JP4234869B2 - 顔料分散剤、それを含む顔料分散組成物及び着色感光性組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、顔料分散剤、それを含む顔料分散組成物及び着色感光性組成物に関し、更に詳しくは、顔料同士の凝集を効果的に防止し該顔料の良好な分散を実現する顔料分散剤、該顔料分散剤を含有し、顔料の分散性、流動性等に優れ、着色力に優れ、塗料、印刷インキ、カラー表示板等の広い範囲で好適に使用し得る顔料分散組成物、及び、該顔料分散組成物を含有し、カラープルーフ等の基体上の多色画像の形成や、液晶カラーディスプレイ等に使用されるカラーフィルタの製造などに好適に使用し得る着色感光性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、顔料は、鮮明な色調と高い着色力とを示し、多くの分野で広く使用されてきている。これらの顔料の中でも実用上重要なものは、一般に、微細な粒子のものが多く、該顔料の凝集を防ぎ微細化することによって鮮明な色調と高い着色力とが得られる。
しかし、顔料をより微細化していくと、該顔料の分散液は高粘度を示すことが多い。このため、この顔料分散液を工業的規模で調製した場合は、該顔料分散液の分散機からの取り出しが困難となったり、パイプラインによる輸送ができなくなったり、更には貯蔵中にゲル化して使用不能となる、等の問題がある。
【0003】
ところで、前記顔料を含有する着色感光性組成物は、液晶ディスプレイ等に用いるカラーフィルタの材料等として有用であり、該着色感光性組成物を用いてカラーフィルタを製造する場合、品質、製造安定性等の点で優れる顔料分散法が広く採用されている。この顔料分散法においては、前記着色感光性組成物の塗布液を透明基板上に塗布して着色感光性層を設け、パターン露光した後、現像して第一色目の画素パターンを形成し、これを複数回繰り返して、該透明基板上に複数色の画素パターンを形成する。
【0004】
しかし、ここでは着色材として顔料を用いるため、該顔料の微細化が十分でない場合には、該顔料により光が散乱、吸収され、光透過率が低下してしまう。更に、該顔料による光の散乱、複屈折等で偏光軸が回転し、液晶表示装置のコントラストも低下してしまう、等の問題がある(1990年第7回色彩光学コンファレンス、512色表示10.4”サイズTFT−LCD用カラーフィルタ、植木、小関、福永、山中)。このため、前記着色感光性組成物においては、前記顔料を高度に微細化した状態で分散させておくことが必要とされる。
【0005】
そこで、従来においては、流動性、分散性等に優れた顔料分散液あるいは着色感光性組成物を得るため、種々の分散剤を使用することが知られている。該分散剤は、ポリマー系分散剤と低分子化合物分散剤とに大別でき、前記ポリマー系分散剤としては、ポリアクリル酸塩、マレイン酸ナトリウムオレフィン共重合体、末端カルボキシル基含有ポリエステル(特公昭54−34009号公報)、テトラキス(2−ヒドロキシアルキル)エチレンジアミンを出発物質とする酸性基及び/又は塩基性基を有するポリエステル(特開平2−245231号公報)、マクロモノマー(末端にエチレン性不飽和基を有するオリゴマー)、水酸基を有するモノマー、カルボキシ基含有モノマー及びこれら以外のモノマーの4種からなる共重合体(特開平8−259876号公報)等が知られており、また、前記低分子化合物分散剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルジアミン、アルカノールアミン誘導体(米国特許第3536510号)等が知られている。
【0006】
これらの分散剤の中でも、特開平7−140654、特開平5−273411、特開平8−259876号の各公報には、カラーフィルタ、カラープルーフ等の材料としての着色感光性組成物に、マクロモノマー(末端にエチレン性不飽和基を有するオリゴマー)を含む共重合体が有用であり、該マクロモノマー(末端にエチレシ性不飽和基を有するオリゴマー)を含む共重合体を使用することにより、顔料粒径が小さく、分散安定性に優れた顔料分散液が得られることが開示されている。
しかしながら、該マクロモノマーは、窒素原子を含有しないため、分散剤として使用しても単独では機能せず、他の分散剤との併用が必要であるという問題がある。該マクロモノマーを分散剤として用いた場合、高分子分散剤に見られる増粘作用については小さくて良好であるが、顔料の微粒化効果が十分でなく、分散性が十分でないという問題がある。
【0007】
一方、鮮明な色調と高い着色力とを示す顔料を含有した着色感光性組成物は、例えばカラープルーフやカラーフィルタ等を作製するための画像形成材料として有用である。
該着色感光性組成物を用いて着色画像を形成する場合、一般に、着色感光性組成物の塗布液を基板上に塗布して該着色感光性組成物による層を形成した後、露光・現像を行うが、この現像の際に用いる現像液としては、環境に与える影響の少ないアルカリ性水溶液を使用することが多く、前記着色感光性組成物による層は、即ち着色感光性組成物中の結合剤(バインダー)は、前記アルカリ性水溶液に可溶であることが要求される。その一方、着色感光性組成物の塗布液に用いられる溶媒(顔料の分散媒)としては、塗布後の乾燥の容易さから有機溶剤が有効である。
このため、前記着色感光性組成物中の結合剤は、酸性基を有し、かつ適当な有機溶媒に溶解し得る性質を有する必要があり、該着色感光性組成物においては、有機顔料は、かかる性質を有し、酸性基を有する前記結合剤中に分散される。
【0008】
このような着色感光性組成物による層は、一般に極めて薄く、かつ、薄膜で高い着色濃度を示すことが要求されることから、有機溶媒に可溶の酸性基を有する結合剤中に、有機顔料を高度に微細化した状態で分散させることが必要となる。
しかし、前記顔料の分散性、流動性等に優れた顔料分散物、それを含む顔料分散組成物及び着色感光性組成物は、未だ提供されていないのが現状である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、
本発明は、顔料を凝集させず該顔料の安定かつ良好な分散性、流動性を実現し、かつ光透過性にも優れた顔料分散剤を提供することを目的とする。また、
本発明は、該顔料分散剤を含有し、顔料の分散性、流動性等に優れ、かつ着色力が高く、アルカリ現像適性にも優れ、塗料、印刷インキ、カラー表示板等の広い範囲で好適に使用し得る顔料分散組成物を提供することを目的とする。更に、
本発明は、該顔料分散組成物を含有し、着色力が高く、アルカリ現像適性に優れ、カラープルーフ等の基体上の多色画像の形成や、液晶カラーディスプレイ等に使用されるカラーフィルタの製造などに好適に使用し得る着色感光性組成物を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために本発明者等が鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。即ち、有機溶媒に可溶な酸性基を有する結合剤中に、有機顔料を分散させた場合、該酸性基と該有機顔料との間で分子間力が働いて増粘する傾向がある。この増粘により分散安定性は向上するが、取扱性、作業性等の低下を招く上、該有機顔料が微細化しにくくなる傾向がある。このため、増粘を伴わずに分散を促進させ得る分散剤が望まれ、そのような分散剤として、低分子化合物分散剤、中でも特にアミン化合物等が知られている。しかし、このアミン化合物等の場合、酸性基と塩を形成してしまい、感光性樹脂層が現像液に溶解し易くなる等、後の現像に悪影響を与え得る。アルカリ性分散剤や水易溶性分散剤にも、前記アミン化合物等と同様な傾向がある。一方、上述のマクロモノマーの場合には、高分子鎖の立体効果から前記増粘の問題はある程度抑えられるものの、顔料の分散性が十分ではない、という知見である。
【0011】
本発明は、本発明者による前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 下記一般式(6)で表される末端にエチレン性不飽和二重結合を有する重合性オリゴマーと、下記一般式(3)又は一般式(5)で表される窒素原子とエチレン性不飽和二重結合とを有する窒素含有モノマーと、下記一般式(1)で表されるエーテル基を有する重合性モノマーとを共重合体単位として含むグラフト共重合体を含有することを特徴とする顔料分散剤である。
<2> グラフト共重合体において、共重合体単位として、重合性オリゴマーを15〜98重量%、窒素含有モノマーを1〜40重量%、及び、エーテル基を有する重合性モノマーを1〜70重量%含有する前記<1>に記載の顔料分散剤である。
【0013】
【化3】
【0014】
前記一般式(6)において、R 61 及びR 63 は、水素原子又はメチル基を表す。R 62 は、炭素数1〜8のアルコール性水酸基で置換されてもよいアルキレン基を表す。Yは、フェニル基、炭素数1〜4のアルキル基を有するフェニル基、又は−COOR 64 (ここで、R 64 は、炭素数1〜6のアルコール性水酸基、ハロゲンで置換されてもよいアルキル基、フェニル基、又は炭素数7〜10のアリールアルキル基を表す。)を表す。qは、20〜200を表す。
前記一般式(3)において、R 31 は、水素原子又はメチル基を表す。R 32 は、炭素数1〜8のアルキレン基を表す。X 3 は、−N(R 23 )(R 24 )、−R 25 N(R 26 )(R 27 )、ピロリジノ基、ピロリジル基、ピリジル基、ピペリジノ基、イミダゾリル基、カルバゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基又はモルホリノ基を表す。R 23 及びR 24 は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を表す。R 25 は、炭素数1〜6のアルキレン基を表し、R 26 及びR 27 は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を表す。
【0015】
<3> 重合性オリゴマーが、アルキル(メタ)アクリレートの単独重合体若しくは共重合体、ポリスチレン、及び、アルキル(メタ)アクリレートとポリスチレンとの共重合体から選択される少なくとも1種のオリゴマーであって、数平均分子量が1000〜20000であり、末端に(メタ)アクリロイル基を有する前記<1>又は<2>に記載の顔料分散剤である。
【0016】
【化4】
【0017】
前記一般式(5)において、R 51 は、水素原子又はメチル基を表す。X 5 は、ピロリジノ基、ピロリジル基、ピリジル基、ピペリジノ基、イミダゾリル基、カルバゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基又はモルホリノ基を表す。
前記一般式(1)において、R 11 は、水素原子又はメチル基を表し、R 12 は、炭素数1〜8のアルキレン基を表す。X 1 は、−OR 13 又は−OCOR 14 を表す。R 13 は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、フェニル基、又は炭素数1〜18のアルキル基で置換されたフェニル基を表す。R 14 は、炭素数1〜18のアルキル基を表す。lは、2〜200を表す。
【0018】
<4> 前記<1>〜<3>のいずれかに記載の顔料分散剤と、顔料とを、有機溶剤中に分散してなることを特徴とする顔料分散組成物である。
<5> 前記<4>に記載の顔料分散組成物と、酸性基を有するバインダーポリマーと、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有する多官能モノマーと、光重合開始剤とを含有することを特徴とする着色感光性組成物である。
【0019】
【発明の実施の形態】
《顔料分散剤》
本発明の顔料分散剤は、窒素原子及びエーテル基を有するグラフト共重合体を含有し、必要に応じて適宜選択したその他の成分を含有する。
【0020】
(グラフト共重合体)
前記グラフト共重合体は、窒素原子及びエーテル基を少なくとも有してなり、その他のモノマー等を共重合体単位として含んでいてもよい。
前記グラフト共重合体において、前記窒素原子は、主鎖に存在していてもよいし側鎖に存在していてもよい。
【0021】
前記グラフト共重合体の重量平均分子量(Mw)としては、3000〜100000が好ましく、5000〜50000がより好ましい。
前記重量平均分子量(Mw)が、3000未満であると、顔料の凝集を防ぐことができず、粘度が上昇してしまうことがあり、100000を超えると有機溶剤への溶解性が不足し、粘度が上昇してしまうことがある。
なお、該重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(キャリア:テトラヒドロフラン)により測定されるポリスチレン換算重量平均分子量である。
【0022】
前記グラフト共重合体は、末端にエチレン性不飽和二重結合を有する重合性オリゴマーと、窒素原子とエチレン性不飽和二重結合とを有する窒素含有モノマーと、エーテル基を有する重合性モノマーとを共重合体単位として少なくとも含み、必要に応じて、その他のモノマーを共重合単位として含む。
【0023】
前記グラフト共重合体は、図1に示す通り、エーテル基を有する側鎖5と窒素原子3とを少なくとも有する主鎖に、重合性オリゴマーによる側鎖2がグラフト共重合により結合しており、主鎖と側鎖との結合部1は、前記重合性オリゴマーにおける末端のエチレン性不飽和二重結合による重合反応の結果生じたものである。前記主鎖及び/又は前記側鎖は、必要に応じて、その他のモノマーを共重合単位として含んでいてもよい。
【0024】
グラフト共重合体は、前記重合性オリゴマーにおける末端のエチレン性不飽和二重結合と、前記窒素含有モノマーにおけるエチレン性不飽和二重結合と、前記エーテル基を有する重合性モノマーとの重合反応により形成される。
【0025】
これらの共重合体単位の、前記グラフト共重合体における含有量としては、前記重合性オリゴマーが15〜98重量%であり、好ましくは25〜90重量%であり、前記窒素含有モノマーが1〜40重量%であり、好ましくは5〜30重量%であり、前記エーテル基を有する重合性モノマーが1〜70重量%であり、好ましくは5〜60重量%である。
【0026】
前記重合性オリゴマーの含有量が、15重量%未満であると、顔料分散剤としての立体反発効果が得られず、顔料の凝集が防止できないことがあり、98重量%を超えると、前記窒素含有モノマーの割合が減り顔料に対する吸着能力が低下し、分散性が十分でないことがある。
前記窒素含有モノマーの含有量が、1重量%未満であると、顔料に対する吸着能力が低下し、分散性が十分でないことがあり、40重量%を超えると、前記重合性オリゴマーの割合が減ることから、顔料分散剤としての立体反発効果が得られず、顔料の凝集を十分に防止できないことがある。
前記エーテル基を有する重合性モノマーの含有量が、1重量%未満であると、カラーフィルター等の製造の際の現像適性が十分でないことがあり、70重量%を超えると、顔料分散剤としての能力が低下することがある。
【0027】
―重合性オリゴマー―
前記重合性オリゴマー(以下、「マクロモノマー」と称することがある。)は、エチレン性不飽和二重結合を有する基を末端に有するオリゴマーである。本発明においては、前記重合性オリゴマーの中でも、該オリゴマーの両末端の内の一方にのみ前記エチレン性不飽和二重結合を有する基を有するのが好ましい。
【0028】
前記重合性オリゴマーの分子量としては、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が1000〜20000であるのが好ましく、2000〜10000であるのがより好ましい。
前記数平均分子量が、1000未満であると、顔料分散剤としての立体反発効果が十分でないことがあり、20000を超えると、立体効果により、顔料への吸着に時間を要することがある。
【0029】
前記オリゴマーとしては、一般的には、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、及びブタジエンから選択された少なくとも一種のモノマーから形成された単独重合体又は共重合体などが挙げられ、これらの中でも、アルキル(メタ)アクリレートの単独重合体又は共重合体、ポリスチレンなどが好ましい。
本発明において、これらのオリゴマーは、置換基で置換されていてもよく、該置換基としては、特に制限はないが、例えば、ハロゲン原子などが挙げられる。
【0030】
前記エチレン性不飽和二重結合を有する基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、などが好適に挙げられ、これらの中でも(メタ)アクリロイル基が特に好ましい。
【0031】
本発明においては、前記重合性オリゴマーの中でも、下記一般式(6)で表されるオリゴマーが好ましい。
【0032】
【化5】
【0033】
前記一般式(6)において、R61及びR63は、水素原子又はメチル基を表す。R62は、炭素数1〜8のアルコール性水酸基で置換されてもよいアルキレン基を表し、炭素数2〜4のアルキレン基が好ましい。Yは、フェニル基、炭素数1〜4のアルキル基を有するフェニル基、又は−COOR64(ここで、R64は、炭素数1〜6のアルコール性水酸基、ハロゲンで置換されてもよいアルキル基、フェニル基、又は炭素数7〜10のアリールアルキル基を表す。)を表し、フェニル基又は−COOR64(ここで、R64は、炭素数1〜4のアルコール性水酸基で置換されてもよいアルキル基を表す。)が好ましい。qは、20〜200を表す。
【0034】
前記重合性オリゴマーの具体例としては、ポリ−2ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ−n−ブチル(メタ)アクリレート、ポリ−i−ブチル(メタ)アクリレート、それらの共重合体であって、分子末端の一個に(メタ)アクリロイル基が結合したポリマーが好適に挙げられる。
【0035】
前記重合性オリゴマーは、市販品であってもよいし、適宜合成したものであってもよく、該市販品としては、例えば、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー(Mn=6000、商品名:AS−6,東亜合成化学工業(株)製)、片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AA−6,東亜合成化学工業(株)製)、片末端メタクリロイル化ポリ−n−ブチルアクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AB−6,東亜合成化学工業(株)製)、片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートオリゴマー(Mn=7000、商品名:AA−714,東亜合成化学工業(株)製)、片末端メタクリロイル化ポリブチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートオリゴマー(Mn=7000、商品名:707S,東亜合成化学工業(株)製)、片末端メタクリロイル化ポリ2−エチルヘキシルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートオリゴマー(Mn=7000、商品名:AY−707S、AY−714S,東亜合成化学工業(株)製)、などが挙げられる。
【0036】
本発明における前記重合性オリゴマーの好ましい具体例としては、アルキル(メタ)アクリレートの重合体、及び、アルキル(メタ)アクリレートとポリスチレンとの共重合体から選択される少なくとも1種のオリゴマーであって、数平均分子量が1000〜20000であり、末端に(メタ)アクリロイル基を有するものが挙げられる。
【0037】
―窒素含有モノマー―
前記窒素含有モノマーとしては、例えば、下記一般式(2)で表される化合物より選択される少なくとも1種が好適に挙げられる。
【0038】
【化6】
【0039】
前記一般式(2)において、R21は、水素原子又はメチル基を表す。R22は、炭素数1〜8のアルキレン基を表し、これらの中でも、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜3のアルキレン基が特に好ましい。
【0040】
X2は、−N(R23)(R24)、−R25N(R26)(R27)、ピロリジノ基、ピロリジル基、ピリジル基、ピペリジノ基、イミダゾリル基、カルバゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基又はモルホリノ基を表す。ここで、R23及びR24は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を表す。R25は、炭素数1〜6のアルキレン基を表し、R26及びR27は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を表す。
【0041】
上記のうち、−N(R23)(R24)又は−R15−N(R26)(R27)が好ましく、−N(R23)(R24)のR23及びR24は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基若しくはフェニル基が好ましく、−R25−N(R26)(R27)のR25は、炭素数2〜6のアルキレン基が好ましく、R26及びR27は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
また、前記ピリジル基の中でも、4−ピリジル基、2−ピリジル基等が好ましく、前記ピペリジノ基の中でも、1−ピペリジノ基等が好ましく、前記ピロリジル基の中でも、2−ピロリジル基等が好ましく、前記モルホリノ基の中でも、4−モルホリノ基等が好ましい。
m及びnは、1又は0を表し、m=1かつn=1、又は、m=1かつn=0が好ましい(即ち、下記一般式(3)、(4)で表される化合物に対応する)。
【0042】
本発明においては、前記一般式(2)で表される化合物の中でも、下記一般式(3)〜(5)のいずれかで表される化合物から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0043】
【化7】
【0044】
前記一般式(3)において、R31は、R21と同義である。R32は、R22と同義である。X3は、X2と同義である。
【0045】
【化8】
【0046】
前記一般式(4)において、R41は、R21と同義である。X4は、X2と同義であり、−N(R43)(R44)(ここで、R43及びR44は、R23及びR24と同義である。)、又は、−R45−N(R46)(R47)(ここで、R45、R46及びR47は、それぞれR25、R26及びR27と同義である。)が好ましい。
【0047】
【化9】
【0048】
前記一般式(5)において、R51は、R21と同義である。X5は、ピロリジノ基、ピロリジル基、ピリジル基、ピペリジノ基、イミダゾリル基、カルバゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基又はモルホリノ基を表す。
【0049】
前記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジ−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、ジ−i−ブチル(メタ)アクリルアミド、モルホリノ(メタ)アクリルアミド、ピペリジノ(メタ)アクリルアミド、N−メチル−2−ピロリジル(メタ)アクリルアミド及びN,N−メチルフェニル(メタ)アクリルアミド(以上(メタ)アクリルアミド類);
【0050】
2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、1−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1−ジメチルメチル(メタ)アクリルアミド及び6−(N,N−ジエチルアミノ)ヘキシル(メタ)アクリルアミド(以上アミノアルキル(メタ)アクリルアミド類);及びビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルトリアゾール、ビニルテトラゾールなどが好適に挙げられる。
【0051】
―エーテル基を有する重合性モノマー―
前記エーテル基を有する重合性モノマーとしては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物より選択される少なくとも1種が好適に挙げられる。
【0052】
【化10】
【0053】
前記一般式(1)において、R11は、水素原子又はメチル基を表す。R12は、炭素数1〜8のアルキレン基を表し、中でも、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜3のアルキレン基がより好ましい。
X1は、−OR13又は−OCOR14を表す。ここで、R13は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、フェニル基、又は炭素数1〜18のアルキル基で置換されたフェニル基を表す。R14は、炭素数1〜18のアルキル基を表す。
また、lは、2〜200を表し、5〜100が好ましく、10〜100が特に好ましい。
【0054】
前記エーテル基を有する重合性モノマーとしては、エーテル基を有し、且つ重合性のものであれば特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノメタクリレートなどが挙げられ、これらは市販品であってもよいし、適宜合成したものであってもよい。該市販品としては、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(商品名:NKエステルM−40G,M−90G,M−230G(以上、東亜合成化学工業(株)製);商品名:ブレンマーPME−100,PME−200,PME−400,PME−1000,PME−2000、PME−4000(以上、日本油脂(株)製))、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350,日本油脂(株)製)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーPP−500、PP−800、PP−1000,日本油脂(株)製)、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマー70PEP−370B,日本油脂(株)製)、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマー55PET−800,日本油脂(株)製)、ポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーNHK−5050,日本油脂(株)製)などが挙げられる。
【0055】
―その他のモノマー―
前記グラフト共重合体は、前記その他のモノマーを更に共重合体単位として含有していてもよく、該その他のモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、芳香族ビニル化合物(例、スチレン、α−メチルスチレン及びビニルトルエン)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート及びi−ブチル(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステル(例、ベンジル(メタ)アクリレート)、グリシジル(メタ)アクリレート、カルボン酸ビニルエステル(例、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル)、シアン化ビニル(例、(メタ)アクリロニトリル及びα−クロロアクリロニトリル)、及び脂肪族共役ジエン(例、1,3−ブタジエン及びイソプレン)、(メタ)アクリル酸、などが挙げられる。
これらの中でも、不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステル及びカルボン酸ビニルエステルが好ましい。
【0056】
前記グラフト共重合体における該その他のモノマーの含有量としては、例えば、5〜70重量%が好ましい。
前記含有率が、5重量%未満であると、塗布膜の物性の制御ができなくなることがあり、70重量%を超えると、顔料分散剤としての能力が十分に発揮されないことがある。
【0057】
前記グラフト共重合体の好ましい具体例としては、(1) N−ビニルイミダゾール/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、(2) N−ビニルカルバゾール/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、(3) N−ビニルトリアゾール/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、(4) N−ビニルイミダゾール/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリスチレン共重合体、(5) N−ビニルカルバゾール/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリスチレン共重合体、(6) N−ビニルイミダゾール/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/メチル(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリスチレン共重合体、(7) N−ビニルイミダゾール/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/ベンジル(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリスチレン共重合体、
【0058】
(8) ビニルピリジン/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、(9) N,N−ジメチル−2−ピペリジルエチルアクリレート/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、(10) 4−モルホリノエチルアクリレート/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、(11) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、(12) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化ポリスチレン共重合体、
【0059】
(13) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/メチル(メタ)アクリレート末端メタクリロイル化ポリスチレン共重合体、(14) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化メチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体の共重合体、(15) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化メチルメタアクリレート及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体の共重合体、(16) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクリロイル化メチルメタアクリレート及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体の共重合体、
【0060】
(17) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、(18) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、(19) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、(20) 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/ポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/末端メタクロイル化ポリメチル(メタ)アクリレート共重合体、などが挙げられる。
【0061】
前記グラフト共重合体は、前記各共重合体単位となる成分を、例えば、溶媒中でラジカル重合させることにより得ることができる。該ラジカル重合の際、ラジカル重合開始剤を使用することができ、また、更に連鎖移動剤(例、2−メルカプトエタノール及びドデシルメルカプタン)を使用することができる。
以下に、前記グラフト共重合体の合成例をいくつか例示する。
【0062】
[合成例1]
1−メトキシ−2−プロピルアセテート15重量部を窒素置換した三口フラスコに導入し、スリーワンモータにて撹拌し、窒素をフラスコ内に流しながら加熱し、フラスコ内を78℃まで昇温した。
別に調製した下記モノマー溶液と開始剤溶液とをそれぞれ2時間かけて同時に滴下した。
(モノマー溶液)
・3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド・・・ 4.5重量部
・一方の末端にメタクリロイル基を有する ・・・19.5重量部
ポリメチルメタクリレート(数平均分子量:6000、商品名:マクロモノマーAA−6,東亜合成化学工業(株)製)
・メトキシポリエチレングリコールメタクリレート ・・・ 6重量部
(商品名:NKエステルM−230G,東亜合成化学工業(株)製)
・1−メトキシ−2−プロピルアセテート ・・・45重量部
(開始剤溶液)
・2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)
(商品名:V−65、和光純薬(株)製) ・・・ 0.04重量部
・1−メトキシ−2−プロピルアセテート ・・・ 9.6重量部
【0063】
滴下後、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(商品名:V−65)0.08重量部をフラスコ内の溶液中に添加し、さらにフラスコ内を78℃に3時間保持し、その後加熱して90℃に30分間保った。次いで、フラスコ内の溶液を室温まで冷却し、前記グラフト共重合体の溶液を得た。
該グラフト共重合体の溶液は、固形分が30重量%で、重合収率は98%であった。得られたグラフト共重合体の重量平均分子量は、20000であった。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(C−R4A、(株)島津製作所製)により測定した。
【0064】
[合成例2]
前記合成例1において、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(商品名:NKエステルM−230G,東亜合成化学工業(株)製)を、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(商品名:ブレンマーPME−4000,日本油脂(株)製)に代えたこと以外、前記合成例1と同様にした。
得られたグラフト共重合体の溶液は、固形分が30重量%で、重合収率は98%であった。得られたグラフト共重合体の重量平均分子量は、20000であった。
【0065】
[合成例3]
前記合成例1において、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(商品名:NKエステルM−230G,東亜合成化学工業(株)製)を、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(商品名:ブレンマーPME−2000,日本油脂(株)製)に代えたこと以外、前記合成例1と同様にした。
得られたグラフト共重合体の溶液は、固形分が30重量%で、重合収率は98%であった。得られたグラフト共重合体の重量平均分子量は、20000であった。
【0066】
[合成例4]
前記合成例1において、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(商品名:NKエステルM−230G,東亜合成化学工業(株)製)を、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーPP−1000,日本油脂(株)製)に代えたこと以外、前記合成例1と同様にした。
得られたグラフト共重合体の溶液は、固形分が30重量%で、重合収率は98%であった。得られたグラフト共重合体の重量平均分子量は、20000であった。
【0067】
[合成例5]
前記合成例1において、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミドを4.5重量部、一方の末端にメタクリロイル基を有するポリメチルメタクリレート(数平均分子量:6000、マクロモノマーAA−6,東亜合成化学工業(株)製)を22.5重量部、及び、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(商品名:NKエステルM−230G,東亜合成化学工業(株)製)を3重量部用いたこと以外、前記合成例1と同様にした。
得られたグラフト共重合体の溶液は、固形分が30重量%で、重合収率は98%であった。得られたグラフト共重合体の重量平均分子量は、20000であった。
【0068】
[合成例6]
前記合成例1において、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミドを、N−ビニルイミダゾールに代えたこと以外、前記合成例1と同様にした。
得られたグラフト共重合体の溶液は、固形分が30重量%で、重合収率は98%であった。得られたグラフト共重合体の重量平均分子量は、20000であった。
【0069】
[合成例7]
前記合成例1において、一方の末端にメタクリロイル基を有するポリメチルメタクリレートを、一方の末端にメタクリロイル基を有するメチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(数平均分子量:7000、マクロモノマーAA−714,東亜合成化学工業(株)製)に代えたこと以外、前記合成例1と同様にした。
得られたグラフト共重合体の溶液は、固形分が30重量%で、重合収率は98%であった。得られたグラフト共重合体の重量平均分子量は、20000であった。
【0070】
本発明の顔料分散剤は、前記グラフト共重合体のみを含んでいてもよいし、必要に応じて適宜選択したその他の成分を更に含んでいてもよい。
前記その他の成分としては、公知の分散剤が挙げられ、具体的には、ノナノアミド、デカンアミド、ドデカンアミド、N−ドデシルヘキサデカンアミド、N−オクタデシルプロピオアミド、N,N−ジメチルドデカンアミド及びN,N−ジヘキシルアセトアミド等のアミド化合物、ジエチルアミン、ジヘプチルアミン、ジブチルヘキサデシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルメタンアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン及びトリオクチルアミン等のアミン化合物、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N,N’,N’−(テトラヒドロキシエチル)−1,2−ジアミノエタン、N,N,N’−トリ(ヒドロキシエチル)−1,2−ジアミノエタン、N,N,N’,N‘−テトラ(ヒドロキシエチルポリオキシエチレン)−1,2−ジアミノエタン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン及び1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジシ等のヒドロキシ基を有するアミン、その他、ペコタミド、イソニペコタミド、ニコチン酸アミド等の化合物、などが挙げられる。これらは、市販品であってもよいし、適宜合成したものであってもよく、該市販品としては、例えばシゲノックス−105(商品名、ハッコールケミカル社製)などが挙げられる。
【0071】
前記その他の成分の前記顔料分散剤における含有量としては、1〜90重量%が好ましく、1〜70重量%がより好ましい。
前記含有量が、1重量%未満であると、顔料分散組成物の粘度上昇を抑制できないことがあり、90重量%を超えると、顔料分散剤としての性能が十分に発揮されないことがある。
【0072】
また、本発明の顔料分散剤は、更に、下記一般式(7)又は(8)で表されるアミン化合物を含有していてもよい。
【0073】
【化11】
【0074】
前記一般式(7)において、R71及びR72は、水素原子、又は、置換基を有していてもよいアルキル基若しくはアラルキル基を表し、これらは互いに結合して窒素原子を含む5員乃至6員の飽和環を形成してもよい。この飽和環は、更に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択される1〜3個の原子を含んでもよい。R73は、アルキレン基、又はエーテル結合を含むアルキレン基を表す。X6は、−CON(Y61)(Y62)、−OCON(Y61)(Y62)、−N(Y63)CO(Y64)、又は、−N(Y63)CON(Y61)(Y62)を表す。Y61、Y62、Y63及びY64は、水素原子、又は、置換基を有してもよいアルキル基、アラルキル基若しくはアリール基を表す。
【0075】
【化12】
【0076】
前記一般式(8)において、R81、R82、R86及びR87は、水素原子、又は、置換基を有していてもよいアルキル基若しくはアラルキル基を表し、これらは互いに結合して窒素原子を含む5員乃至6員の飽和環を形成してもよい。この飽和環は、更に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択される1〜3個の原子を含んでもよい。R84及びR85は、アルキレン基、又はエーテル結合を合むアルキレン基を表す。Z7は、−CON(Y71)−、−OCON(Y71)−又は−N(Y72)CON(Y73)−、を表す。Y71、Y72及びY73は、前記一般式(7)におけるY61、Y62及びY63と順に同義である。
【0077】
前記一般式(7)又は(8)で表されるアミン化合物の具体例としては、ビス(2−(1−モルホリノ)エチル)テレフタルアミド、などが好適に挙げられる。
【0078】
また、本発明の顔料分散剤は、各種界面活性剤を含有していてもよく、該界面活性剤を含有していると分散安定性の向上に有効である。該界面活性剤としては、例えば、アルキルナフタレンスルホン酸塩、燐酸エステル塩に代表されるアニオン系界面活性剤、アミン塩に代表されるカチオン系界面活性剤、アミノカルボン酸、ベタイン型に代表される両性界面活性剤、などが挙げられる。
【0079】
―分散―
次に、図面を参照しながら本発明の顔料分散剤による顔料の分散について説明する。図2は、前記グラフト共重合体を含む顔料分散剤が、顔料粒子の表面に吸着した状態を示す概略説明図である。
【0080】
図2に示す通り、本発明の顔料分散剤を用いた場合、該顔料分散剤が、顔料粒子4の表面に吸着する。このとき、顔料粒子4の表面には、前記顔料分散剤における前記グラフト共重合体の主鎖に存在する窒素原子3が吸着する。顔料粒子4は、前記グラフト共重合体における主鎖で覆われた状態になる。該主鎖からは側鎖2が分岐しており、該側鎖2は、顔料粒子4の表面から外側に向かって伸びており、顔料粒子4の周辺を雲が覆うかのようにして存在している。個々の顔料粒子4の表面に前記グラフト共重合体が吸着しているので、顔料粒子4同士は、互いに吸着し凝集することがなく、微細化した状態のまま、前記グラフト共重合体により均一に分散され、流動し易い状態になる。
また、グラフト共重合体の主鎖からは、さらにエーテル基を有する側鎖5が分岐しており、前記側鎖2と同様、顔料粒子4の表面から外側へ向かって伸びている。このエーテル基を有する側鎖5の存在により、本発明の顔料分散剤は、アルカリ水溶液による、十分なアルカリ現像適性をも確保できる。
【0081】
通常の顔料分散剤を着色感光性組成物に用いた場合には、該着色感光性組成物に含まれる、酸性基を有するバインダーポリマーにおける該酸性基と、前記顔料分散剤における窒素原子とが、塩を形成したり、強い分子間力で結合したりすることが多いが、本発明の顔料分散剤の場合には、前記グラフト共重合体における側鎖2の存在により、このような挙動を抑制する一方、分散後の安定性を向上させ、窒素原子による分散性向上の効果も高め得る。また、前記グラフト共重合体によると、有機顔料を分散する際、増粘を伴うことがなく、有機顔料の分散性が良好であり、特に酸性の有機顔料に対する分散性が良好である。
【0082】
本発明の顔料分散剤による分散とは、二次粒子の状態で一般に存在する顔料粒子をほぐして一次粒子の状態にし、再凝集を防止することを意味する。本発明の顔料分散剤は、顔料への吸着部位と、該顔料が一次粒子の形態に分散された後での再凝集を防ぐ立体反発部位とを有するグラフト型分散剤であり、単独で使用しても十分に優れた分散効果を発揮する。
本発明の顔料分散剤による顔料の分散は、該顔料分散剤と、顔料との直接の混合により効果的に達成され、顔料以外に分散され得る粒子ができるだけ存在しない状態で行うのが好ましい。このような状態で顔料の分散を行うと、本発明の顔料分散剤が該顔料粒子の周囲に瞬時に吸着し、該顔料粒子が良好に分散し、良好に流動し、該顔料粒子同士の凝集が効果的に抑制される。一方、顔料粒子以外に分散され得る粒子が存在した状態で顔料の分散を行うと、本発明の顔料分散剤が、目的とする顔料粒子の表面に吸着せず、他の粒子表面に吸着し、該顔料分散剤の顔料分散効果が損なわれることがある。したがって、例えば、感光材料等を製造する場合等において、顔料を良好に分散させた状態で該感光材料等中に含有させるには、該顔料と本発明の顔料分散剤とを早い時期に混合しておくのが好ましく、感光層用塗布液等の調製時等の遅い時期に本発明の顔料分散剤を添加・混合するのは好ましくない。
【0083】
本発明の顔料分散剤は、公知の顔料の分散に好適に使用することができ、後述する本発明の顔料分散組成物及び着色感光性組成物に特に好適に使用することができる。
【0084】
《顔料分散組成物》
本発明の顔料分散物は、前記本発明の顔料分散剤と、顔料とを、有機溶剤中に分散してなる。
【0085】
―顔料―
前記顔料としては、有機顔料が挙げられる。該有機顔料としては、例えば、黄色顔料、オレンジ顔料、赤色顔料、バイオレット顔料、青色顔料、緑色顔料、ブラウン顔料、黒色顔料、などが挙げられる。
【0086】
前記黄色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー20、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー12、C.Iピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー83,C.I.ピグメントイエロー86、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー125、C.I.ピグメントイエロー137、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー148、C.Iピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー185、などが挙げられる。
【0087】
前記オレンジ顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントオレンジ55、C.I.ピグメントオレンジ59、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ71、などが挙げられる。
【0088】
前記赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド97、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピクメントレッド177、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド215、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド217、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメンレッド223、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド226、C.I.ピグメントレッド227、C.I.ピグメントレッド228、C.I.ピグメントレッド240、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド11、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド213、C.I.ピグメントレッド272、C.I.ピグメントレッド270、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド254、などが挙げられる。
【0089】
前記バイオレット顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット29、C.I.ピグメントバイオレット30、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピクメンドバイオレット40、C.I.ピグメントバイオレット50、などが挙げられる。
【0090】
前記青色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー22、C、I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー64、などが挙げられる。
【0091】
前記緑色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピクメントグリーン36、などが挙げられる。
前記ブラウン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントブラウン26、などが挙げられる。
前記黒色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック7、などが挙げられる。
【0092】
これらの顔料は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明においては、これらの中でも、ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー139、ピグメントイエロー185、ピグメントイエロー83、などの酸性基を有する顔料が好ましく、ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー139、ピグメントイエロー185、ピグメントレッド254、ピグメントグリーン36、ピグメントブルー15などが特に好ましい。
【0093】
―有機溶剤―
前記有機溶剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル及びこれらの酢酸エステル類;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のアルコール類、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、及びその酢酸エステル類、酢酸エステル類、メチルエチルケトン、などが好ましい。
【0094】
前記顔料の前記顔料分散組成物における含有量としては、通常5〜80重量%であり、10〜70重量%が好ましい。
前記含有量が、5重量%未満であると、着色力が十分でないことがあり、80重量%を超えると、顔料分散組成物の粘度が上昇することがある。
【0095】
前記顔料分散剤の前記顔料分散組成物における含有量としては、前記顔料100重量部に対し、通常、0.1〜200重量部であり、1〜50重量部が好ましい。
前記含有量が、0.1重量部未満であると、顔料分散組成物の粘度が上昇することがあり、200重量部を超えると、カラーフィルター等の作製の際において、色度を得るための塗布膜の厚みの調整が困難となることがある。
【0096】
前記有機溶剤の前記顔料分散組成物における含有量としては、前記顔料100重量部に対し、通常、10〜1000重量部であり、20〜500重量部が好ましい。
前記含有量が、10重量部未満であると、顔料分散組成物の粘度が上昇することがあり、1000重量部を超えると、貯蔵時のスペース確保が難しくなること等がある。
【0097】
本発明の顔料分散組成物は、例えば、以下の方法により調製することができる。
1)前記顔料と前記顔料分散剤とを予め混合して得られる組成物を、前記有機溶剤(又はビヒクル)に添加して分散させる方法
2)前記有機溶剤(又はビヒクル)に、前記顔料と前記顔料分散剤とを別々に添加して分散させる方法
3)前記顔料と前記顔料分散剤とを予め別々に前記有機溶剤(又はビヒクル)に分散し、得られた分散体を混合する方法(この場合、前記顔料分散剤を前記有機溶剤のみで分散してもよい)
4)前記有機溶剤(又はビヒクル)に前記顔料を分散した後、得られた分散体に前記顔料分散剤を添加する方法
【0098】
前記ビヒクルとは、塗料が液体状態にあるときに顔料を分散させている媒質の部分をいい、液状であって前記顔料と結合して塗膜を固める成分(バインダ)と、これを溶解希釈する成分(前記有機溶剤)とを含む。
【0099】
前記顔料を分散させる際に使用する分散機としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、ロールミル、アトライタ、スーパーミル、ディゾルバ、ホモミキサー、サンドミル、などの公知の分散機が挙げられる。
【0100】
前記顔料分散組成物を用いた着色画像の形成は、例えば、該顔料分散組成物を含む塗布液を、支持体上に塗布、乾燥して該顔料分散組成物の層を形成し、あるいは仮支持体上に形成されたこの顔料分散組成物の層を支持体上に転写し、その上に公知のポジ型又はネガ型の感光性樹脂組成物の層を形成し、露光、現像し、次いで未露光の前記感光性樹脂組成物の層と共に同じ領域の前記顔料分散組成物の層を除去する方法などに行うことができる。
【0101】
《着色感光性組成物》
前記着色感光性組成物は、前記顔料分散組成物と、感光性組成物とを少なくとも含有する。
【0102】
―感光性組成物―
前記感光性組成物としては、例えば、特開平3−282404号公報に記載されている感光性組成物などが挙げられ、具体的には、ネガ型ジアゾ樹脂とバインダからなる感光性組成物、光重合性組成物、アジド化合物とバインダとからなる感光性組成物、桂皮酸型感光性組成物、などが挙げられる。
前記感光性組成物としては、アルカリ水溶液により現像可能なものと、有機溶剤により現像可能なものとが知られているが、公害防止、労働安全性等の点でアルカリ水溶液により現像可能なものが好ましい。
【0103】
―光重合性組成物―
本発明においては、前記感光性組成物の中でも光重合性組成物が特に好ましい。該光重合性組成物は、酸性基を有するバインダーポリマーと、エチレン性不飽和二重結合を二個以上有する多官能モノマーと、光重合開始剤とを少なくとも含有する。
【0104】
―酸性基を有するバインダーポリマー―
前記酸性基を有するバインダーポリマーは、前記顔料の分散安定性と、アルカリ現像性との両性質を付与し得るものであり、例えば、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、及びスチレン/無水マレイン酸共重合体とアルコール類との反応物、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、顔料分散性に優れ、多官能モノマー、光重合開始剤との相溶性に優れ、アルカリ現像液溶解性、有機溶剤溶解性、強度、軟化温度等が適当であるものが好ましく、具体的には(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体が好ましい。
【0105】
前記酸性基を有するバインダーポリマーの重量平均分子量としては、5000〜200000が好ましい。
前記重量平均分子量が、5000未満であると、塗布膜の形成上問題があることがあり、200000を超えると、着色感光性組成物の粘度が高くなることがある。
【0106】
前記酸性基を有するバインダーポリマーの前記着色感光性組成物における含有量としては、全固形分に対し、20〜80重量%程度である。
前記含有量が、20重量%未満であると、塗布膜の形成上問題が生ずることがあり、80重量%を超えると、他の素材の能力が発揮され難くなることがある。
【0107】
―エチレン性不飽和二重結合を二個以上有する多官能モノマー―
前記エチレン性不飽和二重結合を二個以上有する多官能モノマーとしては、例えば、特開昭60−258539号公報に記載されているような公知の(メタ)アクリル酸エステル、ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アミド、アリル化合物、ビニルエステル、などが挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0108】
前記エチレン性不飽和二重結合を有する多官能モノマーの前記着色感光性組成物における含有量としては、全固形分に対し、10〜60重量%が好ましい。
前記含有量が、10重量%未満であると、露光時における硬化力が不足することがあり、60重量%を超えると、他の素材の能力が発揮され難くなることがある。
【0109】
―光重合開始剤―
前記光重合開始剤としては、波長が約300〜500nmに少なくとも約50の分子吸光係数を有する化合物を少なくとも1種使用するのが好ましく、このような化合物としては、例えば、特開平2−48664号公報、特開平1−152449号公報、及び特開平2−153353号公報に記載されているような、芳香族ケトン類、ロフィン2量体、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類、ポリハロゲン類、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンと2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体の組み合わせ、及び4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)-2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン]が好ましい。
【0110】
前記光重合開始剤の前記着色感光性組成物における含有量としては、着色感光性組成物の固形分に対し、0.2〜10重量%が好ましい。
前記含有量が、0.2重量%未満であると、露光感度が低くなることがあり、10重量%を超えると、露光感度が高くなりすぎる(制御が困難になる)ことがある。
【0111】
前記着色感光性組成物は、例えば、前記顔料分散組成物と、前記感光性組成物とを、適宜選択した条件、手法に従って混合することにより調製することができる。
【0112】
前記着色感光性組成物を用いた着色画像の形成は、基本的に下記(1)〜(3)の工程により行うことができる。
(1)前記顔料分散組成物を調製した後、これを用いて前記着色感光性組成物を調製する工程
(2)得られた着色感光性組成物を基板上に塗布し乾燥して、又は、別の仮支持体上に塗布し乾燥して形成した層を基板上に転写して、着色感光性組成物による層を形成する工程
(3)基板上に形成された着色感光性組成物による層を露光、現像し、パターンを形成する工程
【0113】
液晶ディスプレイ等に用いたカラーフィルタの製造は、前記(2)及び(3)の工程を繰り返し行い、2色目以降のパターンを組み合わせることにより行うことができる。転写法によるカラーフィルタの製造方法は、例えば、特開平4−208940号公報、特開平5−72724号公報、特開平5−80503号公報、特開平5−173320号公報等に記載されている。
【0114】
前記基板としては、ガラス板や透明プラスティック板等の透明材料が一般に用いられる。前記基板と前記着色感光性組成物との密着力を向上させるために、市販の各種シランカップリング剤等を前記着色感光性組成物に添加するか、あるいはあらかじめ前記基板をカップリング処理しておいてもよい。
【0115】
前記着色感光性組成物の塗布液の前記基板への塗布は、スピンコータ、ロールコータ、バーコータ、カーテンコータ等の公知の塗布手段を用いて行うことができる。
【0116】
前記仮支持体上に形成された前記着色感光性組成物による層を、前記基板上に転写する方法としては、常圧下又は減圧下でヒートロールラミネータを用いる方法が好適に挙げられる。
【0117】
前記現像の際に使用される現像液の例としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物又は炭酸塩、炭酸水素塩、アシモニア水、4級アンモニウム塩の水溶液、等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、炭酸ナトリウム水溶液が特に好ましい。
【0118】
【実施例】
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0119】
(実施例1)
下記組成の赤色の顔料分散組成物を調製した。
C.I.ピグメントレッド254・・・・・・・・・8.28g
合成例1の顔料分散剤・・・・・・・・・・・・・・8.28g
1−メトキシ−2−プロピルアセテート・・・・・63.44g
【0120】
上記組成の赤色の顔料組成物を、モーターミルM50(アイガー社製)で、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで9時間分散し、赤色の顔料分散組成物を調製した。
【0121】
得られた顔料分散組成物について下記の評価を行なった。
(1)粘度測定:
得られた顔料分散組成物について、E型粘度計を用いてその粘度を測定し、増粘の程度を評価した。その結果を表1に示した。
【0122】
(2)コントラスト測定:
得られた顔料分散組成物をガラス基板上に厚みが6μmになるように塗布し、サンプルを作製した。2枚の偏光板の間にこのサンプルを置き、偏光軸が平行のときと垂直のときとの透過光量を測定し、その比をコントラストとした(「1990年第7回色彩光学コンファレンス、512色表示10.4”サイズTFT−LCD用カラーフィルター、植木、小関、福永、山中」を参考にした)。その結果を表1に示した。
【0123】
(実施例2)
実施例1において、前記合成例1の顔料分散剤を前記合成例2の顔料分散剤に代えたこと以外、実施例1と同様にして赤色の顔料分散組成物を調製し、実施例1と同様の評価を行なった。
【0124】
(実施例3)
実施例1において、前記合成例1の顔料分散剤を前記合成例3の顔料分散剤に代えたこと以外、実施例1と同様にして赤色の顔料分散組成物を調製し、実施例1と同様の評価を行なった。
【0125】
(実施例4)
実施例1において、前記合成例1の顔料分散剤を前記合成例4の顔料分散剤に代えたこと以外、実施例1と同様にして赤色の顔料分散組成物を調製し、実施例1と同様の評価を行なった。
【0126】
(実施例5)
実施例1において、前記合成例1の顔料分散剤を前記合成例5の顔料分散剤に代えたこと以外、実施例1と同様にして赤色の顔料分散組成物を調製し、実施例1と同様の評価を行なった。
【0127】
(実施例6)
実施例1において、前記合成例1の顔料分散剤を前記合成例6の顔料分散剤に代えたこと以外、実施例1と同様にして赤色の顔料分散組成物を調製し、実施例1と同様の評価を行なった。
【0128】
(実施例7)
実施例1において、前記合成例1の顔料分散剤を前記合成例7の顔料分散剤に代え、C.I.ピグメントレッド−254をC.I.ピグメントイエロー13に代えたこと以外、実施例1と同様にして黄色の顔料分散組成物を調製し、実施例1と同様の評価を行なった。
【0129】
(実施例8)
実施例1において、赤色の顔料分散組成物を下記組成の緑色の顔料分散組成物に代えたこと以外、実施例1と同様にして緑色の顔料分散組成物を調製し、実施例1と同様の評価を行なった。
C.I.ピグメントグリーン36・・・・・・・・・・9.20g
C.I.ピグメントイエロー138・・・・・・・・・4.96g
合成例6の顔料分散剤・・・・・・・・・・・・・・14.16g
1−メトキシ−2−プロピルアセテート・・・・・・51.68g
【0130】
(実施例9)
実施例1において、赤色の顔料分散組成物を下記組成の青色の顔料分散組成物に代えたこと以外、実施例1と同様にして青色の顔料分散組成物を調製し、実施例1と同様の評価を行なった。
C.I.ピグメントブルー15;6・・・・・・・・14.20重量部
合成例6の顔料分散剤・・・・・・・・・・・・・・14.20重量部
1−メトキシ−2−プロピルアセテート・・・・・・51.70重量部
【0131】
(比較例1)
実施例1において、前記合成例1の顔料分散剤を、ジメチルアミノエチルアクリレート−メチルメタクリレートと、2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体(重量比:15/85、重量平均分子量:20000)に代えたこと以外、実施例1と同様にして赤色の顔料分散組成物を調製し、実施例1と同様の評価を行なった。
【0132】
(比較例2)
実施例1において、前記合成例1の顔料分散剤を下記共重合体(ポリマー溶液)に代えた外は、実施例1と同様にして赤色の顔料分散組成物を調製し、実施例1と同様の評価を行なった。
前記合成例2において、下記モノマー溶液を用いたこと以外、前記合成例2と同様にして共重合体(ポリマー溶液)を得た。
(モノマー溶液)
2−ヒドロキシエチルメタクリレート・・・・・・4.5重量部
メタクリル酸・・・・・・・・・・・・・・・・・4.5重量部
ベンジルメタクリレート・・・・・・・・・・・18.0重量部
一方の末端にメタクリロイル基を有する・・・・・3.0重量部
ポリメチルメタクリレート(数平均分子量:6000、マクロモノマーAA−6,東亜合成化学工業(株)製)
1−メトキシ−2−プロピルアセテート・・・・・・45重量部
【0133】
(実施例10)
下記組成を混合し、カラーフィルター作製用の着色感光性組成物を調製した。
実施例1の赤色の顔料分散組成物・・・・・・・32.4重量部
メタクリル酸/ベンジルメタクリレート重合体・・9.0重量部
(モル比;28:72、重量平均分子量;3万、30%−1−メトキシ−2−プロピルアセテート溶液)
4−[p−N,N’−ジ(エトキシ・・・・・・・0.2重量部
カルボニルメチル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−S−トリアジン
ハイドロキノンモノメチルエーテル・・・・・・0.01重量部
1−メトキシ−2−プロピルアセテート・・・・62.0重量部
【0134】
前記混合は、モーターミルM50(アイガー社製)で、直径0.65mmのジルコニアビーズを用いて、周速9m/sで9時間行なった。
【0135】
得られたカラーフィルタ作製用の着色感光性組成物について、実施例1と同様にして粘度を測定し、下記のようにしてカラーフィルタを作製し、実施例1と同様にしてコントラストを測定した。その結果を表1に示した。
【0136】
即ち、ガラス基板上に前記カラーフィルタ作製用の着色感光性組成物を、スピンコーターを用いて塗布し、100℃で2分間乾燥させて、約2μmの厚みの膜を形成した。次いで、窒素気流下、超高圧水銀灯で露光した後、1%炭酸ナトリウム水溶液で現像した。得られたカラーフィルタのコントラストを実施例1と同様に測定した。
【0137】
(実施例11)
実施例10において、実施例1の赤色の顔料分散組成物を、実施例2の赤色の顔料分散組成物に代えたこと以外、実施例10と同様にして着色感光性組成物を調製し、実施例10と同様にして評価した。
【0138】
(実施例12)
実施例10において、実施例1の赤色の顔料分散組成物を、実施例3の赤色の顔料分散組成物に代えたこと以外、実施例10と同様にして着色感光性組成物を調製し、実施例10と同様にして評価した。
【0139】
(実施例13)
実施例10において、実施例1の赤色の顔料分散組成物を、実施例4の赤色の顔料分散組成物に代えたこと以外、実施例10と同様にして着色感光性組成物を調製し、実施例10と同様にして評価した。
【0140】
(実施例14)
実施例10において、実施例1の赤色の顔料分散組成物を、実施例5の赤色の顔料分散組成物に代えたこと以外、実施例10と同様にして着色感光性組成物を調製し、実施例10と同様にして評価した。
【0141】
(実施例15)
実施例10において、実施例1の赤色の顔料分散組成物を、実施例6の赤色の顔料分散組成物に代えたこと以外、実施例10と同様にして着色感光性組成物を調製し、実施例10と同様にして評価した。
【0142】
(実施例16)
実施例10において、実施例1の赤色の顔料分散組成物を、実施例8の緑色の顔料分散組成物に代えたこと以外、実施例10と同様にして着色感光性組成物を調製し、実施例10と同様にして評価した。
【0143】
(実施例17)
実施例10において、実施例1の赤色の顔料分散組成物を、実施例9の青色の顔料分散組成物に代えたこと以外、実施例10と同様にして着色感光性組成物を調製し、実施例10と同様にして評価した。
【0144】
(比較例3)
実施例10において、実施例1の赤色の顔料分散組成物を、比較例1の赤色の顔料分散組成物に代えたこと以外、実施例10と同様にして着色感光性組成物を調製し、実施例10と同様にして評価した。
【0145】
(比較例4)
実施例10において、前記合成例1の顔料分散剤を下記共重合体(ポリマー溶液)に代えたこと以外、実施例10と同様にして着色感光性組成物を調製し、実施例10と同様の評価を行った。
前記合成例1において、下記モノマー溶液を用いた外は、前記合成例1と同様にして共重合体(ポリマー溶液)を得た。
(モノマー溶液)
3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド・・・ 4.5重量部
一方の末端にメタクリロイル基を有するポリメチルメタクリレート
(数平均分子量:6000、マクロモノマーAA−6,東亜合成化学工業(株)製) ・・・25.5重量部
1−メトキシ−2−プロピルアセテート ・・・45重量部
【0146】
(実験)
実施例1の顔料分散剤を用いて感光材料を作製する際に、酸性バインダーや他の成分を分散・混合するのに先立って、顔料のみを該顔料分散剤を用いて分散させた後、前記酸性バインダーや他の成分の混合・分散して感光材料用液を調製した場合(以下、この場合を「前添加」と称する)と、前記酸性バインダーや他の成分と顔料とを同時に該顔料分散剤を用いて混合・分散して感光材料用液を調製した場合(以下、この場合を「後添加」と称する)とを比較した。
その結果、前添加の場合には、前記グラフト共重合体における窒素原子が顔料の表面に吸着しているため、後から前記酸性バインダー等を添加しても、該感光材料用液の増粘は認められなかった。これに対し、後添加の場合には、前記グラフト共重合体における窒素原子が、該顔料分散剤と同時に添加した前記酸性バインダー等と作用し、顔料の分散性が十分でなく、該感光材料用液の増粘が認められ、感光材料の作製ができなかった。
【0147】
【表1】
【0148】
表1の結果から、本発明の顔料分散剤を含有する本発明の顔料分散組成物、及びそれを用いた着色感光性組成物は、粘度が低く、高いコントラストが得られることが明らかである。高いコントラストが得られるのは、顔料粒子が微細化された状態で分散されているためであると推測される。一方、比較例の顔料分散組成物及びそれを用いた着色感光性組成物の場合、粘度が高く、コントラストも低いことが明らかである。
また、エーテル基を有する重合性モノマーを共重合単位として含まないグラフト共重合体を用いた、比較例4の着色感光性組成物の場合、アルカリ水溶液による十分な現像性を得ることはできなかった。
【0149】
【発明の効果】
本発明によると、前記従来における諸問題を解決することができる。また、本発明によると、顔料を凝集させず該顔料の安定かつ良好な分散性、流動性を実現し、かつアルカリ現像適性にも優れた顔料分散剤を提供することができる。また、本発明によると、該顔料分散剤を含有し、顔料の分散性、流動性等に優れ、かつ着色力が高く、光透過性にも優れ、塗料、印刷インキ、カラー表示板等の広い範囲で好適に使用し得る顔料分散組成物を提供することができる。更に、本発明によると、該顔料分散組成物を含有し、着色力が高く、アルカリ現像適性に優れ、カラープルーフ等の基体上の多色画像の形成や、液晶カラーディスプレイ等に使用されるカラーフィルタの製造などに好適に使用し得る着色感光性組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の顔料分散剤を示す概略説明図である。
【図2】 顔料分散剤が、顔料粒子の表面に吸着した状態を示す概略説明図である。
【符号の説明】
1 主鎖と側鎖との結合部
2 側鎖
3 窒素原子
4 顔料粒子
5 エーテル基を有する側鎖
Claims (5)
- 下記一般式(6)で表される末端にエチレン性不飽和二重結合を有する重合性オリゴマーと、下記一般式(3)又は一般式(5)で表される窒素原子とエチレン性不飽和二重結合とを有する窒素含有モノマーと、下記一般式(1)で表されるエーテル基を有する重合性モノマーとを共重合体単位として含むグラフト共重合体を含有することを特徴とする顔料分散剤。
- グラフト共重合体において、共重合体単位として、重合性オリゴマーを15〜98重量%、窒素含有モノマーを1〜40重量%、及び、エーテル基を有する重合性モノマーを1〜70重量%含有する請求項1に記載の顔料分散剤。
- 重合性オリゴマーが、アルキル(メタ)アクリレートの単独重合体若しくは共重合体、ポリスチレン、及び、アルキル(メタ)アクリレートとポリスチレンとの共重合体から選択される少なくとも1種のオリゴマーであって、数平均分子量が1000〜20000であり、末端に(メタ)アクリロイル基を有する請求項1又は請求項2に記載の顔料分散剤。
- 請求項1から3のいずれかに記載の顔料分散剤と、顔料とを、有機溶剤中に分散してなることを特徴とする顔料分散組成物。
- 請求項4に記載の顔料分散組成物と、酸性基を有するバインダーポリマーと、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有する多官能モノマーと、光重合開始剤とを含有することを特徴とする着色感光性組成物。
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