JP4200811B2 - 放射線治療計画装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えばライナックと呼ばれる放射線照射装置を用いて被検体の体内の関心部位(悪性腫瘍等)に放射線を照射して治療をおこなう放射線治療対象の被検体における放射線照射領域を放射線治療に先立って予め立案計画する為の立案用X線透視画像が画像表示モニタに表示されるように構成された放射線治療計画装置に係り、特に画像表示モニタの画面に映し出される立案用X線透視画像の視野範囲を広げるための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えばライナックと呼ばれる放射線照射装置(図示省略)を用い、被検体(患者)の関心部位(悪性腫瘍等)に放射線を体外から照射して治療する放射線治療が行われている。この放射線治療の場合、被検体における放射線照射領域を予め放射線治療に先立って予め立案計画する。即ち、被検体Mの関心部位の状況(病変部の状態)に見合った放射線照射領域を予め決定しておいて、実際の放射線を実施する時に決定した放射線照射領域だけに放射線を照射するという治療プロセスになっている。つまり、要照射領域の外の健常部分に放射線が当たると正常な組織が損なわれるし、反対に要照射領域の一部に放射線が当たらなければ期待した照射効果が得られないので、放射線が要照射領域に過不足なく照射されるように放射線照射領域を予め決定する必要があるのである。
そして、この放射線照射領域の立案計画作業は、普通、以下に述べるように、放射線照射装置とは別の放射線治療計画装置を使って行われる。つまり、放射線照射領域の立案計画はオフラインで行われることが多いのである。
【0003】
従来の放射線治療計画装置は、図10に示すように、被検体Mにコーン状X線ビームを照射するX線管51と被検体Mからの透過X線像を検出するX線検出器としてのイメージインテンシファイア(I・I管)52とが被検体Mを挟んで対向配置状態で配備されているガントリ53と、ガントリ53の手前に被検体Mを載置する天板54が天板上下方向の昇降移動および天板長手方向(被検体Mの体軸Z方向)と天板短手方向(被検体Mの体軸Z方向と垂直な方向)の水平移動が可能なようにして配備された寝台装置55とを備えていて、X線管51による被検体MへのX線照射に伴ってI・I管52から出力される透過X線検出信号に基づき、後段に配設された画像表示モニタ(図示省略)の画面に立案用X線透視画像が映し出されるように構成されているのに加え、天板54の下に組み込まれているフィルム撮影機構(図示省略)によりX線フィルム撮影がおこなえるように構成されている。
【0004】
放射線治療計画装置を用いて放射線照射領域を立案する場合、計画立案者は画像表示モニタの画面に映し出された立案用X線透視画像を観察しながら、放射線照射領域を決定する。計画立案者は放射線照射領域が決定できた時点でX線フィルム撮影をおこなうと共に、撮影したX線フィルム写真の上に放射線照射領域を示すラインを引く等して放射線照射領域を明記すれば、治療計画の立案作業は完了となる。
そして、放射線治療計画装置で作成されたX線フィルム写真は、放射線照射装置のオペレータへ回送されることになる。放射線照射装置のオペレータは、放射線照射領域が明記されたX線フィルム写真を参照しながら、被検体Mの関心部位(悪性腫瘍等)に放射線を体外から照射して治療を施す。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、I・I管52をX線検出器としてX線透視撮影をおこなう従来の放射線治療計画装置は、画像表示モニタの画面に映し出される立案用X線透視画像の視野範囲が狭いという問題がある。
画像表示モニタの画面には現在撮影中のX線透視画像しか表示されないので、立案用X線透視画像の視野範囲はI・I管52のX線検出面のサイズによって決まることになる。しかし、I・I管52のX線検出面のサイズは余り大きくないので、必然的に立案用X線透視画像の視野範囲が狭くならざるを得ない。I・I管52のX線検出面のサイズを大きくすれば、立案用X線透視画像の視野範囲が広くなる勘定になるが、実際にI・I管52のX線検出面のサイズを大きくしても、X線透視画像の周縁部分ではI.I.管の受像面の歪みに起因する画像のゆがみが大きくなってしまい、I・I管52のX線検出面の有効サイズは大きくならないので、結局、I・I管52のX線検出面のサイズを大きくすることによって、画像表示モニタの画面に映し出される立案用X線透視画像の視野範囲を広げることはできない。
【0006】
立案用X線透視画像の視野範囲が狭い場合、被検体Mの関心部位を十分に観察するには、I・I管52を水平方向に移動させることにより撮影位置を変更し視野範囲の異なる立案用X線透視画像を画像表示モニタの画面に映し出す操作を何度も繰り返す必要があるので、いきおい立案作業に長時間を要することになって、立案作業の能率が良くないだけでなく、被検体Mの負担も大きい。
【0007】
この発明は、上記の事情に鑑み、放射線治療対象の被検体における放射線照射領域を立案する為の立案用X線透視画像の視野範囲を適切な形で広くすることができる放射線治療計画装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明は、このような目的を達成するため、次のような構成をとる。
請求項1に記載の放射線治療計画装置は、被検体にX線ビームを照射するX線管と透過X線像を検出するX線検出器とを備え、X線管による被検体へのX線照射に伴ってX線検出器から出力される透過X線検出信号に基づき、放射線治療対象の被検体における放射線照射領域を放射線治療に先立って予め立案計画する為の立案用X線透視画像が画像表示モニタに映し出されるように構成された放射線治療計画装置において、前記X線検出器としてフラットパネル型X線検出器が配備されていると共に、立案用X線透視画像として現在撮影中のX線透視画像(撮影中透視画像)に既撮影のX線透視画像(既撮影透視画像)の一部または全部を撮影中透視画像と既撮影透視画像が重複する領域は既撮影透視画像の方をカットして継ぎ足した大視野透視画像を撮影中透視画像と既撮影透視画像の境界を示す境界表示指標と一緒に画像表示モニタの画面に映し出す大視野透視画像表示手段を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
(作用・効果)請求項1に記載の放射線治療計画装置を用いて、放射線治療対象の被検体における放射線照射領域を放射線治療に先立って予め立案計画する場合、X線管による被検体へのX線照射に伴ってX線検出器であるフラットパネル型X線検出器から出力される透過X線検出信号に基づき画像表示モニタに立案用X線透視画像が映し出されるが、その際、請求項1の発明の放射線治療計画装置では、大視野透視画像表示手段が、現在撮影中のX線透視画像(以下、適宜「撮影中透視画像」と略記)に既撮影のX線透視画像(以下、適宜「既撮影透視画像」と略記)の一部または全部を撮影中透視画像と既撮影透視画像が重複する領域は既撮影透視画像の方をカットして継ぎ足した大視野透視画像を立案用X線透視画像として、撮影中透視画像と既撮影透視画像の境界を示す境界表示指標と一緒に画像表示モニタの画面に映し出す。計画立案者は画像表示モニタの画面に映し出された立案用X線透視画像を観察しながら、放射線治療対象の被検体における放射線照射領域を決定してゆく。
【0010】
請求項1の発明の放射線治療計画装置によれば、画像表示モニタの画面に映し出される立案用X線透視画像が撮影中透視画像に既撮影透視画像の一部または全部が継ぎ足された大視野透視画像であると共に、フラットパネル型X線検出器の場合、受像面の歪みを全く伴わず、大視野透視画像には画像のゆがみが生じないので、立案用X線透視画像の視野範囲は、撮影中透視画像に継ぎ足された既撮影透視画像の一部または全部の分の視野範囲だけ、きっちり広くなることになる。X線検出器がイメージインテンシファイアの場合は、大視野透視画像にはI.I.管の受像面の歪みに起因する画像のゆがみがあるので、撮影中透視画像に既撮影透視画像を継ぎ足しても立案用X線透視画像の視野範囲が広くなったことにはならない。
【0011】
また、立案用X線透視画像では一緒に映し出される境界表示指標によって撮影中透視画像の領域と既撮影透視画像の領域が一目で認識できるので、画像表示モニタの画面に撮影中透視画像と既撮影透視画像とが接続状態で同時表示されていても、既撮影透視画像が立案用X線透視画像の観察の妨げとなることはない。
よって、請求項1に記載の放射線治療計画装置によれば、放射線治療対象の被検体における放射線照射領域を立案する為の立案用X線透視画像の視野範囲を適切な形で広げることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
続いて、この発明の一実施例を図面を参照しながら説明する。図1は実施例に係る放射線治療計画装置の全体構成を示すブロック図である。
【0013】
実施例の放射線治療計画装置は、図1に示すように、被検体Mにコーン状のX線ビームを照射するX線管1と被検体Mからの透過X線像を検出するX線検出器としてのフラットパネル型X線検出器(以下、適宜「FPD」と略記)2とが、被検体Mを挟んで対向配置態で配備されているガントリ3と、ガントリ3の手前に被検体Mを載置する天板4が天板長手方向(被検体Mの体軸Z方向)と天板短手方向(被検体Mの体軸Z方向と垂直なX方向)の水平移動が可能なようにして配備された寝台装置5とを備え、詳しくは後述するように、X線管1による被検体MへのX線照射に伴ってFPD2から出力される透過X線検出信号に基づき、後段の画像表示モニタ6に放射線治療対象の被検体における放射線照射領域を放射線治療に先立って予め立案計画する為の立案用X線透視画像が映し出されるように構成されている。
【0014】
X線管1とFPD2は、標準配置状態でX線管1の焦点とFPD2のX線検出面の中心を結ぶX線軸XAが装置のアイソセンター(機械的中心)MCを通るように対向配置されていると共に、X線管1とFPD2が回転駆動機構7により対向配置状態を維持したままアイソセンターMCを通る水平軸を回転軸として回転できるように構成されている。つまり、回転駆動機構7でX線管1とFPD2を水平軸の周りを回転させることにより、X線管1によるX線ビームの照射方向を変化させて撮影角度(撮影方向)が変えられるのである。
【0015】
X線管1は高圧電源(図示省略)を含む照射制御部1Aの制御を受けてコーン状のX線ビームを天板4の上の被検体Mに照射するように構成されている。
【0016】
FPD2は、極めて多数個の半導体素子等のX線検出素子が例えば縦1024×横1024程度のマトリックスでX線検出面にアレイ配列されたフラット形状の軽量な検出器である。このFPD2は受像面に歪みがないので、イメージインテンシファイアの場合には生じる受像面の歪みに起因する画像の周縁部のゆがみが無いX線検出器である。
また、FPD2は、パネル移動機構8によってX線軸XAの方向に往復移動可能であると共に、X線検出面の面方向に往復移動可能に構成されている。つまりFPD2をX線軸XAの方向に移動させることによりX線検出面における透過X線像の拡大率を変化させることができ、またFPD2をX線検出面の面方向に移動させることにより撮影位置を変化させることができるのである。
【0017】
一方、X線管1による被検体MへのX線照射に伴ってFPD2から出力される透過X線検出信号はデータ収集部(DAS)9により収集されて後段の検出信号処理部10に送り込まれる。検出信号処理部10は透過X線検出信号をX線透視画像に仕上げて画像表示モニタ6へ送り出す。画像表示モニタ6では送られてくるX線透視画像が立案用X線透視画像として画面に映し出されるように構成されている。
【0018】
他方、天板4は水平移動機構11によって天板長手方向(被検体Mの体軸Z方向)と天板短手方向(被検体Mの体軸Z方向と垂直なX方向)にそれぞれ移動させられるように構成されている。つまり天板4を天板長手方向あるいは天板短手方向に移動させてX線管1に体面する被検体Mの位置を変えることによって撮影位置を変化させることができるのである。なお、天板4は水平移動機構(図示省略)によって天板上下方向(Y方向)の昇降移動も可能となっており、被検体Mが乗り降りする際には天板4が下方に降ろされる。
【0019】
さらに、実施例の放射線治療計画装置は、立案用X線透視画像の視野範囲を広げる為に、立案用X線透視画像として現在撮影中のX線透視画像(撮影中透視画像)PAに既撮影のX線透視画像(既撮影透視画像)PBの一部または全部を撮影中透視画像PAと既撮影透視画像PBが重複する領域は既撮影透視画像の方をカットして継ぎ足した大視野透視画像Pを両透視画像PA,PBの境界を示す境界表示指標と一緒に画像表示モニタ6の画面に映し出す大視野透視画像表示部12を備えている。より具体的には、実施例装置の場合、大視野透視画像表示部12によって、例えば、図2に示すように、撮影中透視画像PAに既撮影透視画像PBが継ぎ足された大視野透視画像Pを撮影中透視画像PAと既撮影透視画像PBの境界を示す境界表示指標である境界ラインPLと一緒に画像表示モニタ6の画面に映し出すことができるように構成されている。以下、大視野透視画像表示部12の構成を具体的に説明する。
【0020】
実施例装置の場合、大視野透視画像表示部12は、図1に示すように、大視野透視画像データメモリ部13と既撮影透視画像データメモリ部14と、両メモリ部13,14の記憶動作をコントロールするメモリ制御部15と、境界ライン表示部16とからなる。
大視野透視画像データメモリ部13は1枚の大視野透視画像Pの画像データ、すなわち、検出信号処理部10からリアルタイムで送られてくる1枚の撮影中透視画像PAと継ぎ足される既撮影透視画像PBの必要部分の両方の画像データが記憶できるように構成されており、大視野透視画像データメモリ部13では、検出信号処理部10から撮影中透視画像PAの新たな画像データが送られてくる毎にデータ更新動作がおこなわれるように構成されている。大視野透視画像データメモリ部13に記憶されている大視野透視画像Pは、適時にメモリ制御部15によって読み出されて画像表示モニタ6へ出力される。
【0021】
既撮影透視画像データメモリ部14は、撮影中透視画像PAに継ぎ足す既撮影透視画像PBの画像データを撮影位置データと一緒に記憶するように構成されている。実施例装置では、既撮影透視画像PBの撮影位置データは、天板4の水平移動機構11から送り出される天板4の天板長手方向の位置データおよび天板短手方向の位置データと、パネル移動機構8から送り出されてくるFPD2のX線軸XA方向の位置データおよびFPD2のX線検出面の面方向の位置データ等である。
【0022】
また実施例装置の場合、既撮影透視画像データメモリ部14に記憶する既撮影透視画像PBは、計画立案者がマウスやキーボード等の入力機器類で構成される操作部17により画像表示モニタ6の画面上で適当と思うものを指定する構成となっている。既撮影透視画像PBの記憶枚数は特に制限はなく、操作部17で指定する既撮影透視画像PBはメモリがオーバーフローしない限り全て記憶される。但し、位置データが同じ既撮影透視画像PBは記憶済として重複記憶しないように構成されている。
【0023】
撮影中透視画像PAの場合、図3に示すように、FPD2の中心がX線軸XAと一致する標準配置状態の時の撮影中透視画像PAの中心が大視野透視画像Pの中心と一致すると共に、FPD2がX線検出面の面方向沿いにX線軸XAから離れるに従って離れる方向および距離に応じた距離だけ大視野透視画像P上での撮影中透視画像PAの位置が変化するようにして撮影中透視画像PAの画像データが大視野透視画像データメモリ部13で記憶される。
【0024】
したがって、FPD2の中心がX線軸XAと一致する標準配置状態にある時に、天板4だけを水平移動させて撮影位置を変える場合は、大視野透視画像P上での撮影中透視画像PAの位置は変わらず、撮影中透視画像PAの表示内容だけが変化する。例えば、天板4を天板長手方向に移動すると、大視野透視画像Pは図4に示す画像から、撮影中透視画像PAの表示内容の違う図5に示す画像に変化する。
また、天板4を停止したまま、FPD2をX線検出面の面方向沿いに移動させて撮影位置を変える場合は、大視野透視画像P上での撮影中透視画像PAの位置も、撮影中透視画像PAの表示内容も同時に変化する。FPD2を被検体Mの体軸Z方向に沿って頭側へ移動させると、図6に示すように、大視野透視画像P上での撮影中透視画像PAの位置が上方に移り、撮影中透視画像PAの表示内容もより被検体Mの頭側の像に変る。FPD2を被検体Mの体軸Z方向と体軸Z方向に垂直なX方向に沿って被検体Mの斜め足側へ移動させると、図7に示すように、大視野透視画像P上での撮影中透視画像PAの位置が斜め下方に移ると同時に、撮影中透視画像PAの表示内容も斜め足側の像へと変化する。
【0025】
既撮影透視画像PBの場合、既撮影透視画像PBと一緒に記憶されている位置データと撮影中透視画像PAおよび既撮影透視画像PBのサイズデータに基づき大視野透視画像データメモリ部13の撮影中透視画像PAの周りの画素のデータが既撮影透視画像PBと撮影中透視画像PAが重なる部分は既撮影透視画像PBのデータがカットされるようにして抽出されて大視野透視画像データメモリ部13へ記憶されることにより、撮影中透視画像PAに既撮影透視画像PBが旨く継ぎ合わされる構成となっている。なお、撮影中透視画像PAが更新された際、更新の前後で撮影中透視画像PAの撮影位置の変更がない場合は、視野範囲が同じであるので、既撮影透視画像PBの画像データは特に更新する必要はないので、そのまま維持される。
また、既撮影透視画像PBと撮影中透視画像PAの間でFPD2のX線検出面における透過X線像の拡大率に起因する画像倍率の相違がある場合は、パネル移動機構8から送られてくるFPD2のX線軸XA方向の位置データに基づき、既撮影透視画像PBの方の画像倍率を撮影中透視画像PAに合わせて画像データを大視野透視画像データメモリ部13へ記憶するようにする。
なお、上述した両データメモリ部13,14の記憶動作はメモリ制御部15により厳密にコントロールされる。
【0026】
さらに、実施例装置の場合、大視野透視画像データメモリ部13において撮影中透視画像PAの周縁にあたる画素は全て境界ライン表示部16によって完全白レベル(又は完全黒レベル)とするデータが記憶されるように構成されている。即ち、撮影中透視画像PAの周縁にあたる画素は境界ライン表示部16によって全て完全白レベル表示(又は完全黒レベル表示)とするデータが記憶されるように構成されている結果、大視野透視画像Pでは撮影中透視画像PAの周縁に位置する画素が全て完全白レベル表示(又は完全黒レベル表示)となって既撮影透視画像PBとの境界を明瞭に示す境界ラインPLとして大視野透視画像Pの中に出現することとなる。
【0027】
加えて、実施例装置では、操作部17により拡大透視モードを設定した場合に大視野透視画像表示部12が作動し、拡大透視モードが設定されない場合は、大視野透視画像表示部12は作動せず、検出信号処理部10から撮影中透視画像PAが直に画像表示モニタ6へ送られ、撮影中透視画像PAだけが立案用X線透視画像として画像表示モニタ6の画面いっぱいに表示される構成となっている。
【0028】
なお、実施例装置の場合、上述したように、既撮影透視画像データメモリ部14に記憶する既撮影透視画像PBは、計画立案者が操作部17により指定する構成であったが、以下のように、既撮影透視画像データメモリ部14に記憶する既撮影透視画像PBが撮影位置データに従って自動的に選別され記憶されるように構成されていてもよい。
例えば、撮影位置を逐次チェックし未記憶の撮影位置の既撮影透視画像PBは全て拾い出して撮影位置データと一緒に記憶するように構成することができる。この場合も既撮影透視画像PBの記憶枚数は特に制限はなく、操作部17により指定した既撮影透視画像PBはメモリがオーバーフローすると記憶の古いものが自動的に消去されて新規の既撮影透視画像PBが記憶できるように構成される。但し、撮影位置が同じ既撮影透視画像PBは記憶済として記憶しないように構成される。
そして、大視野透視画像データメモリ部13において撮影中透視画像PAの画像データが更新された際に、更新の前後で撮影中透視画像PAの撮影位置の変更がある場合は、大視野透視画像Pにおける撮影中透視画像PAの周辺部の画像データを撮影中透視画像PAの撮影位置データと既撮影透視画像PBの撮影位置データとに従って既撮影透視画像PBから抽出・編集して大視野透視画像データメモリ部13へ記憶して大視野透視画像Pを完成・出力するようにする。
【0029】
さらに、実施例装置の場合、計画立案者が操作部17により画像表示モニタ6の画面上で放射線照射領域を設定すると、図8に示すように、放射線照射領域設定部18によって設定された放射線照射領域PMが立案用X線透視画像に重畳表示されるように構成されている。また、放射線照射領域PMが重畳表示された立案用X線透視画像は立案済みX線画像として、照射計画画像印刷部19によりシートに印刷出力したり、立案用X線透視画像メモリ部20によって記憶できるようにも構成されている。照射計画画像印刷部19で印刷出力された立案済みX線画像や、照射計画画像メモリ部20に記憶された立案済みX線画像は、この後、実際に放射線を照射する治療実行段階で参照されることになる。
また、主制御部21は、操作部17の入力操作やX線撮影の進行状況に応じて装置の各部に適時に指令やデータを送出し装置の動きを統括する役割を果たすものである。
【0030】
続いて、以上に述べた構成を有する実施例の装置における立案用X線透視画像の視野範囲の拡大機能を図面を参照しながら説明する。図9は実施例装置における立案用X線透視画像の視野範囲拡大プロセスを示すフローチャートである。
以下では、被検体Mの体表面に位置合わせマーク(例えば金属チップ)を付けて天板4の上に被検体Mが載せられた後、天板4を移動させながら実施例装置に設けられた基準位置合わせ用の投光機(図示省略)を使って被検体Mの体表面の位置合わせマークを実施例装置のアイソセンタMCに合致させてから、既にX線透視撮影を開始した時点から説明する。なお、X線透視撮影の開始に伴って計画立案者は、画像表示モニタ6の画面上で立案用X線透視画像を観察するのと平行して、視野範囲の拡大が必要な既撮影透視画像PBの指定を随時おこなう。また、操作部17によって拡大透視モードが既に設定されているものとする。
【0031】
〔ステップS1〕大視野透視画像データメモリ部13において撮影中透視画像PAの画像データが更新される際に撮影位置の変更の有り無しがメモリ制御部15によりチェックされる。
撮影中透視画像PAの撮影位置が変更されていなければ、次のステップS2に進む。撮影中透視画像PAの撮影位置が変更されていれば、ステップS3へ飛ぶ。
【0032】
〔ステップS2〕大視野透視画像データメモリ部13において撮影中透視画像PAの画像データが更新されると共にデータ更新後の大視野透視画像Pを立案用X線透視画像として画像表示モニタ6へ出力してから、直ちにステップ1へ戻る。
【0033】
〔ステップS3〕撮影中透視画像PAに継ぎ足す既撮影透視画像PBの指定の有り無しがメモリ制御部15によりチェックされる。
指定された既撮影透視画像PBが無ければ、次のステップS4に進む。指定された既撮影透視画像PBが有れば、ステップS5へ飛ぶ。
【0034】
〔ステップS4〕大視野透視画像データメモリ部13において撮影中透視画像PAの画像データおよび境界ラインPLのデータとが更新されると共にデータ更新後の大視野透視画像Pを立案用X線透視画像として画像表示モニタ6へ出力してから、直ちにステップ1へ戻る。
【0035】
〔ステップS5〕大視野透視画像データメモリ部13において既撮影透視画像PBの画像データが更新されると共に、撮影中透視画像PAおよび境界ラインPLのデータが更新される。
【0036】
〔ステップS6〕大視野透視画像データメモリ部13における撮影中透視画像PAと境界ラインPLおよび既撮影透視画像PBの3者のデータが更新された大視野透視画像Pを立案用X線透視画像として画像表示モニタ6へ出力してから、直ちにステップ1へ戻る。
【0037】
そして、X線透視撮影の継続と拡大透視モードの設定が続く限り、ステップS1〜S6のプロセスに従って撮影中透視画像PAに既撮影透視画像PBを継ぎ足した大視野透視画像Pが撮影中透視画像PAと既撮影透視画像PBの境界を示す境界表示指標である境界ラインPLと一緒に画像表示モニタ6の画面に映し出され、計画立案者の観察に供されることとなる。
【0038】
以上に述べたように、実施例の放射線治療計画装置の場合、画像表示モニタ6の画面に映し出される立案用X線透視画像が撮影中透視画像PAに既撮影透視画像PBの一部または全部が継ぎ足された大視野透視画像Pであると共に、FPD2の場合、受像面の歪みを全く伴わず、大視野透視画像Pには画像のゆがみが生じないので、立案用X線透視画像の視野範囲は、撮影中透視画像PAに継ぎ足された既撮影透視画像PBの一部または全部の分の視野範囲だけ、きっちり広くなる。
また、立案用X線透視画像では一緒に映し出される境界表示指標である境界ラインPLによって撮影中透視画像PAの領域と既撮影透視画像PBの領域が一目で識別できるので、画像表示モニタ6の画面に撮影中透視画像PAと既撮影透視画像PBとが接続状態で同時表示されていても、既撮影透視画像PBが立案用X線透視画像の観察の妨げとなることはない。
したがって、実施例の放射線治療計画装置によれば、放射線治療対象の被検体Mにおける放射線照射領域を立案する為の立案用X線透視画像の視野範囲を適切な形で広げることができる。
【0039】
この発明は、上記実施の形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
(1)実施例装置では、FPD2がX線検出面の面方向に移動可能な構成であったが、FPD2がX線検出面の面方向には移動不可でX線検出面の中心が常にX線軸XAと一致している構成の装置を、変形例として挙げることができる。
【0040】
(2)この発明の放射線治療計画装置が適用される放射線照射装置は、ライナックに限らない。
【0041】
【発明の効果】
請求項1の発明の放射線治療計画装置の場合、画像表示モニタの画面に映し出される立案用X線透視画像が撮影中透視画像に既撮影透視画像の一部または全部が継ぎ足された大視野透視画像であると共に、フラットパネル型X線検出器の場合、受像面の歪みを全く伴わず、大視野透視画像には画像のゆがみが生じないので、立案用X線透視画像の視野範囲は、撮影中透視画像に継ぎ足された既撮影透視画像の一部または全部の分の視野範囲だけ、きっちり広くなる。
【0042】
また、立案用X線透視画像では一緒に映し出される境界表示指標によって撮影中透視画像の領域と既撮影透視画像の領域が一目で認識できるので、画像表示モニタの画面に撮影中透視画像と既撮影透視画像とが接続状態で同時表示されていても、既撮影透視画像が立案用X線透視画像の観察の妨げとなることはない。
よって、請求項1の発明の放射線治療計画装置によれば、放射線治療対象の被検体における放射線照射領域を立案する為の立案用X線透視画像の視野範囲を適切なかたちで広くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係る放射線治療計画装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】実施例装置で表示される大視野透視画像の一例を示す模式図である。
【図3】大視野透視画像における撮影中透視画像の位置を説明する為の模式図である。
【図4】大視野透視画像の中の撮影中透視画像の表示像の一例を示す模式図である。
【図5】FPDの位置変化に伴う大視野透視画像中の撮影中透視画像の表示像変化の一例を示す模式図である。
【図6】FPDの位置変化に伴う大視野透視画像中の撮影中透視画像の表示像変化の一例を示す模式図である。
【図7】FPDの位置変化に伴う大視野透視画像中の撮影中透視画像の表示像変化の他の例を示す模式図である。
【図8】放射線照射領域PMが重畳表示された立案用X線透視画像の一例を示す模式図である。
【図9】実施例装置における立案用X線透視画像の視野範囲拡大プロセスを示すフローチャートである。
【図10】従来の放射線治療計画装置の要部構成を示す概略図である。
【符号の説明】
1 …X線管
2 …フラットパネル型X線検出器(FPD)
6 …画像表示モニタ
12 …大視野透視画像表示部
16 …境界ライン表示部
M …被検体
P …大視野透視画像
PA …撮影中透視画像
PB …既撮影透視画像
PL …境界ライン(境界表示指標)
PM …放射線照射領域
Claims (1)
- 被検体にX線ビームを照射するX線管と透過X線像を検出するX線検出器とを備え、X線管による被検体へのX線照射に伴ってX線検出器から出力される透過X線検出信号に基づき、放射線治療対象の被検体における放射線照射領域を放射線治療に先立って予め立案計画する為の立案用X線透視画像が画像表示モニタに映し出されるように構成された放射線治療計画装置において、前記X線検出器としてフラットパネル型X線検出器が配備されていると共に、立案用X線透視画像として現在撮影中のX線透視画像(撮影中透視画像)に既撮影のX線透視画像(既撮影透視画像)の一部または全部を撮影中透視画像と既撮影透視画像が重複する領域は既撮影透視画像の方をカットして継ぎ足した大視野透視画像を撮影中透視画像と既撮影透視画像の境界を示す境界表示指標と一緒に画像表示モニタの画面に映し出す大視野透視画像表示手段を備えていることを特徴とする放射線治療計画装置。
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