JP4209731B2 - ステッパモータの駆動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステッパモータの駆動装置に関し、特に車載メータ等に用いられるステッパモータの初期化処理を改善したステッパモータの駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車速を表示するスピードメータやエンジンの回転数を表示するタコメータ等の車載メータには、指示精度や価格的な理由で近年ステッパモータが多用されている。
【0003】
しかしながら、このようなステッパモータを用いた車載メータを搭載する車両においては、車両の振動やノイズ等により発生した誤った駆動信号等により、ステッパモータの回転に連動する指針の本来移動すべき移動量と実際の移動量との間に差異が生じてしまう場合がある。
【0004】
そこで、このようなステッパモータを用いた車載メータでは、たとえば、イグニッションスイッチのオンのタイミングで、ステッパモータをストッパ方向に逆回転させて、指針をストッパで定められるゼロ位置に戻す初期化処理が行われている。
【0005】
この初期化処理においては、ステッパモータにより位置制御される表示指針がそのゼロ位置を定めたストッパに接触したかどうかを検出するために、ステッパモータの回転子の回転により発生する誘導電圧を検出し、検出された誘導電圧が所定の閾値以下になったときに、表示指針がゼロ位置に設定されたストッパに当たって停止したと判定するゼロ位置検出処理を行っている。
【0006】
以下、このゼロ位置検出処理について図19および図20を用いて説明する。
【0007】
図19は、ゼロ位置検出処理における各励磁ステップ、ゼロ位置検出励磁パターン、検出タイミング信号および誘導電圧の関係を示す図である。図20は、図19の各励磁ステップと回転子の回転パターンの関係を示す図である。長方形の中の数字はステップ番号を示す。なお、これらの図においては、ゼロ位置検出処理時には矢印で示す方向にステッパモータの回転子が回転するものと想定する。この回転子には、それぞれ3つのN極およびS極が交互に均等に着磁されている。
【0008】
回転子を回転させるための励磁信号は、励磁信号(励磁パルス)P1、P2、P3およびP4からなり、それらはH(ハイレベル)およびL(ローレベル)の組み合わせにより構成される。このHはたとえば5ボルトであり、Lは0ボルトである。励磁パルスP1およびP2は、一方の励磁コイル1a1の両端a,bに供給される。また、励磁パルスP3およびP4は、他方の励磁コイル1a2の両端a,bに供給される。
【0009】
回転子にギア連結された指針がストッパで定められたゼロ位置方向に移動するように回転子を逆回転させるためのゼロ位置検出励磁パターンの1サイクルは、それぞれ均等時間が割り当てられた8つの励磁ステップ3、2、1、8、7、6、5および4で構成され、ステッパモータはハーフステップ駆動方式で駆動される。
【0010】
励磁ステップ1の励磁信号(P1、P2、P3およびP4)とそれに対応する回転子の回転パターンが同期しており、励磁ステップが3、2、1、8、7、6、5および4の順に移行するにしたがって、回転子は、図20に示すように15度ずつ回転していく。たとえば、励磁ステップ3から励磁ステップ2に遷移する際には、回転子はその励磁信号(P1、P2、P3およびP4)によって、回転角0度から15度に角度変移する。以下の各励磁ステップ間の角度変移量も同様に15度である。なお、励磁ステップ4から次のサイクルの励磁ステップ3に移行する際の角度変移量も15度である。
【0011】
このような8つの励磁ステップからなるサイクルが、指針がストッパに接触するまで、すなわち、回転子が回転できなくなり、励磁コイルにより検出される誘導電圧値が閾値を下回るまで繰り返される。
【0012】
ゼロ位置検出の検出タイミング信号は、励磁コイル1a1が無励磁状態となるタイミングで、すなわち、励磁コイル1a1の両端aおよびbに供給される励磁パルスP1およびP2がL(ゼロボルト)になる励磁ステップ1および5と、励磁コイルC2の両端aおよびbに供給される励磁パルスP3およびP4がL(ゼロボルト)になる励磁ステップ3および7で、Hになるように設定されている。この検出タイミング信号に応答して、一方の端部が接地されかつ他方の端部が開放された励磁コイル1a1および1a2により検出される誘導電圧が、閾値(基準電圧V)と比較される。指針がストッパで定められたゼロ位置方向に移動するように回転子を回転させたとき、指針がストッパに接触すると、誘導電圧は理論的にはゼロになるはずなので、閾値を下回ることになり、この時点でゼロ位置検出が行われたことになる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上述のゼロ位置検出処理では、誘導電圧の検出サイクルがハーフステップ駆動方式になっており、図21のベクトル図で示すように、コイルA相(励磁コイル1a1)とコイルB相(励磁コイル1a2)における1相励磁ステップと2相励磁ステップとで駆動トルクの大きさが変わるため、駆動トルクが一定ではなく、また、回転子の回転速度が変わるため、回転が非円滑になり、図22に示すように、検出される誘導電圧値がかなりの変動幅で変動し、ゼロ位置の誤検出が発生する可能性がある。
【0014】
そこで本発明は、上述した従来の問題点に鑑み、ゼロ位置検出処理時にステッパモータの回転を安定させ、安定した回転時誘導電圧を得てゼロ位置の誤検出を防止することができるステッパモータの駆動装置を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、励磁コイルおよび前記励磁コイルの励磁状態の変化に応じて回転する回転子を有するステッパモータと、前記回転子の回転に連動する被駆動部材と、前記被駆動部材をゼロ位置に機械的に停止させるストッパと、前記励磁コイルの励磁状態を制御する制御手段と、前記回転子の回転に応じた磁束変化により発生する誘導電圧を検出する検出素子と、前記検出素子で検出された前記誘導電圧に基づき、前記被駆動部材が前記ストッパによりゼロ位置に停止させられたか否かを検出するゼロ位置検出手段とを備え、前記制御手段は、通常動作時には、入力される角度データ信号に基づき前記回転子をマイクロステップ駆動方式で正逆回転させるための複数の励磁ステップで電気的1サイクルが構成される第1の励磁パターンを生成して前記励磁コイルに供給し、前記被駆動部材をゼロ位置へ戻すゼロ位置検出処理時には、前記第1の励磁パターン中の複数の励磁ステップの一部を複数の誘導電圧検出用励磁ステップに変換した第2の励磁パターンを生成して前記励磁コイルに供給し、前記第1の励磁パターンにおける複数の励磁ステップは、デューティ比が0%から100%の間で段階的に増加または減少するようにPWM制御された励磁信号を含み、前記第2の励磁パターンにおける前記複数の誘導電圧検出用励磁ステップは、デューティ比0%または100%の励磁信号を含み、前記第2の励磁パターンは、前記1サイクルにおける電気的90度毎が、前記誘導電圧を検出するための前記複数の誘導電圧検出用励磁ステップと、複数の回転用励磁ステップとを含み、前記複数の誘導電圧検出用励磁ステップの合計時間長を第1の所定時間長とし、前記複数の回転用励磁ステップの合計時間長を第2の所定時間長としたとき、前記第2の所定時間長は前記第1の所定時間長より長く設定されていることを特徴とするステッパモータの駆動装置に存する。
【0016】
請求項1記載の発明によれば、ステッパモータの駆動装置は、励磁コイルおよび励磁コイルの励磁状態の変化に応じて回転する回転子を有するステッパモータと、回転子の回転に連動する被駆動部材と、被駆動部材をゼロ位置に機械的に停止させるストッパと、励磁コイルの励磁状態を制御する制御手段と、回転子の回転に応じた磁束変化により発生する誘導電圧を検出する検出素子と、検出素子で検出された誘導電圧に基づき、被駆動部材がストッパによりゼロ位置に停止させられたか否かを検出するゼロ位置検出手段とを備え、制御手段は、通常動作時には、入力される角度データ信号に基づき回転子をマイクロステップ駆動方式で正逆回転させるための複数の励磁ステップで電気的1サイクルが構成される第1の励磁パターンを生成して励磁コイルに供給し、被駆動部材をゼロ位置へ戻すゼロ位置検出処理時には、第1の励磁パターン中の複数の励磁ステップの一部を複数の誘導電圧検出用励磁ステップに変換した第2の励磁パターンを生成して励磁コイルに供給し、第1の励磁パターンにおける複数の励磁ステップは、デューティ比が0%から100%の間で段階的に増加または減少するようにPWM制御された励磁信号を含み、第2の励磁パターンにおける複数の誘導電圧検出用励磁ステップは、デューティ比0%または100%の励磁信号を含み、第2の励磁パターンは、1サイクルにおける電気的90度毎が、誘導電圧を検出するための複数の誘導電圧検出用励磁ステップと、複数の回転用励磁ステップとを含み、複数の誘導電圧検出用励磁ステップの合計時間長を第1の所定時間長とし、複数の回転用励磁ステップの合計時間長を第2の所定時間長としたとき、第2の所定時間長は第1の所定時間長より長く設定されているので、ゼロ位置検出処理時に、ステッパモータの回転が安定すると共に誘導電圧検出用のサンプリング時間を確保することができ、それにより安定した回転時誘導電圧を得ることができ、ゼロ位置の誤検出を防止することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本発明に係るステッパモータの駆動装置の実施の形態を用いた車載メータの構成図である。車載メータは、たとえばスピードメータであり、固定子(図示しない)に互いに直交する位置に配置された2つの励磁コイル1a1および1a2と、N極およびS極が交互に3極づつ着磁され、励磁コイル1a1および1a2の励磁状態の変化に追従して回転する回転子1bを有するステッパモータ1と、ステッパモータ1を駆動制御するための駆動回路4とを備えている。
【0023】
車載メータは、さらに、回転子1bの回転駆動に連動する被駆動部材としての指針2と、回転子1bの回転駆動を指針2に伝えるギア3と、指針2を機械的ゼロ位置で接触させて停止させるストッパ5とを備えている。なお、ストッパ5と指針2の接触によるゼロ位置設定に代えて、ギヤ3から突出する被駆動部材としてのストッパ片6と、ゼロ位置に相当する位置に別個に設けられたストッパ5′との接触によるゼロ位置設定とする構成にしても良い。
【0024】
駆動回路4は、図2に示すように、制御手段としてのマイクロコンピュータ41(以下、マイコン41という)を備えている。マイコン41は、プログラムに従って各種の処理を行う中央演算ユニット(CPU)41aと、メモリ41bと、モータ駆動回路41cと、ゼロ位置検出回路41dとを備えている。
【0025】
CPU41aは、車速センサ(図示しない)からの速度情報に基づき算出された角度データ信号D1と、イグニッションスイッチ(図示しない)のイグニッションオン操作に基づくHレベルの初期化指令信号S1が入力され、モータ駆動回路41cから励磁コイル1a1,1a2の両端a,bに励磁信号S1、S2、S3およびS4を出力する。
【0026】
ゼロ位置検出開路41dは、励磁コイル1a1および1a2の一端aまたはbにそれぞれ接続された、I/F(インターフェース)回路42a、42b、42cおよび42dを介して誘導電圧V1,V2,V3およびV4が入力され、ゼロ位置判定信号をCPU41aに供給する。
【0027】
CPU41aは、通常動作時には、角度データ信号D1に応じて、回転子1bをマイクロステップ駆動方式で正逆回転させるための複数の励磁ステップで電気的1サイクルが構成される第1の励磁パターンを生成して励磁コイル1a1、1a2に供給し、励磁コイル1a1、1a2の励磁状態を制御することにより、角度データ信号D1に対応して回転子1bを正方向(Y2)または逆方向(Y1)に正逆回転させるようにステッパモータ1を駆動制御する。また、CPU41aは、初期化処理動作時には、初期化指令信号S1に応じて、第1の励磁パターン中の複数の励磁ステップの一部を誘導電圧検出用励磁ステップに変換した第2の励磁パターンを生成して励磁コイル1a1、1a2に供給し、マイクロステップ駆動方式で励磁コイル1a1、1a2の励磁状態を制御することにより、回転子1bを、指針2がストッパ5に向かう方向(すなわち、Y1方向)に移動するように逆回転させるべくステッパモータ1を駆動制御する。
【0028】
このマイクロステップ駆動方式は、1/n(n≧3)マイクロステップを使用し、この実施の形態では、たとえば電気的1サイクルを64分割するマイクロステップを使用し、電気的90度において16分割される。
【0029】
図3は、通常動作時の励磁信号の電流ベクトル図を示す。図3では、一例として、電気的1サイクルにおいて励磁ステップ0〜16に対応する90度における電流ベクトルが示されている。
【0030】
図4は、通常動作時のマイクロステップ駆動方式の各励磁コイル1a1、1a2に供給する励磁信号の電流ベクトルを時系列で表した波形図である。図4に示すように、通常動作時には、各励磁コイル1a1、1a2には、デューティ比が0%から100%の間で段階的に増加または減少するようにPWM制御された励磁信号が供給される。
【0031】
ゼロ位置検出回路41dは、初期化処理動作時、検出タイミング信号に合わせて一端が開放された無励磁状態の励磁コイル1a1,1a2の両端に発生する誘導電圧V1,V2,V3およびV4が各I/F回路を介して入力され、入力された誘導電圧V1,V2,V3およびV4のいずれかが閾値以下になったときに、指針2がストッパ5に接触してゼロ位置にあることを判定するゼロ位置判定信号をCPU41aに出力する。すなわち、上述の励磁コイル1a1,1a2は、一端が開放された時、誘導電圧の検出素子として働くことになる。
【0032】
図5に示すように、駆動回路4は、初期化処理動作時にステッパモータ1を逆回転させる際、まず所定時間の間ステッパモータ1を加速させるための励磁パターンを有する励磁パルスP1,P2,P3,P4を励磁コイル1a1,1a2に供給してステッパモータ1を逆回転開始から加速し、その後、ゼロ位置検出処理を行う。
【0033】
ゼロ位置検出処理においては、駆動回路4は、回転子1bをマイクロステップ駆動方式で逆回転させる複数の励磁ステップで電気的1サイクルが構成される励磁パターン、すなわち、通常動作時の第1の励磁パターン中の複数の励磁ステップの一部を誘導電圧検出用励磁ステップに変換した第2の励磁パターンを有する励磁信号S1、S2、S3およびS4を生成し、このときの励磁パターンは、1サイクルにおける電気的90度が、誘導電圧を検出するための第1の所定時間長を有する誘導電圧検出用励磁ステップと、この誘導電圧検出用励磁ステップの第1の所定時間長より長い第2の所定時間長の回転用励磁ステップとを含む。
【0034】
このゼロ位置検出処理時のマイクロステップ駆動方式は、図6に示すように、1サイクルにおける電気的90度において16分割された、所定の励磁ステップを出力する。
【0035】
具体的には、図6中の1サイクルにおいて矢印(数字記載あり)の箇所の励磁ステップで、励磁コイル1a1,1a2を励磁する。すなわち、励磁コイル1a1はA相(SIN+)および−A相(SIN−)に対応し、励磁コイル1a2は、B相(COS+)および−B相(COS−)に対応するものとすれば、回転子を逆回転させる場合、誘導電圧検出用励磁ステップは、STEP−0(通常動作時のステップ58〜64を変換),16(通常動作時のステップ10〜16を変換),32(通常動作時のステップ26〜32を変換)および48(通常動作時のステップ42〜48を変換)とし、回転用励磁ステップはSTEP−2,5,7,9,18,21,23,25,34,37,39,41,50,53,55および57を使用する。
【0036】
そして、各励磁ステップにおける励磁信号S1,S2,S3,S4の出力時間は次のように設定される。
誘導電圧検出用励磁ステップ=STEP−0,16,32および48は3(ms;ミリ秒)
回転用励磁ステップ=STEP−2,5,7,9,18,21,23,25,34,37,39,41,50,53,55および57は各1(ms;ミリ秒)
【0037】
したがって、各々の電気的90度の中では、誘導電圧検出用励磁ステップの時間の長さ(第1の所定の時間長)と回転用励磁ステップの時間の長さ(第2の所定の時間長)の大小関係は、
誘導電圧検出用励磁ステップ3(ms)<回転用励磁ステップ4(ms)
となっている。
【0038】
次に、上述した構成の車載メータの動作について、図7に示すCPU41aのゼロ位置検出処置手順を示すフローチャートを参照して以下説明する。初期化処理が開始されると、励磁ステップを所定の更新間隔で更新し(ステップS1)、次いで、所定時間経過したか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2は、具体的には、図5に示すように、ゼロ位置検出処理のスタートから、ギア3のバックラッシュ除去(片寄せ)しながら回転子1bを励磁信号に追従(同期する)させ、所定速度まで回転(加速)させる。所定時間経過していれば、次に、誘導電圧検出処理を開始する(ステップS3)。すなわち、回転子1bの回転開始直後から所定時間経過するまで誘導電圧が安定しないため、誘導電圧の検出処理を行わない。(たとえば、特開2001−298993号公報参照。)
【0039】
次いで、検出タイミング信号に合わせて誘導電圧測定用コイルをPWM出力からHi−Z出力(ハイインピーダンス出力)へ切り換える(ステップS4)。Hi−Z出力とは、誘導電圧測定用のコイルに相当する励磁コイルが、誘導電圧検出用励磁ステップにおけるサンプリング時間(この実施の形態では、3ms)の間無励磁状態で一端が開放された状態とされ、このサンプリング時間の間に当該励磁コイルから誘導電圧が出力されることを意味する。
【0040】
次いで、誘導電圧測定用コイルから検出励磁ステップ中に表れる誘導電圧を複数回サンプリングする(ステップS5)。すなわち、励磁コイル1a1,1a2の両端に発生する誘導電圧V1,V2,V3およびV4が各I/F回路を介してサンプリングされ、ゼロ位置検出回路41dに入力される。次いで、サンプリングされた誘導電圧値が閾値を超えていると判定された回数が予め設定された当接判定回数より少ないか否かを判定する(ステップS6)。
【0041】
ステップS6の答えがイエスならば、出力励磁相を一定時間保持し(ステップS8)、次いで初期化処理を正常に終了する。
【0042】
一方、ステップS6の答えがノーならば、次いで回転子1bが360度回転したか否かを判定し(ステップS9)、その答えがイエスならば、次いで、出力励磁相を一定時間保持し(ステップS10)、次いで初期化処理を異常に終了する。また、ステップS9の答えがノーならば、次いで、次の検出励磁ステップまでマイクロステップで逆転処理を実行し(ステップS11)、次いでステップS4に戻る。
【0043】
図8は、ステッパモータの初期化処理時の駆動波形を示し、図9は、図8における加速処理時の駆動波形の拡大図を示し、図10(A)および(B)は、それぞれ、図9における加速処理の前半および後半のPWM出力波形を示し、図11は、誘導電圧検出処理時の駆動波形の拡大図を示し、図12は、誘導電圧検出サイクル(PWM駆動による励磁)の拡大図を示し、図13は、図12における逆転処理の部分の拡大波形を示し、図14(A)、(B)、(C)および(D)は、それぞれ、図13における回転用励磁ステップ41,39,37,34における拡大波形を示す。
【0044】
図15は、上述の誘導電圧検出処理、すなわちゼロ位置検出処理時の励磁信号の電流ベクトル図を示す。図15では、一例として、電気的1サイクルにおいて励磁ステップ0〜16に対応する90度における電流ベクトルが示されている。
【0045】
図16は、ゼロ位置検出処理時のマイクロステップ駆動方式の各励磁コイル1a1、1a2に供給する励磁信号の電流ベクトルを時系列で表した波形図である。図16に示すように、ゼロ位置検出処理時には、励磁コイル1a1、1a2には、通常動作時の第1の励磁パターンと同一であるが各励磁ステップが逆順になり、デューティ比が0%から100%の間で段階的に増加または減少するようにPWM制御されると共に、各励磁ステップの一部を、誘導電圧の検出タイミングに合わせたサンプリング時間(この実施の形態では、3ms)の間デューティ比0%または100%となる誘導電圧検出用励磁ステップに変換(または置換)した励磁信号が供給される。そして、誘導電圧検出励磁ステップ以外の励磁ステップは、回転用励磁ステップとして、1サイクル中の各電気的90度において誘導電圧検出用励磁ステップのサンプリング時間(この実施の形態では、3ms)より長い時間(この実施の形態では、4ms)を有するので、回転子1bの回転が安定することになる。
【0046】
図17は、励磁コイル1a1、1a2の駆動波形と励磁を与えるタイミングを説明するために、回転子の回転角度を時系列に示した図である。ステッパモータの誘導電圧を完全に捕らえるためには、励磁コイル1a1、1a2に発生する誘導電圧の最大値をサンプリングできるように、検出時間(サンプリング時間)を設定する必要がある。(なぜなら、ピークが発生する前の誘導電圧を捕らえた場合には、ゼロ位置判定が困難な場合があるからである。)
【0047】
ある速度で回転子1bが回転している状態で、減速処理を行わずに回転を停止させるような励磁を与えた時(すなわち、誘導電圧検出用励磁ステップでデューティ比0%の励磁信号を与えた時)(図17においてAで示されている)、次の回転用励磁ステップの励磁が与えられなければ、回転子1bは、オーバーシュート(図17においてBで示されている)した(このオーバーシュート時に、誘導電圧のピーク値が発生する)後、振動しながら励磁出力に応じた停止角度に到達する。この時、図17のCのタイミングや、さらに回転子1bが逆転したDのタイミングで、次の回転用励磁ステップによる回転方向の励磁を与えた場合、回転子1bの回転は不安定になり円滑に回転しなくなるため、次の誘導電圧検出ポイント(図17のFで示されている)以降の誘導電圧のレベルが安定しなくなる。
【0048】
これを避けるために、B点を通過した直後(すなわち、誘導電圧のピーク値が発生した直後)に、再び回転用励磁ステップによる回転方向の励磁信号を出力する。この時の励磁波形出力位置は、ステッパモータをA点で停止させずに一定速度で回転継続させていた場合に出力されるべき、回転角度Eに相当する励磁信号を出力するのである。すなわち、図16に示すように、デューティ比0%の誘導電圧検出用励磁ステップの次の回転用励磁ステップ(すなわち、ステップ9,57,41,25)における励磁信号は、通常動作時の駆動波形に沿ったデューティ比を有する部分から再び供給される。
【0049】
図18は、検出された誘導電圧のタイムチャートを示し、この図から、検出される誘導電圧値V1〜V4の変動幅が従来より少なく、安定するまでの時間が短いことが分かる。
【0050】
このように、ゼロ位置検出処理時には、通常動作時の第1の励磁パターンにおける複数の励磁ステップの一部を誘導電圧検出励磁ステップに変換した第2の励磁パターンを有する励磁信号で励磁コイルを励磁すると共に、電気的1サイクルにおける90度において誘導電圧検出用励磁ステップの時間(第1の所定時間長)より回転用励磁ステップの時間(第2の所定時間長)を長く設定することで、回転子の回転励磁時間が長く回転が円滑になり、安定した回転時誘導電圧を得ることができ、ゼロ位置の誤検出を防止することができる。
【0051】
以上の通り、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限らず、種々の変形、応用が可能である。
【0052】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、ゼロ位置検出処理時に、ステッパモータの回転が安定すると共に誘導電圧検出用のサンプリング時間を確保することができ、それにより安定した回転時誘導電圧を得ることができ、ゼロ位置の誤検出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るステッパモータの駆動装置の実施の形態を用いた車載メータの構成図である。
【図2】図1の車載メータにおける駆動装置の構成を示す図である。
【図3】通常動作時の励磁信号の電流ベクトル図を示す。
【図4】通常動作時のマイクロステップ駆動方式の各励磁コイルに供給する励磁信号の電流ベクトルを時系列で表した波形図である。
【図5】図2の駆動回路の動作の概略を説明する図である。
【図6】マイクロステップ駆動方式の具体例を示す図である。
【図7】駆動回路のCPUの処理手順を示すフローチャートを示す。
【図8】ステッパモータの初期化処理時の駆動波形を示す。
【図9】図8における加速処理時の駆動波形の拡大図を示す。
【図10】(A)および(B)は、それぞれ、図9における加速処理の前半および後半のPWM出力波形を示す。
【図11】誘導電圧検出処理時の駆動波形の拡大図を示す。
【図12】誘導電圧検出サイクル(PWM駆動による励磁)の拡大図を示す。
【図13】図12における逆転処理の部分の拡大波形を示す。
【図14】(A)、(B)、(C)および(D)は、それぞれ、図13における回転用励磁ステップ41,39,37,34における拡大波形を示す。
【図15】誘導電圧検出処理(ゼロ位置検出処理)時の励磁信号の電流ベクトル図を示す。
【図16】ゼロ位置検出処理時のマイクロステップ駆動方式の各励磁コイルに供給する励磁信号の電流ベクトルを時系列で表した波形図である。
【図17】励磁コイルの駆動波形と励磁を与えるタイミングを説明するために、回転子の回転角度を時系列に示した図である。
【図18】位置検出回路で検出される誘導電圧のタイムチャートを示す。
【図19】従来のステッパモータを使用した車載メータにおけるゼロ位置検出処理における各励磁ステップ、ゼロ位置検出励磁パターン、検出タイミング信号および誘導電圧の関係を示す図である。
【図20】図19の各励磁ステップと回転子の回転パターンの関係を示す図である。
【図21】ハーフステップ駆動方式における駆動トルクのベクトル図を示す。
【図22】従来のステッパモータを使用した車載メータにおけるゼロ位置検出処理において検出される誘導電圧のタイムチャートを示す。
【符号の説明】
1 ステッパモータ
1a1 励磁コイル
1a2 励磁コイル
1b 回転子
2 指針(被駆動部材)
4 駆動回路
41a CPU(制御手段)
41b メモリ
41c モータ駆動回路
41d ゼロ位置検出回路(ゼロ位置検出手段)
5 ストッパ
Claims (1)
- 励磁コイルおよび前記励磁コイルの励磁状態の変化に応じて回転する回転子を有するステッパモータと、
前記回転子の回転に連動する被駆動部材と、
前記被駆動部材をゼロ位置に機械的に停止させるストッパと、
前記励磁コイルの励磁状態を制御する制御手段と、
前記回転子の回転に応じた磁束変化により発生する誘導電圧を検出する検出素子と、
前記検出素子で検出された前記誘導電圧に基づき、前記被駆動部材が前記ストッパによりゼロ位置に停止させられたか否かを検出するゼロ位置検出手段とを備え、
前記制御手段は、通常動作時には、入力される角度データ信号に基づき前記回転子をマイクロステップ駆動方式で正逆回転させるための複数の励磁ステップで電気的1サイクルが構成される第1の励磁パターンを生成して前記励磁コイルに供給し、前記被駆動部材をゼロ位置へ戻すゼロ位置検出処理時には、前記第1の励磁パターン中の複数の励磁ステップの一部を複数の誘導電圧検出用励磁ステップに変換した第2の励磁パターンを生成して前記励磁コイルに供給し、
前記第1の励磁パターンにおける複数の励磁ステップは、デューティ比が0%から100%の間で段階的に増加または減少するようにPWM制御された励磁信号を含み、
前記第2の励磁パターンにおける前記複数の誘導電圧検出用励磁ステップは、デューティ比0%または100%の励磁信号を含み、
前記第2の励磁パターンは、前記1サイクルにおける電気的90度毎が、前記誘導電圧を検出するための前記複数の誘導電圧検出用励磁ステップと、複数の回転用励磁ステップとを含み、前記複数の誘導電圧検出用励磁ステップの合計時間長を第1の所定時間長とし、前記複数の回転用励磁ステップの合計時間長を第2の所定時間長としたとき、前記第2の所定時間長は前記第1の所定時間長より長く設定されている
ことを特徴とするステッパモータの駆動装置。
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