JP4232023B2 - 呈味改良組成物及びその応用 - Google Patents

Description

技術分野
本発明は甘味料の呈味を改良する組成物に関する。より詳細には、本発明は、甘味料にキレ若しくはすっきり感を付与したり、または渋味、苦味、若しくは後引き感等の後味といったネガティブな味（以下、本明細書において「嫌味」ともいう）を有する甘味料に対してその嫌味の発現を抑制することにより、甘味料の呈味を改良することのできる呈味改良組成物に関する。また、本発明は甘味料の呈味を改良する方法に関する。さらに、本発明は甘味料を含む可食性製品の呈味を改良する方法、並びに呈味が改良された可食性製品に関する。
背景技術
従来、食品や医薬品等の可食性製品に用いる甘味料として、良質な甘味とコク感（ボディー感）を有し、保湿性や粘度の付与等の特性も優れていることから、砂糖（ショ糖）が広く利用されている。しかし、ショ糖は良質な甘味とコク感を有するものの肥満や虫歯の原因となるため、最近の健康志向や低カロリー志向から、敬遠されるようになってきている。特に、飲料や菓子などの嗜好品においては、低糖化及び低カロリー化が進んでいる。このため、特にこれらの嗜好品の製造に使用される甘味料として、ショ糖と同等の良質な甘味を有し、かつ低カロリーのものが望まれている。また、こうした低カロリー化並びに良質な甘味の要求は、これら嗜好品に限らず卓上甘味料についても求められている。さらに一般的に食品全般についても甘さを控えたあっさりとした甘味が好まれる傾向となってきている。
こうした消費者の要望に応え、ショ糖に代わる甘味料として登場したのが、いわゆる「高甘味度甘味料」である。これらの多くは、ショ糖より強い甘味を有するため、少ない使用量で甘味を付与することができる「低カロリー甘味料」としての特徴を併せ持っている。高甘味度甘味料の一例として、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、甘草、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア及びネオテーム等があげられる。しかし、ショ糖と同等の良質な甘味とコク感を有している高甘味度甘味料は少なく、その多くは独特の苦味や渋味を有していたり、また、甘味が後を引くといった後引き感（後味）を有している。このため、従来よりこのような苦味、渋味または後味といった嫌味を改良する方法が求められている。
一方、スクラレオライド（ｓｃｌａｒｅｏｌｉｄｅ、（３ａＲ，５ａＳ，９ａＳ，９ｂＲ）−デカヒドロ−３ａ，６，６，９ａ−テトラメチルナフト［２，１−ｂ］フラン−２（１Ｈ）−オン）は、例えばタバコ中に見出だされる天然のノルラブダン（ｎｏｒｌａｂｄａｎｅ）型テルペノイドである（Ｋａｎｅｋｏ，Ｈ．，Ａｇｒ．Ｂｉｏｌ．Ｃｈｅｍ．，３５（９）：１４６１（１９７１））。当該スクラレオライドは、特定の味に対してマスキングやエンハンス作用を有することが知られている（米国特許第４，９１７，９１３号，同第４，９６０，６０３号，同第４，９６６，７８３号及び同第４，９８８，５２７号公報参照）。またスクラレオライドは紙巻タバコ用香料として（特開昭６０−１２３４８３号公報）、またコーヒーの苦味を除くための添加物として用いられる（米国特許第４９８８５３２号）ことも知られている。さらに、アスパルテームの後味の改善に効果があることも知られている（米国特許第４，９９９，２０７号公報）。
一方、２−アセチルピロールは、タバコの香気増強剤として知られている（英国特許第１，２４８，３１３号公報）。また、日本国特許庁発行の周知慣用技術集には、マスキング作用のある香料として挙げられている（日本国特許庁公報１１（１９９９）−６ 周知・慣用技術集（香料）第１部香料一般、平成１１（１９９９）年１月２９日発行）。
しかし、スクラレオライド単独では高甘味度甘味料の嫌味を抑制し呈味を改良する効果は充分でなく、また、２−アセチルピロールについては、従来、高甘味度甘味料の嫌味を抑制する効果や甘味料の呈味を改善する効果について知られていなかった。
発明の開示
本発明は、かかる事情に鑑みて開発されたものであり、甘味料の呈味を改良する方法、特に高甘味度甘味料に代表される苦味、渋味または後味等の嫌味の発現を抑制し、その呈味を改良する方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、上記甘味料の嫌味の発現抑制や呈味の改良に有効に用いられる呈味改良組成物を提供することを目的とする。また本発明は、甘味料を含む可食性製品について呈味を改良する方法、特に高甘味度甘味料を含む可食性製品に関して該高甘味度甘味料に由来する嫌味の発現を抑制し呈味を改良する方法を提供することを目的とする。また、本発明は当該方法によって得られる、呈味が改良された甘味料含有可食性製品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み、日夜研究を重ねていたところ、ショ糖などの糖類にスクラレオライド及び２−アセチルピロールを配合することにより、ショ糖が有するコクある甘味にキレ及びすっきり感を付与することができること；高甘味度甘味料やその他の甘味料にスクラレオライド及び２−アセチルピロールを配合することにより、これらの甘味料が有する苦味、渋味または後味等の嫌味の発現が有意に抑制され、これらの甘味料の呈味が改良されることを見いだした。
すなわち、本発明は下記項１〜項４に掲げる甘味料の呈味を改良するための組成物である。
項１．スクラレオライド及び２−アセチルピロールを含む、甘味料に対する呈味改良組成物。
項２．甘味料が、高甘味度甘味料である項１に記載の呈味改良組成物。
項３．高甘味度甘味料がアスパルテーム、アセスルファムカリウム、甘草、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア及びネオテームよりなる群から選ばれる少なくとも１種である項２に記載の呈味改良組成物。
項４．スクラレオライド及び２−アセチルピロールの配合割合が、スクラレオライド１重量部に対し、２−アセチルピロールが０．００１〜１０００重量部である項１乃至３のいずれかに記載の呈味改良組成物。
さらに、本発明は下記項５〜項９に掲げる、甘味料を含有する可食性製品の呈味改良方法である。
項５．甘味料とスクラレオライド及び２−アセチルピロールとを併用する、甘味料を含有する可食性製品の呈味改良方法。
項６．甘味料が高甘味度甘味料である項５に記載の可食性製品の呈味改良方法。
項７．高甘味度甘味料が、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、甘草、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア及びネオテームよりなる群から選ばれる少なくとも１種である項６に記載の可食性製品の呈味改良方法。
項８．スクラレオライドと２−アセチルピロールの割合が、スクラレオライド１重量部に対し、２−アセチルピロールが０．００１〜１０００重量部である項５乃至７のいずれかに記載の可食性製品の呈味改良方法。
項９．可食性製品が、卓上甘味料、飲料、デザート、及び冷菓よりなる群から選択されるものである項５乃至８のいずれかに記載の可食性製品の呈味改良方法。
またさらに、本発明は下記項１０〜項１４に掲げる、呈味が改良された甘味料含有可食性製品である。
項１０．甘味料に加えて、スクラレオライド及び２−アセチルピロールを含有する、甘味料の呈味が改良された甘味料含有可食性製品。
項１１．甘味料が高甘味度甘味料である項１０に記載の甘味料含有可食性製品。
項１２．高甘味度甘味料が、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、甘草、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア及びネオテームよりなる群から選ばれる少なくとも１種である項１１に記載の甘味料含有可食性製品。
項１３．スクラレオライドと２−アセチルピロールの割合が、スクラレオライド１重量部に対し、２−アセチルピロールが０．００１〜１０００重量部である項１０乃至１２のいずれかに記載の甘味料含有可食性製品。
項１４．可食性製品が、卓上甘味料、飲料、デザート、及び冷菓よりなる群から選択されるものである項１０乃至１３のいずれかに記載の可食性製品。
発明を実施するための形態
（１） 呈味改良組成物
本発明の呈味改良組成物は、スクラレオライド及び２−アセチルピロールを必須成分として含むことを特徴とする。
スクラレオライド（（３ａＲ，５ａＳ，９ａＳ，９ｂＲ）−デカヒドロ−３ａ，６，６，９ａ−テトラメチルナフト［２，１−ｂ］フラン−２（１Ｈ）−オン）は、天然に由来するノルラブダン（ｎｏｒｌａｂｄａｎｅ）型テルペノイドである（Ｋａｎｅｋｏ，Ｈ．，Ａｇｒ．Ｂｉｏｌ．Ｃｈｅｍ．，３５（９）：１４６１（１９７１））。本発明においては、天然から採取されたものまたは人工的に合成されたものの別を問わず、いずれのものをも使用することができる。また、含窒素化合物である２−アセチルピロールの取得の由来も特に制限されない。これらはいずれも公知であり、商業的に入手できる化合物である。
本発明の呈味改良組成物は、スクラレオライド１重量部に対し２−アセチルピロールを０．００１〜１０００重量部、好ましくは０．０１〜１００重量部、より好ましくは０．１〜５０重量部の割合で含有するものであることが望ましい。
本発明の呈味改良組成物は、苦味、渋味または後味等といった嫌味を有する経口的に摂取される可食性の組成物の呈味を改善するのに有効に用いることができる。かかる組成物としては、例えば甘味料、ビタミン類、アミノ酸、苦味料、または酸味料等を含有する食品、経口投与用若しくは口腔用の医薬品または医薬部外品を挙げることができる。特に本発明の呈味改良組成物は、甘味料もしくは甘味料を含有する組成物の呈味改良に優れた効果を発揮する。
本発明において甘味料とは、食品、経口投与用若しくは口腔用の医薬品または医薬部外品などの可食性製品に甘味を付与する目的で使用される添加物を広く意味するものである。天然甘味料及び合成甘味料の別や低甘味度甘味料及び高甘味度甘味料の別を特に問うものではない。甘味料として、具体的には、ショ糖、乳糖、麦芽糖、ぶどう糖、果糖、転化糖、トレハロース、トレハルロース、イソトレハロース、ネオトレハロース、パラチノース、ガラクトース、Ｄ−キシロース、フルクトース、ラムノース、ビートオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖（イソマルトース、イソマルトトリオース、パノース等）、キシロオリゴ糖（キシロトリオース、キシロビオース等）、ゲンチオオリゴ糖（ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース等）、グリセロール、サイクロデキストリン、Ｎ−アセチルグルコサミン、アラビノース、ソルボース、テアンデオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、パラチノースオリゴ糖、フコース、フラクトオリゴ糖（ケストース、ニストース等）、ポリデキストロース、マルトテトライトール、マルトトリイトール、マルトオリゴ糖（マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルテヘキサオース、マルトヘプタオース等）、ラクチュロース、メリビオース、ラフィノース、ラムノース、リボース、異性化液糖、カップリングシュガー、大豆オリゴ糖、転化糖、水飴、蜂蜜等の糖類；キシリトール、ソルビトール、マルチトール、イソマルチトール、エリスリトール、マンニトール、ラクチトール、還元パラチノース、還元イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、還元麦芽糖水飴、還元水飴等の糖アルコール；グリココール、Ｄ−トリプトファン、Ｌ−ロイシンナトリウムなどのアミノ酸；スクラロース、アセスルファムカリウム、ソーマチン、アスパルテーム、アリテーム、ステビア抽出物、ステビア抽出物に含まれるステビオサイド、サッカリン、サッカリンナトリウム、サイクラメート（サイクラミン酸ナトリウム）及びその塩、甘草抽出物（グリチルリチン）、グリチルリチン酸塩、ベルラリチン、サイクラミン、ズルチン、ネオテーム、ナイゼリアベリー抽出物、ラカンカ抽出物等の高甘味度甘味料を挙げることができる。
本発明の呈味改良組成物は、例えばショ糖、オリゴ糖等の糖類や、アスパルテーム、アセスルファムカリウム等の高甘味度甘味料などに対して、キレやすっきり感を付与することができる。また、本発明の呈味改良組成物は、渋味、苦味、または後引き感といった後味等の嫌味を有する甘味料に対して、これらの嫌味を低減もしくは抑制することにより呈味を改良する効果に優れている。
本発明の呈味改良組成物は、甘味料の中でも、特に高甘味度甘味料に対して上記の効果を発揮することができる。本発明の呈味改良組成物は、特にアスパルテーム、アセスルファムカリウム、アリテーム、スクラロース、ステビア、ソーマチン、サッカリン、サッカリンナトリウム、ネオテーム及び甘草等の高甘味度甘味料が有する嫌味の発現抑制効果に優れており、これらの高甘味度甘味料の呈味改良のために好適に用いることができる。好ましくはアスパルテーム、アセスルファムカリウム、甘草、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア及びネオテームである。
なお、本発明の呈味改良組成物が対象とする甘味料は、甘味料１種単独からなるものであっても、また２種以上の異なる甘味料を任意に組み合わせてなるものであってもよい。組み合わせの例としては、特に制限されないが、高甘味度甘味料の組み合わせでは、アスパルテームとアセスルファムカリウム、アセスルファムカリウムとステビア、アスパルテームとスクラロース、アセスルファムカリウムとスクラロース等の２種の組み合わせ、アスパルテーム、アセスルファムカリウムとスクラロース、アセスルファムカリウム、スクラロースとステビア等の３種の組み合わせや、また、前記高甘味度甘味料の少なくとも１種とエリスリトール等の糖アルコールの少なくとも１種との組み合わせ、前記高甘味度甘味料の少なくとも１種とショ糖、果糖ぶどう糖液糖などの糖類の少なくとも１種との組み合わせを例示することができる。
本発明の呈味改良組成物は、本発明の効果を阻害しない限度において、上記成分に加えて香料；色素；酸化防止剤；保存料；ビタミン類；乳酸カルシウムやグルコン酸カルシウム等のカルシウム、鉄、マグネシウム、リン、カリウム、ナトリウム等のミネラル類；などの食品添加物や経口投与用もしくは口腔用の医薬品または医薬部外品のための添加剤を含むこともできる。
また本発明の呈味改良組成物は、その形態を特に問うものではなく、粉末状、顆粒状、固形状（錠剤、丸剤など）、または液状等のいずれの形態を有していてもよい。
本発明の呈味改良組成物は、甘味料の呈味を改良する目的または良好な呈味を有する甘味料を調製する目的で、甘味料にそのまま添加配合して用いたり、また甘味料（調合甘味料）の製造に際して該甘味料の原料成分の一つとして用いることができる。その配合割合は、対象とする甘味料の種類によって異なり一概に規定することができないが、例えば甘味料としてショ糖やオリゴ糖等の糖類や糖アルコール等を用いる場合は、最終甘味料（調合甘味料）１００重量％中に、スクラレオライドが０．００１〜２０００重量％、好ましくは０．００５〜５００重量％、より好ましくは０．０１〜２００重量％の割合で含まれるような割合で呈味改良組成物を用いることができる。また甘味料として高甘味度甘味料を用いる場合は、最終甘味料（調合甘味料）１００重量％中に、スクラレオライドが０．０００１〜２００重量％、好ましくは０．０００５〜５０重量％、より好ましくは０．００１〜２０重量％の割合で含まれるような割合で呈味改良組成物を用いることができる。なお、最終甘味料（調合甘味料）中の２−アセチルピロールの割合は、当該甘味料に含まれるスクラレオライド１重量部に対して、０．００１〜１０００重量部、好ましくは０．０１〜１００重量部、より好ましくは０．１〜５０重量部を挙げることができる。
また本発明の呈味改良組成物は、甘味料を含有する可食性製品の呈味を改良する目的、または良好な呈味を有する甘味料含有可食性製品を調製する目的で、当該可食性製品に添加配合して用いたり、また可食性製品の製造に際して、可食性製品の原料成分とともに成分の一つとして用いることができる。またこの場合の配合割合も、上記の割合を基準にして同様に調整決定することができる。
（２）可食性製品の呈味改良方法
本発明は、甘味料を含有する可食性製品（甘味料含有可食性製品）の呈味を改良する方法を提供する。
本発明の甘味料含有可食性製品の呈味改良方法は、可食性製品の成分として甘味料とスクラレオライド及び２−アセチルピロールとを併用することによって実施することができる。これらの成分を併用するための具体的な方法は特に制限されず、例えば甘味料を含有する可食性製品にスクラレオライド及び２−アセチルピロールを添加配合する方法、また、可食性製品の製造に際して、甘味料やその他の原料成分に加えて、スクラレオライド及び２−アセチルピロールを配合して可食性製品を調製する方法などを例示することができる。なお、ここで甘味料と組み合わせて用いられるスクラレオライド及び２−アセチルピロールは、各々別個に用いても良いし、また前述する本発明の呈味改良組成物の態様で用いることもできる。
本発明が対象とする甘味料含有可食性製品に用いられる甘味料としては、（１）で述べたように可食性製品に甘味を付与する目的で使用される添加物を広く挙げることができ、具体例についても上記（１）に記載の通りである。好ましくは渋味、苦味、または後引き感といった後味等の嫌味を有する高甘味度甘味料であり、具体的には、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、アリテーム、甘草、スクラロース、ステビア、ソーマチン、サッカリン、サッカリンナトリウム及びネオテームを挙げることができる。好ましくは、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、甘草、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア及びネオテームである。
本発明が対象とする可食性製品は、甘味料を１種または２種以上含有する可食性のものであれば特に制限されず、例えば経口的に摂取される製品並びに口腔内で利用される製品を挙げることができる。具体的には、例えば、食品；糖衣錠、トローチ剤、ドロップ剤やシロップ剤等の経口投与用若しくは口腔内用の医薬品；口内清涼剤、うがい剤、及び歯磨き剤等の口腔内用の医薬部外品または雑品を挙げることができる。
ここで食品としては、特に制限はされないが、好適には、果物や野菜由来の果汁、搾汁等を含む果実ジュース、果粒入り果実ジュース、果実飲料、果汁飲料、果汁入り飲料、野菜ジュース、野菜入りジュース、果実・野菜入りミックスジュース；コーラ、ジンジャエール、サイダー等の炭酸飲料；スポーツドリンク、ニアウォーター等の清涼飲料水；コーヒー、ココア、紅茶、抹茶、緑茶、ウーロン茶等の茶系或いは嗜好性飲料；乳飲料、乳成分入りコーヒー、カフェオレ、ミルクティー、抹茶ミルク、フルーツ乳飲料、ドリンクヨーグルト、乳酸菌飲料等の乳成分を含有する飲料などの飲料一般；ヨーグルト、ゼリー、ドリンクゼリー、プディング、ババロア、ブラマンジェ及びムース等のデザート類（おやつや食後に食される甘味が付与された食品）；アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス等のアイスクリーム類（乳製品に甘味料やその他各種原料を加えて攪拌凍結させた食品）、シャーベット、かち割り氷等の氷菓（糖液にその他各種原料を加えて攪拌凍結させた食品）などの冷菓；ケーキ、クラッカー、ビスケットや饅頭等といった洋菓子及び和菓子を含む焼菓子や蒸菓子等の菓子類；米菓、スナック類；チューインガム、ハードキャンデー、ヌガーキャンデー、ゼリービーンズ等を含む糖菓一般；調理甘味料、卓上甘味料などの甘味料；果実フレーバーソースやチョコレートソースを含むソース類；バタークリーム、フラワーペーストやホイップクリーム等のクリーム類；イチゴジャムやマーマレード等のジャム；菓子パン等を含むパン；焼き肉、焼き鳥、鰻蒲焼き等に用いられるタレ、トマトケチャップ、ソース、麺つゆ等の調味料一般；蒲鉾等の練り製品、ソーセージ等の食肉加工品、レトルト食品、漬け物、佃煮、珍味、惣菜並びに冷凍食品等を含む農畜水産加工品を広く例示することができる。中でも好ましい食品としては飲料、卓上甘味料、デザート、冷菓を挙げることができる。特に好ましくは飲料である。特に、本発明の方法によれば、高甘味度甘味料を含有する飲料に対して、該高甘味度甘味料に起因して生じる渋味、苦味、後引き感といった後味等の嫌味を有意に抑制して、飲料の呈味を良好に改良することができる。
本発明において、可食性製品に配合するスクラレオライド及び２−アセチルピロールの割合は、最終製品中において求められる甘味の強さや質に応じて適宜調節すればよく、特に制限されない。通常、前記した呈味改良組成物の配合割合の範囲内で適宜調整することができる。
具体的には、甘味料含有可食性製品（最終製品）１００重量％中に配合されるスクラレオライドの割合として、０．０００００５〜０．５重量％、好ましくは０．００００２５〜０．２５重量％、より好ましくは０．０００１〜０．１重量％を挙げることができる。
なお、甘味料含有可食性製品（最終製品）中に含まれる２−アセチルピロールの割合としては、甘味料含有可食性製品に含まれるスクラレオライド１重量部に対して２−アセチルピロールが０．００１〜１０００重量部となるような割合、好ましくは０．０１〜１００重量部、より好ましくは、０．１〜５０重量部となるような割合を挙げることができる。
また、可食性製品中に含まれる甘味料とスクラレオライド及び２−アセチルピロールの割合は、用いる甘味料の種類や量、並びに可食性製品の種類や求められる甘味の質や程度に応じて、適宜調整することができる。一例を挙げるとすれば、甘味料としてスクラロースを０．０００５〜０．２６重量％（５〜２６００ｐｐｍ）の割合で含有する可食性製品の場合、スクラレオライド及び２−アセチルピロールの配合割合として、スクラレオライド０．００００００１〜０．１重量％（０．００１〜１０００ｐｐｍ）、２−アセチルピロール０．０００００２５〜０．２５重量％（０．０２５〜２５００ｐｐｍ）を挙げることができる。特に甘味料としてスクラロースを０．０００５〜０．０５重量％（５〜５００ｐｐｍ）の割合で含有する飲料の場合、スクラレオライド及び２−アセチルピロールの配合割合として、スクラレオライド０．００００００１〜０．０２重量％（０．００１〜２００ｐｐｍ）、２−アセチルピロール０．０００００２５〜０．０２５重量％（０．０２５〜２５０ｐｐｍ）を例示することが出来る。もっとも、求める甘味度や甘味質、可食性製品の種類や摂取する際の温度などによって最適な配合は異なる。ゆえに、本発明の効果を奏する限度で当業者において適宜調節されるものであり、必ずしも上記濃度範囲には制限されない。
本発明の呈味改良方法によって得られる可食性製品は、結果的に甘味料とスクラレオライド及び２−アセチルピロールを含有するものであればよく、各成分の配合時期や順序に特に制限されない。また、可食性製品には、必要に応じて、本発明の効果に影響を与えない範囲で、香料；色素；酸化防止剤；保存料；ビタミン類；乳酸カルシウムやグルコン酸カルシウム等のカルシウム、鉄、マグネシウム、リン、カリウム、ナトリウム等のミネラル類などの食品、医薬品または医薬部外品の分野で許容されている添加剤が添加されていてもよい。
本発明の甘味料含有可食性製品の呈味改良方法によると、例えばショ糖、オリゴ糖等の糖類や糖アルコール等を含有する可食性製品に対しては、ショ糖等に起因するコク感にキレやすっきり感を付与することができる。また、本発明の呈味改良方法によると、高甘味甘味料やその他の甘味料に起因する渋味、苦味または後味等の嫌味を低減、もしくはその発現を抑制し、呈味が改良された、良好な味を有する可食性製品を提供することができる。
（３）可食性製品
本発明は、呈味が改良された、甘味料を含有する可食性製品（甘味料含有可食性製品）を提供する。本発明の可食性製品は、甘味料とスクラレオライド及び２−アセチルピロールを含有することを特徴とする。
ここで甘味料は、（１）で述べたように可食性製品に甘味を付与する目的で使用される添加物を広く意味するものであり、具体例についても上記（１）に記載の通りである。好ましくは渋味、苦味、または後引き感といった後味等の嫌味を有する高甘味度甘味料であり、具体的には、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、アリテーム、甘草、スクラロース、ステビア、ソーマチン、サッカリン、サッカリンナトリウム及びネオテームを挙げることができる。好ましくは、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、甘草、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア及びネオテームである。
本発明が対象とする可食性製品は、甘味料を１種または２種以上含有する可食性のものであれば特に制限されず、例えば経口的に摂取される製品並びに口腔内で利用される製品を挙げることができる。具体的には、例えば、食品；糖衣錠、トローチ剤、ドロップ剤やシロップ剤等の経口投与用もしくは口腔内用の医薬品；口内清涼剤、うがい剤、及び歯磨き剤等の口腔内用の医薬部外品または雑品を挙げることができる。食品の具体例としては（２）に記載のものを同様にして挙げることができる。好ましくは飲料、卓上甘味料、デザート、冷菓であり、特に好ましくは飲料である。本発明の可食性製品は、甘味料としてショ糖やオリゴ糖等の糖類または糖アルコール等を含むものの場合はキレやすっきり感を備え、また甘味料として高甘味度甘味料を含むものの場合、該高甘味度甘味料に起因して生じる渋味、苦味、後引き感といった後味等の嫌味が有意に抑制されて、良好な呈味を備える。
本発明の甘味料含有可食性製品中のスクラレオライド及び２−アセチルピロールの割合は、最終製品中において求められる甘味の強さや質に応じて適宜調節すればよく、特に制限されない。
具体的には、甘味料含有可食性製品（最終製品）１００重量％中に配合されるスクラレオライドの割合として、０．０００００５〜０．５重量％、好ましくは０．００００２５〜０．２５重量％、より好ましくは０．０００１〜０．１重量％を挙げることができる。
なお、甘味料含有可食性製品（最終製品）中に含まれる２−アセチルピロールの割合としては、甘味料含有可食性製品に含まれるスクラレオライド１重量部に対して２−アセチルピロールが０．００１〜１０００重量部となるような割合、好ましくは０．０１〜１００重量部、より好ましくは、０．１〜５０重量部となるような割合を挙げることができる。
また、可食性製品中に含まれる甘味料とスクラレオライド及び２−アセチルピロールの割合は、用いる甘味料の種類や量、並びに可食性製品の種類や求められる甘味の質や程度に応じて、適宜調整することができる。一例を挙げるとすれば、甘味料としてスクラロースを０．０００５〜０．２６重量％（５〜２６００ｐｐｍ）の割合で含有する可食性製品の場合、スクラレオライド及び２−アセチルピロールの配合割合として、スクラレオライド０．００００００１〜０．１重量％（０．００１〜１０００ｐｐｍ）、２−アセチルピロール０．０００００２５〜０．２５重量％（０．０２５〜２５００ｐｐｍ）を挙げることができる。特に甘味料としてスクラロースを０．０００５〜０．０５重量％（５〜５００ｐｐｍ）の割合で含有する飲料の場合、スクラレオライド及び２−アセチルピロールの配合割合として、スクラレオライド０．００００００１〜０．０２重量％（０．００１〜２００ｐｐｍ）、２−アセチルピロール０．０００００２５〜０．０２５重量％（０．０２５〜２５０ｐｐｍ）を例示することが出来る。もっとも、求める甘味度や甘味質、可食性製品の種類や摂取する際の温度などによって最適な配合は異なる。ゆえに、本発明の効果を奏する限度で当業者において適宜調節されるものであり、必ずしも上記濃度範囲には制限されない。
本発明の可食性製品は、結果的に甘味料とスクラレオライド及び２−アセチルピロールを含有するものであればよく、必要に応じて、本発明の効果に影響を与えない範囲で、香料；色素；酸化防止剤；保存料；ビタミン類；乳酸カルシウムやグルコン酸カルシウム等のカルシウム類；鉄、マグネシウム、リン及びカリウム等のミネラル類などの食品または医薬品の分野で許容されている添加剤が含まれていてもよい。
本発明の甘味料含有可食性製品は、例えば甘味料としてショ糖やオリゴ糖等の糖類、または糖アルコール等を含有する場合は、ショ糖等に起因するコク感とキレやすっきり感と兼ね備え、また甘味料として高甘味甘味料を有する場合、該高甘味度甘味料に起因する渋味、苦味または後味等の嫌味が低減もしくはマスキングされ、呈味が改良され良好な味を有している。
実施例
以下、本発明の内容を以下の実験例および実施例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、文中、特に言及しないかぎり「部」は「重量部」及び「％」は「重量％」を意味する。また＊印は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の製品であることを表す。
実験例１
スクラロース０．０１４％溶液に対して、下記表１の通りに、スクラレオライド及び２−アセチルピロールを配合した溶液（実施例１、比較例１−Ａ及び比較例１−Ｂ）を調製し、各溶液を飲用した後の呈味（苦味、渋味、及び後引き感等の後味）について評価した。評価は２５名のパネラーによる官能試験により行った。具体的には、各溶液を、その処方が判らないように、各パネラーに飲用してもらい、飲用後の呈味が良好なもの（苦味も渋味もなく、後引き感の弱いもの）を選んでもらった。結果を併せて表１に記す。なお、２点比較法（両側検定）のための検定表（官能検査ハンドブック、科技連官能検査委員会編、日科技連、１９９５年３月７日第１３刷）より有意差を判断した。
有意差： 危険率１％で２０名以上、危険率０．１％で２１名以上

表１より、スクラレオライド及び２−アセチルピロールをそれぞれ単独で使用するよりも、併用する方が、飲用後のスクラロース（高甘味度甘味料）に由来する渋味や苦味、並びに後引き感が少なく、スクラロースの呈味が改良されることが判った。
実験例２〜６ 呈味改良組成物の調製
以下の処方に従って、各成分を配合して呈味改良組成物１を調製した。

比較例として、以下の処方の呈味改良組成物２及び３を調製した。

上記呈味改良組成物１を用いて、下記の処方に従ってスポーツ飲料を調製した。具体的には、香料以外の原料を水に攪拌溶解し、９３℃まで加温した後、香料を添加して混合し、容器に充填後、冷却してスポーツ飲料を調製した（実施例２〜６：本発明飲料）。なお、下記処方中の高甘味度甘味料として表２に掲げるものを使用した。

比較例として、上記呈味改良組成物１（スクラレオライド及び２−アセチルピロール含有）に代えて呈味改良組成物２（スクラレオライド含有）及び呈味改良組成物３（２−アセチルピロール含有）をそれぞれ用いて実施例２〜６と同様にして比較スポーツ飲料（比較例２−Ａ〜６−Ａ及び比較例２−Ｂ〜６−Ｂ：比較飲料）及び対照スポーツ飲料（対照例２〜６：対照飲料）を作成した。そして、対照スポーツ飲料を基準として、使用する高甘味度甘味料毎に本発明飲料と比較飲料の呈味を比較評価した。
具体的には、評価は、パネラー２５名に呈味改良組成物入りの本発明飲料（実施例２〜６：本発明飲料）または比較飲料（比較例２−Ａ〜６〜Ａ、比較例２−Ｂ〜６−Ｂ）とそれに対応する呈味改良組成物無しの対照飲料（対照例２〜６：対照飲料）とを飲み比べてもらい、対照飲料に対して本発明飲料または比較飲料の呈味が改善されたかどうかを評価した。さらに各本発明飲料の甘味の後味（渋味、苦味、後引き感）を下記評価点に基づいて数値に換算して採点を行ってもらい、各パネラーの評価点の平均を算出した。結果を表２に合わせて示す。
＜評価点＞
−２：後味が強くなった
−１：やや後味が強くなった
０：差なし
１：やや後味が弱くなった
２：後味が弱くなった

表２より、呈味改良組成物１（スクラレオライド及び２−アセチルピロール含有）を使用して調製した本発明飲料は、いずれの甘味料（アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ステビア、ネオテーム）を用いても、飲用後の高甘味度甘味料に由来する渋味、苦味、後引き感等が少なく、後味が改善されることが判った。
また、呈味改良組成物２（スクラレオライド含有）及び呈味改良組成物３（２−アセチルピロール含有）を使用して調製した比較飲料は、スクラレオライド及び２−アセチルピロールを含む呈味改良組成物１を配合して調製した本発明飲料と比べて、高甘味度甘味料由来の渋味、苦味、後引き感が有意に感じられ、後味が残る飲料であった。
実施例７：コーヒー飲料
下記の処方に示す組成のうち、砂糖と乳化剤との粉体混合物を水に加え、８０℃で１０分間加熱溶解した後、牛乳及び脱脂粉乳を添加し、さらにコーヒー抽出液を加えた。これを炭酸水素ナトリウムにてｐＨを６．８に調整後、残りの原料を加え、水にて全量補正し、７５℃まで加温し、１４７００ｋＰａ（１５０ｋｇ／ｃｍ^２）の圧力でホモゲナイズ処理してコーヒー飲料の溶液を調製した。出来上がった溶液を缶詰めした後、レトルト殺菌機にて、１２１℃で２０分間、殺菌処理し、コーヒー飲料（生豆換算４ｇ／１００ｍｌ）を調製した。

得られたコーヒー飲料は、苦味、渋味及び後引き感がなく、良好な呈味を有していた。
実施例８：ポーションガムシロップ
下記の処方に示す組成のうち、果糖ぶどう糖液糖に増粘剤を分散し、水を加え、攪拌溶解し、アセスルファムカリウム、スクラロース及びステビアを添加して、８０℃で１０分間加熱溶解後、残りの原料を加え、水にて全量補正し、ポーションカップに充填して、ポーションガムシロップを調製した。得られたシロップは、高甘味度甘味料由来の後味の嫌味が感じられなかった。また、アイスコーヒーに甘味料として添加して飲用したところ、すっきりとした良好な飲み口であった。

下記の処方に示す組成のうち、ゲル化剤、果糖ぶどう糖液糖、アスパルテーム、アセスルファムカリウム及びスクラロースを水に加え、８０℃で１０分間加熱溶解後、残りの原料を添加し、水にて全量補正し、容器充填後、８５℃で３０分間、殺菌処理し、常温流通タイプの低カロリードリンクゼリーを調製した（ｐＨ３．８、カロリー１８ｋｃａｌ／１００ｇ）。得られたドリンクゼリーは、高甘味度甘味料に由来する後引き感の嫌味がなく、すっきりとした良好な呈味を有したドリンクゼリーであった。

実施例１０：かちわり氷（グレープフルーツ；氷菓）
水の入った容器に、スクラロース、食物繊維、及び安定剤を加え、８０℃で１０分間加熱攪拌溶解後、果汁及びクエン酸を加え、全量補正後、攪拌しながら約５０℃まで冷却し、予め湯に溶かした乳酸カルシウム及びその他の原料を加えて、更に攪拌しながら５℃まで冷却し、氷管に充填、硬化した。硬化後、氷管から抜き取り、過冷却後、粉砕してかちわり氷を調製した。得られたかちわり氷は、後味もすっきりしており、良好な風味であった。

産業上の利用可能性
本発明の呈味改良組成物によれば、甘味料にキレやすっきり感を付与したり、また高甘味度甘味料に代表される渋味、苦味、後引き感といった後味等の嫌味を解消し、甘味料の呈味を有意に改善することができる。また、高甘味度甘味料を含む可食性製品において、スクラレオライドと２−アセチルピロールを併用することにより、高甘味度甘味料由来の渋味、苦味、後引き感といった後味等の嫌味を解消して、甘味料の呈味を有意に改良することが出来る。

Claims (11)

1. スクラレオライド及び２−アセチルピロールを、スクラレオライド１重量部に対して２−アセチルピロール０．００１〜１０００重量部の割合で含む、甘味料に対する呈味改良組成物。
2. 甘味料が、高甘味度甘味料である請求項１に記載の呈味改良組成物。
3. 高甘味度甘味料がアスパルテーム、アセスルファムカリウム、甘草、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア及びネオテームよりなる群から選ばれる少なくとも１種である請求項２に記載の呈味改良組成物。
4. 甘味料とスクラレオライド及び２−アセチルピロールを、スクラレオライド１重量部に対して２−アセチルピロール０．００１〜１０００重量部の割合で併用する、甘味料を含有する可食性製品の呈味改良方法。
5. 甘味料が高甘味度甘味料である請求項４に記載の可食性製品の呈味改良方法。
6. 高甘味度甘味料が、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、甘草、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア及びネオテームよりなる群から選ばれる少なくとも１種である請求項５に記載の可食性製品の呈味改良方法。
7. 可食性製品が、卓上甘味料、飲料、デザート、及び冷菓よりなる群から選択されるものである請求項４に記載の可食性製品の呈味改良方法。
8. スクラレオライド、２−アセチルピロール及び甘味料を、スクラレオライド１重量部に対して２−アセチルピロール０．００１〜１０００重量部の割合で含有する、甘味料の呈味が改良された可食性製品。
9. 甘味料が高甘味度甘味料である請求項８に記載の可食性製品。
10. 高甘味度甘味料が、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、甘草、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア及びネオテームよりなる群から選ばれる少なくとも１種である請求項９に記載の可食性製品。
11. 可食性製品が、卓上甘味料、飲料、デザート、及び冷菓よりなる群から選択されるものである請求項８に記載の可食性製品。