JP4211134B2 - 配管固定構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、配管の位置決めを行う配管固定構造に関し、例えば車両用空調装置の冷媒回路を形成する冷媒用配管の固定に好適である。
【0002】
【従来の技術】
従来の車両用空調装置は、図6、図7に示すように、図示しない車両のエンジンに駆動されて冷媒を圧縮・吐出する圧縮機1、高圧ガス冷媒と外気とを熱交換して冷媒を凝縮させる凝縮器2、図示しない気液分離器、膨張弁および蒸発器にて冷凍サイクルが構成され、それらの構成部品は、ゴムや補強糸等を積層したホース3および金属製の配管4を介して接続されている。この配管4はゴム製の防振部材5を介してクランプ部材6に保持され、クランプ部材6が車両のボデー7にボルト8とナット9で固定されるようになっている。
【0003】
そして、図7は、デンソー公開技報(整理番号119−081、発行日1998年4月15日)にて本発明者が提案した、車両用空調装置の配管固定構造を示すもので、配管4とクランプ部材6との間に配置されるゴム製の防振部材5は、配管4の周方向に延びる板部51の内周側および外周側に、突起部52、53が周方向に多数設けられ、さらに、内周突起部52と外周突起部53とが径方向に重ならないように、両突起部52、53が周方向にずらして配置されている。
【0004】
この配管固定構造によれば、配管4の振動は防振部材5の板部51の剪断変形によって吸収されるため、圧縮変形によって振動を吸収するものよりも優れた防振性能が得られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、防振部材5の突起部52、53には、湾曲状態で配置されたホース3の復元力(反力)が配管4を介して作用するとともに、クランプ部材6の締め付け力が直接作用するため、図8に示すように防振部材5の突起部52、53の一部が倒れてしまうことがあり、その場合配管4の位置決め性や防振性能が低下するという問題があった。
【0006】
図9は車両運転席での騒音測定結果を示すもので、半数程度の突起部52、53が倒れているときの特性a(一点鎖線)と、突起部52、53が正常な姿勢のときの特性b(実線)との比較から明らかなように、突起部52、53が倒れた場合、局所的に内周突起部52と外周突起部53とが径方向に重なり、その部位では圧縮変形による振動吸収となるため、防振性能が低下してボデー7への振動伝達が増加し、騒音レベルが上昇してしまう。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、防振部材の突起部の倒れを防止して、配管の位置決め性や防振性能の低下を防止することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1〜5に記載の発明では、配管(4)とクランプ部材(6)との間に防振部材(5)が配置され、防振部材(5)には、配管(4)の周方向に延びる板部(51)の内周側および外周側に突起部(52、53)が設けられ、その内周突起部(52)と外周突起部(53)とが、径方向に重ならないように周方向にずらして配置された配管固定構造において、
多数の内周突起部(52)相互を連結する内周連結部(54)と、多数の外周突起部(53)相互を連結する外周連結部(55)とを、防振部材(5)に設けたことを特徴としている。
【0009】
これによると、外力で突起部(52、53)が倒されようとした場合、連結部(54、55)に生じる応力によって突起部(52、53)の倒れを防止することができるため、安定して所期の位置決め性や防振性能を得ることができる。
請求項2に記載の発明では、内周連結部(54)と配管(4)との間に隙間(57)を形成したことを特徴としている。
【0010】
これによると、内周連結部(54)は配管(4)と接しないため、内周連結部(54)と配管(4)との接触による悪影響、すなわち、振動吸収時に内周連結部(54)に圧縮応力が発生して防振性能が低下するのを未然に防止することができる。
請求項3に記載の発明では、外周連結部(55)とクランプ部材(6)との間に隙間(58)を形成したことを特徴としている。
【0011】
これによると、外周連結部(55)はクランプ部材(6)と接しないため、外周連結部(55)とクランプ部材(6)との接触による悪影響、すなわち、振動吸収時に外周連結部(55)に圧縮応力が発生して防振性能が低下するのを未然に防止することができる。
請求項4に記載の発明では、防振部材(5)に、外周突起部(53)よりもさらに外周側まで突出する係止用突起部(56)を形成し、クランプ部材(6)に、係止用突起部(56)が係止される係止部(61)を形成したことを特徴としている。
【0012】
これによると、係止用突起部(56)を係止部(61)に係止することにより、クランプ部材(6)に対する防振部材(5)の位置ずれや脱落を防止することができる。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1〜4は本発明の第1実施形態を示すもので、例えば図6に示したような車両用空調装置の配管4の固定に用いられる。
【0014】
図1は配管固定構造の全体構成を示しており、金属製(例えばアルミニウム)の配管4の外周にゴム製の防振部材5が配置され、この防振部材5の外周に金属製(例えば圧延鋼材)のクランプ部材6が配置されている。なお、防振部材5の材質は、耐熱性、耐水性、耐油性、耐オゾン性に優れるゴム(例えばEPDM)が望ましい。
【0015】
予め一体化された防振部材5とクランプ部材6とを配管4の外周に巻き付けるように組み付けた後、クランプ部材6の端部と中間部をビス10にて結合することにより、配管4に対して防振部材5およびクランプ部材6が一体化される。そして、クランプ部材6を車両のボデー7にボルト8とナット9で固定することにより、配管4がボデー7に固定される。
【0016】
防振部材5は、図2および図3にも示すように、配管4の周方向に延びる板部51が形成され、この板部51は、配管4の径方向厚さが約1mm、配管4の長手方向の幅が約23mmに設定されている。
この板部51の内周側には、板部51から配管4に向かって突出する内周突起部52が周方向に多数設けられ、この板部51の外周側には、板部51からクランプ部材6に向かって突出する外周突起部53が周方向に多数設けられている。
【0017】
ここで、各突起部52、53は、突出高さが約3mm、周方向厚さが約2mm、周方向ピッチが約6mmに設定され、さらに、配管4の長手方向に2分割されている。さらに、内周突起部52と外周突起部53とが径方向に重ならないように、両突起部52、53は周方向にずらして配置されており、隣接する内周突起部52と外周突起部53は、板部51における接続部51aによって接続されてている。
【0018】
また、隣接する内周突起部52同志は内周連結部54で連結され、隣接する外周突起部53同志は外周連結部55で連結され、各連結部54、55は、配管4の長手方向の厚さが約0.3mmに設定されている。
また、各連結部54、55は、配管4の径方向の高さが約2mmに設定され、各突起部52、53の突出高さよりも1mm程度低くなっている。従って、内周連結部54と配管4との間に隙間57が形成され、外周連結部55とクランプ部材6との間に隙間58が形成される。
【0019】
防振部材5には、クランプ部材6のスリット(係止部)61に係止される係止用突起部56が、周方向の両端付近と中央付近に、合計3個形成されている。この係止用突起部56は、スリット61の幅よりも小径の円柱部56aと、スリット61の幅よりも大径の鍔部56bとが形成されている。そして、係止用突起部56をスリット61に挿入し、鍔部56bをスリット61の縁部に係合させることにより、防振部材5とクランプ部材6とを一体化している。
【0020】
次に、上記構成になる本実施形態の防振作用について説明する。
本実施形態の配管固定構造を車両用空調装置の冷媒配管の固定に適用した場合、エンジンや圧縮機の振動、および圧縮機の吐出冷媒の圧力脈動がホースを介して配管4に伝達される。この配管4の振動に伴い、図4に示すように板部51における接続部51aが変形して振動が吸収され、この場合、接続部51aの剪断変形によって配管4の振動が吸収されるため良好な防振性能が得られ、ボデー7への振動伝達を著しく減少することができる。
【0021】
また、配管4に過大な振動入力があった場合は、図4の状態よりもさらに板部51が変形して、板部51が配管4やクランプ部材6に当接し、それ以上の配管4の過大な変位(振れ)を抑制して、配管4の折損を防止する。
以下、本実施形態の特徴について説明する。
従来は、突起部52、53に作用する外力により、図8に示すように防振部材5の突起部52、53が倒れてしまうことがあったが、本実施形態においては、外力で突起部52、53が倒されようとした場合、連結部54、55に応力が発生し、その応力(主に引張応力)によって突起部52、53の倒れを防止することができるため、安定して所期の位置決め性や防振性能を得ることができる。
【0022】
また、内周連結部54よりも内周突起部52の先端を突出させて、内周連結部54が配管4と接しないようにしているため、内周連結部54と配管4との接触による悪影響、すなわち、振動吸収時に内周連結部54に圧縮応力が発生して防振性能が低下するのを未然に防止することができる。
また、外周連結部55よりも外周突起部53の先端を突出させて、外周連結部55がクランプ部材6と接しないようにしているため、外周連結部55とクランプ部材6との接触による悪影響、すなわち、振動吸収時に外周連結部55に圧縮応力が発生して防振性能が低下するのを未然に防止することができる。
【0023】
さらに、係止用突起部56をスリット61に係止することにより、クランプ部材6に対する防振部材5の位置ずれや脱落を防止することができる。
(第2実施形態)
上記実施例では、防振部材5の各連結部54、55が板部51と繋がっているのに対し、図5に示す第2実施形態では、各連結部54、55は板部51と繋がっておらず、各連結部54、55と板部51との間には、隙間59a、59bが形成されている。
【0024】
第1実施形態では、各連結部54、55と板部51とが繋がっているため、振動吸収時の板部51の変形に伴って各連結部54、55も変形する。これに対し、本実施形態では、板部51が変形しても隙間59a、59bがなくなるまでは各連結部54、55は変形しない。従って、防振部材5のばね定数が小さくなる分、防振性能が向上する。
【0025】
(他の実施形態)
本発明は、車両用空調装置の冷媒配管に限らず、例えば車両のパワーステアリング用油圧配管にも適用可能である。また、車両用に限らず、例えば家庭用空調装置の冷媒配管に本発明を適用することもできる。
さらに、クランプ部材6とボデー7との間に、適宜形状のゴム製防振部材を介在させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明になる配管固定構造の第1実施形態を示す構成図である。
【図2】図1の防振部材の斜視図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】第1実施形態の作用説明に供する要部の拡大図である。
【図5】本発明になる配管固定構造の第2実施形態を示す要部の構成図である。
【図6】従来の配管固定構造を有する車両用空調装置の概略構成図である。
【図7】図6の配管固定構造の構成図である。
【図8】図6の配管固定構造の作用説明に供する要部の拡大図である。
【図9】図6の配管固定構造の作用説明に供する特性図である。
【符号の説明】
4…配管、5…防振部材、6…クランプ部材、7…ボデー(取付部材)、
51…板部、52…内周突起部、53…外周突起部、54…内周連結部、
55…外周連結部。
Claims (5)
- 配管(4)の外周にゴム製の防振部材(5)を配置し、この防振部材(5)の外周を保持するクランプ部材(6)を取付部材(7)に固定する配管固定構造であって、
前記防振部材(5)は、前記配管(4)の周方向に延びる板部(51)と、この板部(51)から前記配管(4)側に突出して先端が前記配管(4)に接するとともに周方向に多数配置された内周突起部(52)と、前記板部(51)から前記クランプ部材(6)側に突出して先端が前記クランプ部材(6)に接するとともに周方向に多数配置された外周突起部(53)とを有し、
前記防振部材(5)の内周突起部(52)と外周突起部(53)とが、径方向に重ならないように周方向にずらして配置された配管固定構造において、
前記多数の内周突起部(52)相互を連結する内周連結部(54)と、前記多数の外周突起部(53)相互を連結する外周連結部(55)とを、前記防振部材(5)に設けたことを特徴とする配管固定構造。 - 前記内周連結部(54)と前記配管(4)との間に隙間(57)を形成したことを特徴とする請求項1に記載の配管固定構造。
- 前記外周連結部(55)と前記クランプ部材(6)との間に隙間(58)を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の配管固定構造。
- 前記防振部材(5)に、前記外周突起部(53)よりもさらに外周側まで突出する係止用突起部(56)を形成し、前記クランプ部材(6)に、前記係止用突起部(56)が係止される係止部(61)を形成したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の配管固定構造。
- 前記配管(4)は、空調装置の冷媒回路を形成する冷媒用配管であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の配管固定構造。
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