JP4184697B2 - スクリーニング方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒト脾臓由来の新規Gタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩とリガンドであるコレステロール代謝関連物質とを用いるスクリーニング方法、マウス、ラット、ウシまたはウサギ由来の新規Gタンパク質共役型レセプタータンパク質およびそのDNA、オーファンレセプターのリガンド決定方法等に関する。
【0002】
【従来の技術】
多くのホルモンや神経伝達物質などの生理活性物質は、細胞膜に存在する特異的なレセプタータンパク質を通じて生体の機能を調節している。これらのレセプタータンパク質のうち多くは共役しているguanine nucleotide-binding protein(以下、Gタンパク質と略称する場合がある)の活性化を通じて細胞内のシグナル伝達を行ない、また、7個の膜貫通領域を有する共通した構造をもっていることから、Gタンパク質共役型レセプタータンパク質あるいは7回膜貫通型レセプタータンパク質(7TMR)と総称される。
Gタンパク質共役型レセプタータンパク質は生体の細胞や臓器の各機能細胞表面に存在し、それら細胞や臓器の機能を調節する分子、例えば、ホルモン、神経伝達物質および生理活性物質等の標的として生理的に重要な役割を担っている。レセプターは生理活性物質との結合を介してシグナルを細胞内に伝達し、このシグナルにより細胞の賦活や抑制といった種々の反応が惹起される。
各種生体の細胞や臓器の内の複雑な機能を調節する物質と、その特異的レセプタータンパク質、特にはGタンパク質共役型レセプタータンパク質との関係を明らかにすることは、各種生体の細胞や臓器の機能を解明し、それら機能と密接に関連した医薬品開発に非常に重要な手段を提供することとなる。
【0003】
例えば、生体の種々の器官では、多くのホルモン、ホルモン様物質、神経伝達物質あるいは生理活性物質による調節のもとで生理的な機能の調節が行なわれている。特に、生理活性物質は生体内の様々な部位に存在し、それぞれに対応するレセプタータンパク質を通してその生理機能の調節を行っている。生体内には未知のホルモンや神経伝達物質その他の生理活性物質も多く、それらのレセプタータンパク質の構造に関しても、これまで報告されていないものが多い。さらに、既知のレセプタータンパク質においてもサブタイプが存在するかどうかについても分かっていないものが多い。
生体における複雑な機能を調節する物質と、その特異的レセプタータンパク質との関係を明らかにすることは、医薬品開発に非常に重要な手段である。また、レセプタータンパク質に対するアゴニスト、アンタゴニストを効率よくスクリーニングし、医薬品を開発するためには、生体内で発現しているレセプタータンパク質の遺伝子の機能を解明し、それらを適当な発現系で発現させることが必要であった。
近年、生体内で発現している遺伝子を解析する手段として、cDNAの配列をランダムに解析する研究が活発に行なわれており、このようにして得られたcDNAの断片配列がExpressed Sequence Tag(EST)としてデータベースに登録され、公開されている。しかし、多くのESTは配列情報のみであり、その機能を推定することは困難である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来、Gタンパク質共役型レセプタータンパク質と生理活性物質(すなわち、リガンド)との結合を阻害する物質や、結合して生理活性物質(すなわち、リガンド)と同様なシグナル伝達を引き起こす物質は、これらレセプターの特異的なアンタゴニストまたはアゴニストとして、生体機能を調節する医薬品として活用されてきた。従って、このように生体内での生理発現において重要であるばかりでなく、医薬品開発の標的ともなりうるGタンパク質共役型レセプタータンパク質を新規に見出し、その遺伝子(例えばcDNA)をクローニングすることは、新規Gタンパク質共役型レセプタータンパク質の特異的リガンドや、アゴニスト、アンタゴニストを見出す際に、非常に重要な手段となる。
しかし、Gタンパク質共役型レセプターはその全てが見出されているわけではなく、現時点でもなお、未知のGタンパク質共役型レセプター、また対応するリガンドが同定されていない、いわゆるオーファンレセプターが多数存在しており、新たなGタンパク質共役型レセプターの探索および機能解明が切望されている。
Gタンパク質共役型レセプターは、そのシグナル伝達作用を指標とする、新たな生理活性物質(すなわち、リガンド)の探索、また、該レセプターに対するアゴニストまたはアンタゴニストの探索に有用である。一方、生理的なリガンドが見出されなくても、該レセプターの不活化実験(ノックアウト動物)から該レセプターの生理作用を解析することにより、該レセプターに対するアゴニストまたはアンタゴニストを作製することも可能である。これら該レセプターに対するリガンド、アゴニストまたはアンタゴニストなどは、Gタンパク質共役型レセプターの機能不全に関連する疾患の予防および/または治療薬や診断薬として活用することが期待できる。
さらにまた、Gタンパク質共役型レセプターの遺伝子変異に基づく、生体での該レセプターの機能の低下または昂進が、何らかの疾患の原因となっている場合も多い。この場合には、該レセプターに対するアンタゴニストやアゴニストの投与だけでなく、該レセプター遺伝子の生体内(またはある特定の臓器)への導入や、該レセプター遺伝子に対するアンチセンス核酸の導入による、遺伝子治療に応用することもできる。この場合には該レセプターの塩基配列は遺伝子上の欠失や変異の有無を調べるために必要不可欠な情報であり、該レセプターの遺伝子は、該レセプターの機能不全に関与する疾患の予防および/または治療薬や診断薬に応用することもできる。
一方、従来のリガンド等の探索・決定方法では、例えば真核生物由来の細胞を用いて、レセプターに対する結合分子をスクリーニングする場合、従来は該レセプターを安定的に発現する、いわゆる安定細胞株(stable cell line)を樹立しなければならず、この細胞株の樹立には特別な細胞を必要とした。またスクリーニングには複数の測定の組合せが必要であり、試験化合物が複数存在すると、時間がかかるためにその実施が困難であった。つまり、従来のリガンド等の探索・決定方法には、(1)使用可能な細胞系が限定される、(2)該細胞系の樹立に時間がかかる、(3)複数の測定法を組み合わせるために、検体数が多くなるとその実施が困難になる等の問題があった。これらの問題を解決するための、各種の細胞系が使用でき、かつ短時間で測定等を実施できる方法の開発が望まれている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特別な細胞株を必要としないスクリーニング方法を見出した。さらに、ヒト脾臓由来のGタンパク質共役型レセプタータンパク質のリガンドがコレステロール代謝関連物質であることを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいて、さらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
[1](1)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質または該レセプタータンパク質の部分ペプチドまたはその塩および(2)コレステロール代謝関連物質を用いることを特徴とする該レセプタータンパク質またはその塩とコレステロール代謝関連物質との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
[2]配列番号:5で表されるアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質または該レセプタータンパク質の部分ペプチドまたはその塩を用いる上記[1]記載のスクリーニング方法、
[3]配列番号:7で表されるアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質または該レセプタータンパク質の部分ペプチドまたはその塩を用いる上記[1]記載のスクリーニング方法、
[4]配列番号:14で表されるアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質または該レセプタータンパク質の部分ペプチドまたはその塩を用いる上記[1]記載のスクリーニング方法、
[5]配列番号:16で表されるアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質または該レセプタータンパク質の部分ペプチドまたはその塩を用いる上記[1]記載のスクリーニング方法、
[6](1)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質または該レセプタータンパク質の部分ペプチドまたはその塩および(2)コレステロール代謝関連物質を含有することを特徴とする該レセプタータンパク質またはその塩とコレステロール代謝関連物質との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング用キット、
[7]上記[1]記載のスクリーニング方法または上記[6]記載のスクリーニング用キットを用いて得られうるコレステロール代謝関連物質と配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩、
[8]上記[7]記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬、
[9]上記[1]記載のスクリーニング方法または上記[6]記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩に対するアゴニストを含有してなる炎症性疾患または移植医療後の過剰免疫反応の予防および/または治療剤、
[10]上記[1]記載のスクリーニング方法または上記[6]記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩に対するアンタゴニストを含有してなる免疫不全または感染症の予防および/または治療剤、
[11]哺乳動物に対して、上記[1]記載のスクリーニング方法または上記[6]記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩に対するアゴニストの有効量を投与することを特徴とする炎症性疾患または移植医療後の過剰免疫反応の予防および/または治療方法、
[12]哺乳動物に対して、上記[1]記載のスクリーニング方法または請求項6記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩に対するアンタゴニストの有効量を投与することを特徴とする免疫不全または感染症の予防および/または治療方法,
[13]炎症性疾患または移植医療後の過剰免疫反応の予防および/または治療剤を製造するための、上記[1]記載のスクリーニング方法または上記[6]記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩に対するアゴニストの使用、
[14]免疫不全または感染症の予防および/または治療剤を製造するための、上記[1]記載のスクリーニング方法または上記[6]記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩に対するアンタゴニストの使用、
[15]配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩の発現量を増加する化合物またはその塩を含有してなる炎症性疾患または移植医療後の過剰免疫反応の予防および/または治療剤、
[16]配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩の発現量を減少させる化合物またはその塩を含有してなる免疫不全または感染症の予防および/または治療剤、
[17]哺乳動物に対して、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩の発現量を増加する化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする炎症性疾患または移植医療後の過剰免疫反応の予防および/または治療方法、
[18]哺乳動物に対して、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩の発現量を減少させる化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする免疫不全または感染症の予防および/または治療方法、
[19]炎症性疾患または移植医療後の過剰免疫反応の予防および/または治療剤を製造するための配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩の発現量を増加する化合物またはその塩の使用、
[20]免疫不全または感染症の予防および/または治療剤を製造するための配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩の発現量を減少させる化合物またはその塩の使用、
[21]配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩を含有してなる炎症性疾患または移植医療後の過剰免疫反応の予防および/または治療剤、
[22]配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを含有してなる炎症性疾患または移植医療後の過剰免疫反応の予防および/または治療剤、
[23]配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを含有してなる中枢疾患、炎症性疾患、循環器疾患、癌、呼吸器疾患、糖尿病、免疫系疾患、肝臓・胆のう疾患、消化管疾患、感染症、肥満または移植医療後の過剰免疫反応の診断薬、
[24]配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる免疫不全または感染症の予防および/または治療剤、
[25]配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる中枢疾患、炎症性疾患、循環器疾患、癌、呼吸器疾患、糖尿病、免疫系疾患、肝臓・胆のう疾患、消化管疾患、感染症、肥満または移植医療後の過剰免疫反応の診断薬、
[26]配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるアンチセンスポリヌクレオチドを含有してなる免疫不全または感染症の予防および/または治療剤、
[27]配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるアンチセンスポリヌクレオチドを含有してなる中枢疾患、炎症性疾患、循環器疾患、癌、呼吸器疾患、糖尿病、免疫系疾患、肝臓・胆のう疾患、消化管疾患、感染症、肥満または移植医療後の過剰免疫反応の診断薬、
[28]哺乳動物に対して、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩の有効量を投与することを特徴とする炎症性疾患または移植医療後の過剰免疫反応の予防および/または治療方法、
[29]哺乳動物に対して、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドの有効量を投与することを特徴とする炎症性疾患または移植医療後の過剰免疫反応の予防および/または治療方法、
[30]哺乳動物に対して、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体の有効量を投与することを特徴とする免疫不全または感染症の予防および/または治療方法、
[31]哺乳動物に対して、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるアンチセンスポリヌクレオチドの有効量を投与することを特徴とする免疫不全または感染症の予防および/または治療方法、
[32]炎症性疾患または移植医療後の過剰免疫反応の予防および/または治療剤を製造するための、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩の使用、
[33]炎症性疾患または移植医療後の過剰免疫反応の予防および/または治療剤を製造するための、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドの使用、
[34]免疫不全または感染症の予防および/または治療剤を製造するための、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体の使用、
[35]免疫不全または感染症の予防および/または治療剤を製造するための、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるアンチセンスポリヌクレオチドの使用、
[36]配列番号:5、配列番号:7、配列番号14または配列番号:16で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列(但し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を除く)を含有することを特徴とするGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩、
[37]上記[36]記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質の部分ペプチドまたはその塩、
[38]上記[36]記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質または上記[37]記載の部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
[39]DNAである上記[38]記載のポリヌクレオチド、
[40]配列番号:6、配列番号:8、配列番号:13または配列番号:15で表される塩基配列を有する上記[38]記載のポリヌクレオチド、
[41]上記[38]記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター、
[42]上記[41]記載の組換えベクターで形質転換させた形質転換体、
[43]上記[42]記載の形質転換体を培養し、上記[36]記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質を生成せしめることを特徴とする上記[36]記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩の製造法、
[44]上記[36]記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質もしくは上記[37]記載の部分ペプチドまたはその塩に対する抗体、
[45]上記[36]記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質のシグナル伝達を不活性化する中和抗体である上記[44]記載の抗体、
[46]上記[44]記載の抗体を含有してなる診断薬、
[47]中枢疾患、炎症性疾患、循環器疾患、癌、呼吸器疾患、糖尿病、免疫系疾患、肝臓・胆のう疾患、消化管疾患、感染症、肥満または移植医療後の過剰免疫反応の診断薬である上記[46]記載の診断薬、
[48]上記[44]記載の抗体を含有してなる医薬、
[49]免疫不全または感染症の予防および/または治療剤である上記[48]記載の医薬、
[50]上記[36]記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩を含有してなる医薬、
[51]炎症性疾患または移植医療後の過剰免疫反応の予防および/または治療剤である上記[50]記載の医薬、
[52]上記[38]記載のポリヌクレオチドを含有してなる医薬、
[53]炎症性疾患または移植医療後の過剰免疫反応の予防および/または治療剤である上記[52]記載の医薬、
[54]上記[38]記載のポリヌクレオチドを含有してなる診断剤、
[55]中枢疾患、炎症性疾患、循環器疾患、癌、呼吸器疾患、糖尿病、免疫系疾患、肝臓・胆のう疾患、消化管疾患、感染症、肥満または移植医療後の過剰免疫反応の診断薬である上記[54]記載の診断薬、
[56]上記[38]記載のポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるアンチセンスポリヌクレオチド、
[57]上記[56]記載のアンチセンスポリヌクレオチドを含有してなる医薬、
[58]免疫不全または感染症の予防および/または治療剤である上記[57]記載の医薬、
[59]上記[56]記載のアンチセンスポリヌクレオチドを含有してなる診断剤、
[60]中枢疾患、炎症性疾患、循環器疾患、癌、呼吸器疾患、糖尿病、免疫系疾患、肝臓・胆のう疾患、消化管疾患、感染症、肥満または移植医療後の過剰免疫反応の診断薬である上記[59]記載の診断薬、
[61]リガンドが決定されていないレセプタータンパク質を発現し、かつ、cAMPレスポンスエレメント/プロモーターの下流にレポータータンパク質をコードするDNAを連結したプラスミドを含有する動物細胞に、試験化合物を添加し、レポータータンパク質の活性を測定することを特徴とする該レセプタータンパク質に対するリガンドの決定方法、
[62](1)リガンドが決定されていないレセプタータンパク質をコードするDNAを含有するプラスミドおよび(2)cAMPレスポンスエレメント/プロモーターの下流にレポータータンパク質をコードするDNAを連結したプラスミドを含有する動物細胞を培養し、試験化合物を添加してレポータータンパク質の活性を測定することを特徴とする上記[61]記載の方法、
[63]レセプタータンパク質がGタンパク質共役型レセプタータンパク質である上記[61]または[62]記載の方法、
[64]Gタンパク質共役型レセプタータンパク質が、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:14または配列番号:16で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質である上記[63]記載の方法、
[65]プロモーターがTATA様配列である上記[61]または[62]記載の方法、
[66]レポータータンパク質がルシフェラーゼである上記[61]または[62]記載の方法、
[67]プラスミドがcAMPレスポンスエレメントの下流にTATA様プロモーターおよびレポータータンパク質をコードする遺伝子を連結したものである上記[61]または[62]記載の方法、
[68]動物細胞が、リガンドが決定されていない2種類以上のレセプタータンパク質を発現している上記[61]または[62]記載の方法、
[69]細胞が抑制性Gタンパク質αサブユニットGiをコードする遺伝子を含有するプラスミドを含む上記[61]または[62]記載の方法、
[70]さらにフォルスコリンを添加する上記[61]または[62]記載の方法、
[71]2種類以上のレセプタータンパク質が類似の特徴を有することを特徴とする上記[68]記載の方法、
[72]類似の特徴がレポータータンパク質の基礎発現量および(または)フォルスコリン添加時のレポータータンパク質の発現量である上記[68]記載の方法、
[73]予め2種類以上のレセプタータンパク質をそれぞれ単独で発現させた時のレポータータンパク質の基礎発現量および(または)フォルスコリン添加時のレポータータンパク質の発現量を測定し、該レポータータンパク質の発現量が同程度である2種類以上のレセプタータンパク質を組み合わせて発現させることを特徴とする上記[68]記載の方法等に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるGタンパク質共役型レセプタータンパク質(以下、本発明のレセプタータンパク質と略記する場合がある)は、配列番号:1、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:14または配列番号:16で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプタータンパク質である。
本発明のレセプタータンパク質は、例えば、ヒトやその他の哺乳動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)のあらゆる細胞(例えば、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)や血球系の細胞、またはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁頭核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、視床下核、大脳皮質、延髄、小脳、後頭葉、前頭葉、側頭葉、被殻、尾状核、脳染、黒質)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、末梢血球、前立腺、睾丸、精巣、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋などに由来するタンパク質であってもよく、また合成タンパク質であってもよい。
【0008】
配列番号:1、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:14または配列番号:16で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、例えば、配列番号:1、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:14または配列番号:16で表わされるアミノ酸配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、より好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、なかでも好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
本発明の配列番号:1、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:14または配列番号:16で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質としては、例えば、配列番号:1、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:14または配列番号:16で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有し、配列番号:1、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:14または配列番号:16で表わされるアミノ酸配列と実質的に同質の活性を有するタンパク質などが好ましい。
実質的に同質の活性としては、例えば、リガンド結合活性、シグナル情報伝達作用などが挙げられる。実質的に同質とは、それらの活性が性質的に同質であることを示す。したがって、リガンド結合活性やシグナル情報伝達作用などの活性が同等(例、約0.01〜100倍、好ましくは約0.5〜20倍、より好ましくは約0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度やタンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
リガンド結合活性やシグナル情報伝達作用などの活性の測定は、公知の方法に準じて行なうことができるが、例えば、後に記載するリガンドの決定方法やスクリーニング方法に従って測定することができる。
【0009】
また、本発明のレセプタータンパク質としては、▲1▼配列番号:1、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:14または配列番号:16で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、▲2▼配列番号:1、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:14または配列番号:16で表わされるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、▲3▼配列番号:1、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:14または配列番号:16で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または▲4▼それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質なども用いられる。
【0010】
本明細書におけるレセプタータンパク質は、ペプチド表記の慣例に従って、左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含有するレセプタータンパク質をはじめとする、本発明のレセプタータンパク質は、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO-)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1-6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3-8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6-12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1-2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1-2アルキル基などのC7-14アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
本発明のレセプタータンパク質がC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明のレセプタータンパク質に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明のレセプタータンパク質には、上記したタンパク質において、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2-6アルカノイル基などのC1-6アシル基など)で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば、−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2-6アルカノイル基などのC1-6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質などの複合タンパク質なども含まれる。
本発明のレセプタータンパク質の具体例としては、例えば、配列番号:1、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:14または配列番号:16で表わされるアミノ酸配列を含有するレセプタータンパク質などが用いられる。
【0011】
本発明のレセプタータンパク質の部分ペプチド(以下、部分ペプチドと略記する場合がある)としては、上記した本発明のレセプタータンパク質の部分ペプチドであれば何れのものであってもよいが、例えば、本発明のレセプタータンパク質分子のうち、細胞膜の外に露出している部位であって、実質的に同質のレセプター結合活性を有するものなどが用いられる。
具体的には、配列番号:1、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:14または配列番号:16で表わされるアミノ酸配列を有するレセプタータンパク質の部分ペプチドとしては、疎水性プロット解析において細胞外領域(親水性(Hydrophilic)部位)であると分析された部分を含むペプチドである。また、疎水性(Hydrophobic)部位を一部に含むペプチドも同様に用いることができる。個々のドメインを個別に含むペプチドも用い得るが、複数のドメインを同時に含む部分のペプチドでも良い。
本発明の部分ペプチドのアミノ酸の数は、上記した本発明のレセプタータンパク質の構成アミノ酸配列のうち少なくとも20個以上、好ましくは50個以上、より好ましくは100個以上のアミノ酸配列を有するペプチドなどが好ましい。実質的に同一のアミノ酸配列とは、これらアミノ酸配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、より好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、なかでも好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を示す。
ここで、「実質的に同質のレセプター活性」とは、上記と同意義を示す。「実質的に同質のレセプター活性」の測定は上記と同様に行なうことができる。
【0012】
また、本発明の部分ペプチドは、上記アミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が欠失し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が付加し、または、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、より好ましくは数個、さらに好ましくは1〜5個程度)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されていてもよい。
また、本発明の部分ペプチドはC末端が通常カルボキシル基(−COOH)またはカルボキシレート(−COO-)であるが、上記した本発明のタンパク質のごとく、C末端がアミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)であってもよい。本発明の部分ペプチドがC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明の部分ペプチドに含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明の部分ペプチドには、上記した本発明のレセプタータンパク質と同様に、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したGlnがピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの塩としては、酸または塩基との生理学的に許容される塩が挙げられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
【0013】
本発明のレセプタータンパク質またはその塩は、上記したヒトやその他の哺乳動物の細胞または組織から公知のレセプタータンパク質の精製方法によって製造することもできるし、後に記載する本発明のレセプタータンパク質をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。また、後に記載するタンパク質合成法またはこれに準じて製造することもできる。
ヒトやその他の哺乳動物の組織または細胞から製造する場合、ヒトやその他の哺乳動物の組織または細胞をホモジナイズした後、酸などで抽出を行ない、得られた抽出液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
【0014】
本発明のレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩またはそのアミド体の合成には、通常市販のタンパク質合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などを挙げることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするタンパク質の配列通りに、公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からタンパク質を切り出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的のタンパク質またはそのアミド体を取得する。上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、タンパク質合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt、HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するか、または、対応する酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することができる。
【0015】
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、タンパク質縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度はタンパク質結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行なうことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することができる。
【0016】
原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、ターシャリーペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが用いられる。
カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ターシャリーブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、ターシャリーブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化などによって保護することができる。
セリンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル基などの低級アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが用いられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t−ブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl2−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、ターシャリーブチルなどが用いられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが用いられる。
【0017】
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕などが用いられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドが用いられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd−黒あるいはPd−炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども用いられる。上記酸処理による脱離反応は、一般に約−20℃〜40℃の温度で行なわれるが、酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールなどのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
【0018】
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護、保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の手段から、また保護基は公知の基から、それぞれ適宜選択され、適用される。
タンパク質のアミド体を得る別の方法としては、例えば、まず、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化して保護した後、アミノ基側にペプチド(タンパク質)鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたタンパク質とC末端のカルボキシル基の保護基のみを除去したタンパク質とを製造し、この両タンパク質を上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護タンパク質を精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗タンパク質を得ることができる。この粗タンパク質は既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のタンパク質のアミド体を得ることができる。
タンパク質のエステル体を得るには、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、タンパク質のアミド体と同様にして、所望のタンパク質のエステル体を得ることができる。
【0019】
本発明のタンパク質の部分ペプチドまたはその塩は、公知のペプチドの合成法に従って、あるいは本発明のタンパク質を適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、本発明のタンパク質を構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、以下の▲1▼〜▲5▼に記載された方法が挙げられる。
▲1▼M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
▲2▼SchroederおよびLuebke、ザ ペプチド(The Peptide), Academic Press, NewYork (1965年)
▲3▼泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
▲4▼矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 タンパク質の化学IV、 205、(1977年)
▲5▼矢島治明監修、続医薬品の開発 第14巻 ペプチド合成 広川書店
また、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などを組み合わせて本発明の部分ペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られる部分ペプチドが遊離体である場合は、公知の方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法によって遊離体に変換することができる。
【0020】
本発明のレセプタータンパク質をコードするポリヌクレオチドとしては、上記した本発明のレセプタータンパク質をコードする塩基配列(DNAまたはRNA、好ましくはDNA)を含有するものであればいかなるものであってもよい。該ポリヌクレオチドとしては、本発明のレセプタータンパク質をコードするDNA、mRNA等のRNAであり、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。一本鎖の場合は、センス鎖(すなわち、コード鎖)であっても、アンチセンス鎖(すなわち、非コード鎖)であってもよい。
本発明のレセプタータンパク質をコードするポリヌクレオチドを用いて、例えば、公知の実験医学増刊「新PCRとその応用」15(7)、1997記載の方法またはそれに準じた方法により、本発明のレセプタータンパク質のmRNAを定量することができる。
【0021】
本発明のレセプタータンパク質をコードするDNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、上記した細胞または組織由来のcDNA、上記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、上記した細胞または組織より全RNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、RT−PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
具体的には、本発明のレセプタータンパク質をコードするDNAとしては、例えば、配列番号:2、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:13または配列番号:15で表わされる塩基配列を含有するDNA、または配列番号:2、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:13または配列番号:15で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、本発明のレセプタータンパク質と実質的に同質の活性(例、リガンド結合活性、シグナル情報伝達作用など)を有するレセプタータンパク質をコードするDNAであれば何れのものでもよい。
配列番号:2、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:13または配列番号:15で表わされる塩基配列とハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:2、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:13または配列番号:15で表わされる塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
【0022】
ハイブリダイゼーションは、公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
該ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。
より具体的には、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含有するレセプタータンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:2で表わされる塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
また配列番号:5で表わされるアミノ酸配列を含有するレセプタータンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:6で表わされる塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
配列番号:7で表わされるアミノ酸配列を含有するレセプタータンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:8で表わされる塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
配列番号:14で表わされるアミノ酸配列を含有するレセプタータンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:13で表わされる塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
配列番号:16で表わされるアミノ酸配列を含有するレセプタータンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:15で表わされる塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
【0023】
本発明のレセプタータンパク質をコードするDNAの塩基配列の一部、または該DNAと相補的な塩基配列の一部を含有してなるポリヌクレオチドとは、下記の本発明の部分ペプチドをコードするDNAを包含するだけではなく、RNAをも包含する意味で用いられる。
本発明に従えば、Gタンパク質共役型レセプタータンパク質遺伝子の複製または発現を阻害することのできるアンチセンス・ポリヌクレオチド(核酸)を、クローン化した、あるいは決定されたGタンパク質共役型レセプタータンパク質をコードするDNAの塩基配列情報に基づき設計し、合成しうる。そうしたポリヌクレオチド(核酸)は、Gタンパク質共役型レセプタータンパク質遺伝子のRNAとハイブリダイズすることができ、該RNAの合成または機能を阻害することができるか、あるいはGタンパク質共役型レセプタータンパク質関連RNAとの相互作用を介してGタンパク質共役型レセプタータンパク質遺伝子の発現を調節・制御することができる。Gタンパク質共役型レセプタータンパク質関連RNAの選択された配列に相補的なポリヌクレオチド、およびGタンパク質共役型レセプタータンパク質関連RNAと特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドは、生体内および生体外でGタンパク質共役型レセプタータンパク質遺伝子の発現を調節・制御するのに有用であり、また病気などの治療または診断に有用である。用語「対応する」とは、遺伝子を含めたヌクレオチド、塩基配列または核酸の特定の配列に相同性を有するあるいは相補的であることを意味する。ヌクレオチド、塩基配列または核酸とペプチド(タンパク質)との間で「対応する」とは、ヌクレオチド(核酸)の配列またはその相補体から誘導される指令にあるペプチド(タンパク質)のアミノ酸を通常指している。Gタンパク質共役型レセプタータンパク質遺伝子の5’端ヘアピンループ、5’端6ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、ポリペプチド翻訳開始コドン、タンパク質コード領域、ORF翻訳開始コドン、3’端非翻訳領域、3’'端パリンドローム領域、および3’'端ヘアピンループは好ましい対象領域として選択しうるが、Gタンパク質共役型レセプタータンパク質遺伝子内の如何なる領域も対象として選択しうる。
【0024】
目的核酸と、対象領域の少なくとも一部に相補的なポリヌクレオチドとの関係、即ち対象物とハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドとの関係は、「アンチセンス」であるということができる。アンチセンス・ポリヌクレオチドは、2−デオキシ−D−リボースを含有しているポリデオキシヌクレオチド、D−リボースを含有しているポリヌクレオチド、プリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドであるその他のタイプのポリヌクレオチド、あるいは非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販のタンパク質、核酸および合成配列特異的な核酸ポリマー)または特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙げられる。それらは、二本鎖DNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、一本鎖RNA、さらにDNA:RNAハイブリッドであることができ、さらに非修飾ポリヌクレオチド(または非修飾オリゴヌクレオチド)、さらには公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合または硫黄含有結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えばタンパク質(ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)や糖(例えば、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレート化合物(例えば、アクリジン、ソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」および「核酸」とは、プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。こうした修飾物は、メチル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオチドおよび修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば、1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されていたり、あるいはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてよい。
【0025】
本発明のアンチセンス・ポリヌクレオチド(核酸)は、RNA、DNA、あるいは修飾された核酸(RNA、DNA)である。修飾された核酸の具体例としては核酸の硫黄誘導体やチオホスフェート誘導体、そしてポリヌクレオシドアミドやオリゴヌクレオシドアミドの分解に抵抗性のものが挙げられるが、それに限定されるものではない。本発明のアンチセンス核酸は次のような方針で好ましく設計されうる。すなわち、細胞内でのアンチセンス核酸をより安定なものにする、アンチセンス核酸の細胞透過性をより高める、目標とするセンス鎖に対する親和性をより大きなものにする、そしてもし毒性があるならアンチセンス核酸の毒性をより小さなものにする。
こうした修飾は当該分野で数多く知られており、例えば J. Kawakami et al.,Pharm Tech Japan, Vol. 8, pp.247, 1992; Vol. 8, pp.395, 1992; S. T. Crooke et al. ed., Antisense Research and Applications, CRC Press, 1993 などに開示がある。
本発明のアンチセンス核酸は、変化せしめられたり、修飾された糖、塩基、結合を含有していて良く、リポゾーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療により適用されたり、付加された形態で与えられることができうる。こうして付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例えば、ホスホリピド、コレステロールなど)といった疎水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例えば、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3'端あるいは5'端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。その他の基としては、核酸の3'端あるいは5'端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNaseなどのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
アンチセンス核酸の阻害活性は、本発明の形質転換体、本発明の生体内や生体外の遺伝子発現系、あるいはGタンパク質共役型レセプタータンパク質の生体内や生体外の翻訳系を用いて調べることができる。該核酸はまた公知の各種の方法で細胞に適用できる。
【0026】
本発明の部分ペプチドをコードするDNAとしては、上記した本発明の部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、上記した細胞・組織由来のcDNA、上記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、上記した細胞・組織よりmRNA画分を調製したものを用いて直接RT−PCR法によって増幅することもできる。
【0027】
具体的には、本発明の部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、(1)配列番号:2、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:13または配列番号:15で表わされる塩基配列を有するDNAの部分塩基配列を有するDNA、または(2)配列番号:2、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:13または配列番号:15で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、本発明のレセプタータンパク質ペプチドと実質的に同質の活性(例、リガンド結合活性、シグナル情報伝達作用など)を有するレセプタータンパク質をコードするDNAの部分塩基配列を有するDNAなどが用いられる。
配列番号:2、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:13または配列番号:15で表わされる塩基配列ハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:2、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:13または配列番号:15で表わされる塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
【0028】
本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチド(以下、本発明のレセプタータンパク質と略記する場合がある)を完全にコードするDNAのクローニングの手段としては、本発明のレセプタータンパク質の部分塩基配列を有する合成DNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するか、または適当なベクターに組み込んだDNAを本発明のレセプタータンパク質の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
【0029】
DNAの塩基配列の置換は、PCRや公知のキット、例えば、MutanTM−super Express Km(宝酒造)、MutanTM−K(宝酒造)などを用いて、ODA−LA PCR法、Gapped duplex法、Kunkel法などの公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って行なうことができる。
クローン化されたレセプタータンパク質をコードするDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。
本発明のレセプタータンパク質の発現ベクターは、例えば、(イ)本発明のレセプタータンパク質をコードするDNAを含有するDNA(例えば、cDNA)から目的とするDNA断片を切り出し、(ロ)該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110、pTP5、pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19、pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV-TKプロモーターなどが挙げられる。
これらのうち、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーターなどが、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
【0030】
発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Amprと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neorと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。特に、CHO(dhfr-)細胞を用いてdhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、目的遺伝子をチミジンを含まない培地によっても選択できる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、本発明のレセプタータンパク質のN端末側に付加する。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが、宿主が酵母である場合は、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列など、宿主が動物細胞である場合には、インシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ利用できる。
このようにして構築された本発明のレセプタータンパク質をコードするDNAを含有するベクターを用いて、形質転換体を製造することができる。
【0031】
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌の具体例としては、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),60巻,160(1968)〕、JM103〔ヌクイレック・アシッズ・リサーチ,(Nucleic Acids Research),9巻,309(1981)〕、JA221〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecular Biology),120巻,517(1978)〕、HB101〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー,41巻,459(1969)〕、C600〔ジェネティックス(Genetics),39巻,440(1954)〕などが用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・ズブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔ジーン,24巻,255(1983)〕,207−21〔ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Journal of Biochemistry),95巻,87(1984)〕などが用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22、AH22R-、NA87−11A、DKD−5D、20B−12、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913、NCYC2036、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などが用いられる。
【0032】
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、ヨトウガの幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞またはEstigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合は、カイコ由来株化細胞(Bombyx mori N;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞(以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ヴィボ(In Vivo),13, 213-217,(1977))などが用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる〔前田ら、ネイチャー(Nature),315巻,592(1985)〕。
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7、Vero、チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記)、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr-)細胞と略記)、マウスL細胞,マウスAtT−20、マウスミエローマ細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞、ヒトHEK293細胞などが用いられる。
【0033】
エシェリヒア属菌を形質転換するには、例えば、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンジイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),69巻,2110(1972)やジーン(Gene),17巻,107(1982)などに記載の方法に従って行なうことができる。
バチルス属菌を形質転換するには、例えば、モレキュラー・アンド・ジェネラル・ジェネティックス(Molecular & General Genetics),168巻,111(1979)などに記載の方法に従って行なうことができる。
酵母を形質転換するには、例えば、メッソズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology),194巻,182−187(1991)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),75巻,1929(1978)などに記載の方法に従って行なうことができる。
昆虫細胞または昆虫を形質転換するには、例えば、バイオ/テクノロジー(Bio/Technology),6, 47-55(1988))などに記載の方法に従って行なうことができる。
動物細胞を形質転換するには、例えば、細胞工学別冊8新細胞工学実験プロトコール.263−267(1995)(秀潤社発行)、ヴィロロジー(Virology),52巻,456(1973)に記載の方法に従って行なうことができる。
このようにして、Gタンパク質共役型レセプタータンパク質をコードするDNAを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体が得られる。
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどが挙げられる。また、酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
【0034】
エシェリヒア属菌を培養する際の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔ミラー(Miller),ジャーナル・オブ・エクスペリメンツ・イン・モレキュラー・ジェネティックス(Journal of Experiments in Molecular Genetics),431−433,Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリルアクリル酸のような薬剤を加えることができる。宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行ない、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian, K. L. ら、「プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),77巻,4505(1980)」や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter, G. A. ら、「プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),81巻,5330(1984)」が挙げられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0035】
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace's Insect Medium(Grace, T.C.C.,ネイチャー(Nature),195,788(1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔サイエンス(Science),122巻,501(1952)〕,DMEM培地〔ヴィロロジー(Virology),8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(The Journal of the American Medical Association)199巻,519(1967)〕,199培地〔プロシージング・オブ・ザ・ソサイエティ・フォー・ザ・バイオロジカル・メディスン(Proceeding of the Society for the Biological Medicine),73巻,1(1950)〕などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
以上のようにして、形質転換体の細胞内、細胞膜または細胞外に本発明のGタンパク質共役型レセプタータンパク質を生成せしめることができる。
【0036】
上記培養物から本発明のレセプタータンパク質を分離精製するには、例えば、下記の方法により行なうことができる。
本発明のレセプタータンパク質を培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過によりレセプタータンパク質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどのタンパク質変性剤や、トリトンX−100TMなどの界面活性剤が含まれていてもよい。培養液中にレセプタータンパク質が分泌される場合には、培養終了後、公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。
このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれるレセプタータンパク質の精製は、公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
【0037】
このようにして得られるレセプタータンパク質が遊離体で得られた場合には、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合には公知の方法あるいはそれに準じる方法により、遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、組換え体が産生するレセプタータンパク質を、精製前または精製後に適当なタンパク質修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。タンパク質修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。
このようにして生成する本発明のレセプタータンパク質またはその塩の活性は、標識したリガンドとの結合実験および特異抗体を用いたエンザイムイムノアッセイなどにより測定することができる。
【0038】
以下に、本発明のスクリーニング方法について詳述する。
本発明のGタンパク質共役型レセプタータンパク質とコレステロール代謝関連物質との結合性を変化させる化合物(アゴニスト、アンタゴニストなど)のスクリーニング方法
特定のアミノ酸配列を含有する本発明のタンパク質(例えば、本発明のレセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩(以下、本発明のレセプタータンパク質等と略記する場合がある))を用いるか、または組換え型タンパク質等の発現系を構築し、該発現系を用いた結合アッセイ系を用いることによって、試験化合物(例えば、リガンドであるコレステロール代謝関連物質(例、胆汁酸(例、タウロリトコール酸、グリコリトコール酸、タウロデオキシコール酸、グリコデオキシコール酸、ノルデオキシコール酸、7−ケトリトコール酸、5β−プレグナン−3,20−オン、コール酸、リトコール酸、デオキシコール酸、タウロコール酸、グリココール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、タウロケノデキシコール酸、グリコケノデオキシコール酸)、エピアンドロステロン、(+)−4−アンドロステン−3,17−ジオン、シス−アンドロステロン、11β−ヒドロキシプロゲステロン、17α−ヒドロキシプロゲステロン、11−デオキシコルチコステロン、11−デオキシコルチゾール、デヒドロイソアンドロステロン、3α−ヒドロキシ−5α−プレグナン−20−オン、4−プレグネン−20α−オール−3−オン、5α−デヒドロテストステロン、テストステロン、プロゲステロン、またはこれらの塩等))と本発明のタンパク質等との結合性を変化させる化合物(例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物など)またはその塩を効率よくスクリーニングすることができる。
このような試験化合物には、(イ)あるタンパク質(例えば、Gタンパク質共役型レセプター)を介して細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性、レポーター遺伝子の発現誘導活性など)を有する化合物(いわゆる、本発明のレセプタータンパク質に対するアゴニスト)、(ロ)該細胞刺激活性を有しない化合物(いわゆる、本発明のレセプタータンパク質に対するアンタゴニスト)、(ハ)生理活性物質(例えば、コレステロール代謝関連物質)と本発明のGタンパク質共役型レセプタータンパク質との結合力を増強する化合物、あるいは(ニ)生理活性物質(例えば、コレステロール代謝関連物質)と本発明のGタンパク質共役型レセプタータンパク質との結合力を減少させる化合物などが含まれる(なお、上記(イ)の化合物は、後述のリガンド決定方法によってスクリーニングすることが好ましい)。
【0039】
本発明では、(1)試験化合物1単独で結合活性を測定し、(2)さらに、試験化合物2について結合活性を測定し、(3)そして、(1)と(2)の結果を比較する。すなわち、本発明は、(i)本発明のレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩と、コレステロール代謝関連物質とを接触させた場合と(ii)本発明のレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩と、コレステロール代謝関連物質および試験化合物とを接触させた場合との比較を行なうことを特徴とするコレステロール代謝関連物質と本発明のレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法においては、(i)と(ii)の場合における、例えば、該レセプタータンパク質等に対するコレステロール代謝関連物質の結合量、細胞刺激活性などを測定して、比較することを特徴とする。
【0040】
より具体的には、本発明は、
▲1▼標識したコレステロール代謝関連物質を、本発明のレセプタータンパク質等に接触させた場合と、標識したコレステロール代謝関連物質および試験化合物を本発明のレセプタータンパク質等に接触させた場合における、標識したコレステロール代謝関連物質の該レセプタータンパク質等に対する結合量を測定し、比較することを特徴とするコレステロール代謝関連物質と本発明のレセプタータンパク質等との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
▲2▼標識したコレステロール代謝関連物質を、本発明のレセプタータンパク質等を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合と、標識したコレステロール代謝関連物質および試験化合物を本発明のレセプタータンパク質等を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合における、標識したコレステロール代謝関連物質の該細胞または該膜画分に対する結合量を測定し、比較することを特徴とするコレステロール代謝関連物質と本発明のレセプタータンパク質等との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
▲3▼標識したコレステロール代謝関連物質を、本発明のDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現したレセプタータンパク質等に接触させた場合と、標識したコレステロール代謝関連物質および試験化合物を本発明のDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現した本発明のレセプタータンパク質等に接触させた場合における、標識したコレステロール代謝関連物質の該レセプタータンパク質等に対する結合量を測定し、比較することを特徴とするコレステロール代謝関連物質と本発明のレセプタータンパク質等との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
【0041】
▲4▼本発明のレセプタータンパク質等を活性化する化合物(例えば、本発明のレセプタータンパク質等に対するコレステロール代謝関連物質など)を本発明のレセプタータンパク質等を含有する細胞に接触させた場合と、本発明のレセプタータンパク質等を活性化する化合物および試験化合物を本発明のレセプタータンパク質等を含有する細胞に接触させた場合における、レセプターを介した細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性、レポーター遺伝子の発現誘導活性など)を測定し、比較することを特徴とするコレステロール代謝関連物質と本発明のレセプタータンパク質等との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、および
▲5▼本発明のレセプタータンパク質等を活性化する化合物(例えば、本発明のレセプタータンパク質等に対するコレステロール代謝関連物質など)を本発明のDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現した本発明のレセプタータンパク質等に接触させた場合と、本発明のレセプタータンパク質等を活性化する化合物および試験化合物を本発明のDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現した本発明のレセプタータンパク質等に接触させた場合における、レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性、レポーター遺伝子の発現誘導活性など)を測定し、比較することを特徴とするリガンドと本発明のレセプタータンパク質等との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
まず、本発明のスクリーニング方法に用いる本発明のレセプタータンパク質等としては、上記した本発明のレセプタータンパク質等を含有するものであれば何れのものであってもよいが、本発明のレセプタータンパク質等を含有する哺乳動物の臓器の細胞膜画分が好適である。しかし、特にヒト由来の臓器は入手が極めて困難なことから、スクリーニングに用いられるものとしては、組換え体を用いて大量発現させたヒト由来のレセプタータンパク質等などが適している。
【0042】
本発明のレセプタータンパク質等を製造するには、上記の方法が用いられるが、本発明のDNAを哺乳細胞や昆虫細胞で発現することにより行なうことが好ましい。目的とするタンパク質部分をコードするDNA断片には相補DNAが用いられるが、必ずしもこれに制約されるものではない。例えば、遺伝子断片や合成DNAを用いてもよい。本発明のレセプタータンパク質をコードするDNA断片を宿主動物細胞に導入し、それらを効率よく発現させるためには、該DNA断片を昆虫を宿主とするバキュロウイルスに属する核多角体病ウイルス(nuclear polyhedrosis virus;NPV)のポリヘドリンプロモーター、SV40由来のプロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒトヒートショックプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、SRαプロモーターなどの下流に組み込むのが好ましい。発現したレセプターの量と質の検査は公知の方法で行うことができる。例えば、文献〔Nambi,P.ら、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.),267巻,19555〜19559頁,1992年〕に記載の方法に従って行なうことができる。
したがって、本発明のスクリーニング方法において、本発明のレセプタータンパク質等を含有するものとしては、公知の方法に従って精製したレセプタータンパク質等であってもよいし、該レセプタータンパク質等を含有する細胞を用いてもよく、また該レセプタータンパク質等を含有する細胞の膜画分を用いてもよい。
【0043】
本発明のスクリーニング方法において、本発明のレセプタータンパク質等を含有する細胞を用いる場合、該細胞をグルタルアルデヒド、ホルマリンなどで固定化してもよい。固定化方法は公知の方法に従って行なうことができる。
本発明のレセプタータンパク質等を含有する細胞としては、該レセプタータンパク質等を発現した宿主細胞をいうが、該宿主細胞としては、大腸菌、枯草菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などが好ましい。
細胞膜画分としては、細胞を破砕した後、公知の方法で得られる細胞膜が多く含まれる画分のことをいう。細胞の破砕方法としては、Potter−Elvehjem型ホモジナイザーで細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーやポリトロン(Kinematica社製)のよる破砕、超音波による破砕、フレンチプレスなどで加圧しながら細胞を細いノズルから噴出させることによる破砕などが挙げられる。細胞膜の分画には、分画遠心分離法や密度勾配遠心分離法などの遠心力による分画法が主として用いられる。例えば、細胞破砕液を低速(500rpm〜3000rpm)で短時間(通常、約1分〜10分)遠心し、上清をさらに高速(15000rpm〜30000rpm)で通常30分〜2時間遠心し、得られる沈澱を膜画分とする。該膜画分中には、発現したレセプタータンパク質等と細胞由来のリン脂質や膜タンパク質などの膜成分が多く含まれる。
該レセプタータンパク質等を含有する細胞や膜画分中のレセプタータンパク質の量は、1細胞当たり103〜108分子であるのが好ましく、105〜107分子であるのが好適である。なお、発現量が多いほど膜画分当たりのリガンド結合活性(比活性)が高くなり、高感度なスクリーニング系の構築が可能になるばかりでなく、同一ロットで大量の試料を測定できるようになる。
【0044】
コレステロール代謝関連物質と本発明のレセプタータンパク質等との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする上記の▲1▼〜▲3▼を実施するためには、例えば、適当なレセプタータンパク質画分と、標識したコレステロール代謝関連物質が必要である。
レセプタータンパク質画分としては、天然型のレセプタータンパク質画分か、またはそれと同等の活性を有する組換え型レセプタータンパク質画分などが望ましい。ここで、同等の活性とは、同等のリガンド結合活性、シグナル情報伝達作用などを示す。
標識したコレステロール代謝関連物質としては、標識したコレステロール代謝関連物質、標識したコレステロール代謝関連物質アナログ化合物などが用いられる。例えば〔3H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識されたコレステロール代謝関連物質などが用いられる。
具体的には、コレステロール代謝関連物質と本発明のレセプタータンパク質等との結合性を変化させる化合物のスクリーニングを行なうには、まず本発明のレセプタータンパク質等を含有する細胞または細胞の膜画分を、スクリーニングに適したバッファーに懸濁することによりレセプタータンパク質標品を調製する。バッファーには、pH4〜10(望ましくはpH6〜8)のリン酸バッファー、トリス−塩酸バッファーなどのリガンドとレセプタータンパク質との結合を阻害しないバッファーであればいずれでもよい。また、非特異的結合を低減させる目的で、CHAPS、Tween−80TM(花王−アトラス社)、ジギトニン、デオキシコレートなどの界面活性剤をバッファーに加えることもできる。さらに、プロテアーゼによるレセプターやリガンドの分解を抑える目的でPMSF、ロイペプチン、E−64(ペプチド研究所製)、ペプスタチンなどのプロテアーゼ阻害剤を添加することもできる。0.01ml〜10mlの該レセプター溶液に、一定量(5000cpm〜500000cpm)の標識したコレステロール代謝関連物質を添加し、同時に10-4M〜10-10Mの試験化合物を共存させる。非特異的結合量(NSB)を知るために大過剰の未標識のコレステロール代謝関連物質を加えた反応チューブも用意する。反応は約0℃から50℃、望ましくは約4℃から37℃で、約20分から24時間、望ましくは約30分から3時間行う。反応後、ガラス繊維濾紙等で濾過し、適量の同バッファーで洗浄した後、ガラス繊維濾紙に残存する放射活性を液体シンチレーションカウンターまたはγ−カウンターで計測する。拮抗する物質がない場合のカウント(B0)から非特異的結合量(NSB)を引いたカウント(B0−NSB)を100%とした時、特異的結合量(B−NSB)が、例えば、50%以下になる試験化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0045】
コレステロール代謝関連物質と本発明のレセプタータンパク質等との結合性を変化させる化合物スクリーニングする上記の▲4▼〜▲5▼の方法を実施するためには、例えば、レセプタータンパク質を介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性、レポーター遺伝子の発現誘導活性など)を公知の方法または市販の測定用キットを用いて測定することができる。
具体的には、まず、本発明のレセプタータンパク質等を含有する細胞をマルチウェルプレート等に培養する。スクリーニングを行なうにあたっては前もって新鮮な培地あるいは細胞に毒性を示さない適当なバッファーに交換し、試験化合物などを添加して一定時間インキュベートした後、細胞を抽出あるいは上清液を回収して、生成した産物をそれぞれの方法に従って定量する。細胞刺激活性の指標とする物質(例えば、アラキドン酸など)の生成が、細胞が含有する分解酵素によって検定困難な場合は、該分解酵素に対する阻害剤を添加してアッセイを行なってもよい。また、cAMP産生抑制などの活性については、フォルスコリンなどで細胞の基礎的産生量を増大させておいた細胞に対する産生抑制作用として検出することができる。
細胞刺激活性を測定してスクリーニングを行なうには、適当なレセプタータンパク質を発現した細胞が必要である。本発明のレセプタータンパク質等を発現した細胞としては、天然型の本発明のレセプタータンパク質等を有する細胞株、上記の組換え型レセプタータンパク質等を発現した細胞株などが望ましい。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが用いられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
【0046】
コレステロール代謝関連物質と本発明のレセプタータンパク質等との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング用キットは、本発明のレセプタータンパク質等、本発明のレセプタータンパク質等を含有する細胞、または本発明のレセプタータンパク質等を含有する細胞の膜画分を含有するものなどである。
本発明のスクリーニング用キットの例としては、次のものが挙げられる。
1.スクリーニング用試薬
▲1▼測定用緩衝液および洗浄用緩衝液
Hanks' Balanced Salt Solution(ギブコ社製)に、0.05%のウシ血清アルブミン(シグマ社製)を加えたもの。
孔径0.45μmのフィルターで濾過滅菌し、4℃で保存するか、あるいは用時調製しても良い。
▲2▼Gタンパク質共役型レセプター標品
本発明のレセプタータンパク質を発現させたCHO細胞を、12穴プレートに5×105個/穴で継代し、37℃、5%CO2、95%airで2日間培養したもの。
▲3▼標識コレステロール代謝関連物質
市販の〔3H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識したコレステロール代謝関連物質
水溶液の状態のものを4℃あるいは−20℃にて保存し、用時に測定用緩衝液にて1μMに希釈する。
▲4▼コレステロール代謝関連物質標準液
コレステロール代謝関連物質を0.1%ウシ血清アルブミン(シグマ社製)を含むPBSで1mMとなるように溶解し、−20℃で保存する。
【0047】
2.測定法
▲1▼12穴組織培養用プレートにて培養した本発明のレセプタータンパク質発現CHO細胞を、測定用緩衝液1mlで2回洗浄した後、490μlの測定用緩衝液を各穴に加える。
▲2▼10-3〜10-10Mの試験化合物溶液を5μl加えた後、標識コレステロール代謝関連物質を5μl加え、室温にて1時間反応させる。非特異的結合量を知るためには試験化合物の代わりに10-3Mのコレステロール代謝関連物質を5μl加えておく。
▲3▼反応液を除去し、1mlの洗浄用緩衝液で3回洗浄する。細胞に結合した標識リガンドを0.2N NaOH−1%SDSで溶解し、4mlの液体シンチレーターA(和光純薬製)と混合する。
▲4▼液体シンチレーションカウンター(ベックマン社製)を用いて放射活性を測定し、Percent Maximum Binding(PMB)を次の式で求める。
PMB=[(B−NSB)/(B0−NSB)]×100
PMB:Percent Maximum Binding
B :検体を加えた時の値
NSB:Non-specific Binding(非特異的結合量)
0 :最大結合量
【0048】
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩は、リガンドであるコレステロール代謝関連物質と本発明のレセプタータンパク質等との結合性を変化させる作用を有する化合物であり、具体的には、(イ)Gタンパク質共役型レセプターを介して細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性、レポーター遺伝子の発現誘導活性など)を有する化合物(いわゆる、本発明のレセプタータンパク質に対するアゴニスト)、(ロ)該細胞刺激活性を有しない化合物(いわゆる、本発明のレセプタータンパク質に対するアンタゴニスト)、(ハ)コレステロール代謝関連物質と本発明のGタンパク質共役型レセプタータンパク質との結合力を増強する化合物、あるいは(ニ)コレステロール代謝関連物質と本発明のGタンパク質共役型レセプタータンパク質との結合力を減少させる化合物である。
該化合物としては、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
【0049】
本発明のレセプタータンパク質等に対するアゴニストは、本発明のレセプタータンパク質等に対するコレステロール代謝関連物質が有する生理活性と同様の作用を有しているので、該コレステロール代謝関連物質活性に応じて安全で低毒性な医薬として有用である。
本発明のレセプタータンパク質等に対するアンタゴニストは、本発明のレセプタータンパク質等に対するコレステロール代謝関連物質が有する生理活性を抑制することができるので、該コレステロール代謝関連物質活性を抑制する安全で低毒性な医薬として有用である。
コレステロール代謝関連物質と本発明のGタンパク質共役型レセプタータンパク質との結合力を増強する化合物は、本発明のレセプタータンパク質等に対するコレステロール代謝関連物質が有する生理活性を増強するための安全で低毒性な医薬として有用である。
コレステロール代謝関連物質と本発明のGタンパク質共役型レセプタータンパク質との結合力を減少させる化合物は、本発明のレセプタータンパク質等に対するコレステロール代謝関連物質が有する生理活性を減少させるための安全で低毒性な医薬として有用である。
例えば、中枢疾患(例えば、アルツハイマー病、痴呆、摂食障害など)、炎症性疾患(例えば、アレルギー、リュウマチ、変形性関節症、エリテマトーデスなど)、循環器疾患(例えば、高血圧症、心肥大、狭心症、動脈硬化症等)、癌(例えば、非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌等)、呼吸器疾患(例えば、肺炎、気管支炎、喘息、肺繊維症など)、糖尿病、免疫系疾患(例えば、クローン病、アトピー性皮膚炎、自己免疫疾患、免疫不全、白血病等)、肝臓・胆のう疾患(例えば、肝硬変、肝炎、肝不全、胆汁うっ滞症、結石等)、消化管疾患(例えば、潰瘍、腸炎、吸収不良等)、感染症、肥満、移植医療後の過剰免疫反応などの疾患の予防および/または治療剤として有用である。
これらの疾患のうち、免疫機能、マクロファージ機能などが亢進することに起因する疾患(例えば、炎症性疾患、移植医療後の過剰免疫反応など)には、特に本発明のレセプタータンパク質等を介した生理活性を増強させる化合物(例、アゴニスト)が有効である。
一方、免疫機能、マクロファージ機能などが抑制されることに起因する疾患(例えば、免疫不全、感染症など)には、特に本発明のレセプタータンパク質等を介した生理活性を減少させる化合物(例、アンタゴニスト)が有効である。
【0050】
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩を上記の医薬(組成物)として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。
例えば、該化合物またはその塩を、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、該化合物またはその塩を、生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
また、該化合物またはその塩は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトやその他の哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、高血圧症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、高血圧症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0051】
さらに、本発明のGタンパク質共役型レセプタータンパク質に対するリガンドの定量法を以下に説明する。
本発明のレセプタータンパク質等は、コレステロール代謝関連物質(例、胆汁酸(例、タウロリトコール酸、グリコリトコール酸、タウロデオキシコール酸、グリコデオキシコール酸、ノルデオキシコール酸、7−ケトリトコール酸、5β−プレグナン−3,20−オン、コール酸、コール酸、リトコール酸、デオキシコール酸、タウロコール酸、グリココール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、タウロケノデキシコール酸、グリコケノデオキシコール酸、エピアンドロステロン)、(+)−4−アンドロステン−3,17−ジオン、シス−アンドロステロン、11β−ヒドロキシプロゲステロン、17α−ヒドロキシプロゲステロン、11−デオキシコルチコステロン、11−デオキシコルチゾール、デヒドロイソアンドロステロン、3α−ヒドロキシ−5α−プレグナン−20−オン、4−プレグネン−20α−オール−3−オン、5α−デヒドロテストステロン、テストステロン、プロゲステロン、またはこれらの塩等)に対して結合性を有しているので、生体内におけるコレステロール代謝関連物質濃度を感度良く定量することができる。
本発明の定量法は、例えば、競合法と組み合わせることによって用いることができる。すなわち、被検体を本発明のレセプタータンパク質等と接触させることによって被検体中のコレステロール代謝関連物質濃度を測定することができる。具体的には、例えば、以下の▲1▼または▲2▼などに記載の方法あるいはそれに準じる方法に従って用いることができる。
▲1▼入江寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)
▲2▼入江寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)
【0052】
本発明の、リガンドが未知のレセプタータンパク質に対するリガンドの決定方法について詳述する。
本発明のリガンドの決定方法は、(1)リガンドが決定されていないレセプタータンパク質を発現し、かつエンハンサー/プロモーターの下流にレポータータンパク質をコードするDNAを連結したプラスミドを含有する細胞に、試験化合物を添加し、発現誘導されるレポータータンパク質の活性を測定する方法、(2)(i)リガンドが決定されていないレセプタータンパク質をコードするDNAを含有するプラスミドおよび(ii)エンハンサー/プロモーターの下流にレポータータンパク質をコードするDNAを連結したプラスミドを含有する細胞を培養し、試験化合物を添加し、発現誘導されるレポータータンパク質の活性を測定する方法などである。
該レセプタータンパク質としては、例えばGタンパク質共役型レセプタータンパク質などが用いられる。具体例としては、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質や、WO96/05302、EP−A−711831、EP−A−789076、EP−A−1103563、EP−A−1103562、特開平8−154682号公報、特開平8−283295号公報、特開平8−196278号公報、特開平8−245697号公報、特開平8−266280号公報、特開平9−51795号公報、特開平9−121865号公報、特開平9−2388686号公報、特開平10−146192号公報に記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質などが挙げられる。
レセプター発現プラスミドとしては真核生物由来の細胞で該レセプタータンパク質を発現させるためのプロモーター、原核生物で増殖させる場合の選択マーカーとして用いる薬剤耐性遺伝子(例えば、アンピシリン耐性遺伝子)などを含有するプラスミドがあげられる。
エンハンサー/プロモーターの下流にレポータータンパク質をコードするDNAを含む(真核生物由来)細胞に、導入可能なプラスミドとしては、市販のプラスミドなどのいかなるプラスミドでもよい。公知の方法にて酵素活性を検出できるような酵素遺伝子を含むようなプラスミドが好ましく用いられる。
エンハンサーとしては、例えば、SV40、パピローマウイルス等のウイルス由来のエンハンサー、レトロウイルスのLTR、cAMPレスポンスエレメント(cAMP応答配列)(CRE)等が用いられ、好ましくはcAMPレスポンスエレメントである。
プロモーターとしては、例えば、SV40プロモーター、CMVプロモーター、HSVのチミジンキナーゼ遺伝子のTATA様プロモーター等が用いられ、好ましくはTATA様プロモーターである。
レポータータンパク質遺伝子としては、例えば、ルシフェラーゼ遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、GFP遺伝子、アルカリフォスファターゼ遺伝子等が用いられる。
かかるプラスミドの具体例としては、cAMPレスポンスエレメントの下流にTATA様プロモーターおよびレポータータンパク質(例、ルシフェラーゼ遺伝子)をコードする遺伝子を連結したプラスミド、例えばpCRE−Luc(Clontech社)などが用いられる。
上記で用いられる細胞としては、真核生物由来の細胞が挙げられ、好ましくは、動物細胞(例、サル細胞COS−7、Vero、CHO細胞、CHO(dhfr-)細胞、マウスL細胞、マウスAtT−20、マウスミエローマ細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞、ヒトHEK293細胞など)などが用いられる。
該細胞は、2種以上(好ましくは2〜3種)のレセプタータンパク質を発現していてもよい。
2種類以上のレセプタータンパク質を発現させる場合は、類似の特徴を有する2種類以上のレセプタータンパク質を選択するのが良い。
類似の特徴としては、例えば、2種類以上のレセプタータンパク質をそれぞれ単独で発現させた時のレポータータンパク質の発現量などが挙げられる。具体的には、2種類以上のレセプタータンパク質をそれぞれ単独で発現させた場合における▲1▼レポータータンパク質の基礎発現量および(または)▲2▼フォルスコリン添加時のレポータータンパク質の発現量を指標として、各レセプタータンパク質の特徴を区別することができる。
すなわち、リガンドが決定されていない2種類以上のレセプタータンパク質を発現させてリガンドを決定する場合、あらかじめレポータータンパク質の基礎発現量が低いもの、中程度のもの、明らかに高いものなどに区分けをしたり、あるいはフォルスコリン添加によってレポータータンパク質の発現量が上昇しにくいレセプタータンパク質を明らかにしておくことが望ましい。なぜならば、例えばレポータータンパク質の基礎発現量が高いレセプタータンパク質とレポータータンパク質の基礎発現量が低いレセプターの2種類のレセプタータンパク質を発現させた場合、後者にリガンドがヒットした場合にレポータータンパク質発現量の上昇が見えにくくなるからである。したがって、得られた情報をもとに、
(1)レポータータンパク質の基礎発現量が高いレセプタータンパク質と低いレセプタータンパク質の混合は避けるのが好ましい、
(2)フォルスコリン添加によるレポータータンパク質の発現量の上昇が顕著なレセプタータンパク質とそうでないレセプタータンパク質は混合しないほうが好ましい、
(3)レポータータンパク質の基礎発現量が同程度であるレセプタータンパク質同士を組み合わせて発現させるのが好ましい。
このように類似の特徴を有するレセプタータンパク質の組み合わせとしては、例えば、APJ(アペリンレセプター;ジーン(Gene)、第136巻、第355頁(1993年))とTGR−1(特開2002−078492号)との組み合わせが挙げられる。
【0053】
リガンドの決定方法の具体例を以下に記載する。
細胞を96ウェルプレートに播種し、例えば10%ウシ胎児血清を含むDMEMで一晩培養する。ここで、例えば市販のトランスフェクションキットを用いて、レセプタータンパク質発現プラスミドおよびレポータープラスミドを同時に細胞に導入し、細胞をさらに一晩培養することにより、細胞内でレセプタータンパク質を一過性に発現させる。細胞を洗浄し、さらに培地を無血清化した後、試験化合物を添加する。エンハンサーがCREである場合、試験化合物と同時にフォルスコリンを添加してもよい。一定時間インキュベーションを行った後、細胞を溶解し、レポータータンパク質の活性を測定する。
前記の決定方法において、ベースラインが高く、シグナルの検出が困難な場合には、該ベースラインを低下させる手段を講じるとよい。例えばレセプタータンパク質がGタンパク質共役型レセプタータンパク質(GPCR)の場合、Gタンパク質のサブユニットであるGαタンパク質のうち、cAMP抑制効果を示すGiタンパク質を添加することにより、シグナル検出が容易となる。Giタンパク質はまたGiタンパク質をコードするDNAを発現するプラスミドとして、レセプタータンパク質プラスミドおよびレポータープラスミドと共に細胞に導入することができる。この場合、3種のプラスミド(レセプタープラスミド:レポータープラスミド:Giプラスミド)の混合比は、5〜15:1:1〜6程度が好ましく、さらには7:1:3程度であるのが好ましい。
【0054】
本発明のレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体は、本発明のレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。
本発明のレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩(以下、本発明のレセプタータンパク質等と略記する場合がある)に対する抗体は、本発明のレセプタータンパク質等を抗原として用い、公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
【0055】
〔モノクローナル抗体の作製〕
(a)モノクローナル抗体産生細胞の作製
本発明のレセプタータンパク質等は、哺乳動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行なわれる。用いられる哺乳動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギが挙げられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。
モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原を免疫された温血動物、例えば、マウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標識化レセプタータンパク質等と抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行なうことができる。融合操作は既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔ネイチャー(Nature)、256巻、495頁(1975年)〕に従い実施することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGが用いられる。
骨髄腫細胞としては、例えば、NS−1、P3U1、SP2/0などが挙げられるが、P3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくは、PEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、約20〜40℃、好ましくは約30〜37℃で約1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
【0056】
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えば、レセプタータンパク質等の抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したレセプタータンパク質等を加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法などが挙げられる。
モノクローナル抗体の選別は、公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができるが、通常はHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地などで行なうことができる。選別および育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))またはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行なうことができる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
【0057】
(b)モノクローナル抗体の精製
モノクローナル抗体の分離精製は、通常のポリクローナル抗体の分離精製と同様に免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相またはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行なうことができる。
【0058】
〔ポリクローナル抗体の作製〕
本発明のポリクローナル抗体は、公知あるいはそれに準じる方法にしたがって製造することができる。例えば、免疫抗原(レセプタータンパク質等の抗原)とキャリアータンパク質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に哺乳動物に免疫を行ない、該免疫動物から本発明のレセプタータンパク質等に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造できる。
哺乳動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアータンパク質との複合体に関し、キャリアータンパク質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミン、ウシサイログロブリン、キーホール・リンペット・ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプルさせる方法が用いられる。
また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なうことができる。ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された哺乳動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
【0059】
本発明の配列番号:5、配列番号:7、配列番号14または配列番号:16で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列(但し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を除く)を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩、その部分ペプチドまたはその塩、および該レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするDNAは新規物質であり、(1)本発明のGタンパク質共役型レセプタータンパク質の機能不全に関連する疾患の予防および/または治療剤、(2)遺伝子診断剤、(3)本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの発現量を変化させる化合物を含有する各種疾病の予防および/または治療剤、(4)本発明のGタンパク質共役型レセプタータンパク質に対するリガンドの定量法、(5)本発明のGタンパク質共役型レセプタータンパク質とリガンドとの結合性を変化させる化合物(アゴニスト、アンタゴニスト)を含有する各種疾病の予防および/または治療剤、(6)本発明のレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の定量、(7)細胞膜における本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物を含有する各種疾病の予防および/または治療剤、(8)本発明のレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体による中和、(9)本発明のGタンパク質共役型レセプタータンパク質をコードするDNAを有する非ヒト動物の作出などに用いることができる。
本発明のレセプタータンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩(以下、本発明のレセプタータンパク質等と略記する場合がある)、本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするDNA(以下、本発明のDNAと略記する場合がある)および本発明のレセプタータンパク質等に対する抗体(以下、本発明の抗体と略記する場合がある)の用途について、以下に具体的に説明する。
【0060】
(1)本発明のGタンパク質共役型レセプタータンパク質の機能不全に関連する疾患の予防および/または治療剤
本発明のレセプタータンパク質に対するリガンドが有する作用に応じて、▲1▼本発明のレセプタータンパク質または▲2▼該レセプタータンパク質をコードするDNAを、本発明のレセプタータンパク質の機能不全に関連する疾患の予防および/または治療剤などの医薬として使用することができる。
例えば、生体内において本発明のレセプタータンパク質が減少しているためにリガンドの生理作用が期待できない(該レセプタータンパク質の欠乏症)患者がいる場合に、▲1▼本発明のレセプタータンパク質を該患者に投与し該レセプタータンパク質の量を補充したり、▲2▼(イ)本発明のレセプタータンパク質をコードするDNAを該患者に投与し発現させることによって、あるいは(ロ)対象となる細胞に本発明のレセプタータンパク質をコードするDNAを挿入し発現させた後に、該細胞を該患者に移植することなどによって、患者の体内におけるレセプタータンパク質の量を増加させ、リガンドの作用を充分に発揮させることができる。すなわち、本発明のレセプタータンパク質をコードするDNAは、安全で低毒性な本発明のレセプタータンパク質の機能不全に関連する疾患の予防および/または治療剤として有用である。
本発明のレセプタータンパク質は、例えば、中枢疾患(例えば、アルツハイマー病、痴呆、摂食障害など)、炎症性疾患(例えば、アレルギー、リュウマチ、変形性関節症、エリテマトーデスなど)、循環器疾患(例えば、高血圧症、心肥大、狭心症、動脈硬化症等)、癌(例えば、非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌等)、呼吸器疾患(例えば、肺炎、気管支炎、喘息、肺繊維症など)、糖尿病、免疫系疾患(例えば、クローン病、アトピー性皮膚炎、自己免疫疾患、免疫不全、白血病等)、肝臓・胆のう疾患(例えば、肝硬変、肝炎、肝不全、胆汁うっ滞症、結石等)、消化管疾患(例えば、潰瘍、腸炎、吸収不良等)、感染症、肥満、移植医療後の過剰免疫反応などの疾患の予防および/または治療剤として有用である。
これらの疾患のうち、免疫機能、マクロファージ機能などが亢進することに起因する疾患(例えば、炎症性疾患、移植医療後の過剰免疫反応など)には、特に本発明のレセプタータンパク質等を介した生理活性を増強させる化合物(例、アゴニスト)が有効である。
一方、免疫機能、マクロファージ機能などが抑制されることに起因する疾患(例えば、免疫不全、感染症など)には、特に本発明のレセプタータンパク質等を介した生理活性を減少させる化合物(例、アンタゴニスト)が有効である。
本発明のレセプタータンパク質を上記予防および/または治療剤として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。
一方、本発明のレセプタータンパク質をコードするDNA(以下、本発明のDNAと略記する場合がある)を上記予防および/または治療剤として使用する場合は、本発明のDNAを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って実施することができる。本発明のDNAは、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤とともに、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。
例えば、▲1▼本発明のレセプタータンパク質または▲2▼該レセプタータンパク質をコードするDNAは、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、▲1▼本発明のレセプタータンパク質または▲2▼該レセプタータンパク質をコードするDNAを生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
【0061】
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
【0062】
また、上記予防および/または治療剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトやその他の哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
本発明のレセプタータンパク質の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、高血圧症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1mg〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、高血圧症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0063】
本発明のDNAの投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、高血圧症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1mg〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、高血圧症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0064】
(2)遺伝子診断剤
本発明のDNAは、プローブとして使用することにより、ヒトまたはその他の哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)における本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするDNAまたはmRNAの異常(遺伝子異常)を検出することができるので、例えば、該DNAまたはmRNAの損傷、突然変異あるいは発現低下や、該DNAまたはmRNAの増加あるいは発現過多などの遺伝子診断剤として有用である。より具体的には、中枢疾患(例えば、アルツハイマー病、痴呆、摂食障害など)、炎症性疾患(例えば、アレルギー、喘息、リュウマチなど)、循環器疾患(例えば、高血圧症、心肥大、狭心症、動脈硬化症等)、癌(例えば、非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌等)、糖尿病、免疫系疾患(例えば、自己免疫疾患、免疫不全、白血病等)、肝臓・胆のう疾患(例えば、肝硬変、肝炎、肝不全、胆汁うっ滞症、結石等)、消化管疾患(例えば、潰瘍、腸炎、吸収不良等)、肥満などの疾患の遺伝子診断診断剤として有用である。
本発明のDNAを用いる上記の遺伝子診断は、例えば、公知のノーザンハイブリダイゼーションやPCR−SSCP法(ゲノミックス(Genomics),第5巻,874〜879頁(1989年)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ユーエスエー(Proceedings of theNational Academy of Sciences of the United States of America),第86巻,2766〜2770頁(1989年))などにより実施することができる。
【0065】
(3)本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの発現量を変化させる化合物を含有する各種疾病の予防および/または治療剤
本発明のレセプタータンパク質は上記のとおり、例えば、中枢機能など生体内で何らかの重要な役割を果たしていると考えられる。したがって、本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの発現量を変化させる化合物は、本発明のレセプタータンパク質の機能不全に関連する疾患、例えば、中枢疾患(例えば、アルツハイマー病、痴呆、摂食障害など)、炎症性疾患(例えば、アレルギー、リュウマチ、変形性関節症、エリテマトーデスなど)、循環器疾患(例えば、高血圧症、心肥大、狭心症、動脈硬化症等)、癌(例えば、非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌等)、呼吸器疾患(例えば、肺炎、気管支炎、喘息、肺繊維症など)、糖尿病、免疫系疾患(例えば、クローン病、アトピー性皮膚炎、自己免疫疾患、免疫不全、白血病等)、肝臓・胆のう疾患(例えば、肝硬変、肝炎、肝不全、胆汁うっ滞症、結石等)、消化管疾患(例えば、潰瘍、腸炎、吸収不良等)、感染症、肥満、移植医療後の過剰免疫反応などの疾患の予防および/または治療剤として有用である。
これらの疾患のうち、免疫機能、マクロファージ機能などが亢進することに起因する疾患(例えば、炎症性疾患、移植医療後の過剰免疫反応など)には、特に本発明のレセプタータンパク質等の発現を促進する化合物が有効である。
一方、免疫機能、マクロファージ機能などが抑制されることに起因する疾患(例えば、免疫不全、感染症など)には、特に本発明のレセプタータンパク質等の発現を阻害する化合物が有効である。
該化合物を本発明のレセプタータンパク質の機能不全に関連する疾患の予防および/または治療剤として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。
例えば、該化合物は、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、該化合物を生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
【0066】
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
【0067】
また、上記予防および/または治療剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトやその他の哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、高血圧症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、高血圧症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0068】
(4)本発明のGタンパク質共役型レセプタータンパク質に対するリガンドの定量法
本発明のレセプタータンパク質等は、リガンドに対して結合性を有しているので、生体内におけるリガンド濃度を感度良く定量することができる。
本発明の定量法は、例えば、競合法と組み合わせることによって用いることができる。すなわち、被検体を本発明のレセプタータンパク質等と接触させることによって被検体中のリガンド濃度を測定することができる。具体的には、例えば、以下の▲1▼または▲2▼などに記載の方法あるいはそれに準じる方法に従って用いることができる。
▲1▼入江寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)
▲2▼入江寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)
【0069】
(5)本発明のGタンパク質共役型レセプタータンパク質とリガンドとの結合性を変化させる化合物(アゴニスト、アンタゴニスト)を含有する各種疾病の予防および/または治療剤
本発明のレセプタータンパク質は上記のとおり、例えば中枢機能など生体内で何らかの重要な役割を果たしていると考えられる。従って、本発明のレセプタータンパク質とリガンドとの結合性を変化させる化合物(アゴニスト、アンタゴニスト)は、本発明のレセプタータンパク質の機能不全に関連する疾患の予防および/または治療剤として用いることができる。
該化合物を本発明のレセプタータンパク質の機能不全に関連する疾患の予防および/または治療剤として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。
例えば、該化合物は、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、該化合物を生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
【0070】
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
【0071】
また、上記予防および/または治療剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトやその他の哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、高血圧症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、高血圧症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0072】
(6)本発明のレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の定量
本発明の抗体は、本発明のレセプタータンパク質等を特異的に認識することができるので、被検液中の本発明のレセプタータンパク質等の定量、特にサンドイッチ免疫測定法による定量などに使用することができる。すなわち、本発明は、例えば、
(i)本発明の抗体と、被検液および標識化レセプタータンパク質等とを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化レセプタータンパク質等の割合を測定することを特徴とする被検液中の本発明のレセプタータンパク質等の定量法、
(ii)被検液と担体上に不溶化した本発明の抗体および標識化された本発明の抗体とを同時あるいは連続的に反応させたのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することを特徴とする被検液中の本発明のレセプタータンパク質等の定量法を提供する。
上記(ii)においては、一方の抗体が本発明のレセプタータンパク質等のN端部を認識する抗体で、他方の抗体が本発明のレセプタータンパク質等のC端部に反応する抗体であることが好ましい。
【0073】
本発明のレセプタータンパク質等に対するモノクローナル抗体(以下、本発明のモノクローナル抗体と称する場合がある)を用いて本発明のレセプタータンパク質等の測定を行なえるほか、組織染色等による検出を行なうこともできる。これらの目的には、抗体分子そのものを用いてもよく、また、抗体分子のF(ab')2、Fab'、あるいはFab画分を用いてもよい。本発明のレセプタータンパク質等に対する抗体を用いる測定法は、特に制限されるべきものではなく、被測定液中の抗原量(例えば、レセプタータンパク質量)に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法が好適に用いられるが、感度、特異性の点で、後に記載するサンドイッチ法を用いるのが特に好ましい。
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン−アビジン系を用いることもできる。
【0074】
抗原あるいは抗体の不溶化に当っては、物理吸着を用いてもよく、また通常、タンパク質あるいは酵素等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法でもよい。担体としては、例えば、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス等が用いられる。
サンドイッチ法においては不溶化した本発明のモノクローナル抗体に被検液を反応させ(1次反応)、さらに標識化した本発明のモノクローナル抗体を反応させ(2次反応)たのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することにより被検液中の本発明のレセプタータンパク質量を定量することができる。1次反応と2次反応は逆の順序に行なっても、また、同時に行なってもよいし時間をずらして行なってもよい。標識化剤および不溶化の方法は上記のそれらに準じることができる。
また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相用抗体あるいは標識用抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。
本発明のサンドイッチ法によるレセプタータンパク質等の測定法においては、1次反応と2次反応に用いられる本発明のモノクローナル抗体はレセプタータンパク質等の結合する部位が相異なる抗体が好ましく用いられる。すなわち、1次反応および2次反応に用いられる抗体は、例えば、2次反応で用いられる抗体が、レセプタータンパク質のC端部を認識する場合、1次反応で用いられる抗体は、好ましくはC端部以外、例えばN端部を認識する抗体が用いられる。
【0075】
本発明のモノクローナル抗体をサンドイッチ法以外の測定システム、例えば、競合法、イムノメトリック法あるいはネフロメトリーなどに用いることができる。競合法では、被検液中の抗原と標識抗原とを抗体に対して競合的に反応させたのち、未反応の標識抗原と(F)と抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し(B/F分離)、B,Fいずれかの標識量を測定し、被検液中の抗原量を定量する。本反応法には、抗体として可溶性抗体を用い、B/F分離をポリエチレングリコール、上記抗体に対する第2抗体などを用いる液相法、および、第1抗体として固相化抗体を用いるか、あるいは、第1抗体は可溶性のものを用い第2抗体として固相化抗体を用いる固相化法とが用いられる。
イムノメトリック法では、被検液中の抗原と固相化抗原とを一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後固相と液相を分離するか、あるいは、被検液中の抗原と過剰量の標識化抗体とを反応させ、次に固相化抗原を加え未反応の標識化抗体を固相に結合させたのち、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し被検液中の抗原量を定量する。
また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果、生じた不溶性の沈降物の量を測定する。被検液中の抗原量が僅かであり、少量の沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
【0076】
これら個々の免疫学的測定法を本発明の測定方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて本発明のレセプタータンパク質またはその塩の測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる〔例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「メソッズ・イン・エンジモノジー(Methods in ENZYMOLOGY)」 Vol. 70(Immunochemical Techniques(Part A))、 同書 Vol. 73(Immunochemical Techniques(Part B))、 同書 Vol. 74(Immunochemical Techniques(PartC))、 同書 Vol. 84(Immunochemical Techniques(Part D:Selected Immunoassays))、 同書 Vol. 92(Immunochemical Techniques(Part E:Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、 同書 Vol. 121(Immunochemical Techniques(Part I:Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)など参照〕。
以上のように、本発明の抗体を用いることによって、本発明のレセプタータンパク質またはその塩を感度良く定量することができる。
さらに、本発明の抗体を用いて、生体内での本発明のレセプタータンパク質またその塩を定量することによって、本発明のレセプタータンパク質の機能不全に関連する各種疾患の診断をすることができる。
また、本発明の抗体は、体液や組織などの被検体中に存在する本発明のレセプタータンパク質等を特異的に検出するために使用することができる。また、本発明のレセプタータンパク質等を精製するために使用する抗体カラムの作製、精製時の各分画中の本発明のレセプタータンパク質等の検出、被検細胞内における本発明のレセプタータンパク質の挙動の分析などのために使用することができる。
【0077】
(7)細胞膜における本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物を含有する各種疾病の予防および/または治療剤
本発明のレセプタータンパク質は上記のとおり、例えば、中枢機能など生体内で何らかの重要な役割を果たしていると考えられる。したがって、細胞膜における本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物は、本発明のレセプタータンパク質の機能不全に関連する疾患、例えば、中枢疾患(例えば、アルツハイマー病、痴呆、摂食障害など)、炎症性疾患(例えば、アレルギー、リュウマチ、変形性関節症、エリテマトーデスなど)、循環器疾患(例えば、高血圧症、心肥大、狭心症、動脈硬化症等)、癌(例えば、非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌等)、呼吸器疾患(例えば、肺炎、気管支炎、喘息、肺繊維症など)、糖尿病、免疫系疾患(例えば、クローン病、アトピー性皮膚炎、自己免疫疾患、免疫不全、白血病等)、肝臓・胆のう疾患(例えば、肝硬変、肝炎、肝不全、胆汁うっ滞症、結石等)、消化管疾患(例えば、潰瘍、腸炎、吸収不良等)、感染症、肥満、移植医療後の過剰免疫反応などの疾患の予防および/または治療剤として有用である。
これらの疾患のうち、免疫機能、マクロファージ機能などが亢進することに起因する疾患(例えば、炎症性疾患、移植医療後の過剰免疫反応など)には、特に本発明のレセプタータンパク質等の発現量を促進する化合物が有効である。
一方、免疫機能、マクロファージ機能などが抑制されることに起因する疾患(例えば、免疫不全、感染症など)には、特に本発明のレセプタータンパク質等の発現を阻害する化合物が有効である。
該化合物を本発明のレセプタータンパク質の機能不全に関連する疾患の予防および/または治療剤として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。
例えば、該化合物は、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、該化合物を生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
【0078】
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
【0079】
また、上記予防および/または治療剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトやその他の哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、高血圧症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、高血圧症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0080】
(8)本発明のレセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはそれらの塩に対する抗体による中和
本発明のレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体の、それらレセプタータンパク質などに対する中和活性とは、すなわち、該レセプタータンパク質の関与するシグナル伝達機能を不活性化する活性を意味する。従って、該抗体が中和活性を有する場合は、該レセプタータンパク質の関与するシグナル伝達、例えば、該レセプタータンパク質を介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を不活性化することができる。したがって、該レセプタータンパク質の過剰発現などに起因する疾患の予防および/または治療に用いることができる。
【0081】
(9)本発明のGタンパク質共役型レセプタータンパク質をコードするDNAを有する動物の作出
本発明のDNAを用いて、本発明のレセプタータンパク質等を発現するトランスジェニック動物を作出することができる。動物としては、非ヒト哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)など(以下、動物と略記する場合がある)が挙げれるが、特に、マウス、ウサギなどが好適である。
本発明のDNAを対象動物に導入するにあたっては、該DNAを動物細胞で発現させうるプロモーターの下流に結合した遺伝子コンストラクトとして用いるのが一般に有利である。例えば、ウサギ由来の本発明のDNAを導入する場合、これと相同性が高い動物由来の本発明のDNAを動物細胞で発現させうる各種プロモーターの下流に結合した遺伝子コンストラクトを、例えば、ウサギ受精卵へマイクロインジェクションすることによって本発明のレセプタータンパク質等を高産生するDNA導入動物を作出できる。このプロモーターとしては、例えば、ウイルス由来プロモーター、メタロチオネイン等のユビキアスな発現プロモーターも使用しうるが、好ましくは脳で特異的に発現するNGF遺伝子プロモーターやエノラーゼ遺伝子プロモーターなどが用いられる。
【0082】
受精卵細胞段階における本発明のDNAの導入は、対象動物の胚芽細胞および体細胞の全てに存在するように確保される。DNA導入後の作出動物の胚芽細胞において本発明のレセプタータンパク質等が存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明のレセプタータンパク質等を有することを意味する。遺伝子を受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明のレセプタータンパク質等を有する。
本発明のDNA導入動物は、交配により遺伝子を安定に保持することを確認して、該DNA保有動物として通常の飼育環境で飼育継代を行うことができる。さらに、目的DNAを保有する雌雄の動物を交配することにより、導入遺伝子を相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを有するように繁殖継代することができる。本発明のDNAが導入された動物は、本発明のレセプタータンパク質等が高発現させられているので、本発明のレセプタータンパク質等に対するアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング用の動物などとして有用である。
本発明のDNA導入動物を、組織培養のための細胞源として使用することもできる。例えば、本発明のDNA導入マウスの組織中のDNAもしくはRNAを直接分析するか、あるいは遺伝子により発現された本発明のレセプタータンパク質が存在する組織を分析することにより、本発明のレセプタータンパク質等について分析することができる。本発明のレセプタータンパク質等を有する組織の細胞を標準組織培養技術により培養し、これらを使用して、例えば、脳や末梢組織由来のような一般に培養困難な組織からの細胞の機能を研究することができる。また、その細胞を用いることにより、例えば、各種組織の機能を高めるような医薬の選択も可能である。また、高発現細胞株があれば、そこから、本発明のレセプタータンパク質等を単離精製することも可能である。
【0083】
(10)ノックアウト動物
本発明は、本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞および本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、本発明は、
(1)本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞、
(2)該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化された上記(1)記載の胚幹細胞、
(3)ネオマイシン耐性である上記(1)記載の胚幹細胞、
(4)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である上記(1)記載の胚幹細胞、
(5)ゲッ歯動物がマウスである上記(4)記載の胚幹細胞、
(6)本発明のDNAが不活性化された該DNA発現不全非ヒト哺乳動物、
(7)該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうる上記(6)記載の非ヒト哺乳動物、
(8)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である上記(6)記載の非ヒト哺乳動物、
(9)ゲッ歯動物がマウスである上記(8)記載の非ヒト哺乳動物、および
(10)上記(7)記載の動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
【0084】
本発明の「DNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞」とは、該非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAに人為的に変異を加えることにより、DNAの発現能を抑制するか、あるいは該DNAがコードしている本発明のポリペプチドの活性を実質的に喪失させることにより、DNAが実質的に本発明のポリペプチドの発現能を有さない(以下、本発明のノックアウトDNAと称することがある)非ヒト哺乳動物の胚幹細胞(以下、ES細胞と略記する)をいう。
非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
本発明のDNAに人為的に変異を加える方法としては、例えば、遺伝子工学的手法により該DNA配列の一部又は全部の削除、他DNAを挿入または置換させることによって行なうことができる。これらの変異により、例えば、コドンの読み取り枠をずらしたり、プロモーターあるいはエクソンの機能を破壊することにより本発明のノックアウトDNAを作製すればよい。
【0085】
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞(以下、本発明のDNA不活性化ES細胞または本発明のノックアウトES細胞と略記する)の具体例としては、例えば、目的とする非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAを単離し、そのエクソン部分にネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子を代表とする薬剤耐性遺伝子、あるいはlacZ(β−ガラクトシダーゼ遺伝子)、cat(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子)を代表とするレポーター遺伝子等を挿入することによりエクソンの機能を破壊するか、あるいはエクソン間のイントロン部分に遺伝子の転写を終結させるDNA配列(例えば、ポリA付加シグナルなど)を挿入し、完全なメッセンジャーRNAを合成できなくすることによって、結果的に遺伝子を破壊するように構築したDNA配列を有するDNA鎖(以下、ターゲッティングベクターと略記する)を、例えば相同組換え法により該動物の染色体に導入し、得られたES細胞について本発明のDNA上あるいはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析あるいはターゲッティングベクター上のDNA配列とターゲッティングベクター作製に使用した本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列をプライマーとしたPCR法により解析し、本発明のノックアウトES細胞を選別することにより得ることができる。
また、相同組換え法等により本発明のDNAを不活化させる元のES細胞としては、例えば、前述のような既に樹立されたものを用いてもよく、また公知のEvansとKaufmanの方法に準じて新しく樹立したものでもよい。例えば、マウスのES細胞の場合、現在、一般的には129系のES細胞が使用されているが、免疫学的背景がはっきりしていないので、これに代わる純系で免疫学的に遺伝的背景が明らかなES細胞を取得するなどの目的で例えば、C57BL/6マウスやC57BL/6の採卵数の少なさをDBA/2との交雑により改善したBDF1マウス(C57BL/6とDBA/2とのF1)を用いて樹立したものなども良好に用いうる。BDF1マウスは、採卵数が多く、かつ、卵が丈夫であるという利点に加えて、C57BL/6マウスを背景に持つので、これを用いて得られたES細胞は病態モデルマウスを作出したとき、C57BL/6マウスとバッククロスすることでその遺伝的背景をC57BL/6マウスに代えることが可能である点で有利に用い得る。
【0086】
また、ES細胞を樹立する場合、一般には受精後3.5日目の胚盤胞を使用するが、これ以外に8細胞期胚を採卵し胚盤胞まで培養して用いることにより効率よく多数の初期胚を取得することができる。
また、雌雄いずれのES細胞を用いてもよいが、通常雄のES細胞の方が生殖系列キメラを作出するのに都合が良い。また、煩雑な培養の手間を削減するためにもできるだけ早く雌雄の判別を行なうことが望ましい。
ES細胞の雌雄の判定方法としては、例えば、PCR法によりY染色体上の性決定領域の遺伝子を増幅、検出する方法が、その1例としてあげることができる。この方法を使用すれば、従来、核型分析をするのに約106個の細胞数を要していたのに対して、1コロニー程度のES細胞数(約50個)で済むので、培養初期におけるES細胞の第一次セレクションを雌雄の判別で行なうことが可能であり、早期に雄細胞の選定を可能にしたことにより培養初期の手間は大幅に削減できる。
【0087】
また、第二次セレクションとしては、例えば、G−バンディング法による染色体数の確認等により行うことができる。得られるES細胞の染色体数は正常数の100%が望ましいが、樹立の際の物理的操作等の関係上困難な場合は、ES細胞の遺伝子をノックアウトした後、正常細胞(例えば、マウスでは染色体数が2n=40である細胞)に再びクローニングすることが望ましい。
このようにして得られた胚幹細胞株は、通常その増殖性は大変良いが、個体発生できる能力を失いやすいので、注意深く継代培養することが必要である。例えば、STO繊維芽細胞のような適当なフィーダー細胞上でLIF(1−10000U/ml)存在下に炭酸ガス培養器内(好ましくは、5%炭酸ガス、95%空気または5%酸素、5%炭酸ガス、90%空気)で約37℃で培養するなどの方法で培養し、継代時には、例えば、トリプシン/EDTA溶液(通常0.001−0.5%トリプシン/0.1−5mM EDTA、好ましくは約0.1%トリプシン/1mM EDTA)処理により単細胞化し、新たに用意したフィーダー細胞上に播種する方法などがとられる。このような継代は、通常1−3日毎に行なうが、この際に細胞の観察を行い、形態的に異常な細胞が見受けられた場合はその培養細胞は放棄することが望まれる。
【0088】
ES細胞は、適当な条件により、高密度に至るまで単層培養するか、または細胞集塊を形成するまで浮遊培養することにより、頭頂筋、内臓筋、心筋などの種々のタイプの細胞に分化させることが可能であり〔M. J. Evans及びM. H. Kaufman, ネイチャー(Nature)第292巻、154頁、1981年;G. R. Martin プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.)第78巻、7634頁、1981年;T. C. Doetschman ら、ジャーナル・オブ・エンブリオロジー・アンド・エクスペリメンタル・モルフォロジー、第87巻、27頁、1985年〕、本発明のES細胞を分化させて得られる本発明のDNA発現不全細胞は、インビトロにおける本発明のポリペプチドの細胞生物学的検討において有用である。
【0089】
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、該動物のmRNA量を公知の方法を用いて測定して間接的にその発現量を比較することにより、正常動物と区別することが可能である。
該非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、例えば、前述のようにして作製したターゲッティングベクターをマウス胚幹細胞またはマウス卵細胞に導入し、導入によりターゲッティングベクターの本発明のDNAが不活性化されたDNA配列が遺伝子相同組換えにより、マウス胚幹細胞またはマウス卵細胞の染色体上の本発明のDNAと入れ換わる相同組換えをさせることにより、本発明のDNAをノックアウトさせることができる。
本発明のDNAがノックアウトされた細胞は、本発明のDNA上またはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析またはターゲッティングベクター上のDNA配列と、ターゲッティングベクターに使用したマウス由来の本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列とをプライマーとしたPCR法による解析で判定することができる。非ヒト哺乳動物胚幹細胞を用いた場合は、遺伝子相同組換えにより、本発明のDNAが不活性化された細胞株をクローニングし、その細胞を適当な時期、例えば、8細胞期の非ヒト哺乳動物胚または胚盤胞に注入し、作製したキメラ胚を偽妊娠させた該非ヒト哺乳動物の子宮に移植する。作出された動物は正常な本発明のDNA座をもつ細胞と人為的に変異した本発明のDNA座をもつ細胞との両者から構成されるキメラ動物である。
該キメラ動物の生殖細胞の一部が変異した本発明のDNA座をもつ場合、このようなキメラ個体と正常個体を交配することにより得られた個体群より、全ての組織が人為的に変異を加えた本発明のDNA座をもつ細胞で構成された個体を、例えば、コートカラーの判定等により選別することにより得られる。このようにして得られた個体は、通常、本発明のポリペプチドのヘテロ発現不全個体であり、本発明のポリペプチドのヘテロ発現不全個体同志を交配し、それらの産仔から本発明のポリペプチドのホモ発現不全個体を得ることができる。
【0090】
卵細胞を使用する場合は、例えば、卵細胞核内にマイクロインジェクション法でDNA溶液を注入することによりターゲッティングベクターを染色体内に導入したトランスジェニック非ヒト哺乳動物を得ることができ、これらのトランスジェニック非ヒト哺乳動物に比べて、遺伝子相同組換えにより本発明のDNA座に変異のあるものを選択することにより得られる。
このようにして本発明のDNAがノックアウトされている個体は、交配により得られた動物個体も該DNAがノックアウトされていることを確認して通常の飼育環境で飼育継代を行なうことができる。
【0091】
さらに、生殖系列の取得および保持についても常法に従えばよい。すなわち、該不活化DNAの保有する雌雄の動物を交配することにより、該不活化DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得しうる。得られたホモザイゴート動物は、母親動物に対して、正常個体1,ホモザイゴート複数になるような状態で飼育することにより効率的に得ることができる。ヘテロザイゴート動物の雌雄を交配することにより、該不活化DNAを有するホモザイゴートおよびヘテロザイゴート動物を繁殖継代する。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を作出する上で、非常に有用である。
また、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のポリペプチドにより誘導され得る種々の生物活性を欠失するため、本発明のポリペプチドの生物活性の不活性化を原因とする疾病のモデルとなり得るので、これらの疾病の原因究明及び治療法の検討に有用である。
【0092】
本明細書および図面において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
【0093】
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Glu :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
【0094】
また、本明細書中で繁用される置換基、保護基および試薬を下記の記号で表記する。
Me :メチル基
Et :エチル基
Bu :ブチル基
Ph :フェニル基
TC :チアゾリジン−4(R)−カルボキサミド基
Tos :p−トルエンスルフォニル
CHO :ホルミル
Bzl :ベンジル
Cl2Bzl :2,6−ジクロロベンジル
Bom :ベンジルオキシメチル
Z :ベンジルオキシカルボニル
Cl−Z :2−クロロベンジルオキシカルボニル
Br−Z :2−ブロモベンジルオキシカルボニル
Boc :t−ブトキシカルボニル
DNP :ジニトロフェノール
Trt :トリチル
Bum :t−ブトキシメチル
Fmoc :N−9−フルオレニルメトキシカルボニル
HOBt :1−ヒドロキシベンズトリアゾール
HOOBt :3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン
HONB :1-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド
DCC :N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
【0095】
本明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
配列番号:1
本発明で用いられるヒト由来の新規Gタンパク質共役型レセプタータンパク質TGR5のアミノ酸配列を示す。
配列番号:2
本発明で用いられるヒト由来の新規Gタンパク質共役型レセプタータンパク質TGR5をコードするcDNAの塩基配列を示す。
配列番号:3
以下の参考例1におけるPCR反応で使用したプライマー1の塩基配列を示す。
配列番号:4
以下の参考例1におけるPCR反応で使用したプライマー2の塩基配列を示す。
配列番号:5
本発明のマウス心臓由来の新規Gタンパク質共役型レセプタータンパク質mTGR5のアミノ酸配列を示す。
配列番号:6
本発明のマウス心臓由来の新規Gタンパク質共役型レセプタータンパク質mTGR5をコードするcDNAの塩基配列を示す。
配列番号:7
本発明のラット心臓由来の新規Gタンパク質共役型レセプタータンパク質rTGR5アミノ酸配列を示す。
配列番号:8
本発明のラット心臓由来の新規Gタンパク質共役型レセプタータンパク質rTGR5をコードするcDNAの塩基配列を示す。
配列番号:9
以下の実施例5におけるPCR反応で使用したプライマー1の塩基配列を示す。
配列番号:10
以下の実施例5におけるPCR反応で使用したプライマー2の塩基配列を示す。
配列番号:11
以下の実施例5におけるPCR反応で使用したプライマー3の塩基配列を示す。
配列番号:12
以下の実施例5におけるPCR反応で使用したプライマー4の塩基配列を示す。
配列番号:13
ウシ型TGR5のDNA配列を示す。
配列番号:14
ウシ型TGR5のアミノ酸配列を示す。
配列番号:15
ウサギ型TGR5のDNA配列を示す。
配列番号:16
ウサギ型TGR5のアミノ酸配列を示す。
配列番号:17
以下の実施例6におけるPCR反応で使用したbFプライマーの塩基配列を示す。
配列番号:18
以下の実施例6におけるPCR反応で使用したbRプライマーの塩基配列を示す。
配列番号:19
以下の実施例7におけるPCR反応で使用したrabbitFプライマーの塩基配列を示す。
配列番号:20
以下の実施例7におけるPCR反応で使用したrabbitRプライマーの塩基配列を示す。
配列番号:21
以下の実施例11におけるIL−1α mRNA発現量の定量に使用したプライマーの塩基配列を示す。
配列番号:22
以下の実施例11におけるIL−1αmRNA発現量の定量に使用したプライマーの塩基配列を示す。
配列番号:23
以下の実施例11におけるIL−1αmRNA発現量の定量に使用したプローブの塩基配列を示す。
配列番号:24
以下の実施例11におけるIL−1β mRNA発現量の定量に使用したプライマーの塩基配列を示す。
配列番号:25
以下の実施例11におけるIL−1βmRNA発現量の定量に使用したプライマーの塩基配列を示す。
配列番号:26
以下の実施例11におけるIL−1βmRNA発現量の定量に使用したプローブの塩基配列を示す。
配列番号:27
以下の実施例11におけるIL−6 mRNA発現量の定量に使用したプライマーの塩基配列を示す。
配列番号:28
以下の実施例11におけるIL−6 mRNA発現量の定量に使用したプライマーの塩基配列を示す。
配列番号:29
以下の実施例11におけるIL−6 mRNA発現量の定量に使用したプローブの塩基配列を示す。
配列番号:30
以下の実施例11におけるIL−8 mRNA発現量の定量に使用したプライマーの塩基配列を示す。
配列番号:31
以下の実施例11におけるIL−8 mRNA発現量の定量に使用したプライマーの塩基配列を示す。
配列番号:32
以下の実施例11におけるIL−8 mRNA発現量の定量に使用したプローブの塩基配列を示す。
配列番号:33
以下の実施例11におけるTNFα mRNA発現量の定量に使用したプライマーの塩基配列を示す。
配列番号:34
以下の実施例11におけるTNFα mRNA発現量の定量に使用したプライマーの塩基配列を示す。
配列番号:35
以下の実施例11におけるTNFα mRNA発現量の定量に使用したプローブの塩基配列を示す。
配列番号:36
ヒト型GPR7リガンド前駆体Hのアミノ酸配列を示す。
配列番号:37
ヒト型GPR7リガンド前駆体HをコードするDNAの塩基配列を示す。
配列番号:38
GPR7のアミノ酸配列を示す。
配列番号:39
GPR7をコードするDNAの塩基配列を示す。
配列番号:40
参考例4でヒト型GPR7リガンド前駆体HをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNAを示す。
配列番号:41
参考例4でヒト型GPR7リガンド前駆体HをコードするcDNAのスクリーニングに使用した合成DNAを示す。
配列番号:42
参考例2で用いたプライマーの塩基配列を示す。
配列番号:43
参考例2で用いたプライマーの塩基配列を示す。
【0096】
以下の参考例1で得られた形質転換体エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)JM109/pCR4−hTGR5は、平成12(2000)年4月3日から茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(旧 通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH))に寄託番号FERM BP−7114として、平成12(2000)年3月23日から大阪府大阪市淀川区十三本町2丁目17番85号(郵便番号532−8686)の財団法人・発酵研究所(IFO)に寄託番号IFO 16410として寄託されている。
以下の実施例5で得られた形質転換体エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)DH5α/pAKKO1.11H−rTGR5は、平成14(2002)年2月7日から茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託番号FERM BP−7877として、平成14(2002)年1月10日から大阪府大阪市淀川区十三本町2丁目17番85号(郵便番号532−8686)の財団法人・発酵研究所(IFO)に寄託番号IFO 16745として寄託されている。
以下の実施例5で得られた形質転換体エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)DH5α/pCR2.1−mTGR5は、平成14(2002)年2月7日から茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託番号FERM BP−7878として、平成14(2002)年1月10日から大阪府大阪市淀川区十三本町2丁目17番85号(郵便番号532−8686)の財団法人・発酵研究所(IFO)に寄託番号IFO 16746として寄託されている。
以下の実施例6で得られた形質転換体エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)JM109/pTAbTGR5−1は、平成14(2002)年2月7日から茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託番号FERM BP−7879として、平成14(2002)年1月17日から大阪府大阪市淀川区十三本町2丁目17番85号(郵便番号532−8686)の財団法人・発酵研究所(IFO)に寄託番号IFO 16747として寄託されている。
以下の実施例7で得られた形質転換体エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)JM109/pTArabbitTGR5−1は、平成14(2002)年2月7日から茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託番号FERM BP−7880として、平成14(2002)年1月17日から大阪府大阪市淀川区十三本町2丁目17番85号(郵便番号532−8686)の財団法人・発酵研究所(IFO)に寄託番号IFO 16748として寄託されている。
後述の参考例4で得られた形質転換体Escherichia coli JM109/pTAhGPR7−1は、Escherichia coli JM109/pTAhGPR7L−1として2001年6月27日から茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託番号FERM BP−7640として、2001年6月19日から大阪府大阪市淀川区十三本町2丁目17番85号(郵便番号532−8686)の財団法人・発酵研究所(IFO)に寄託番号IFO 16644として寄託されている。
【0097】
【実施例】
以下に参考例および実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。なお、大腸菌を用いての遺伝子操作は、モレキュラー・クローニング(Molecular cloning)に記載されている方法に従った。
【0098】
参考例1 ヒト脾臓のGタンパク質共役型レセプタータンパク質をコードするcDNAのクローニングと塩基配列の決定
ヒト脾臓cDNA(Clontech)を鋳型とし、2個のプライマー、プライマー1(配列番号:3)およびプライマー2(配列番号:4)を用いてPCR反応を行った。該反応における反応液の組成は上記cDNAを1/10量鋳型として使用し、Advantage−GC2 Polymerase Mix(Clontech)1/50量、プライマー1(配列番号:3)およびプライマー2(配列番号:4)を各0.5μM、dNTPs200μM、および酵素に添付のバッファーを1/5量、GC Meltを1/5量加え、20μlの液量とした。PCR反応は、94℃・5分の後、94℃・30秒、60℃・30秒、68℃・2分のサイクルを30回繰り返し、最後に68℃・5分の伸長反応を行った。該PCR反応産物をTAクローニングキット(Invitrogen)の処方に従いプラスミドベクターpCR4(Invitrogen)へサブクローニングした。これを大腸菌JM109に導入し、cDNAを持つクローンをアンピシリンを含むLB寒天培地中で選択した。個々のクローンの配列を解析した結果、新規Gタンパク質共役型レセプタータンパク質をコードするcDNA配列(配列番号:2)を得た。このcDNAにより導き出されるアミノ酸配列(配列番号:1)を有する新規Gタンパク質共役型レセプタータンパク質をTGR5と命名した。また配列番号:2で表わされるDNAを含有する形質転換体を大腸菌(Escherichia coli)JM109/pCR4−hTGR5と命名した。
【0099】
実施例1 TGR5を一過性に発現させたHEK293細胞における、コレステロール代謝関連物質による活性の検出
コレステロール代謝関連物質によるTGR5特異的な刺激活性の検出は、CREプロモーターの発現誘導によって産生されるレポーター遺伝子産物(ルシフェラーゼ)の発現量を指標に行った。
HEK293細胞を増殖培地(DMEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium)(GibcoBRL)に10%ウシ胎児血清(GibcoBRL)を添加したもの)に懸濁し、1×105cells/wellの濃度にてコラーゲンでコートされたBlack well 96ウェルプレート(ベクトンディッキンソン社)にまいた。37℃、5%CO2条件下で一晩培養した後、レポーター遺伝子を含むプラスミドであるpCRE−Luc(Clontech)と同時に、公知の方法により動物細胞での発現用ベクターpAKKO−111H(Biochem. Biophys. Acta, Hinuma, S. et al., 1219, 251-259, 1994記載のpAKKO−1.111Hと同一のプラスミドベクター)にTGR5遺伝子を挿入して作製した発現ベクタープラスミド、または、TGR5遺伝子を含まないもとのpAKKO−111Hを用いて細胞のトランスフェクションを以下のとおりに行った。
OPTI−MEM−I(GibcoBRL)とLipofectamineTM 2000 Reagent(GibcoBRL)を24:1にて混合することにより、リポフェクトアミン希釈液を調製した。また、OPTI−MEM−I、TGR5発現ベクタープラスミドまたはもとのベクタープラスミド(240ng/μl)およびpCRE−Luc(240ng/μl)を24:0.9:0.1にて混合することによりDNA希釈液を調製した。リポフェクトアミン希釈液とDNA希釈液を等量混合し、20分間室温で静置することによりDNAとリポフェクトアミンの複合体を形成させた後、上記のHEK293細胞を培養したプレートに25μl添加し、さらに37℃、5%CO2条件下で一晩培養した。
トランスフェクトしたHEK293細胞をアッセイ用培地(DMEMに0.1%ウシ血清アルブミンを添加したもの)にて洗浄した後、アッセイ用培地にて希釈したリトコール酸(和光純薬)およびプロゲステロン(和光純薬)を2×10-5Mとなるよう添加し、37℃、5%CO2条件下で4時間培養した。培養上清を捨てて、ルシフェラーゼ活性測定用の基質であるピッカジーンLT2.0(東洋インキ製造株式会社)を50μl添加し、プレートリーダー(ARVO sxマルチラベルカウンター、Wallac社)を用いてルシフェラーゼの発光量を測定した。
その結果、配列番号:2で表される塩基配列を有するTGR5遺伝子を導入したHEK293細胞特異的に、リトコール酸、プロゲステロンによるルシフェラーゼ活性の上昇が認められた(図6)。
【0100】
実施例2 Gタンパク質共役型レセプタータンパク質発現プラスミドおよびレポータープラスミドの宿主細胞への導入
公知の方法によって作製した各種Gタンパク質共役型レセプタータンパク質cDNA、すなわち甲状腺ホルモン刺激因子レセプター(TRHR)、ニューロメジンUレセプター(FM−3およびTGR−1)、プロラクチン放出因子レセプター(hGR3)、アペリンレセプター(APJ)などを挿入した動物細胞用発現プラスミドを用いて、大腸菌JM109を形質転換し、得られたコロニーを単離・培養後、QIAGEN Plasmid Maxi Kit(キアゲン)を用いてプラスミドの調製を行なった。また、cAMPレスポンスエレメント(CRE)の下流にレポーターとしてルシフェラーゼ遺伝子が連結されたpCRE−Luc(Clontech)のレポータープラスミドを同様にして調製した。
Gタンパク質共役型レセプタータンパク質発現プラスミドおよびレポータープラスミドを導入する宿主細胞としては、HEK293細胞をコラーゲンタイプIでコートした96-well黒色プレート(ベクトンディッキンソン社)に100,000 cells/well、培養液量100μlで播種し、一晩培養した。同じくCHO(dhfr-)細胞をpAKKO-111Hで形質転換したCHO−mock細胞をコスター社の96−well黒色プレートに40,000 cells/well、培養液量100μlで播種し、一晩培養した。いずれの細胞についても、プレートで培養するための培地はDMEM(GibcoBRL社)に10%のウシ胎児血清のみを添加したものを用いた。
各プラスミドを240ng/μlの濃度に希釈し、Gタンパク質共役型レセプタータンパク質の発現プラスミド9μlとレポータープラスミド1μlの割合で240μlのOpti-MEM-I(GibcoBRL社)に添加した。これを、同じく240μlのOpti-MEM-Iに10μlのリポフェクトアミン2000(GibcoBRL社)を添加したものと等量混合して、リポフェクトアミン2000に添付のマニュアル記載の方法に従ってリポソームとプラスミドの複合体を形成させた。また、効率的なスクリーニングの実施のためには、240ng/μlの濃度で3種類のレセプター発現プラスミドを5μlずつ添加し、他の試薬の比率は前出と同じものを調製した。これらを25μl/wellずつHEK293あるいはCHO−mock細胞の培養液に添加し、37℃で一晩培養してプラスミドの導入を行った。CHO−mock細胞については、プラスミド添加後4時間以降に培養液をアッセイバッファー(0.1%のウシ血清アルブミンを添加したDMEM)に交換し、無血清化をおこなった。
【0101】
実施例3 レポーターアッセイによるリガンド活性の検出
HEK293細胞についてはアッセイの1時間前に培養液を実施例2に記載のアッセイバッファーに交換し、プレインキュベーションを行なった。アッセイバッファーにリガンドあるいはリガンド候補化合物を溶解したものを用意し、実施例2で準備したHEK293細胞またはCHO−mock細胞に添加した。また、アッセイバッファーに終濃度2μMのフォルスコリンを添加した条件でのアッセイも同様にして実施した。サンプルを添加後に4時間のインキュベーションを行ない、レセプターを介したリガンドのアゴニスト活性によって惹起される細胞内シグナル伝達に由来するレポーター遺伝子の転写・翻訳の促進あるいは抑制を誘導した。インキュベーション終了後に各ウェルのアッセイバッファーを除去し、ピッカジーンLT2.0(東洋インキ社)発光基質を50μlずつ加えた。細胞が溶解し、基質と充分に混合した後、各ウェルのレポーター遺伝子の発現誘導量に由来する発光量を実施例1記載のプレートリーダーにて測定した。
実施例2および3に記載の方法に従って各種のGタンパク質共役型レセプタータンパク質cDNAを挿入した発現プラスミドを用い、HEK293細胞においてリガンド刺激によるレポーター遺伝子の発現誘導を測定した。レセプターを介して細胞内へシグナルを伝達するGタンパク質αサブユニットの種類としてGsに共役するCRFRについては、フォルスコリン非添加、添加のいずれの条件においてもリガンド添加によるレポーター遺伝子の活性化が検出された。また、抑制性であるGαiに共役するAPJについては、フォルスコリン添加条件において、リガンド添加によるレポーター遺伝子発現の抑制が検出された。また、Gqに共役するレセプターTRHR、FM−3、TGR−1については、フォルスコリン添加条件においてレポーター遺伝子の発現の促進が検出された。GqおよびGiの両方に共役するレセプターhGR3についても、同様にフォルスコリン添加条件においてレポーター遺伝子の発現の促進が検出された(図7)。
【0102】
実施例4 抑制性Gタンパク質αサブユニットGi発現プラスミドを用いたレポーターアッセイ
実施例2に示したGタンパク質レセプター発現プラスミドと同様の方法によって抑制性Gタンパク質αサブユニット(Gi)プラスミドを作製、調製した(ここで、Giついては、動物種を問わない)。これを3μl、レセプター発現プラスミドを7μl、レポータープラスミドを1μlの割合で240μlのOpti-MEM-Iに添加し、その他の条件は実施例2と同様の方法でHEK293あるいはCHO−mock細胞にDNAを導入した。これら3種のプラスミドの混合比は全体の量を11μlとした場合、Giが1から6、好ましくは1から3が適当である。これらを実施例3の方法に従ってアッセイを行いリガンド活性を検出した。
すなわち、Giを用いたTGR5のリトコール酸に対する反応を検出した結果、CHO−mock細胞を用いたGタンパク質レセプターTGR5のアッセイにおいて、GiをTGR5と同時に発現させることにより、リガンド非添加時(リガンド(−))のルシフェラーゼ活性を大幅に低下させることができ、その結果リガンド(リトコール酸、2×10-5M、リガンド(+))による活性の上昇を検出することが可能となった(図8)。
【0103】
実施例5 マウスおよびラット型TGR5タンパク質をコードするcDNAのクローニングと塩基配列の決定
配列番号:9で表されるオリゴDNAをセンス鎖プライマー1として、配列番号:10で表されるオリゴDNAをアンチセンス鎖プライマー2として、各々0.4μM、GC2 DNA Polymerase(CLONTECH社製)0.3μl、5x Buffer 6μl、GC-Melt 6μl、dNTP (TaKaRa社製)0.2 mM、鋳型DNAとしてMarathon-Ready Mouse cDNA library (CLONTECH社製)の心臓cDNA溶液3μl、滅菌水9.9μlからなる混合液30μlを調製し、サーマルサイクラー(GeneAmp PCR system model 9700 (Applied Biosystems社製))を用いて、最初に94℃で20秒間置いた後、94℃で30秒、64℃で30秒、68℃で2分を1サイクルとして5サイクル、続いて94℃で30秒、62℃で30秒、68℃で2分を1サイクルとして5サイクル、続いて94℃で30秒、60℃で30秒、68℃で2分を1サイクルとして35サイクル、最後に68℃で7分伸長反応させるタッチダウンPCRのプログラムでPCR反応を行った。次に、反応終了液の一部をエチジウムブロマイドを含む1.5%アガロースゲルを用いて電気泳動後、UV照射のもと分子量マーカー換算で1kb付近の位置にPCR反応で増幅されたDNAに対応するバンドを確認した。次に塩基配列を決定する為にpCR2.1−TOPO(Invitrogen社製)を用いてTAクローニングし、該プラスミドを大腸菌DH5α株のコンピテントセルに導入した。アンピシリン含有LB寒天培地上で出現するアンピシリン耐性形質転換株のコロニーの中から外来DNA断片が挿入されていたプラスミドを保持していたクローンをコロニーPCRにより選択し、挿入DNAの塩基配列を決定するためにABI PRISM BigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Applied Biosystems社製)を用いたシーケンス反応を製品添付資料の条件にしたがって、サーマルサイクラー(GeneAmp PCR system model 9700 (Applied Biosystems社製))で行った後、該反応試料をDNAシーケンサーABI PRISM 3100 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)で分析した。
その結果、PCR産物から配列番号:6で表される990塩基の塩基配列からなり、配列番号:5で表される新規の329個のアミノ酸、すなわちTGR5に相同性のある構造遺伝子配列を決定できた。配列番号:5を含有する新規Gタンパク質共役型レセプタータンパク質をmTGR5と命名した。さらに、この形質転換体をエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)DH5α/pCR2.1−mTGR5と命名した。
配列番号:11で表されるオリゴDNAをセンス鎖プライマー3として、配列番号:12で表されるオリゴDNAをアンチセンス鎖プライマー4として、各々0.4 μM、Advantage2 DNA Polymerase (CLONTECH社製)0.3μl、10x Buffer 3μl、dNTP (TaKaRa社製)0.2 mM、鋳型DNAとしてMarathon-Ready Rat cDNAlibrary (CLONTECH社製)の心臓cDNA溶液3μl、滅菌水18.9μlからなる混合液30μlを調製し、サーマルサイクラー(GeneAmp PCR system model 9700 (Applied Biosystems社製))を用いて、最初に94℃で20秒間置いた後、94℃で30秒、64℃で30秒、68℃で2分を1サイクルとして5サイクル、続いて94℃で30秒、62℃で30秒、68℃で2分を1サイクルとして5サイクル、続いて94℃で30秒、60℃で30秒、68℃で2分を1サイクルとして35サイクル、最後に68℃で7分伸長反応させるタッチダウンPCRのプログラムでPCR反応を行った。次に、反応終了液の一部をエチジウムブロマイドを含む1.5%アガロースゲルを用いて電気泳動後、UV照射のもと分子量マーカー換算で1kb付近の位置にPCR反応で増幅されたDNAに対応するバンドを確認した。次に塩基配列を決定する為にpCR2.1−TOPO(Invitrogen社製)を用いてTAクローニングし、該プラスミドを大腸菌DH5α株のコンピテントセルに導入した。アンピシリン含有LB寒天培地上で出現するアンピシリン耐性形質転換株のコロニーの中から外来DNA断片が挿入されていたプラスミドを保持していたクローンをコロニーPCRにより選択し、挿入DNAの塩基配列を決定するためにABI PRISM BigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Applied Biosystems社製)を用いたシーケンス反応を製品添付資料の条件にしたがって、サーマルサイクラー(GeneAmp PCR system model 9700 (Applied Biosystems社製))で行った後、該反応試料をDNAシーケンサーABI PRISM 3100 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)で分析した。
その結果、PCR産物から配列番号:8で表される990塩基の塩基配列からなり、配列番号:7で表される新規の329個のアミノ酸、すなわちTGR5に相同性のある構造遺伝子配列を決定できた。配列番号:7を含有する新規Gタンパク質共役型レセプタータンパク質をrTGR5と命名した。
次に、pCR2.1−TOPOに挿入したDNA断片を、プライマー3、プライマー4に付加された制限酵素SalI、SpeIサイトで酵素消化し、切り出されたrTGR5の配列を持つDNA断片を、発現プラスミドpAKKO1.11H(Hinuma, S., Hosoya, M., Ogi., Tanaka, H., Nagai, Y., and Onda, H.(1994)Biochim. Biophys. Acta 1129, 251-259)のSalI、SpeIサイトに挿入し、該プラスミドを大腸菌DH5α株のコンピテントセルに導入した。アンピシリン含有LB寒天培地上で出現するアンピシリン耐性形質転換株のコロニーの中からrTGR5断片が挿入されていたプラスミドを保持していたクローンをコロニーPCRにより選択した。さらに、この形質転換体をエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)DH5α/pAKKO1.11H−rTGR5と命名した。
【0104】
実施例6 ウシ脾臓cDNAからのPCR法によるTGR5タンパク質をコードするcDNAのクローニングと塩基配列の決定の取得
ウシ脾臓cDNAを鋳型として、配列番号:17で表されるプライマーbFおよび配列番号:18で表されるプライマーbRを用いて、PCRによる増幅を行った。
PCRの反応液はcDNA溶液1μl、0.5μl bF(10μM)、0.5μl bR(10μM)、2.5μl添付の10×反応液、2.5μl dNTP(10mM)、0.5μl Advantage2 DNA polymerase(クローンテック社)、17.5μl蒸留水を加えて合計25μlにした。反応液を、Thermal Cycler9600(ABI社)を用いてPCR反応にかけた。PCRの条件は95℃2分の変性の後、98℃10秒、63℃20秒、72℃60秒のサイクルを30回繰り返した。PCR産物の一部を用いて電気泳動で約1000bpのPCR産物の増幅を確認した後、PCR産物をQiagen PCR purification Kit(キアゲン社)を用いて精製し、直接配列決定を行ったところ配列番号:13の配列が得られた。配列番号:13のDNA配列から予測されるアミノ酸配列を配列番号:14に示す。次に、ゲルから回収したPCR産物をTAクローニングキット(Invitrogen社)を用いて大腸菌JM109にサブクローニングし、大腸菌JM109/pTAbTGR5-1を取得した。サブクローニングで得られた大腸菌からプラスミドpTAbTGR5-1をプラスミド抽出機(クラボウ社)を用いて抽出し、挿入断片の塩基配列を決定し、その配列がウシ型TGR5遺伝子であることを確認した。
【0105】
実施例7 ウサギ脾臓cDNAからのPCR法によるTGR5タンパク質をコードするcDNAのクローニングと塩基配列の決定の取得
ウサギ脾臓cDNAを鋳型として、配列番号:19で表されるプライマーrabbitFおよび配列番号:20で表されるプライマーrabbitRを用いて、PCRによる増幅を行った。
PCRの反応液はcDNA溶液1μl、0.5μl rabbitF(10μM)、0.5μl rabbitR(10μM)、2.5μl添付の10×反応液、2.5μl dNTP(10mM)、0.5μl Advantage2 DNA polymerase(クローンテック社)、17.5μl蒸留水を加えて合計25μlにした。反応液を、ThermalCycler9600(ABI社)を用いてPCR反応にかけた。PCRの条件は95℃2分の変性の後、98℃10秒、63℃20秒、72℃60秒のサイクルを30回繰り返した。PCR産物の一部を用いて電気泳動で約1000bpのPCR産物の増幅を確認した後、PCR産物をQiagen PCR purification Kit(キアゲン社)を用いて精製し、直接配列決定を行ったところ配列番号:15で表される塩基配列がえられた。配列番号:15で表されるDNA配列から予測されるアミノ酸配列を配列番号:16で示す。次に、ゲルから回収したPCR産物をTAクローニングキット(Invitrogen社)を用いて大腸菌JM109にサブクローニングし、大腸菌JM109/pTArabbitTGR5-1を取得した。サブクローニングで得られた大腸菌からプラスミドpTArabbitTGR5-1をプラスミド抽出機(クラボウ社)を用いて抽出し、挿入断片の塩基配列を決定し、その配列がウサギ型TGR5遺伝子であることを確認した。
【0106】
実施例8 ヒト、ウサギ、ウシ、マウスおよびラット型TGR5の胆汁酸刺激によるレポーター遺伝子の発現量上昇の検出
実施例1に示したのと同様の方法により、動物細胞での発現用ベクターpAKKO-111Hに、実施例5に示したマウスおよびラット型TGR5遺伝子、実施例6に示したウシ型TGR5遺伝子、および実施例7に示したウサギ型TGR5遺伝子を挿入してそれぞれの遺伝子の発現ベクターを作製した。これらとインサートが挿入されていない元の発現ベクターおよび実施例1に示したヒト型TGR5発現ベクターを実施例4に示した方法に従い、抑制性Gタンパク質αサブユニット(Gi)、レポータープラスミドとともにCHO−Mock細胞に一過性に発現させた。これを実施例3の方法に従い胆汁酸の刺激によるレポータ遺伝子の発現量を検出した。胆汁酸としてはタウロリトコール酸(TCLA)、リトコール酸(LCA)、デオキシコール酸(DCA)、ケノデオキシコール酸(CDCA)、をそれぞれ10μMで使用した。またレポーター遺伝子発現のポジティブコントロールとしてはフォルスコリン(FSK、2μM)を用いた。その結果いずれの動物種由来のTGR5を発現させても、胆汁酸添加区で胆汁酸を添加しない区(Base)より高いルシフェラーゼ活性が検出された(図9)。このことからヒト型TGR5と同様にウサギ、ウシ、マウスおよびラット型TGR5も胆汁酸のレセプターとして作用することが示された。
【0107】
実施例9 ウサギ肺胞マクロファージの貪食活性に対するタウロリトコール酸(TLCA)の抑制作用
ウサギ(NZW、メス、体重2.5−3.0kg前後)から麻酔下にて血清および肺を採取した。PBS(phosphate-buffered saline)を気管より注入して洗浄することにより、肺内の肺胞マクロファージ細胞を含む懸濁液を回収した。得られた細胞をさらにPBSで洗浄後、培地(DMEMに2%FBS、0.1mM非必須アミノ酸、50μg/mlストレプトマイシン、50U/mlペニシリン、50μg/mlゲンタマイシンを添加したもの。いずれもGibcoBRL社)に懸濁し、単核細胞分離液であるFicoll−Paque Plus(アマシャムファルマシア社)上に重層・遠心処理し、赤血球を除いた。単核細胞を培地にて洗浄後、0.25×106/wellの濃度で24ウェルプレートに播種し37℃、5%CO2条件下で一晩培養した。培地を除き、TLCA100μMを加えた培地、あるいはコントロールの培地を0.5ml添加して、さらに16時間培養した。同じウサギより採取した血清50μl、加熱により殺菌処理した酵母懸濁液0.8×108/mlを30μl添加し37℃、5%CO2条件下で40分間培養した。0.1%フクシン液(和光純薬社)を60μl添加した後、細胞をはがして遠心し、懸濁液を顕微鏡にて観察した。フクシンにより酵母は染色されるが肺胞マクロファージにより貪食された酵母は染色されないことを利用して、貪食活性を示したマクロファージの算定を行った。その結果、図10に示すとおり、TLCAを添加した場合において、マクロファージの免疫機能のひとつである貪食活性の著明な低下が認められた。
【0108】
実施例10 ウサギ肺胞マクロファージにおける、リポ多糖(LPS)で誘導された腫瘍壊死因子(TNF)αの分泌に対するTLCAの抑制効果
実施例9の方法で採取したウサギ肺胞マクロファージを0.25×106/wellの濃度に希釈し24ウェルプレートで一晩培養後、LPS刺激で誘導されるTNFα分泌に対する影響を検討した。TLCA50μMを含む培地あるいはコントロール培地0.5mlに交換して1時間培養後、同濃度のTLCA含有培地あるいはコントロール培地にLPS(E.coli O111:B4 和光純薬)を加えたもの(添加時の濃度1ng/ml)0.5mlを添加し、37℃、5%CO2条件下でさらに12時間培養した。培養後、上清を回収し、TNF感受性細胞株L929(理化学研究所)に対する増殖抑制作用を指標にTNFα量を測定した。L929細胞を1.2×104/wellにて96ウェルプレートに播種し37℃、5%CO2条件下で一晩培養後、肺胞マクロファージ培養上清を適当に希釈し、2μg/mlアクチノマイシンD(和光純薬社)存在下で一晩培養した。標準サンプルとしてはヒト組み換え型TNFα(Genzyme社)を使用した。L929細胞の増殖はCell Counting Kit−8(和光純薬社)によって測定した。その結果、図11に示すように、TLCAを添加することにより、顕著なTNFα分泌量の低下が認められた。
【0109】
実施例11 ウサギ肺胞マクロファージの各種サイトカインmRNA発現量に対するタウロリトコール酸(TLCA)の抑制作用
実施例9の方法で採取したウサギ肺胞マクロファージを0.25×106/wellの濃度に希釈し6ウェルプレートで一晩培養後、TLCA100μMを含む培地あるいはコントロール培地1.5mlに交換して1時間培養後、同濃度のTLCA含有培地あるいはコントロール培地にLPS(E.coli O111:B4、和光純薬社)を加えたもの(添加時の濃度1ng/ml)1.5mlを添加し、37℃、5%CO2条件下でさらに2時間培養した。培地を除去後、Isogen(ニッポンジーン社)3mlを加え、マニュアルにしたがい全RNAを調製した。1μgの全RNAを、SuperScriptII逆転写酵素(Gibco BRL社)を用いてマニュアルに従いcDNAを合成し、25ng 全RNA/μlに相当するcDNA溶液を調製した。各種サイトカインのmRNA発現量定量はABI prism 7700 Sequence Detector(ABI社)を用いて行った。各反応には配列番号:21から35で表されるそれぞれのサイトカインに特異的なプライマー、プローブを設計し使用した。PCR反応液はUniversal PCR master mix(ABI社)12.5μl、それぞれのプライマーを各々100μMのものを0.225μlずつ、5μMのプローブを1.25μl、上記で調製したcDNA溶液1μlを加え、全量を蒸留水で25μlとした。それぞれのサンプルは50℃で2分間、95℃で10分間置いた後、95℃で15秒、60℃で1分のサイクルを40回繰り返し定量のための反応を行った。その結果、TNFα、IL−1α、IL−1β、IL−6、IL−8のいずれのサイトカインにおいてもTLCAの添加により明らかに発現量が低下し、ウサギ肺胞マクロファージに対するTLCAによる各種のサイトカインのmRNA発現抑制作用が見出された(図12)。
【0110】
実施例12 TGR5遺伝子導入THP−1細胞の作製
ヒトマクロファージ細胞株THP−1にTGR5遺伝子を導入することによりTGR5高発現細胞を樹立した。まず、定法に従いヒトTGR5のcDNAをpcDNA3.1(Invitrogen社)に組み込んだpcDNA−TGR5を作製した。THP−1を培地(RPMI1640 10%FBS)にて培養し、定法に従い、リポフェクトアミン(GibcoBRL社)を用いてpcDNA−TGR5を導入した。その後、G418(GibcoBRL社)を培地に添加して耐性株を選択し、安定的にTGR5を高発現する細胞株、THP−TGR5を樹立した。
【0111】
実施例13 THP−TGR5における、リポ多糖(LPS)で誘導された腫瘍壊死因子(TNF)αの分泌およびmRNA発現量に対するTLCAの抑制効果実施例12で得たTHP−TGR5あるいはもとのTHP−1細胞を0.5×106/wellの濃度に希釈して10-8Mのホルボールエステル(和光純薬)存在下で24ウェルプレートで一晩培養後、LPS刺激で誘導されるTNFα分泌に対する影響を検討した。TLCA100μMを加えた培地あるいはコントロール培地0.5mlにて1時間培養後、同濃度のTLCA含有培地あるいはコントロール培地にLPSを加えたもの(添加時の濃度50ng/ml)0.5mlを添加し、37℃、5%CO2条件下で24時間培養した。培養後、上清を回収し、実施例10と同じようにTNFα含量をL929の増殖抑制活性により定量した。またTHP−1とTHP−TGR5の全RNAはLPS添加の2時間後に細胞から実施例11と同様の方法で調製した。ヒト型TNFα mRNAの発現量はTaqMan Cytokine Gene Expression plate I(ABI社)を使用して求めた。定量値はTHP−1細胞のLPS、TLCAをともに添加しなかった区値を1とした時の相対値で示した。その結果、図13に示すように、THP−TGR5ではTLCA添加により顕著なTNFα分泌量の低下が認められた、一方、もとのTHP−1では顕著なTNFα分泌抑制作用は見られなかった。またmRNAも同様にTLCA添加による顕著な発現量の低下が認められた。これらのことから、ウサギ肺胞マクロファージで認められたTNFα分泌抑制効果は明らかにTGR5を介したものであることが確認され、生体内においてTGR5がこうした免疫機能の制御に関わることが示された。
【0112】
実施例14 CHO細胞に発現させたTGR5−GFP融合タンパク質のタウロリトコール酸添加による細胞内移行
TGR5のC末端に翻訳のフレーム合わせてオワンクラゲより単離されたGreen Fluorescent Protein(GFP)cDNAをつないだ融合タンパク質を発現させるための発現プラスミドを構築した。その際GFP cDNAにはGFPの発現ベクターpQBI25(宝酒造)から切り出した断片を用いた。TGR5はPCR法によりその終止コドンを制限酵素NheIの認識配列に修正し、ここにGFP断片を連結して、実施例1に記載の発現ベクターpAKKO−111Hに挿入した。このようにして得たTGR5とGFPの融合タンパク質(以下、TGR5-GFP)発現ベクターのプラスミド を以下の方法でCHO-mock細胞にトランスフェクションした。CHO-mock細胞は増殖培地[DMEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium)(GIBCO BRL社)に10%ウシ胎児血清(GIBCO BRL社)を添加したもの]に懸濁し、0.6×105cells/チャンバーの濃度にてチェンバー数4つのLab−TekIIカバーグラスチェンバー(Nalgen Nunc社)にまき、37℃、5%CO2条件下で一晩培養した後にトランスフェクションした。トランスフェクションにはLipofectamineTM 2000 Reagent(GIBCO BRL社)を用いた。まずLipofectamineTM 2000 Reagent 2μlとOPTI−MEM−I(GIBCO BRL社)50μlを混合し、20分間室温で静置することによりDNAとリポフェクトアミンの複合体を形成させた後、上記のCHO細胞を培養したチェンバーに100μl添加し、さらに37℃、5%CO2条件下で一晩培養した。培地を共焦点顕微鏡観察用培地[Hanks' Balanced Salt Solution(GIBCO BRL社)に0.1%ウシ アルブミン(Essentially Fatty Acid Free、GIBCO BRL社)を懸濁したもの]に置き換え、共焦点顕微鏡(ライカ社)でGFPの蛍光像を観察した。その際、GFPの励起は488nmで行った。
その結果TGR5−GFP融合タンパク質は細胞膜に観察された(図14)。この細胞にタウロリトコール酸を10-5Mとなるように培地に添加30分後には、GFPの蛍光が細胞膜ではなく、細胞質に移動していることが見出された(図15)。このことはTGR5が細胞膜に発現するGタンパク質共役型のレセプターであるとともに、TGR5がタウロリトコール酸に反応して細胞質へ移行、すなわちインタナリゼーションしたことを示していた。
【0113】
実施例15 タウロリトコール酸添加によるTGR5発現CHO細胞でのMAPキナーゼ活性化
実施例1で作製したTGR5発現ベクターを用いて公知の方法で作製した安定的なTGR5発現CHO(CHO−TGR5)またはCHO−mock細胞を3×105/wellの濃度で6ウェルプレートに撒いて、血清低濃度培地(核酸不含MEMα培地に0.5%の透析ウシ胎児血清を添加したもの)にて一晩培養し、さらに無血清培地(核酸不含MEMα培地に0.1%ウシ血清アルブミンを添加したもの)に交換して一晩培養した。新しい無血清培地に交換して3時間培養後、2μMのタウロリトコール酸(TLCA)を添加した。0−20分インキュベーションしたのち、サンプルバッファー(TEFCO社)で細胞を溶解・抽出しSDS−PAGEによって分離を行った。その後PhosphoPlus p44/42 MAP kinase(Thr202/Tyr204)Antibody Kit(Cell Signaling Technology, Inc)を用いたウエスタンブロッテイングを行った。その結果、図16に示す通り、TGR5発現CHO細胞でのみ、TLCA添加後5分をピークにMAPキナーゼのリン酸化によって示される当該タンパク質の活性化が起こることが分かった。
【0114】
実施例16 TGR5発現CHO細胞における各種胆汁酸のcAMP産生上昇活性
CHO−TGR5を2×104/wellの濃度で96ウェルプレートに撒いて一晩培養後、cAMP産生量の測定に用いた。アッセイ用バッファー(DMEMに0.1%ウシ血清アルブミン、0.2mM 3-Isobutyl-1-methylxanthine, IBMXを添加したもの)で細胞を2回洗浄し、30分プレインキュベーションした。細胞を2回洗浄した後、アッセイ用バッファーに希釈したサンプルを細胞に添加して20分間インキュベーションした。培養上清を捨てて、cAMP Screen System(ABI)によってcAMP産生量を測定した。ポジティブコントロールとして、リトコール酸(LCA)10μMを用いた。cAMP産生量はポジティブコントロールを100%とした場合の%値で表した。その結果、図17に示す通りタウロリトコール酸(TLCA)、リトコール酸(LCA)、デオキシコール酸(DCA)、ケノデオキシコール酸(CDCA)、コール酸(CA)の順で濃度依存的なcAMP産生の上昇が観察された。また、2μMの濃度でその他の胆汁酸やコレステロール代謝化合物などによるCHO−TGR5におけるcAMP産生上昇活性を比較し、その結果を図18に示した。LCA、DCA、CDCA、CAのそれぞれにおいて、タウリン抱合体(T)、グリシン抱合体(G)、非抱合体(F)のいずれもcAMP産生上昇活性を有することが分かった。
【0115】
実施例17 ヒトTGR5 mRNA発現分布解析
mRNAの発現量の定量にはABI PRISM 7700 SequenceDetector(アプライドバイオシステムズ社)を用いた。発現量の定量に用いるプライマーとプローブは、ヒト型TGR5の塩基配列(配列番号:2)をもとにABI PRISM 7700 SequenceDetector専用のソフトウエアPrimerExpress(アプライドバイオシステムズ社)を利用してデザインした。鋳型となるcDNAは、ヒト各種組織由来のpolyA+RNA(クロンテック社)1μgからランダムプライマーを用いて42℃で合成した。逆転写反応にはSuperScriptII逆転写酵素(GIBCO BRL社)を用い、添付のマニュアルに従って反応を行い、反応終了後エタノール沈殿して100μlに溶解した。また分画したヒト血球由来のcDNAとしてはMultiple Tissue cDNA(MYTCTM)panels Human Blood Fractions (クロンテック社)を使用した。ABI PRISM 7700 SequenceDetectorの反応液はTaqMan Universal PCR Master Mix(アプライドバイオシステムズ社)のマニュアルにしたがい、マスターミックスを12.5μl、プライマーを0.9μM、プローブを0.25μM、各サンプルのcDNA溶液を1μlで混ぜ合わせ、蒸留水で25μlとして調製した。ABI PRISM 7700 SequenceDetectorでの反応は、50℃で2分、95℃で10分の後、95℃ 15秒、60℃ 1分のサイクルを40回繰り返して行った。
ヒト各種組織でのTGR5 mRNAの発現分布を図19に示す。胎盤、脾臓、肺など免疫に関与する組織での高発現が見出された。またヒト血球でのTGR5 mRNAの発現量を図20に示す。CD14を発現している血球、すなわち単球・マクロファージでの高発現が見出された。
【0116】
実施例18 ウサギTGR5 mRNA発現分布解析
実施例17と同様の方法でウサギ型TGR5 mRNAの発現量を求めた。用いたプライマーとプローブはウサギTGR5(配列番号:15)をもとにデザインした。ウサギの各種組織由来の全RNAは、北山ラベス社より購入したNZW雌性 体重2.5−3.0kg前後の個体より各組織を取得し、Isogen(ニッポンジーン社)を用い、付属のマニュアルにしたがって調製した。cDNAは調製した全RNA 1μgから実施例17と同様の方法で合成した。ただし逆転写反応後は40μlに溶解した。
ウサギ型TGR5 mRNAの発現は図21に示したように、免疫に関与する脾臓、肺胞マクロファージや胸腺で高発現していた。
【0117】
実施例19 TLCAによるウサギ肺胞マクロファージのcAMP産生上昇
実施例9の方法で調製したウサギ肺胞マクロファージを培地(DMEMに2%FBS、0.1mM非必須アミノ酸、50μg/mlストレプトマイシン、50U/mlペニシリン、50μg/mlゲンタマイシンを添加したもの)に懸濁し2×105/wellの濃度で96ウェルプレートに撒き一晩培養した。細胞をDMEMに0.1% BSA、1mM IBMXを加えた培地で2回洗浄した後、同じ培地に希釈したTLCA 200μMあるいは培地を添加して4分間インキュベーションした。cAMP Screen System(ABI)によってcAMP産生量を測定した結果、図22に示す通りTLCA添加によりcAMP産生量の上昇が認められた。
【0118】
実施例20 ウサギ肺胞マクロファージの貪食活性におよぼす各種胆汁酸の抑制効果
実施例9の方法に従い、ウサギ肺胞マクロファージを調製し、各種胆汁酸による貪食能抑制効果を検討した。その結果、図23に示すとおり、TLCAの他、GLCA、LCAを100μMにて添加した場合において、マクロファージの免疫機能のひとつである貪食活性の著明な低下が認められた。
【0119】
実施例21 ウサギ肺胞マクロファージからのTNFα分泌に対する胆汁酸の抑制効果
実施例9の方法で調製したウサギ肺胞マクロファージを培地(DMEMに2%FBS、0.1mM非必須アミノ酸、50μg/mlストレプトマイシン、50U/mlペニシリン、50μg/mlゲンタマイシンを添加したもの)に懸濁し0.25×106/wellの濃度で24ウェルプレートに撒き一晩培養した。同じ培地を用いて胆汁酸を希釈してグラフに表示した濃度にて肺胞マクロファージに添加して1時間培養した。さらに、同じ濃度の胆汁酸サンプルにリポ多糖(LPS、E.coli O111:B4 和光純薬)を添加したものを追加して加え、12時間培養した。LPSの濃度は1ng/mlにて加えた。培養後、培養上清を回収し、実施例10と同様に上清中のTNFαを定量した。その結果、図24に示す通り、TGR5にアゴニスト活性を示す胆汁酸の添加により濃度依存的にTNFα分泌量の抑制活性が認められた。
【0120】
実施例22 TGR5遺伝子を導入したTHP−1細胞におけるcAMP産生上昇
THP−1あるいは実施例12で得たTGR5高発現細胞株THP−TGR5をアッセイ用培地(DMEMに0.1% BSAと1mM IBMXを添加したもの)で洗浄後、1×105/wellにて96ウェルプレートに撒いた。上記アッセイ用培地にて希釈した胆汁酸を添加して20分間インキュベーションした。その後cAMP Screen System(ABI)によってcAMP産生量を測定した結果、図25に示す通りTHP−TGR5においてTLCA、LCA、DCA添加によるcAMP産生量の上昇が認められた。一方THP−1ではTLCAによるcAMP産生上昇は認められないことから、これらの胆汁酸によるcAMP上昇はTGR5を介した反応であることが確かめられた。
【0121】
実施例23 LPSで刺激されたTHP−TGR5からの腫瘍壊死因子(TNF)α分泌に対する各種胆汁酸の抑制効果
実施例13と同様にTHP−TGR5あるいはTHP−1細胞を処理し、LPSで刺激されたTNFα分泌に対する各種胆汁酸の抑制効果を検討した。LPS刺激は12時間とし、培養上清を回収後、実施例13と同じく、バイオアッセイによるTNFα含有量の測定を行った。その結果、図26に示す通り、THP−TGR5では胆汁酸の濃度依存性にTNFα分泌量の低下が認められた。一方、THP−1では顕著なTNFα分泌抑制作用は見られなかった(図27)。これらのことから、ウサギ肺胞マクロファージで認められたTNFα分泌抑制効果は明らかにTGR5を介したものであることが確認され、生体内においてTGR5がこうした免疫機能の制御に関わることが示された。
【0122】
参考例1 ヒト染色体DNAを用いたPCR法によるヒトGPR7 DNAの増幅
ヒト染色体DNAを鋳型として、2種の合成プライマー(配列番号:42および配列番号:43)を用いたPCR法によるDNA増幅を行なった。合成プライマーはレセプタータンパク質に翻訳される領域の遺伝子が増幅されるように構築したが、その際に遺伝子の5’側に制限酵素ClaIの認識する塩基配列が付加され、3’側に制限酵素SpeIの認識する塩基配列が付加されるように、5’側および3’側にそれぞれの制限酵素の認識配列を付加した。反応液の組成は、ヒト染色体DNA(タカラ)0.5μg、合成DNAプライマー各1μM、0.8 mM dNTPs、1 mM MgCl2、KODポリメラーゼ(トーヨーボー)1μlおよび酵素に付属のバッファーで、総反応量は50μlとした。増幅のためのサイクルはサーマルサイクラー(タカラ)を用い、94℃・60秒の加熱の後、98℃・15秒、65℃・2秒、74℃・30秒のサイクルを35回繰り返した。増幅産物の確認は、0.8%アガロースゲル電気泳動の後、エチジウムブロマイド染色によって行なった。
【0123】
参考例2 PCR産物のプラスミドベクターへのサブクローニングおよび挿入DNA部分の塩基配列の解読による増幅DNA配列の確認
参考例1で行なったPCR反応液を0.8%の低融点アガロースゲル電気泳動により分離し、バンドの部分をかみそりで切り出した後、細片化、フェノール抽出、フェノール・クロロホルム抽出、エタノール沈殿の操作を行なってDNAを回収した。pCR-ScriptTM Amp SK(+)クローニングキット(ストラタジーン)の処方に従い、回収したDNAをプラスミドベクターpCR-Script Amp SK(+)へサブクローニングした。これをエシェリヒア・コリ(Escherichia coli) DH5αcompetent cell(トーヨーボー)に導入して形質転換した後、DNA挿入断片を持つクローンをアンピシリン、IPTGおよびX−galを含むLB寒天培地で選択し、白色を呈するクローンのみを滅菌したつま楊枝を用いて分離し、形質転換体E. coli DH5α/GPR7を得た。個々のクローンをアンピシリンを含むLB培地で一晩培養し、QIAwell 8 Plasmid Kit (キアゲン)を用いてプラスミドDNAを調製した。調製したDNAの一部に対して制限酵素ClaIおよびSpeIによる切断を行ない、挿入されているレセプターDNA断片の大きさを確認した。塩基配列の決定のための反応はDyeDeoxyTerminator Cycle Sequence Kit (Applied Biosystems社)を用いて行ない、蛍光式自動シーケンサーを用いて解読した(配列番号:39)。配列番号:39で表わされる塩基配列を有するDNAを保持するpCR-Script Amp SK(+)プラスミドを、pCR-ScriptヒトGPR7と命名した。配列番号:39で表わされる塩基配列を有するDNAがコードするヒトGPR7のアミノ酸配列を配列番号:38に示した。ここで配列を決定したヒトGPR7のDNA配列はO’Dowdらの報告(O'Dowd, B. F. et al.、Genomics、28巻、84-91頁、1995年)にあるDNA配列とは2塩基が異なっていた。これらは配列番号:39の893番目および894番目に当たり、O’Dowdらの報告ではそれぞれCおよびGであるが、本参考例ではGおよびCであった。これにより、翻訳されるアミノ酸配列において配列番号:38の296番目のアミノ酸が、O’Dowdらの報告のThrが本実施例ではSerとなる。
【0124】
参考例3 ヒト全脳cDNAからのPCR法によるGPR7リガンド前駆体遺伝子の取得と発現プラスミドの構築
クローンテック社より購入したヒト全脳cDNAを鋳型として、以下の2種類の合成DNAを用いて、PCRによる増幅を行った。
GSF1: 5'-GTCGACATGGCCCGGTCCGCGACACTGGCGGCC-3'(配列番号:40)
GSR2: 5'-GCTAGCAGCGGTGCCAGGAGAGGTCCGGGCTCA-3'(配列番号:41)
PCRの反応液はcDNA溶液1μl、0.5μl GSF1(10 μM)、0.5μl GSR2(10μM)、2.5μl添付の10×反応液、2.5μl dNTP(10mM)、0.5μl KlenTaq(クローンテック)、17.5μl大塚蒸留水を加えて合計25μlにした。反応液を、ThermalCycler9600を用いてPCR反応にかけた。PCRの条件は95℃2分の変性の後、98℃10秒、60℃20、72℃20秒のサイクルを35回繰り返した。PCR産物の一部を用いて電気泳動で約400bpのPCR産物の増幅を確認した後、PCR産物をQIAGEN PCR purification Kitを用いて精製し、直接配列決定を行ったところ図28(配列番号:37)で示す配列がえられた。図28のDNA配列から予測されるアミノ酸配列は図29(配列番号:36)に示すものであった。次に、ゲルから回収したPCR産物をTAクローニングキット(Invitrogen社)を用いて大腸菌JM109にサブクローニングし、大腸菌JM109/pTAhGPR7-1を取得した。サブクローニングで得られた大腸菌からプラスミドpTAhGPR7-1をプラスミド抽出機(クラボウ社)を用いて抽出し、挿入断片の塩基配列を決定し、その配列が図28と同じヒト型GPR7リガンドcDNAであることを確認した。次にそのプラスミドから制限酵素SalIおよびNheIによって消化後約0.4kbのヒト型GPR7リガンドcDNA断片を得た。さらに、動物細胞用の発現ベクターであるpAKKO-111Hはマルチクローニングサイト部分の制限酵素サイトSalIおよびNheIによって消化後、電気泳動を行い、ベクター部分を回収した。以上の操作によって調製したヒト型GPR7リガンドcDNA断片および発現ベクターをライゲーションによって連結し、大腸菌JM109を形質転換してE.coli JM109/pAK-S64を得た。
形質転換体E.coli JM109/pAK-S64を培養し、プラスミドpAK-S64のDNAを大量に調製した。
【0125】
参考例4 GPR7発現プラスミドおよびレポータープラスミドのチャイニーズハムスターオバリー(CHO)細胞での一過的な発現
参考例3で得たヒト型GPR7 DNAを、公知の方法により動物細胞用発現プラスミドpAKKO-111Hに挿入したプラスミドを用いて大腸菌JM109を形質転換した。得られたコロニーを単離・培養後、QIAGEN Plasmid Maxi Kit(キアゲン社)を用いてGPR7発現プラスミドDNAの調製を行なった。また、cAMPレスポンスエレメント(CRE)の下流にレポーターとしてルシフェラーゼ遺伝子が連結されたpCRE-Luc(クロンテック社)のプラスミドDNAを同様の方法で調製した。
GPR7発現プラスミドおよびpCRE-Lucはレセプター遺伝子を挿入していない発現ベクターを導入したCHO細胞に一過性に発現させた。CHO細胞は96−ウェルプレート(コーニングコースター社)に40,000 細胞/ウェル、培養液量100μlで播種し、37℃で一晩培養した。プレート上での培養にはDMEM(Dulbecco's modified Eagle's medium, GibcoBRL社)に10%のウシ胎児血清のみを添加した培地を用いた。
各プラスミドは240ng/μlの濃度に希釈し、GPR7の発現プラスミド9μlとpCRE-Luc 1μlの割合で240μlのOpti-MEM-I(GibcoBRL社)に添加した。これを、同じく240μlのOpti-MEM-Iに10μlのリポフェクトアミン2000(GibcoBRL社)を添加したものと等量混合して、リポフェクトアミン2000に添付のマニュアル記載の方法に従ってリポソームとプラスミドDNAの複合体を形成させた。これを25μl/wellずつCHO細胞の培養液に添加し、その4時間後に培養液をアッセイバッファー(0.1%のウシ血清アルブミンを添加したDMEM)に交換して無血清化し、37℃で一晩培養した。
【0126】
参考例5 リガンド遺伝子のCHO細胞での発現
参考例4で作製したヒト型リガンドcDNAを挿入した動物細胞用発現プラスミドpAK-S64を参考例5と同様の方法でCHO細胞に一過性に発現させた。ただし細胞は6-ウェルプレート(ファルコン社)に600,000細胞/ウェルで播種し、一晩培養の後、リガンド遺伝子プラスミドを導入した。240ng/μlの濃度に希釈したプラスミドを10 μlと240 μlのOpti-MEM-Iに添加し、これを、同じく240 μlのOpti-MEM-Iに10 μlのリポフェクトアミン2000を添加したものと等量混合して、リポフェクトアミン2000に添付のマニュアル記載の方法に従ってリポソームとプラスミドDNAの複合体を形成させた。これを500μl/ウェルずつCHO細胞の培養液に添加し、その4時間後に培養液をアッセイバッファーに交換し、無血清化をおこなった。培地交換の18時間後に各ウェルの培地を回収しリガンドペプチドを含むCHO細胞培養上清を得た。
【0127】
実施例24 レポーターアッセイによるリガンド活性の検出
参考例4の方法に従いGPR7を一過性に発現させたCHO細胞の培養液に、参考例5で調製したpAK-S64発現培養上清および終濃度2 μMとなるようにホルスコリンを添加した。またリガンド遺伝子を挿入していない空の発現ベクター(pAKKO-111H)を参考例5の方法で一過性に発現させたCHO細胞の培養上清も同様に添加した。その際発現上清はアッセイバッファーにて2倍、4倍、8倍、16倍に希釈した。上清を添加してから4時間、37℃でインキュベーションを行ない、レセプターを介したリガンドのアゴニスト活性によって惹起される細胞内シグナル伝達に由来するレポーター(ルシフェラーゼ)遺伝子の転写・翻訳の促進あるいは抑制を誘導した。インキュベーション終了後に各ウェルのアッセイバッファーを除去し、PicaGene LT2.0 (東洋インキ社)発光基質を50μlずつ加えた。細胞が溶解し、基質と充分に混合した後、各ウェルのレポーター遺伝子の発現誘導量に由来する発光量をプレートリーダー(ARVOsxマルチラベルカウンター、PerkinElmer社)を用いて測定した。その結果、pAK-S64の培養上清を添加した際にのみレポーター遺伝子の発現抑制がルシフェラーゼ活性の低下として検出された(図30)。さらに、この抑制の程度はpAK-S64の培養上清の濃度依存的であった。このことはpAK-S64に挿入されたプラスミドによって発現した産物が、GPR7を介した細胞内のシグナルを伝達した、すなわちGPR7のリガンドとして作用したことを示している。
【0128】
【発明の効果】
本発明のスクリーニング方法/キットを用いることにより、新規Gタンパク質共役型レセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩とリガンドであるコレステロール代謝関連物質との結合性を変化させる化合物またはその塩が得られ、該化合物またはその塩は、中枢疾患(例えば、アルツハイマー病、痴呆、摂食障害など)、炎症性疾患(例えば、アレルギー、喘息、リュウマチなど)、循環器疾患(例えば、高血圧症、心肥大、狭心症、動脈硬化症等)、癌(例えば、非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌等)、糖尿病、免疫系疾患(例えば、自己免疫疾患、免疫不全、白血病等)、肝臓・胆のう疾患(例えば、肝硬変、肝炎、肝不全、胆汁うっ滞症、結石等)、消化管疾患(例えば、潰瘍、腸炎、吸収不良等)、肥満などの予防および/または治療等の医薬等として用いることができる。
本発明の、リガンドが決定されていないレセプタータンパク質のリガンドの決定方法では、各種の細胞系が使用できるため簡便であり、かつ短時間で測定等を実施することができる。
【0129】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】参考例1で得られたTGR5をコードするcDNAの塩基配列およびそれから推定されるアミノ酸配列(一文字表記)を示す。
【図2】参考例1で得られたTGR5をコードするcDNAの塩基配列およびそれから推定されるアミノ酸配列(一文字表記)を示す(図1に続く)。
【図3】参考例1で得られたTGR5をコードするcDNAの塩基配列およびそれから推定されるアミノ酸配列(一文字表記)を示す(図2に続く)。
【図4】参考例1で得られたTGR5をコードするcDNAの塩基配列およびそれから推定されるアミノ酸配列(一文字表記)を示す(図3に続く)。
【図5】TGR5の疎水性プロット図である。
【図6】TGR5発現ベクターを導入したHEK293細胞(A)およびもとのベクターのみを導入したHEK293細胞(B)における、コレステロール代謝関連物質による活性の検出(n=2)の結果を示す。
【図7】HEK293細胞におけるリガンド刺激に対するレポーター遺伝子の発現誘導の結果を示す。
【図8】Giを用いたTGR5のリトコール酸に対する反応の結果を示す。
【図9】ヒト(B)、ウサギ(C)、ウシ(D)、マウス(E)およびラット(F)型TGR5の胆汁酸刺激によるレポーター遺伝子の発現量上昇。胆汁酸はすべて10μMとなるように培地に添加した。Aはコントロール(プラスミドのみ)を示す。
【図10】ウサギ肺胞マクロファージの貪食活性に対するTLCA(100μM)の抑制効果。n=3の平均値。**,p<0.01で有意。
【図11】ウサギ肺胞マクロファージにおける、リポ多糖(LPS)で誘導された腫瘍壊死因子(TNF)αの分泌に対するTLCA(50μM)の抑制効果。n=3の平均値。**,p<0.01で有意。
【図12】ウサギ肺胞マクロファージに対するTLCAによる各種のサイトカインのmRNA発現抑制作用を示す。A:TNFα;B:IL−1α;C:IL−1β;D:IL−6;E:IL−8のサイトカインの場合を表す。
【図13】THP−TGR5における、リポ多糖(LPS)で誘導された腫瘍壊死因子(TNF)αの分泌およびmRNA発現量に対するTLCA(100μM)の抑制効果。分泌量:n=3の平均値。**,p<0.01で有意。mRNA発現量:n=2の平均値。
【図14】CHO細胞に発現させたTGR5−GFP融合タンパク質の局在を示す。図中の白線は4μmを示す。
【図15】TGR5−GFPを発現させたCHO細胞にTLCAを添加して30分後の融合タンパク質の局在を示す。図中の白線は4μmを示す。
【図16】TLCAによるCHO−TGR5でのMAPキナーゼ活性化の検出を表す。
【図17】CHO−TGR5におけるTLCA、LCA、DCA、CDCA、CAのcAMP産生上昇活性を表す。n=3の平均値。グラフ中の構造式は胆汁酸を示す。
【図18】各種胆汁酸関連化合物(2μM)によるCHO−TGR5におけるcAMP産生上昇活性の比較を示す。n=3の平均値。TTNPBは(E)−[(テトラヒドロテトラメチルナフタレニル)プロピル]ベンゾイックアシッドの略称を表す。
【図19】ヒト各組織でのTGR5 mRNA発現分布を示す。
【図20】ヒト血球でのTGR5 mRNA発現分布を示す。
【図21】ウサギTGR5 mRNAの発現分布を示す。
【図22】TLCAによるウサギ肺胞マクロファージのcAMP産生上昇を示す。n=3の平均値。**,p<0.01で有意。
【図23】ウサギ肺胞マクロファージの貪食活性におよぼす各種胆汁酸の抑制効果を表す。n=3の平均値。**,p<0.01で有意。
【図24】ウサギ肺胞マクロファージからのTNFα分泌に対する胆汁酸の抑制効果を表す。n=3の平均値。**,p<0.01で有意。
【図25】胆汁酸添加によるTHP−TGR5細胞でのcAMP産生上昇を示す。n=3の平均値。**,p<0.01で有意。
【図26】LPSで刺激されたTHP−TGR5からの腫瘍壊死因子(TNF)α分泌に対する各種胆汁酸の抑制効果を表す。n=3の平均値。**,p<0.01で有意。
【図27】LPSで刺激されたTHP−1からの腫瘍壊死因子(TNF)α分泌に対する各種胆汁酸の影響を表す。n=3の平均値。
【図28】ヒト型GPR7リガンド前駆体HのDNA配列を示す。
【図29】ヒト型GPR7リガンド前駆体Hのアミノ酸配列を示す。
【図30】リガンド発現ベクターpAK-S64および空の発現ベクター(pAKKO-111H)を発現させたCHO細胞の培養上清を、GPR7 cDNAを挿入した発現プラスミドを一過性に発現させたCHO細胞の培地にホルスコリン(FSK)とともに添加し、リガンド刺激によるルシフェラーゼ活性の抑制を検出した結果を示す。

Claims (2)

  1. (1)配列番号:1で表されるアミノ酸配列含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質または該レセプタータンパク質の部分ペプチドまたはその塩および(2)コレステロール代謝関連物質を用いることを特徴とする該レセプタータンパク質またはその塩とコレステロール代謝関連物質との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法。
  2. (1)配列番号:1で表されるアミノ酸配列含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質または該レセプタータンパク質の部分ペプチドまたはその塩および(2)コレステロール代謝関連物質を含有することを特徴とする該レセプタータンパク質またはその塩とコレステロール代謝関連物質との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
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