JP4187548B2 - 配線基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、寸法安定性、形状安定性、耐熱性、難燃性等に優れ、特に低熱膨張率及び破断伸び率に優れた樹脂組成物を用いてなる配線基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電気機器に用いられる多層プリント基板、ビルドアップ基板等の配線基板には配線基板用材料として樹脂組成物が用いられている。
そこで、近年の配線基板の高密度化及び薄膜化に伴って基板用材料として用いられる樹脂組成物に対して、強度、低熱膨張性、耐熱性及び難燃性等の性能の向上が求められている。
【0003】
通常、配線基板に電気が流れて作動すると発熱によって配線基板が熱膨張してしまうため、熱膨張率が大きい基板用材料を用いた場合、配線基板の作動時に発生する熱によって配線基板が膨張し、ショートや断線を起こして接続信頼性を低下させてしまうという問題があった。
特に、近年の配線基板には細い金属配線が狭い間隔で設けられているために熱膨張によってショートや断線を起こしやすく、そのため、配線基板に用いられる基板用材料としては、熱膨張率が低い樹脂組成物が求められている。
【0004】
これに対して、エポキシ系樹脂を主成分とし、無機化合物を添加した樹脂組成物を多層プリント基板に塗布することによって、熱膨張率の低い多層プリント基板を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−183539号公報
【0006】
このような多層プリント基板等に金属配線を設けるには、通常、ハンダリフローを行う必要があり、このハンダリフローにおける溶融ハンダの温度が基板用材料のガラス転移温度付近まで達するために基板用材料が熱膨張してショートや断線を起こして接続信頼性を低下させてしまうという問題があった。
なお、ハンダリフローとは、ハンダを溶解するまで加熱した後、冷却固化させて配線金属等を接続する一連のハンダ付けの工程を意味する。
【0007】
また、近年は環境に配慮して従来のハンダよりも高融点の鉛フリーハンダが用いられており、ハンダリフローにおいて基板用材料がガラス転移以上の温度によって熱膨張してショートや断線を起こして接続信頼性を低下させてしまうという問題があった。
【0008】
また、従来の配線基板において、低熱膨張率の多層プリント基板を得るためには多量の無機化合物を添加する必要があり、無機化合物を大量に添加することによって樹脂組成物の破断伸び率が低下して脆弱となってしまうので、従来の配線基板は高温時の低熱膨張率と高い破断伸び率を両立することが困難となってしまう。そのため、配線基板が一般通信用や車載用等の高温高湿下や振動がひどい等の過酷な環境下で用いられる場合、このような過酷な環境下では基板用材料が外部からの力によって変形して壊れてしまい、高い接続信頼性を得ることが困難であるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑み、ガラス転移温度付近又はそれ以上の高温の環境下でも低い熱膨張率を発揮するとともに、高い破断伸び率を発揮して高い接続信頼性を得ることができる樹脂組成物を用いてなる配線基板を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため、請求項1に記載の発明は、エポキシ樹脂100重量部、ポリビニルアセタール樹脂2〜50重量部、及び層状珪酸塩0.1〜150重量部からなる樹脂組成物を用いてなる配線基板であって、前記層状珪酸塩は、広角X線回折測定法により測定された(001)面の平均層間距離が3nm以上であり、かつ一部又は全部の積層体が5層以下であるように樹脂組成物の硬化物中に分散しており、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも50℃低い温度から、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも10℃低い温度までの平均線膨張率(α1)が7.0×10−5(℃−1)以下であり、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも10℃高い温度から、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも50℃高い温度までの平均線膨張率(α2)が1.5×10−4(℃−1)以下であり、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも10℃高い温度から、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも50℃高い温度までの平均線膨張率(α 2 )を、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも50℃低い温度から、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも10℃低い温度までの平均線膨張率(α 1 )で除して求めた平均線膨張率比(α 2 /α 1 )が7.5以下であり、JIS K6251に基づいて、ダンベル2状号形にて型抜きを行った樹脂組成物の硬化物の破断伸び率を、引張試験機を用いて、引張速度10mm/分で測定したときに、前記破断伸び率が2%以上であることを特徴とする。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、ウィスカ及びシリカの少なくとも1種をさらに含み、前記エポキシ樹脂100重量部に対し、ウィスカ及びシリカの少なくとも1種と前記層状珪酸塩との合計が1〜150重量部であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物としている。
【0017】
また、請求項3に記載の発明は、前記層状珪酸塩は、モンモリロナイト、ヘクトライト、膨潤性マイカ、及びバーミキュライトからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物としている。
【0018】
また、請求項4に記載の発明は、前記層状珪酸塩は、炭素数6以上のアルキルアンモニウムイオン、芳香族4級アンモニウムイオン及び複素環4級アンモニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物としている。
【0021】
以下に本発明を詳述する。
本発明の樹脂組成物は、エポキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及び層状珪酸塩によって形成されるものである。
【0022】
樹脂組成物を形成する硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂の少なくとも1種が挙げられるが、本発明の樹脂組成物では、エポキシ樹脂が用いられる。
なお、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂とは、常温では液状、半固形状又は固形状等であって常温下又は加熱下で流動性を示す比較的低分子量の物質からなっており、この物質が硬化剤、触媒、熱又は光の作用によって硬化反応や架橋反応等の化学反応を起こして分子量を増大させながら網目状の三次元構造を形成してなる不溶不融性の樹脂となりうる樹脂を意味する。
【0023】
樹脂組成物を形成する熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アリル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、アニリン樹脂等が挙げられる。
【0024】
これらのうち、エポキシ系樹脂が用いられる。
【0025】
熱硬化性樹脂の1つであるエポキシ系樹脂とは、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物をいう。エポキシ系樹脂中に含有されるエポキシ基の数としては、1分子当たり1個以上であることが好ましく、1分子当たり2個以上であることがより好ましい。ここで、1分子当たりに含有されるエポキシ基の数は、エポキシ系樹脂中のエポキシ基の総数をエポキシ系樹脂中の分子の総数で除算することによって求められる。
【0026】
熱硬化性樹脂の1つであるエポキシ系樹脂としては、従来公知のエポキシ系樹脂を用いることができ、例えば、芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルアクリル型エポキシ樹脂、ポリエステル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、エポキシ系樹脂として、これらのエポキシ系樹脂の誘導体又は水添加物が用いられてもよい。
【0027】
芳香族エポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
ビスフェノール型エポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。
ノボラック型エポキシ系樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、この他には、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等の芳香族化合物からなるエポキシ系樹脂等も挙げられる。
【0028】
脂環族エポキシ系樹脂としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4 −エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサノン−メタ−ジオキサン、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル等が挙げられる。
このような脂環族エポキシ系樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、商品名「EHPE−3150」(軟化温度71℃、ダイセル化学工業社製)等が挙げられる。
【0029】
脂肪族エポキシ系樹脂としては、例えば、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、炭素数が2〜9(好ましくは2〜4)のアルキレン基を有するポリオキシアルキレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等を含む長鎖ポリオールのポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0030】
グリシジルエステル型エポキシ系樹脂としては、例えば、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル−p−オキシ安息香酸、サリチル酸のグリシジルエーテル−グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等が挙げられる。
【0031】
グリシジルアミン型エポキシ系樹脂としては、例えば、トリグリシジルイソシアヌレート、環状アルキレン尿素のN,N’−ジグリシジル誘導体、p−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体、m−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体等が挙げられる。
【0032】
グリシジルアクリル型エポキシ系樹脂としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートと、エチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル等のラジカル重合性モノマーとの共重合体等が挙げられる。
また、本明細書において、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートとは、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートを意味する。
【0033】
ポリエステル型エポキシ系樹脂としては、例えば、1分子当たり1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有するポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0034】
この他のエポキシ系樹脂としては、例えば、エポキシ化ポリブタジエン等の共役ジエン化合物を主体とする重合体又はその部分水添物の重合体における不飽和炭素の二重結合をエポキシ化した化合物が挙げられる。
また、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック又はその部分水添物の重合体ブロックとを同一分子内にもつブロック共重合体において、共役ジエン化合物が有する不飽和炭素の二重結合部分をエポキシ化した化合物等が挙げられる。このような化合物としては、例えば、エポキシ化SBS等が挙げられる。
【0035】
また、この他のエポキシ系樹脂としては、例えば、上記のエポキシ系樹脂の構造中にウレタン結合やポリカプロラクトン結合を導入した、ウレタン変成エポキシ樹脂やポリカプロラクトン変成エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、これらのエポキシ樹脂以外に、少なくとも1つのオキシラン環を有する樹脂又はオリゴマーが添加されたものもエポキシ系樹脂のひとつである。
【0036】
エポキシ系樹脂の硬化反応に用いられる硬化剤としては、従来公知のエポキシ系樹脂用の硬化剤を用いることができ、例えば、アミン化合物、アミン化合物から合成される化合物、3級アミン化合物、イミダゾール化合物、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物、熱潜在性カチオン重合触媒、光潜在性カチオン重合開始剤、ジシアンジアミド及びそれらの誘導体等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0037】
エポキシ系樹脂の硬化剤に用いられるアミン化合物としては、例えば、鎖状脂肪族アミン化合物、環状脂肪族アミン、芳香族アミン等が挙げられる。
鎖状脂肪族アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン等が挙げられる。
環状脂肪族アミン化合物としては、例えば、メンセンジアミン、イソフォロンジアミン、ビス(4−アミノ3−メチルシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。
芳香族アミン化合物としては、m−キシレンジアミン、α−(m/pアミノフェニル)エチルアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、α,α−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。
【0038】
エポキシ系樹脂の硬化剤のひとつであるアミン化合物から合成される化合物としては、例えば、ポリアミノアミド化合物、ポリアミノイミド化合物、ケチミン化合物等が挙げられる。
ポリアミノアミド化合物としては、例えば、上記のアミン化合物とカルボン酸とから合成される化合物等が挙げられる。カルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカ二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジヒドロイソフタル酸、テトラヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等が挙げられる。
ポリアミノイミド化合物としては、例えば、上記のアミン化合物とマレイミド化合物とから合成される化合物等が挙げられる。マレイミド化合物としては、例えば、ジアミノジフェニルメタンビスマレイミド等が挙げられる。
ケチミン化合物としては、例えば、上記のアミン化合物とケトン化合物とから合成される化合物等が挙げられる。
この他に、アミン化合物から合成される化合物としては、例えば、上記のアミン化合物と、エポキシ化合物、尿素化合物、チオ尿素化合物、アルデヒド化合物、フェノール化合物、アクリル化合物等の化合物とから合成される化合物が挙げられる。
【0039】
エポキシ系樹脂の硬化剤のひとつである3級アミン化合物としては、例えば、N,N−ジメチルピペラジン、ピリジン、ピコリン、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1等が挙げられる。
【0040】
エポキシ系樹脂の硬化剤のひとつであるイミダゾール化合物としては、例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等が挙げられる。
【0041】
エポキシ系樹脂の硬化剤のひとつであるヒドラジド化合物としては、例えば、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジド、エイコサン二酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
【0042】
エポキシ系樹脂の硬化剤のひとつであるメラミン化合物としては、例えば、2,4−ジアミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0043】
エポキシ系樹脂の硬化剤のひとつである酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセロールトリスアンヒドロトリメリテート、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸−無水マレイン酸付加物、ドデセニル無水コハク酸、ポリアゼライン酸無水物、ポリドデカン二酸無水物、クロレンド酸無水物等が挙げられる。
【0044】
エポキシ系樹脂の硬化剤のひとつであるフェノール化合物としては、例えば、フェノールノボラック型硬化剤、o−クレゾールノボラック型硬化剤、p−クレゾールノボラック型硬化剤、t−ブチルフェノールノボラック型硬化剤、ジシクロペンタジエンクレゾール型硬化剤等が挙げられる。
【0045】
エポキシ系樹脂の硬化剤のひとつである熱潜在性カチオン重合触媒としては、例えば、イオン性熱潜在性カチオン重合触媒、非イオン性熱潜在性カチオン重合触媒等が挙げられる。
イオン性熱潜在性カチオン重合触媒としては、例えば、対アニオンとして6フッ化アンチモン、6フッ化リン、4フッ化ホウ素等を用いたベンジルスルホニウム塩、ベンジルアンモニウム塩、ベンジルピリジニウム塩、ベンジルホスホニウム塩等が挙げられる。
非イオン性熱潜在性カチオン重合触媒としては、例えば、N−ベンジルフタルイミド、芳香族スルホン酸エステル等が挙げられる。
【0046】
エポキシ系樹脂の硬化剤のひとつである光潜在性カチオン重合開始剤としては、例えば、イオン性光潜在性カチオン重合開始剤、非イオン性光潜在性カチオン重合開始剤等が挙げられる。
イオン性光潜在性カチオン重合開始剤としては、例えば、オニウム塩、有機金属錯体等が挙げられる。オニウム塩としては、対アニオンとして6フッ化アンチモン、6フッ化リン、4フッ化ホウ素等を用いた芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩等が挙げられる。有機金属錯体としては、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体、アリルシラノール−アルミニウム錯体等が挙げられる。
非イオン性光潜在性カチオン重合開始剤としては、例えば、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N−ヒドロキシイミドスルホナート等が挙げられる。
なお、光硬化性樹脂とは、これらの光潜在性カチオン重合開始剤を含有したエポキシ樹脂を意味する。
【0047】
熱硬化性系樹脂のひとつである熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂を構成するモノマーの一部の官能基がアミノ基、グリシジル基、イソシアネート基等の熱硬化性を有する官能基の中から1種又は2種以上によって置換された樹脂等が挙げられる。官能基が置換された結果、この熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル系樹脂は熱硬化性の性質を示すものであり、この樹脂の官能基が熱硬化した場合には、分子量を増大させながら不可逆的に3次元の網目状構造を形成することによって樹脂が熱硬化性の性質を示す。
これらの熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル系樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0048】
熱硬化性樹脂のひとつである熱硬化性ポリイミド系樹脂としては、分子主鎖中にイミド結合を有する樹脂であれば特に限定されず、具体的には、例えば、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸との縮合重合体、芳香族ジアミンとビスマレイミドとの付加重合体であるビスマレイミド樹脂、アミノ安息香酸ヒドラジドとビスマレイミドとの付加重合体であるポリアミノビスマレイミド樹脂、ジシアネート化合物とビスマレイミド樹脂とからなるビスマレイミドトリアジン樹脂等が挙げられる。これらのうち、ビスマレイミドトリアジン樹脂が好適に用いられる。これらの熱硬化性ポリイミド系樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0049】
熱硬化性樹脂のひとつであるユリア系樹脂としては、尿素とホルムアルデヒドとの付加縮合反応で得られる熱硬化性樹脂であれば特に限定されない。
ユリア系樹脂の硬化反応に用いられる硬化剤としては、例えば、顕在性硬化剤、潜在性硬化剤等が挙げられる。顕在性硬化剤としては、例えば、無機酸、有機酸、酸性硫酸ナトリウム等の酸性塩が挙げられる。潜在性硬化剤としては、カルボン酸エステル、酸無水物、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の塩が挙げられる。これらのうち、潜在性硬化剤は、貯蔵寿命が長いので好適に用いられる。
【0050】
熱硬化性樹脂のひとつであるアリル系樹脂としては、ジアリルフタレートモノマーの重合及び硬化反応によって得られるものであれば特に限定されない。
ジアリルフタレートモノマーとしては、例えば、オルソ体、イソ体、テレ体が挙げられる。
硬化反応の触媒としては特に限定されないが、例えば、t−ブチルパーベンゾエートとジ−t−ブチルパーオキシドとの併用が好適である。
【0051】
熱硬化性樹脂のひとつであるケイ素系樹脂としては、分子鎖中にケイ素−ケイ素結合、ケイ素−炭素結合、シロキサン結合、ケイ素−窒素結合等を含むであれば特に限定されない。このようなケイ素系樹脂としては、例えば、ポリシロキサン、ポリカルボシラン、ポリシラザン等が挙げられる。
なお、これらのケイ素樹脂の分子鎖中に含まれる結合は1種類のみであってもよく、2種類以上であってもよい。
【0052】
熱硬化性樹脂のひとつであるベンゾオキサジン系樹脂としては、一般にBTレジンと呼ばれ、ベンゾオキサジンモノマーのオキサジン環の開環重合によって得られるものであれば特に限定されない。このようなベンゾオキサジンモノマーとしては、例えば、オキサジン環の窒素に対して、フェニル基、メチル基、シクロヘキシル基等の官能基が結合したもの等が挙げられる。
【0053】
本発明の樹脂組成物は、軟質樹脂又はゴム状樹脂として、軟質樹脂であるポリビニルアセタール樹脂を含有する。
【0054】
ポリビニルアセタール樹脂の構造としては、例えば、化学式(1)に示されるモノマーの重合体が挙げられる。
【0055】
【化1】
【0056】
化学式(1)において、Xは、水素又は炭素数が1〜4のアルキル基で示される官能基である。また、ポリビニルアセタール樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂の構造中にホルムアルデヒド基、アセトアルデヒド基、ブチルアルデヒド基等の官能基を有していてもよく、これらの官能基が導入されてなる誘導体を含有していてもよい。
このような誘導体としては、ポリビニルホルムアルデヒドアセタール樹脂、ポリビニルアセトアルデヒドアセタール樹脂、ポリビニルブチルアルデヒドアセタール樹脂等が挙げられる。
【0057】
ゴム状樹脂としては、例えば、ゴム成分を含有させた樹脂等が挙げられる。
ゴム状成分としては、例えば、熱可塑性エラストマー、架橋性ゴム等が挙げられる。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、アクリル系エラストマー等が挙げられる。
架橋性ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム(NBR)、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。
【0058】
ゴム成分を含有させる樹脂としては、エポキシ樹脂、オキシラン環を有する樹脂等が挙げられる。また、ゴム成分を含有させる樹脂に対してオリゴマーが添加されたものでもよい。
【0059】
このようなゴム状樹脂としては、例えば、ポリブタジエン変性エポキシ樹脂、エポキシ変性ブタジエンゴム、エポキシ変性ニトリルゴム等が挙げられる。
また、樹脂組成物との相容性を高めるために、これらのゴム類の官能基を置換したしたものを用いてもよい。これらのゴム類は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0060】
ポリビニルアセタール樹脂の含有量は、エポキシ樹脂100重量部に対して2〜50重量部であり、4〜40重量部であることが好ましく、5〜30重量部であることがより好ましい。
この範囲内でポリビニルアセタール樹脂が含有されることによって、本発明の樹脂組成物の破断伸び率が向上し、外部からの力によって変形しても壊れにくくなるため、高温多湿や振動がひどい等の過酷な環境下でも高い接続信頼性を得ることができる。
なお、ポリビニルアセタール樹脂の含有量が2重量部未満であると、樹脂組成物の破断伸び率の向上が不足するため、樹脂組成物に対して加熱と冷却を繰り返したときに生じる応力を緩和することが困難となり、樹脂の劣化やひび割れが発生するおそれがある。ポリビニルアセタール樹脂の含有量が50重量部を超えると、樹脂組成物の耐熱性が低下したり、誘電率や誘電正接等の電気特性が低下してしまうおそれがある。
【0061】
本発明の樹脂組成物は、無機化合物として、層状珪酸塩を含有する。本発明の樹脂組成物に含有される無機化合物は、層状珪酸塩、およびウィスカ及びシリカの少なくとも1種と層状珪酸塩との組合せの内のいずれかである。
【0062】
本発明の樹脂組成物は、無機化合物として層状珪酸塩、およびウィスカ及びシリカの少なくとも1種と層状珪酸塩との組合せの内のいずれかを、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.1〜150重量部含有しており、1〜100重量部含有することが好ましく、5〜70重量部含有することがより好ましい。これによって、得られる樹脂組成物に低い熱膨張率と高い破断伸び率を付与することができるとともに、乾燥後における樹脂組成物の機械的強度の低下を防ぐことができる。
無機化合物の含有量が0.1重量部未満であると低い熱膨張率を発揮することが困難となり、無機化合物の含有量が150重量部を超えると比重が大きくなるとともに破断伸び率が低下してしまう。
【0063】
無機化合物としては、例えば、層状珪酸塩、タルク、シリカ、アルミナ、ガラスビーズ、ウィスカ等が挙げられるが、本発明の樹脂組成物に含有される無機化合物は、層状珪酸塩、およびウィスカ及びシリカの少なくとも1種と層状珪酸塩との組合せの内のいずれかである。
これらのうち、層状珪酸塩が好適に用いられる。層状珪酸塩を含有することによって、得られる樹脂組成物は、より低い熱膨張率を発揮することができる。
【0064】
本発明の樹脂組成物は、層状珪酸塩と、ポリビニルアセタール樹脂とを併用することによってガラス転移温度付近又はそれ以上の温度における熱膨張率を低下させることができる。
なお、本明細書において、層状珪酸塩とは、層間に交換性金属カチオンを有する層状の珪酸塩鉱物を意味し、天然物であってもよく、合成物であってもよい。
また、本明細書において、ガラス転移温度とは、過冷却状態からガラス状態に移るときに性質が大きく変わる現象を示す温度のことを意味する。
【0065】
層状珪酸塩の層間に存在する交換性金属カチオンとは、層状珪酸塩の薄片状結晶表面に存在するナトリウムやカルシウム等の金属イオンを意味している。これらの金属イオンは、カチオン性物質とのカチオン交換性を有するので、カチオン性を有する種々の物質を上記層状珪酸塩の結晶層間に挿入することができる。
【0066】
層状珪酸塩のカチオン交換容量としては特に限定されないが、50〜200ミリ等量/100gであることが好ましい。
カチオン交換容量が50ミリ等量/100g未満であると、カチオン交換によって層状珪酸塩の結晶層間に挿入されるカチオン性物質の量が少なくなるために、結晶層間が充分に非極性化(疎水化)されないことがある。また、カチオン交換容量が200ミリ等量/100gを超えると、層状珪酸塩の結晶層間の結合力が強固になりすぎて、層状珪酸塩の薄片状結晶の剥離が困難になる。
【0067】
また、層状珪酸塩は、下記式(1)で定義される形状異方性効果が大きいものであることが好ましい。形状異方性効果の大きい層状珪酸塩を用いることにより、本発明の樹脂組成物は優れた力学的物性を有することができる。
【0068】
形状異方性効果=薄片状結晶の積層面の表面積/薄片状結晶の積層側面の表面積 (1)
【0069】
形状異方性効果が大きい層状珪酸塩としては、例えば、スメクタイト系粘土鉱物、膨潤性マイカ、バーミキュライト、ハロイサイト等が挙げられる。スメクタイト系粘土鉱物としては、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等が挙げられる。
これらのうち、層状珪酸塩として、モンモリロナイト、ヘクトライト、膨潤性マイカ及びバーミキュライトからなる群より選択される少なくとも1種が好適に用いられる。これらの層状珪酸塩は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0070】
本発明の樹脂組成物は、硬化性樹脂と層状珪酸塩との界面面積が充分に大きいことが好ましい。これによって、硬化性樹脂と層状珪酸塩の表面との相互作用が大きくなるために、樹脂組成物の溶融粘度が高まり成形性を向上することができる。
【0071】
層状珪酸塩は、硬化性樹脂中に均一に分散されているのが好ましく、硬化性樹脂中に微細な状態で分散されているのがより好ましい。層状珪酸塩が硬化性樹脂中に均一に分散され、又は硬化性樹脂中で微細な状態で分散されていることによって、硬化性樹脂と層状珪酸塩との界面面積を大きくすることができる。
また、層状珪酸塩は所定数の層を有する薄片状結晶として分散されるため、得られる樹脂組成物の物理的強度を高めることができ、樹脂組成物を薄いシート状等に加工しても高い物理的強度を得ることができる。更に、分散された層状珪酸塩同士の間隔が適度な距離であることが好ましい。
【0072】
硬化性樹脂中に層状珪酸塩を分散させる方法としては、例えば、有機化層状珪酸塩を用いる方法、発泡剤を用いる方法、分散剤を用いる方法等が挙げられる。これらの方法を用いることにより、硬化性樹脂中に層状珪酸塩をより均一かつ微細に分散させることができる。
【0073】
層状珪酸塩を分散させる方法のひとつである有機化層状珪酸塩を用いる方法としては、以下に示す化学修飾方法(1)〜(6)によって化学修飾された有機化層状珪酸塩を用いる方法が挙げられる。これらの化学修飾方法は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
なお、有機化層状珪酸塩とは、層状珪酸塩を化学修飾することによって硬化性樹脂中への分散性が向上されたものをいう。
【0074】
化学修飾方法(1)は、カチオン性界面活性剤によるカチオン交換法とも呼ばれる方法で、具体的には、カチオン性界面活性剤を用いて層状珪酸塩の層間をカチオン交換して、層状珪酸塩の層間を予め疎水化させる方法である。層状珪酸塩の層間が予め疎水化されることによって、層状珪酸塩と硬化性樹脂との親和性が高まるため、層状珪酸塩をより均一かつ微細な状態で分散させることができる。
【0075】
このようなカチオン性界面活性剤としては特に限定されず、例えば、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等が挙げられる。
4級アンモニウム塩としては、層状珪酸塩の結晶層間を充分に疎水化できることから、炭素数6以上のアルキル鎖を有する4級アンモニウム塩、芳香族4級アンモニウム塩、複素環4級アンモニウム塩が好適に用いられる。
【0076】
4級アンモニウム塩としては、例えば、トリメチルアルキルアンモニウム塩、トリエチルアルキルアンモニウム塩、トリブチルアルキルアンモニウム塩、ジメチルジアルキルアンモニウム塩、ジブチルジアルキルアンモニウム塩、メチルベンジルジアルキルアンモニウム塩、ジベンジルジアルキルアンモニウム塩、トリアルキルメチルアンモニウム塩、トリアルキルエチルアンモニウム塩、トリアルキルブチルアンモニウム塩、芳香環を有する4級アンモニウム塩、トリメチルフェニルアンモニウム等の芳香族アミン由来の4級アンモニウム塩、ポリエチレングリコール鎖を2つ有するジアルキル4級アンモニウム塩、ポリプロピレングリコール鎖を2つ有するジアルキル4級アンモニウム塩、ポリエチレングリコール鎖を1つ有するトリアルキル4級アンモニウム塩、ポリプロピレングリコール鎖を1つ有するトリアルキル4級アンモニウム塩等が挙げられる。また、好適に用いられる4級アンモニウム塩としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジ−2−ヒドロキシエチルメチル牛脂アンモニウム塩、ジ硬化牛脂ジメチルアンモニウム塩、ジステアリルジベンジルアンモニウム塩、N−ポリオキシエチレン−N−ラウリル−N,N−ジメチルアンモニウム塩等が挙げられる。これらの4級アンモニウム塩は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0077】
また、4級ホスホニウム塩としては、例えば、ドデシルトリフェニルホスホニウム塩、メチルトリフェニルホスホニウム塩、ラウリルトリメチルホスホニウム塩、ステアリルトリメチルホスホニウム塩、メチルトリオクチルホスホニウム塩、ジステアリルジメチルホスホニウム塩、ジステアリルジベンジルホスホニウム塩等が挙げられる。これらの4級ホスホニウム塩は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0078】
化学修飾方法(2)は、化学修飾方法(1)によって化学修飾された有機化層状珪酸塩の結晶表面に存在する水酸基に対して、この水酸基と化学結合し得る官能基又はこの水酸基との化学的親和性の大きい官能基を分子末端に1個以上有する化合物を用いて化学修飾する方法である。
【0079】
水酸基と化学結合し得る官能基又は水酸基との化学的親和性の大きい官能基としては、例えば、アルコキシ基、グリシジル基、カルボキシル基(二塩基性酸無水物も包含する)、水酸基、イソシアネート基、アルデヒド基等が挙げられる。
また、これらの官能基を有する化合物としては、例えば、これらの官能基を有する、シラン化合物、チタネート化合物、グリシジル化合物、カルボン酸類、アルコール類等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
これらの官能基を有するシラン化合物としては特に限定されず、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらのシラン化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0080】
化学修飾方法(3)は、化学修飾方法(1)によって化学修飾された有機化層状珪酸塩の結晶表面に存在する水酸基に対して、この水酸基と化学結合し得る官能基又はこの水酸基と化学的親和性の大きい官能基と、反応性官能基を分子末端に1個以上有する化合物とを用いて化学修飾する方法である。
【0081】
化学修飾方法(4)は、化学修飾方法(1)によって化学修飾された有機化層状珪酸塩の結晶表面に対して、アニオン性界面活性を有する化合物を用いて化学修飾する方法である。
このようなアニオン性界面活性を有する化合物としては、イオン相互作用により層状珪酸塩を化学修飾できるものであれば特に限定されず、例えば、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、不飽和アルコール硫酸エステル塩等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0082】
化学修飾方法(5)は、アニオン性界面活性を有する化合物のうち、分子鎖中のアニオン部位以外に反応性官能基を1個以上有する化合物を用いて化学修飾する方法である。
【0083】
化学修飾方法(6)は、化学修飾方法(1)〜(5)のいずれか1つの方法で化学修飾された有機化層状珪酸塩に対して、層状珪酸塩と反応可能な官能基を有する樹脂を添加し、硬化性樹脂として用いる方法である。
【0084】
層状珪酸塩を分散させる方法のひとつである発泡剤を用いる方法は、硬化性樹脂と層状珪酸塩との混合状態で発泡剤を用いて硬化性樹脂を発泡させ、その発泡エネルギーを層状珪酸塩の分散エネルギーに転換する方法である。このような発泡剤としては、例えば、気体状発泡剤、易揮発性液状発泡剤、加熱分解型固体状発泡剤等が挙げられる。これらの発泡剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
発泡剤を用いる方法としては、例えば、硬化性樹脂と層状珪酸塩との混合状態に対して気体状発泡剤を高圧下で含浸させた後、この気体状発泡剤を発泡させる方法、層状珪酸塩の層間に予め加熱分解型発泡剤を含有させ、その加熱分解型発泡剤を加熱により分解させて発泡させる方法等が挙げられる。
【0085】
分散されたときの層状珪酸塩の結晶形状としては特に限定されないが、表面部分の一辺の平均長さは0.01〜3μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがより好ましい。
【0086】
また、層状珪酸塩の平均厚さは0.001〜1μmであることが好ましく、0.01〜0.5μmであることがより好ましい。
ここで、層状珪酸塩の結晶形状は、樹脂組成物の断面を電子顕微鏡等で観察することによって測定される。
【0087】
樹脂組成物に分散された層状珪酸塩は、その積層数が5層以下であることが好ましく、3層以下であることがより好ましく、1層であることが更に好ましい。層状珪酸塩が樹脂組成物に5層以下で分散されることによって硬化性樹脂と層状珪酸塩との界面面積をより大きくすることができる。
なお、5層以下の積層体とは、具体的には、層状珪酸塩の薄片状結晶間の相互作用が弱められたために薄片状結晶が5層以下となった状態であることを意味する。
【0088】
また、5層以下の層状珪酸塩として樹脂組成物中に分散された割合は、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。
樹脂組成物中の層状珪酸塩の割合が10%未満だと、樹脂組成物の強度が低下してしまう場合がある。
ここで、5層以下の積層体として分散している層状珪酸塩の割合Zは、本発明の樹脂組成物を透過型電子顕微鏡により5万〜10万倍に拡大して観察されたもので、一定面積中において観察できる層状珪酸塩の積層体の全層数X、及び5層以下の積層体として分散している積層体の層数Yを計測することにより、下記式(2)から算出することができる。
【0089】
Z(%)=(Y/X)×100 (2)
【0090】
樹脂組成物中に分散された層状珪酸塩は、広角X線回折測定法により測定される(001)面の平均層間距離が3nm以上である。平均層間距離は、3〜5nmであることがより好ましい。なお、層状珪酸塩の平均層間距離とは、層状珪酸塩の薄片状結晶を層とみなした場合における層間の距離の平均を意味し、X線回折ピーク及び透過型電子顕微鏡撮影等の広角X線回折測定法により算出される距離である。
平均層間距離が5nmを超えると、層状珪酸塩の薄片状結晶が層ごとに分離されて層状珪酸塩の相互作用が無視できるほど弱まってしまうため、低い線膨張率を有する樹脂組成物を得ることが困難になってしまう。
【0091】
また、層状珪酸塩の平均層間距離が3〜5nmであり、かつ、層状珪酸塩の一部又は全部が5層以下の積層体として分散することにより、樹脂組成物と層状珪酸塩との界面面積を充分に大きくすることができる。そのため、得られる樹脂組成物は高い溶融粘度を有するので、熱プレス、シボ加工、エンボス加工等の熱成形性が向上するとともに、熱成形された形状の保持性を向上することができる。また、常温から樹脂組成物のTg又は融点以上までの広い温度領域においても低膨張率の樹脂組成物を得ることができる。
【0092】
また、燃焼時には樹脂組成物に含有される層状珪酸塩が燒結して難燃皮膜を形成しやすくなる。この難燃被膜は燃焼時の早い段階で形成され、外界からの酸素の供給を遮断するとともに、燃焼によって発生する可燃性ガスも遮断することができるため、本発明の樹脂組成物に高い難燃性を付与することができる。
【0093】
更に、本発明の樹脂組成物では、微細な状態で層状珪酸塩が分散されていることによって、樹脂組成物からなる基板等に対して穿孔加工を施したとき、その穿孔の内壁が高い平滑度を有することができる。
具体例としては、樹脂組成物からなる基板に対して炭酸ガスレーザ等のレーザによる穿孔加工を施す場合、レーザによって樹脂成分と層状珪酸塩成分とが同時に分解蒸発し、穿孔の内壁に部分的に残存する層状珪酸塩の残渣も数μm以下の小さなもののみとなるため、内壁が平滑な状態で穿孔加工を施すことができる。これにより、穿孔加工により発生する残渣によってメッキ不良等が発生するのを防止することができる。
【0094】
また、本発明の樹脂組成物に含有される無機化合物は、ウィスカ及びシリカの少なくとも1種と層状珪酸塩とからなることが好ましい。
無機化合物がウィスカ及びシリカの少なくとも1種と層状珪酸塩とからなることによって、低い平均線膨張率を有する樹脂組成物を得ることができる。特に、無機化合物が少なくともシリカと層状珪酸塩とからなる場合、樹脂組成物の誘電正接を低下させることができる。
【0095】
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも50℃低い温度から、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも10℃低い温度までの平均線膨張率(α1)が7.0×10−5(℃−1)以下であることを必要とし、6.0×10−5(℃−1)以下であることが好ましく、5.0×10−5(℃−1)以下であることがより好ましい。
α1が7.0×10−5(℃−1)以下であることによって、樹脂組成物を熱処理したときに生じる寸法変化を小さくすることができる。また、本発明の樹脂組成物に銅箔等を張り合わせて用いるとき、ハンダリフロー等の高温環境下でも膨張率の差から生じる反りや剥がれが生じ難くすることができ、高温環境下でも高い接続信頼性を得ることができる。
【0096】
なお、本発明の樹脂組成物の硬化物の平均線膨張率は、JIS K7197に準じた公知の方法によって測定することができ、例えば、TMA(Thermomechanical Analysys)装置(セイコー電子社製、TMA/SS120C)を用いて、約3mm×25mmの試験片を昇温速度5℃/分で昇温することにより求めることができる。
【0097】
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも10℃高い温度から、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも50℃高い温度までの平均線膨張率(α2)が1.5×10−4(℃−1)以下であることを必要とし、1.0×10−4(℃−1)以下であることが好ましく、7.0×10−5(℃−1)以下であることがより好ましい。
α2が1.5×10−4(℃−1)以下であることによって、樹脂組成物の硬化物をガラス転移点以上に熱処理したときに生じる寸法変化を小さくすることができる。また、本発明の樹脂組成物に銅箔等を張り合わせて用いるとき、ハンダリフロー等の高温環境下でも膨張率の差から生じる反りや剥がれが生じ難くすることができ、高温環境下でも高い接続信頼性を得ることができる。
【0098】
また、本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも10℃高い温度から、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも50℃高い温度までの平均線膨張率(α2)を、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも50℃低い温度から、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも10℃低い温度までの平均線膨張率(α1)で除して求めた平均線膨張率比(α2/α1)が7.5以下である。平均線膨張率比(α 2 /α 1 )は、5.0以下であることがより好ましく、3.0以下であることがさらに好ましい。
α2/α1が7.5以下であることによって、樹脂組成物の硬化物をガラス転移点以下の温度からガラス転移点以上に熱処理したときに生じる寸法変化を小さくすることができる。また、ハンダリフロー等の高温環境下でも膨張率の差から生じる反りや剥がれが生じ難くすることができ、高温環境下でも高い接続信頼性を得ることができる。
【0099】
本発明の樹脂組成物は、JIS K6251に基づいて、ダンベル2状号形にて型抜きを行った樹脂組成物の硬化物の破断伸び率を、引張試験機を用いて、引張速度10mm/分で測定したときに、破断伸び率が2%以上となっており、3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましい。
破断伸び率が2%以上であることによって、外部からの力によって変形したり加熱と冷却を繰り返したときに生じる応力を緩和することができるので、樹脂組成物の劣化やひび割れ等の劣化を防ぐことができる。
【0100】
なお、破断伸び率はJIS K6251に準じた公知の方法によって測定することができ、例えば、万能引張試験機(テンシロンUTA−500:ORIENTEC社製)を用いて、引張速度10mm/minによって測定することができる。
【0101】
また、本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、その性能を阻害しない範囲において、添加剤として、難燃剤、造核剤、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、難燃助剤、帯電防止剤、防曇剤、充填剤、軟化剤、可塑剤、着色剤等が添加されてもよい。これらはそれぞれ単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0102】
添加剤のひとつである難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、リン系化合物、窒素系化合物、フッ素樹脂、シリコーンオイル、層状複水和物等が挙げられる。これらの難燃剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0103】
添加剤のひとつである難燃剤としては、ハロゲン系組成物を含有しない難燃剤であることが好ましい。なお、難燃剤の製造工程上の都合等により微量のハロゲンが混入することは構わない。
【0104】
金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドーソナイト、アルミン酸化カルシウム、2水和石こう、水酸化カルシウム等が挙げられる。
リン系化合物としては、例えば、赤リン、ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
窒素系化合物としては、例えば、メラミン、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレート、リン酸メラミン及びこれらに表面処理が施したメラミン誘導体等が挙げられる。
層状複水和物としては、例えば、ハイドロタルサイト等が挙げられる。
【0105】
これらの難燃剤のうち、金属水酸化物、メラミン誘導体が好適に用いられる。また、金属水酸化物のうち、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムがより好適に用いられ、これらは各種の表面処理剤により表面処理が施されたものでもよい。
このような表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、PVA系表面処理剤、エポキシ系表面処理剤等が挙げられる。
【0106】
難燃剤の含有量は、エポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜100重量部であることが好ましく、5〜80重量部であることがより好ましく、10〜70重量部であることが更に好ましい。難燃剤の含有量がこの範囲内にあると、本発明の樹脂組成物は、力学的物性、電気物性、工程適性等に悪影響を与えずに充分な難燃性を発現することができる。
【0107】
本発明の樹脂組成物を製造する方法としては特に限定されず、例えば、直接混練法、溶媒除去法、重合による方法、マスターバッチ法が挙げられる。
【0108】
直接混練法とは、例えば、硬化性樹脂と無機化合物の各所定量と、必要に応じて添加される添加剤等の各所定量とを直接配合して混練する方法である。
【0109】
溶媒除去法とは、例えば、硬化性樹脂と無機化合物と、必要に応じて添加される添加剤等の各所定量とをジメチルホルムアミド等の溶媒中に添加して混合した後、溶媒を除去する方法である。
【0110】
重合による方法とは、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂等のモノマーと無機化合物と必要に応じて添加される添加剤等の各所定量を混練し、モノマーを重合させることによって熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂の重合と樹脂組成物の製造を同時に一括して行う方法である。なお、モノマーを重合させる際、重合開始剤として遷移金属錯体等の重合触媒を予め含有させておくことが好ましい。
【0111】
マスターバッチ法とは、例えば、主原料となる硬化性樹脂に対して所定量以上の無機化合物を添加して混練して予めマスターバッチを作製しておき、このマスターバッチに対して主原料となる硬化性樹脂の所定量の残部と必要に応じて添加剤等の各所定量とを添加した後、混練又は溶媒中で混合する方法である。
また、主原料となる硬化性樹脂以外の樹脂に対して所定量以上の無機化合物を配合して混練して予めマスターバッチを作製しておき、このマスターバッチに対して主原料となる硬化性樹脂の所定量と必要に応じて添加剤等の各所定量を添加した後、混練又は溶媒中で混合する方法もマスターバッチ法の1つである。
【0112】
なお、マスターバッチ法において、マスターバッチの作製に用いられる樹脂とマスターバッチに添加される樹脂とはそれぞれ異なる組成であってもよく、同一の組成であってもよい。
【0113】
マスターバッチ法によって本発明の樹脂組成物を製造する場合、マスターバッチの作製に用いられる樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエステル樹脂等を含有しているものが好ましい。これらの樹脂は単独で使用されてもよく、組成、成分、分子量等の異なる樹脂が2種類以上併用されてもよい。これらの樹脂を用いることによって、無機化合物を容易に分散することができる。
また、マスターバッチに添加される樹脂としては、例えば、高温物性に優れた熱硬化性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等を含有しているものが好ましい。これらの樹脂は単独で使用されてもよく、組成、成分、分子量等の異なる樹脂が2種類以上併用されてもよい。これらの樹脂を用いることによって、高温時における線膨張率が低い樹脂組成物を得ることができる。
【0114】
マスターバッチを作製するときに用いられる無機化合物の添加量は、樹脂100重量部に対して1〜500重量部であることが好ましく、5〜300重量部であることがより好ましい。
無機化合物の添加量が1重量部未満であると、任意の濃度に希釈可能なマスターバッチとしての利便性が薄れてしまう。また、無機化合物の添加量が500重量部を超えると、無機化合物の分散性が低下してしまう。
【0115】
本発明の樹脂組成物を製造する際に樹脂等を混練又は溶媒中で混合する方法としては公知の方法を用いることができ、例えば、押出機、2本ロール、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練又は溶媒中で混合する方法等が挙げられる。
【0116】
本発明の樹脂組成物の用途としては特に限定されないが、適当な溶媒に溶解したり、フィルム状に成形したりして加工することにより、例えば、多層基板のコア層やビルドアップ層等を形成する基板用材料、樹脂シート、積層板、樹脂付き銅箔、銅張積層板、TAB用フィルム、プリント基板、プリプレグ、ワニス、光導波路材料等に好適に用いられる。本発明の配線基板は、上記樹脂組成物を用いてなる配線基板である。
【0117】
本発明の樹脂組成物を成形する方法としては公知の方法を用いることができ、例えば、押出成形法、キャスティング成形法、ディッピング成形法等が挙げられる。
【0118】
押出成形法とは、押出し機によって溶融混練された樹脂組成物を押出し、Tダイやサーキュラーダイ等を用いてフィルム状に成形する方法である。
【0119】
キャスティング成形法とは、樹脂組成物を有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散させて基板の上に塗布した後、溶媒を蒸発させることによってフィルムを成形する方法である。
【0120】
ディッピング成形法とは、樹脂組成物を有機溶剤などの溶媒に溶解又は分散させて得られた溶液中に、ガラス等の無機材料や有機高分子からなる基材を浸漬させた後、基材を引き上げて基材表面に付着した溶媒を蒸発させることによってフィルムを成形する方法である。
なお、ディッピング成形法に用いられる基材としては特に限定されず、例えば、ガラスクロス、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維等が挙げられる。
【0121】
これらの成形法のうち、配線基板を製造するには押出成形法やキャスティング成形法が好適に用いられる。押出成形法やキャスティング成形法を用いて成形することによって、より薄い配線基板を製造することができる。
【0122】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0123】
(実施例1)
以下の方法によって板状成形体を作製した。
まず、以下の化合物を、溶媒であるジメチルホルムアミド(和光純薬社製、特級)480重量部に添加して溶解させ、撹拌機を用いて1時間均一に撹拌した後、脱泡することによって樹脂組成物の溶液を得た。
・硬化性樹脂
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 64.4重量部
・樹脂硬化剤
フェノールノボラック型硬化剤 35.6重量部
2−エチル−4−メチルイミダゾール 1.1重量部
・無機化合物
トリオクチルメチルアンモニウム塩で有機化処理が施された合成ヘクトライト
(コープケミカル社製「ルーセンタイトSTN」)30重量部、
・軟質樹脂
ポリビニルアセタール樹脂 6重量部
(積水化学社製「BX−5Z」)
【0124】
得られた樹脂組成物の溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)のシート上に塗布後、樹脂組成物の溶液を乾燥することによって溶媒の除去を行った。その後、得られた樹脂組成物のシートを110℃で3時間加熱し、更に170℃で30分間加熱して熱硬化させることによって、100μm及び2mmの厚みを有する板状成形体を作製した。
【0125】
(参考例1)
以下の方法によって板状成形体を作製した。
まず、以下の化合物を、溶媒であるジメチルホルムアミド480重量部に添加して溶解させ、撹拌機を用いて1時間均一に撹拌した後、脱泡することによって樹脂組成物の溶液を得た。
・硬化性樹脂
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 64.4重量部
・樹脂硬化剤
フェノールノボラック型硬化剤 35.6重量部
2−エチル−4−メチルイミダゾール 1.1重量部
・無機化合物
ジ−2−ヒドロキシエチルメチル牛脂アンモニウム塩で有機化処理が施されたモンモリロナイト(サザンクレイプロダクツ社製「クロイサイト30B」)
20重量部
シリカ 90重量部
・ゴム状樹脂
ポリブタジエン変性エポキシ樹脂 10重量部
【0126】
得られた樹脂組成物の溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)のシート上に塗布後、樹脂組成物の溶液を乾燥することによって溶媒の除去を行った。その後、得られた樹脂組成物のシートを110℃で3時間加熱し、更に170℃で30分間加熱して熱硬化させることによって、100μm及び2mmの厚みを有する板状成形体を作製した。
【0127】
(比較例1)
実施例1で用いた無機化合物を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして板状成形体を作製した。
【0128】
(比較例2)
参考例1で用いたゴム状樹脂を用いなかったこと以外は参考例1と同様にして板状成形体を作製した。
【0129】
上述の実施例及び比較例で得られた100μm及び2mmの板状成形体をそれぞれ3mm×25mmに裁断し、これを試験片として以下の方法に従って試験片の測定又は評価を行った。
【0130】
(熱膨張係数の測定)
厚さ2mmの試験片に対して、TMA(thermomechanical Analysys)装置(セイコー電子社製、TMA/SS120C)を用いて、昇温速度5℃/分で昇温し、平均線膨張率の測定を行い、以下の項目について評価を行った。
・樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも10℃〜50℃低い温度での平均線膨張率(α1)
・樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも10℃〜50℃高い温度での平均線膨張率(α2)2
・樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも10℃〜50℃高い温度での平均線膨張率(α2)を、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも50℃〜10℃低い温度での平均線膨張率(α1)で除して求めた平均線膨張率比(α2/α1)。
【0131】
(破断伸び率の測定)
JIS K6251に基づいて、ダンベル2状号形にて型抜きを行った試験片を、万能引張試験機(テンシロンUTA−500:ORIENTEC社製)を用いて、引張速度10mm/minによって破断伸び率を測定した。
【0132】
(層状珪酸塩の平均層間距離の測定)
X線回折測定装置を用いて、厚さ2mmの試験片中に含有する層状珪酸塩の回折から得られる回折ピーク(2θ)に基づいて、層状珪酸塩の(001)面の間隔dを測定した。なお、間隔dは下記式(3)のブラックの回折式により求められ、得られた間隔dを層状珪酸塩の平均層間距離(nm)とした。
λ=2dsinθ (3)
(上記式(3)中、λは0.154であり、θは回折角を表す。)
【0133】
(5層以下に分散している層状珪酸塩の割合の測定)
厚さ100μmの試験片を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて10万倍で観察し、5層以下に分散している層状珪酸塩の割合(Z:単位%)を測定した。なお、樹脂シート中で5層以下に分散している層状珪酸塩の割合は、一定面積中で観察される層状珪酸塩の積層体の全層数X、及び5層以下の積層体として分散している積層体の層数Yを計測することにより、下記式(4)から算出することができる。
【0134】
Z(%)=(Y/X)×100 式(4)
【0135】
表1にそれぞれの測定の結果を示す。
【0136】
【表1】
【0137】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、ガラス転移温度を基準として50℃から10℃低い温度の環境下でも低い熱膨張率を発揮するとともに、高い破断伸び率を発揮して高い接続信頼性を得ることができるので、ハンダリフロー等の高温下でも高い接続信頼性を得ることができる。
また、本発明の樹脂組成物は、ガラス転移温度を基準として10℃から50℃高い温度の環境下でも低い熱膨張率を発揮するとともに、高い破断伸び率を発揮して高い接続信頼性を得ることができるので、ハンダリフロー等の高温下でも高い接続信頼性を得ることができる。
本発明の配線基板は、本発明の樹脂組成物から構成され、ガラス転移温度付近又はそれ以上の高温の環境下でも低い熱膨張率を発揮するとともに、高い破断伸び率を発揮して高い接続信頼性を得ることができるので、ハンダリフロー等の高温下でも高い接続信頼性を得ることができる。
Claims (4)
- エポキシ樹脂100重量部、ポリビニルアセタール樹脂2〜50重量部、及び層状珪酸塩0.1〜150重量部からなる樹脂組成物を用いてなる配線基板であって、
前記層状珪酸塩は、広角X線回折測定法により測定された(001)面の平均層間距離が3nm以上であり、かつ一部又は全部の積層体が5層以下であるように樹脂組成物の硬化物中に分散しており、
樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも50℃低い温度から、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも10℃低い温度までの平均線膨張率(α1)が7.0×10−5(℃−1)以下であり、
樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも10℃高い温度から、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも50℃高い温度までの平均線膨張率(α2)が1.5×10−4(℃−1)以下であり、
樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも10℃高い温度から、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも50℃高い温度までの平均線膨張率(α 2 )を、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも50℃低い温度から、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度よりも10℃低い温度までの平均線膨張率(α 1 )で除して求めた平均線膨張率比(α 2 /α 1 )が7.5以下であり、
JIS K6251に基づいて、ダンベル2状号形にて型抜きを行った樹脂組成物の硬化物の破断伸び率を、引張試験機を用いて、引張速度10mm/分で測定したときに、前記破断伸び率が2%以上であることを特徴とする配線基板。 - 前記樹脂組成物が、ウィスカ及びシリカの少なくとも1種をさらに含み、前記エポキシ樹脂100重量部に対し、ウィスカ及びシリカの少なくとも1種と前記層状珪酸塩との合計が1〜150重量部であることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
- 前記層状珪酸塩は、モンモリロナイト、ヘクトライト、膨潤性マイカ、及びバーミキュライトからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の配線基板。
- 前記層状珪酸塩は、炭素数6以上のアルキルアンモニウムイオン、芳香族4級アンモニウムイオン及び複素環4級アンモニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の配線基板。
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