JP4198214B2 - ガイドワイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はガイドワイヤに関し、特に腸閉塞を治療する医療技術系等において好適に用いられるガイドワイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ガイドワイヤは、カテーテル等のチューブを体腔内の目的部位へ案内するための器具として医療分野で広く用いられている。従来から、金属製の芯材をコイルスプリングで被包したものや、金属製の芯材上に合成樹脂を被覆したガイドワイヤが知られており、これらのガイドワイヤには、先端部分が直線状(ストレート)のものや、J字型の形状をしたもの等がある。近年、腸閉塞を治療する医療分野において、経口・鼻腔から消化器管へ治療用チューブ(イレウスチューブ)を挿入し、腸の閉塞部位をバルーンで拡張する技術が開発されているが、この治療用チューブを消化器管へ誘導するためにも、これらのガイドワイヤが使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来から用いられているストレート若しくはJ字型の形状のガイドワイヤを使用すると、消化器管内でチューブがループを形成した際、チューブ側壁に形成された胃液等の吸引用側孔からガイドワイヤの先端が飛び出し、ガイドワイヤを進めることが困難になり、その後のチューブの誘導ができなくなる場合があった。図5は、従来の先端がストレートのガイドワイヤ50において、例えば胃60の中でループ状に湾曲した治療用チューブ100の側孔101から先端が飛び出した様子を示すものである。図5に示すように、ストレート形状のガイドワイヤ50の先端は治療用チューブ100の内壁のループ外側に沿って進むため、側孔101がループ外側に存在した際、側孔101にはまりやすい。
【0004】
また、比較的強固なコイルスプリングタイプのガイドワイヤを使用する場合、チューブ内での操作性を良くするために、ガイドワイヤ表面にオリーブ油を塗布し滑性を得ることがあるが、消化器管内でチューブがループを形成すると上記ワイヤと同様にチューブの吸引側孔からガイドワイヤの先端が飛び出したり、チューブからガイドワイヤが抜けにくくなったり、再挿入が出来にくくなる等、医療行為が著しく制約されていた。
【0005】
本発明は、腸閉塞の治療を行う医療行為において、ガイドワイヤの先端が治療用チューブの側孔に入りにくい構造のガイドワイヤを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(6)の発明により達成される。
【0007】
(1)側孔を有するチューブ内に挿入されるものであって、略直線形状の基端部と、略直線形状の先端部とを有し、該基端部と先端部の間に、多湾曲形状に予備形成された中間部を有し、該中間部の高さは、挿入される前記チューブの内径よりやや大きく、該チューブの管壁により該中間部の湾曲が押し広げられた状態となるとき、該先端部は該管壁から管中心部へ向かう角度となり、その最先端は、前進において管壁に接触しない状態を保つ構成であることを特徴とするガイドワイヤ。
【0008】
(2)前記先端部と前記中間部との移行部が前記直線状の基端部の軸の延長上またはその近傍に存在することを特徴とする(1)記載のガイドワイヤ。
【0009】
(3)前記先端部が前記直線状の基端部と略平行で、かつ該基端部の軸の延長上またはその近傍に存在することを特徴とする(2)記載のガイドワイヤ。
【0010】
(4)前記中間部が少なくとも3段階の湾曲部を有する多湾曲形状であることを特徴とする(1)乃至(3)記載のガイドワイヤ。
【0011】
(5)金属からなる芯材と、該芯材を被覆してなる合成樹脂層からなることを特徴とする(1)乃至(4)記載のガイドワイヤ。
【0012】
(6)前記合成樹脂層の表面に親水性の潤滑層を有することを特徴とする(5)記載のガイドワイヤ。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のガイドワイヤについて、添付図面に示す好適実施例を参照しつつ、詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施例のガイドワイヤの先端部を示す断面図である。図1において、ガイドワイヤ11は、直線状の基端部4から第1湾曲部1と、第2湾曲部2と、第3湾曲部3を有する中間部5を介し、先端部6へと続いている。第1湾曲部1と第3湾曲部3は同一方向に曲率半径が存在し、第2湾曲部2はこれらと異なる方向に曲率半径が存在する。これにより、先端部6は、基端部4の軸の延長線7上に存在することとなる。
【0015】
ガイドワイヤ11は、中間部5および先端部6がテーパ上に細径化された金属製の芯金8に合成樹脂層9を被覆してなる。芯金8に好適に用いられる金属材料としては、Ni−Ti合金等の超弾性合金や、ステンレス合金等が挙げられる。合成樹脂層9に好適に用いられる樹脂材料としては、ポリウレタン、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン等が挙げられる。これらの樹脂には酸化バリウムやタングステン等のX線造影性微粉末を混入することができる。また、芯金8の先端部にはX線造影用のプラチナ、金等のコイル10が巻かれ、これらによりX線透視下で作業を行うことが可能となる。合成樹脂層9の表面には更に、無水マレイン酸等からなる親水性の潤滑性被膜をコーティングしてなることが望ましい。これにより、治療用チューブ内や、体腔内での挿通抵抗が薄れ、スムーズな挿入が可能となる。潤滑性被膜は体腔内に挿入されない部分にはコーティングされないのが望ましい。
【0016】
このようなガイドワイヤ11の外径は特に限定されないが、通常、0.6〜1.7mm程度であるのが好ましく、0.9〜1.3mm程度であるのがより好ましい。また、合成樹脂層9の厚さは、基端部4付近で0.05〜0.15mm程度、先端部6付近で0.15〜0.3mm程度であるのが望ましい。更に、ガイドワイヤ11の全長は、100〜450cm程度、好ましくは260〜350cm程度である。
【0017】
次に、図2を用いて、本発明のガイドワイヤ11における多湾曲形状等の好適なスペックについて説明する。
【0018】
図2において、Hは中間部5の高さであり、言い換えれば、軸の延長線7と中間部5との最大離間距離である。Hの値は、治療用チューブの内径よりやや大きい程度が望ましく、具体的には3〜15mmであるのが好ましく、更には6〜10mmが好ましい。
【0019】
L1は、先端部6の長さを示すものである。L1としては、ガイドワイヤ11の進路選択性を考慮して、3〜15mmが好ましく、更には5〜8mmが好ましい。
【0020】
L2は中間部5のガイドワイヤ軸方向長さを示すものである。L2としては、Hの値とのバランスにより先端部6に基端からの力が伝達するよう考慮して、10〜40mmが好ましく、更には15〜25mmが好ましい。
【0021】
本発明のガイドワイヤ11の多湾曲形状を予備成型する方法としては、芯金の段階で、型内に固定した後、焼き鈍しすれば良く、400〜600度で5分〜2時間程度焼き鈍しするのが好ましい。
【0022】
図3および図4は、本発明のガイドワイヤ11を、治療用チューブ100内へ挿入した様子を示す図である。図3において、胃60の中に挿通した腸閉塞の治療用チューブ(イレウスチューブ)100は、図に示すようなループ状の湾曲状態を示す。治療用チューブ100には、胃液等の吸引の為の側孔101が設けられている。図4は、図3におけるガイドワイヤ先端部6および中間部5の作用を説明するためのものである。
【0023】
本発明のガイドワイヤ11は、中間部5の高さHが治療用チューブ100の内径よりやや大きいため、図4に示すように治療用チューブ100の管壁により湾曲が押し広げられた状態となる。ガイドワイヤ11の先端部6は、基端部4と略平行になるように予備成型されているが、このように湾曲が押し広げられた状態となることにより、先端部6は治療用チューブ100の管壁から管中心部へ向かう角度となり、ガイドワイヤ11の最先端12は、管壁に接触しない状態を保ちながら前進する。従って、管路上に側孔101が存在した場合であっても、最先端12が側孔101から飛び出すことはない。
【0024】
また、本発明のガイドワイヤ11は合成樹脂被覆層と、表面に親水性潤滑膜を有するため、中間部5の頂点や、中間部5と先端部6との移行部が治療用チューブ100の管壁に接触しながら移動しても、摩擦抵抗がほとんどなく、スムーズに進行することができる。
【0025】
本発明のガイドワイヤは、前記特性を有するものであれば、その具体的な構造は特に限定されず、適用されるチューブ(カテーテル)も特に腸閉塞治療用に限定されず、PTCA用拡張カテーテル、ガイディングカテーテル、血管造影カテーテル等の血管カテーテルや、イントロデューサのシース、外套針、胃管カテーテル、気管内チューブ、内視鏡チューブ、超音波カテーテル、尿管カテーテル等の、人体に使用される各種カテーテル類が挙げられる。
【0026】
【実施例】
以下、本発明の具体的実施例について詳細に説明する。図1、図2に示す構造のガイドワイヤを製造した。このガイドワイヤの各条件は次の通りである。
【0027】
ガイドワイヤの全長:350cm
芯金の構成材料:Ni−Ti製超弾性合金
ガイドワイヤの外径:0.97mm
合成樹脂層の構成材料:ポリウレタン
親水性潤滑膜コーティングの構成材料:ジメチルアクリルアミドとグリシジルメタクリレートのブロック重合体
中間部5の高さH:8mm
先端部6の長さL1:7mm
中間部5の軸方向長さL2:20mm
第2湾曲部2の湾曲度:半径15mmの円周相当
以上の通り得られたガイドワイヤをループ状に湾曲させたイレウスチューブ内に挿入したところ、先端は側孔に引っかかることなく前進した。
【0028】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のガイドワイヤによれば、治療用チューブ内で吸引側孔から飛び出しがなく、挿入性および消化器管選択の操作性に優れ、術者や患者の負担を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガイドワイヤの実施例を示す断面図である。
【図2】本発明のガイドワイヤのスペックを説明するための図である。
【図3】本発明のガイドワイヤの使用状態を説明する図である。
【図4】本発明のガイドワイヤの作用を説明する図である。
【図5】従来のガイドワイヤの使用状態を説明する図である。
【符号の説明】
1 第1湾曲部
2 第2湾曲部
3 第3湾曲部
4 基端部
5 中間部
6 先端部
7 軸の延長線
8 芯金
9 合成樹脂層
10 コイル
11 ガイドワイヤ
Claims (6)
- 側孔を有するチューブ内に挿入されるものであって、略直線形状の基端部と、略直線形状の先端部とを有し、該基端部と先端部の間に、多湾曲形状に予備形成された中間部を有し、該中間部の高さは、挿入される前記チューブの内径よりやや大きく、該チューブの管壁により該中間部の湾曲が押し広げられた状態となるとき、該先端部は該管壁から管中心部へ向かう角度となり、その最先端は、前進において管壁に接触しない状態を保つ構成であることを特徴とするガイドワイヤ。
- 前記先端部と前記中間部との移行部が、前記直線状の基端部の軸の延長上またはその近傍に存在することを特徴とする請求項1記載のガイドワイヤ。
- 前記先端部が前記直線状の基端部と略平行で、かつ該基端部の軸の延長上またはその近傍に存在することを特徴とする請求項2記載のガイドワイヤ。
- 前記中間部が少なくとも3段階の湾曲部を有する多湾曲形状であることを特徴とする請求項1乃至3記載のガイドワイヤ。
- 金属からなる芯材と、該芯材を被覆してなる合成樹脂層からなることを特徴とする請求項1乃至4記載のガイドワイヤ。
- 前記中間部は、前記基端部から第1湾曲部、第2湾曲部、及び第3湾曲部を有し、該第1湾曲部と該第3湾曲部は同一方向に曲率半径が存在し、該第2湾曲部は該第1湾曲部及び該第3湾曲部と異なる方向に曲率半径が存在するものである請求項1に記載のガイドワイヤ。
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