JP4200466B2 - 鉄錯体を触媒とする重合体の製造方法 - Google Patents

鉄錯体を触媒とする重合体の製造方法 Download PDF

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本発明は、環状アミン化合物を配位子にもつ新規鉄錯体及び、該鉄錯体とラジカル発生剤の存在下、ラジカル重合性単量体を重合する重合体の製造方法に関する。より詳しくは、本発明はラジカル重合性単量体の種類、組み合わせに対して幅広い範囲で適用可能な環状アミン化合物を配位子にもつ鉄錯体を触媒として使用し、分子量、分子構造を制御しつつ、生成した重合体の化学変換を可能にする末端官能基をもつ重合体を製造する方法、及び該重合物中から鉄錯体を回収する方法に関する。
従来のラジカル重合と異なり、ポリマー成長末端が化学変換可能な活性を有するリビングラジカル重合、例えば、原子移動ラジカル重合(ATRP)(非特許文献1参照)、ニトロキシドが介するラジカル重合(NMP)(非特許文献2参照)、硫黄類化合物経由可逆付加チェイントランスファーラジカル重合(RAFT)(非特許文献3参照)などは、ポリマーの分子量、モノマー残基序列、次元構造などを任意に制御できることから、この10年以来多くの注目を集めて来た。その中で、特に、金属錯体とハロゲン化合物との組み合わせによる原子移動ラジカル重合系(ATRP)はその広範に渡るモノマー種類の適応性が示され、それを用いるポリマーの精密制御方法は、ポリマーの合成だけではなく、基材表面・界面の化学修飾、デバイス構築にも広がるようになった。
ATRP法で用いられる金属触媒は、通常、その中心金属は銅、またはルテニウムであり、それらは明確な金属錯体構造を有するものではなく、金属イオンとそれの配位子となる化合物(例えばアミン類)を重合反応系に混合してから用いることが多い。このような重合系では、金属の触媒活性は系内の配位子と結合し、錯体を形成してから発現される。配位子の配位力があまり強くない場合、錯体を形成しない金属が生じ、これらの金属は触媒活性を示すことができなくなる。従って、金属の触媒効率は低下し、金属濃度増加の必要性や、高分子量ポリマー製造に不適合となるなどデメリットが生じる。金属濃度増加は、重合反応後の金属除去工程に多くの負荷をもたらし、また、金属毒性による環境汚染の可能性も生じる。一方、金属の触媒効率の低下を防ぐ為に、アミン類配位子などを余分に使う場合がある(例えば特許文献1および2参照)が、余分のアミン類配位子の使用により、重合反応において、モノマーの種類などが変わると反応制御が困難となること、モノマー以外の化合物の混入によるポリマー精製が煩雑になることなど、多くの問題が提起されている。
一般的に、ATRP法では、活性ハロゲン有機化合物を重合開始剤として用いる。ATRP法での活性ハロゲン化合物開始剤を従来のラジカル発生剤(例えば、過酸化物ラジカル発生剤、アゾ系ラジカル発生剤)に入れ替えることで重合を行うことをreverse型ATRP(R−ATRP)と呼ぶ。R−ATRP法によれば、従来のラジカル重合プロセスに金属触媒を加えることで、重合物の末端に反応性残基を導入することができ、それによるブロック共重合体の合成も可能となる。従って、R−ATRP法は、既存生産プロセスにて構造が制御された重合体を得ることができる有用な製造法である。R−ATRP法でも、基本的にアミン類を配位子とする銅イオン錯体によるものが多く、ATRP法での同様な問題点、例えば、金属イオン濃度向上、配位子濃度向上、触媒効率低下、ポリマー精製煩雑、ポリマー着色などを抱えている。
金属錯体によるリビングラジカル重合において、安全かつ安価な鉄触媒による重合体製造は環境に優しい視点から多くの注目を集めている。(非特許文献4)。
ATRP法において、鉄イオンと配位子(アミン類、フォスフィン類、亜リン酸エステル類化合物)を重合性モノマーと混合して行う重合体の製造法や、または合成した鉄錯体と重合性モノマーを混合して行う重合体製造法が開示されている(非特許文献5)。例えば、2価の鉄イオンとアミン系配位子をモノマーと混合し、それにハロゲン開始剤を用いたメチルメタクリレートの重合法(非特許文献6)、または、2価の鉄イオンとリン化合物を配位子とする鉄錯体及びハロゲン開始剤を用いるメチルメタクリレートの重合法が報告されている(例えば非特許文献7、特許文献3)。
R−ATRPにおいても、環境に優しい鉄イオン化合物を触媒とすることも検討されている。例えば、FeClとトリフェニルフォスフィンの混合物を触媒にしたメチルメタクリレートの重合(非特許文献8)、または、有機オニウムカチオンとアニオン性である塩化鉄系化合物で構成された鉄錯体を触媒として用いるメタクリレートやスチレンの重合(非特許文献9)が報告されている。しかしながら、これらの鉄錯体または鉄イオン化合物を用いたR−ATRPラジカル重合では、ブロック共重合体の制御が困難であることなど、改善すべき問題点が多いものであった。
一方、金属触媒を用いるリビングラジカル重合系では、重合後ポリマーからの金属除去が大きな課題となっている。ある意味では、重合反応それ自体より、残存金属をポリマーから除去することがリビングラジカル重合実用化への現実的な問題でもある。金属を除くため、ポリマーの精製工程では、錯化剤を利用するなどの方法(特許文献4及び5)が検討されている。環境に優しい鉄イオン化合物を触媒として用いることは、銅、コバルト、ルテニウムなど他の金属イオンに比べ、無毒性であり、後処理など工程を含めて、重合体製造全プロセスでのメリットが大きい。しかしながら、鉄イオンを用いるリビングラジカル重合では、銅イオン錯体系に比べて、重合効率が低いなどの問題以前に、鉄触媒の不安定性、鉄触媒の再利用困難など製造プロセスにおける問題点も問われている。
リビングラジカル重合反応において、高い触媒活性を有する鉄錯体を使用して重合反応を行い、かつその鉄錯体を重合反応系から除去し、廃棄することなく、単純な方法で回収することは、極めて重要な課題であると考えられる。
特開平8−41117号公報 特開2002−80523号公報 特許2,946,497号公報 特開2002−356510号公報 特開2005−105265号公報 J. Wangら、Macromolecules, 1995年、28巻、7901頁 C. J. Hawkerら、Macromolecules, 1996年、29巻、5245頁 A. Ajayghoshら、Macromolecules, 1998年、31巻、1463頁 Matyjaszewskiら、 Chem. Rev. 2001年, 101巻, 2921頁 澤本ら、第53回高分子討論会予稿集、2004年、2B16, 2456頁 Matyjaszewskiら、 Macromolecules, 1997年、30巻、8161頁 安藤ら, Macromolecules, 1997年、30巻、4507頁 G.Moineauら, Macromolecules, 1998年、31巻、545頁 M.Teodorescuら, Macromolecules, 2000年、33巻、2335頁
本発明が解決しようとする課題は、環状アミン化合物を配位子に持つ鉄錯体とラジカル発生剤とからなる重合触媒系の存在下、ラジカル重合性単量体を比較的短時間で定量的に重合が可能で、末端に化学変換可能な官能基を有する重合体およびブロック共重合体を製造できる方法を提供することであり、さらに、重合反応後、ポリマーを汎用性溶剤中単純再沈殿することで、鉄錯体を溶剤中に高い回収率で回収する方法を提供することである。
本発明では、触媒活性を示す金属錯体として、環状アミン化合物を配位子に持つ鉄錯体に注目し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、
一般式(1)で表される新規鉄錯体および、該鉄錯体(Y)を重合触媒とし、ラジカル重合開始剤(Z)の存在下で、少なくとも1種類のラジカル重合性単量体を重合することを特徴とする重合体の製造方法、及び該重合体の重合後、他のラジカル重合性単量体をブロック重合することを特徴とするブロック共重合体の製造方法、さらに鉄錯体を簡便に回収する方法を提供する。
Figure 0004200466
(式中、Feは3価であり、Xは塩素原子又は臭素原子を表し、R1、R及びRは、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜8の置換基を有していても良いベンジル基からなる群から選ばれる基を表し、m及びnは2〜3の整数を表す。但し、m及びnが全て2であって、R1、R又はRが、全てメチル基であるか、全てエチル基である基を除く。)
本発明は、上記一般式(1)で表される鉄錯体とラジカル発生剤を用いることで、他の配位子など要らず、重合反応系が極めて単純となり、かつその鉄錯体の優れた触媒活性により、そのラジカル重合反応が定量的に進行する。また、得られた重合体は通常のラジカル重合では得られない活性末端を形成しているので、定量重合後、他のラジカル重合性単量体を加えることで、ブロック共重合体を簡便に製造することができる。さらに、これらの鉄錯体は重合反応終了後、ポリマーを再沈殿させる単純な作業過程で、錯体を効率的に溶剤相へ溶かすことにより容易に回収することができる。即ち、本発明は、上記鉄錯体を従来のラジカル重合系に用いることで、工業プロセスでの重合反応の制御に多くのメリットをもたらすことができる。
本発明の効果として、鉄錯体を用いることで、銅錯体など有毒な金属イオン系と比較し、環境汚染を抑制することもでき、また、得られたポリマーの後処理過程も単純化することができることも挙げられる。
本発明では、重合触媒となる金属錯体として、環状アミン化合物が配位され、かつハロゲンを有する鉄錯体(Y)を使用して、これと重合開始剤とを組み合わせることで、ラジカル重合性モノマーの重合をリビングラジカル重合形式のR−ATRPで進行させることにより、その重合を定量的に進行させることができると同時に、末端に化学変換可能な機能性残基が結合したポリマーが得られる。
本発明において使用する鉄錯体(Y)の構造として、下記一般式(1)で表される構造の鉄錯体が挙げられる。該構造の鉄錯体により、ラジカル重合性モノマーを定量的に重合させて、R−ATRP型重合体を製造することができる。
Figure 0004200466
(式中、Feは3価であり、Xは塩素原子又は臭素原子を表し、R1、R及びRは、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜8の置換基を有していても良いベンジル基からなる群から選ばれる基を表し、m及びnは2〜3の整数を表す。但し、m及びnが全て2であって、R1、R又はRが、全てメチル基であるか、全てエチル基である基を除く。)
上記一般式(1)で示される鉄錯体において、環状アミン化合物の基本骨格としては、具体的には、1,4,7−トリアザシクロノナン(m=n=2)、1,4,7−トリアザシクロデカン(m=2、n=3)、1,4,8−トリアザシクロウンデカン(m=3、n=2)、1,5,9−トリアザシクロドデカン(m=n=3)が挙げられるが、簡便に製造ができる点で1,4,7−トリアザシクロノナン及び1,5,9−トリアザシクロドデカン骨格好ましく、1,4,7−トリアザシクロノナン骨格がより好ましい。
上記一般式(1)で示される鉄錯体においてR1、R、Rの炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基等が挙げられる。
上記一般式(1)で示される鉄錯体においてR1、R、Rの炭素数1〜8の置換基を有していても良いベンジル基としては、例えば、ベンジル基、4−メチルベンジル基、4−エチルベンジル基、4−n−プロピルベンジル基、4−イソプロピルベンジル基、4−n−ブチルベンジル基、4−イソブチルベンジル基、4−t−ブチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−エトキシベンジル基、4−n−プロポキシベンジル基、4−イソプロポキシベンジル基、4−n−ブトキシベンジル基、4−イソブトキシベンジル基、4−t−ブトキシベンジル基、4−トリフルオロメチル基等が挙げられる。
上記一般式(1)で示される鉄錯体において、環状アミン化合物としては、例えば、1,4−ジメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,7−トリ−n−プロピル−1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,7−トリ−n−ブチル−1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,7−トリ−n−ペンチル−1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,7−トリ−n−ヘキシル−1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,7−トリ−n−オクチル−1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,7−トリ−n−ドデシル−1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,7−トリベンジル−1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,7−トリス(4−メチルベンジル)−1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,7−トリス(4−n−ブチルベンジル)−1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,7−トリス(4−t−ブチルベンジル)−1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,7−トリス(4−メトキシベンジル)−1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,7−トリス(4−ブトキシベンジル)−1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,7−トリス(4−オクチロキシベンジル)−1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,7−トリス(4−トリフルオロメチル)−1,4,7−トリアザシクロノナン、1−ベンジル−4,7−ジメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン、1−ベンジル−4,7−ジエチル−1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロデカン、1,4,7−トリエチル−1,4,7−トリアザシクロデカン、1,4,7−トリ−n−ブチル−1,4,7−トリアザシクロデカン、1,4,7−トリベンジル−1,4,7−トリアザシクロデカン、1,4,7−トリス(4−メチルベンジル)−1,4,7−トリアザシクロデカン、1,4,7−トリス(4−メトキシベンジル)−1,4,7−トリアザシクロデカン、1,4,7−トリス(4−トリフルオロメチル)−1,4,7−トリアザシクロデカン、1,4,8−トリメチル−1,4,8−トリアザシクロウンデカン、1,4,8−トリエチル−1,4,8−トリアザシクロウンデカン、1,4,8−トリ−n−ブチル−1,4,8−トリアザシクロウンデカン、1,4,8−トリベンジル−1,4,8−トリアザシクロウンデカン、1,4,8−トリス(4−メチルベンジル)−1,4,8−トリアザシクロウンデカン、1,4,8−トリス(4−メトキシベンジル)−1,4,8−トリアザシクロウンデカン、1,4,8−トリス(4−トリフルオロメチル)−1,4,8−トリアザシクロウンデカン、1,5,9−トリメチル−1,5,9−トリアザシクロドデカン、1,5,9−トリエチル−1,5,9−トリアザシクロドデカン、1,5,9−トリ−n−ブチル−1,5,9−トリアザシクロドデカン、1,5,9−トリベンジル−1,5,9−トリアザシクロドデカン、1,5,9−トリス(4−メチルベンジル)−1,5,9−トリアザシクロドデカン、1,5,9−トリス(4−メトキシベンジル)−1,5,9−トリアザシクロドデカン、1,5,9−トリス(4−トリフルオロメチル)−1,5,9−トリアザシクロドデカン等が挙げられる。
上記一般式(1)で表されるような、3価の鉄イオンに環状アミン化合物が配位し、かつ鉄周辺にハロゲン基を有する鉄錯体(Y)としては、Journal of American Chemical Society 1987年、109巻、7387頁に記載されているように、1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナンと塩化鉄(III)6水和物から1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン・FeCl錯体が合成されているが、Inorganica Chimica Acta 1994年、216巻、89頁に記載されているように、1,4,7−トリイソブチル−1,4,7−トリアザシクロノナンと塩化鉄(III)6水和物からは対応するトリアザシクロノナン・FeCl錯体が合成できない。
本発明によれば、塩化鉄(III)6水和物の替わりに無水塩化鉄(III)を用いることにより、上記一般式(1)で表されるような鉄錯体(Y)を良好な収率で得ることができる。
また、無水臭化鉄(III)を用いても、同様に上記一般式(1)で表される鉄錯体を製造することができる。
更には、脱水エーテルのような、水分量の少ない乾燥溶媒を使用して合成することが望ましい。かかる非水系での合成法により、上記一般式(1)中のR、R、Rの炭素数を増大させることで、重合性モノマーや有機溶剤に対して高い溶解性を有する鉄錯体(Y)を提供することができる。
上記一般式(1)で表されるような、3価の鉄イオンに環状アミン化合物が配位し、かつ鉄周辺にハロゲン基を有する鉄錯体(Y)と、重合開始剤としてラジカル発生剤を使用することにより、R−ATRP法によってラジカル重合性モノマーの重合を定量的に進行させることができる。この重合により末端に化学変換が可能なポリマー、およびこのポリマーを単離後マクロイニシエーターとして用いることによるポリマー、段階的にモノマーを添加してからなるポリマー、ブロックコポリマーなどの構造が制御されたポリマーを得ることができる。
特に、この錯体を用いる際の大きな特徴として、鉄錯体(Y)とラジカル発生剤を組み合わせることで、ラジカル重合性モノマーからの重合体の分子量分布が1.1〜1.4となるポリマーを簡単に得ることができる。この方法で得られたポリマー末端にはハロゲン原子が結合しているので、これらのポリマーをATRP重合のマクロイニシエーターとして用いることもできるし、その末端を他の化合物残基に変えることもできる。
また、一般式(1)で示された鉄錯体を用い、それを重合後、回収することができる。
本発明での一般式(1)で示される鉄錯体は、(メタ)アクリレート類、スチレン類、アクリルアミド類、ビニルピリジン類などいずれのラジカル重合性単量体の重合に有効に用いることができる。また、上記鉄錯体を用いたR−ATRP重合法では、高分子量の重合体、高分子量のブロック共重合体を容易に与えることができる。
本発明での上記一般式(1)で示された鉄錯体を用いる重合反応では、ラジカル発生剤としては、通常、ビニル系単量体類のラジカル重合に際して用いられているようなものであれば、いずれをも使用し得ることは勿論ではあるが、それらのうちでも特に代表的なものを例示すれば、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、t−ブチルパーオキシベンゾエートなどのパーオキシエステル、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのパーオキシケタール等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物等があげられる。
また、ラジカル発生剤として、水溶性過酸化物、水溶性アゾ化合物を用いることもできる。例えば、ヒドロキシ−t−ブチルパーオキサイド、過酸化硫酸アンモニウム、過酸化硫酸カリウム、過酸化水素如く過酸化物、また例えば、アゾ系重合開始剤であるVA−046B,VA−057,VA−060,VA−067,VA−086,VA−044,V−50,VA−061,VA−080などを挙げることができる。特にアゾ系水溶性開始剤を用いることで、ポリマーの片末端に、開始剤残基由来の有用な官能基を導入することができる。
また、ラジカル発生剤として、活性ハロゲン化合物、例えば、α−ハロゲノカルボニル類化合物、α−ハロゲノカルボン酸エステル類化合物、ハロゲンメチルアレン類活性メチレン化合物またはポリハロゲン化アルカン類化合物などを併用してもよい。より詳しくは、1,1−ジクロロアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトン、1,1−ジブロモアセトフェノン、1,1−ジブロモアセトン、などのカルボニル類化合物、または、2−ブロモ−2−メチルプロパン酸エチル、2−ブロモ−2−メチルプロパン酸アントラセニルメチル、2−クロロ−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチル、1,2−ビス(α−ブロモプロピオニルオキシ)エタンの如くエステル類、クロロメチルベンゼン、ブロモメチルベンゼン、ヨードメチルベンゼン、ジクロロメチルベンゼン、ジブロモメチルベンゼン、1−フェニルエチルクロライド、1−フェニルエチルブロマイド如く活性メチレン(メチン)型アレン類または四塩化炭素、四臭化炭素の如くポリハロゲン類の化合物などを併用してもよい。
ラジカル発生剤として、三つ以上の活性点を有する化合物を併用することで、星型ポリマーを簡単に合成することできる。例としては、トリクロロメチルベンゼン、トリブロモメチルベンゼン、テトラクロロメチルベンゼン、テトラブロモメチルベンゼン、ヘキサクロロメチルベンゼン、ヘキサブロモメチルベンゼン如く活性メチレン型ハロゲンメチルアレン類化合物などがあげられる。
本発明での鉄触媒とラジカル発生剤の組み合わせは、ラジカル重合性単量体全般に適応できる。かかる重合性単量体としては、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリアミド類、スチレン類、ビニルピリジン類などを取りあげることができる。より詳しくは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ジメチルアミノエチルメタクリレートなどのメタクリレート類モノマー、または、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ジメチルアミノエチルアクリレートなどのアクリレート類モノマー、または、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドなどアクリルアミド類モノマー、または、スチレン、2−クロロメチルスチレン、3−クロロメチルスチレン、4−クロロメチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−ビニル安息香酸エステルなど、スチレン類モノマー、またはp−ビニルピリジン、o−ビニルピリジンなどのビニルピリジン類モノマーを用いることができる。
本発明の上記一般式(1)による重合では、これらの重合性単量体の単独または二種類以上を同時に反応に用いることもできる。また、二種類以上のラジカル重合性単量体を重合反応の一定時間毎に加えて使用することもできる。第一のラジカル重合性単量体が消費されてから次のラジカル重合性単量体を加えることで、得られるポリマーがジブロック、またはトリブロックまたはそれ以上のブロック共重合体の構造を取ることができる。ブロック共重合体の合成において、重合性モノマーをスチレン系と(メタ)アクリレート系から選定することで、その二つのポリマー骨格からなるブロック共重合体を得ることができる。同様に、スチレン系とビニルピリジン系とのブロック共重合体、スチレン系とアクリルアミド系とのブロック共重合体、(メタ)アクリレート系とアクリルアミド系からのブロック共重合体を得ることができる。また、親水性モノマーと疎水性モノマーを用いることで、親水性ポリマー骨格と疎水性ポリマー骨格からなる両親媒性ブロック共重合体を得ることができる。または、二種類の親水性モノマーからの重合により、二重親水性ブロック共重合体を得ることもできる。
本発明でのラジカル発生剤と上記一般式(1)の鉄錯体を混合し、上記重合性単量体の重合を行う際、前記鉄錯体をラジカル発生剤1モルに対して1〜6モル、好ましくは1.5〜3モル使用することが好ましい。
また、上記ラジカル発生剤と鉄錯体の好ましいモル比を前提に、本発明でのラジカル重合性単量体とラジカル発生剤とのモル比は50〜8000であれば、好適に重合を行うことができる。ラジカル発生剤とラジカル重合性単量体とのモル比を変えることにより、数平均分子量を大きくしたり、または小さくしたりすることができる。特に、数平均分子量が大きい重合体又はブロック共重合体を得るためには、ラジカル重合性単量体のモル数を高く設定することが望ましい。
本発明での一般式(1)で示された上記鉄錯体を用いて重合反応を行う際、反応温度を室温以上で、好ましくは、30〜130℃で反応を行うことができる。
反応時間は、触媒系の種類、ラジカル重合性単量体の種類及び反応温度によりその反応時間を設定することが望ましい。更に、反応時間の設定は、得られる重合体の分子量制御に合わせて、設定することが望ましい。
本発明の重合反応においては、溶媒なしでのバルク重合、又は溶媒存在下での溶液重合、又はアルコール類、水性媒体の存在下での重合などの異なる重合方法が適用できる。
本発明の上記一般式(1)の鉄錯体による重合反応に用いることができる溶剤としては、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、アニソール、シアノベンゼン、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等が挙げられる。また、水および水と溶解し合う有機溶剤を混合して得る水性媒体中、重合反応も行うこともできる。
本発明での一般式(1)で示された上記鉄錯体を触媒として用いた重合では、その重合反応終了後、反応液をアルコール類、アセトン、エーテル類、水などの媒体中で沈殿させる作業により、重合体だけを沈殿させ、鉄錯体をそれらの媒体に溶解させることができる。従って、得られた重合体からは鉄錯体が除去され、媒体中の鉄錯体は濃縮することで回収することができる。
上記触媒回収用媒体は有機溶剤単独、または有機溶剤と水との混合溶媒を好適に用いることができる。
本発明の製造方法においては、上記一般式(1)で表される鉄錯体を用いることにより、銅錯体など有毒な金属イオン系と比較し、環境汚染を抑制することもでき、また、得られたポリマーの後処理過程も単純化することができる。
また本発明の製造方法においては、上記一般式(1)で表される鉄錯体とラジカル発生剤を用いることで、他の配位子など要らず、重合反応系が極めて単純となり、かつその鉄錯体の優れた触媒活性により、そのラジカル重合反応が定量的に進行する。また、得られた重合体は通常のラジカル重合では得られない活性末端を形成しているので、定量重合後、他のラジカル重合性単量体を加えることで、ブロック共重合体を簡便に製造することができる。
このような本発明の製造方法により得られた重合体及びブロック共重合体は、種々の用途、例えばインキ、顔料分散、カラーフィルター、フィルム、塗料、成形材料、接着剤、電気・電子品部材、医療用部材など広範に使用することができる。
以下に実施例および比較例をもって、本発明をより詳しく説明する。
実施例中における測定は、以下の方法により行った。
(GPC測定法)
Waters社製GPC600コントロールシステム(RI検出器:610示差屈折計システム)、GPCカラム:Shodex社製GPC KF−800シリーズ:KF−802×2本+KF−803×1本+KF−804×1本、溶離液:THF、流速:1.0mL/min、温調:40℃にて測定した。
(NMR測定)
H−NMRの測定は、日本電子(株)製のLambda300にて行った。
(単結晶X線構造解析)
単結晶X線構造解析は単結晶X線構造解析装置RASA5R型(理学電機製)にて行った。
(実施例1)<鉄錯体1の合成>
アルゴン雰囲気下、100mLのシュレンク管に、無水FeCl 178mg(1.1mmol)と無水ジエチルエーテル40mLを加え、完全に溶解させたのち、Inorganica Chimica Acta 1999年、295巻、189頁記載の方法に従い合成した1−ベンジル−4,7−ジメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン247mg(1.0mmol)の無水ジエチルエーテル溶液10mLを室温でゆっくり滴下し、1時間撹拌した後、錯体1を含む粗生成物をろ過により分離した。この固体をアセトニトリル50mLに加熱溶解させ不溶物をろ過により除去した後、ろ液を濃縮して、山吹色の鉄錯体1(化3)を得た。(収量:323mg、収率94%)。錯体の構造は単結晶X線構造解析により確認した。それを図1に示す。
Figure 0004200466
(実施例2)<鉄錯体2の合成>
アルゴン雰囲気下、100mLのシュレンク管に、無水FeCl 422mg(2.6mmol)と無水ジエチルエーテル80mLを加え、完全に溶解させたのち、Journal of American Chemical Society 1996年、118巻、11575頁記載の方法に従い合成した1,4,7−トリス(4−メトキシベンジル)−1,4,7−トリアザシクロノナン978mg(2.0mmol)の無水ジエチルエーテル溶液15mLを室温でゆっくり滴下し、1時間撹拌した後、錯体2を含む粗生成物をろ過により分離した。この固体を塩化メチレン130mLに溶解させ不溶物をろ過により除去した後、ろ液を濃縮して、山吹色の鉄錯体2(化4)を得た(収量:1.22g、収率94%)。錯体の構造は単結晶X線構造解析により確認した。それを図2に示す。
Figure 0004200466
(実施例3)<鉄錯体3の合成>
アルゴン雰囲気下、100mLのシュレンク管に、無水FeCl 162mg(1.0mmol)と無水ジエチルエーテル40mLを加え、完全に溶解させたのち、Organometallics 1996年、15巻、491頁記載の方法に従い合成した1,4,7−トリベンジル−1,4,7−トリアザシクロノナン533mg(1.33mmol)の無水ジエチルエーテル溶液10mLを室温でゆっくり滴下し、1時間撹拌した後、錯体3を含む粗生成物をろ過により分離した。この固体を塩化メチレン100mLに溶解させ不溶物をろ過により除去した後、ろ液を濃縮して、黄色の鉄錯体3(化5)を得た(収量:533mg、収率95%)。
Figure 0004200466
以下の比較例では、無水FeClの替わりにFeCl・6HOを用いた結果を示す。
(比較例1)
アルゴン雰囲気下、100mLのシュレンク管に、FeCl・6HO 300mg(1.1mmol)と無水ジエチルエーテル40mLを加え、完全に溶解させたのち、1,4,7−トリベンジル−1,4,7−トリアザシクロノナン400mg(1.0mmol)の無水ジエチルエーテル溶液10mLを室温でゆっくり滴下し、2時間撹拌した後、錯体3を含む粗生成物をろ過により分離した。この固体をメタノール200mLで洗浄し、黄色の鉄錯体3を不溶物として得た(収量:160mg、収率29%)。
(実施例4)<鉄錯体4の合成>
アルゴン雰囲気下、100mLのシュレンク管に、無水FeCl 211mg(1.3mmol)と無水ジエチルエーテル40mLを加え、完全に溶解させたのち、Zeitschrift fuer anorganische und allgemeine Chemie 1998年、608号、60頁記載の方法に従い合成した1,4−ジメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン157mg(1.0mmol)の無水ジエチルエーテル溶液10mLを室温で滴下し、1時間撹拌した後、錯体4を含む粗生成物をろ過により分離した。この固体をアセトニトリル70mLに加熱溶解させ不溶物をろ過により除去した後、橙色溶液を濃縮して、橙色の鉄錯体4(化6)を得た。(収量:297mg、収率93%)。錯体の構造は単結晶X線構造解析により確認した。それを図3に示す。
Figure 0004200466
(実施例5)<錯体5の合成>
1,4−ジメチル−1,4,7−トリアザシクロノナンの代わりに、Tetrahedron Letters 1991年、32巻、52号、7755頁記載の方法に従い合成した1,5,9−トリメチル−1,5,9−トリアザシクロドデカン213mg(1.0mmol)を用いた以外は実施例4に従い、実施した。錯体5(化7):茶色固体(収量:260mg、収率70%)。
Figure 0004200466
(実施例6)<鉄錯体6の合成>
1,4−ジメチル−1,4,7−トリアザシクロノナンの代わりに、Macromolecules 2000年、33巻、1986頁に記載の方法に従い合成した1,4,7−トリ−n−ブチル−1,4,7−トリアザシクロノナン298mg(1.0mmol)を用いた以外は実施例4に従い、実施した。錯体6(化8):黄色固体(収量:412mg、収率90%)。
Figure 0004200466
(実施例7)<1,4,7−トリ−n−オクチル−1,4,7−トリアザシクロノナンの合成>
アルゴン雰囲気下、滴下漏斗を備えた200mLの三口フラスコに、トリアザシクロノナン(1.0g、7.74mmol)、トリエチルアミン(5.1g、50mmol)、無水塩化メチレン(100mL)を加えた。この混合物中に、n−オクタン酸クロリド(4.2g、25.8mmol)を室温で滴下漏斗より加え、反応混合物を室温にて2日間攪拌した。この反応混合物を水で洗浄し(25mL×4)、次いで得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより生成し、1,4,7−トリ(n−ヘプチルカルボニル)−1,4,7−トリアザシクロノナンを得た(3.14g、収率80%)。
アルゴン雰囲気下、還流管を備えた200mLの三口フラスコに、上記で得られた1,4,7−トリ(n−ヘプチルカルボニル)−1,4,7−トリアザシクロノナンの全量を入れ、そこにBH・THF溶液(100mmol、100mL)を加え、1晩還流させた。過剰のBH・THFを分解させるために、室温に放冷後、反応混合物にメタノールをゆっくりと加え、濃縮した後、これを1−ブタノール(50mL)、水(50mL)、濃塩酸(100mL)に溶解させ、一晩還流させた。得られた反応混合物を氷浴にて冷却し、pHが12を超えるまで48%水酸化ナトリウム水溶液を加え、アミンを遊離させた後、この水溶液を塩化メチレンにて抽出した(8×50mL)。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮し、淡黄色油状の1,4,7−トリ−n−オクチル−1,4,7−トリアザシクロノナンを得た(2.45g、収率85%)。
<鉄錯体7の合成>
1,4−ジメチル−1,4,7−トリアザシクロノナンの代わりに、1,4,7−トリ−n−オクチル−1,4,7−トリアザシクロノナン466mg(1.0mmol)を用いた以外は実施例4に従い、実施した。錯体7(化9):黄色固体(収量:577mg、収率92%)。
Figure 0004200466
(実施例8)<1,4,7−トリ−n−ドデシル−1,4,7−トリアザシクロノナンの合成>
1,4,7−トリ(n−ヘプチルカルボニル)−1,4,7−トリアザシクロノナンの代わりに、Langmuir 1994年、10巻、4630頁に記載の方法に従い合成した1,4,7−トリラウリロイル−1,4,7−トリアザシクロノナン3.87g(5.7mmol)を用いた以外は実施7に従い、1,4,7−トリ−n−ドデシル−1,4,7−トリアザシクロノナンを合成した。(2.96g、82%)。
<鉄錯体8の合成>
1,4−ジメチル−1,4,7−トリアザシクロノナンの代わりに、1,4,7−トリ−n−ドデシル−1,4,7−トリアザシクロノナン634mg(1.0mmol)を用いた以外は実施例4に従い、実施した。錯体8(化10):黄色固体(収量:733mg、収率92%)。
Figure 0004200466
(実施例9)<1,4,7−トリス(4−n−オクチロキシベンジル)−1,4,7−トリアザシクロノナンの合成>
n−オクタン酸クロリドの代わりに(4−n−オクチロキシ)ベンゾイルクロリド6.94g(25.8mmol)を用いた以外は実施例7に従い、1,4,7−トリス(4−n−オクチロキシベンジル)−1,4,7−トリアザシクロノナンを合成した(2.96g、64%)。
<鉄錯体9の合成>
1,4−ジメチル−1,4,7−トリアザシクロノナンの代わりに、1,4,7−トリス(4−n−オクチロキシベンジル)−1,4,7−トリアザシクロノナン784mg(1.0mmol)を用いた以外は実施例4に従い、実施した。錯体9(化11):黄色固体(収量:861mg、収率91%)。
Figure 0004200466
(実施例10)
アルゴン雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子、鉄錯体1(41mg,0.1mmol)、AIBN(8.2mg、0.05mmol)を入れ、メタクリル酸メチル(2.0g,20mmol)、アセトニトリル2mLを加えた。容器を密閉して80℃で14時間攪拌した。このときの転化率は94%であった。反応混合物をTHF7mLで希釈し、攪拌したメタノール140mL中に滴下した。濾過により重合物を分離し、減圧乾燥を行った(収量:1.79g)。得られたPMMAはMn=29300、Mw/Mn=1.35であった。
(実施例11)
錯体1の代わりに鉄錯体4(32mg,0.1mmol)を用いた以外は、実施例10と同様に実施した。転化率は98%であり、反応混合物のMn=32600、Mw/Mn=1.49であった。
(実施例12)
錯体1の代わりに鉄錯体5(38mg,0.1mmol)を用いた以外は、実施例10と同様に実施した。転化率は90%であり、反応混合物のMn=28500、Mw/Mn=1.38であった。
(実施例13)
アルゴン雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子、鉄錯体3(56mg,0.1mmol)、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(12.2mg、0.05mmol)を入れ、スチレンモノマー(2.08g,20mmol)を加えた。容器を密閉して120℃で14時間攪拌した。転化率は98%であり、反応混合物をTHF7mLで希釈し、攪拌したメタノール140mL中に滴下した。濾過により重合物を分離し、減圧乾燥を行った(収量:1.98g)。得られたPStはMn=23800、Mw/Mn=1.45であった。
(比較例2)
鉄錯体2を添加しない以外は、上記実施例13と同様の条件で重合をおこなった。結果として1.75gのポリマーを得た(転化率:80%、Mn=44600,Mw/Mn=2.78)。これより、錯体を添加しない系では分子量分布が広がっており、鉄錯体2による重合への関与は明らかである。
(実施例14)
アルゴン雰囲気下で、反応容器に、鉄錯体2(1.30g,2mmol)、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(224mg、1mmol)、スチレンモノマー(10.4g,0.1mol)を入れ、120℃で8時間攪拌した。このときの転化率は84%であり、生成したポリスチレンはMn=5200、Mw/Mn=1.13であった。
(実施例15)
アルゴン雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子、鉄錯体2(65mg,0.1mmol)、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(12.2mg、0.05mmol)を入れ、スチレンモノマー(2.08g,20mmol)を加えた。容器を密閉して130℃で17時間攪拌した。転化率は99%であり、反応混合物のMn=22600、Mw/Mn=1.26であった。
(実施例16)
アルゴン雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子、鉄錯体2(65mg,0.1mmol)、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(12.2mg、0.05mmol)を入れ、スチレンモノマー(2.08g,20mmol)、メシチレン2mLを加えた。容器を密閉して120℃で40時間攪拌した。転化率は88%であり、反応混合物のMn=19500、Mw/Mn=1.27であった。
(実施例17)
アルゴン雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子、鉄錯体2(65mg,0.1mmol)、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(12.2mg、0.05mmol)を入れ、アクリル酸ブチル(2.56g,20mmol)、シクロヘキサノン2mLを加えた。容器を密閉して120℃で20時間攪拌した。転化率は66%であり、反応混合物のMn=13400、Mw/Mn=1.69であった。
(実施例18)<アクリル酸エチルとメタクリル酸フェノキシエチルのランダム共重合>
アルゴン雰囲気下で、反応容器に、鉄錯体2(326mg,0.5mmol)、AIBN(41mg、0.25mmol)、アクリル酸エチル(5g,50mmol)、メタクリル酸フェノキシエチル(10.3g,50mmol)、アセトニトリル15mLを入れ、80℃で20時間攪拌した。このときのアクリル酸エチルとメタクリル酸フェノキシエチルの転化率は、それぞれ67%と94%であった。生成した重合物はMn=27900、Mw/Mn=1.93であった。得られた重合物をH−NMR(600MHz、CDCl)にて解析したところ、アクリル酸エチルとメタクリル酸フェノキシエチルとのランダム共重合物であることが判明した。
(実施例19)<スチレンモノマーとメタクリル酸メチルのブロック共重合>
アルゴン雰囲気下で、反応容器に、鉄錯体2(652mg,1mmol)、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(122mg、0.5mmol)、スチレンモノマー(20.8g,0.2mol)を入れ、120℃で23時間攪拌した。このときの転化率は88%であり、生成したポリスチレンはMn=22300、Mw/Mn=1.18であった。次いで、反応混合物にメタクリル酸メチル(20g、0.2mol)とアセトニトリル20mLの混合物を60℃にて加えた後、さらに95℃で17時間反応した。このときのメタクリル酸メチルの転化率は68%であり、生成したポリマーのMn=39500、Mw/Mn=1.41であった。図4はブロック共重合前後のポリマーのGPCチャートである。ブロック共重合進行の結果、ポリマーは高分子量側へ大きくシフトした。
(実施例20)<モノマーの段階的添加による重合によるポリマーの分子量制御>
アルゴン雰囲気下で、反応容器に、鉄錯体2(1.30g,2mmol)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(231mg、1mmol)、メタクリル酸メチル(10g、0.1mol)、アセトニトリル(10mL)を入れ、80℃で19時間攪拌した。このときの転化率は99%であり、生成したポリメタクリル酸メチルはMn=8900、Mw/Mn=1.23であった。次いで、反応混合物にメタクリル酸メチル(80g、0.8mol)を60℃にて加えた後、さらに80℃で22時間反応した。このときのメタクリル酸メチルの転化率は71%であり、生成したポリマーのMn=98400、Mw/Mn=1.12であった。図5はポスト重合前後のポリマーのGPCチャートである。ポスト重合進行の結果、ポリマーは高分子量側へ大きくシフトした。
(実施例21)<触媒回収実験>
〔重合反応〕
アルゴン雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子、鉄錯体2(65mg,0.1mmol)、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(12.2mg、0.05mmol)を入れ、スチレンモノマー(2.08g,20mmol)を加えた。容器を密閉して120℃で12時間攪拌した。転化率は86%であり、生成したPStはMn=21000、Mw/Mn=1.20であった。
〔ポリマーと触媒の分離及び回収〕
上記重合1回目で合成したポリマーを、7mLのTHFに溶解させて、140mLのメタノールに滴下して再沈殿精製を行った。沈殿したポリマーと、触媒を含む溶液部分をそれぞれ減圧下で乾燥させると、ほぼ無色の精製ポリマーが1.73g得られ、触媒を含む溶液部分からは黄色の100mgの固体が回収された。
鉄錯体1に関する単結晶X線構造解析である。 鉄錯体2に関する単結晶X線構造解析である。 鉄錯体4に関する単結晶X線構造解析である。 実施例19におけるブロック共重合前後のポリマーのGPCチャートである。 実施例20においてメタクリル酸メチルを段階的に添加した場合のGPCチャートである。

Claims (16)

  1. 一般式(1)で表される鉄錯体。
    Figure 0004200466

    (式中、Feは3価であり、Xは塩素原子又は臭素原子を表し、R1、R及びRは、水素原子及び炭素数1〜8の置換基を有していても良いベンジル基からなる群から選ばれる基を表し、m及びnは2〜3の整数を表す。但し、m及びnが全て2であって、R1、R及びRが、全て水素原子である場合を除く。)
  2. 前記一般式(1)中のR1、R又はRが、炭素数1〜8の置換基を有していても良いベンジル基である請求項1に記載の鉄錯体。
  3. 前記炭素数1〜8の置換基を有していても良いベンジル基が、ベンゼン環上の4位に前記置換基を有する基である請求項2に記載の鉄錯体。
  4. 前記置換基が炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数1〜8のフッ素化アルキル基である請求項2又は3に記載の鉄錯体。
  5. 一般式(2)で表される環状アミン化合物と、無水塩化鉄(III)又は無水臭化鉄(III)とを反応させることを特徴とする一般式(1)で表される鉄錯体の製造方法。
    Figure 0004200466
    (式中、Feは3価であり、Xは塩素原子又は臭素原子を表し、R1、R及びRは、水素原子及び炭素数1〜8の置換基を有していても良いベンジル基からなる群から選ばれる基を表し、m及びnは2〜3の整数を表す。但し、m及びnが全て2であって、R1、R及びRが、全て水素原子である場合を除く。)
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の鉄錯体を重合触媒とし、ラジカル重合開始剤の存在下で、少なくとも一種のラジカル重合性単量体を重合することを特徴とする重合体の製造方法。
  7. 前記ラジカル重合開始剤が過酸化物及びアゾ系化合物からなる群から選ばれるいずれか一種のラジカル重合開始剤である請求項6に記載の重合体の製造方法。
  8. 前記ラジカル重合開始剤として、更にα−ハロゲノカルボニル化合物、α−ハロゲノカルボン酸エステル、ハロゲンメチルアレン及びポリハロゲン化アルカンからなる群から選ばれる少なくとも一種のラジカル重合開始剤を併用して用いる請求項7に記載の重合体の製造方法。
  9. 前記ラジカル重合性単量体が、スチレン系単量体、ビニルピリジン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体及び(メタ)アクリルアミド系単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種のラジカル重合性単量体である請求項6〜8のいずれかに記載の重合体の製造方法。
  10. 前記ラジカル重合性単量体として、2種類以上のラジカル重合性単量体を用いてランダム共重合する請求項6〜8記載の重合体の製造方法。
  11. 前記ラジカル重合性単量体として、2種類以上のラジカル重合性単量体を用いてブロック共重合する請求項6〜8記載の重合体の製造方法。
  12. 水媒体中で重合を行う請求項6〜11のいずれかに記載の重合体の製造方法。
  13. 前記水媒体が、水溶性有機溶媒を含有する請求項12記載の重合体の製造方法。
  14. 有機媒体中で重合を行う請求項6〜11のいずれかに記載の重合体の製造方法。
  15. 無媒体で重合を行う請求項6〜11のいずれかに記載の重合体の製造方法。
  16. 請求項6〜15のいずれかの製造方法で重合体を製造した後、該重合体を水及び/または水溶性有機溶媒で洗浄することによる鉄錯体の回収方法。
    以上
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