塗工紙の印刷性を低下させるといった問題等、が生じることが懸念される。
【0017】
塗工方法は、一般に使用されているバーコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、カーテンコーター等塗工方式のものが使用できる。また、乾燥条件は特に制限されるものではないが、使用するワックスの融点、若しくはそれ以上の温度であることが好ましい。本発明に於いては、上記の塗工面とは反対の基紙表面に防滑性やカール防止等を目的として公知の材料を用いて塗工してもよい。
【0018】
基材となる紙は、ティッシュやトイレットペーパー等のウエット強度が極端に低く塗工適性のない紙以外は、使用可能である。包装用途としては、強度の強いクラフト紙が好適である。
【0019】
【実施例】
以下、本発明を実施例に従って更に詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、表1中の顔料の粒径はレーザー回折法を用いて測定した。
【0020】
[実施例1]
スチレン・アクリル系合成樹脂エマルジョン(商品名:サイビノールX−597−901E−16、サイデン化学(株)製)100重量部にワックス系エマルジョン(商品名:サイビノールSKP−W、サイデン化学(株)製)を固形分比率で4重量部配合し、次に粒径が31μmのメタクリル酸メチル・スチレン系樹脂の有機系顔料(商品名:G−200、根上工業(株)製)を固形分比率で10重量部混合し、撹拌して混合液を作製した。この混合液を坪量75g/m2の未晒クラフト紙の片面に、マイヤーバーにて塗工した後、110℃で1分間乾燥を行い、防湿紙を作製した。この混合液の概要及び塗工量は、以下の各実施例、比較例とともに表1に示した。得られた防湿紙について、透湿度、耐ブロッキング性、塗工紙印刷性、離解性を測定して評価を行い、結果を表2に示した。尚、各評価方法は次に示す通りとした。
▲1▼透湿度:JIS Z 0208(カップ法)B法に基づき、塗工面を外側にして測定した。透湿度が50g/m2・24hr以下であれば実用上十分であると判断される。
▲2▼耐ブロッキング性:防湿紙を20℃、65%RHで調湿後、防湿紙の防湿層と塗工紙(商品名:NPiコート、日本製紙(株)製)を重ね合わせ、テストカレンダー(線圧50kg/cm、通紙速度10m/min)に1回通し、直ちに剥離させた時のブロッキングの有無を評価した。
評価基準;
○:剥離時に抵抗がなく、防湿紙の防湿層と塗工紙の界面で音が全くしない。
×:剥離時に抵抗があり、防湿紙の防湿層と塗工紙が接着しているため、防湿紙の防湿層と塗工紙の界面でパリパリと音がする。
▲3▼塗工紙印刷性:学振型染色堅牢度試験機を用い、防湿紙を摩擦部、塗工紙を摺動台上に固定して1往復させ(荷重4.90N)、防湿塗被層と塗工紙を擦り付けた。その後塗工紙をRI印刷機で印刷し、インクの抜けを目視で評価した。
評価基準;
○:インク抜けが見られない。
×:インク抜けが見られる。
▲4▼離解性:JIS P 8147 パルプ試験用手すき紙調整方法に示されている標準離解機(Tappi標準離解機使用:3000rpm)を用いて、常温の水道水に約2.5cm角に裁断した防湿紙をパルプ濃度が3%となる量を加えて、15分間離解を行った。離解後の原料から作製した手抄き紙を目視で評価した。
評価基準;
◎:未離解物が全く認められず、上質紙と同程度に離解される。
○:微小な未離解の結束繊維が確認できる。
△:未離解の紙片が確認できる。
×:離解されない紙片、フィルム、樹脂等がそのまま残る。
【0021】
[実施例2]
有機系顔料の配合部数を30重量部に変えた以外は、実施例1と同様にして防湿紙を作製し、各評価を行い、結果を表2に示した。
【0022】
[実施例3]
有機系顔料を粒径15μmのメタクリル酸メチル・スチレン系樹脂の有機系顔料(商品名:G−400、根上工業(株)製)に変えた以外は、実施例1と同様にして防湿紙を作製し、各評価を行い、結果を表2に示した。
【0023】
[実施例4]
有機系顔料を粒径25μmのスチレン系樹脂の有機系顔料(商品名:082E−1、サイデン化学(株)製)に変えた以外は、実施例1と同様にして防湿紙を作製し、各評価を行い、結果を表2に示した。
【0024】
[実施例5]
有機系顔料を粒径10μmのスチレン系樹脂の有機系顔料(商品名:082E−2、サイデン化学(株)製)に変えた以外は、実施例1と同様にして防湿紙を作製し、各評価を行い、結果を表2に示した。
【0025】
[実施例6]
合成樹脂をスチレン・ブタジエン系合成樹脂エマルジョン(商品名:SX−1103、日本ゼオン(株)製)変えた以外は、実施例4と同様にして防湿紙を作製し、各評価を行い、結果を表2に示した。
【0026】
[実施例7]
合成樹脂をスチレン・ブタジエン系合成樹脂エマルジョン(商品名:SX−1103、日本ゼオン(株)製)変えた以外は、実施例1と同様にして防湿紙を作製し、各評価を行い、結果を表2に示した。
【0027】
[比較例9]有機系顔料を粒径25μmの低密度ポリエチレン系樹脂の有機系顔料(商品名:UF−80、住友精化(株)製)に変えた以外は、実施例1と同様にして防湿紙を作製し、各評価を行い、結果を表2に示した。
【0028】
[比較例1]
有機系顔料を添加しない以外は、実施例1と同様にして防湿紙を作製し、各評価を行い、結果を表2に示した。
【0029】
[比較例2]
有機系顔料の配合部数を80重量部に変えた以外は、実施例1と同様にして防湿紙を作製し、各評価を行い、結果を表2に示した。
【0030】
[比較例3]
有機系顔料を粒径3μmのスチレン系樹脂の有機系顔料(商品名:PG−1、サイデン化学(株)製)に変えた以外は、実施例1と同様にして防湿紙を作製し、各評価を行い、結果を表2に示した。
【0031】
[比較例4]
有機系顔料に変えて粒径20μmの重質炭酸カルシウム(商品名:SS−30、日東粉化工業(株)製)を使用した以外は、実施例1と同様にして防湿紙を作製し、各評価を行い、結果を表2に示した。
【0032】
[比較例5]
有機系顔料に変えて粒径30μmの軽質炭酸カルシウムを使用した以外は、実施例1と同様にして防湿紙を作製し、各評価を行い、結果を表2に示した。
【0033】
[比較例6]
有機系顔料に変えて粒径20μmの雲母(商品名:A−21、(株)山口雲母工業製)を使用した以外は、実施例1と同様にして防湿紙を作製し、各評価を行い、結果を表2に示した。
【0034】
[比較例7]
有機系顔料を添加しない以外は、実施例6と同様にして防湿紙を作製し、各評価を行い、結果を表2に示した。
【0035】
[比較例8]
防湿紙として、ポリエチレンラミネート紙を使用し、実施例1と同様にして各評価を行い、結果を表2に示した。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
表2に示したように、本発明の実施例は何れも透湿度、耐ブロッキング性、塗工紙印刷性及び離解性において優れている。これに対して、顔料を使用していない比較例1、比較例7では耐ブロッキング性が非常に悪化する。有機系顔料の配合部数が合成樹脂に対して50重量部を超えた比較例2では防湿性が低下し、有機系顔料の粒径が5μm未満の比較例3では防湿性が低下し、ブロッキング性が悪化する。有機系顔料に変えて無機系顔料を使用した比較例4では塗工紙印刷性が低下し、比較例5、6では耐ブロッキング性が悪化し、塗工紙印刷性も低下する。比較例7はポリエチレンラミネート紙であるため離解性が劣る。有機系顔料を構成するモノマー成分が合成樹脂を構成するモノマー成分同種のものではない比較例9は防湿性が若干低下する。
【0039】
【発明の効果】
本発明によって得られる防湿紙は、防湿、防水性は勿論のこと、耐ブロッキング性に非常に優れているうえ、包装している製品に悪影響を及ぼすことがないため、更に幅広い製品に対しての使用が可能となる。
Claims (1)
- 紙基材の少なくとも片面に、固形分比率で合成樹脂100重量部に対しワックス1〜20重量部を含有する防湿層を設けた防湿紙において、該防湿層が合成樹脂100重量部に対し平均粒径5〜70μmの有機系顔料を0.1〜50重量部含有し、前記有機系顔料を構成するモノマーの少なくとも1つのモノマーが前記合成樹脂を構成するモノマーと同種であることを特徴とする防湿紙。
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