JP4197593B2 - 放射線イメージセンサ及びシンチレータパネル - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、医療用等で用いられる放射線画像を検出するイメージセンサ及び放射線画像を可視光画像に変換するシンチレータパネルに関する。
【従来の技術】
【0002】
医療、工業用のX線撮影では、従来、X線感光フィルムが用いられてきたが、利便性や撮影結果の保存性の面から放射線検出素子を用いた放射線イメージングシステムが普及してきている。このような放射線イメージングシステムにおいては、複数の画素を有する放射線検出素子を用いて放射線による2次元画像データを電気信号として取得し、この信号を処理装置により処理して、モニタ上に表示している。代表的な放射線検出素子は、1次元あるいは2次元に配列された光検出器上にシンチレータを配して、入射する放射線をシンチレータで光に変換して、検出する仕組みになっている。
【0003】
典型的なシンチレータ材料であるCsIは、吸湿性材料であり、空気中の水蒸気(湿気)を吸収して溶解する。この結果、シンチレータの特性、特に解像度が劣化するため、シンチレータを湿気から保護する構造を採用する必要がある。このようなシンチレータを湿気から保護する構造としては、特開平5−196742号公報や特開平5−242841号公報、国際公開番号WO98/36290号及び同36291号公報にそれぞれ開示された技術が知られている。
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開平5−196742号公報や特開平5−242841号公報に開示された技術は、防湿構造の形成が容易ではなく、耐久性を確保するのも困難である。国際公開番号WO98/36290号及び同36291号公報に開示された技術の場合は、これらの問題は解消されるが、特に医療用途では患者の放射線被爆量を抑えるため、少量の放射線で鮮明な画像を撮影することが求められており、そのため、従来にも増して明るい撮像結果の得られる放射線イメージセンサ及びシンチレータパネルが求められている。
【0005】
そこで、本発明は、より明るい出力画像を得ることが可能な放射線イメージセンサ及びシンチレータパネルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る放射線イメージセンサは、(1)複数の受光素子が1次元あるいは2次元的に配列されて構成されているイメージセンサと、(2)このイメージセンサの受光表面上に柱状構造で堆積され、放射線をこのイメージセンサで検出可能な波長帯域を含む光に変換するシンチレータと、(3) イメージセンサのシンチレータ形成面上にシンチレータを囲んでシンチレータより高く形成されている樹脂枠と、(4)樹脂枠内でシンチレータの柱状構造を覆って密着形成され、シンチレータを密封している保護膜と、(5)保護膜を挟んでイメージセンサの受光表面と相対してシンチレータから発せられた光に対する略平坦な反射面を有し、反射面全体が樹脂枠内側で樹脂枠の頂面より下側に配置されて、保護膜に接触し、その上に搭載されて、反射面がシンチレータを完全に覆うとともにシンチレータ周囲の樹脂枠、反射面、保護膜に囲まれた空間が外部の空間と連通するよう配置されている放射線透過性の反射板と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
一方、本発明に係るシンチレータパネルは、(1)基板と、(2)この基板上に柱状構造で形成され、放射線を基板を透過する波長帯域を含む光に変換するシンチレータと、(3)基板のシンチレータ形成面上にシンチレータを囲んでシンチレータより高く形成され、シンチレータを密封している樹脂枠と、(4)樹脂枠内でシンチレータの柱状構造を覆って密着形成されている保護膜と、(5)保護膜を挟んで基板と相対してシンチレータから発せられた光に対する略平坦な反射面を有し、反射面全体が樹脂枠内側で樹脂枠の頂面より下側に配置されて、保護膜に接触し、その上に搭載されて、反射面がシンチレータを完全に覆うとともにシンチレータ周囲の樹脂枠、反射面、保護膜に囲まれた空間が外部の空間と連通するよう配置されている放射線透過性の反射板と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
そして、本発明に係る放射線イメージセンサは、このシンチレータパネルと、基板を透過した光像を検出する検出器を備えているものでもよい。
【0009】
本発明に係るシンチレータパネル及び放射線イメージセンサにおいては、保護膜がシンチレータを覆って密着形成されているので、シンチレータは湿気から好適に保護される。シンチレータは放射線を所定の波長帯域を含む光(ここで、光とは可視光に限られるものではなく、紫外線、赤外線あるいは所定の放射線等の電磁波を含む概念である)に変換するが、変換された光の一部は放射線の入射面側へと逆行する。こうして逆行した光は、保護膜表面での反射と反射板の反射面での反射によりシンチレータ側へと戻される。この結果、明るい光学画像が得られる。この反射板の反射面での反射率は高いほうが好ましいが、100%近くある必要はなく、数十%程度の反射率があればよい。
【0010】
シンチレータは、受光素子形成面の周囲まで覆って形成することが好ましい。シンチレータをこのように形成することで、周辺に配置されている受光素子まで有効に活用することができ、有効画素数を確保できる。反射面をこのように配置すれば、シンチレータの周辺の部分におけるぼけや輝度の低下を確実に防止できる。
【0011】
この反射板は、金属板であることが好ましい。あるいは、反射板は、放射線透過材上に保護膜、例えば金属膜を備えていてもよい。そして、この場合の放射線透過材は、ガラス、樹脂、炭素性基板のいずれかであることが好ましい。反射板としてこのような構造を採用することで、反射板及びシンチレータパネル、放射線イメージセンサの製造が容易になるとともに、反射板として充分な性能が得られる。
【発明の実施の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。また、各図面における寸法、形状は実際のものとは必ずしも同一ではなく、理解を容易にするため誇張している部分がある。
【0013】
図1に、本発明に係る放射線イメージセンサの第一の実施形態の断面図を、図2にその一部拡大図を、図3にその上面図を示す。
【0014】
この放射線イメージセンサの固体撮像素子1は、絶縁性、例えばガラス製の基板11上に、光電変換を行う受光素子12が2次元上に配列されて、受光部を形成している。この受光素子12は、アモルファスシリコン製のフォトダイオード(PD)や薄膜トランジスタ(TFT)から構成されている。
【0015】
固体撮像素子1の受光部上には、入射した放射線を受光素子12で検出可能な波長帯域を含む光、に変換する柱状構造のシンチレータ2が形成されている。ここで、本明細書において光とは可視光に限られるものではなく、紫外線、赤外線あるいは所定の放射線等の電磁波を含む概念である。このシンチレータ2は、図1、図3に示されるように受光素子12の形成面の全面とその周辺までを覆うように形成されていることが好ましい。シンチレータ2には、各種の材料を用いることができるが、可視光を発光し、その発光効率が良いTlドープのCsI等が好ましい。このシンチレータ2の各柱状構造の頂部は図2に示されるように平らではなく、頂部に向かって尖った形状をなしている。
【0016】
シンチレータ2の柱状構造を覆ってその隙間まで入り込み、シンチレータ2を密閉するように保護膜3が形成されている。そして、その表面には微細な凹凸が形成されている。この保護膜3は、X線を透過し、水蒸気を遮断する材料、例えばポリパラキシリレン樹脂(スリーボンド社製、商品名パリレン)、特にポリパラクロロキシリレン(同社製、商品名パリレンC)を用いることが好ましい。パリレンによるコーティング膜は、水蒸気及びガスの透過が極めて少なく、撥水性、耐薬品性も高いほか、薄膜でも優れた電気絶縁性を有し、放射線、可視光線に対して透明であるなど保護膜3にふさわしい優れた特徴を有している。
【0017】
パリレンによるコーティングの詳細については、スリーボンド・テクニカルニュース(平成4年9月23日発行)に記されており、ここでは、その特徴を述べる。
【0018】
パリレンは、金属の真空蒸着と同様に真空中で支持体の上に蒸着する化学的蒸着(CVD)法によってコーティングすることができる。これは、原料となるジパラキシリレンモノマーを熱分解して、生成物をトルエン、ベンゼンなどの有機溶媒中で急冷しダイマーと呼ばれるジパラキシリレンを得る工程と、このダイマーを熱分解して、安定したラジカルパラキシリレンガスを生成させる工程と、発生したガスを素材上に吸着、重合させて分子量約50万のポリパラキシリレン膜を重合形成させる工程からなる。
【0019】
パリレン蒸着と金属の真空蒸着には、2つの大きな違いがある。まず、パリレン蒸着時の圧力は、金属真空蒸着の場合の圧力約0.1Paに比べて高い約10〜20Paであること、そして、パリレンの蒸着の適応係数が金属蒸着の適応係数1に比べて2桁から4桁低いことである。このため、蒸着時には、単分子膜が被着物全体を覆った後、その上にパリレンが蒸着していく。したがって、0.2μm厚さからの薄膜をピンホールのない状態で均一な厚さに生成することができ、液状では不可能だった鋭角部やエッジ部、ミクロンオーダの狭い隙間へのコーティングも可能である。また、コーティング時に熱処理等を必要とせず、室温に近い温度でのコーティングが可能なため、硬化に伴う機械的応力や熱歪みが発生せず、コーティングの安定性にも優れている。さらに、ほとんどの固体材料へのコーティングが可能である。
【0020】
この保護膜3上には、放射線透過材41に反射膜42をコーティングして形成された反射板4が反射膜42側表面(反射面)を保護膜3側に向けて配置されている。ここで、反射面と固体撮像素子1の受光表面とは略平行に配置されることが好ましい。保護膜3の表面は前述したように微細な凹凸が存在するので、保護膜3の表面と反射板4(反射膜42)の表面との間には空間5が形成される。放射線透過材41としては、ガラス、塩化ビニル等の樹脂、炭素性基板等が好適に使用できる。また、反射膜42は蒸着等で形成された金属膜や誘電体多層膜が好適に使用でき、金属膜としては、例えばアルミ蒸着膜が光反射率が高く好ましい。
【0021】
この反射板4は、枠6により固体撮像素子1の表面に固定されている。枠6は、固体撮像素子1に近い側から6a、6b、6cの三層構造をなしており、第一層6aと第二層6bとの間に保護膜3が挟み込まれてその外縁部が固定されている。この枠6には、シリコン樹脂である信越化学製のKJR651あるいはKE4897、東芝シリコン製TSE397、住友3M製DYMAX625T等を用いることが好ましい。これらは、半導体素子の機械的、電気的保護のための表面処理用に広く用いられており、保護膜3との密着性も高いからである。あるいは、保護膜3との接着性が良好な樹脂、例えばアクリル系接着剤である協立化学産業株式会社製WORLD ROCK No.801−SET2(70,000cPタイプ)を用いてもよい。この樹脂接着剤は、100mW/cm2の紫外線照射により約20秒で硬化し、効果皮膜は柔軟かつ十分な強度を有し、耐湿、耐水、耐電触性、耐マイグレーション性に優れており、各種材料、特にガラス、プラスチック等への接着性が良好という好ましい特性を有する。または、層ごとに適切な素材を選択して組み合わせてもよく、第一層6aと第二層6bには樹脂枠に代えて半導体、セラミック、金属、ガラス等からなる枠を用いることもでき、第一層6a自体を固体撮像素子1と一体成形してもよい。
【0022】
次に、図1〜図6を参照して、この実施形態の製造工程について説明する。まず、図4に示されるように固体撮像素子1の受光面(受光素子12の形成側)上にTlをドープしたCsIの柱状結晶を蒸着法によって600μmの厚さだけ成長させることによりシンチレータ2を形成する。このとき、シンチレータ2が受光素子12が形成されている部分とその周辺部分までを覆うように形成することが好ましい。
【0023】
その後、シンチレータ2が蒸着された固体撮像素子1を200〜210℃でアニール処理した後に、シンチレータ2の周辺に枠状にUV硬化樹脂を塗布し、紫外線を照射して硬化させ、樹脂枠6の第一層6aを形成する。この枠形成には、例えば、岩下エンジニアリング製AutoShooter-3型のような自動X−Yコーティング装置を用いるとよい。この時に、上部に形成される保護膜3との密着性をさらに向上させるため、樹脂枠6の表面を粗面処理すればより好ましい。粗面処理としては、筋をいれたり、表面に多数の小さなくぼみを形成する処理がある。
【0024】
シンチレータ2を形成するCsIは、吸湿性が高く、露出したままにしておくと空気中の水蒸気を吸湿して溶解してしまう。そこで、これを防止するために、CVD法により厚さ10μmのパリレンを蒸着して固体撮像素子1を覆い、保護膜3を形成する。CsIの柱状結晶には図2に示されるように隙間があるが、パリレンはこの狭い隙間まで入り込む。この結果、保護膜3が、シンチレータ2に密着形成される。さらに、パリレンコーティングにより、凹凸のあるシンチレータ2表面に略均一な厚さの精密薄膜コーティングが得られる。また、パリレンのCVD形成は、前述したように、金属蒸着時よりも真空度が低く、常温で行うことができるため、加工が容易である。
【0025】
こうして形成した保護膜3を樹脂枠6の第一層6aの長手方向に沿ってカッターで切断する。樹脂枠6の第一層6aで凸部が形成されているため、切断箇所の確認が容易なほか、樹脂枠6の第一層6aの厚みの分だけカッターを挿入する際の余裕があるため、樹脂枠6の下にある固体撮像素子1を傷つけるおそれがなくなり、加工が簡単になり、製品の歩留まりが向上する。そして、この切断部から外側及び入射面裏側に形成された保護膜3を除去する。図5はこうして保護膜3までが形成された状態を示している。
【0026】
その後、保護膜3の外周部と露出した樹脂枠6の第一層6aを覆うようにアクリル樹脂を塗布して紫外線照射により硬化させることで図6に示されるように樹脂枠6の第二層6bを形成する。このとき、第二層6bの高さがシンチレータ2の頂面より0.5mm程度高くなるよう形成する。
【0027】
このように樹脂枠6の第一層6aと第二層6bとで保護膜3を挟み込むことで、固体撮像素子1上への保護膜3の密着性がより一層向上して好ましい。この結果、保護膜3によりシンチレータ2が完全に密封されるので、シンチレータ2への水分の侵入を確実に防ぐことができ、シンチレータ2の吸湿劣化による素子の解像度低下を防ぐことができる。
【0028】
次に、厚さ0.4mmのガラス板からなる放射線透過材41の片側表面にアルミを厚さ1000Å蒸着して反射膜42が形成されている反射板4をその反射面、つまり反射膜42形成面が保護膜3側に向くように固体撮像素子1上に配置する。言い換えると、反射面が受光素子12に対向するように配置する。このとき、固体撮像素子1の受光面と反射膜42の反射表面が略平行で、保護膜3と反射膜42とが接触あるいは近接するよう配置することが好ましい。そして、反射板4と樹脂枠6の第二層6bとの間にUV硬化樹脂を塗布して紫外線を照射して硬化させることで第三層6cを形成し、反射板4を固体撮像素子1上に固定する。こうして図1に示される本実施形態の放射線イメージセンサが得られる。
【0029】
ここで、UV硬化樹脂は反射板4の周囲全部に塗布する必要はなく、固定に必要な程度に塗布すれば足りる。例えば、図3に示されるように、固体撮像素子1の電極部13が形成されていない辺側の一部にUV硬化樹脂を塗布せず、内部の空間5と外部の空間とを連通する開口部51を設けてもよい。このように開口部51を設けると、反射板4固定後に放射線イメージセンサに熱的加工を加えたり、あるいは、温度変化のある環境で使用する場合でも、空間5内の空気の膨張、収縮による反射板4や放射線イメージセンサ自体の変形を防止することができる。
【0030】
続いて、本実施形態の動作について説明する。入射面、つまり図1、図2において上側から入射したX線(放射線)は、反射板4(放射線透過材41と反射膜42)、空間5、保護膜3を透過してシンチレータ2に達する。このX線は、シンチレータ2で吸収され、X線の光量に比例した可視光が放射される。放射された可視光のうち、X線の入射方向に逆行した可視光は、保護膜3の界面で一部が反射されて再びシンチレータ2に戻ってくる。そして、保護膜3から放出された可視光も反射膜42で反射されて再度シンチレータ2に戻る。このため、シンチレータ2で発生した可視光はほとんど全てが、受光素子2へと入射する。このため、効率の良い高感度の測定が可能となる。
【0031】
各々の受光素子2では、光電変換により、この可視光の光量に対応する電気信号が生成されて一定時間蓄積される。この可視光の光量は入射するX線の光量に対応しているから、つまり、各々の受光素子2に蓄積されている電気信号は、入射するX線の光量に対応することになり、X線画像に対応する画像信号が得られる。受光素子2に蓄積されたこの画像信号を外部に転送し、これを所定の処理回路で処理することにより、X線像を表示することができる。
【0032】
図7、図8に本発明に係る放射線イメージセンサの第二の実施形態を示す。この放射線イメージセンサは図1、図2に示される第一の実施形態の反射板4の代わりに金属板4aを反射板として用いたものである。金属板4aとしては例えば厚さ0.05mm程度のアルミシートを用いることができる。このように金属板4aを用いることで、装置を薄型化することが可能となる。
【0033】
図9、図10に本発明の比較例である放射線イメージセンサを示す。この放射線イメージセンサは図1、図2に示される第一の実施形態では反射板4が保護膜3に接触あるいは近接するよう配置されていたのに対して、反射板4と保護膜3とを離隔して配置している点が異なっている。そして、反射板4を離隔して配置するためにスペーサ7が用いられている。もちろん、スペーサ7を用いることなく、樹脂枠6を高くして反射板4を離隔させてもよい。反射板4と保護膜3とを離隔させることにより生じた空間5a内は空気層としても、特定のガスを封入してもよく、あるいは減圧、真空状態にしてもよい。
【0034】
図11は、本発明に係るシンチレータパネルの第一の実施形態を示す断面図である。このシンチレータパネルは、図1、図2に示される放射線イメージセンサの固体撮像素子1に代えて光透過性基板1aを用いたもので、他の構成は同一である。光透過性基板1aとしては、ガラス板、アクリル等の樹脂等を好適に用いることができる。また、図7〜図10に示される反射板の構造、配置を図11に示されるシンチレータパネルに適用することも可能である。これらのシンチレータパネルとテレビカメラ等を組み合わせれば本発明に係る放射線イメージセンサを構成することができる。
【0035】
本発明者は、本発明に係るシンチレータパネルによって従来のシンチレータパネルより明るい画像が得られることを確認する比較実験を行ったので、以下、その結果について説明する。
【0036】
図12は、実験装置の構成を示す概略図である。実験は、65mm四方、厚さ1mmのガラス上に600μmのTlドープのCsIを蒸着したシンチレータを形成し、パリレンにより保護膜を作成した後、反射膜等の形状の異なる8種類のシンチレータパネルを作成した。そして、ピーク時電圧80kVを印加したX線管から放射された放射線を20mm厚さのAlフィルターを透過させた後に被検体であるシンチレータパネル100に導き、シンチレータパネル100で生成された可視光画像を28mmレンズ101でCCDカメラ102に導いた後、その光出力強度、実際にはCCDカメラ102の出力電気信号の強度を検出器103で測定した。
【0037】
比較実験に使用したシンチレータパネルは以下の8種類である。まず、実施例1は、図8に示される形状を有し、金属板4aとして厚さ0.05mmの東洋メタライジング社製アルミシートを用いている。実施例2〜実施例5はいずれも図2に示される形状を有しており、反射膜42としていずれもアルミ蒸着膜を用いている点が共通する。実施例2の放射線透過材41は、厚さ0.4mmのガラス板であり、反射膜42の厚さは1000Åである。実施例3、4の放射線透過材41は、いずれも厚さ0.5mmの塩化ビニル板であり、反射膜42の厚さはそれぞれ400Åと1000Åである。実施例5の放射線透過材41は、厚さ0.5mmの炭素性基板であり、保護膜42の厚さは1000Åである。実施例6、7は、図9、図10に示される構造をなしており、その反射板4の構成は実施例4と同じである。そして、実施例6では、保護膜3と反射膜42とを1.5mm離隔させ、実施例7では、保護膜3と反射膜42とを2.5mm離隔させている。
【0038】
図13、図14は比較例の構成を示す図である。この比較例は、国際公開番号WO98/36290号公報に開示されているシンチレータ構造に相当し、保護膜3の上にアルミ蒸着膜8が形成されている点が実施例と相違している。
【0039】
比較例に対する各実施例における光量の増大結果を表1にまとめて示す。
【表1】
【0040】
いずれの場合も比較例に比べて光量が増大し、明るい画像を得ることができた。その要因としては、本発明によれば、反射面を平滑、かつ充分な厚さに形成することが容易であり、反射面とシンチレータの光画像出力面との位置関係を平行に保つことで反射面での不要な方向への散乱が抑制されること、保護膜と空間の界面での反射による反射光の増大効果、等が考えられる。
【0041】
【産業上の利用可能性】
本発明に係る放射線イメージセンサまたはシンチレータパネルは、工業用あるいは医療用のX線撮影に好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 発明に係る放射線イメージセンサの第一の実施形態の断面図である。
【図2】 図1のII部分の拡大図である。
【図3】 図1の上面図である。
【図4】 図1のイメージセンサの製造過程を説明する図である。
【図5】 図4の続きを説明する図である。
【図6】 図5の続きを説明する図である。
【図7】 本発明に係る放射線イメージセンサの第二の実施形態の断面図である。
【図8】 図7のVIII部分の拡大図である。
【図9】 本発明の比較例となる放射線イメージセンサの断面図である。
【図10】 図9のX部分の拡大図である。
【図11】 本発明に係るシンチレータパネルの第一の実施形態の断面図である。
【図12】 比較実験を説明する概略図である。
【図13】 比較実験の比較例となるシンチレータパネルの断面図である。
【図14】 図13のXIV部分の拡大図である。
【符号の説明】
1…固体撮像素子、1a…光透過性基板、2…シンチレータ、3…保護膜、4…反射板、4a…金属板、5、5a…空間、6…樹脂枠、6a…第一層、6b…第二層、6c…第三層、7…スペーサ、8…アルミ蒸着膜、11…基板、12…受光素子、13…電極部、41…放射線透過材、42…反射膜、51…開口部、100…シンチレータパネル、101…レンズ、102…カメラ、103…検出器。
Claims (14)
- 複数の受光素子が1次元あるいは2次元的に配列されて構成されているイメージセンサと、
前記イメージセンサの受光表面上に柱状構造で堆積され、放射線を前記イメージセンサで検出可能な波長帯域を含む光に変換するシンチレータと、
前記イメージセンサの前記シンチレータ形成面上に前記シンチレータを囲んで前記シンチレータより高く形成されている樹脂枠と、
前記樹脂枠内で前記シンチレータの柱状構造を覆って密着形成され、前記シンチレータを密封している保護膜と、
前記保護膜を挟んで前記イメージセンサの受光面と相対して前記シンチレータの発する光に対する略平坦な反射面を有し、前記反射面全体が前記樹脂枠内側で前記樹脂枠の頂面より下側に配置されて、前記保護膜に接触し、その上に搭載されて、前記反射面が前記シンチレータを完全に覆うとともに前記シンチレータ周囲の前記樹脂枠、前記反射面、前記保護膜に囲まれた空間が外部の空間と連通するよう配置されている放射線透過性の反射板と、
を備えている放射線イメージセンサ。 - 前記シンチレータは、前記イメージセンサの受光素子全面とその周囲まで覆って形成されている請求項1記載の放射線イメージセンサ。
- 前記保護膜は、前記シンチレータの柱状構造に対応する凹凸を表面に有する請求項1または2に記載の放射線イメージセンサ。
- 前記反射板は、金属板である請求項1〜3のいずれかに記載の放射線イメージセンサ。
- 前記反射板は、放射線透過材上に反射膜を有している請求項1〜3のいずれかに記載の放射線イメージセンサ。
- 前記放射線透過材は、ガラス、樹脂、炭素性基板のいずれかである請求項5記載の放射線イメージセンサ。
- 前記反射膜は、金属膜である請求項5または6に記載の放射線イメージセンサ。
- 基板と、
前記基板上に柱状構造で堆積され、放射線を前記基板を透過する波長帯域を含む光に変換するシンチレータと、
前記基板の前記シンチレータ形成面上に前記シンチレータを囲んで前記シンチレータより高く形成されている樹脂枠と、
前記樹脂枠内で前記シンチレータの柱状構造を覆って密着形成され、前記シンチレータを密封している保護膜と、
前記保護膜を挟んで前記基板と相対して前記シンチレータの発する光に対する略平坦な反射面を有し、前記反射面全体が前記樹脂枠内側で前記樹脂枠の頂面より下側に配置されて、前記保護膜に接触し、その上に搭載されて、前記反射面が前記シンチレータを完全に覆うとともに前記シンチレータ周囲の前記樹脂枠、前記反射面、前記保護膜に囲まれた空間が外部の空間と連通するよう配置されている放射線透過性の反射板と、
を備えているシンチレータパネル。 - 前記保護膜は、前記シンチレータの柱状構造に対応する凹凸を表面に有する請求項8記載のシンチレータパネル。
- 前記反射板は、金属板である請求項8または9に記載のシンチレータパネル。
- 前記反射板は、放射線透過材上に反射膜を有している請求項8または9に記載のシンチレータパネル。
- 前記放射線透過材は、ガラス、樹脂、炭素性基板のいずれかである請求項11記載のシンチレータパネル。
- 前記反射膜は、金属膜である請求項11または12に記載のシンチレータパネル。
- 請求項8〜13に記載のいずれかのシンチレータパネルと、前記基板を透過した光像を検出する検出器を備えている放射線イメージセンサ。
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