JP4226917B2 - 車両用空調制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エアコンサイクルに可変容量コンプレッサと冷却電動ファンとを搭載した車両用エアコンの制御を行う車両用空調制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、車両用エアコンとして、冷媒を高温高圧にする外部制御式の可変容量コンプレッサと、この可変容量コンプレッサから送り込まれた冷媒を熱交換により冷却するためにコンデンサに冷却空気を供給する外部制御式の冷却電動ファンとを備えたものが知られている。このような車両用エアコンに用いられる可変容量コンプレッサでは、電気信号によってその吐出容量を制御できるようになっており(ECV制御)、この容量制御は空調制御ユニットで行われている。
【0003】
一方、冷却電動ファンは、ファンモータによって駆動され、このファンモータはエンジン制御ユニットによってパルス幅変調制御(PWM制御)される。また、PWM制御に必要なスイッチング素子(MOS-FET)は、冷却の必要性からエンジン制御ユニットに内蔵することができず、エンジン制御ユニットの外部に別途スイッチング素子部(PWMモジュール)を設けて、このスイッチング素子部とエンジン制御ユニットを信号線で接続している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特許第3102355号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、車両用エアコンにおいて所定の冷房能力を得るときに、燃費の向上を図るために、例えば可変容量コンプレッサとファンモータとの相互関係を考慮しながらそれぞれを制御する場合があるが、この場合は空調制御ユニットとエンジン制御ユニットとは両者を接続する車両内ネットワークを介してそれぞれの制御に必要なデータの送受信を行っている。
【0006】
例えば、可変容量コンプレッサの容量の変動に基づいて冷却電動ファンの回転を変えたい場合には、まず空調制御ユニットから車両内ネットワークを介して冷却電動ファンの回転を要求回転数とするためのデータがエンジン制御ユニットに送られ、このデータを受信したエンジン制御ユニットがデータに基づいてファンモータを制御し冷却電動ファンの回転を変えるようになっている。
【0007】
しかしながら、このような車両用エアコンにおいては、可変容量コンプレッサの容量の変動から冷却電動ファンの回転の変動までには通信速度に起因するタイムラグが生じる。したがって、例えばタイムラグの間は冷却電動ファンの回転数を下げることができないことにより、この間ファンモータを駆動するためのトルクがエンジンに負荷され燃費の悪化を招来する。一方、タイムラグの間冷却電動ファンの回転数を上げることができない場合には、この間は所定の冷房能力を得ることができないという問題がある。
【0008】
また、エンジン制御ユニットがファンモータを制御する際には、PWM波形がエンジン制御ユニットから信号線を介してスイッチング素子部に送られる。このときに信号線から放射ノイズが発生してしまうため、車両用ラジオアンテナ線を信号線から離れた場所に設置する必要があり、車両内の設計におけるレイアウト上の制約が生じるという問題もある。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、可変容量コンプレッサ/冷却ファン間において一方の状況に基づく他方の迅速な制御を可能とし、また、車両内の設計におけるレイアウト上の制約を回避することができる車両用空調制御装置を提供することを課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、エアコンサイクルにおける可変容量コンプレッサの吐出容量及び冷却ファンの回転数の一方の値を他方の値に基づいて決定し、前記可変容量コンプレッサに対するデューティ信号を出力することによって前記可変容量コンプレッサの容量制御を行うとともに、前記冷却ファンに対するデューティ信号を出力することによって前記冷却ファンの回転制御を行うことを特徴とする。
また、前記可変容量コンプレッサ及び前記冷却ファンはエンジンが発生するエネルギーを駆動源とし、前記可変容量コンプレッサを駆動させるためのエンジン負荷トルクと前記冷却ファンを駆動させるためのエンジン負荷トルクとの総和によりあらわされるトータルエンジン負荷トルクが最小となるような前記可変容量コンプレッサの吐出容量と前記冷却ファンの回転数との関係を示す制御マップを備え、エアコンの設定温度に応じて前記可変容量コンプレッサの吐出容量を決定するとともに、前記制御マップに基づいて前記吐出容量から前記冷却ファンの回転数を決定することを特徴とする。
更に、前記制御マップとして、少なくとも、通常制御マップと、クールダウン制御マップとを備え、通常走行時に通常制御マップを用いると共に、クールダウン時にクールダウン制御マップを用いるように構成したことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記冷却ファンに対するデューティ信号に基づいて作動して前記冷却ファンの回転制御に供するスイッチング素子を内蔵したことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、制御マップを用いて冷却ファンの回転制御処理を行う際に、冷却ファンへの負荷急変による燃費の悪化を防止するスロープ処理を施すと共に、該スロープ処理として、変化量の異なる2種類のスロースタート処理を備えたことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
図1は本発明の実施の形態に係る省動力制御ユニット(車両用空調制御装置)を備えた車両用エアコンの構成を説明するための図である。この車両用エアコン1は、エアコンサイクル2と、このエアコンサイクル2の制御等を担う電子制御系3とを備えている。
【0015】
エアコンサイクル2は、外部制御式の可変容量コンプレッサ4と、コンデンサ5と、リキッドタンク6と、温度式自動膨張弁7と、エバポレータ8とが冷媒配管9で連結され、この冷媒配管9の中に冷媒が封入されて構成されている。
【0016】
可変容量コンプレッサ4は、エバポレータ8から冷媒配管9を通して低圧低温の気体として送られてくる冷媒を高圧高温の気体にしてコンデンサ5に送るようになっている。この可変容量コンプレッサ4はエンジン10によって駆動されるとともに、その吐出容量が外部から可変に制御されるようになっている。なお、エンジン10はエンジン制御ユニット11によって制御されるようになっており、エンジン制御ユニット11はエンジン系センサ12や後述する省動力制御ユニット13からの情報に基づいて制御を行う。
【0017】
図2は可変容量コンプレッサ4の構成を示す。可変容量コンプレッサ4は多気筒斜板式であり、コンプレッサケース16と、プーリ17と、駆動軸18と、斜板駆動体19と、斜板20と、ピストン21と、高圧ボール弁22と、コントロールバルブ23と、高圧室24と、クランク室25とから概略構成されている。
【0018】
この可変容量コンプレッサ4では、内部に組み込まれたコントロールバルブ23に後述する省動力制御ユニット13からデューティ信号が送られることによって高圧ボール弁22のリフト量が制御される。これにより、高圧室24(=吐出側圧力Pd)から高圧ボール弁22を経過してクランク室25へ流れ込む冷媒流量が制御され、可変容量コンプレッサ4内のクランク室25の圧力(=クランク室圧力Pc)が決まることによって斜板20の傾きが決定する。この斜板20の傾きの変化により吐出容量の制御が行われる。
【0019】
高圧ボール弁22のリフト量は、図3に示すように、コントロールバルブ23のダイヤフラム28にかかる低圧圧力(=吸込側圧力Ps)と、セットスプリング29のバネ荷重と、電磁コイル30に発生する磁力とのバランスにより決定される。
【0020】
すなわち、電磁コイル30に発生する磁力についていえば、コントロールバルブ23内の電磁コイル30には、コントロールバルブ駆動回路32から、例えば400HzのパルスON/OFF信号(デューティ信号)が送られ、このデューティ信号のデューティ比に基づく実効電流により磁力が発生する。この磁力がデューティ比の変化に基づいて変化することによって高圧ボール弁22のリフト量が制御される(ECV制御)。
【0021】
図1に示すコンデンサ5は、後方に設けられた外部制御式の冷却電動ファン33からの送風や車の走行風によって高圧高温の冷媒を凝縮点まで冷却し高圧中温の液体にしてリキッドタンク6へ送るようになっている。冷却電動ファン33はファンモータ34によって駆動され、このファンモータ34はエンジン10によって駆動されるオルタネータ35の端子電圧を電源として作動するようになっている。また、ファンモータ34は後述する省動力制御ユニット13からPWM制御され、これによって冷却電動ファン33の回転数が可変に制御される。なお、PWM(Pulse Width Modulation)制御とは、振幅及び繰り返し周期が一定なパルスの時間幅を、信号波の波形に応じて変化させるパルス幅変調方式の制御をいう。
【0022】
また、コンデンサ5と冷却電動ファン33との間には、エンジン冷却水配管によってエンジン10と連結されたラジエータ36が設けられ、エンジン冷却水配管を通して送られてくるエンジン冷却水を冷却電動ファン33からの送風によって熱交換し冷却するようになっている。
【0023】
リキッドタンク6は、コンデンサ5から送られてくる高圧中温の液体である冷媒に含まれる水分やゴミを取り除き、冷媒を円滑に供給できるように溜めつつ、温度式自動膨張弁7へ送るようになっている。
【0024】
温度式自動膨張弁7は、リキッドタンク6から送られてくる高圧中温の液体である冷媒を急激に膨張させて低温低圧の液体(霧状)にし、冷媒配管9を通してエバポレータ8に送るようになっている。
【0025】
エバポレータ8は、ブロワファン37から送られてくる車室内の空気の熱を奪うことによって温度式自動膨張弁7から送られてくる霧状の冷媒を蒸発させて低圧低温の気体にして可変容量コンプレッサ4に送るようになっている。ブロワファンモータ38によって駆動されるブロワファン37は車室内の空気である内気を吸い込みエバポレータ8に送るとともに、エバポレータ8によって冷却された空気を車室内に送り出す機能を有する。
【0026】
電子制御系3は、車両用空調制御装置としての省動力制御ユニット13と、空調系センサ39とを備えている。
【0027】
省動力制御ユニット13は、省動力制御部40と、コントロールバルブ駆動回路32と、ファンモータ駆動回路41とを備え、これらが1つの基板上に設けられている。
【0028】
省動力制御部40には、空調系センサ39からの様々な情報が送られる。例えば、省動力制御ユニット13には、リキッドタンク6の出口側の冷媒配管9の途中に設けられた高圧センサから可変容量コンプレッサ4の容量情報(高圧センサ値)が送られ、この容量情報はコンプレッサ吐出側圧力Pdをあらわす値としてファンモータ制御に用いられる。また、高圧センサ以外にも省動力制御ユニット13には、例えば、エアコンスイッチからのスイッチ信号、エンジン冷却水温度センサからのエンジン冷却水の温度情報、エバポレータ8の出口側に設けられたエバポレータ温度センサからのエバポレータ8の出口温度情報、車速センサからの車速情報、内気温度センサの室内温度情報、外気温度センサからの外気温度情報、温度調整ダイヤルからの設定温度情報等それぞれ必要な情報が送られる。
【0029】
省動力制御部40は、これらの空調系センサ39からの情報を受けて、可変容量コンプレッサ4のコントロールバルブ23に対するデューティ信号のデューティ比及びファンモータ33に対するデューティ信号のデューティ比を算出し、その算出結果に基づいたデューティ信号をコントロールバルブ駆動回路32及びファンモータ駆動回路41にそれぞれ出力する。
【0030】
コントロールバルブ駆動回路32及びファンモータ駆動回路41はそれぞれスイッチング素子(MOS-FET)を備えており、省動力制御部40からのデューティ信号を受けてコントロールバルブ23又はファンモータ34に印可する駆動電圧を作り出す。
【0031】
このような構成の省動力制御ユニット13における可変容量コンプレッサ4の容量制御処理と冷却電動ファン33の回転制御処理の全体的な流れを説明すると、図4に示すように、まず省動力制御ユニット13の省動力制御部40は、ステップS1において、エアコンスイッチからのスイッチ信号に基づいて車両用エアコン1がON状態にあるか否かを判断する。省動力制御部40は、ON状態にないと判断した場合は、ON状態にあると判断されるまでステップS1で待機する。ON状態にあると判断した場合は、ステップS2において、外気温度、室内温度等の空調系センサ39からの情報に基づいて可変容量コンプレッサ4の目標とする吐出容量を算出する。つぎに、ステップS3において、現在の可変容量コンプレッサ4の吐出容量と比較するとともに、ステップS4において、目標とする吐出容量とするまでに急激な変化を生じさせないようになだらかな変化とするスロープ処理に基づいてコンプレッサ吐出側圧力Pdを算出する。つぎに、ステップS5において、コントロールバルブ23に対するデューティ信号をコントロールバルブ回路32に出力する。
【0032】
コントロールバルブ駆動回路32は、ステップS6において、このデューティ信号を受けてコントロールバルブ23に印可する駆動電圧を作り出す。
【0033】
つぎに、省動力制御部40は、ステップS7において、コンプレッサ吐出側圧力Pdに基づいて、エンジンに加わる負荷トルクが最小となるように冷却電動ファン33に対するデューティ信号のデューティ比を後述する通常制御マップ又はクールダウン制御マップに基づいて算出し、スロープ処理(スロースタート処理1又はスロースタート処理2)を施す冷却電動ファン33の回転制御処理を行う。つぎに、ステップS8において、ファンモータ34に対するデューティ信号をファンモータ駆動回路41に出力する。
【0034】
ファンモータ駆動回路41は、ステップS9において、このデューティ信号を受けてファンモータ34に印可する駆動電圧を作り出す。
【0035】
ここで、ステップS7の冷却電動ファン33の回転制御処理の詳細を説明すると、図5に示すように、まず省動力制御ユニット13の省動力制御部40は、ステップS71において、エバポレータ出口温度Tintと目標エバポレータ出口温度T’intとの差温△Tを算出し、その算出された差温△T(Tint−T’int)に基づいて通常制御に設定するかクールダウン制御に設定するかを判断する。すなわち、算出された差温△Tの大きさが4℃となるまでは通常制御に設定され、算出された差温△Tの大きさが4℃以上になると通常制御の設定からクールダウン制御の設定に切り換えられる。そして、クールダウン制御時に算出された差温△Tの大きさが2℃以下になるとクールダウン制御の設定から通常制御の設定に切り換えられる。
【0036】
ここで、目標エバポレータ出口温度T’intは、省動力制御部40が外気温度、室内温度、目標吹出風温度等に基づいて可変容量コンプレッサ4の吐出容量(コンプレッサ吐出側圧力Pd)を算出するが、この算出処理の途中段階において求められる。
【0037】
つぎに、ステップS72において通常制御に設定されているか否かが判断され、通常制御に設定されている場合にはステップS73へ移行し、クールダウン制御に設定されている場合にはステップS74へ移行する。
【0038】
ステップS73において、省動力制御部40は、枠内に記載の通常制御マップに基づいてコンプレッサ吐出側圧力Pdからファンモータ34へのデューティ比A−DUTYを求める。
【0039】
ここで、通常制御マップでは、Pd<1.03MPaの領域においてはA−DUTY=0%とされ、Pd>1.91MPaの領域においてはA−DUTY=l00%とされ、1.03MPa≦Pd≦1.91MPaの領域においては上昇側と下降側との間でヒステリシスを持たせながらA−DUTYが0%から100%まで比例的に変化するようになっている。なお、通常制御マップは図6の走行時の制御線に基づいて設定される。
【0040】
また、コンプレッサ吐出側圧力Pdは、高圧センサからの高圧センサ値に基づいて、ステップS4においてスロープ処理された高圧センサ値の変化が緩やかになるように修正された値が用いられる。
【0041】
ステップS74において、省動力制御部40は、枠内に記載のクールダウン制御マップに基づいてコンプレッサ吐出側圧力Pdからファンモータ34へのデューティ比A−DUTYを求める。
【0042】
ここで、クールダウン制御マップでは、上昇側において、Pd<0.69MPaの領域においてはA−DUTY=0%とされ、0.69MPa≦Pd≦1.08MPaの領域においてはA−DUTY=30%とされ、Pd>1.08MPaの領域においてはA−DUTY=100%とされる。下降側において、0.98MPa<Pd<1.08MPaの領域においてはA−DUTY100%とされ、0.39MPa≦Pd≦0.98MPaの領域においてはA−DUTY=30%とされ、Pd<0.39MPaの領域ではA−DUTY=0%とされる。
【0043】
つぎに、省動力制御部40は、ステップS75において、ステップS73又はステップS74において求めたデューティ比A−DUTYをファンモータデューティ比M/F−DUTYとして次のステップS76へ移行する。
【0044】
ステップS76において、省動力制御部40は、M/F−DUTY出力フラグがOFFかONかを判断する。M/F−DUTY出力フラグは、ファンモータデューティ比M/F−DUTYが未だ設定されていない場合或いは設定されていても0%の場合(すなわち、ファンモータ34が動作していない場合)にOFFとなる。一方、M/F−DUTYが既に設定されておりその値が0%でない場合(すなわち、ファンモータ34が動作している場合)、M/F−DUTY出力フラグは、ONとなる。ステップS76において省動力制御部40がOFFと判断した場合はステップS77へ移行し、ONと判断した場合はステップS78へ移行する。
【0045】
M/F−DUTY出力フラグがOFFであるとき、ステップS77において、省動力制御部40はデューティ比変化を、例えば6.5%/secとするスロースタート処理1を実行する。すなわち、スロースタート処理1によってM/F−DUTYを修正して、その修正値をM/F−DUTYとする。
【0046】
M/F−DUTY出力フラグがONであるとき、ステップS78において、デューティ比変化を、例えば28%/secとするスロースタート処理2を実行する。すなわち、スロースタート処理2によってM/F−DUTYを修正して、その修正値をM/F−DUTYとする。
【0047】
つぎに、省動力制御部40は、ステップS79において、M/F−DUTY出力フラグを判断し、M/F−DUTYが未だ設定されていない或いは設定されていても0%の場合はステップS710へ移行し、M/F−DUTYが既に設定されておりその値が0%でない場合はステップS711へ移行する。
【0048】
ステップS710において、省動力制御部40はM/F−DUTY出力フラグをOFFとし、ステップS712へ移行する。
【0049】
ステップS711において、省動力制御部40はM/F−DUTY出力フラグをONとし、ステップS7l2へ移行する。
【0050】
省動力制御部40は、ステップS712において、ステップS77又はステップS78で設定したファンモータデューティ比M/F−DUTY(スロースタート処理1又はスロースタート処理2により修正されて最終的に求められたファンモータデューティ比)に基づくデューティ信号をファンモータ駆動回路41に出力する。
【0051】
ここで、上述の通常制御マップ及びクールダウン制御マップの設定について説明する。まず、エンジンに加わる負荷トルク(以下、トータルエンジン負荷トルクという)は、可変容量コンプレッサを駆動するための動力負荷トルク(以下、コンプレッサ動力負荷トルクという)と、ファンモータの電源となるオルタネータを駆動するための動力負荷トルク(以下、冷却ファン電気負荷トルクという)との総和により与えられる。
【0052】
そこで、外部制御式の可変容量コンプレッサと外部制御式の冷却電動ファンを車両用エアコンに搭載した場合、コンプレッサ動力負荷トルクと、冷却ファン電気負荷トルクと、両負荷トルクを合算したトータルエンジン負荷トルクとの関係は、どのような関係にあるかを明らかにするために実験を行った。その実験結果を図6に示す。
【0053】
この実験では冷房能力を変化させないようにしながらオルタネータによるエンジン負荷トルク(冷却ファン電気負荷トルク)と可変容量コンプレッサによるエンジン負荷トルク(コンプレッサ動力負荷トルク)との計測を行ったもので、図6の2つの負荷トルク特性から明らかなようにコンプレッサ動力負荷トルクを高くすると冷却ファン電気負荷トルクは低くなり、逆に、冷却ファン電気負荷トルクを高くするとコンプレッサ動力負荷トルクは低くなるという関係にある。
【0054】
そして、図6の実験結果により、両負荷トルクを合算したトータルエンジン負荷トルクをみると、ファンモータ電圧6ボルトのときにトータルエンジン負荷トルクは21.1Nm、ファンモータ電圧8ボルトのときにトータルエンジン負荷トルクは19.2Nm、ファンモータ電圧10ボルトのときにトータルエンジン負荷トルクは19.5Nm、ファンモータ電圧12ボルトのときにトータルエンジン負荷トルクは21.0Nmとなり、ファンモータ電圧8ボルトのときにトータルエンジン負荷トルクが最も小さくなる最高効率点があらわれる。
【0055】
よって、図6の実験により、コンプレッサ動力負荷トルクを高くしていくと冷却ファン電気負荷トルクは低くなり、逆に、冷却ファン電気負荷トルクを高くしていくとコンプレッサ動力負荷トルクは低くなるという関係を示すこと、また、冷却ファン電気負荷トルクとコンプレッサ動力負荷トルクのうち一方の負荷トルクを低く抑えることが必ずしもトータルエンジン負荷トルクを下げることにはならないということが解明された。
【0056】
この解明結果は、一方のファンモータへの電気負荷を制御すると、他方のコンプレッサの動力負荷が変化するという協調関係を示し、しかも、ファンモータの電気負荷の制御を最適化することにより、トータルエンジン負荷トルクが最も小さくなる最高効率点による可変容量コンプレッサとファンモータの運転ができることを意味する。
【0057】
そこで、図7に示すように、40km/hでの走行時と、60km/hでの走行時と、80km/hでの走行時について、それぞれファンモータに対するデューティ信号のデューティ比とコンプレッサ吐出側圧力Pdとを変えながら、複数の最高効率点(最高燃費点)を計測した。
【0058】
そして、図7に示すように、上記の計測により求められた最高効率点と、車両用エアコンの冷房能力等を考慮し、走行時の制御線の傾きを決定し、走行時の制御線を設定した。
【0059】
ついで、図7の走行時の制御線に基づいて図5のステップS73の枠内に示す通常制御マップを設定し、これより低いコンプレッサ吐出側圧力Pdでファンモータに対するデューティ信号のデューティ比を100%とする考え方に基づいて図5のステップS74の枠内に示すクールダウン制御マップを設定した。
【0060】
エンジン10を始動して発進前の停車時にこのような車両用空調制御装置(省動力制御ユニット13)を備えた車両用エアコン1のスイッチを入れると、エバポレータ出口温度Tintが高く、エバポレータ出口温度Tintと目標エバポレータ出口温度T’intの差温△Tが4℃を超えるため、図5のフローチャートにおいて、ステップS7l→ステップS72→ステップS74→ステップS75へと進む流れとなり、クールダウン制御マップが選択されてクールダウン制御が開始される。
【0061】
すなわち、図8の▲1▼に示すように、コンプレッサ吐出側圧力Pdが0.69MPaになるとファンモータ34へのデューティ比が30%まで上がり、コンプレッサ吐出側圧力Pdが1.08MPaになるまで30%が維持され、コンプレッサ吐出側圧力Pdが1.08MPaに達するとファンモータ34へのデューティ比が100%まで上がり、その後、100%のデュ一ティ比が維持される。
【0062】
このように、エアコン作動開始によるクールダウン時は、コンプレッサ吐出側圧力Pdが低レベルの値(0.69MPa)になるとファンモータ34の作動を開始し、しかも、コンプレッサ吐出側圧力Pdが通常の開始域(1.08MPa)に達するとファンモータ34へのデューティ比が100%となるようにし、ファンモータ電気負荷トルクを早期に大きくすることで、コンプレッサ動力負荷トルクの増大を抑え結果的に高い燃費の向上が図られる。
【0063】
すなわち、エアコン作動開始によるクールダウン時は、仮にファンモータ34を抑えて作動させるとファンモータ電気負荷トルクは小さくなるが、協調作用によりコンプレッサ動力負荷トルクが増大し燃費の向上を望めない。
【0064】
加えて、走行風によるコンデンサ5の冷却が望めず、要求される冷房能力を確保するには、冷却電動ファン33からの送風が必要である。
【0065】
一方、走行時にこのような車両用エアコン1のスイッチを入れた場合は、冷房効果によりエバポレータ出口温度Tintが低くなり、差温△Tが2℃以下になると、図5のフローチャートにおいて、ステップS71→ステップS72→ステップS73→ステップS75へと進む流れとなり、クールダウン制御は解除され通常制御マップが選択されて通常制御が開始される。
【0066】
すなわち、図8の▲2▼に示すように、差温△Tが2℃以下になるときの運転点をP1とすると、一気に運転点P2までファンモータ34へのデューティ比を低下させ、その後、コンプレッサ吐出側圧力Pdの上昇や下降に応じて、ファンモータ34へのデューティ比を通常制御マップに沿って変化させる制御が行われる。
【0067】
上記のように、走行時には走行風によるコンデンサ4の冷却が望めることで、ファンモータ電気負荷トルクを抑えても要求される冷房能力を確保することができるし、また、ファンモータ電気負荷トルクを抑えることでコンプレッサ動力負荷トルクが多少高くなってもトータルエンジン負荷トルクは、通常制御マップに沿ったファンモータ制御により低く抑えられる。よって、通常制御マップによる狙いの通りに高い燃費の向上が図られる。
【0068】
また、例えば、走行途中で窓を開け高温の外気が車室内に流入してエバポレータ出口温度Tintが上昇した場合や走行途中で温度調整ダイヤルを操作して設定温度を大幅に低下させた場合等であって、エバポレータ出口温度Tintと目標エバポレータ出口温度T’intの差温が4℃を超えると、図5のフローチャートにおいて、ステップS71→ステップS72→ステップS74→ステップS75へと進む流れとなり、クールダウン制御マップが選択されてクールダウン制御が開始される。
【0069】
すなわち、図8の▲3▼に示すように、通常制御からクールダウン制御へ移行するときの運転点をP3とすると、一気に運転点がP4まで上昇し、ファンモータ34へのデューティ比を100%とする。その後、要求冷房能力の増大に伴ってコンプレッサ吐出側圧力Pdが増加してもクールダウン制御マップに沿ってファンモータ34へのデューティ比を100%に維持するという制御が行われる。
【0070】
上記のように、走行途中でのクールダウン制御時は、一気にファンモータ34へのデューティ比を100%とし、ファンモータ電気負荷トルクを応答よく最大値となるように変更することで、冷却電動ファン33からの送風と走行風とにより高いコンデンサ冷却能力が達成される。よって、高いコンデンサ冷却能力に伴いコンプレッサ動力負荷トルクの増大が抑えられることで、クールダウン制御マップによる狙いの通りの高い燃費の向上が図られる。
【0071】
燃費比較を行うために、車両用エアコンのON/OFFに連動する固定コンプレッサを有する車両用エアコンAと、外部制御式の可変容量コンプレッサに対し外部制御式の冷却電動ファンを複合制御(燃費を考慮した協調制御)する本実施の形態に係る車両用空調制御装置を備えた車両用エアコンBとで燃費の比較試験を行った。
【0072】
図9に示す30℃,50%での燃費比較試験結果は、900rpmでのアイドリング時には、Aでは54.9%、Bでは47.8%であり、A→Bで7.1%低下した。40km/hでの走行時には、Aでは27.1%、Bでは26.2%であり、A→Bで0.9%低下した。80km/hでの走行時には、Aでは12.6%、Bでは9.2%であり、A→Bで3.4%低下した。
【0073】
図10に示す35℃,50%での燃費比較試験結果は、900rpmでのアイドリング時には、Aでは56.8%、Bでは50.9%であり、A→Bで5.9%低下した。40km/hでの走行時には、Aでは36.3%、Bでは32.6%であり、A→Bで3.7%低下した。80km/hでの走行時には、Aでは17.6%、Bでは14.6%であり、A→Bで3.0%低下した。
【0074】
以上により、車両用エアコンBを車両用エアコンAと比較した場合の燃費の改善効果は下記の通りである。
【0075】
(a)アイドリング時には、A→Bでは7.1%と5.9%であり、6%前後も燃費が改善することが確認された。
【0076】
(b)40km/hでの走行時には、A→Bでは0.9%と3.7%であり、1〜4%前後も燃費が改善することが確認された。
【0077】
(c)80km/hでの走行時には、A→Bでは3.4%と3.0%であり、3%前後も燃費が改善することが確認された。
【0078】
この実施の形態に係る省動力制御ユニット13では、省動力制御部40が可変容量コンプレッサ4の容量制御及び冷却電動ファン33の回転制御の両方を行うものとしたので、可変容量コンプレッサ4のコンプレッサ吐出側圧力Pdの状況に基づく冷却電動ファン33の制御を迅速に行うことができる。
【0079】
すなわち、例えば従来のように、可変容量コンプレッサの制御を空調制御ユニットが行う一方、ファンモータの制御をエンジン制御ユニットが行う場合には、図11に示すように、空調制御ユニットは、ファンモータを制御するための情報としてファンモータへのデューティ比等のデータを車両内ネットワークを介してエンジン制御ユニットに送信する。また、エンジン制御ユニットはこれらのデータを受信する処理とともに、この受信したデータの解析することが必要であるため、通信速度に起因するタイムラグが生じる。しかしながら、省動力制御ユニット13では、図4に示すように、このような通信を行う必要がないため、可変容量コンプレッサ4の容量制御から冷却電動ファン33の回転制御までの時間的なずれを抑えることができる。したがって、可変容量コンプレッサ4の容量の変動に応じて、冷却電動ファン33の回転数を下げたり上げたりすることが迅速に可能で、この回転数を下げる場合には、冷却ファン電気負荷トルクを迅速に下げることができるので、エンジン10にかかる余分な負荷トルクを早急に抑制し燃費の向上を図ることができる。また、冷却電動ファン33の回転数を上げる場合には、迅速な回転数の上昇により所定の冷房能力を早急に得ることができる。
【0080】
また、省動力制御ユニット13は、スイッチング素子を備えたファンモータ駆動回路41を内蔵したので、放射ノイズの発生を防止し、車両内の設計におけるレイアウト上の制約を回避することができる。すなわち、例えば従来のように、スイッチング素子部であるPWMモジュールをモータファンを制御するエンジン制御ユニットの外部に設けた場合は、図11に示すように、エンジン制御ユニットは信号線を介してPWM波形をPWMモジュールに送る必要があり、この間に放射ノイズが発生する。この放射ノイズは車両用ラジオの電波受信の妨害となるため、この信号線から離れた位置に車両用ラジオアンテナ線を設置する必要がある。しかしながら、省動力制御ユニット13では、図4に示すように、信号線を介さず、直接省動力制御部40からファンモータ駆動回路41へデューティ信号を送るため、放射ノイズを発生させることがない。したがって、信号線から発生する放射ノイズが原因で車両用ラジオアンテナ線の設置位置に制約がかかるという問題がなく、車両内におけるレイアウト上の制約が回避される。
【0081】
また、コンプレッサ吐出側圧力Pdに対するファンモータ34へのデューティ比を決める制御マップを、可変容量コンプレッサ4によるエンジン負荷トルク(コンプレッサ動力負荷トルク)とファンモータ34によるエンジン負荷トルク(冷却ファン電気負荷トルク)との総和によりあらわされるトータルエンジン負荷トルクが最小トルクとなる最も燃費が良い最高効率点に基づいて設定し、制御マップに基づいてコンプレッサ吐出側圧力pdからファンモータ34へのデューティ電圧を制御するようにしたため、可変容量コンプレッサ4と冷却電動ファン33によるトータルエンジン負荷トルクを考慮した最適なファンモータ制御により高い燃費の向上を達成することができる。
【0082】
クールダウン時、アイドル時、通常走行時等の車両状態に対応してそれぞれ最高効率点を測定しておき、コンプレッサ吐出側圧力Pdに対するファンモータ34へのデューティ比を決める制御マップを、最高効率点の測定結果に基づいて設定するようにしたため、車両状態にかかわらず高い燃費の向上を達成することができる。
【0083】
図5のステップS71にて、エバポレータ出口温度Tintと目標エバポレータ出口温度T’intとの差温△Tの大きさが4℃以上になったと判断されると、ステップS71からステップS72→ステップS74→ステップS75へと進む流れとなり、クールダウン状況で最も燃費が良い最高効率点に基づいて設定されたクールダウン制御マップを用いてファンモータ制御を行うようにしたため、クールダウン時において、要求される冷房能力を確保しながら高い燃費の向上を達成することができる。
【0084】
エバポレータ8の出口直後のエバポレータ出口温度Tintを検出するエバポレータ温度センサと、エバポレータ8の出口直後の目標エバポレータ出口温度T’intを設定する省動力制御部40とを設け、エバポレータ出口温度Tintと目標エバポレータ出口温度T’intとの差温△Tの大きさにより、要求される冷房能力を予測するようにしたため、エバポレータ出口温度Tintを検出するだけで、省動力制御部40にて算出される目標エバポレータ出口温度T’intを利用し、容易に、しかも、精度よく要求される冷房能力の大きさ(差温△Tの大きさ)を予測することができる。
【0085】
車両用エアコンのコンプレッサとして、コンプレッサ容量が外部から可変に制御される外部制御式の可変容量コンプレッサ4を用い、この可変容量コンプレッサ4は、省動力制御部40により車両用エアコンに要求される冷房能力に対し省動力となる目標コンプレッサ容量を得る制御を行うようにしたため、車両状態にかかわらずコンプレッサ吐出側圧力Pdの最適化(省動力、省燃費)が図られ、可変容量コンプレッサ4の容量制御と、ファンモータ34のPWM制御との併用により、コンプレッサ動力負荷トルクとファンモータ電気負荷トルクとの総和によるトータルエンジン負荷トルクを最小に抑える高効率の燃費向上制御を達成することができる。
【0086】
ステップS76において、前回の処理までのファンモータデューティ比M/F−DUTYが既に設定されておりその値が0%でないと判断されたときは、ステップS78へ進み、デューティ比変化量を制限する(例えば、28%/sec)スロースタート処理2を実行するようにしたため、例えば、通常制御からクールダヴン制御に移行するとき等で指令されるファンモータデューティ比M/F−DUTYが一気に変化するような場合、ファンモータ34ヘの負荷急変による燃費の悪化を防止することができる。
【0087】
すなわち、エンジン10が定常であるときに、ファンモータデューティ比M/F−DUTYを急上昇させると、トルク変動が大きく、そのトルク変動に耐えられるように、エンジン回転数を高めにしなければならず、燃費の悪化を招く。
【0088】
ステップS76において、前回の処理までのファンモータデューティ比M/F−DUTYが未だ設定されていない或いは設定されていても0%であると判断されたときは、ステップS77へ進み、デューティ比変化量を第1の傾きにて制限する(例えば、6.5%/sec)スロースタート処理1を実行するようにし、前回の処理までのファンモータデューティ比M/F−DUTYが既に設定されておりその値が0%でないと判断されたときは、ステップS78へ進み、デューティ比変化量を第2の傾きにて制限する(例えば、28%/sec)スロースタート処理2を実行するようにしたため、ゼロスタート時の滑らかな回転上昇によるファンモータ34の作動と、ゼロスタートでない時のファンモータ34への負荷急変による燃費の悪化防止との両立を図ることができる。
【0089】
以上、本発明の車両用空調制御装置を本実施の形態に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0090】
例えば、クールダウン時と通常走行時とで車両状態を切り分ける例を示したが、ゼロ車速から最高車速までを細かく車速域で分けることで車両状態を切り分けてもよい。また、エンジン回転数の大きさやエンジン回転数変化率の正負や絶対値の大きさで車両状態を切り分けてもよい。さらに、アクセル開度(スロットル開度)の大きさ、アクセル開度変化率の正負や絶対値の大きさで車両状態を切り分けてもよい。このように、エンジン負荷に影響を与える車両状態を検出し、エンジン負荷への影響度合いに応じて車両状態を切り分けるものであれば本発明に含まれる。
【0091】
また、可変容量コンプレッサは、モータにより駆動される可変容量の電動コンプレッサ(この場合には、冷却電動ファンと同様に電気負荷となる。)であってもよい。
【0092】
要求される冷房能力の予測に関して、エバポレータ出口温度Tintと目標エバポレータ出口温度T’intとの差温△Tにより予測する例を示したが、例えば、エアコンスイッチのON/OFF操作、温度調整ダイヤルでの設定温度の変更、エアコンのON状態における車室内温度の急上昇等により、要求される冷房能力を予測するようにしてもよい。
【0093】
可変容量コンプレッサ4の吐出容量を高圧センサで検出する例を示したが、例えば、可変容量コンプレッサ4の吐出側から温度式自動膨張弁7に至るエアコンサイクル中の何れかの位置にて高圧冷媒の圧力を検出する手段や、演算により推定する手段等を用いてもよい。
【0094】
クールダウン時に要求される冷房能力にかかわらず1つのクールダウン制御マップによりファンモータ34を制御する例を示したが、要求される冷房能力が大きいほどクールダウン制御マップの傾きを大きくする補正を行ったり、コンプレッサ吐出側圧力の低い側に移行させたり、複数の制御マップから最適マップを選択する等、要求される冷房能力の大きさに応じたファンモータ制御を行ってもよい。
【0095】
エバポレータ出口温度Tintをエバポレータ7の出口側に設けられたエバポレータ温度センサで検出する例を示したが、エバポレータ温度センサをエバポレータ8の入口側に備えている場合には、エバポレータ入口温度からエバポレータ出口温度Tintを推定するようにしてもよい。
【0096】
通常走行時には、例えば、車速の大きさにより通常制御マップの傾きを変更する補正を行ったり、複数の通常制御マップから最適マップを選択する等、車速の大きさに応じたファンモータ制御を行ってもよい。また、通常走行時には、車速情報以外に路面傾斜等の走行抵抗情報やアクセル開度情報等を加えてファンモータ制御を行うようにしてもよい。
【0097】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、車両用空調制御装置が可変容量コンプレッサの容量制御と冷却ファンの回転制御とを行うこととしたので、可変容量コンプレッサの容量制御から冷却ファンの回転制御までの時間的なずれを抑え、一方の状況に基づく他方の迅速な制御を可能とする。
また、車両用空調制御装置は可変容量コンプレッサを駆動させるためのエンジン負荷トルクと前記冷却ファンを駆動させるためのエンジン負荷トルクとの総和によりあらわされるトータルエンジン負荷トルクが最小となるような可変容量コンプレッサの吐出容量と冷却ファンの回転数との関係を示す制御マップを備え、この制御マップに基づいて可変容量コンプレッサの吐出容量から冷却ファンを駆動させるためのエンジン負荷トルクを決定することとしたので、トータルエンジン負荷トルクを考慮した最適な冷却ファン制御により、燃費の向上を達成することができる。
更に、制御マップとして、少なくとも、通常制御マップと、クールダウン制御マップとを備えることにより、通常走行時には通常制御マップを用いると共に、クールダウン時にはクールダウン制御マップを用いるようにすることができる。
【0098】
請求項2の発明によれば、車両用空調制御装置は冷却ファンに対するデューティ信号に基づいて作動して冷却ファンの回転制御に供するスイッチング素子を内蔵することとしたので、スイッチング素子に信号を送る際に放射ノイズを発生させず車両内の設計におけるレイアウト上の制約を回避することができる。
【0099】
請求項3の発明によれば、制御マップを用いて冷却ファンの回転制御処理を行う際に、スロープ処理を施すことにより、冷却ファンへの負荷急変による燃費の悪化を防止することができる。また、状況に応じて変化量の異なる2種類のスロースタート処理を使い分けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る車両用空調制御装置を備えた車両用エアコンの構成を説明するための図である。
【図2】図1の車両用エアコンの外部制御式の可変容量コンプレッサを示す断面図である。
【図3】可変容量コンプレッサの容量制御にかかわる構造を説明する図である。
【図4】本実施の形態に係る車両用空調制御装置における可変容量コンプレッサの容量制御処理と冷却電動ファンの回転制御処理の全体的な流れを説明するフローチャートである。
【図5】図4のステップS7の冷却電動ファンの回転制御処理の詳細を説明するフローチャートである。
【図6】冷房能力を保ちながら計測したオルタネータによるエンジン負荷トルク特性とコンプレッサによるエンジン負荷トルク特性と両負荷トルクを合算したトータルエンジン負荷トルク特性とを示す実験結果図である。
【図7】縦軸をコンプレッサ吐出側圧力とし横軸をファンモータへのデューティのデューティ比とした場合の走行時の制御線を示す図である。
【図8】通常制御マップとクールダウン制御マップとを同じ座標軸にあらわした図である。
【図9】冷却電動ファンの回転制御による燃費向上効果を確認するために行った燃費比較試験1の結果図である。
【図10】冷却電動ファンの回転制御による燃費向上効果を確認するために行った燃費比較試験2の結果図である。
【図11】従来の車両用空調制御装置における可変容量コンプレッサの容量制御処理と冷却電動ファンの回転制御処理の全体的な流れを説明するフローチャートである。
【符号の説明】
1 車両用エアコン(エアコン)
3 省動力制御ユニット(車両用空調制御装置)
4 可変容量コンプレッサ
10 エンジン
33 冷却電動ファン(冷却ファン)
41 ファンモータ駆動回路
Claims (3)
- エアコンサイクルにおける可変容量コンプレッサの吐出容量及び冷却ファンの回転数の一方の値を他方の値に基づいて決定し、前記可変容量コンプレッサに対するデューティ信号を出力することによって前記可変容量コンプレッサの容量制御を行うとともに、前記冷却ファンに対するデューティ信号を出力することによって前記冷却ファンの回転制御を行い、
前記可変容量コンプレッサ及び前記冷却ファンはエンジンが発生するエネルギーを駆動源とし、
前記可変容量コンプレッサを駆動させるためのエンジン負荷トルクと前記冷却ファンを駆動させるためのエンジン負荷トルクとの総和によりあらわされるトータルエンジン負荷トルクが最小となるような前記可変容量コンプレッサの吐出容量と前記冷却ファンの回転数との関係を示す制御マップを備え、
エアコンの設定温度に応じて前記可変容量コンプレッサの吐出容量を決定するとともに、前記制御マップに基づいて前記吐出容量から前記冷却ファンの回転数を決定し、
更に、前記制御マップとして、少なくとも、通常制御マップと、クールダウン制御マップとを備え、通常走行時に通常制御マップを用いると共に、クールダウン時にクールダウン制御マップを用いるように構成したことを特徴とする車両用空調制御装置。 - 前記冷却ファンに対するデューティ信号に基づいて作動して前記冷却ファンの回転制御に供するスイッチング素子を内蔵したことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調制御装置。
- 制御マップを用いて冷却ファンの回転制御処理を行う際に、冷却ファンへの負荷急変による燃費の悪化を防止するスロープ処理を施すと共に、
該スロープ処理として、変化量の異なる2種類のスロースタート処理を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用空調制御装置。
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