JP4212765B2 - 難燃性皮革様シート基体およびその製造方法 - Google Patents

難燃性皮革様シート基体およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲンフリーで難燃性に優れ、インテリア分野、特に乗物用座席等の難燃性を必要とする用途に適した、極細繊維および高分子弾性体からなる、ソフトな風合いを有する難燃性皮革様シート基体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、合成繊維、特にポリエステル繊維やポリアミド繊維等は、その優れた寸法安定性、耐候性、機械的特性、耐久性などの点から、衣料、インテリア等の素材として不可欠なものとなっている。しかしながらその用途によっては、更なる特殊機能の付与が望まれている。例えば、インテリア分野、特に鉄道車両用座席や自動車用座席、航空機用座席等の上張材に用いられる人工皮革の分野においては難燃性能を付与することが極めて重要となっている。
【0003】
従来より、人工皮革の基体層として、極細繊維不織布の絡合空間に高分子弾性体を有する布帛が用いられており、この布帛の表面に樹脂層を付与するといわゆる銀付調人工皮革となり、また該布帛の表面を毛羽立てるといわゆるスエード調の人工皮革となる。
このような人工皮革基体層に難燃性を付与する方法としては、難燃剤を後加工法などにより繊維および高分子弾性体の表面に付着させる方法、難燃性を有するシートを裏面に積層する方法、難燃性微粒子を繊維形成熱可塑性ポリマー中に練り込む方法などが一般に行われている。
【0004】
これらの方法のうち、後加工法の場合には、人工皮革の風合いを悪化させると共に、該人工皮革が表面を起毛したスエード調のものである場合には、難燃処理により表面の緻密な立毛状態が集毛し、外観を悪化させることとなる。また、難燃性を有するシートを裏面に積層する方法の場合には、表面と裏面の難燃性に差が生じるとともに、人工皮革の風合いが損なわれる。
【0005】
難燃剤を熱可塑性ポリマーに練り込む添加方法の場合には、一般に用いられている具体的方法は、リン系またはハロゲン系化合物を有効成分とする難燃剤を、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンポリプロピレン共重合体、ポリスチレン等の成形材料に練り込み、難燃効果を付与する方法である。一方、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系ポリマー等への該難燃剤の練り込みは、溶融紡糸温度における難燃剤とポリマーの安定性の点から紡糸温度の設定、ポリマーおよび難燃剤の選択等に制約があり、生産性に問題があった。
【0006】
さらに上記の難燃剤を繊維に練り込む方法の場合には、上記難燃性繊維がレギュラーデシテックス、すなわち0.5デシテックスを越える繊維である場合には適用の可能性があるが、極端に細い繊維の場合には適用できない。例えば繊維の細いことが重要であるスエード調人工皮革のような場合には、繊維の繊度を0.5デシテックス以下とすることが、緻密な高級感ある繊維立毛を得る上で、また風合いの点で、さらに天然皮革様の充実感を得る上からも好ましいが、このような極細繊維に難燃性微粒子を練り込むと、難燃性微粒子の粒径と繊維断面積の関係から、繊維物性の低下が甚だしく、実用に耐え得るものは得られない。また、繊維物性を低下させることなく難燃性の有機物質等を分散せしめた場合においても、極細化の際に通常用いられる海成分除去工程において難燃性の有機物質が抜け落ちてしまうため、目標の難燃レベルを達成できない場合が多い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、2成分以上の熱可塑性ポリマーからなる複合または混合紡糸繊維の1成分以上を除去して得られる単繊度0.5デシテックス以下の極細繊維に繊維物性を大きく低下させることなく難燃性能を付与すると共に、高分子弾性体にもその分解を促進することなく難燃性を付与することで、ソフトな風合いを有し、かつハロゲンフリーの、耐久性に優れた難燃性皮革様シート基体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、0.5デシテックス以下の極細繊維(A)が三次元絡合されている不織布と高分子弾性体(B)からなる人工皮革基体において、極細繊維(A)が有機リン成分共重合ポリエステルからなり、かつ高分子弾性体(B)中に水酸化アルミニウムが含有されていることを特徴とする難燃性皮革様シート基体であり、好ましくは、極細繊維(A)中のリン原子濃度が3000ppm以上で、また高分子弾性体(B)中に含まれる水酸化アルミニウムの量が、高分子弾性体100重量部に対して10〜200重量部である上記難燃性皮革様シート基体である。
また本発明は、0.5デシテックス以下の極細繊維(A)が三次元絡合されている不織布とその中に充填された高分子弾性体(B)からなる皮革様シート基体を製造するに際し、下記▲1▼〜▲3▼の工程、
▲1▼有機リン成分含有ポリエステルを島成分とする海島型多成分系繊維からなる繊維絡合不織布を製造する工程、
▲2▼該不織布に水酸化アルミニウムを含有する高分子弾性体(B)を付与する工程、
▲3▼該繊維中の海成分を除去する等の方法により該繊維を単繊度0.5デシテックス以下の極細繊維(A)の束に変換する工程、
を▲1▼▲2▼▲3▼の順序または▲1▼▲3▼▲2▼の順序で行うことを特徴とする難燃性皮革様シート基体の製造方法である。
この製造方法において、単繊維繊度0.5デシテックス以下の極細繊維の束は、従来公知の方法で作られる。例えば、相溶性のない少なくとも2種類のポリマーからなり、断面において少なくとも1種類のポリマーが島成分、そしてそれ以外の少なくとも1種類のポリマーが海成分となっている極細繊維発生型繊維から少なくとも1成分(通常は海成分ポリマー)を溶解又は分解除去することにより、または、相溶性のない2種以上のポリマーが接合した断面形状を有する貼合わせ型の極細繊維発生型繊維を機械的または化学的な処理により2成分の界面で剥離させることにより得ることができる。得られる極細繊維の束を構成する極細繊維の単繊維繊度を0.5デシテックス以下、特に0.2デシテックス以下とするためには、貼合わせ型の極細繊維発生型繊維を用いるよりは繊維断面が海島構造となっている極細繊維発生型繊維を用いる方が工程上有利である。またメルトブローンなどのように直接極細繊維を製造する方法を用いてもよい。なお、上記▲1▼〜▲3▼の工程は、本発明の皮革様シート基体を製造する上での必須の工程のみを記載したものであり、この▲1▼〜▲3▼以外の工程が付加されていてもよく、例えば、▲1▼の工程の後に、不織布をポリビニルアルコールで代表される糊材で仮固定する工程等を付加してもよい。
【0009】
本発明に用いる海島構造繊維は、相溶性を有していない2種以上の熱可塑性ポリマーを複合紡糸または混合紡糸することにより得られる。海島構造繊維から海成分を除去して得られる極細繊維束に難燃性を付与するためには、島成分に用いる樹脂を難燃化すればよい。一般に、繊維自体の難燃化(後加工ではなく)には、紡糸時に無機化合物、有機ハロゲン化合物、ハロゲン含有有機リン化合物、有機リン化合物等の難燃剤を練り込む方法が採られるが、難燃剤の反応劣化、繊維物性の低下等の問題があり、さらに極細繊維を対象とする場合には、海成分ポリマー除去時の難燃剤の脱落が問題となる。また、含ハロゲン化合物の使用は、優秀な難燃性能を付与できる反面、燃焼時に人体に有害な物質を発生するという問題がある。したがって、含ハロゲン化合物の使用は、乗物の座席シートに用いられる人工皮革の難燃性を達成する方法として好ましい方法とはいえない。
【0010】
これらの問題をことごとくクリアし、極細繊維に難燃性を付与せしめる方法として、本発明においては、有機リン成分共重合樹脂を島成分に用いる。有機リン成分共重合樹脂としては、セルロース、ポリエステル、フェノール等への共重合樹脂が知られているが、本発明においては、溶融紡糸が可能であること及び人工皮革としての必要物性を満たすことから、有機リン成分共重合ポリエステルを用いる。例えば特開昭51−82392号公報、特開昭55−7888号公報、特公昭55−41610号公報に記載されているような公知の有機リン成分共重合ポリエステルを用いることができる。ここで、有機リン成分共重合ポリエステルの製法は特に限定しないが、例えばジカルボン酸ジエステルとジオールとのエステル交換法による場合にはエステル交換反応の際に有機リン化合物を添加する方法、重縮合反応前または反応の初期段階において有機リン化合物を添加する方法を採ることができ、ジカルボン酸とジオールとのエステル化法による場合にも任意のエステル化反応段階において有機リン化合物を添加する方法を採ることができる。反応に用いる有機リン化合物としては、前述の公報中に挙げられているような、オキサホスホラン、ホスフィン酸誘導体、ホスファフェナントレン誘導体等の公知のリン原子含有化合物を使用できる。また、母体となるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等をはじめとする公知のポリエステルおよびそれらの変性ポリマー、混合ポリマー、共重合ポリマー等を用いることができる。
【0011】
この有機リン成分共重合ポリエステルを用いた場合、リン成分が共重合すなわち共有結合によりポリマーと結合しているため、紡糸時およびその後の人工皮革製造の諸工程において難燃剤の脱落等のトラブルが生じない。また、昨今の環境事情より忌避されている含ハロゲン化合物の使用を回避できる。この際、該有機リン成分共重合ポリエステルは、十分に強度等の繊維物性を発揮する樹脂であってかつ紡糸条件下で海成分ポリマーより溶融粘度が大きく、かつ表面張力が小さい樹脂が好ましく、溶融紡糸可能な樹脂であるのが好ましい。例えば、オリフィス口径:2mmφ、荷重:325gで測定した紡糸温度におけるメルトフローレートが5〜50、繊維強度が1.0〜5.0g/デシテックスである樹脂が好ましい。また、有機リン成分共重合ポリエステル中のリン原子濃度は3000ppm以上20000ppm以下であることが好ましく、5000ppm以上15000ppm以下が特に好ましい。3000ppm未満では、皮革様シート基体とした際に満足できる難燃性能が得られない。20000ppmを越えると樹脂の粘度低下により海島構造繊維の生産性が悪化するため使用が難しくなる。
【0012】
一方、海成分ポリマーとしては、島成分ポリマーと溶剤または分解剤に対する溶解性又は分解性を異にし(島成分ポリマーよりも溶解性又は分解性が大きい)、島成分ポリマーとの相溶性の小さい樹脂であり、例えばポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンプロピレン共重合体、スルホイソフタル酸ソーダ等を共重合した変性ポリエステルなどのポリマーから選ばれた少なくとも1種のポリマーである。例えばポリスチレンやポリエチレンはトルエンやトリクレンにより容易に抽出可能であり、またスルホイソフタル酸ソーダ共重合ポリエチレンテレフタレート等の変性ポリエステルはアルカリにより分解除去可能である。そしてこの海島構造繊維から海成分を抽出又は分解除去することにより海島構造繊維を極細繊維束に変換することができる。なお本発明において海島構造繊維は、繊維横断面において、海成分が島成分により複数個に分割されていてもよく、例えば海成分と島成分とがそれぞれ層となり、多層貼り合わせ状態となっているような繊維であってもよい。なお島成分は繊維長さ方向に切れ目なく連なっていても、あるいは不連続の状態であってもよい。また海島構造繊維の繊維横断面における島の個数は特に規定しないが、極細繊維束への変換後に単繊維繊度が0.5デシテックス以下になるように設定する必要がある。本発明に用いられる海島構造繊維の製造法としては各種溶融紡糸法(チップブレンド方式、ニードルパイプ法式、貼り合せ方式等)が挙げられる。また本発明に用いられる海島構造繊維を構成する海成分と島成分との比率は重量比で8:2〜2:8の範囲が好ましい。
本発明において、海島構造繊維から海成分ポリマーを除去した後に形成される極細繊維束を構成する極細繊維の太さは0.5デシテックス以下であることが前記したように必須であり、特に0.001〜0.2デシテックスの範囲が好ましい。なお、繊維の島成分には、上記した有機リン成分共重合ポリエステルの他に、染料や顔料等の着色剤や各種安定剤等が添加されていてもよい。
【0013】
本発明においては、高分子弾性体中にも難燃剤を包含せしめる。海島繊維絡合不織布に高分子弾性体を付与する際には、高分子弾性体を含有する液状組成物に該不織布を浸漬し、然る後に該不織布を凝固浴に浸漬して高分子弾性体を凝固させる方法、あるいは高分子弾性体エマルジョン液を加熱ゲル化させる方法等が用いられる。難燃剤を高分子弾性体に含有せしめるには、不織布に含浸せしめる液状組成物に難燃剤を分散させておけばよい。
【0014】
高分子弾性体に分散せしめる難燃剤としては、一般に樹脂に対して使用されるような公知の難燃剤、例えば、ハロゲン系やリン系、窒素系の有機難燃剤、金属水酸化物や赤リン、シリコン系の無機化合物等が考えられるが、高分子弾性体および極細繊維の劣化を促進しないこと、また、本発明における処理工程中においては凝固浴や極細繊維発生工程での処理液より実質的に溶解・分解しないことが求められる。これらの条件に加えて、高分子弾性体中に分散させ、前述の有機リン成分共重合ポリエステルよりなる極細繊維と組み合わせて皮革様シート基体とし、燃焼させる際の効果発現温度の観点から鋭意研究を行なった結果、金属水酸化物の1種である水酸化アルミニウムが最適であることが判明した。ここで、水酸化アルミニウムは高分子弾性体100重量部に対して10〜200重量部が好ましく、より好ましくは30〜100重量部である。水酸化アルミニウムが10重量部未満では皮革様シート基体とした際に充分な難燃性が得られず、200重量部を越えると高分子弾性体が水酸化アルミニウムを充分に保持することが困難となる。また、含浸液への分散安定性・難燃効果を考慮して、粒子径が平均2μm以下、特に1μm以下の水酸化アルミニウム微粒子が好ましい。また、この水酸化アルミニウム粒子には、必要に応じて耐湿・耐熱・耐水・耐酸等性能向上のための各種処理を施したものを使用できる。
また、高分子弾性体としては、例えば、平均分子量500〜3000のポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール等のジオールあるいはポリエステルポリエーテルジオール等の複合ジオール等から選ばれた少なくとも1種類のポリマージオールと、4、4’ージフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの芳香族系、脂環族系、脂肪族系のジイソシアネートなどから選ばれた少なくとも1種類のジイソシアネートと、エチレングリコール、イソホロンジアミン等の2個以上の活性水素原子を有する少なくとも1種類の低分子化合物とを所定のモル比で反応させて得たポリウレタンおよびその変性物が挙げられ、その他に、ポリエステルエラストマー、スチレン−イソプレンブロック共重合体の水素添加物等の高分子弾性体およびアクリル系等の樹脂なども挙げられる。またこれらを混合した重合体組成物でもよい。しかし、柔軟性、弾性回復性、多孔質高分子弾性体形成性、耐久性等より上記のポリウレタンが好ましく用いられる。
【0015】
次に、本発明の製造方法について説明する。
まず、前記したような公知の方法により島成分に有機リン成分共重合ポリエステルを用いた極細繊維発生型海島構造繊維ステープルを製造する。繊維としては、繊度1.0〜10.0デシテックスが良好なカード通過性を確保する点で好ましく、さらに好ましくは3.0〜6.0デシテックスである。次に該海島構造繊維ステープルをカードで解繊し、ウェッバーを通してウェッブを形成し、得られたウェッブを、所望の重さ及び厚さに積層し、次いで、公知の方法、例えばニードルパンチ方法や高圧水流絡合処理方法等で絡合処理を行って不織布とするか、あるいはこのステープルを重ね合わせた編織布に水流等を使用して絡合させて複合不織布とする。該不織布は、皮革様シートとした際の厚さ等を考慮して目的に応じた形態にする必要があるが、目付けとしては200〜1500g/m2、厚みとしては1〜10mmの範囲が工程中での取り扱いの容易さの観点から好ましい。なお、必要に応じて上記方法により製造された不織布に、ポリビニルアルコール系の糊剤を付与したり或いは構成繊維の表面を溶融したりして不織布構成繊維間を接着し、不織布を仮固定する処理を行ってもよい。この処理を行うことにより、その後に行う高分子弾性体溶液の含浸等の工程で不織布が張力等により構造破壊することを防ぐことができる。
【0016】
上記のような高分子弾性体を溶剤あるいは分散剤に溶解あるいは分散させて得た重合体液を不織布に含浸し、樹脂の非溶剤で処理して湿式凝固させ、多孔質状の高分子弾性体相を形成させる、或いはそのまま加熱乾燥しゲル化させ多孔質状の高分子弾性体相を形成させる等の方法で、海島構造繊維と高分子弾性体で構成されたシートを得る。この重合体液には必要に応じて着色剤、凝固調節剤、酸化防止剤、分散剤等の添加剤が配合されていてもよい。
【0017】
次に、海島構造繊維と高分子弾性体で構成されたシートを、島成分ポリマー及び高分子弾性体の非溶剤であり、かつ海成分ポリマーの溶剤または分解剤である薬剤によって処理することで海島構造繊維を極細繊維束に変換する。この工程において、高分子弾性体中の水酸化アルミニウム粒子はそのほとんどが該弾性体中に容易に脱落しないような状態で残る。海成分除去後のシートに占める高分子弾性体の比率は固形分として重量比で10%以上、好ましくは30〜50%の範囲である。弾性体比率が10%未満では緻密な多孔質高分子弾性体が形成されず、極細繊維発生後に水酸化アルミニウム粒子の脱落が生じやすくなる。本発明において、海島構造繊維から海成分を除去して形成される極細繊維の細さとしては、高級感あるスエード調の立毛が得られることから0.5デシテックス以下が用いられる。
【0018】
このようにして作製した難燃性皮革様シート基体は、有機リン成分共重合ポリエステルの極細繊維と水酸化アルミニウム粒子を保持した多孔質高分子弾性体の組み合わせとなっている。この組み合わせが最適であることを理論的に実証することは困難であるが、難燃成分を含まないポリエステル繊維と水酸化アルミニウム粒子を保持した多孔質高分子弾性体の組み合わせ、あるいは、有機リン成分共重合ポリエステルの極細繊維と水酸化アルミニウムを含まない多孔質高分子弾性体との組み合わせでは、一方の難燃成分の濃度を可能な限り高くしてもシート全体を難燃化することはできない。本シートのような複合材においてはそれぞれの構成要素に難燃成分を存在させることが有効であり、詳細は確認できないが、有機リン化合物の炭化皮膜形成による燃焼抑制機構と水酸化アルミニウムの吸熱による燃焼抑制機構が、燃焼過程の複数箇所で燃焼を抑制することによる相乗効果を発揮していると推定している。
【0019】
繊維シートに難燃剤を付与する方法としては、該シートに難燃剤含有液を含浸し、乾燥する方法が一般的であるが、このような方法の場合には、繊維が極細繊維束で難燃剤が微粒子である場合、極細繊維束の内部まで難燃剤が侵入することはほとんどなく、難燃剤の大部分は繊維束の外部や高分子弾性体の外部表面に存在することとなる。このような状態の場合には、難燃剤が容易に脱落して、耐久性ある難燃効果は得られない。また難燃剤の脱落を防ぐために、バインダー樹脂中に難燃剤を練り込み、このバインダー樹脂液をシートに含浸する方法もあるが、このような方法を用いても、極細繊維束の内部までは浸透せず、また難燃剤は樹脂に覆われるため難燃能が大きく低下し、さらにシートにも樹脂が充填されるため、シートの有する柔軟性が損なわれ、かつ良好な立毛状態が得られない等の欠点が生じるが、本発明の場合にはこのような欠点が生じない。
【0020】
本発明の難燃性皮革様シート基体は、その表面を毛羽立てることによりスエード調の人工皮革が得られ、さらに繊維シートの表面を溶融して平滑化したり或いは表面に樹脂を塗布することにより、さらに表面に天然皮革様の表面凹凸を付与することにより銀付調人工皮革とすることもできる。このような人工皮革からは、靴、鞄、小物入れ等の雑貨の他、ソファーの上張り材等のインテリア用品、衣料等の用途に用いることができる。特に自動車用座席、鉄道車両用座席、飛行機用座席、船舶用座席等の乗物用座席の上張材等の難燃性が要求される用途で、かつ強度を要する用途に本発明の難燃性皮革様シート基体は適している。
【0021】
【実施例】
次に本発明を具体的に実施例で説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部及び%はことわりのない限り重量に関するものである。また、本発明で言う繊維の太さ及び水酸化アルミニウムの平均粒径に関しては以下の方法により求めた。また、実施例中の難燃性評価は、下記方法に従って測定した。
[繊維の太さ]:繊維束重量の実測
[水酸化アルミニウムの平均粒径]:電子顕微鏡観察による実測
[難燃性試験方法]自動車用内装材料試験法 FMVSS−302
また実施例中のシート中のリン原子濃度は、ジャーレルアッシュ社製ICP発光分析装置IRIS APにて測定した。
【0022】
実施例1〜2
公知のポリエステル重合方法を用い、リン系難燃剤M−Ester(三光(株)製,分子量434,リン含量7wt%)を重合中に添加して、リン原子濃度5000ppmならびに12000ppmの2種のリン系難燃剤共重合ポリエステルを得た。
該リン系難燃剤共重合ポリエステルを島成分に、高流動性低密度ポリエチレンを海成分に用いた海島型複合紡糸繊維(海成分/島成分=35/65,島数16)を溶融紡糸により得て、これを70℃の温水中で2.5倍に延伸し、繊維油剤を付与し、機械捲縮をかけて乾燥後、51mmにカットして5.0デシテックスのステープルとし、クロスラップ法で目付650g/m2のウェッブを形成、ついで両面から交互に合わせて約2500P/cm2のニードルパンチングを行い、さらに加熱し、カレンダーロールでプレスすることで表面の平滑な絡合不織布をつくった。この絡合不織布の目付は1200g/m2、見かけ密度は、0.48g/cm3であった。この絡合不織布に、ポリカーボネート系ポリウレタンを主体とする固型分14%のポリウレタンのジメチルホルムアミド(DMF)溶液100部に対して、平均粒径1μmの水酸化アルミニウムをDMF中に40%分散させた液17.5部を添加して調整した含浸液(ポリウレタン:水酸化アルミニウム=100:50)を含浸し、ついでこの含浸させた不織布をDMF/水混合液の中に浸漬して湿式凝固した後、熱トルエン中で海島型複合繊維中の海成分を溶出除去して極細繊維を発現させ、難燃性能を持った厚さ1.3mmの皮革様シート基体を得た。
極細繊維の平均繊度は0.2デシテックスであった。繊維シート中の繊維の重量とポリウレタンの重量比率は約7:2であった。また得られた繊維シートの繊維断面を顕微鏡にて観察したところ、水酸化アルミニウム粒子が多孔質高分子弾性体の内部に多く存在していることを確認した。得られた各シートの難燃性,リン原子濃度を評価した結果を表1に示す。このシートの表面を毛羽立てて、スエード調の人工皮革を作製したところ、難燃性に優れ、インテリア分野、特に乗物用座席等の、難燃性を必要とする用途に適した、ソフトな風合いを有するスエード調の皮革様シートであった。
また表面を毛羽立てる方法に代えて、表面に厚さ60ミクロンのポリウレタン層を付与し、天然皮革調のエンボス模様を付与し、揉み処理を行ったところ、同様に、難燃性に優れ、インテリア分野、特に乗物用座席等の難燃性を必要とする用途に適した、ソフトな風合いを有する銀面層付きの皮革様シートが得られた。なお、これらの仕上げ処理後においても、該シートはFMVSS−302試験により難燃と判定された。
得られたスエード調あるいは銀面相付きの皮革様シートを用いて実際にカーシート用の座席を作製したところ、強度等に起因する加工上の問題は発生せず、天然皮革使用時に近い感触・外観ならびにカーシートに必要な難燃性を併せ持つ座席となった。
【0023】
比較例1
島成分にリン系難燃成分を共重合していないポリエステルを使用するほかは、実施例1と同一の条件にて繊維質シート基体を作製した。得られたシートの難燃性,リン原子濃度を評価した結果を表1に示す。
【0024】
比較例2,3
高分子弾性体に水酸化アルミニウムを添加しない他は、実施例1,2と同一の条件にて皮革様シート基体を作製した。得られたシートの難燃性、リン原子濃度を評価した結果を表1に示す。
【0025】
比較例4,5
高分子弾性体に添加する難燃剤として水酸化アルミニウムのかわりに水酸化マグネシウムを使用するほかは、実施例1,2と同一の条件にて繊維質シート基体を作製した。得られたシートの難燃性,リン原子濃度を評価した結果を表1に示す。
【0026】
比較例6
島成分に低分子量のリン系難燃剤を練り込んで作製した海島繊維を使用するほかは、実施例1と同一の条件にて繊維質シート基体を作製した。得られたシートの難燃性,リン原子濃度を評価した結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
Figure 0004212765
【0028】
【発明の効果】
本発明のシート基体は、ハロゲンフリーで難燃性に優れ、かつ該難燃性の耐久性にも極めて優れている。また、本発明のシート基体は、皮革様のソフトな風合いを有し、スエード調ならびに銀付調人工皮革の基体層として極めて優れており、自動車用座席、鉄道車両用座席、航空機の座席、ソファーの上張り材等の難燃性能を要する用途に適している。さらに本発明のシートは、通常人工皮革が用いられている用途以外の一般的な用途、例えば壁紙、絨毯等にも使用できる。

Claims (6)

  1. 0.5デシテックス以下の極細繊維(A)が三次元絡合されている不織布と高分子弾性体(B)からなる人工皮革基体において、極細繊維(A)が有機リン成分共重合ポリエステルからなり、かつ高分子弾性体(B)中に水酸化アルミニウムが含有されていることを特徴とする難燃性皮革様シート基体。
  2. 有機リン成分共重合ポリエステル中のリン原子濃度が3000ppm以上であり、かつ、高分子弾性体中の水酸化アルミニウム含有量が高分子弾性体(B)100重量部に対して10〜200重量部である請求項1記載の難燃性皮革様シート基体。
  3. 請求項1または2に記載の基体が用いられているスエード調人工皮革。
  4. 請求項1または2に記載の基体が用いられている銀付調人工皮革。
  5. 請求項3または4に記載されている人工皮革が上張材として用いられている乗物用座席。
  6. 0.5デシテックス以下の極細繊維(A)が三次元絡合されている不織布とその中に充填された高分子弾性体(B)からなる皮革様シート基体を製造するに際し、下記▲1▼〜▲3▼の工程、
    ▲1▼有機リン成分含有ポリエステルを島成分とする海島型多成分系繊維からなる繊維絡合不織布を製造する工程、
    ▲2▼該不織布に水酸化アルミニウムを含有する高分子弾性体(B)を付与する工程、
    ▲3▼該繊維中の海成分を除去して該繊維を0.5デシテックス以下の極細繊維(A)の束に変換する工程、
    を▲1▼▲2▼▲3▼の順序または▲1▼▲3▼▲2▼の順序で行うことを特徴とする難燃性皮革様シート基体の製造方法。
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