JP4238557B2 - ハイモビリティーグループタンパクと親和性を有するペプチド - Google Patents

ハイモビリティーグループタンパクと親和性を有するペプチド Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハイモビリティーグループタンパク(以下、HMGタンパクと略す)に親和性を有するペプチド、特に、HMGタンパクの高感度な定量、HMGタンパクの関与する疾患などの治療に用いられるペプチドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
HMGタンパクは、真核細胞内に存在する非ヒストン性のDNA結合タンパクであり、HMG−1、HMG−2、HMG14、HMG17、HMG−I(Y)等が知られている。HMGは本来細胞内でDNAに結合して転写の促進や細胞の増殖などの機能に関与すると考えられてきたが、神経細胞の表面に存在して神経突起を伸長させる因子として見出されていたアンフォテリンがHMGタンパクの一つであるHMG−1であることが示され、HMGタンパクが幅広い作用を有する可能性が示されている。
【0003】
最近、このHMG−1が細胞外に分泌され、敗血症ショックの強力なメディエーターとして作用するという興味深い報告がなされた(たとえば、非特許文献1参照)。すなわち、マウスにリポポリサッカロイド(LPS)を投与すると8−24時間後に血清中のHMG−1濃度が顕著に上昇しマウスは死に至る。精製したHMG−1自体をLPSと同時にマウスに投与した場合も相乗的に作用して致死活性を示し、また抗HMG−1抗体を投与するとLPSによる致死作用が抑制されることから、HMG−1がエンドトキシンショックの重要なメディエーターとなることが示された。ヒトにおいても、敗血症患者血中でHMG−1濃度が顕著に上昇し、特に死亡例において高いことが示された。HMG−1は出血性ショックにおいても血中濃度の上昇が認められている。また、HMGタンパクが癌の増殖に関与することも報告されている(たとえば、非特許文献2参照)。
【0004】
【非特許文献1】
ワン(Wang H)他18名、「マウスにおけるエンドトキシン侵襲の後期メディエーターとしてのHMG−1(HMG−1 as a late mediator of endotoxin lethality in mice)」、サイエンス(Science)、(アメリカ)、1999年、285号、p248−251
【0005】
【非特許文献2】
タグチ(Taguchi A)他18名、「RAGE−アンホテリン情報伝達を阻害すると腫瘍の成長と転移が抑制される(Blockade of RAGE−amphoterin signalling suppresses tumor growth and metastases)」、ネイチャー(Nature)、(イギリス)、2000年、405号、p354−360
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、血中のHMGタンパクは敗血症などの疾患の病態と密接に関連することが示されており、その血中濃度を正確かつ高感度に測定することは疾患の診断のために非常に重要と考えられる。これまでHMGタンパクの測定はウェスタンブロット法、酵素免疫測定法などの抗体を用いた免疫学的検出法によって行われてきたが、定量性・測定感度等が必ずしも充分ではなかった。これは、HMGタンパクは、動物種間の配列の類似性が非常に高いために通常の免疫操作では親和性の高い抗体が得られにくいという問題点に起因すると考えられる。従って、より高感度の検出を行うためには抗体以外の親和性物質を取得する必要があると考えられる。さらには、HMGタンパクと結合してその作用を阻害する物質は治療薬として非常に有用と考えられるが、この目的においても抗体よりも親和性が高く、抗体よりも分子量の小さい物質を取得することが強く望まれていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため、本発明は以下のような構成を取る。
(1)ハイモビリティーグループタンパクに親和性を有するペプチドであって、30個以下のアミノ酸で構成されることを特徴とするペプチド。
(2)以下の(a)又は(b)のペプチド。
(a)Gly Trp Leu Pro Gln Gly Trp Ile Phe Gly Ala Val Thrのアミノ酸配列からなるペプチド。
(b)(a)のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつハイモビリティーグループタンパクと親和性を有することを特徴とするペプチド。
(3)以下の(a)又は(b)のペプチド。
(a)Gly Tyr Leu Met Phe Ile His Leu Tyr Pro Glu Leu Alaのアミノ酸配列からなるペプチド。
(b)(a)のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつハイモビリティーグループタンパクと親和性を有することを特徴とするペプチド。
(4)以下の(a)又は(b)のペプチド。
(a)Val Trp Val Val Pro Tyr Thr Thr Ala Thr Leuのアミノ酸配列からなるペプチド。
(b)(a)のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつハイモビリティーグループタンパクと親和性を有するペプチド。
(5)以下の(a)又は(b)のペプチド。
(a)Cys Cys Tyr Ala Ser Phe Pro Gly Met Gly Metのアミノ酸配列からなるペプチド。
(b)(a)のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつハイモビリティーグループタンパクと親和性を有するペプチド。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載のペプチドを提示するファージ。
(7)(1)〜(5)のいずれか1項に記載のペプチドをその部分として含み、ハイモビリティーグループタンパクに親和性を有するペプチド。
(8)(1)〜(5)のいずれか1項に記載のペプチドをコードするポリヌクレオチド。
(9)DNAである(8)に記載のポリヌクレオチド。
(10)(1)〜(6)のいずれか1項に記載のペプチドまたはファージを用いたハイモビリティーグループタンパクを測定する方法。
(11)(1)〜(6)のいずれか1項に記載のペプチドまたはファージを含むハイモビリティーグループタンパクを測定するキット。
(12)(1)〜(6)のいずれか1項に記載のペプチドまたはファージを含む敗血症の治療薬。
(13)(1)〜(6)のいずれか1項に記載のペプチドまたはファージを含む癌の治療薬。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明でいうHMGタンパクとは、哺乳動物におけるHMGタンパクを指し、ヒトのHMG−1、HMG−2、HMG14、HMG17、HMG−I(Y)等を含む。
【0009】
本発明でいうHMGタンパクに親和性のあるペプチドとはHMGタンパクに非共有結合、すなわちイオン結合、疎水結合、水素結合などにより結合しうるペプチドのことをいう。ペプチドがHMGに対して親和性を有するかどうかを調べるには固相化したHMGタンパクとペプチドまたはペプチドを提示するファージと反応させ、未結合の物質を洗浄除去した後に結合したペプチドまたはペプチドを提示するファージを抗体などで検出する酵素免疫測定法(ELISA法)により確認することが可能である。
【0010】
本発明においてHMGタンパクに親和性を有するペプチドまたはファージとは、プレートにHMGタンパクを固相化し、これにペプチドまたはファージを反応させて結合したペプチドまたはファージを酵素標識2次抗体などを用いて検出するELISA法において、無関係な配列を持つコントロールのペプチドまたはファージと比べて2倍以上の吸光度を示すものをいう。
【0011】
本発明のペプチドはHMGタンパクに親和性を有する30アミノ酸残基以下の長さのペプチドからなる。また、Gly Trp Leu Pro Gln Gly Trp Ile Phe Gly Ala Val Thr(配列表の配列番号1)、もしくはGly Tyr Leu Met Phe Ile His Leu Tyr Pro Glu Leu Ala(配列表の配列番号2)、もしくはVal Trp Val Val Pro Tyr Thr ThrAla Thr Leu(配列表の配列番号3)、もしくはCys Cys Tyr Ala Ser Phe Pro Gly Met Gly Met(配列表の配列番号4)で表されるアミノ酸配列で特定されるペプチドからなるものが含まれる(上記配列中、左側末端はN末端、右側末端はC末端を表し、構成アミノ酸残基は通常の3文字表記で表現してある)。上記アミノ酸配列で特定される本発明のペプチドはHMGタンパクに親和性を有することを特徴としている。本発明のペプチドには、上記の特定のペプチドのアミノ酸配列において1又は2以上のアミノ酸残基による置換、挿入、及び/又は欠失が存在しており、かつ、実質的にHMGタンパクに親和性を有するペプチドも包含される。置換及び/又は挿入される1又は2以上のアミノ酸の種類は特に限定されないが、L−アミノ酸であることが好ましい。1又は2以上のアミノ酸残基による置換、挿入、及び/又は欠失が存在するペプチドが、実質的にHMGタンパク親和性を有しているか否かは、当業者が容易に確認することが可能である。
【0012】
本発明は、上記のペプチドを表面に提示するファージも含まれる。その場合のファージの種類は特に限定されないが、繊維状ファージが好適に用いられる。また、本発明のペプチドには、上記の各ペプチドをその部分配列として含み、実質的にHMGタンパクに親和性を有するペプチドも包含される。尚、特定のタンパク・ペプチドにアミノ酸を置換、欠損もしくは挿入させることによって修飾する技術は、例えば欧州特許第77109号明細書または英国特許出願公開第2119804号明細書などにより知られている。例えば欧州特許第77109号明細書にはベクターを1本鎖にして1残基変異の入ったプライマーとアニールさせて大腸菌ポリメラーゼと混ぜることによりコードするアミノ酸を置換する方法が開示されている。
【0013】
本発明のハイモビリティーグループに親和性を有するペプチドであって、30個以下のアミノ酸で構成されるペプチドは、たとえばランダムペプチドライブラリーを用いた技術を利用して以下のような方法で製造することができる。
【0014】
ランダムペプチドライブラリーとしてはファージランダムペプチドライブラリーなどを用いることができるが、ファージランダムペプチドライブラリーの種類及び調製方法は特に限定されず、市販のライブラリーを購入して用いても良い。
【0015】
ランダムペプチドライブラリーのペプチドの長さは、製造しようとするペプチドの長さに応じて選択されるべきで、30残基以下であることが好ましく、製造しようとするペプチドの長さが短いものであるならば、20残基や15残基のものも使用することができる。
【0016】
HMGタンパクと親和性を有するペプチドを提示するファージは、カラムやプレート上にHMGタンパクを直接あるいは抗体等を介して固定化し、ペプチドライブラリーを接触させ、非結合ファージを洗浄で洗い流した後に、結合しているファージを酸などで溶出させるという方法により選択することができる。親和性の高いファージを得るためには、この選択操作を2回以上繰り返し行うことが望ましい。得られたファージを単一クローン化し、DNA配列を解析することにより提示されたペプチドの配列を決定することができる。
【0017】
上記の方法で配列が決定されたペプチド(本発明の配列番号1〜4の各ペプチドを含む)および該ペプチドのアミノ酸配列において1又は2以上のアミノ酸残基による置換、挿入、及び/又は欠失が存在するものは、ペプチド合成に用いられる固相法および液相法などの化学的手法により合成することができる。また、固相法では市販の各種ペプチド合成装置を利用することができる。
【0018】
また、配列番号1〜4の各ペプチド及び該ペプチドのアミノ酸配列において1又は2以上のアミノ酸残基による置換、挿入、及び/又は欠失が存在するものは、通常の遺伝子発現操作等の生物学的手法に従って、本発明のペプチドをコードするDNA配列を含む組み換えベクターを用いて、該ベクターにより形質転換された微生物(形質転換体)を調製し、該形質転換体を培養した培養物から所望のペプチドを分離・精製することによっても製造可能である。その際に、アミノ酸配列において1又は2以上のアミノ酸残基による置換、挿入、及び/又は欠失を導入する方法については上述の通りである。
【0019】
本発明にかかる上記の各種ペプチドを提示するファージは、上記の各種ペプチドアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを、制限酵素で切断したファージDNAに組み込み、大腸菌に感染させ、培養上清から、ポリエチレングリコール沈殿等により取得することが可能である。
【0020】
本発明にかかるペプチドをコードするポリヌクレオチドは上述のファージDNAを鋳型として複製連鎖反応(PCR)を使用することにより得られる(たとえば米国特許第4,683,195号明細書および米国特許第4,683,202号明細書参照。)。本質的に、PCRは配列の2つの資料部分が知られているときに、選ばれたDNA配列の産生を可能にする。問題の配列のそれぞれの末端に相当するプライマー、すなわちオリゴヌクレオチド・プローブがえられる。PCRを使用して、ポリヌクレオチド配列の中心部分が次いで合成により産生される。またコードするポリヌクレオチドがDNAである場合増幅したファージクローンを大腸菌に感染し培養・増幅させた後、遺伝子を抽出することにより得られる。
【0021】
本発明にかかるペプチドまたはファージを用いてHMGタンパクを測定する方法は、ELISA法・ウェスタンブロット法等の手法により可能である。例えばELISAであるならば、プレートに抗HMGタンパク抗体または本発明のペプチドまたはファージを固相化し、これにHMGタンパクを含むサンプルを反応させ、結合したHMGタンパクを酵素標識した本発明のペプチドで測定することができる。ペプチドをビオチン標識して酵素標識アビジンで検出することも可能である。また、ペプチド提示ファージを反応させ、酵素標識抗ファージ抗体を用いて検出することも可能である。ウェスタンブロット法によってHMGタンパクの測定を行うにはポリアクリルアミドゲル電気泳動を行ったゲルをメンブランに転写させ転写されたHMGタンパクと酵素標識された本発明のペプチドを反応させることによってHMGタンパクを測定することができる。
【0022】
また、本発明にかかるペプチドを含むHMGタンパクの測定キットは例えば以下のような構成をとる。例えば、HMGの体液中の濃度をELISA法で測定するキットであれば、抗HMGタンパク抗体固相化プレート、酵素で標識されたHMGタンパクと親和性を有する本発明のペプチド、および既知濃度のHMGタンパク標準液を構成要素として含み、抗HMGタンパク抗体固相化プレートとHMGタンパクを反応の後、これと酵素標識されたペプチドを反応させ酵素基質を加えて発色させることにより使用可能である。
【0023】
本発明に係るペプチドまたはファージは、生体に投与することにより体内のHMGタンパクと結合してその作用を阻害することが期待でき、それにより敗血症または癌の処置のための医薬製剤または処方に使用することができる。本発明は、上述の症状の治療薬を提供する。該治療薬は、医薬として許容される担体と混合することができ、さらに非経口的に全身に投与しうる。必要であれば、該治療薬は皮下、局所、例えば障害部位に投与できる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)HMG−1の作製
HL60細胞をRPMI1640培地中で培養し、その培養上清を原料としてヘパリンカラムクロマトグラフィーおよびCM−Sephadexカラムクロマトグラフィーにより精製した。
(2)ファージを用いたELISA法によるHMG−1の測定
ELISA用96穴マイクロプレートのウェルに5μg/mlの抗HMG−1モノクローナル抗体PBS溶液を入れ4℃で一晩固相化を行い、抗体PBS(137mM NaCl,8.10mM Na2PO4・12H2O,2.68mM KCl,1.47mM KH2PO4)溶液を除去した後、0.5%BSAを溶解させたPBSを入れブロッキングを行った。プレートをPBS−T(0.05%Tween−20を含むPBS)で洗浄後、緩衝液(0.25%BSA,0.05%Tween−20,0.01%パラヒドロキシ安息香酸n−プロピル(PHB)を含む0.1MTris−塩酸バッファー(pH8.0))50μl及び種々濃度のHMG−1を添加した希釈液(0.25%BSA,0.01%パラヒドロキシ安息香酸n−プロピル(PHB),0.001%フェノールレッドを含むPBS−T溶液)50μlを加えて25℃で60分反応させた。各ウェルを400μlのPBS−Tで3回洗浄後1.0×1012Tu/mlのペプチド提示ファージを含む希釈液100μlを入れ25℃で60分反応させた。ファージ溶液を捨て、各ウェルを400μlのPBS−Tで3回洗浄後、希釈液で5000倍に希釈したHRP標識抗M13ファージモノクローナル抗体(アマシャムバイオサイエンス社)溶液を100μl入れ25℃で30分反応させた。ファージ溶液を捨て、各ウェルを400μlのPBS−Tで3回洗浄後、発色液(0.006%過酸化水素,0.2mg/mlテトラメチルベンジジン(TMB)を含む0.1M酢酸―クエン酸ナトリウム緩衝液(pH4.5))を100μl分注して15分反応させた。反応後、1N硫酸を100μl加え反応を止めた。マイクロプレートリーダーを用いて450nmで吸光度を測定した。
(3)HMG−1親和性ペプチドを提示したファージの作製
シャーレに0.5μg/mlのHMG−1を溶解させたPBSを2ml加え4℃で一晩放置して固相化を行った。シャーレから溶液を除去し0.5%BSA(ウシ血清アルブミン)を溶解させたPBSを8ml入れブロッキングを行った。シャーレをPBSで洗浄後、15残基のランダム配列ペプチドを発現させたファージライブラリーを入れ室温で30分放置した。液を捨て、PBS−Tで10秒間3回、及び5分間3回の洗浄を行った。50mM グリシン−塩酸バッファー(pH2.4)400μlを加え5分間放置して、結合したファージを解離させて回収し、1M Tris−塩酸バッファー(pH8.0)80μlを加え中和した。回収したファージを大腸菌に感染させ培養し増殖させた。増殖したファージをPEG(ポリエチレングリコール)法で精製し、再度HMG−1との反応に用いた。これらの操作を3ラウンド行った。3ラウンド選択後のファージを感染させた大腸菌とLBプレートで培養し、シングルコロニーをピックアップし、LB培地で一晩培養した培養上清中に産生されたファージをPEG法を用いて140コロニー精製回収した。回収したファージを上記(2)のELISA法を用いて吸光度が抗HMG−1抗体を用いたときより2倍以上であったものを選択し、ファージDNAを抽出し配列を解析した。その結果、以下のアミノ酸配列をコードするDNA配列が見出された。
配列番号1;Gly Trp Leu Pro Gln Gly Trp Ile Phe Gly Ala Val Thr
配列番号2;Gly Tyr Leu Met Phe Ile His Leu Tyr Pro Glu Leu Ala
配列番号3;Val Trp Val Val Pro Tyr Thr Thr Ala Thr Leu
配列番号4;Cys Cys Tyr Ala Ser Phe Pro Gly Met Gly Met
(実施例1)配列番号1を提示したファージの製造及びそれを用いたHMG−1の検出
(a)ペプチド提示ファージの作製
アミノ酸配列Gly Trp Leu Pro Gln Gly Trp Ile Phe Gly Ala Val Thrを含むペプチドをコードし、末端に下記プライマーに相補的な配列を付加したDNAを合成し、PCR法で増幅させた。PCRは2.5mM MgCl2、0.2mM dNTP、0.5μM 5’末端ビオチン化SENSEプライマー(5’−CTATTCTCACTCGGCCGACG−3’)、0.5μM 5’末端ビオチン化ANTISENSEプライマー(5’−TTCAACAGTTTCGGCCCCAG−3’)、50pg ポリヌクレオチドの条件で行った。PCRにはTakara社のTaqポリメラーゼおよび添付されたPCR用バッファーを使用した。1サイクルを96℃で0.5分間、58℃で1分間、72℃で2分間とし、計35サイクルの増幅を行った。このPCR産物をエタノール沈殿させ、得られたDNAをBglIを用いて37℃で1時間処理した。その後、アビジン化アガロースを用いてビオチン化DNAフラグメントを除去し、溶液をフェノール/クロロホルム抽出した後、DNAをエタノール沈殿させた。得られたDNAを滅菌水に溶解してインサートDNAとした。繊維状ファージDNA(FUSE5)をSfiIで50℃で約19時間反応し、ファージベクターDNAの切断を行った。反応液をフェノール/クロロホルム抽出し、DNAをエタノール沈殿させた。得られたDNAを滅菌水に溶解した後、クロマスピン TE400(CLONTECH社)を用いて精製した。ファージベクターDNAとインサートDNAのライゲーションは10-13pmolのSfiI切断FUSE5 DNAと10-12molのインサートDNAとを、Ligation High(東洋紡績(株)製)を用いて16℃、3.5時間処理した。反応液をフェノール/クロロホルム抽出及びクロロホルム抽出した後、DNAをエタノール沈殿させる。得られたDNAを滅菌水に溶解した後、−20℃で保存した。ヒートショック法で大腸菌の形質転換を行い、50μg/mlのテトラサイクリンと50μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天培地プレートに形質転換した大腸菌希釈液100μlを撒き、37℃で終夜培養した。生じたシングルコロニーをピックアップし50μg/mlのテトラサイクリンと50μg/mlのカナマイシンを含むLB培地で一晩培養した培養上清中に産生されたファージ(実施例1)をPEG法を用いて精製回収した。
(b)ペプチド提示ファージを用いたHMG−1のELISA法による測定
HMG−1のELISA法による測定は上記(2)と同様の方法で行った。
(実施例2)スクリーニングによる配列番号2を提示したファージの製造及びそれを用いたHMG−1の検出
(a)ペプチド提示ファージの作製
アミノ酸配列Gly Tyr Leu Met Phe Ile His Leu Tyr Pro Glu Leu Alaを含むペプチドをコードするDNAを用い、実施例1と同様の方法で行った。
(b)ペプチド提示ファージを用いたHMG−1のELISA法による測定
HMG−1のELISA法による測定は上記(2)と同様の方法で行った。
(実施例3)スクリーニングによる配列番号3を提示したファージの製造及びそれを用いたHMG−1の検出
(a)ペプチド提示ファージの作製
アミノ酸配列Val Trp Val Val Pro Tyr Thr Thr Ala Thr Leuを含むペプチドをコードするDNAを用い、実施例1と同様の方法で行った。
(b)ペプチド提示ファージを用いたHMG−1のELISA法による測定
HMG−1のELISA法による測定は上記(2)と同様の方法で行った。
(実施例4)スクリーニングによる配列番号4を提示したファージの製造及びそれを用いたHMG−1の検出
(a)ペプチド提示ファージの作製
アミノ酸配列Cys Cys Tyr Ala Ser Phe Pro Gly Met Gly Metを含むペプチドをコードするDNAを用い、実施例1と同様の方法で行った。
(b)ペプチド提示ファージを用いたHMG−1のELISA法による測定
HMG−1のELISA法による測定は上記(2)と同様の方法で行った。
【0025】
実施例1〜実施例4のファージのHMG−1への結合性の結果を図1に示す。
【0026】
(比較例1)HRP標識抗HMG−1モノクローナル抗体を用いて上記(b)のHMG−1のELISA法による検出を行った。この場合、ペプチド提示ファージ及びHRP標識抗M13ファージ抗体の代わりに、HRP標識抗HMG−1モノクローナル抗体を用いた。結果を図2に示す。
【0027】
ペプチド提示ファージを用いることにより(実施例1〜実施例4)、モノクローナル抗体を用いる従来の方法(比較例1)よりもHMG−1の検出感度が大幅に向上した。
(実施例5)配列番号1を提示したペプチドの製造及びそれを用いたHMG−1の検出
(a)ペプチドの製法
アミノ酸配列Gly Trp Leu Pro Gln Gly Trp Ile Phe Gly Ala Val Thrを有するペプチドをペプチド合成機で合成する。
(b)ペプチドを用いたHMG−1のELISA法による測定
ELISA用96穴マイクロプレートのウェルに5μg/mlの抗HMG−1モノクローナル抗体PBS溶液を入れ4℃で一晩固相化を行い、抗体PBS溶液を除去した後、0.5%BSAを溶解させたPBSを入れブロッキングを行う。プレートをPBS−T(0.05%Tween−20を含むPBS)で洗浄後、緩衝液(0.25%BSA,0.05%Tween−20,0.01%パラヒドロキシ安息香酸n−プロピル(PHB)を含む0.1MTris−塩酸バッファー(pH8.0))50μl及び種々濃度のHMG−1を添加した希釈液(0.25%BSA,0.01%パラヒドロキシ安息香酸n−プロピル(PHB),0.001%フェノールレッドを含むPBS−T溶液)50μlを加えて25℃で60分反応させる。各ウェルを400μlのPBS−Tで3回洗浄後、あらかじめビオチン化したペプチド溶液を100μl入れ25℃で60分反応させる。ペプチド溶液を捨て、各ウェルを400μlのPBS−Tで3回洗浄後、希釈液で希釈したHRP標識アビジン溶液を入れ25℃で30分反応させる。溶液を捨て、各ウェルを400μlのPBS−Tで3回洗浄後、発色液(0.006%過酸化水素,0.2mg/mlテトラメチルベンジジン(TMB)を含む0.1M酢酸―クエン酸ナトリウム緩衝液(pH4.5))を100μl分注して15分反応させる。反応後、1N硫酸を100μl加え反応を止める。マイクロプレートリーダーを用いて450nmで吸光度を測定する。
(実施例6)配列番号2のペプチドの製造及びそれを用いたHMG−1のELISAによる検出
アミノ酸配列Gly Tyr Leu Met Phe Ile His Leu Tyr Pro Glu Leu Alaを有するペプチドをペプチド合成機で合成し、実施例5と同様に行う。
(実施例7)配列番号3のペプチドの製造及びそれを用いたHMG−1のELISAによる検出
アミノ酸配列Val Trp Val Val Pro Tyr Thr Thr Ala Thr Leuを有するペプチドをペプチド合成機で合成し、実施例5と同様に行う。
(実施例8)配列番号4のペプチドの製造及びそれを用いたHMG−1のELISAによる検出
アミノ酸配列Cys Cys Tyr Ala Ser Phe Pro Gly Mey Gly Metを有するペプチドをペプチド合成機で合成し、実施例5と同様に行う。
【0028】
実施例5〜8のELISAにより、コントロールのペプチドを用いた場合と比べて有意に高い発色が得られる。
【0029】
【発明の効果】
本発明のペプチド、またはそのペプチドを提示するファージはHMGタンパクに親和性を有しており、このペプチドを合成もしくはライブラリーからのスクリーニングで得ることによりHMGタンパクの高感度な定量が可能になる。また、本発明のペプチド、またはそのペプチドを提示するファージにアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するペプチドもHMGタンパクに親和性を有し、HMGタンパクの高感度な定量が可能である。また本発明のペプチドまたはペプチドを提示するファージを用いることによりHMGタンパクを測定するキットを提供することが可能である。また、本発明のペプチド、またはペプチドを提示するファージは、敗血症の治療薬等の有効成分として有用である。また、本発明のペプチド、またはペプチドを提示するファージは、癌の治療薬等の有効成分として有用である。
【0030】
【配列表】
Figure 0004238557
Figure 0004238557

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のペプチド提示ファージを用いたHMG−1の測定結果(実施例1〜4)である。
【図2】抗HMG−1抗体を用いたHMG−1の測定結果(比較例1)である。

Claims (12)

  1. 以下の(a)又は(b)のペプチド。
    (a)Gly Trp Leu Pro Gln Gly Trp Ile Phe Gly Ala Val Thrのアミノ酸配列からなるペプチド。
    (b)(a)のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列からなり、かつハイモビリティーグループタンパク−1(HMG−1)と親和性を有することを特徴とするペプチド。
  2. 以下の(a)又は(b)のペプチド。
    (a)Gly Tyr Leu Met Phe Ile His Leu Tyr Pro Glu Leu Alaのアミノ酸配列からなるペプチド。
    (b)(a)のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列からなり、かつハイモビリティーグループタンパク−1(HMG−1)と親和性を有することを特徴とするペプチド。
  3. 以下の(a)又は(b)のペプチド。
    (a)Val Trp Val Val Pro Tyr Thr Thr Ala Thr Leuのアミノ酸配列からなるペプチド。
    (b)(a)のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列からなり、かつハイモビリティーグループタンパク−1(HMG−1)と親和性を有するペプチド。
  4. 以下の(a)又は(b)のペプチド。
    (a)Cys Cys Tyr Ala Ser Phe Pro Gly Met Gly Metのアミノ酸配列からなるペプチド。
    (b)(a)のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列からなり、かつハイモビリティーグループタンパク−1(HMG−1)と親和性を有するペプチド。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のペプチドを提示するファージ。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のペプチドをその部分として含み、ハイモビリティーグループタンパク−1(HMG−1)に親和性を有するペプチド。
  7. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のペプチドをコードするポリヌクレオチド。
  8. DNAである請求項7に記載のポリヌクレオチド。
  9. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチドまたはファージを用いたハイモビリティーグループタンパク−1(HMG−1)を測定する方法。
  10. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチドまたはファージを含むハイモビリティーグループタンパク−1(HMG−1)を測定するキット。
  11. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチドまたはファージを含む敗血症の治療薬。
  12. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチドまたはファージを含む癌の治療薬。
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