JP4240905B2 - インジウム系酸化物微粒子およびその製造方法、ならびにインジウム系酸化物微粒子を含む透明導電性被膜形成用塗布液、透明導電性被膜付基材、表示装置 - Google Patents

インジウム系酸化物微粒子およびその製造方法、ならびにインジウム系酸化物微粒子を含む透明導電性被膜形成用塗布液、透明導電性被膜付基材、表示装置 Download PDF

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【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、新規なX線回折パターンを有するインジウム系酸化物微粒子分散ゾルおよびその製造方法、ならびにインジウム系酸化物微粒子を含む透明導電性被膜形成用塗布液、透明導電性被膜付基材、表示装置に関する。
さらに詳しくは、インジウム系酸化物微粒子が互いに凝集、焼結、融着等することなく安定で単分散のゾルであり、得られる透明導電性被膜形成用塗布液が安定であり、このため導電性、膜の強度、外観、製造信頼性等に優れた透明導電性被膜付基材等に好適に用いることのできるインジウム系酸化物微粒子分散ゾルおよびその製造方法ならびに該微粒子を含んでなる透明導電性被膜形成用塗布液および透明導電性被膜付基材、表示装置に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
従来より、陰極線管、蛍光表示管、液晶表示板などの表示パネルのような透明基材の表面の帯電防止および反射防止を目的として、これらの表面に帯電防止機能および反射防止機能を有する透明被膜を形成することが行われていた。
また、陰極線管などから電磁波が放出されること知られており、従来の帯電防止、反射防止に加えてこれらの電磁波および電磁波の放出に伴って形成される電磁場を遮蔽することが望まれている。
【0003】
これらの電磁波などを遮蔽する方法の一つとして、陰極線管などの表示パネルの表面に電磁波遮断用の導電性被膜を形成する方法がある。帯電防止用導電性被膜であれば表面抵抗が少なくとも108Ω/□程度の表面抵抗を有していれば十分であるのに対し、電磁遮蔽用の導電性被膜では102〜104Ω/□のような低い表面抵抗を有することが必要であった。
【0004】
また、低表面抵抗の導電性被膜をAgなどの金属微粒子を含む導電性被膜形成用塗布液を用いて基材の表面に金属微粒子含有被膜を形成する方法が知られている。この方法では、金属微粒子含有被膜形成用塗布液として、コロイド状の金属微粒子が極性溶媒に分散したものが用いられている。このような塗布液では、コロイド状金属微粒子の分散性を向上させるために、金属微粒子表面がポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンまたはゼラチンなどの有機系安定剤で表面処理されている。しかしながら、このような金属微粒子含有被膜形成用塗布液を用いて形成された導電性被膜は、被膜中で金属微粒子同士が安定剤を介して接触するため、粒界抵抗が大きく、被膜の表面抵抗が低くならないことがあった。このため、製膜後、400℃程度の高温で焼成して安定剤を分解除去する必要があるが、安定剤の分解除去をするため高温で焼成すると、金属微粒子同士の融着や凝集が起こり、導電性被膜の透明性やヘーズが低下するという問題があった。また、陰極線管などの場合は、高温に晒すと劣化してしまうという問題もあった。
【0005】
また、金属微粒子は前記導電性酸化物と異なり本来光を透過しないために金属微粒子を用いて形成された導電性被膜は導電性被膜中の金属微粒子の密度や膜厚等に依存して透明性が低下する問題もあった。
さらに従来のAg等の金属微粒子を含む透明導電性被膜では、耐塩水性や耐酸化性が低く、金属が酸化されたり、イオン化による粒子成長したり、また場合によっては腐食が発生することがあり、塗膜の導電性や光透過率が低下し、表示装置が信頼性を欠くという問題があった。
【0006】
また、前記した従来の透明導電性被膜を形成するために用いられる塗布液、なかでも電磁波遮蔽性能に優れた低表面抵抗の透明導電性被膜を形成するために金属微粒子などの導電性の高い微粒子を配合した塗布液は安定性が不充分で、得られる透明導電性被膜の被膜表面は必ずしも表面が平滑でなく、筋条あるいはスポット状の外観上の欠陥ができることがあり製品の歩留まりを低下させる問題があった。さらに従来の塗布液を用いた場合は基板の清浄度の影響を受けて外観上の欠陥が派生しやすく製造信頼性に欠ける問題があった。
【0007】
また、金属微粒子の代わりに、Sbドープ酸化錫またはSnドープ酸化インジウムのような導電性酸化物を含む塗布液を用いて形成しようという試みもなされている。このような導電性酸化物粒子は、錫化合物、Sb化合物を含むスズ化合物、インジウム化合物、錫化合物を含むインジウム化合物等の水溶液を加水分解して加水分解物を調製し、これを乾燥し、ついで高温で焼成することによって製造されていた(特開昭63−11519号公報)。このような方法は導電性酸化物微粒子は凝集体として得られ、しかも粒子径分布が不均一である。このため凝集体を酸水溶液またはアルカリ水溶液中で粉砕処理して導電性酸化物微粒子がコロイド粒子として水に分散した水性ゾルとすることが行われていた(特開昭62−230617号公報)。
【0008】
このような導電性酸化物は、一般に金属よりも導電抵抗が大きいので、金属製帯電防止性被膜の場合よりも膜厚を厚くする必要があった。しかしながら、導電性被膜の膜厚は、10〜200nm程度にしないと反射防止効果は発現しないため、従来のSbドープ酸化錫またはSnドープ酸化インジウムのような導電性酸化物では、表面抵抗が低く、電磁波遮断性に優れるとともに、反射防止にも優れた導電性被膜を得ることが困難であるという問題があった。
【0009】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決し、帯電防止性、反射防止性および電磁遮蔽性等に優れるとともに、被膜の強度、透明性にも優れた透明導電性被膜の形成に用いることのできるインジウム系酸化物微粒子、該微粒子の製造方法ならびに該微粒子を含んでなる透明導電性被膜形成用塗布液および透明導電性被膜付基材、表示装置を提供することを目的としている。
【0010】
【発明の概要】
本発明に係るインジウム系酸化物微粒子は、 X線回折パターンにおいて、少なくともインジウム酸化物に帰属される面指数(2,2,2)におけるピーク(PA)およびインジウム水酸化物に帰属される面指数(2,0,0)におけるピーク(PB1)、面指数(2,2,0)におけるピーク(PB2)を有し、 ピーク(PB2)のピーク高(HPB2)とピーク(PA)のピーク高(HPA)との比(HPB2)/(HPA)が1/2以下であり、
酸化インジウム、S n またはFがドーピングされた酸化インジウムを含むことを特徴としている。
【0011】
前記微粒子は、記載のインジウム系酸化物微粒子が、分散媒中の水の割合が80重量%以上の分散媒に酸化物としての濃度が4重量%となるように分散させたゾルの電気伝導度が100μS/cm以下であることが好ましい。
前記インジウム系酸化物微粒子の製造方法は、下記の工程からなることを特徴としている;
(a)インジウム水酸化物、あるいは錫またはフッ素を含むインジウム水酸化物を含むインジウム系水酸化物の有機溶媒分散液を調製する工程、
(b)前記有機溶媒分散液を120〜400℃の温度範囲で、耐圧容器内で加熱処理する工程。
【0012】
また、下記の工程から前記インジウム系酸化物微粒子は製造することもできる;
(a')インジウム水酸化物、あるいは錫またはフッ素を含むインジウム水酸化物を含むインジウム系水酸化物と、酸化インジウム、S n またはFがドーピングされた酸化インジウムを含むインジウム系酸化物種粒子との有機溶媒混合分散液を調製する工程、
(b)得られた有機溶媒分散液を120〜400℃の温度範囲で、耐圧容器内で加熱処理する工程。
【0013】
脱水あるいは他の有機溶媒に置換し、さらに、120〜400℃の温度範囲で加熱処理すること、および/または
脱イオン処理すること
を施してもよい。
本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液は前記インジウム系酸化物微粒子と極性溶媒とを含むことを特徴としている。
【0014】
本発明に係る透明導電性被膜付基材は、
基材と、基材上の前記インジウム系酸化物微粒子を含む透明導電性微粒子層と、該透明導電性微粒子層上に設けられ、該透明導電性微粒子層よりも屈折率が低い透明被膜とからなることを特徴としている。
本発明に係る表示装置は、
前記透明導電性被膜付基材で構成された前面板を備え、透明導電性被膜が該前面板の外表面に形成されていることを特徴としている。
【0015】
【発明の具体的説明】
以下、本発明について具体的に説明する。
インジウム系酸化物微粒子
本発明に係るインジウム系酸化物微粒子は、X線的に結晶性を有しており、 X線回折パターンにおいて、少なくともインジウム酸化物に帰属される面指数(2,2,2)におけるピーク(PA)およびインジウム水酸化物に帰属される面指数(2,0,0)におけるピーク(PB1)、面指数(2,2,0)におけるピーク(PB2)を有し、
ピーク(PB2)のピーク高(HPB2)とピーク(PA)のピーク高(HPA)との比(HPB2)/(HPA)が1/2以下、好ましくは1/4以下である。
【0016】
このような本発明に係るインジウム系酸化物微粒子のX線回折パターンを図1に示す。図1は後述する実施例1で得られた錫含有酸化インジウム微粒子のX線回折パターンである。
前記ピーク比(HPB2)/(HPA)が1/2を越えると、インジウム水酸化物が多すぎて充分な導電性が得られない。また、凝集することなく実質的にピーク(PB2)のない(インジウム水酸化物の存在しない)インジウム系酸化物微粒子を得ることは困難である。
【0017】
このようなインジウム系酸化物微粒子は、平均粒子径が2〜200nm、好ましくは5〜150nmの範囲にあることが好ましい。
インジウム系酸化物微粒子の平均粒子径が前記下限未満の場合は、粒界抵抗が増すために粒子層の表面抵抗が急激に大きくなり、本発明の目的を達成しうる程度の低抵抗値を有する被膜を得ることができないことがある。
【0018】
インジウム系酸化物微粒子の平均粒子径が前記上限を越えると、粒子が大きすぎて粒子同士の接点が減少し充分な導電性が得られないことがあり、また膜強度や基材との密着性が低下したり、得られる透明導電性被膜のヘーズが高くなることがある。
なお、本発明のインジウム系酸化物微粒子の平均粒子径は、TEM写真を撮影し20個の粒子について粒子径を測定しこの平均値を平均粒子径として求めることができる。
【0019】
上記インジウム系酸化物微粒子としては、酸化インジウム、SnまたはFがドーピングされた酸化インジウムが用いられる。このときのSnまたはFの含有量は1〜14重量%、好ましくは2〜12重量%の範囲である。
このようなインジウム系酸化物微粒子は酸化物系導電性微粒子の中でも導電性が高く、得られる透明導電性被膜は帯電防止性能、電磁波遮蔽性能に優れるとともに、金属微粒子を用いた透明導電性被膜と異なり透明性に優れている。
【0020】
本発明に係るインジウム系酸化物微粒子は、そのまま粉体として、使用することもできるが、水および/または有機溶媒に分散した分散ゾルとして使用することもできる。
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプロピルグリコールなどのアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用してもよい。
【0021】
また、分散ゾル中のインジウム系酸化物微粒子濃度は酸化物として1〜50重量%、さらには2〜40重量%の範囲にあることが好ましい。
インジウム系酸化物微粒子濃度が酸化物として前記下限未満の場合は、たとえば透明導電性被膜形成用塗布液に用いたときに、得られる塗布液の濃度が低いために、一回の塗布で厚膜の被膜の形成が困難であったり、そのために複数回の塗布、乾燥等を要するので生産性が低下する問題がある。
【0022】
インジウム系酸化物微粒子濃度が酸化物として前記上限を越えるものは得ることが困難であるとともに、実用的にはこの濃度まで高濃度にする必要性もない。
本発明に係るインジウム系酸化物微粒子は、電気伝導度が低く、酸化物としての濃度が4重量%となるように、分散媒中の水の割合が80重量%以上の分散媒に分散させた分散ゾルの電気伝導度が100μS/cm以下、さらには50μS/cm以下であることが望ましい。
【0023】
前記電気伝導度が前記範囲内にあれば、インジウム系酸化物微粒子が分散された分散ゾルの安定性が高く、このためようなインジウム系酸化物微粒子分散ゾルを配合して得られる、後述する透明導電性被膜形成用塗布液の安定性も高く、基材との密着性、膜の強度、透明性に優れた被膜を得ることができるとともに、得られた膜にムラが発生することがなく、外観も良好な被膜を得ることができる。
【0024】
インジウム系酸化物微粒子の製造方法
本発明に係る前記インジウム系酸化物微粒子の製造方法は、下記の工程からなる。
工程(a)
まず、インジウム水酸化物、あるいは錫またはフッ素を含むインジウム水酸化物の有機溶媒分散液(以下、インジウム系水酸化物分散液という)を調製する。
【0025】
インジウム系水酸化物としては、水酸化物として入手可能なものであればこれを有機溶媒に分散させて調製してもよい。
有機溶媒としては前記したゾルで使用されるものと同様の有機溶媒を用いることができる。なお、分散媒として有機溶媒単独(すなわち水分を含んでいないこと)が好ましいが、必要に応じて少量の水を含んでいてもよい。
【0026】
また、本発明では、水酸化物を直接分散させることなく、以下のようにインジウム化合物水溶液と必要に応じて錫および/またはフッ素化合物水溶液を使用し、含まれるインジウム系化合物を加水分解し、必要に応じて洗浄して得られたインジウム系水酸化物が有機溶媒に分散された分散液を用いることが好適である。
インジウム化合物としては水溶性の化合物であればとくに制限はなく、例えば硝酸インジウム、硫酸インジウム、塩化インジウム等が挙げられる。
【0027】
インジウム化合物水溶液の濃度は、酸化物In23として概ね1〜20重量%、さらには4〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
インジウム化合物水溶液の濃度が酸化物In23として1重量%未満の場合は、濃度が低いために生産効率が低く、インジウム化合物水溶液の濃度が酸化物In23として20重量%を越えると、最終的に得られるインジウム系酸化物微粒子の粒子径分布がブロードに、すなわち粒子径が不均一となる傾向がある。
【0028】
また、錫化合物としては錫酸カリウム、錫酸ナトリウム、フッ化錫、塩化錫等が挙げられる。フッ素化合物としてはフッ化錫、フッ化アンモニウム等が挙げられる。
インジウム化合物水溶液と混合する錫化合物水溶液および/またはフッ素化合物水溶液の量は、得られるインジウム系酸化物微粒子中のSnおよび/またはFの含有量が前記した範囲となるような量であればよい。
【0029】
また、混合して得られるインジウム水和物分散液のpHを後述する範囲に調整するために混合するアルカリ金属水酸化物水溶液としてはNaOH、KOH、RbOH、CsOHなどの水溶液を用いることができる。
インジウム化合物水溶液と、必要に応じて錫化合物水溶液および/またはフッ素化合物水溶液とを、さらに必要に応じてアルカリ金属水酸化物水溶液とを混合してインジウム水酸化物、あるいは錫および/またはフッ素を含むインジウム水酸化物分散液を調製する。
【0030】
このときのインジウム系水酸化物分散液の温度は20〜80℃、さらには25〜60℃の範囲にあることが好ましい。また分散液のpHは8〜12、さらには9〜11.5の範囲にあることが好ましい。
分散液の温度が前記下限未満の場合は、インジウム水酸化物の粒子径が小さいためか、最終的に得られるインジウム系酸化物微粒子が凝集体となる傾向がある。
【0031】
分散液の温度が前記上限を越えると、大きさの不均一なインジウム系水酸化物が生成し、得られるインジウム系酸化物微粒子の粒子径が不均一となる傾向がある。
また、分散液のpHが前記下限未満の場合は、温度が高い場合と同様に、大きさの不均一なインジウム系水酸化物が生成し、得られるインジウム系酸化物微粒子の粒子径が不均一となる傾向がある。また、分散液のpHが前記上限を越えると、洗浄によっても容易にアルカリを除去することが困難となり、インジウム系酸化物微粒子中のアルカリ金属の残存量が多くなり、導電性が不充分となることがある。
【0032】
ついで、得られたインジウム系水酸化物分散液は、必要に応じて、上記温度、pHの範囲で熟成してもよい。熟成中は撹拌してもよく、撹拌しなくてもよい。このときの熟成時間は温度、pHによって異なるが、概ね0.2〜24時間程度である。
こうして得られたインジウム系水酸化物分散液中に、インジウム系水酸化物は、凝集することなく微粒子状で分散している。
【0033】
このような熟成を行うことによって、最終的に得られるインジウム系酸化物微粒子の粒子径分布が均一になる傾向がある。
ついで、インジウム系水酸化物分散液は、必要に応じて、インジウム系水酸化物を濾過分離し、洗浄してもよい。洗浄する方法としては、アルカリ金属および/またはインジウム化合物等に由来するカチオンおよびアニオンを除去できれば特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができる。例えば温水を充分用いて洗浄してもよく、アンモニア水あるいは酸を用いて洗浄してもよい。さらに、必要に応じてイオン交換樹脂にて脱イオン(カチオン、アニオン)することもできる。
【0034】
洗浄後のアルカリ金属の残存量はM2O(M:アルカリ金属カチオン)として0.01重量%以下、さらには0.001重量%以下の範囲にあることが好ましい。
アルカリ金属の残存量が前記上限を越えると、得られる微粒子の導電性が不充分であったり、インジウム系酸化物微粒子の分散液を調製した場合、分散液の安定性が低く、粒子が凝集したりすることがある。
【0035】
また、洗浄後のアニオンの残存量も0.01重量%以下、さらには0.001重量%以下の範囲にあることが好ましい。アニオンの残存量が前記上限を越えると、やはりインジウム系酸化物微粒子の分散液を調製した場合、分散液の安定性が低く、粒子が凝集することがある。
洗浄後のインジウム系水酸化物を有機溶媒に分散させて有機溶媒分散液を調製する。このとき、分散液中の水の残存量が概ね10重量%以下となるように必要に応じて有機溶媒で溶媒置換することが好ましい。分散液中の水の残存量が10重量%を越えると、前記したようなX線回折パターンを有するインジウム系酸化物微粒子が得られず、すなわちインジウム系水酸化物の割合が少ないインジウム系酸化物微粒子が得られず、このようなインジウム系酸化物微粒子を用いて得られる透明導電性被膜は導電性が充分発現せず、充分な帯電防止性能等が得られないことがある。
【0036】
有機溶媒としては、前記したものと同じものが使用される。有機溶媒は、単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用してもよい。分散媒としては有機溶媒だけであることが好ましいが、必要に応じて少量の水を含んでいてもよい。
特に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプロピルグリコールなどのアルコール類を使用すると、得られるインジウム系酸化物微粒子の酸化物の結晶性が高く、前記したピーク比(HPB2)/(HPA)が1/4以下とインジウム酸化物の割合の高いインジウム系酸化物微粒子が得られ、さらに凝集することなく単分散したインジウム系酸化物微粒子分散ゾルが得られる。
【0037】
前記インジウム系水酸化物の有機溶媒分散液の濃度は酸化物として1.0〜20重量%、さらには3〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
インジウム系水酸化物分散液の濃度が酸化物として前記下限未満の場合は、濃度が低すぎて粒子成長が起きにくく、さらに収率や生産効率が低下する。
インジウム系水酸化物の有機溶媒分散液の濃度が酸化物として前記上限を越えると、インジウム系水酸化物の分散が均一にならないために、得られるインジウム系酸化物微粒子の粒子径分布が不均一になることがある。
【0038】
種粒子
また、本発明では、インジウム系水酸化物の有機溶媒分散液に、インジウム系酸化物種粒子が含まれていてもよい。このように種粒子が含まれていると、均一な粒子径のインジウム系水酸化物粒子を得ることができるとともに、種粒子と、水酸化物との混合比を調製することにより、インジウム系酸化物微粒子の粒子径をコントロールすることができる。
【0039】
インジウム系酸化物種粒子としては、酸化インジウム、錫および/またはフッ素がドープされた酸化インジウムからなる種粒子の水および/または有機溶媒分散液が使用される。このときの有機溶媒も前記したと同様の有機溶媒を用いることができる。かかる種粒子の大きさは特に制限されるものではないが、2〜100nmの範囲にあるものが好適に使用される。
【0040】
使用される酸化インジウム、錫および/またはフッ素がドープされた酸化インジウムからなる種粒子としては、とくに制限されるものではなく、例えば、市販の粉末を特に制限なく使用することができる。また所望の平均粒子径になるまで粉砕して使用することもできる。
種粒子は、使用されるインジウム系水酸化物から誘導される酸化物と同じ組成であっても、異なる組成であってもよく、例えば、種粒子が酸化インジウムで、インジウム系水酸化物が錫および/またはフッ素を含むインジウム水酸化物であってもよい。
【0041】
特に本発明では、使用される酸化インジウム、錫および/またはフッ素がドープされた酸化インジウムからなる種粒子としては、本発明に係る方法で製造されたインジウム系酸化物微粒子が好適である。特にこれらの粒子を含む分散ゾルを使用すると粒径の揃ったインジウム系酸化物微粒子を調製することができる。
また、インジウム系水酸化物分散液とインジウム系酸化物種粒子の混合分散液の濃度は水酸化物も含め酸化物として1〜20重量%、さらには4〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
【0042】
混合分散液の濃度が酸化物として1重量%未満の場合は、インジウム系酸化物種粒子に、インジウム系水酸化物が効率的に付着析出せず、より大きなインジウム系酸化物微粒子を得ることが困難となり、混合分散液の濃度が酸化物として20重量%を越えると、インジウム系水酸化物同士が新たな粒子を形成したり、インジウム系酸化物種粒子に付着析出するインジウム系水酸化物が不均一になり、このため得られるインジウム系酸化物微粒子の粒子径が不均一となる傾向がある。
【0043】
また、インジウム系酸化物種粒子とインジウム系水酸化物分散液との混合比率は、インジウム系酸化物種粒子分散ゾルに由来する酸化物をMOZとし、インジウム系水酸化物分散液に由来する酸化物をMOGとしたときにMOG/MOZが0.5〜500、さらには1〜100の範囲にあることが好ましい。
この混合比MOG/MOZが0.5未満の場合は、粒子を大きくする効率が低く、混合比MOG/MOZが500を越えると、インジウム系水酸化物同士が新たな粒子を形成したり、インジウム系酸化物微粒子に付着析出するインジウム系水酸化物が不均一になり、このため得られるインジウム系酸化物微粒子の粒子径が不均一となる傾向にある。本発明では、上記MOG/MOZが0.5〜500の範囲で混合比率を変えることによりインジウム系酸化物微粒子の粒子径をコントロールすることができる。
工程(b)
ついで、インジウム系水酸化物の有機溶媒分散液あるいは、インジウム系酸化物種粒子を含むインジウム系水酸化物有機溶媒分散液の混合分散液を120〜400℃、好ましくは150〜250℃の温度範囲で加熱処理する。なお大気圧下の溶媒の沸点以上の温度で加熱する場合、オートクレーブなどの耐圧容器を使用して加圧状態で加熱してもよい。
【0044】
加熱処理温度が120℃未満の場合は、前記した有機溶媒分散液中に水が多い場合と同様にインジウム系水酸化物の割合が少ない、あるいはインジウム系酸化物の割合が多いインジウム系酸化物微粒子が得られないことがある。
加熱処理温度が400℃を越えると、好適に用いることのできる有機溶媒がなく、またインジウム系酸化物の割合は高くなるものの凝集した粒子が生成するようになる。
【0045】
以上のような(a)工程および(b)工程を施すことで、上記したような本発明に係るインジウム系酸化物微粒子を得ることができる。
このように、特定の有機溶媒中で加熱処理すると、粒径が均一で、かつ分散性に優れたインジウム系酸化物微粒子が得られる。このような微粒子が得られる理由は定かではないものの、有機溶媒中では、粒子表面に有機溶媒が存在するために粒子同士の凝集や結合が抑制され、また水の少ない有機溶媒中で加熱処理されるために脱水反応が進行しやすく、このため酸化物が主である単分散のインジウム系酸化物微粒子が得られると考えられる。
【0046】
また、従来法では、インジウム系水酸化物を乾燥したのち焼成し、粉砕してインジウム系酸化物微粒子を調製していた。この方法では、高温で焼成し、しかも焼成後、酸またはアルカリ等の存在下で粉砕処理する必要があり、しかも、均一な粒子径のインジウム系酸化物微粒子を得ることは困難であった。
しかしながら、本発明によると、有機溶媒にインジウム系水酸化物が分散したゾルを加熱処理するだけで、安定に単分散したインジウム系酸化物微粒子分散ゾルおよびその製造方法が提供される。
【0047】
こうして得られたインジウム系酸化物微粒子は、乾燥して溶媒を除去して使用される。また、分散媒(有機溶媒)に分散させた分散ゾルの状態で使用することもできる。
さらに必要に応じて、下記工程(c)および/または(d)を行ってもよい。
工程 (c) 加熱処理
(b)工程で得られた微粒子の分散液は、必要に応じて脱水または、限外濾過膜法やロータリーエバポレーター方などで有機溶媒置換し、再び120〜400℃、好ましくは150〜250℃の温度範囲で加熱処理してもよい。なお大気圧下の溶媒の沸点以上の温度で加熱する場合、オートクレーブなどの耐圧容器を使用し、加圧下で加熱してもよい。
【0048】
前記(b)工程の後は、インジウム系水酸化物がインジウム系酸化物となることにともなって水が脱離する。このため、得られるインジウム系酸化物微粒子の前記したピーク比(HPB2)/(HPA)が1/2以下に低下してないときは、脱離した水を除去・脱水するか有機溶媒で置換し、再び加熱処理することが好ましい。
工程 (d) 脱塩処理
脱塩する方法としては、インジウム系酸化物微粒子分散ゾル中の塩(カチオン、アニオンを含む)の濃度を低減でき、ゾルの電気伝導度を100μS/cm以下、さらに好ましくは50μS/cm以下にすることができれば特に制限はなく、例えばイオン交換樹脂にて脱イオンする方法、限外濾過膜洗浄法、デカンテーション法などが挙げられる。
【0049】
インジウム系酸化物微粒子分散ゾルの電気電導度が100μS/cm以下であれば、インジウム系酸化物微粒子が分散した分散ゾルの安定性が向上するとともに、後述するインジウム系酸化物微粒子分散ゾルを用いて得られる透明導電性被膜形成用塗布液の安定性も向上し、このような塗布液を用いて得られる被膜は基材との密着性、膜の強度、透明性等に優れている。
【0050】
このようにして得られるインジウム系酸化物微粒子分散ゾル中のインジウム系酸化物微粒子の平均粒子径は概ね2〜200nm、さらには5〜150nmの範囲にあることが望ましい。
透明導電性被膜形成用塗布液
つぎに、本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液について説明する。
【0051】
本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液は導電性微粒子としての前記インジウム系酸化物微粒子と極性溶媒とからなっている。
極性溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプロピルグリコールなどのアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用してもよい。
【0052】
透明導電性被膜形成用塗布液中には、インジウム系酸化物微粒子が酸化物として0.1〜7重量%、好ましくは0.5〜5重量%の範囲で含まれていることが望ましい。
透明導電性被膜形成用塗布液中のインジウム系酸化物微粒子が前記下限未満の場合は、得られる被膜の膜厚が薄くなることがあり、このため充分な導電性が得られないことがある。またインジウム系酸化物微粒子が前記上限を越えると、塗布液中でインジウム系酸化物微粒子が2次粒子(凝集粒子あるいは鎖状に連結した非単分散状態の粒子)を形成することがあり、この2次粒子が多くなると基材との密着性や膜の緻密性が低下し、膜強度が低下することがあり、また充分な導電性が得られないことがある。さらに、被膜が厚くなり、光透過率が低下して透明性が悪化したり、被膜表面の平坦性が低下し筋やムラ等が発生し外観が悪くなることがある。
【0053】
本願発明の透明導電性被膜形成用塗布液には前記インジウム系酸化物微粒子以外に、Au、Ag、Pd、Pt、Rh、Ru、Cu、Fe、Ni、Co、Sn、Ti、In、Al、Ta、Sbなどの金属から選ばれる少なくとも1種からなる金属微粒子または2種以上の金属からなる複合金属微粒子(これらを総じて金属微粒子ということもある)が含まれていてもよい。
【0054】
好ましい2種以上の金属の組合せとしては、Au-Cu、Ag-Pt、Ag-Pd、Au-Pd、Au-Rh、Pt-Pd、Pt-Rh、Fe-Ni、Ni-Pd、Fe-Co、Cu-Co、Ru-Ag、In-Sn、Au-Cu-Ag、Ag-Cu-Pt、Ag-Cu-Pd、Ag-Au-Pd、Au-Rh-Pd、Ag-Pt-Pd、Ag-Pt-Rh、Fe-Ni-Pd、Fe-Co-Pd、Cu-Co-Pdなどが挙げられる。
【0055】
このような金属微粒子は本発明の目的を損なわない量で含まれていればよく、その含有量は特に制限されるものではなく、たとえば、透明導電性被膜形成用塗布液中には、30重量%以下、好ましくは10重量%以下の量で含まれていればよい。
このような金属微粒子が含まれていると、導電性被膜の導電性が向上し電磁波遮蔽能が向上することに加えて、金属微粒子の使用による透過率の制御が可能であり、このためコントラストを向上することができ、また金属微粒子と本発明に係るインジウム系酸化物微粒子を併用すると、金属微粒子のみを用いる場合に比較して耐塩水性、耐酸化性等に優れている。
【0056】
また、このように金属微粒子を混合して用いる場合には金属微粒子の分散性を向上させるため、透明導電性被膜形成用塗布液中に有機系安定剤が含まれていてもよい。このような有機系安定剤として具体的には、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、クエン酸などの多価カルボン酸およびその塩、アセチルアセトンあるいはこれらの混合物など、複素環化合物あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0057】
さらに、本願発明の透明導電性被膜形成用塗布液には着色剤として微粒子カーボンおよび/またはチタンブラックが含まれていることが好ましい。さらに染料、顔料が含まれていてもよい。このような着色剤が含まれているとコントラストに優れた表示装置を得ることができる。
本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液には、被膜形成後のインジウム系酸化物微粒子のバインダーとして作用するマトリックス形成成分成分が含まれていてもよい。このようなマトリックス形成成分としては、シリカからなるものが好ましく、具体的には、アルコキシシランなどの有機ケイ素化合物の加水分解重縮合物またはアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を脱アルカリして得られるケイ酸重縮合物、あるいは塗料用樹脂などが挙げられる。このマトリックス形成成分は、固形分として導電性微粒子1重量部当たり、0.01〜0.5重量部、好ましくは0.03〜0.3重量部の量で含まれていればよい。
【0058】
本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液中の固形分濃度(インジウム系酸化物微粒子と必要に応じて添加される金属微粒子、微粒子カーボン、染料、顔料などの添加剤の総量)は、液の流動性、塗布液中におけるインジウム酸化物粒子など粒状成分の分散性などの点から、15重量%以下、好ましくは0.15〜5重量%であることが好ましい。
【0059】
上記したような透明導電性被膜形成用塗布液を用いれば、インジウム系酸化物微粒子が均一に分散しており、得られる透明導電性被膜はインジウム系酸化物微粒子が緻密に充填し、基材との密着性に優れ、また、概ね102〜104Ω/□の低表面抵抗を有する透明導電性微粒子層を形成することができるので、帯電を防止したり、電磁波および電磁波の放出に伴って生じる電磁場を効果的に遮蔽することができる。
【0060】
また、導電性微粒子が主に酸化インジウム系微粒子から構成されるので得られる透明導電性被膜付基材は耐塩水性や耐酸化性、透明性に優れている。
透明導電性被膜付基材
次に、本発明に係る透明導電性被膜付基材について具体的に説明する。
本発明に係る透明導電性被膜付基材は、基材と、基材上の前記インジウム系酸化物微粒子を含む透明導電性微粒子層と、該透明導電性微粒子層上に設けられ、該透明導電性微粒子層よりも屈折率が低い透明被膜とから構成される。
【0061】
基材としては透明性の高いものであれば特に制限されないが、たとえばガラス、プラスチック、セラミックなどからなるフィルム、シートあるいはその他の成形体などが好適に使用される。
この基材上に、前記した導電性微粒子としてのインジウム系酸化物微粒子からなる透明導電性微粒子層が形成されている。
【0062】
インジウム系酸化物微粒子の粒子径は、2〜200nm、好ましくは5〜150nmの範囲にあるものが好適である。
[透明導電性微粒子層(マトリックスなどが含まれている場合透明導電性被膜ということもある)]
透明導電性微粒子層の厚さは、5〜200nm、好ましくは10〜150nmの範囲にあることが好ましく、この範囲の厚さであれば帯電防止性、電磁遮蔽性に優れた透明導電性被膜付基材を得ることができる。
【0063】
このような透明導電性被膜には、前記した塗布液のように、必要に応じて、金属微粒子、着色剤、マトリックス成分、有機系安定剤等を含んでいてもよく、具体的には、前記と同様のものが挙げられる。
このような透明導電性微粒子層は上記透明導電性被膜形成用塗布液を基材上に塗布し・乾燥して、形成される。
【0064】
透明導電性微粒子層を形成する方法としては、たとえば、透明導電性被膜形成用塗布液をディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷法などの方法で、基材上に塗布したのち、常温〜約90℃の範囲の温度で乾燥する。
透明導電性被膜形成用塗布液中に上記のようなマトリックス形成成分が含まれている場合には、マトリックス形成成分の硬化処理を行ってもよい。
【0065】
例えば、透明導電性被膜形成用塗布液を塗布して形成した被膜を、乾燥時、または乾燥後に、150℃以上で加熱するか、未硬化の被膜に可視光線よりも波長の短い紫外線、電子線、X線、γ線などの電磁波を照射するか、あるいはアンモニアなどの活性ガス雰囲気中に晒してもよい。このようにすると、被膜形成成分の硬化が促進され、得られる被膜の硬度が高くなる。
[透明被膜]
本発明に係る透明導電性被膜付基材では、前記透明導電性微粒子層の上に、前記透明導電性微粒子層よりも屈折率の低い透明被膜が形成されている。
【0066】
このときの透明被膜の膜厚は、50〜300nm、好ましくは80〜200nmの範囲にあることが好ましい。
透明被膜の膜厚が50nm未満の場合は、膜の強度や反射防止性能が劣ることがある。
透明被膜の膜厚が300nmを越えると、膜にクラックが発生したり膜の強度が低下することがあり、また膜が厚すぎて反射防止性能が不充分となることがある。
【0067】
このような透明被膜は、たとえば、シリカ、チタニア、ジルコニアなどの無機酸化物、およびこれらの複合酸化物などから形成される。本発明では、透明被膜として、特に加水分解性有機ケイ素化合物の加水分解重縮合物、またはアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を脱アルカリして得られるケイ酸重縮合物からなるシリカ系被膜が好ましい。このような透明被膜が形成された透明導電性被膜付基材は、反射防止性能に優れている。
【0068】
前記透明被膜には、さらに平均粒子径が5〜300nm、好ましくは10〜200nmの範囲にあり屈折率が1.28〜1.42の範囲、好ましくは1.28〜1.40の範囲にある低屈折率粒子を含むことが望ましい。
使用される低屈折率粒子の平均粒子径は、形成される透明被膜の厚さに応じて適宜選択される。
【0069】
低屈折率粒子の屈折率が1.42以下であれば、得られる透明導電性被膜付基材は、ボトム反射率および視感反射率が低く、優れた反射防止性能を発揮することができる。
透明被膜中の低屈折率粒子の含有量は酸化物に換算して、10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%の範囲にあることが望ましい。
【0070】
本発明に用いる低屈折率粒子としては、平均粒子径および屈折率が上記範囲にあれば特に制限はなく従来公知の粒子を用いることができる。例えば本願出願人の出願による特開平7−133105号公報に開示した複合酸化物ゾル、WO00/37359号公報に開示した被覆層を有する多孔質の複合酸化物粒子は好適に用いることができる。
【0071】
さらに、上記透明被膜中には、必要に応じて、フッ化マグネシウムなどの低屈折率材料で構成された微粒子、染料、顔料などの添加剤が含まれていてもよい。
透明被膜の形成方法としては、特に制限はなく、この透明被膜の材質に応じて、真空蒸発法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの乾式薄膜形成方法、あるいは上述したようなディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷法などの湿式薄膜形成方法を採用することができる。
【0072】
上記透明被膜を湿式薄膜形成方法で形成する場合、従来公知の透明被膜形成用塗布液を用いることができる。このような透明被膜形成用塗布液としては、具体的に、シリカ、チタニア、ジルコニアなどの無機酸化物、またはこれらの複合酸化物を透明被膜形成成分として含む塗布液が用いられる。
本発明では、透明被膜形成用塗布液として加水分解性有機ケイ素化合物の加水分解重縮合物、またはアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を脱アルカリして得られるケイ酸液を含むシリカ系透明被膜形成用塗布液が好ましく、特に下記一般式[1]で表されるアルコキシシランの加水分解重縮合物を含有していることが好ましい。このような塗布液から形成されるシリカ系被膜は、インジウム系酸化物微粒子含有の導電性微粒子層よりも屈折率が小さく、得られる透明導電性被膜付基材は反射防止性に優れている。
【0073】
aSi(OR')4-a [1]
(式中、Rはビニル基、アリール基、アクリル基、炭素数1〜8のアルキル基、水素原子またはハロゲン原子であり、R'はビニル基、アリール基、アクリル基、炭系数1〜8のアルキル基、−C24OCn2n+1(n=1〜4)または水素原子であり、aは1〜3の整数である。)
このようなアルコキシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラオクチルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0074】
上記のアルコキシシランの1種または2種以上を、たとえば水−アルコール混合溶媒中で酸触媒の存在下、加水分解すると、アルコキシシランの加水分解重縮合物を含む透明被膜形成用塗布液が得られる。このような塗布液中に含まれる被膜形成成分の濃度は、酸化物換算で0.5〜2.0重量%であることが好ましい。
本発明で使用される透明被膜形成用塗布液には、平均粒子径が5〜300nm、好ましくは10〜200nmの範囲にあり屈折率が1.28〜1.42、さらには1.28〜1.40の範囲にある低屈折率粒子を含むことが望ましい。
【0075】
本発明では、このような透明被膜形成用塗布液を塗布して形成した被膜を、乾燥時、または乾燥後に、150℃以上で加熱するか、未硬化の被膜に可視光線よりも波長の短い紫外線、電子線、X線、γ線などの電磁波を照射するか、あるいはアンモニアなどの活性ガス雰囲気中に晒してもよい。このようにすると、被膜形成成分の硬化が促進され、得られる透明被膜の硬度が高くなる。
【0076】
さらに、透明被膜形成用塗布液を塗布して被膜を形成する際に、透明導電性微粒子層を約40〜90℃に保持しながら透明被膜形成用塗布液を塗布して、前記のような処理を行うと、透明被膜の表面にリング状の凹凸が形成し、ギラツキの少ないアンチグレアの透明被膜付基材が得られる。
表示装置
本発明に係る透明導電性被膜付基材は、帯電防止、電磁遮蔽に必要な概ね102〜104Ω/□の範囲の表面抵抗を有し、また透明性に優れるとともに可視光領域および近赤外領域で充分な反射防止性能を有し、表示装置の前面板として好適に用いられる。
【0077】
本発明に係る表示装置は、ブラウン管(CRT)、蛍光表示管(FIP)、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶用ディスプレイ(LCD)などのような電気的に画像を表示する装置であり、上記のような透明導電性被膜付基材で構成された前面板を備えている。
従来の前面板を備えた表示装置を作動させると、前面板に画像が表示されると同時に前面板が帯電したり、電磁波が前面板から放出されるが、本発明に係る表示装置では、前面板が前記した概ね102〜104Ω/□の表面抵抗を有する透明導電性被膜付基材で構成されているので、このような帯電を防止したり、電磁波およびこの電磁波の放出に伴って生じる電磁場を効果的に遮蔽することができる。
【0078】
また、表示装置の前面板で反射光が生じると、この反射光によって表示画像が見にくくなるが、本発明に係る表示装置では、前面板が可視光領域および近赤外領域で充分な反射防止性能を有する透明導電性被膜付基材で構成されているので、このような反射光を効果的に防止することができる。
さらに、ブラウン管の前面板が、本発明に係る透明導電性被膜付基材で構成され、この透明導電性被膜のうち、透明導電性微粒子層、その上に形成された透明被膜の少なくとも一方に少量の染料または顔料が含まれている場合には、これらの染料または顔料がそれぞれ固有な波長の光を吸収し、これによりブラウン管から放映される表示画像のコントラストを向上させることができる。
【0079】
【発明の効果】
本発明によれば、高温で焼成することなく、さらに焼成の後、酸またはアルカリ等の存在下で粉砕処理することなく均一な粒子径のインジウム系酸化物微粒子が安定に単分散したインジウム系酸化物微粒子分散ゾルおよびその製造方法が提供される。
【0080】
さらに、このインジウム系酸化物微粒子を導電性微粒子として用いることによって、均一で緻密な被膜が得られ、このため導電性、膜の強度等に優れた透明導電性被膜付基材の製造に好適に用いることができる透明導電性被膜形成用塗布液、該塗布液を用いて形成された透明導電性被膜付基材が提供される。
さらに、このような透明導電性被膜付基材を表示装置の前面板として用いれば、帯電防止性能、電磁遮蔽性能に優れるとともに反射防止性能等に優れ、さらに耐塩水性や耐酸化性にも優れることから耐久性に優れた表示装置を提供することができる。
【0081】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0082】
【実施例1】
インジウム系酸化物微粒子( ITO-1 )分散ゾルの調製
工程(a)
硝酸インジウム79.9gを水686gに溶解して得られた溶液と、錫酸カリウム12.7gを濃度10重量%の水酸化カリウム溶液に溶解して得られた溶液とを調製し、これらの溶液を、50℃に保持された1000gの純水に2時間かけて添加した。この間、系内のpHを11に保持して、錫を含むインジウム水酸化物を調製した。
【0083】
ついで、錫を含むインジウム水酸化物を濾過分離し、温水を充分かけて洗浄した後、酸化物としての濃度が4重量%となるように、錫を含むインジウム水酸化物を水に分散させた分散液を調製し、先ず陽イオン交換樹脂を用いてアルカリ金属の除去を行い、ついで陰イオン交換樹脂を用いてアニオンを除去した。
ついで、洗浄後の酸化物としての濃度が5重量%の錫を含むインジウム水酸化物の分散液にエチルアルコールを加えながら限外濾過装置(旭化成工業(株)製:マイクローザSIP-1013)を用いて溶媒置換を行い、錫を含むインジウム水酸化物のエチルアルコール分散液を調製した。分散液の錫を含むインジウム水酸化物の酸化物としての濃度は5重量%、水分含有量3重量%であった。
工程(b)
ついで、錫を含むインジウム水酸化物のエチルアルコール分散液をオートクレーブにて、200℃で2時間加熱処理した。
工程(d)
ついで、陽イオン交換樹脂、ついで陰イオン交換樹脂を用いてイオン除去(脱塩)を行い、錫含有インジウム酸化物微粒子(ITO-1)分散ゾル(酸化物としての濃度5重量%)を調製した。
【0084】
得られた錫含有インジウム酸化物微粒子(ITO-1)分散ゾルについて、伝導度計(TOA Electronics社製:CM-14P)にて電気伝導度を測定し、またゾルの安定性を評価した。なお、伝導度は、得られたゾルを酸化物としての濃度が0.5重量%となるように希釈して測定した。
結果を表1に示す。
【0085】
ゾルの安定性
酸化物としての濃度5重量%のゾルを透明サンプル瓶に入れ、25℃で24時間放置した後、これを目視により観察し、以下の基準で評価した。
初期と変わらず透明性を有している : ○
透明相と半透明相の2相分離が認められる : △
サンプル瓶下部に沈降物が認められる : ×
また、110℃で2時間乾燥して得たインジウム系酸化物微粒子(ITO-1)について、X線回折パターンを測定し、インジウム酸化物に帰属される面指数(2,2,2)におけるピーク(PA)およびインジウム水酸化物に帰属される面指数(2,2,0)におけるピーク(PB2)の確認を行い、およびピーク(PB2)のピーク高(HPB2)とピーク(PA)のピーク高(HPA)とその比(HPB2)/(HPA)を求めた。X回折パターンを図1に、計算結果を表1に示した。
【0086】
また、TEM写真を撮影し、20個の粒子について粒子径を測定しこの平均値を平均粒子径として、あわせて表1に示した。
【0087】
【実施例2】
インジウム系酸化物微粒子( ITO-2 )分散ゾルの調製
工程(c)
実施例1と同様に行った工程(b)の後、得られた分散液にエチルアルコールを加えながら限外濾過装置を用いて溶媒置換を行い、錫を含むインジウム系酸化物微粒子のエチルアルコール分散液を調製した。このとき、酸化物としての濃度5重量%、水分含有量は0.5重量%であった。
【0088】
ついで、錫を含むインジウム水酸化物のエチルアルコール分散液を再びオートクレーブにて、200℃で2時間加熱処理した。
工程(d)
ついで、実施例1と同様にしてイオン除去(脱塩)を行い、インジウム系酸化物微粒子(ITO-2)分散ゾル(酸化物としての濃度5重量%)を調製した。
【0089】
得られたインジウム系酸化物微粒子(ITO-2)分散ゾルについて電気伝導度およびゾルの安定性を評価し、結果を表に示した。
また、インジウム系酸化物微粒子(ITO-2)について、X線回折パターンを測定し、インジウム酸化物に帰属される面指数(2,2,2)におけるピーク(PA)およびインジウム水酸化物に帰属される面指数(2,2,0)におけるピーク(PB2)の確認、およびピーク(PB2)のピーク高(HPB2)とピーク(PA)のピーク高(HPA)とその比(HPB2)/(HPA)を求めた。
【0090】
結果を表1に示す。
また、TEM写真を撮影し、20個の粒子について粒子径を測定しこの平均値を平均粒子径とした。結果をあわせて表1に示す。
【0091】
【実施例3】
インジウム系酸化物微粒子( ITO-3 )分散ゾルの調製
工程(a)
実施例1の工程(a)と同様にして得た錫を含むインジウム水酸化物のエチルアルコール分散液(酸化物としての濃度5重量%、水分含有量3重量%)600gに、インジウム系酸化物種粒子として実施例1で調製したインジウム系酸化物微粒子(ITO-1)分散ゾル(酸化物としての濃度5重量%)150gを混合してMOG/MOZ=4.0のインジウム系水酸化物の有機溶媒分散液とインジウム系酸化物種粒子分散ゾルとの混合分散液を調製した。
工程(b)
ついで、上記混合分散液をオートクレーブにて、200℃で2時間加熱処理した。
工程(d)
ついで、陽イオン交換樹脂、ついで陰イオン交換樹脂を用いてイオン除去(脱塩)を行い、インジウム系酸化物微粒子(ITO-3)分散ゾル(固形分濃度5重量%)を調製した。
【0092】
得られたインジウム系酸化物微粒子(ITO-3)分散ゾルについて電気伝導度およびゾルの安定性を評価し、結果を表に示した。
また、110℃で2時間乾燥して得たインジウム系酸化物微粒子(ITO-3)について、X線回折パターンを測定し、インジウム酸化物に帰属される面指数(2,2,2)におけるピーク(PA)およびインジウム水酸化物に帰属される面指数(2,2,0)におけるピーク(PB2)の確認、およびピーク(PB2)のピーク高(HPB2)とピーク(PA)のピーク高(HPA)とその比(HPB2)/(HPA)を求めた。
【0093】
結果を表1に示す。別途、X線回折パターンを図1に示した。
また、TEM写真を撮影し、20個の粒子について粒子径を測定しこの平均値を平均粒子径とした。結果を表1にあわせて示す。
【0094】
【実施例4】
インジウム系酸化物微粒子( ITO-4 )分散ゾルの調製
実施例1の工程(a)と同様にして得た錫を含むインジウム水酸化物のエチルアルコール分散液(酸化物としての濃度5重量%、水分含有量3重量%)600gに、インジウム系酸化物種粒子として実施例1で調製したインジウム系酸化物微粒子(ITO-1)分散ゾル(酸化物としての濃度5重量%)100gを混合してMOG/MOZ=6.0のンジウム系水酸化物の有機溶媒分散液とインジウム系酸化物種粒子分散ゾルとの混合分散液を調製した以外は実施例3と同様にしてインジウム系酸化物微粒子(ITO-4)分散ゾル(酸化物としての濃度5重量%)を調製した。
【0095】
得られたインジウム系酸化物微粒子(ITO-4)分散ゾルについて電気伝導度を測定し、またゾルの安定性を評価し、結果を表1に示した。
また、インジウム系酸化物微粒子(ITO-4)について、X線回折パターンを測定し、インジウム酸化物に帰属される面指数(2,2,2)におけるピーク(PA)およびインジウム水酸化物に帰属される面指数(2,2,0)におけるピーク(PB2)の確認、およびピーク(PB2)のピーク高(HPB2)とピーク(PA)のピーク高(HPA)とその比(HPB2)/(HPA)を求めた。結果を表1に示す。
【0096】
また、TEM写真を撮影し、20個の粒子について粒子径を測定しこの平均値を平均粒子径とした。結果を表1に示す。
【0097】
【比較例1】
インジウム系酸化物微粒子( ITO-5 )分散ゾルの調製
硝酸インジウム79.9gを水686gに溶解して得られた溶液と、錫酸カリウム12.7gを濃度10重量%の水酸化カリウム溶液に溶解して得られた溶液とを調製し、これらの溶液を、50℃に保持された1000gの純水に2時間かけて添加した。この間、系内のpHを11に保持した。得られた錫含有インジウム酸化物水和物分散液から錫含有インジウム酸化物水和物を濾別・洗浄した後、再び水に分散させて酸化物としての濃度10重量%の金属酸化物前駆体水酸化物分散液を調製した。この分散液を、温度100℃で噴霧乾燥して金属酸化物前駆体水酸化物粉体を調製した。上記粉体を、窒素ガス雰囲気下、550℃で2時間加熱処理した。
【0098】
これを濃度が30重量%となるようにエタノールに分散させ、さらに硝酸水溶液でpHを3.5に調製した後、この混合液を30℃に保持しながらサンドミルで0.2時間粉砕してゾルを調製した。ついで、エタノールを加えて酸化物としての濃度20重量%のインジウム系酸化物微粒子(ITO-5)分散ゾルを調製した。
得られたインジウム系酸化物微粒子(ITO-5)分散ゾルの一部について酸化物としての濃度5重量%に希釈して安定性を評価し、また一部について酸化物としての濃度0.5重量%に希釈して電気伝導度を評価し、結果を表1に示した。
【0099】
また、インジウム系酸化物微粒子(ITO-5)について、X線回折パターンを測定し、インジウム水酸化物に帰属される面指数(2,2,2)におけるピーク(PA)およびインジウム水酸化物に帰属される面指数(2,2,0)におけるピーク(PB2)の確認、およびピーク(PB2)のピーク高(HPB2)とピーク(PA)のピーク高(HPA)とその比(HPB2)/(HPA)を求めた。結果を表1に示す。またインジウム系酸化物微粒子(ITO-5)のX線回折パターンを図2に示す。
【0100】
また、TEM写真を撮影し、20個の粒子について粒子径を測定しこの平均値を平均粒子径とし、表1に示した。
【0101】
【比較例2】
インジウム系酸化物微粒子( ITO-6 )分散ゾルの調製
実施例1の工程(b)において、オートクレーブの温度を100℃とした以外は実施例1と同様にしてインジウム系酸化物微粒子(ITO-6)分散ゾル(酸化物としての濃度5重量%)を調製した。
【0102】
得られたインジウム系酸化物微粒子(ITO-6)分散ゾルについて電気伝導度およびゾルの安定性を評価し、結果を表1に示した。
また、インジウム系酸化物微粒子(ITO-6)について、X線回折パターンを測定し、インジウム水酸化物に帰属される面指数(2,2,2)におけるピーク(PA)およびインジウム水酸化物に帰属される面指数(2,2,0)におけるピーク(PB2)の確認、およびピーク(PB2)のピーク高(HPB2)とピーク(PA)のピーク高(HPA)とその比(HPB2)/(HPA)を求めた。結果を表1に示す。またインジウム系酸化物微粒子(ITO-6)のX線回折パターンを図3に示す。
【0103】
また、TEM写真を撮影し、20個の粒子について粒子径を測定しこの平均値を平均粒子径とし、表1に示した。
[評価]
透明導電性被膜形成用塗布液 (C-1) (C-6) の調製
先ず、上記で得たインジウム系酸化物微粒子(ITO-1)〜(ITO-6)分散ゾルを表1に示す濃度となるように、水とブチルセルソルブの2:1の混合溶媒とを混合し、透明導電性被膜形成用塗布液(C-1)〜(C-6)を調製した。
【0104】
得られた各透明導電性被膜形成用塗布液について安定性を評価し、結果を表に示した。
塗布液の安定性
塗布液を透明サンプル瓶に入れ、50℃の恒温槽中、24時間放置した後、これを目視による観察と振蕩による粘性の変化を調べ、以下の基準で評価した。
【0105】
初期と変わらず透明性を有し、粘度の変化がない : ○
粘度の上昇が認められる : △
サンプル瓶下部に沈降物が認められ、粘度も上昇 : ×
透明被膜形成用塗布液 (T) の調製
正珪酸エチル(SiO2:28重量%)50g、エタノール194.6g、濃硝 酸1.4gおよび純水34gの混合溶液を室温で5時間攪拌してSiO2濃度5重量%のマトリックス形成成分を含む液(M)を調製した。これに、エタノール/ブタノール/ジアセトンアルコール/イソプロパノール(2:1:1:5重量混合比)の混合溶媒を加え、SiO2濃度1重量%の透明被膜形成用塗布液(T)を調製した。
【0106】
透明導電性被膜付パネルガラス( P-1 )〜( P-6) の製造
ブラウン管用パネルガラス(17")の表面を40℃で保持しながら、スピナー 法で100rpm、90秒の条件で上記透明導電性被膜形成用塗布液(C-1)〜(C-6)をそれぞれ塗布し乾燥した。このときの導電層の膜厚を測定し、結果を表に示した。
【0107】
ついで、このようにして形成された透明導電性微粒子層上に、同じように、スピナー法で100rpm、90秒の条件で透明被膜形成用塗布液(T)を塗布・乾燥し、160℃で30分間焼成して透明導電性被膜付基材を得た。このときの透明被膜の膜厚はいずれも50nmとなるように形成した。
これらの透明導電性被膜付基材の表面抵抗を表面抵抗計(三菱油化(株)製:LORESTA)で測定し、ヘーズをヘーズコンピューター(日本電色(株)製:3000A)で測定した。反射率は反射率計(大塚電子(株)製:MCPD-2000)を用いて測定し、波長400〜700nmの範囲で反射率が最も低い波長における反射率をボトム反射率とし、また波長400〜700nmの平均反射率を視感反射率として求めた。
【0108】
結果を表1に示す。
【0109】
【表1】
Figure 0004240905

【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で製造された本発明に係るインジウム系酸化物微粒子のX線回折パターンを示す。
【図2】比較例1で製造された従来のインジウム系酸化物微粒子のX線回折パターンを示す。
【図3】比較例2で製造された従来のインジウム系酸化物微粒子のX線回折パターンを示す。

Claims (8)

  1. X線回折パターンにおいて、少なくともインジウム酸化物に帰属される面指数(2,2,2)におけるピーク(PA)およびインジウム水酸化物に帰属される面指数(2,0,0)におけるピーク(PB1)、面指数(2,2,0)におけるピーク(PB2)を有し、 ピーク(PB2)のピーク高(HPB2)とピーク(PA)のピーク高(HPA)との比(HPB2)/(HPA)が1/2以下であり、
    酸化インジウム、S n またはFがドーピングされた酸化インジウムを含むことを特徴とするインジウム系酸化物微粒子。
  2. 請求項1に記載のインジウム系酸化物微粒子が、分散媒中の水の割合が80重量%以上の分散媒に、酸化物としての濃度が4重量%となるように分散させたゾルの電気伝導度が100μS/cm以下であることを特徴とする請求項1に記載のインジウム系酸化物微粒子。
  3. 下記の工程からなることを特徴とする請求項1または2に記載のインジウム系酸化物微粒子の製造方法;
    (a)インジウム水酸化物、あるいは錫またはフッ素を含むインジウム水酸化物を含むインジウム系水酸化物の有機溶媒分散液を調製する工程、
    (b)前記有機溶媒分散液を120〜400℃の温度範囲で、耐圧容器内で加熱処理する工程。
  4. 下記の工程からなることを特徴とする請求項1または2に記載のインジウム系酸化物微粒子の製造方法;
    (a')インジウム水酸化物、あるいは錫またはフッ素を含むインジウム水酸化物を含むインジウム系水酸化物と酸化インジウム、S n またはFがドーピングされた酸化インジウムを含むインジウム系酸化物種粒子との有機溶媒混合分散液を調製する工程、
    (b)得られた有機溶媒分散液を120〜400℃の温度範囲で、耐圧容器内で加熱処理する工程。
  5. 加熱処理後、必要に応じて脱水あるいは他の有機溶媒に置換し、さらに、120〜400℃の温度範囲で加熱処理すること、および/または脱イオン処理することを特徴とする請求項3または4に記載のインジウム系酸化物微粒子の製造方法。
  6. 請求項1または2に記載の前記インジウム系酸化物微粒子と極性溶媒とを含むことを特徴とする透明導電性被膜形成用塗布液。
  7. 基材と、
    基材上の請求項1または2に記載のインジウム系酸化物微粒子を含む透明導電性微粒子層と、
    該透明導電性微粒子層上に設けられ、該透明導電性微粒子層よりも屈折率が低い透明被膜とからなることを特徴とする透明導電性被膜付基材。
  8. 請求項7に記載の透明導電性被膜付基材で構成された前面板を備え、透明導電性被膜が該前面板の外表面に形成されていることを特徴とする表示装置。
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