以下、本発明が実際上どのように具体化されるのかを図1乃至図11に基づいて説明することにより、本発明を実施するための望ましい形態を明らかにする。
まず、図1乃至図3に基づき、本発明に係る建設機械の出来形情報処理装置を具現するためのシステムの一例について説明する。図1は、本発明に係る建設機械の出来形情報処理装置を使用した建設機械の一例を示す斜視図、図2は、本発明を具体化して構成した建設機械の出来形情報処理装置の一例を示すブロック図、図3は、図2の建設機械の出来形情報処理装置に関連して設置された管理事務所内に配備されたシステムの一例を示すブロック図である。
本発明を具体化して構成した以下に述べる建設機械の出来形情報処理装置は、すでに述べた従来の技術に係る装置と同様、掘削動作を行って地中を掘削する掘削用作業具と、この掘削用作業具に掘削動作を行わせる作業具用油圧シリンダと、掘削用作業具を支持してクラウド動作を行う作業腕と、この作業腕にクラウド動作を行わせる作業腕用油圧シリンダとを有する作業機を設置した建設機械に使用される。そして、こうした掘削用作業具及び作業腕やこれらを駆動する油圧シリンダを有する作業機を設置した建設機械に使用することにより、従来の技術に係る装置と同様、作業機に予め設定したモニタポイントに係る三次元位置の計測結果に基づいて、作業機により掘削して形成された地形すなわち出来形に関する情報を取得する。ここでは、こうした出来形情報処理装置を使用する建設機械が油圧ショベルである場合を例にして、以下の説明を行う。
図1の建設機械について説明すると、1は掘削作業等を行う自走式の建設機械としての油圧ショベル、2は上部旋回体3を設置するための基台となり作業現場を走行することが可能な下部走行体、3はこの下部走行体2上に旋回可能に搭載された旋回フレームとこの旋回フレームの上部に設置された諸装置とからなる上部旋回体、4は土砂の掘削作業や積載作業等を行うための油圧ショベル1のフロント作業機、5は後端部が上部旋回体3の前部に垂直方向に回動(傾動)可能に軸着されて設置されたブーム、6は後端部がこのブーム5の前端部に垂直方向に回動(揺動)可能に軸着されたアーム、7はこのアーム6の前端部に垂直方向に回動可能にかつ着脱可能に軸着されたバケット、8は伸縮させてブーム5を垂直方向に回動させるように駆動するブームシリンダ、9は同じく伸縮させてアーム6を回動させるように駆動するアームシリンダ、10は同じく伸縮させてバケット7を回動させるように駆動するバケットシリンダである。
油圧ショベル1は、大別すると、エンドレスチェーン状のクローラベルトにより走行する一対のクローラ式走行体を左右に備えた下部走行体2と、運転室11や油圧駆動・制御用の機器等の諸装置を旋回フレーム上に設置して構成された上部旋回体3と、フロント作業機4とからなり、種々の作業を行うが、主たる作業として地山の掘削作業を行う。フロント作業機4は、ブーム5、アーム6及びバケット7と、これらをそれぞれ回動させるように駆動するためのブームシリンダ8、アームシリンダ9及びバケットシリンダ10とを設けて構成され、運転室の右側に設置されている。
油圧ショベル1を掘削作業用の建設機械としてみると、バケット7は、掘削動作を行って地中を掘削する掘削用作業具としての働きをし、アーム6は、この掘削用作業具としてのバケット7を支持してクラウド動作を行う作業腕としての働きをする。また、バケットシリンダ10は、掘削用作業具に掘削動作を行わせる作業具用油圧シリンダとしての働きをし、アームシリンダ9は作業腕にクラウド動作を行わせる作業腕用油圧シリンダとしての働きをする。ここで、「クラウド動作」とは、アーム6を回動させてバケット7に掘削土砂を詰め込むためのアームの回動動作(押出し動作)を意味する。
11は下部走行体2やフロント作業機4の操縦等、油圧ショベルの操縦を行うための運転室、21はブーム5の回動角度(ブーム角度)を検出するブーム角度センサ、22はブーム5に対するアーム6の回動角度(アーム角度)を検出するアーム角度センサ、23はアーム6に対するバケット7の回動角度(バケット角度)を検出するバケット角度センサ、24は上部旋回体3のピッチ方向(前後方向)の傾斜角度(ピッチ角度)を検出する傾斜角度センサ、25は下部走行体2に対する上部旋回体3の回動角度(旋回角度)を検出する旋回角度センサ、31,32は後述する建設機械側(出来形情報処理装置200側、図2参照)のGPS受信機43,44の無線アンテナ、33は後述するGPS受信機55(図3参照)で作成した補正データに係る信号を受信する建設機械側の無線機41の無線アンテナ、34は後述する建設機械側の送信用の無線機47(図2参照)の無線アンテナである。
ブーム角度センサ21、アーム角度センサ22、バケット角度センサ23及び傾斜角度センサ24は、後述するように、フロント作業機4に設定したモニタポイントに係る三次元位置を計測するために設けている。旋回角度センサ25は、上部旋回体3に対する下部走行体2の向きを計測するために設けたものであって、こうしたモニタポイントに係る三次元位置の計測には関係しない。図1には図示していないが、油圧ショベル1には、以上述べた計器のほか、掘削作業中にオペレータにより操作されて作業機の作業状態が掘削作業の状態にあることを伝える掘削スイッチ35(図2参照)を運転室11に設けている。また、図2に示す出来形情報処理装置200が設置されることと関連して、こうした掘削スイッチ35に加えて種々の圧力センサを設けている。これらについては、出来形情報処理装置200について説明をする際に詳述する。
そこで、図2に基づき、出来形情報処理装置200の具体的な仕組みについて説明をする。
図2において、21,22,23は既述のフロント角度センサ(ブーム角度センサ、アーム角度センサ、バケット角度センサ)、24は上部旋回体3のピッチ角度を検出する既述の傾斜角度センサ、25は上部旋回体3の旋回角度を検出する既述の旋回角度センサ、26はアームシリンダ9のボトム側の圧力の値を検出するアームシリンダの圧力センサ、27はバケットシリンダ10のボトム側の圧力の値を検出するバケットシリンダの圧力センサ、28はアームシリンダ9のボトム側に圧油を供給するようにアームシリンダ用の方向切換弁を切り換えるためのパイロット圧力の値を検出するクラウド動作検出用のパイロット圧力センサ、29はバケットシリンダ10のボトム側に圧油を供給するようにバケットシリンダ用の方向切換弁を切り換えるためのパイロット圧力の値を検出する掘削動作検出用のパイロット圧力センサである。
クラウド動作は、バケット7に掘削土砂を詰め込むようにアーム6を回動させる動作であって、アームシリンダ9のボトム側に圧油を供給してアームシリンダ9を伸長させることにより初めて果たすことができるから、少なくとも、アームシリンダ9のボトム側に圧油を供給するようにアームシリンダ用の方向切換弁が切り換えられていないと、クラウド動作を行うことはできない。こうしたことから、クラウド動作検出用のパイロット圧力センサ28は、アームシリンダ用の方向切換弁を切り換えるためのパイロット圧力を検出することにより、この方向切換弁の切り換え状態がクラウド動作を行い得る状態にあるか否かの判定をするために設けられたものである。こうした判定をする場合、後述する図10の例では、前記パイロット圧力が所定値以上であるか否かも加味するようにしている。
掘削動作は、地中を掘削するようにバケット7を回動させる動作であって、バケットシリンダ10のボトム側に圧油を供給してバケットシリンダ10を伸長させることにより初めて果たすことができるから、少なくとも、バケットシリンダ10のボトム側に圧油を供給するようにバケットシリンダ用の方向切換弁が切り換えられていないと、掘削動作を行うことはできない。こうしたことから、掘削動作検出用のパイロット圧力センサ29は、バケットシリンダ用の方向切換弁を切り換えるためのパイロット圧力を検出することにより、この方向切換弁の切り換え状態が掘削動作を行い得る状態にあるか否かの判定をするために設けられたものである。こうした判定をする場合、後述する図10の例では、前記パイロット圧力が所定値以上であるか否かも加味するようにしている。
掘削土砂が実際にバケット7に詰め込まれているときには、アーム6がクラウド動作を行った状態でアーム6に負荷がかかって、アームシリンダ9にある程度の負荷圧が発生する。アームシリンダの圧力センサ26は、アームシリンダ9のボトム側の圧力値を検出することにより、こうしたアームシリンダ9の負荷圧の値を検出して、掘削土砂が実際にバケット7に詰め込まれているか否かを判定するために設けられたものである。バケット7で実際に地中を掘削しているときには、バケット7が掘削動作を行った状態でバケット7に負荷がかかって、バケットシリンダ10にある程度の負荷圧が発生する。バケットシリンダの圧力センサ27は、バケットシリンダ10のボトム側の圧力値を検出することにより、こうしたバケットシリンダ10の負荷圧の値を検出して、バケット7で実際に地中を掘削しているか否かを判定するために設けられたものである。
41は無線アンテナ33が付設され管理事務所51(図3参照)で生成された補正データに係る信号を受信する無線機、42は無線機41で受信した補正データを一対のGPS受信機43,44に分配する分配機、43,44はGPSアンテナ31,32がそれぞれ付設され各GPSアンテナ31,32の三次元位置をそれぞれ計測するGPS受信機(図2ではGPS−A,GPS−Bと略記)である。
GPS受信機43,44は、GPS衛星の信号を受信して、その信号に基づいてGPSアンテナ31,32の三次元位置をそれぞれリアルタイムに計測する。そして、これらの計測結果に基づいて上部旋回体3の三次元の位置(例えば旋回フレーム上面と旋回中心軸線との交点(後述する図5中の原点O3)のような基準点となる上部旋回体3の位置)が演算により計測される。GPSアンテナ31とGPS受信機43、GPSアンテナ32とGPS受信機44は、それぞれ1セットのGPSを構成し、各GPSアンテナ31,32は、図1に示すように、上部旋回体3の旋回中心から外れた上部旋回体3後部の左右に配置される。ところで、GPS衛星の信号に基づいて計測されたGPSアンテナ31,32の三次元位置の計測値には、ある程度の誤差が不可避的に生じるため、ここでは、こうした誤差を補正して高精度の計測を行い得るようにしている。そのため、管理事務所51から送られた補正データを無線機41で受信してGPS受信機43,44に入力するようにしていが、この点の詳細については後述する。
45は各種センサの検出結果等に関する種々のデータや掘削スイッチ35の操作信号が入力されて集約されるコントローラ、46はこのコントローラ45から送られた種々のデータに基づいてフロント作業機4のモニタポイントに係る三次元位置を演算により計測しその計測結果に基づいて出来形に関する情報を取得したり、その情報に基づいて種々の資料を作成したりする運転室11内の車載コンピュータ、46aは出来形に関する情報等に基づいて作成された掘削作業の支援資料等の種々の資料を表示する車載コンピュータ46のモニタ、47は無線アンテナ34が付設され車載コンピュータ46での演算により得られた種々のデータを管理事務所51へ送信する無線機、48はオペレータにより携帯され運転室11内の車載コンピュータ46や管理事務所51内のサーバコンピュータ58(図3参照)とのデータの授受を行うICカードである。
コントローラ45は、フロント角度センサ21,22,23、傾斜角度センサ24及び旋回角度センサ25の角度の検出値に関するデータ、アームシリンダの圧力センサ26、バケットシリンダの圧力センサ27、クラウド動作検出用のパイロット圧力センサ28及び掘削動作検出用のパイロット圧力センサ29の圧力の検出値に関するデータ、掘削スイッチ35の操作信号並びにGPS受信機43,44によるGPSアンテナ31,32の三次元位置の計測値に関するデータを整理して、順次、車載コンピュータ46に送る働きをする。この車載コンピュータ46は、これらのデータや操作信号に基づいて種々の演算を行い、これに伴って種々の演算手段を備えているが、そのうち、本発明に直接関係する手段は、フロント作業機4のモニタポイントに係る三次元位置の計測手段(以下「モニタポイントの計測手段」という。)及びフロント作業機4の作業状態の判定手段(以下「作業状態の判定手段」という。)である。
モニタポイントの計測手段は、フロント角度センサ21,22,23、傾斜角度センサ24の角度の検出値及びGPS受信機43,44によるGPSアンテナ31,32の三次元位置の計測値に関するデータに基づいて、フロント作業機4に予め設定したモニタポイント(ここに示す例では、後述するようにバケット7に設定している。)に係る三次元位置を演算する。作業状態の判定手段は、フロント作業機4の作業状態が掘削作業の状態にあるか否を判定する。車載コンピュータ46では、この作業状態の判定手段によりフロント作業機4の作業状態が掘削作業の状態にあると判定されたときに、モニタポイントの計測手段による前記モニタポイントに係る三次元位置の演算結果に基づいて、フロント作業機4により掘削して形成された地形すなわち出来形を割り出してこの出来形の各点の三次元位置を算出する。出来形情報処理装置200は、こうして出来形に関する情報を取得するように構成しているが、これらの点の詳細については後述する。
車載コンピュータ46は、こうした演算を行うほか、GPS受信機43,44によるGPSアンテナ31,32の三次元位置の各計測値に関するデータに基づいて油圧ショベル1の位置を演算する。また、これらの計測値に関するデータや傾斜角度センサ24や旋回角度センサ25の角度の検出値に関するデータに基づいて油圧ショベル1の姿勢を演算する。無線機47は、以上述べたフロント作業機4のモニタポイントに係る三次元位置や油圧ショベル1の位置や姿勢に関するデータ等、車載コンピュータ46での演算により得られた所定のデータを管理事務所51へ送信する。
ICカード48には、施工予定区域における原地形のデータや最終的な出来形である目標地形のデータが記憶されており、オペレータは、作業を開始するに際し、ICカード48を車載コンピュータ46に接続してこれらのデータを入力する。この車載コンピュータ46では、フロント作業機4のモニタポイントに係る三次元位置の計測結果から割り出した出来形に関するデータと油圧ショベル1の位置や姿勢に関するデータとICカード48から入力した原地形及び目標地形に関するデータとに基づき、現在の作業状況をオペレータに伝達するための適宜の支援情報を作り出して車載コンピュータ46のモニタ46aに表示する。オペレータは、作業が終了したときには、このICカード48を車載コンピュータ46に接続して、車載コンピュータ46で得られた出来形に関するデータや所定のデータをICカード48に記録する。
図3に基づき、こうした出来形情報処理装置200に付帯して設置された管理事務所51について説明する。
図3において、51はGPSによる位置計測の精度を高めるための補正データや掘削作業の管理や支援に役立つ資料等の種々の情報を生成する管理事務所、55はGPSアンテナ52が付設されGPS衛星の信号を受信して補正データを生成するGPS受信機、56は無線アンテナ53が付設されこのGPS受信機55で生成された補正データを出来形情報処理装置200の無線機41へ送信する無線機、57は無線アンテナ54が付設され出来形情報処理装置200の無線機47からのデータを受信する無線機、58はこの無線機57で受信したデータを記憶し同データに基づいて油圧ショベル1やフロント作業機4の位置を表示したり掘削作業を管理したりするためのデータ等を演算してモニタ画面に表示することができるサーバコンピュータである。
管理事務所51は、例えば、当該建設工事に係る施工会社の管理者等が管理し、GPS衛星の信号を受信して、GPS受信機43,44によるGPSアンテナ31,32の三次元位置を高精度で計測できるようにするための補正データを生成する。また、出来形情報処理装置200で生成された基礎的な各種データや原地形及び目標地形に関するデータを保存し、これらのデータに基づいて、施工を管理するための管理データやオペレータの掘削作業の遂行に役立つデータ等、種々の資料を作成する。無線アンテナ52とGPS受信機55は、1セットのGPSを構成し、補正データを生成するために設置される。
すでに述べたように、GPS衛星の信号に基づいてGPSアンテナ31,32の三次元位置をGPS受信機43,44で計測したときに若干の誤差が生じるため、管理事務所51では、周知の手法で補正データを生成する。その手法について概説すると、管理事務所51では、GPS受信機55の無線アンテナ52の実際の地球上の三次元位置(緯度、経度、高度)を予め正確に測定して確定した上で、別途、GPS衛星の信号に基づいてこの無線アンテナ52の三次元位置をGPS受信機55により計測する。そうすると、GPS受信機55による無線アンテナ52の位置の計測結果が同アンテナ52の実際の正確な位置に対してどの程度の誤差があるのかを求めることができるので、この誤差に基づいて補正データを生成することができる。
この補正データは、無線機56を通じて出来形情報処理装置200の無線機41へ一定周期で送信されてGPS受信機43,44にそれぞれ入力される。GPS受信機43,44では、同受信機43,44での計測結果を補正データで補正してGPSアンテナ31,32の三次元位置を高精度でリアルタイムに計測するRTK(リアルタイム・キネマティック)計測を行う。こうしたRTK計測により、GPSアンテナ31,32の三次元位置を約±1〜2cmの精度で計測することができる。
無線機57には、出来形情報処理装置200からのフロント作業機4のモニタポイントに係る三次元位置や油圧ショベル1の位置や姿勢に関するデータを受信してサーバコンピュータ58に入力されるが、サーバコンピュータ58では、これらのデータを保存するとともに、これらのデータに基づいて種々の資料を作成して同コンピュータ58のモニタ画面に表示し、これにより、油圧ショベル1による掘削作業の状態を管理事務所51で看視することができる。また、サーバコンピュータ58には、予め計測された原地形に関するデータや予め設定された目標地形に関するデータが記憶されている。このサーバコンピュータ58には、ICカード48が接続できるようになっており、原地形及び目標地形に関するデータをICカード48へ入力したり、車載コンピュータ46からICカード48へ入力された当該オペレータの施工領域に係る出来形等に関する所定のデータを出力したりすることができるようになっている。
次に、フロント作業機4のモニタポイントに係る三次元位置を演算するためのモニタポイントの計測手段や油圧ショベル1の位置及び姿勢を演算するための計測手段について、図4乃至図9を用いて説明する。
図4は、グローバル座標系の概要を示す斜視図、図5は、フロント作業機のモニタポイントと油圧ショベルの位置及び姿勢とを演算するために使用する座標系を示す斜視図、図6は、フロント作業機のモニタポイントの位置と油圧ショベルの位置及び姿勢とを演算する手順を示す流れ図、図7は、車載コンピュータ及びサーバコンピュータのモニタ画面に表示される画像の一例を示す鳥瞰図、図8は、地形に関するデータを表現する方法の一例を示す斜視図、図9は、フロント作業機に設定するモニタポイントの設定例を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
フロント作業機4のモニタポイントの位置と油圧ショベル1の位置及び姿勢に関する計測値は、グローバル座標系で算出し、最終的には、その算出結果をローカル平面直角座標系の値に変換して求める。ローカル平面直角座標系とは、測量法で定められた座標系である。すなわち、日本全土を19区域に区分して各区域内を平面とみなした直角座標系であり、それぞれの分割区域の特定の個所に原点を有する三次元直交座標であって、位置を東西方向、南北方向及び高さ方向の三次元データで表すものである。最終的な位置や姿勢の計測値は、ローカル平面直角座標系で表す代わりにUTM座標系で表してもよく、施工区域が狭い場合には、緯度、経度及び高さで表すこともできる。
グローバル座標系は、GPSにおいて高さの基準として用いている準拠楕円体に設定した座標系である。このグローバル座標系の概念を図4に基づいて概説する。
同図において、GはGPSで用いている準拠楕円体であり、グローバル座標系Σ0(後述する図5でこの座標系に符号Σ0を付している。)の原点O0は、準拠楕円体Gの中心に設定されている。このグローバル座標系Σ0のx0軸方向は、赤道A及び子午線Bの交点Cと準拠楕円体Gの中心とを通る線上に位置し、z0軸方向は、準拠楕円体Gの中心から南北に延ばした線上に位置し、y0軸方向は、x0軸とz0軸とに直交する線上に位置している。GPSでは、地球上の位置を緯度と経度と準拠楕円体Gに対する高さとで表すので、こうしたグローバル座標系Σ0を使用することにより、GPSでの三次元位置の計測値に関するデータをグローバル座標系Σ0の値に簡単に変換することができる。こうした変換を行うための演算式は、よく知られているので、ここでは説明を省略する。
以上を確認の上、出来形情報処理装置200の車載コンピュータ46により、フロント作業機4のモニタポイントに係る三次元位置を演算したり、油圧ショベル1の位置及び姿勢を演算したりする手法を図5及び図6に基づいて説明する。
フロント作業機4のモニタポイントに係る三次元位置を演算する手法について以下に説明する際に、ここでは、そのモニタポイントをバケット7の先端に一個所設定した場合を例にして説明するが、モニタポイントは、後述するように、バケット7の先端以外のフロント作業機4の個所や複数個所に設定することもできる。その場合にも、以下に説明する手法に準じてモニタポイントに係る三次元位置を演算することができる。
図5において、Σ0は、準拠楕円体Gの中心に原点O0を有するグローバル座標系、Σ3は、油圧ショベル1の上部旋回体3に固定され、上部旋回体3の基盤をなす旋回フレームにおける上面と上部旋回体3の旋回中心軸線との交点に原点O3を有する上部旋回体座標系、Σ7は、バケット7に固定され、バケット7の先端(フロント作業機4のモニタポイント)に中心O7を有するバケット先端座標系である。図5中、Ocは、下部走行体2が接地している地面と上部旋回体3の旋回中心軸線との交点である。なお、フロント作業機4に複数のモニタポイントを設定して各モニタポイントに係る三次元位置を演算する場合には、各モニタポイントをそれぞれ中心とするバケット先端座標系Σ7に準じた座標系を複数設定して、以下の手法に準じて演算すればよい。
各GPSアンテナ31,32に対する上部旋回体座標系Σ3の原点O3の位置関係は、距離xga,xgb,yga,ygb,zga,zgbが定まっていて既知であることから、グローバル座標系Σ0での上部旋回体座標系Σ3の位置及び姿勢(上部旋回体3の方向)は、グローバル座標系Σ0でのGPSアンテナ31,32の三次元位置と油圧ショベル1(上部旋回体3)のピッチ角度θ2とが分かれば、演算により求めることができる。また、上部旋回体座標系Σ3の原点O3に対する前記の交点Ocの位置関係は、距離αcが定まっていて既知であることから、上部旋回体座標系Σ3での下部走行体2の位置及び姿勢は、下部走行体2に対する上部旋回体3の回動角度すなわち旋回角度θswが分かれば、演算により求めることができる。これらのことから、GPS受信機43,44によるGPSアンテナ31,32の三次元位置の計測値と傾斜角度センサ24によるピッチ角度θ2の検出値と旋回角度センサ25による旋回角度θswの検出値とが得られれば、油圧ショベル1の位置及び姿勢(上部旋回体3の位置及び姿勢と下部走行体2の姿勢、下部走行体2の位置は上部旋回体3の位置と同じ。)を演算により求めることができる。
一方、上部旋回体座標系Σ3の原点O3に対するブーム5の基端の位置関係は、距離α3,α4,β4、ブーム5の寸法α5、アーム6の寸法α6及びバケット7の寸法α7が定まっていて既知であることから、上部旋回体座標系Σ3でのバケット先端座標系Σ7の位置及び姿勢は、ブーム角度θ5とアーム角度θ6とバケット角度θ7とが分かれば、演算により求めることができる。そして、前記したように、グローバル座標系Σ0での上部旋回体座標系Σ3の位置及び姿勢は、グローバル座標系Σ0でのGPSアンテナ31,32の三次元位置と油圧ショベル1のピッチ角度θ2に基づいて求めることができるので、結局、GPS受信機43,44によるGPSアンテナ31,32の三次元位置の計測値と傾斜角度センサ24によるピッチ角度θ2の検出値とフロント角度センサ21,22,23によるブーム角度θ5、アーム角度θ6及びバケット角度θ7の各検出値とが得られれば、モニタポイントとしてのバケット7の先端位置を演算により求めることができる。
以上のことから、GPS受信機43,44によるGPSアンテナ31,32の三次元位置の計測値とフロント角度センサ21,22,23によるブーム角度θ5、アーム角度θ6及びバケット角度θ7の各検出値と傾斜角度センサ24及び旋回角度センサ25によるピッチ角度θ2及び旋回角度θswの各検出値とを車載コンピュータ46に入力して、これらの計測値や検出値を取捨選択しながら用いて車載コンピュータ46で座標変換演算を行うことにより、油圧ショベル1の位置及び姿勢やバケット7の先端位置をグローバル座標系Σ0の値で求めることができる。これらの値は、前述したように、最終的にはローカル平面直角座標系の値に変換される。
図6に基づき、バケット7の先端位置(モニタポイントの位置)と油圧ショベル1の位置及び姿勢とを演算する手順について説明する。
油圧ショベル1で作業を開始すると、GPS受信機43,44によるGPSアンテナ31,32の三次元位置の計測値が車載コンピュータ46に入力される。そして、車載コンピュータ46では、まず、ステップS10において、GPSアンテナ31の三次元位置の計測値をグローバル座標系Σ0の値0P1に変換する。同様にして、ステップS20において、GPSアンテナ32の三次元位置の計測結果もグローバル座標系Σ0の値0P2に変換する。次いで、ステップS30において、傾斜角度センサ24によるピッチ角度θ2の検出値を車載コンピュータ46に入力する。
しかる後、ステップS40において、車載コンピュータ46では、記憶装置に予め記憶されている、各GPSアンテナ31,32に対する上部旋回体座標系Σ3の原点O3の位置関係を特定するための距離xga,xgb,yga,ygb,zga,zgbのデータを使用しながら、ステップS10,S20でそれぞれ求めたグローバル座標系Σ0でのGPSアンテナ31,32の三次元位置の値0P1,0P2とステップS30で入力したピッチ角度θ2の検出値とに基づいて、上部旋回体座標系Σ3の位置及び姿勢を演算によりグローバル座標系Σ0の値0Σ3で求める。この演算は、座標変換であって、一般的な数学的手法により行うことができる。以上により、油圧ショベル1の位置や姿勢の一つである上部旋回体3の位置や姿勢をグローバル座標系Σ0で求めることができる。また、こうして求めた前記のグローバル座標系Σ0の値0Σ3は、後述するように、油圧ショベル1の位置や姿勢の他の一つである下部走行体2の姿勢とバケット7の先端位置とを演算するためのデータとしても利用される。
次に、ステップS50において、旋回角度センサ25による旋回角度θswの検出値を車載コンピュータ46に入力し、この旋回角度θswの検出値とステップS40で求めたグローバル座標系Σ0の値0Σ3とに基づいて、下部走行体2の姿勢3P4を演算によりグローバル座標系Σ0で求める。また、ステップS60において、フロント角度センサ21,22,23によるブーム角度θ5、アーム角度θ6及びバケット角度θ7の各検出値を車載コンピュータ46に入力する。そして、記憶装置に予め記憶されている、上部旋回体座標系Σ3の原点O3に対するブーム5の基端の位置関係を特定するための距離α3,α4,β4及び寸法α5,α6,α7のデータを使用しながら、そのブーム角度θ5、アーム角度θ6及びバケット角度θ7の各検出値に基づいて、バケット7の先端位置3P7を演算により上部旋回体座標系Σ3で求める。この演算は、座標変換であって、一般的な数学的手法により行うことができる。
しかる後、ステップS70に移行し、前段のステップS60において上部旋回体座標系Σ3で求めたバケット7の先端位置3P7とステップS40で求めたグローバル座標系Σ0の値0Σ3とに基づいて、グローバル座標系Σ0でのバケット7の先端位置0P7を演算によりで求める。次いで、ステップS80に移行し、グローバル座標系Σ0で求めた上部旋回体座標系Σ3の位置及び姿勢とバケット7の先端位置0P7とを前述のローカル平面直角座標系で求める。その結果、油圧ショベル1の位置及び姿勢とバケット7の先端位置に係る計測結果を、わが国で慣用されているローカル平面直角座標系での三次元位置のデータの形式で得ることができる。
こうして得られた油圧ショベル1の位置及び姿勢とバケット7の先端位置に係る計測結果に基づいて、油圧ショベル1の操縦時の外観と出来形に関するデータをそれぞれ割り出し、まず、ステップS90において、車載コンピュータ46の記憶装置に記憶されている過去の出来形に関するデータを更新する(書き換える)。次いで、S100において、油圧ショベル1の操縦時の外観及び出来形に関するデータに基づいて油圧ショベル1及び出来形を画像化し、更新された出来形を含む地形に係る画像を、油圧ショベル1に係る画像と重ね合わせて車載コンピュータ46のモニタ46aに表示する。
図7は、目標地形101や出来形102等の地形100に油圧ショベル1を併せて表示したモニタ画面の画像の一例を示し、こうした画像は、車載コンピュータ46やサーバコンピュータ58のモニタ画面に表示する。図7では、地形100と油圧ショベル1との位置関係を分かりやすくするために鳥瞰図で表示しており、これにより、効率的かつ安全に作業を遂行することができる。なお、必要に応じて平面図や側面図を選択的に表示できるようにしてもよく、地図データを表示できるようにしてもよい。また、地形100は、TIN(不規則三角網)や矩形格子等の形態で立体的に表現することもできる。
図8は、目標地形101、出来形102、原地形のような地形100に関する三次元データを表現する手法を例示したものである。地形を構成する各点は、既述のローカル平面直角座標系で求められており、東西方向E、南北方向N及び高さ方向Hの三次元の座標点で表されている。こうして表現された地形100の地山が掘削されると、掘削された地山の地形100を構成する各点における高さ方向Hを、掘削された深さ分だけ削減して表示することにより地形100を更新することとする。
図9は、モニタポイントをバケット7に設定する場合の例を示したもので、ここに示す例では、バケット7の先端部の両端にモニタポイントP1a,P1bを設定し、バケット7の後部の両端にP2a,P2bを設定している。このようにモニタポイントをバケット7の要所に数多く設定すると、掘削動作時におけるバケット7の掘削経路を正確に割り出すことができて、油圧ショベル1での出来形に関する情報を精度良く取得することができる。モニタポイントの数を増減すると、車載コンピュータ46で処理すべきデータの容量も増減するので、モニタポイントの設定数は、経済性も考慮しながら適宜選択する。
モニタポイントは、バケット7だけに限らずアーム6に設定することもでき、特にアーム6の先端部に設定すると良い。この場合でも、フロント作業機4による掘削作業時のアーム6の先端部の三次元位置を計測すると、地中を掘削しているときのバケット7の掘削動作を推定することができるので、バケット7による掘削深さを概算で算定することができる。モニタポイントは、アーム6に設定すると、掘削作業時に地山の障害物に接触して損傷しやすいバケット角度センサ23を用いないで出来形に関する情報を取得することができるので、バケット角度センサ23の故障に備えて、予備として付加的にアーム6に設定しておくこともできる。
最後に、フロント作業機4の作業状態が掘削作業の状態にあるか否を判定する車載コンピュータ46の作業状態の判定手段について、図10及び図11を用いて説明する。図10は、作業状態の判定手段に関する第1の例の作用を説明するための流れ図、図11は、作業状態の判定手段に関する第2の例の作用を説明するための流れ図である。
図10に基づき、作業状態の判定手段の第1の例について説明すると、まず、ステップS1001において、出来形更新フラグをオフにしてリセットする。そうすると、ステップS1002に移行して、車載コンピュータ46では、クラウド動作検出用のパイロット圧力センサ28によるパイロット圧力の検出値が予め設定したしきい値(閾値)以上であるか否かの判定を行って、アームシリンダ用の方向切換弁の切り換え状態がクラウド動作を行い得る状態にあるか否かを判別する。また、こうした判定と並行して、クラウド動作時におけるアームシリンダ9の作動油流入側すなわちアームシリンダ9のボトム側の圧力についてのアームシリンダの圧力センサ26での検出値が予め設定したしきい値以上であるか否かの判定を行って、掘削土砂が実際にバケット7に詰め込まれているか否かを判別する。その結果、これらの判定結果が何れもしきい値以上であってYESのときには、作業状態が掘削作業の状態にあるものと判断してステップS1005に移行する。
ステップS1005では、出来形更新フラグがオンの状態になっているか否か、すなわち、フロント作業機4のモニタポイントに係る三次元位置の計測結果に基づいて出来形に関するデータを取得して出来形に関するデータを更新し得るような状態になっているか否かの判定をして、その判定結果がYESのときには、ステップS1007に移行して過去の出来形に関するデータを更新する。また、その判定結果がNOのときには、ステップS1006に移行して出来形更新フラグをオンにする。そうすると、再度、当初のステップS1002に移行して同ステップでの判定が行われるが、その判定結果は、特段の事情でもない限り、当然YESとなるので、ステップS1005に移行する。このとき、出来形更新フラグは、前記ステップS1006での処理によりすでにオンにされているので、ステップS1007に移行して過去の出来形に関するデータを更新する。
一方、ステップS1002での判定結果がNOのときには、ステップS1003に移行して、車載コンピュータ46では、掘削動作検出用のパイロット圧力センサ29によるパイロット圧力の検出値が予め設定したしきい値以上であるか否かの判定を行って、バケットシリンダ用の方向切換弁の切り換え状態が掘削動作を行い得る状態にあるか否かを判別する。また、こうした判定と並行して、掘削動作時におけるバケットシリンダ10の作動油流入側すなわちバケットシリンダ10のボトム側の圧力についてのバケットシリンダの圧力センサ27での検出値が予め設定したしきい値以上であるか否かの判定を行って、バケット7により実際に地中の掘削が行われているか否かを判別する。
その結果、これらの判定結果が何れもしきい値以上であってYESのときには、フロント作業機4の作業状態が掘削作業の状態にあるものと判断してステップS1005に移行し、以後、ステップS1006又はステップS1007に移行して、すでに述べた過程と同様の過程をたどる。また、ステップS1003での判定結果がNOのときには、ステップS1004に移行して出来形更新フラグをオフにし、しかる後、再度、当初のステップS1002に移行して、以後、以上述べた手順を繰り返す。以上述べた処理は、短い周期で周期的に実行される。
アームシリンダ用の方向切換弁の切り換え状態がクラウド動作を行い得る状態にあるか否かを判別するためのパイロット圧力センサ28の検出値によるステップS1002での判定は、帰するところ、アーム6がクラウド動作を行う方向に作動しているか否かを判別するためのものである。また、バケットシリンダ用の方向切換弁の切り換え状態が掘削動作を行い得る状態にあるか否かを判別するためのパイロット圧力センサ29の検出値によるステップS1003での判定は、帰するところ、バケット7が掘削動作を行う方向に作動しているか否かを判別するためのものである。したがって、ステップS1002での判定やステップS1003での判定を行う代わりに、アーム角度センサ22やバケット角度センサ23の検出値に基づいて、アーム角度θ6やバケット角度θ7がクラウド動作や掘削動作を行う方向に変化しているか否かの判定を行うようにしてもよい。
アームシリンダ9やバケットシリンダ10のボトム側の油圧がしきい値以上であるか否かの圧力センサ26や圧力センサ27の検出値によるステップS1002やステップS1003での判定は、その各シリンダ9,10のボトム側の油圧が掘削作業を行うときの負荷圧にまで上昇しているか否か検知するためのものである。フロント作業機4の作業状態が掘削作業の状態にあるか否かの判定の目的は、基本的には、こうした圧力センサ26,27の検出値のしきい値との比較による判定により達成される。
図10の例では、アーム6やバケット7がクラウド動作や掘削動作を行う方向に作動しているか否かを判別するためのパイロット圧力による判定を行う場合に、パイロット圧力がしきい値以上であるか否かも加味するようにしているが、こうしたことは、本発明にとって有用ではあっても、不可欠のことではない。なぜならば、アーム6やバケット7がクラウド動作や掘削動作を行う方向に作動しているか否かは、アームシリンダ用の方向切換弁やバケットシリンダ用の方向切換弁に、クラウド動作方向や掘削動作方向に切り換えるためのパイロット圧力が出力されている否かを検出することにより概ね判別することができ、このことに加えて、フロント作業機4の作業状態が掘削作業の状態にあるか否かの判定の目的は、前記したように、圧力センサ26,27の検出値のしきい値との比較による判定により基本的に達成されるからである。
図11に基づき、作業状態の判定手段の第2の例について説明する。フロント作業機4の作業状態が掘削作業の状態にあるか否を判定するための作業状態の判定手段を構成するため、掘削作業中にオペレータが操作することができ操作時に操作信号を発する掘削作業用の操作手段を運転室11に設けたものである。ここに示す例では、こうした掘削作業用の操作手段として、掘削作業中にオペレータにより操作されてフロント作業機4の作業状態が掘削作業の状態にあることを車載コンピュータ46に伝達する掘削スイッチ35を設けている。
この第2の例の作用について説明すると、まず、ステップS1101において、出来形更新フラグをオフにしてリセットする。そうすると、ステップS1102に移行して、車載コンピュータ46では、掘削スイッチ35がオンになっているか否かの判定を行う。その結果、掘削スイッチ35がオンになっていて、YESであると判定されたときには、フロント作業機4の作業状態が掘削作業の状態にあるものと判断して、ステップS1104に移行し、ステップS1104では、出来形更新フラグがオンになっているか否かの判定をする。その結果、出来形更新フラグがオンになっていて、YESであると判定されたときには、ステップS1106に移行して過去の出来形に関するデータを更新する。
また、ステップS1104での判定結果がNOのときには、ステップS1105に移行して出来形更新フラグをオンにする。そうすると、再度、当初のステップS1102に移行して同ステップでの判定が行われるが、その判定結果は、通常はYESとなるので、ステップS1104に移行する。このとき、出来形更新フラグは、前記ステップS1105での処理によりすでにオンにされているので、ステップS1106に移行して過去の出来形に関するデータを更新する。一方、ステップS1102での判定結果がNOであるときには、ステップS1103に移行して出来形更新フラグをオフにし、しかる後、再度、当初のステップS1102に移行して、以後、以上述べた手順を繰り返す。
以上述べた作業状態の判定手段の第1の例及び第2の例は、何れも、油圧ショベル1が発する信号に基づいて、フロント作業機4の作業状態が掘削作業の状態にあるか否を判定する判定手段である。そして、本出来形情報処理装置200は、こうした作業状態の判定手段を設け、フロント作業機4の作業状態が掘削作業の状態にあると前記判定手段で判定されたときに、フロント作業機4のモニタポイントに係る三次元位置の計測結果に基づいて出来形に関する情報を取得するように構成したので、従来の技術とは異なり、フロント作業機4が現実に掘削作業を行っているときにだけ、出来形に関する情報を取得することが可能となる。したがって、本出来形情報処理装置200によれば、出来形に関する情報を従来の技術よりも正確に取得することができる。その結果、実際とはかけ離れた不正確な出来形に関する情報がオペレータや施工の管理者に伝達されるという従来の技術にみられる問題は解消されて、オペレータへの掘削作業の支援や施工の管理を適切に行うことができる。
本発明に係る油圧ショベルの出来形情報処理装置に、特に、第1の例の作業状態の判定手段を設けると、フロント作業機4の作業状態が実際に掘削作業の状態にあるか否かの判定をきわめて確実に行うことができる。すなわち、第1の例の作業状態の判定手段では、アームシリンダ9やバケットシリンダ10のボトム側の油圧の検出値がしきい値以上であるか否かを判定することにより、そのボトム側の油圧が掘削作業を行うときの負荷圧にまで上昇しているか否か検知することに加え、アーム6やバケット7がクラウド動作や掘削動作を行う方向に作動しているか否かを判定することにより、その負荷圧の上昇が掘削作業に起因するものであるか否かを確認して、フロント作業機4の作業状態が実際に掘削作業の状態にあるか否かを二重の判定条件により確認するようにしているので、フロント作業機4の作業状態の判定をきわめて確実に行うことができる。
また、こうした判定を行うために作業状態の判定手段へ入力する圧力センサ26,27やパイロット圧力センサ28,29の検出値に係る各種信号は、フロント作業機4の操作時にこれらのセンサ26,27,28,29から自ずと得られる信号であるので、出来形に関する情報を、オペレータに格別の負担をかけることなく自動的に取得することができる。さらに、出来形に関する情報を、このように自動的に取得することができて掘削作業中に絶え間なく取得することができるので、この取得した情報を、掘削作業をしているオペレータにリアルタイムに伝達することにより、オペレータの掘削作業を支援することもできる。
本発明に係る油圧ショベルの出来形情報処理装置に、特に、第2の例の作業状態の判定手段を設けても、フロント作業機4の作業状態が実際に掘削作業の状態にあるか否かの判定をきわめて確実に行うことができる。すなわち、第2の例の作業状態の判定手段では、フロント作業機4の作業状態が掘削作業の状態にあることを判定する場合、掘削作業の当事者であるオペレータが実際に掘削作業を行ったときに操作する掘削スイッチ35の操作信号により判定するようにしているので、フロント作業機4の作業状態が実際に掘削作業の状態にあるか否かの判定をきわめて確実に行うことができる。
また、出来形に関する情報を取得する場合、例えば、当該個所の掘削作業が一段落したときに取得する等、掘削作業の実施者であるオペレータが合理的な判断により適切なタイミングで取得することが可能となるので、出来形に関する情報について、究極的に有用な情報を選択して無駄なく取得することができる。さらに、本油圧ショベルの出来形情報処理装置では、圧力センサ26,27やパイロット圧力センサ28,29のような格別の検出手段を設けることを要せず、オペレータがオン・オフ操作するための掘削スイッチ35を設ければ済み、作業状態の判定手段では、この掘削スイッチ35からの操作信号の入力の有無だけを判定すれば足るので、きわめてシンプルに構成することができる。
ところで、地山が傾斜していたり崩落や流動しやすかったりする等、施工現場の地勢や土質によっては、地山を掘削した後に掘削した部位に周辺の土砂が流入することがあるため、掘削直後の出来形が掘削作業の終了時に変化することがある。本油圧ショベルの出来形情報処理装置に第2の例の作業状態の判定手段を設けると、こうした出来形の経時的変化の有無を確認することもできる。すなわち、地山を掘削してから適当な時間が経過した後に、オペレータがフロント作業機4を操作してバケット7を掘削後の地山に押し付けてから掘削スイッチ35をオン操作することにより、バケット7のモニタポイントに係る三次元位置の計測結果に基づく出来形に関するデータを取得して出来形の経時的変化の有無を確認することができる。
したがって、掘削作業の終了後に、こうした出来形の確認作業を、傾斜地や崩落しやすい個所等、当該施工区域の要所要所で実施することにより、出来形が掘削作業後に変化したか否かを確認して、実際の出来形に関する三次元位置の情報を一層正確に取得することができる。また、その過程で出来形の変化を発見したときには、フロント作業機4を操作してその場で出来形を修正することができる。こうした出来形の確認作業は、モニタポイントをアーム6に設定したときでも、アーム6付近のバケット7の個所を掘削後の地山に押し付けるようにすれば、同様にして取得することができる。
本出来形情報処理装置200には、第1の例の作業状態の判定手段のほか、第2の例の作業状態の判定手段を設けているので、第1の例の作業状態の判定手段を使用することにより、出来形に関する情報をリアルタイムに取得してオペレータへの掘削作業の支援や施工の管理が適時適切に行えるとともに、第2の例の作業状態の判定手段を使用することにより掘削後の出来形を適宜修正して精度よく仕上げることができる。また、このように作業状態の判定手段を二種類設けているので、万一、一方の判定手段が故障したときでも、他方の判定手段を使用することにより出来形の計測を滞りなく進めることができる。以上の結果、本出来形情報処理装置200によれば、掘削工事を効率的かつ適切に実施して、依頼主の注文に適った正確な出来形を迅速に施工することができる。