JP4210134B2 - ウエーハ研磨治具及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコンウエーハ、ガリウムヒ素等のウエーハや基盤等を研磨加工する際に、これらを保持する保持盤、ブロックゲージ等を成すウエーハ研磨治具及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、シリコンウエーハやガリウムヒ素ウエーハ又は薄物基板等の平坦度の精度を必要とする加工物の研磨やラップ用の治具、測定用装置において、被加工物を保持するためにセラミックスからなるウエーハ研磨治具が用いられている。
【0003】
例えば、半導体ウエーハ等の板状体を研磨加工する際は、図2に示すようなウエーハ研磨治具1の貼付面1bに複数又は1枚のウエーハ5をワックス6で貼付して保持し、このウエーハ研磨治具1を研磨用クロス7を表面に配置した下定盤8上にセットし、研磨用クロス7とウエーハ5の接触部に研磨用スラリー6を流し込み、押圧力Fを加えながらウエーハ研磨治具1と下定盤8とを相対的に摺動させることで、ウエーハ5の表面を研磨やラップ加工する。
【0004】
その後、加工によって仕上げられたウエーハ5は、図3に示すようにスクレッパー10によりウエーハ研磨治具1より剥がされマガジン(不図示)へと収納される(特許文献1参照)。
【0005】
上記ウエーハ研磨治具1を作製するには、図5(a)に示すようなセラミックス体の角部に同図(b)、(c)に示すようなR状のダイヤ工具16を用いて研削加工し、面取り加工を施していた(特許文献2参照)。
【0006】
通常、フラット面2の鏡面加工であれば、ラップ加工することで鏡面が得られるが、上記R状の曲面3の加工にはこのラップ加工を行うことができない。そのため、上述のように研削加工によって加工していた。
【0007】
このような加工によって得られたウエーハ研磨治具1は、図6(a)に示すように、ウエーハ5を載置するフラット面2と曲面3を備え、このフラット面2と曲面3との境界4には0.01mm以上の段差Yが生じる場合、図6(b)に示すようにフラット面2が曲面3の高さが異なってエッジが生じる場合、図6(c)に示すように曲面ではなく、端部を平面とする場合があり、何れの場合もフラット面2と曲面3との境界4は連続した面とならず、フラット面2と曲面3との境界4を通る曲面3の接線となる規定線Aと上記フラット面2との成す角は8°〜15°程度と大きなものであった。
【0008】
また、例えばシリコンからなるウエーハ5と炭化珪素からなるウエーハ研磨治具1のフラット面2との摩擦係数は、0.36程度であった。
【0009】
〔特許文献1〕
特開平06−270055号公報
〔特許文献2〕
特開2001−71260号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、今日例えば半導体用チップの配線ルールの微細化等に伴い、ウエーハ5の高精度化が望まれており、ウエーハ5のおもて面のみならず、裏面の高精度化も要求されている。
【0011】
上述の方法で得られたウエーハ研磨治具1には、図6(a)〜(c)に示すようなエッジや段差が発生し、また何れも曲面3の表面に研削加工によるダイヤモンドの加工スジが残り、表面粗さが悪く加工エッジ部も残ってしまう。
【0012】
そのため、単にカケ防止のために外周部に面取りを施すという方法では、ウエーハ5の加工完了後にウエーハ研磨治具1よりウエーハ5を剥がすときにウエーハ研磨治具1のエッジや段差に、ウエーハ5の裏面が接触することで微細なキズが発生し、ウエーハ5の規格を満足できなくなるという問題が生じていた。
【0013】
つまり、従来はウエーハ5とウエーハ研磨治具1との間の摩擦係数が大きいためウエーハ5の裏面に微細なキズが発生するという問題があった。
【0014】
また、外周部の形状が平面状のためにセラミックス同士や固いものと接触したときに、ウエーハ研磨治具1の外径コーナー部11がカケてしまい、それがウエーハ5へのキズにつながるという問題があった。
【0015】
従って、ウエーハ5は剥がすときにウエーハ研磨治具1の上を通過するために、摩擦係数を小さくしたり、外径コーナー部11の形状をR形状にしたり、面粗さを小さくしたりしなければならなかった。
【0016】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであって、その目的は、ウエーハ研磨治具1の外周部形状や面仕上げ等の加工方法を見直すことにより、ウエーハ5の裏面にキズを付けることのないウエーハ研磨治具1を提供するものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明のウエーハ研磨治具は、セラミックスからなり、1枚のウエーハを載置するためのフラット面と、その周囲の全周に上記ウエーハを剥がす際に上記ウエーハを移動させるためのR状の曲面とを有するウエーハ研磨治具であって、上記フラット面と曲面との境界を通る曲面の接線となる規定線と上記フラット面との成す角が3°以下であることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明のウエーハ研磨治具は、セラミックスからなり、1枚のウエーハを載置するためのフラット面と、その周囲の全周に上記ウエーハを剥がす際に上記ウエーハを移動させるためのR状の曲面とを有するウエーハ研磨治具であって、上記フラット面及び曲面にシリコンウエーハとの摩擦係数が0.3以下のDLCコーティングを施してなり、上記フラット面と曲面との境界を通る曲面の接線となる規定線を設けたとき、該規定線と上記フラット面との成す角が10°以下であることを特徴とするものである。
【0020】
またさらに、本発明のウエーハ研磨治具は、上記フラット面と曲面の境界が表面粗さ(Ra)0.2μm以下であることを特徴とするものである。
【0021】
さらにまた、本発明のウエーハ研磨治具は、上記ウエーハ研磨治具の側面部が、上記フラット面に対して垂直方向の断面において曲率半径が20〜50mmの曲面状であることを特徴とするものである。
【0022】
またさらに、本発明のウエーハ研磨治具は、枚葉式研磨装置に用いることを特徴とするものである。
【0023】
さらにまた、本発明のウエーハ研磨治具の製造方法は、上記ウエーハ研磨治具の製造方法であって、所定形状のウエーハ研磨治具に上記フラット面及び曲面を加工した後、フラット面と曲面との境界にダイヤモンドパウダーを混合した軽油を塗布し、樹脂を装着した研磨機によって研磨することを特徴とするものである。
【0024】
これによって、ウエーハ研磨治具のフラット面と曲面の境界は連続した曲面に形成され、ウエーハを剥がす際にエッジや段差でウエーハ裏面にキズを付けることなく、剥離作業ができるようになる。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明のウエーハ研磨治具1の一実施形態を示し、(a)は部分拡大断面図、(b)は正面図である。
【0027】
本発明のウエーハ研磨治具1は、セラミックスからなり、1枚のウエーハを載置するためのフラット面2と、その周囲の全周にウエーハを剥がす際にウエーハを移動させるためのR状の曲面3とを有する円板形状のものであり、炭化珪素質セラミックスなどの黒色系セラミックスやアルミナ質セラミックスなどの白色系セラミックスからなる。
【0028】
このウエーハ研磨治具1は、図2に示すような半導体ウエーハ等の板状体を研磨加工する研磨装置に用いられ、ウエーハ研磨治具1の一方のフラット面2を貼付面とし、1枚のウエーハ5をワックス6で貼付して保持し、このウエーハ研磨治具1を研磨用クロス7を表面に配置した下定盤8上にセットする。
【0029】
シリコンやガリウムヒ素等のウエーハ5を研磨するにあたっては、ウエーハ5をウエーハ研磨治具1に貼り付け、そのウエーハ研磨治具1でウエーハ5を下定盤8に貼られた研磨用クロス7に押し付けて、その研磨用クロス7とウエーハ5の接触部に研磨スラリー9を流し込み、押圧力Fを加えながらウエーハ研磨治具1と下定盤8を相対的に摺動させることで、ウエーハ5の表面を研磨するようになっている。その後、加工によって仕上げられたウエーハ5は、図3に示すようなスクレッパー10によりウエーハ研磨治具1より剥がされマガジン(不図示)へと収納される仕組みである。
【0030】
ここで、本発明のウエーハ研磨治具1において、図1に示すようにウエーハ5を載置するフラット面2と曲面3との境界4を通る曲面3の接線となる規定線Aと上記フラット面2との成す角θが3°以下であることが重要である。
【0031】
これにより、フラット面2と曲面3との境界4には研削スジがない滑らかな面とすることができるため、ワックス6によりウエーハ研磨治具1に貼られたウエーハ5をスクレッパー10で剥がした際に、ウエーハ5がウエーハ研磨治具1の曲面3上を滑ってもウエーハ5の裏面にキズが発生するのを有効に防止することができる。従来は、ウエーハ研磨治具1のフラット面2と曲面3との境界4は、連続した面で形成されておらず、図6に示すように境界4には0.4μmを超える段差Yや、エッジが生じ、上述と同様に境界4を通る曲面3の接線となる規定線Aを設けた場合、その規定線Aと上記フラット面2との成す角θが8°〜15°程度の大きなものとなり、ウエーハ5をウエーハ研磨治具1から剥がす際に、フラット面2と曲面3との境界4にあるエッジでウエーハ5の裏面にキズが生じやすいものであった。
【0032】
なお、上記フラット面2と曲面3との境界4とは、フラット面2と曲面3とで形作る外部コーナーにおける内部の円を示しており、図1(b)の破線部を示すものであり、フラット面2の水平部から曲率が始まる境界線を境界4とする。
【0033】
また、境界4を通る曲面3の接線となる規定線Aと上記フラット面2との成す角θはコンターレコード(形状測定器)によって測定することができる。
【0034】
さらに、好ましい範囲としては、規定線Aと上記フラット面2との成す角が2°以下であることが望ましい。
【0035】
また、図1(c)は本発明のウエーハ研磨治具の他の実施形態を示す正面図であり、上記フラット面2及び曲面3にウエーハ5との摩擦係数が0.3以下のDLCコーティング18を施すものである。
【0036】
このようにDLCコーティング18を施すことでウエーハ5とフラット面2及び曲面3との抵抗が小さくなり、ウエーハ5の裏面に微細なキズが生じるのを防止することができる。
【0037】
さらに、上記DLCコーティング18は、ウエーハ5との摩擦係数が0.3以下のものであり、DLCコーティング18の厚みを1〜3μmとすることによって摩擦係数を上記の値にすることができる。ここで、上記摩擦係数が0.3を超えると、ウエーハ5の裏面に微細なキズを生じやすい。
【0038】
上記摩擦係数0.3以下のDLCコーティングを形成するには、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)の膜を高真空中のアーク放電プラズマで炭化水素ガスを分解し、プラズマ中のイオンや励起分子をウエーハ研磨治具1に電気的に加速しエネルギーをもってぶつけてやることにより形成する。まず、ウエーハ研磨治具1をチャンバー内の所定の位置にセットする。ここで、コーティングを行う前に研磨治具1のコーティング面(フラット面2及び曲面3)以外を金属の治具で保護する必要がある。特に金属では錆やバリ等の欠陥があることにより、コーティングがうまくできない場合もあるが、セラミックスにおいては、このような心配はない。セットが完了したら、上述の通り高真空中のアーク放電プラズマで炭化水素ガスを分解し、プラズマ中のイオンや励起分子を研磨治具に電気的に加速しエネルギーをもってぶつけてやることにより形成する。
【0039】
なお、摩擦係数の測定方法は、JIS R 1613(ボールオンディスク法)に準拠して行う。ここでは、炭化珪素からなるディスク(φ40mmの円盤形状)を回転駆動させる装置に取り付け、回転軸の振れを0.02mm以下、接触部における回転軸方向の振れを0.05mm以下にしてテストする。この円盤上にシリコンの球(直径9〜10mm)を下記の条件で押し当て磨耗痕の形状より磨耗体積を算出する。
【0040】
条件 荷重:10N
円盤回転速度:64回転/分
摺動距離:2000m
試験時温度:23℃±1℃、相対湿度50±10%の大気中
さらに、上記研磨用治具1においては、フラット面2と曲面3との境界4を通る曲面3の接線となる規定線Aを設けたとき、該規定線Aと上記フラット面2との成す角が10°以下であることが重要であり、これによりウエーハ5の裏面の微細なキズを防止することができる。
【0042】
さらに、本発明のウエーハ研磨治具1は、上記フラット面2と曲面3の境界4が表面粗さ(Ra)0.2μm以下であることが好ましく、これにより、ウエーハ研磨治具1の曲面3とウエーハ5との摩擦抵抗がより小さくなるため、すべりが良くなり、ウエーハ5を剥がす際にウエーハ研磨治具1の曲面3と接触する際にウエーハ5の裏面のキズを防止することができる。一方、境界4の表面粗さが(Ra)で0.2μmを越えると、研削加工の加工スジが残っており、また表面の凹凸が大きいため、この凹凸によってウエーハ5へのキズを発生させる原因になるためである。
【0043】
またさらに、図1(d)に示すように、ウエーハ研磨治具1の側面部17が、上記フラット面2に対して垂直方向の断面において曲率半径20〜50mmの曲面状とすることが好ましく、ウエーハ研磨治具1同士が接触した場合や、固いものとの接触した場合にも曲面3と直接接触することはなく、曲面3のカケを防止できる。
【0044】
上記側面部17の曲率半径が20mm未満となると、ウエーハ研磨治具1の厚みは20mm程度より大きいため、この数値より小さくなると曲面状につながらなくなることから厚みとの兼ね合いは避けられない。一方、曲率半径が50mmを超えると、平面に近い形状となり曲面3にキズが付きやすくなり、ウエーハ5を剥がす際にキズを付けるおそれがある。
【0045】
なお、側面部17を曲面状に加工する手段としては、形状ダイヤによる研削加工等によって行うことができる。
【0046】
またさらに、本発明のウエーハ研磨治具1は、枚葉式の研磨装置に用いることが好ましい。
【0047】
枚葉式の研磨装置では、1枚のウエーハ研磨治具1に1枚のウエーハ5を載置するため、上述のようにスクレッパー10で剥がして、曲面3に沿って移動させるため、ウエーハ5の裏面が境界4と接触することとなり、この境界4が滑らかな面であると、ウエーハ5にキズが付くのを有効に防止することができ、バッチ式のようにスクレッパー10での剥がし方向を内側に向けるような場合に比べて大きな効果を発揮する。
【0048】
ここで、本発明のウエーハ研磨治具1の製造方法について説明する。
【0049】
まず、セラミックス材料として、炭化珪素質セラミックス、窒化珪素質セラミックス、アルミナ質セラミックス等の材料でかつ吸水率が0%に近い緻密質であることが好ましい。これによって鏡面加工の際にその表面粗さを小さくなるように加工することができる。
【0050】
この原料粉末をラバープレス成形法等によって所定の成形体を得、その成形体を切削加工にて製品形状に加工し、約2050℃程度で焼成した後、得られた焼結体をロータリー研削盤により厚み研削を行う。加工方法としては、ワークをテーブルに乗せ、治具で固定し、ダイヤモンドホイールを用いて研削シロ、ソリ量に応じて片面を研削加工する。次に、もう片面も同じように加工し、厚み寸法を決める。
【0051】
続いて、万能研削盤を用いて外径加工を行うが、ワークを機械にてチャッキングし、ワークの芯出しを行う。そして、ダイヤモンドホイールを用いて外径加工を行う。さらにR形状ダイヤモンドホイールを用いて周囲にR面取り加工を行う。
【0052】
その後、ラップ機を用いてラップ加工を行うが、ダイヤモンドスラリーを供給しながら定盤上で荒ラップ加工を施して表面の研削スジを除去する。続いて同様に仕上げラップを行って表面形状を作製する。
【0053】
ここで外径コーナー部11の境界4の角θを3°以下でつなぐためには、図4(a)に示すように、回転テーブル13の上にウエーハ研磨治具1を置き、動かないようにしっかり固定した後、50〜80rpmで回転テーブル13を回転させ、ダイヤモンド砥粒をちりばめたダイヤモンドペーパー14でフラット面2と曲面3との境界4にダイヤモンドペーパー14を当て、少量ずつ研削加工していく方法が良い。このときダイヤモンドペーパー14の番手を65番の粗いダイヤモンドペーパー14から順に300番、400番へとダイヤモンドペーパー14の目が小さいものへ交換しながら仕上げることが望ましい。最初から400番の仕上げ用ダイヤモンドペーパー14を使用すると、段差を除去するのに長時間要する。このようにして、フラット面2と曲面3との段差をこの時点で0.4μm以下に仕上げる。
【0054】
さらに、フラット面2と曲面3との境界4の表面粗さを(Ra)で0.4μm以下の鏡面仕上げとするには、図4(b)の回転テーブル13の上にウエーハ研磨治具1を置き、動かないようにしっかりと固定した後、50〜80rpmで回転テーブル13を回転させ、フラット面2と曲面3の境界4に粒径2μm以下のダイヤモンドパウダーを混合した軽油をハケ等で塗布し、研磨機15に円形のPVA(ポリビニルアルコール)等の樹脂を装着して、鏡面が必要な部分に研磨を施す。上記ダイヤモンドパウダーを混合した軽油の油分が切れ、乾燥してきたら再度ハケでダイヤモンドパウダーを混合した軽油を塗布して同じようにPVAで研磨していく。これを繰り返すことで、曲面3が表面粗さ(Ra)で0.2μm以下の鏡面に仕上がっていく。
【0055】
ここで、通常の研磨に用いるダイヤモンドパウダーに加え、軽油を混合させる理由として、ウエーハ研磨治具1とPVAが接触することで熱が発生し、例えば水であればすぐに蒸発してしまうが、軽油を使用することで水等の粘度の小さな液体ではワークに塗布した際、表面張力により玉状になり、すぐに流れ落ちてしまうが軽油はワーク上に残留しやすく曲面の加工においても鏡面が得られやすいためである。
【0056】
通常、フラット面2の鏡面加工であれば、銅盤の上でコロイダルシリカやダイヤモンドスラリー等を注入し、ラップ加工することで鏡面が得られるが、このようなR状の曲面3等の部分的な加工にはこのラップ方法では加工することができない。そのため、通常のR面取り方法は研削加工によるため、これではダイヤモンドのスジが残り、表面粗さが悪く加工エッジ部も残ってしまう。
【0057】
これに対し、軽油を用いて磨くことにより、曲面3であっても鏡面加工を施すことができ、ウエーハ研磨治具1として用いた際にウエーハ5を剥がす際にもキズが生じることを防止することができる。
【0058】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されることはなく、要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。
【0059】
【実施例】
次いで、本発明の実施例を説明する。
【0060】
(実施例1)
先ず、図1に示すようなウエーハ研磨治具1を得るため、図4(a)、(b)に示す方法で直径がφ210mm、厚さ20mmの炭化珪素質セラミックスからなるウエーハ研磨治具試料を作製した。曲面の加工には、図4に示す通りダイヤモンドペーパーで段差を小さくし、粒径2μm以下のダイヤモンドパウダーを混合した軽油をハケで塗布して、PVAを装着した研磨機で鏡面研磨を施した。
【0061】
また、同様に図5に示す方法によってR状のダイヤ工具16を用いて研削加工して面取りを施し、直径がφ210mm、厚さ20mmの炭化珪素質セラミックスからなるウエーハ研磨治具試料を作製した。
【0062】
各ウエーハ研磨治具試料のフラット面2と曲面3との境界4を通る曲面3の接線となる規定線Aを引き、規定線とフラット面2との成す角θをコンターレコードによって測定した。また、フラット面2と曲面3との境界4の表面粗さを面粗さ計にて測定した。さらに、フラット面2と曲面3との境界4の段差をコンターレコードで測定した。
【0063】
そして、各試料にウエーハ5をワックス6にて貼付け、図3に示すように樹脂製のスクレッパー10をウエーハ5の外周部に押し当て、剥がれるまで力を加えて、剥がれた後のウエーハ5の裏面におけるキズの有無をマイクロスコープを使用し、倍率500倍で確認した。
【0064】
さらに、加工方法(鏡面、研削)の違う摩擦係数測定用(φ40×5T)のサンプルを製作し、JIS R 1613(ボールオンディスク法)に準拠して摩擦係数を測定した。
【0065】
結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1の結果より、フラット面2と曲面3との境界4を通る曲面3の接線となる規定線Aと、フラット面2との成す角θが3°以下の試料(No.1〜3と5〜7)は、表面粗さがRaで0.2μm以下、フラット面2と曲面3との境界4の段差も0.4μm以下と非常に小さく、ウエーハ5の裏面にキズは見られなかった。
【0068】
これに対し、フラット面2と曲面3との境界4を通る曲面3の接線となる規定線Aと、フラット面2との成す角θが3°を超える試料(No.4、8〜11)は、表面粗さがRa0.4μm以下でフラット面2と曲面3との境界4の段差が0.4μm以下であってもウエーハ5の裏面にキズが発生した。
【0070】
このことから、フラット面2と曲面3との境界4を通る曲面3の接線となる規定線Aを引き、この規定線Aとフラット面2との成す角θを3°以下とし、フラット面2と曲面3との境界4の表面粗さをRa0.2μm以下、及び段差を0.4μm以下にすることによってウエーハ5にキズを生じないことがわかった。
【0071】
(実施例2)
さらに、上記図5と同様の方法で作製したウエーハ研磨治具試料のフラット面2と曲面3とにDLCコーティングを施した試料を作製した。このときコーティングの膜厚は2μmとした。
【0072】
各ウエーハ研磨治具試料のフラット面2と曲面3との境界4を通る曲面3の接線となる規定線Aを引き、この規定線Aとフラット面2との成す角θをコンターレコードによって測定した。また、フラット面2と曲面3との境界4の表面粗さを面粗さ計にて測定した。
【0073】
さらに、加工方法(鏡面、研削)の違う摩擦係数測定用(φ40mm×厚み5mm)のサンプルを製作し、JIS R 1613(ボールオンディスク法)に準拠して摩擦係数を測定した。
【0074】
そして、各試料にウエーハ5をワックス6にて貼付け、図3に示すように樹脂製のスクレッパー10をウエーハ5の外周部に押し当て、剥がれるまで力を加えて、剥がれた後のウエーハ5の裏面におけるキズの有無をマイクロスコープを使用し、倍率500倍で確認した。
【0075】
結果を表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
表2の結果より、摩擦係数が0.3以下の試料でフラット面2と曲面3との境界4を通る曲面3の接線となる規定線Aと、フラット面2との成す角θが10°以下の試料(No.12〜16、18〜22)では、ウエーハ5の裏面にキズは見られなかった。
【0078】
これに対し、フラット面2と曲面3との境界4を通る曲面3の接線となる規定線Aと、フラット面2との成す角θが10°を超える試料(No.17、23)は、表面粗さがRa0.3μm以下であってもウエーハ5の裏面にキズが発生した。
【0079】
【発明の効果】
本発明のウエーハ研磨治具によれば、セラミックスからなり、1枚のウエーハを載置するためのフラット面と、その周囲の全周に上記ウエーハを剥がす際に上記ウエーハを移動させるためのR状の曲面とを有するウエーハ研磨治具であって、上記フラット面と曲面との境界を通る曲面の接線となる規定線と上記フラット面との成す角が3°以下であることにより、エッジや段差でウエーハの裏面にキズが発生するのを防止することができる。
【0080】
また、本発明のウエーハ研磨治具は、セラミックスからなり、1枚のウエーハを載置するためのフラット面と、その周囲の全周に上記ウエーハを剥がす際に上記ウエーハを移動させるためのR状の曲面とを有するウエーハ研磨治具であって、上記ウエーハ研磨治具のフラット面及び曲面にシリコンウエーハとの摩擦係数が0.3以下のDLCコーティングを施してなり、上記フラット面と曲面との境界を通る曲面の接線となる規定線を設けたとき、該規定線と上記フラット面との成す角が10°以下であることから、ウエーハの裏面にキズを付けることなく剥離作業ができる。
【0081】
さらに、本発明のウエーハ研磨治具は、フラット面と曲面との境界をRa0.2μm以下の鏡面仕上げとしたことにより、ウエーハ研磨治具の外径コーナー部のすべりが良くなり、ウエーハを剥がす際にウエーハ研磨治具外周のコーナー部と接触する際の摩擦抵抗を極力小さくし、ウエーハのキズを防止することができる。
【0082】
またさらに、本発明のウエーハ研磨治具は、側面部が上記フラット面に対して垂直方向の断面において曲率半径20〜50mmの曲面状であることから、カケやワレの頻度を少なくでき、長寿命化を図れるとともにコーナー部のカケを防止できるのでウエーハのキズ防止となる。
【0083】
本発明のウエーハ研磨治具は、枚葉式研磨装置に用いることにより、ウエーハをスクレッパーによりウエーハ研磨治具から剥がす時、キズの発生を防止でき、大きな効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明のウエーハ研磨治具の一実施形態を示す平面図、(b)は同図(a)の部分拡大断面図、(c)は本発明のウエーハ研磨治具の他の実施形態を示す正面図、(d)は本発明のウエーハ研磨治具のフラット面に対して垂直方向の部分断面図である。
【図2】ウエーハ研磨治具の使用状態を示す断面図である。
【図3】ウエーハがウエーハ研磨治具より取り外される状態を示す概略図である。
【図4】(a)、(b)はウエーハ研磨治具の加工方法を示す概略図である。
【図5】(a)〜(c)は従来のウエーハ研磨治具の加工方法を示す説明図である。
【図6】(a)〜(c)は従来のウエーハ研磨治具のフラット面と曲面の境界を示す部分拡大側面図である。
【符号の説明】
1:ウエーハ研磨治具
1b:貼り付け面
2:フラット面
3:曲面
4:境界
5:ウエーハ
6:ワックス
7:研磨用クロス
8:下定盤
9:研磨スラリー
10:スクレッパー
11:外径コーナー部
13:回転テーブル
14:ダイヤモンドペーパー
15:研磨機
16:Rダイヤ工具
17:側面部
18:DLCコーティング
A:規定線、θ:角度
Claims (6)
- セラミックスからなり、1枚のウエーハを載置するためのフラット面と、その周囲の全周に上記ウエーハを剥がす際に上記ウエーハを移動させるためのR状の曲面とを有するウエーハ研磨治具であって、上記フラット面と曲面との境界を通る曲面の接線となる規定線と上記フラット面との成す角が3°以下であることを特徴とするウエーハ研磨治具。
- セラミックスからなり、1枚のウエーハを載置するためのフラット面と、その周囲の全周に上記ウエーハを剥がす際に上記ウエーハを移動させるためのR状の曲面とを有するウエーハ研磨治具であって、上記フラット面及び曲面にシリコンウエーハとの摩擦係数が0.3以下のDLCコーティングを施してなり、上記フラット面と曲面との境界を通る曲面の接線となる規定線を設けたとき、該規定線と上記フラット面との成す角が10°以下であることを特徴とするウエーハ研磨治具。
- 上記フラット面と曲面との境界が表面粗さ(Ra)0.2μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のウエーハ研磨治具。
- 上記ウエーハ研磨治具の側面部が、上記フラット面に対して垂直方向の断面において曲率半径が20〜50mmの曲面状であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のウエーハ研磨治具。
- 上記ウエーハ研磨治具は枚葉式研磨装置に用いることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のウエーハ研磨治具。
- 請求項1乃至5の何れかに記載のウエーハ研磨治具の製造方法であって、所定形状のウエーハ研磨治具を得るため上記フラット面及び曲面を加工した後、フラット面と曲面との境界にダイヤモンドパウダーを混合した軽油を塗布し、樹脂を装着した研磨機によって研磨加工することを特徴とするウエーハ研磨治具の製造方法。
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