JP4211511B2 - ステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の衝突時にステアリング軸に加わる二次衝突の衝撃エネルギにより、前記ステアリング軸及び該ステアリング軸を支持するステアリングコラムが軸長方向に短縮する構成としてあるステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の操舵は、車室の内部に配されたステアリングホイールに加えられる操舵トルクを、操舵用の車輪(一般的には前輪)の舵取りのために車室の外部に配された舵取機構に伝えて行われる。このような操舵を行わせるためのステアリング装置は、車室の内部に回動自在に支持されたステアリング軸の上端部に、運転者に対面するようにステアリングホイールを取付け、また前記ステアリング軸の下端部を、中間軸を介して舵取機構に連結して構成されている。
【0003】
このようなステアリング装置においては、近年、車両の前面衝突時に進行方向への慣性の作用によりステアリングホイールに衝突(二次衝突)する運転者のダメージを軽減することを目的として、前記ステアリング軸及び該ステアリング軸を内部に支持する筒形をなすステアリングコラムが、前記二次衝突に伴う衝撃エネルギの作用により軸長方向に短縮可能に構成されることが多い。
【0004】
短縮可能なステアリングコラムは、一般的には、適長に亘って内外に嵌め合わされた内筒及び外筒を備え、これらの両筒が、前記衝撃エネルギの作用時に互いの嵌め合い長さを増しつつ短縮するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、このように構成されたステアリングコラムにおいては、短縮可能な長さが限定される上、前記二次衝突に伴う作用力が軸長方向に対して傾斜した方向に加えられた場合、内筒及び外筒の嵌合部に「こじれ」が発生して滑らかな短縮がなされず、ステアリングホイールに衝突する運転者に加わる反力が大きくなるという不具合があり、滑らかで安定した短縮を行わせるために、内筒及び外筒の嵌合部にボールを介装する等の対策が必要であり、構造が複雑となり、また組み立てに工数を要するという問題があった。
【0006】
このような問題を解消するため本願出願人は、ステアリング軸を支持するステアリングコラムを、ステアリングホイールの取付け側の上部コラムと舵取機構への連結側の下部コラムとに分離構成し、これらの上部コラムと下部コラムとを、夫々の軸長方向と略直交する曲げ線により折り曲げ可能な曲げ板により接続してあるステアリング装置を提案している(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
このステアリング装置においては、二次衝突に伴う衝撃が加えられた場合、分離構成された上部コラムと下部コラムとが、前記曲げ板の折り曲げ変形を伴って相互に近付く向きに相対移動し、上部コラム及び下部コラムにより構成されたステアリングコラムの全長が短縮する。従って、上部コラムと下部コラムとの間に初期に確保し得る離隔距離が短縮可能な長さとして利用できる上、ステアリングホイールに衝突する運転者に加わる反力の大きさが曲げ板の変形抵抗のみに依存し、二次衝突に伴う作用力の方向の影響を受け難く、簡素な構成により安定した短縮動作を行わせることができる。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−293249号公報
【特許文献2】
特開平10−338147号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、特許文献2に開示されたステアリング装置においては、通常操舵時におけるステアリング軸の支持剛性が、上部コラムと下部コラムとを接続する曲げ板の剛性に依存するため、剛性の低い曲げ板を採用した場合、舵取機構からの振動がステアリングコラムを経てステアリングホイールに伝播し、操舵感の悪化を招来するという問題がある。
【0010】
また、この問題を解消すべく剛性の高い曲げ板を採用した場合、二次衝突時における折り曲げ変形の抵抗が大きくなり、ステアリングホイールを介して運転者に加わる反力が増大し、所望の衝撃吸収作用をなし得なくなる虞れがあって、支持剛性及び衝撃吸収の双方において満足すべき性能を得ることが難しいという問題があった。
【0011】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、分離構成された上部コラムと下部コラムとを接続する曲げ板の構成の工夫により、支持剛性の強化と二次衝突時の安定した短縮動作とを両立することができるステアリング装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るステアリング装置は、ステアリングホイールと舵取機構とを連絡するステアリング軸を、ステアリングホイール側の上部コラムと舵取機構側の下部コラムとに分離構成されたステアリングコラムの内部に支持し、前記上部コラムと前記下部コラムとを、これらの軸と略直交する曲げ線により折り曲げ可能な曲げ板により接続してあるステアリング装置において、前記曲げ板は、前記上部コラム及び下部コラムに夫々の一側を、また夫々の他側同士を前記曲げ線となすべき位置に圧入された各別のヒンジピンにより連結してある第1,第2の連結板を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明においては、二次衝突に伴う衝撃力の作用により、ステアリングコラムを構成する上部コラムと下部コラムとが、これらを接続する曲げ板の折り曲げ変形を伴って軸長方向に相対移動することにより短縮する。曲げ板は、上部コラム及び下部コラムの夫々に、第1,第2の連結板を、両コラムの軸と略直交する向きに圧入したヒンジピンにより連結し、更に第1,第2の連結板同士を同向きに圧入したヒンジピンにより連結して、前記衝撃力の作用による折り曲げが夫々の連結部に圧入されたヒンジピンを曲げ線とし、各ヒンジピンの圧入部の摩擦抵抗の作用下にて生じるように構成してあり、これにより、ステアリングコラムの支持剛性が高められ、またステアリングコラムの短縮が、作用力の方向の影響を受けずに安定して生じるようになる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は、本発明に係るステアリング装置の全体構成を示す模式図である。
【0015】
図中1は、ステアリング軸であり、該ステアリング軸1は、上部コラム2と下部コラム3とに分離構成されたステアリングコラムの内部に同軸回動自在に支承されており、上部コラム2の中途部に固設されたアッパブラケット4と下部コラム3の下端部に固設されたロアブラケット5とにより、上部コラム2の側を後上方(図における右上方)に向け、また下部コラム3の側を前下方(図における左下方)に向けた傾斜姿勢にて車室の内部に支持されている。
【0016】
なお、上部コラム2を車体に支持するアッパブラケット4は、例えば、樹脂製のカプセル40を介して車体に固定され、上部コラム2に軸長方向の下向きに加わる所定限度を超える力の作用により、車体にカプセル40を残して下方に離脱する公知のブレークアウエイブラケットとして構成されている。
【0017】
上部コラム2の上側に突出するステアリング軸1の上端部には、車室内部の運転者に対面するようにステアリングホイール10が嵌着固定されており、また下部コラム3の下部に突出するステアリング軸1の下端部は、両端にユニバーサルジョイント60,60を備える中間軸6を介して舵取機構7の入力軸70に連結されている。以上の構成により、運転者により操舵のためにステアリングホイール10に加えられる操舵トルクは、ステアリング軸1及び中間軸6を介して舵取機構7の入力軸70に伝達され、該舵取機構7の動作により操舵が実行される。
【0018】
なお、図1に示すステアリング装置は、下部コラム3の下端部近傍の外側に取付けられた操舵補助用のモータ30と、該モータ30よりも上位置の下部コラム3の内部に構成されたトルクセンサ31とを備え、ステアリングホイール10に加えられる操舵トルクをトルクセンサ31により検出し、この検出トルクに基づいて駆動されるモータ30の回転力をステアリング軸1に伝えて、前述の如く行われる操舵を補助する電動パワーステアリング装置として構成されているが、本発明に係るステアリング装置における以下に示す特徴的な構成は、運転者によりステアリングホイール10に加えられる操舵トルクのみによって操舵を行わせるマニュアル式のステアリング装置においても適用可能であり、また舵取機構7に付設された油圧シリンダの発生力により操舵を補助する油圧パワーステアリング装置においても適用可能であることは言うまでもない。
【0019】
本発明に係るステアリング装置において、ステアリング軸1の上、下部を夫々支持する上部コラム2と下部コラム3とは、軸長方向に離隔して配してあり、周方向の3方を、各別の曲げ板8,8,8により後述の如く接続して同軸上に一体化され、ステアリングコラムを構成している。図2は、上部コラム2及び下部コラム3の接続部の構成を示す斜視図であり、1方を接続する曲げ板8を分解して示してある。
【0020】
図示の如く上部コラム2及び下部コラム3の夫々との対向端部には、矩形平板状をなす接続フランジ20,30が夫々周設されている。接続フランジ20の4辺の内の3辺には、各一対のピン受け座21,21が、上部コラム2の軸長方向と直交する方向に並設されており、これらには、並設方向に貫通するピン孔が形成されている。下部コラム3の接続フランジ30にも、同様のピン受け座31,31が並設されている。
【0021】
曲げ板8,8,8による接続は、接続フランジ20,30の3辺の夫々の間にてなされている。曲げ板8は、図2に分解して示す如く、矩形平板状をなす第1の連結板80及び第2の連結板81を備えている。第1の連結板80は、互いに対向する2辺の一方の中央部に、これに沿って延設されたピン受け座82を備えており、また他方の両側に、これに沿って並設された一対のピン受け座83,83を備えている。第2の連結板81は、互いに対向する2辺の中央部に、夫々に沿って延設されたピン受け座84,85を備えている。
【0022】
第1の連結板80のピン受け座82は、上部コラム2のピン受け座21,21の間、又は下部コラム3のピン受け座31,31の間への嵌め込みが可能な長さを有し、またピン受け座83,83は、第2の連結板81のピン受け座84,85の嵌め込みが可能な離隔幅を有して並設されており、これらには、夫々の長手方向にピン孔が貫通形成されている。また第2の連結板81のピン受け座84,85は、上部コラム2のピン受け座21,21の間、下部コラム3のピン受け座31,31の間、又は第1の連結板80のピン受け座83,83への嵌め込みが可能な長さを有し、夫々の長手方向にピン孔が貫通形成されている。
【0023】
曲げ板8は、以上の如く構成された第1,第2の連結板80,81を、前者の一側のピン受け座83,83の間に後者の一側のピン受け座84(又は85)を嵌め込み、同軸上に整合する夫々のピン孔にヒンジピン9を圧入し、一体に連結して構成されている。このように構成された曲げ板8は、第1の連結板80の他側のピン受け座82と第2の連結板81の他側のピン受け座84(又は85)とを、上部コラム2のピン受け座21,21又は下部コラム3のピン受け座31,31の間に夫々嵌め込み、同軸上に整合する夫々のピン孔に各別のヒンジピン9,9を圧入して、第1,第2の連結板80,81間の連結部が、径方向外向きに突出するように折り曲げた状態で上部コラム2と下部コラム3との間に介装され、両コラム2,3を接続している。
【0024】
このような曲げ板8による接続は、図2に示す如く、上部コラム2の接続フランジ20及び下部コラム3の接続フランジ30の3辺において同様にしてなされ、このように接続された上部コラム2及び下部コラム3は、図1に示す如く、曲げ板8により接続された3方を左右両側及び下側に向けて車体に支持されている。
【0025】
以上の如き上部コラム2及び下部コラム3を備えるステアリングコラムには、車両の前面衝突時に、前方への慣性の作用によりステアリングホイール10に運転者が衝突(二次衝突)したとき、図1中に白抜矢符にて示す如く、軸長方向下向きに押圧する衝撃力が加わる。
【0026】
このとき、前述の如くブレークアウエイブラケットとして構成されたアッパブラケット4が車体から離脱し、該アッパブラケット4による拘束が解除された上部コラム2が下部コラム3に向けて下方に相対移動し、ステアリングコラムが短縮せしめられる。
【0027】
図3は、ステアリングコラムの短縮動作の説明図であり、図3(a)には、短縮開始前の状態が、図3(b)には、短縮動作中の状態が夫々示されている。本図には、上部コラム2及び下部コラム3を3方において接続する曲げ板8,8,8のうち、左右両側の曲げ板8,8が示されている。これらの曲げ板8,8は、夫々を構成する第1,第2の連結板80,81の連結部が径方向外向きに張り出すように「く」の字形に屈曲され、図3(a)に示す如く上部コラム2と下部コラム3との間に介装されている。
【0028】
このようなステアリングコラムに二次衝突に伴う衝撃力が加えられた場合、図中に白抜矢符により示す如く、上部コラム2が下部コラム3に向けて移動する。この移動により曲げ板8は、第1,第2の連結板80,81と上部コラム2及び下部コラム3との連結部、並びに第1,第2の連結板80,81同士の連結部において、各別のヒンジピン9,9,9を曲げ線として折り曲げられ、図3(b)に示す状態となる。
【0029】
上部コラム2は、下部コラム3に実質的に突き当たるまで、図3(a)中にSとして示すストローク間にて相対移動することができ、この移動によりステアリングコラムが短縮せしめられ、二次衝突に伴う衝撃のエネルギが吸収される。この間、ステアリングホイール10に衝突する運転者には、曲げ板8の折り曲げに伴う抵抗が反力として加わるのみであり、運転者は、大なるダメージを受けることなく二次衝突による衝撃から保護される。
【0030】
本発明に係るステアリング装置において、曲げ板8の折り曲げは、上部コラム2及び下部コラム3の軸方向と略直交するヒンジピン9,9,9を曲げ線としてなされるから、運転者に反力として加わる曲げ抵抗を、例えば、ヒンジピン9,9,9の圧入荷重の管理により精度良く実現することができる。
【0031】
なお、近年においては、ステアリングホイール10にエアバッグ装置を備え、該エアバッグ装置の動作により二次衝突に伴う衝撃から運転者を保護するようにしたステアリング装置も実用化されており、このようなステアリング装置においては、ヒンジピン9の圧入荷重を低く設定し、ステアリングコラムの短縮を実質的な抵抗なしに生じさせることも可能である。
【0032】
また曲げ板8は、ヒンジピン9の長さ方向の作用力に対しては大なる剛性を有しており、このような曲げ板8による上部コラム2と下部コラム3との接続が周方向の3箇所にてなされている。従って、曲げ板8を構成する第1,第2の連結板80,81を、折り曲げ性を損なわずに厚肉にすることができ、図3(b)に示す如き短縮は、上部コラム2及び下部コラム3の軸長方向のみに限定された状態で生じ、二次衝突時の衝撃力の方向により短縮状態が損なわれる虞れはない。
【0033】
一方、上部コラム2及び下部コラム3を接続する曲げ板8が大なる剛性を有することから、図3(a)に示す通常操舵時の状態において、ステアリング軸1の支持剛性を高めることができ、舵取機構7からステアリング軸1を経てステアリングホイール10に伝播する振動が低減され、ステアリングホイール10を操作する運転者に良好な操舵感を体感させることができる。
【0034】
ここで、ステアリング軸1の支持剛性は、曲げ板8の連結部のスパン長(図2中にLとして示す寸法)を増すことにより、上部コラム2と下部コラム3との間の短縮可能ストロークSに影響を及ぼすことなく高めることができる。これに対し、特許文献1に開示されたステアリング装置においては、ステアリング軸の支持剛性を高めるためには、内筒及び外筒の嵌合長さを増す必要があり、このことにより、短縮可能なストローク長が制限されるという不具合が生じる。なお、図2においては、接続フランジ20,30の3辺に夫々連結された曲げ板8のスパン長Lが同一値であるかの如く図示されているが、これらは、相互に異なる値であってもよいことは言うまでもない。
【0035】
なお以上の実施の形態において、接続フランジ20,30の4辺のうちの1辺に曲げ板8を接続していないのは、図1に示す支持状態において車体と対向する側には、曲げ板8の曲げ変形のためのスペースが確保し難いことによるものであり、このスペース確保が可能な場合、前記4辺の全てにおいて曲げ板8により接続することも可能である。
【0036】
【発明の効果】
以上詳述した如く本発明に係るステアリング装置においては、上部コラムと下部コラムとに分離構成されたステアリングコラムの支持剛性を高めることが可能であり、ステアリングホイールを操作する運転者に良好な操舵感を体感させ得ると共に、上部コラムと下部コラムとの相対移動によるステアリングコラムの短縮が安定してなされ、二次衝突時に確実な衝撃吸収動作を行わせることが可能となる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るステアリング装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】上部コラム及び下部コラムの接続部の構成を示す斜視図である。
【図3】ステアリングコラムの短縮動作の説明図である。
【符号の説明】
1 ステアリング軸
2 上部コラム
3 下部コラム
7 舵取機構
8 曲げ板
9 ヒンジピン
10 ステアリングホイール
80 第1の連結板
81 第2の連結板
Claims (1)
- ステアリングホイールと舵取機構とを連絡するステアリング軸を、ステアリングホイール側の上部コラムと舵取機構側の下部コラムとに分離構成されたステアリングコラムの内部に支持し、前記上部コラムと前記下部コラムとを、これらの軸と略直交する曲げ線により折り曲げ可能な曲げ板により接続してあるステアリング装置において、
前記曲げ板は、前記上部コラム及び下部コラムに夫々の一側を、また夫々の他側同士を前記曲げ線となすべき位置に圧入された各別のヒンジピンにより連結してある第1,第2の連結板を備えることを特徴とするステアリング装置。
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