JP4191936B2 - 空気入りタイヤの製造方法、及び空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気入りタイヤの製造方法、及び空気入りタイヤに係り、特に、トレッドに周方向に延びる溝を備えた空気入りタイヤの製造方法、及び空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、排水性向上のニーズが高く、技術的対応として、排水溝を比較的幅広で深く、タイヤ周方向に直線的に配置することが行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、溝幅を広くすると、従来の比較的平坦な成形生トレッドでは、モールドの溝型(リブ、骨部とも呼ぶ)が加硫時に成形生トレッドを押圧するため、溝底直下のベルトやカーカスが波打ってしてしまい、これが原因でタイヤの接地性能等の基本性能が損なわれる場合がある。
【0004】
このベルトやカーカスの波打ちを改善するため、従来より、モールドの溝型が当る部分に予め溝を形成した溝付き生トレッドを用いる技術があるが、従来の生タイヤの製造過程では、生トレッドをタイヤケース(バンド組立体)に貼り付ける際、比較的平坦で幅広の押圧ステッチャーで生トレッドを押圧するため、生トレッドの溝部に圧力が作用せず、生トレッドとタイヤケースとの間に介在したエアが溝部の直下では抜けきらない、という問題があった。
【0005】
このエア入り不良に対応する方法として、従来では、溝付き生トレッドの溝の形状を工夫することで対応していたが、結局は溝深さを浅くして押圧ステッチャーによる押圧効果を高めるようになるため、ベルトやカーカスの波打ち防止との両立が困難であった。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、排水性に優れた空気入りタイヤ、及び生タイヤ製造時のエア入りを防止しつつ、排水性に優れた空気入りタイヤを製造可能な空気入りタイヤの製造方法を提供することが目的である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、少なくとも一対のビードコア、一方のビードコアと他方のビードコアとに跨るカーカス、及び前記カーカスの外周面に設けられる補強層とを備えたバンド組立体の外周面に、タイヤ周方向に対応する方向に延びる溝が形成された未加硫の帯状トレッド部材を貼り付けて生タイヤを形成し、前記溝と対向するように製品タイヤのトレッドに周方向溝を形成するための骨部を内周面に設けた加硫用モールド用いて前記生タイヤを加硫形成する空気入りタイヤの製造方法であって、前記帯状トレッド部材を前記バンド組立体に貼りつけた後に、前記溝の溝底の幅と同等以下の幅寸法に設定された溝底ステッチャーロールを回転させながら前記溝の溝底を長手方向沿って押圧する、ことを特徴としている。
【0008】
次に、請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法の作用を説明する。
【0009】
生タイヤは、少なくとも一対のビードコア、一方のビードコアと他方のビードコアとに跨るカーカス、及びカーカスの外周面に設けられる補強層とを備えたバンド組立体の外周面に、タイヤ周方向に対応する方向に延びる溝が形成された未加硫の帯状トレッド部材を貼り付けて形成される。
【0010】
ここで、帯状トレッド部材をバンド組立体に貼りつけた後に、溝底の幅と同等以下の幅寸法に設定された溝底ステッチャーロールを回転させながら溝底を長手方向沿って押圧することにより、帯状トレッド部材とバンド組立体との間の溝底付近のエアを確実に押し出すことができる。
【0011】
このようにして形成された生タイヤは、加硫用モールドに装填され、従来通り加硫モールドに設けられたブラダーが膨張して生タイヤの外周面が加硫モールドの内周面に押圧され、所定温度所定時間加硫されて製品タイヤとなる。
【0012】
また、生のトレッドに形成された溝に加硫モールドの骨部を対向させて押圧することにより、ベルトやカーカスの波打ちを防止することが出来る。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法において、前記溝の溝底を前記溝底ステッチャーロールで押圧した後、前記溝以外の部分を押圧する、ことを特徴としている。
【0014】
次に、請求項2に記載の空気入りタイヤの製造方法の作用を説明する。
【0015】
請求項2に記載の空気入りタイヤの製造方法では、ステッチャーのかかり難い帯状トレッド部材の溝の溝底を溝底ステッチャーロールで押圧した後、帯状トレッド部材の溝以外の部分を押圧するので、帯状トレッド部材とバンド組立体との間のエアを効率的に押し出すことができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤの製造方法において、前記溝の溝深さをd、前記帯状トレッド部材のゲージをTとしたときに、前記溝深さdを前記ゲージTの10〜80%の範囲内に設定した、ことを特徴としている。
【0017】
次に、請求項3に記載の空気入りタイヤの製造方法の作用を説明する。
【0018】
帯状トレッド部材の溝の深さdが帯状トレッド部材のゲージTの10%未満になると、溝底直下のベルト、カーカスの波打ちを解消出来なくなる。
【0019】
一方、帯状トレッド部材の溝の深さdが帯状トレッド部材のゲージTの80%を越えると、帯状トレッド部材の溝底ゲージが薄すぎて成型作業時の作業性が悪化する(こし無く、しわより等の原因となる。)
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤの製造方法において、前記帯状トレッド部材には、前記溝の溝底に前記帯状トレッド部材を貫通するエア抜き孔が形成されている、ことを特徴としている。
【0020】
次に、請求項4に記載の空気入りタイヤの製造方法の作用を説明する。
【0021】
帯状トレッド部材の溝底に帯状トレッド部材を貫通するエア抜き孔を形成すると、溝底を溝底ステッチャーロールで押圧した際に、帯状トレッド部材とバンド組立体との間のエア抜き孔を介して排出し易くなる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の空気入りタイヤの製造方法において、前記溝の溝底は実質上平坦であり、前記溝底ステッチャーロールは軸方向に一定径である、ことを特徴としている。
【0023】
次に、請求項5に記載の空気入りタイヤの製造方法の作用を説明する。
【0024】
軸方向に一定径である溝底ステッチャーロールを回転させながら実質上平坦とされた溝底を押圧することで、溝底全体を均一に押圧することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の空気入りタイヤの製造方法の一実施形態を図1乃至図5にしたがって説明する。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤ10のトレッド12には、タイヤ周方向に沿って直線状に延びる周方向主溝14及び周方向主溝16が形成されている。
【0029】
本実施形態のトレッド12は、踏面側のキャップゴム12Aと、キャップゴム12Aのタイヤ径方向内側に配置されるベースゴム12Bとからなる、所謂キャップ・ベース構造である。
【0030】
トレッド12のタイヤ径方向内側には、複数枚のベルトプライからなるベルト18、カーカス20、及びインナーライナー22が設けられている。
【0031】
次に、この空気入りタイヤ10の製造方法を説明する。
【0032】
図2に示す符号24は、ベルト18、一対のビードコア(図示せず)、一方のビードコアと他方のビードコアとに跨るカーカス20、インナーライナー22等からなるバンド組立体である。
【0033】
未加硫のトレッド12は、下側が未加硫のベースゴム12B、上側が未加硫のキャップゴム12Aである。
【0034】
未加硫のトレッド12には、周方向に沿って延びる第1の溝26、及び第2の溝28が形成されている。
【0035】
なお、第1の溝26の溝底、及び第2の溝28の溝底は、平坦であることが好ましい。
【0036】
図3に示すように、未加硫のトレッド12はバンド組立体24の外周面に貼り付けられる。
【0037】
未加硫のトレッド12をバンド組立体24の外周面に貼り付けた後、先ず最初に、溝底ステッチャーロール30を回転させながら第1の溝26の溝底、及び第2の溝28の溝底が、各々溝長手方向に順次押圧されて行く。
【0038】
これにより、未加硫のトレッド12とバンド組立体24との間の溝底付近のエアが押し出される。
【0039】
この溝底ステッチャーロール30は、軸方向に一定径であり、かつ幅t(図3参照)が溝底の幅wの30〜100%の範囲内に設定されている。
【0040】
第1の溝26の、及び第2の溝28溝の溝深さdは、未加硫のトレッド12のゲージTの10〜80%の範囲内に設定することが好ましい。
【0041】
図2に示すように、未加硫のトレッド12の第1の溝26の溝底、及び第2の溝28の溝底には、未加硫のトレッド12を貫通するエア抜き孔29が溝長手方向に沿って複数形成されている。
【0042】
エア抜き孔29は、径を0.5〜1.5mm、溝長手方向の配設ピッチを5〜50mmに設定することが好ましい。
【0043】
エア抜き孔29を適宜設けることにより、溝底ステッチャーロール30により未加硫のトレッド12の溝底を押圧する際に、未加硫のトレッド12とバンド組立体24との間の溝底付近のエアをエア抜き孔29を介して外部へ押し出し易くなる。
【0044】
第1の溝26の溝底、及び第2の溝28の溝底を、溝底ステッチャーロール30を回転させながら押圧した後、図4に示すように、幅広のステッチャーロール32を回転させながらトレッド12の全体を押圧し、未加硫のトレッド12とバンド組立体24との間の溝底付近以外の部分のエアを押し出す。
【0045】
なお、溝底ステッチャーロール30の外周面、及びステッチャーロール32の外周面は、未加硫のゴムが付着し難いように平滑にすることが好ましい。
【0046】
これにより、未加硫のトレッド12とバンド組立体24との間のエアを全て押し出すことができる。
【0047】
その後、図5に示すように、トレッド12とバンド組立体24とを一体化させた生タイヤ10’をモールド34に装填し、従来通りの方法で加硫成形を行う。
【0048】
なお、モールド34の内周面には、周方向主溝14を形成するためのリブ状の骨部36、及び周方向主溝16を形成するためのリブ状の骨部38が形成されている。
【0049】
加硫工程では、生タイヤ10’の内側に設けられたブラダー40が膨張して生タイヤ10’の外周面がモールド34の内周面に押圧され、予め設定された所定時間所定温度にて加硫が行われる。
【0050】
生のトレッド12には、骨部36に対向して第1の溝26、骨部38に対向して第2の溝28が予め形成されているので、骨部36及び骨部38に生のトレッド12が押圧されてもベルト18やカーカス20が波打つことが無く、ユニフォミティの優れた製品タイヤが得られる。
【0051】
なお、エア抜き孔29は、加硫時の圧力により潰れて消滅するため製品タイヤに残ることは無い。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の空気入りタイヤの製造方法によれば、生タイヤ製造時のエア入りを防止しつつ、排水性及びユニフォミティに優れた空気入りタイヤを効率的に製造できる、という優れた効果を有する。
【0053】
また、本発明の空気入りタイヤは、排水性及びユニフォミティに優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空気入りタイヤの製造方法によって得られた空気入りタイヤのトレッドの断面図である。
【図2】未加硫のトレッドとバンド組立体の貼り付け前の断面図である。
【図3】生タイヤの溝底部分を溝底ステッチャーロールで押圧している様子を示すトレッドの断面図である。
【図4】生タイヤの踏面部分をステッチャーロールで押圧している様子を示すトレッドの断面図である。
【図5】生タイヤとモールドの断面図である。
【符号の説明】
10 空気入りタイヤ
10’ 生タイヤ
12 トレッド
14 帯状トレッド部材
16 周方向主溝
18 ベルト(補強層)
20 カーカス
24 バンド組立体
26 第1の溝(溝)
28 第2の溝(溝)
29 エア抜き孔
30 溝底ステッチャーロール
34 モールド(加硫用モールド)
Claims (5)
- 少なくとも一対のビードコア、一方のビードコアと他方のビードコアとに跨るカーカス、及び前記カーカスの外周面に設けられる補強層とを備えたバンド組立体の外周面に、タイヤ周方向に対応する方向に延びる溝が形成された未加硫の帯状トレッド部材を貼り付けて生タイヤを形成し、前記溝と対向するように製品タイヤのトレッドに周方向溝を形成するための骨部を内周面に設けた加硫用モールド用いて前記生タイヤを加硫形成する空気入りタイヤの製造方法であって、
前記帯状トレッド部材を前記バンド組立体に貼りつけた後に、前記溝の溝底の幅と同等以下の幅寸法に設定された溝底ステッチャーロールを回転させながら前記溝の溝底を長手方向沿って押圧する、ことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。 - 前記溝の溝底を前記溝底ステッチャーロールで押圧した後、前記溝以外の部分を押圧する、ことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法。
- 前記溝の溝深さをd、前記帯状トレッド部材のゲージをTとしたときに、前記溝深さdを前記ゲージTの10〜80%の範囲内に設定した、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤの製造方法。
- 前記帯状トレッド部材には、前記溝の溝底に前記帯状トレッド部材を貫通するエア抜き孔が形成されている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤの製造方法。
- 前記溝の溝底は実質上平坦であり、前記溝底ステッチャーロールは軸方向に一定径である、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の空気入りタイヤの製造方法。
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