JP4170295B2 - エレベータの制動装置 - Google Patents
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Description
そこで、本発明では、可動するシューが片側だけで済み、部品点数をあまり増加させずに上方向の異常増速時にも作動する制動装置を得ることを目的とする。
発明の概要
この発明のエレベータの制動装置は、エレベータかごガイドレールに対向してエレベータかごに固着され、ガイドレールに向かって上方が狭まるシュー押圧面を有するシュー収納機構と、このシュー収納機構に収納され、ガイドレールに対向する制動面とシュー押圧面に対向する背面とを有し、制動面にはガイドレールに向かって下方が狭まる底面を有する収納溝が形成された第一のシューと、第一のシューの収納溝に収納され、ガイドレールに対向する制動面と収納溝の底面に対向する背面とを有する第二のシューとを備えたものであり、調速機ロープと連動するレバーにより、エレベータかごが下方向に異常増速した場合に第一のシューを上向きに駆動し、エレベータかごが上方向に異常増速した場合に第二のシューを下向きに駆動して、第一のシュー、第二のシューそれぞれに制動作用をさせるようにしたものである。
そして、第一のシューの収納溝の一方の側面に収納溝の底面の傾斜方向に沿って形成された長穴とレバーの一端に形成された長穴とに挿通されるとともに、第二のシューの一方の側面に固着されたピンを備え、ピンを介して第一のシュー及び第二のシューを駆動するようにしたものである。
また、レバーは、長手状に形成されたもので、レバーの一端に有する長穴は長手方向に沿って形成され、レバーの他端を支点として回動可能とされ、この支点より長穴側に調速機ロープが取り付けられたものである。
また、シュー収納機構は、第一のシューの下向きの移動を抑制する係止面を備え、第一のシューは、エレベータかごの平常昇降時においては、この係止面上に載置されているものである。
以上のような発明によれば、片側のシューのみを可動させる構造で、あまり部品点数を増加させずに、且つ構造を複雑にすることなく、従来からの下方向の異常増速時のみでなく、上方向の異常増速時にも作動する制動装置を得ることができる。
図2は、この実施の形態1にかかるエレベータの制動装置の可動側のシューの形状を示す図である。
図3は、この実施の形態1にかかるエレベータかごの下方向の異常増速時におけるエレベータの制動装置の作動を説明するためのエレベータかごの制動装置部分の側面図である。
図4は、この実施の形態1にかかるエレベータかごの上方向の異常増速時におけるエレベータの制動装置の作動を説明するためのエレベータかごの制動装置部分の側面図である。
図5は、この実施の形態2にかかるエレベータの制動装置の可動側のシューの形状を示す図である。
実施の形態1.
図1は、この実施の形態1にかかるエレベータかごが平常昇降する場合におけるエレベータの制動装置の要部を説明するためのエレベータかごの制動装置部分の側面図である。図2は、この実施の形態1にかかるエレベータの制動装置の可動側のシューの形状を示す図である。図2において、(A)は、エレベータかごが平常昇降されている状態、および制動装置が下方向の異常増速時に作動した状態におけるシューの位置関係を示す図であり、左側の図がシューを制動面側から見た立面図、右側の図がシューの側面図である。(B)は、制動装置が上方向の異常増速時に作動した状態におけるシューの位置関係を示す側面図である。
この実施の形態1にかかるエレベータの制動装置は、エレベータが機器の故障や主索の切断等の何らかの原因によって定格速度を超えて過速を続けた場合に、エレベータを停止させる目的で作動する非常止め装置として構成されている。
図1より、エレベータかご1は、一対のエレベータかごガイドレール3により案内されてエレベータの昇降路内を昇降する(図1、およびそれ以降の図では、かご1の側面を一方から見た側面図であるため、ガイドレール3は一方のみしか図示されていないが、実際には、図示されていない反対側のかご1側面に対応してもう一方のガイドレール3が設けられている)。また、エレベータかご1には、かご室を支持するための強度部材であるかご枠2が設置されている。
次に、シュー収納機構10は、一対のエレベータかごガイドレール3に対向して、エレベータかご1の下部のかご枠2に固着されている。ここで、図1(およびそれ以降の図)においては、片側のシュー収納機構10のみしか図示していないが、実際には一対のガイドレール3のそれぞれに対応して、かご1両側面のかご枠2のそれぞれに一対で設けられている。シュー収納機構10は、複数のシューやバネ等の構成物を収納するケースの役割をするくわえ金11を有する。くわえ金11には、ガイドレール3を間に挟むように互いに対向し合う可動側および受動側のシューが収納されている。
片側の可動側のシューは、第一のシュー12と第二のシュー13とで構成されている。ここで、図2を用いて、第一のシュー12および第二のシュー13の形状について詳述する。くさび状の外形を有する第一のシュー12は、ガイドレール3に対向する制動面12aを有し、制動面12aに対する背面12bは、ガイドレール3に向かって上方が狭まるように傾斜されている。この制動面12aには第二のシュー13を収納するための収納溝17が形成されており、収納溝17の底面18は、背面12bとは逆にガイドレール3に向かって下方が狭まるように傾斜されている。また、第一のシュー12の収納溝17の一方の側面には、収納溝17の底面18と同じ傾斜方向に沿って長穴12cが形成されている。一方、第一のシュー12と同様にくさび状の外形を有する第二のシュー13は、第一のシュー12の収納溝17に収納され、ガイドレール3に対向する制動面13aを有し、制動面13aの背面13bは第一のシュー12の収納溝17の底面18と対向しており、同じ傾斜角度を有する。言い換えれば、前述の第一のシュー12は、制動面12aの背面12bと収納溝17の底面18という互いに逆向きの傾斜面を備えており、第一のシュー12は背面12bに案内されて下方向の異常増速時に作用し、もう一方の第二のシュー13は底面18に案内されて上方向の異常増速時に作用するように構成されている。また、第二のシュー13が収納溝17に収納され、且つ底面18と背面13bを重合させた状態で、ピン6が第一のシュー12の長穴12cに挿通され、第二のシュー13の一方の側面に固着されている。更に敷衍すると、図2(A)で示すエレベータかご1が平常昇降する場合における第二のシュー13の位置で、ピン6は長穴12cの上端にくる位置で第二のシュー13に固着されていて、この場合に第二のシュー13の制動面13aが第一のシュー12の制動面12aより収納溝17の内側に入るように第二のシュー13が配置されている。そして、ピン6が第一のシュー12の長穴12cに沿って移動する範囲で第二のシュー13は移動する。そして、図2(B)で示すように、ピン6が長穴12cの下端にくる位置で、第二のシュー13の制動面13aが第一のシュー12の制動面12aより外側に飛び出ることが可能なように、これらのシューとピンとの関係が設定されている。
次に、図1に戻り、くわえ金11は、第一のシュー12の背面12bと対向するシュー押圧面15を有する。また、第一のシュー12の背面12bとシュー押圧面15との間には、制動装置作動時の第一のシュー12の移動を円滑にするためのローラー20が介設されている。また、くわえ金11は、第一のシュー12の下方に第一のシュー12の下方向への移動を抑制する係止面16を有している。
次に、前述した第一のシュー12と第二のシュー13とから成る可動側シューに対してガイドレール3を間に挟むようにして可動側シューに対向する位置に、受動側シュー14が配置されている。受動側シュー14はガイドレール3に対向する制動面14aを有しており、制動面14aの背面14bとくわえ金11との間には、制動面14aに垂直な方向に伸縮するバネ19が、この実施の形態1においては並列に2個、設けられている。
次に、レバー5は、長手状に形成されたもので、一端には長手方向に沿って長穴5cが形成され、他端は、かご枠2に他端側を支点として回動可能に固定されている。そして、レバー5は、かご枠2に固定されているレバー5の支点より長穴5c側に(この実施の形態1においてはレバー5の支点と長穴5cとの間に)調速機ロープ4が取り付けられている。また、第一のシュー12の長穴12cとともにレバー5の長穴5cには、第二のシュー13に固着されているピン6が挿通されており、これにより、レバー5による第一のシュー12、第二のシュー13の駆動が可能となるように構成されている。
次に、以上のように構成されたエレベータの制動装置における動作について説明する。
図3は、この実施の形態1にかかるエレベータかごの下方向の異常増速時におけるエレベータの制動装置の作動を説明するためのエレベータかごの制動装置部分の側面図であり、図4は、この実施の形態1にかかるエレベータかごの上方向の異常増速時におけるエレベータの制動装置の作動を説明するためのエレベータかごの制動装置部分の側面図である。
この実施の形態1にかかるエレベータの制動装置では、図1に示すような位置関係で、シュー収納機構10の構成物が配置されている。つまり、第一のシュー12がくわえ金11の係止面16上に載置され、第二のシュー13は第二のシュー制動面13aが第一のシュー制動面12aより収納溝17の内側に入るように収納溝17の中にシュー13全体が収納されている。また、ピン6は第一のシュー12の長穴12cの上端にある位置に、レバー5はレバー5の長手方向が水平となり、レバー5に形成された長穴5cも水平になるように配置されている。そして、この状態において、エレベータかご1の昇降に伴い、レバー5に接続されている調速機ロープ4は、かご1の昇降と同期して昇降路内を上下に移動している。ここで、図3に示すように、エレベータかご1が下方向に異常増速した場合、かご1の過速を検出する調速機(図示せず)が作動して、調速機によって調速機ロープ4が掴まれる。それに伴い、それまではかご1とともに下降を続けていたレバー5は、調速機ロープ4により回動させられ、レバー5の左端側にある長穴5cが上方向に引き上げられる。このレバー5の回動により、ピン6を介してレバー5と係合されている第一のシュー12は、シュー12の背面12bがローラー20を介してくわえ金11のシュー押圧面15に沿って上方向に移動させられ、くわえ金11とガイドレール3との間に食い込む。その結果、第一のシュー制動面12aがガイドレール3に押し付けられるとともに、くわえ金11がその反動でガイドレール3により押し返される方向に動く。つまり、図3でいうと右方向に、くわえ金11が固着されているかご枠2、さらにはかご1全体が移動することになる。これにより、第一のシュー12の反対側の受動側シュー14は、その制動面14aがガイドレール3に押し付けられ、これらの両側のシューの押し付け力によりエレベータかご1を停止させる。また、この際に受動側シュー14の背面14bに設けられているバネ19のバネ力設定の加減により、受動側シュー14のガイドレール3への押し付け力が調整されることでエレベータかご1の減速度が調整される。以上が、エレベータかご1が下方向に異常増速した場合における制動装置の動作であり、この場合では第二のシュー13は作動しておらず、従来における片側のシューのみを可動するようにした制動装置と動作としては同様であるが、この実施の形態1では、上方向の異常増速時に制動装置が作動できるようにした点で従来の制動装置と異なる。
次に、図4を用いて、エレベータかご1が上方向に異常増速した場合における、この実施の形態1にかかるエレベータの制動装置の動作について説明する。この場合も、調速機によってエレベータかご1の異常増速が検出され、調速機ロープ4が掴まれる。それに伴い、それまではかご1とともに上昇していたレバー5は、調速機ロープ4により回動させられ、レバー5の左端側にある長穴5cが下方向に引き下げられる。このレバー5の回動により、まず、ピン6を介してレバー5と係合されている第二のシュー13は、ピン6が第一のシュー12に形成されている長穴12c内を下方向に移動することに伴い、シュー13の背面13bがシュー12の収納溝17の底面18に沿って下方向に移動させられる。この場合に、第一のシュー12は、くわえ金11の係止面16上に載置されているため、シュー12は下方向には動かずに第二のシュー13のみ移動し、シュー13がくわえ金11とガイドレール3との間に食い込む。そのため、第一のシュー12の収納溝17の底面18が押圧面として作用し、第二のシュー制動面13aをガイドレール3に押さえ付けるとともに、くわえ金11がその反動でガイドレール3により押し返される方向に動く。つまり、図4でいうと右方向に、くわえ金11が固着されているかご枠2、さらにはかご1全体が移動することになる。これにより、第二のシュー13の反対側の受動側シュー14は、その制動面14aがガイドレール3に押し付けられ、これらの両側のシューの押し付け力によりエレベータかご1を停止させる。また、下方向の異常増速時と同様に、受動側シュー14の背面14bに設けられたバネ19のバネ力設定の加減により、受動側シュー14のガイドレール3への押し付け力が調整されることでエレベータかご1の減速度が調整される。これに加え、この実施の形態1では、上下方向で制動に用いる可動側のシューが異なるため、それぞれのシューの制動面の材質、表面積の大きさ等に違いを持たせることにより、かご1の上下方向の減速度を別々に設定することが可能となる。また、ピン6を、第一のシュー12の長穴12cとレバー5の長穴5cに挿通し、且つ第二のシュー13に固着する構造とすることで、二つのシュー(シュー12、シュー13)の駆動に必要なレバーが一本で済む。
以上より、この実施の形態1にかかるエレベータの制動装置では、従来の制動装置と同様に片側のシューのみを可動させる構造を基本的に踏襲し、この可動側のシューを上下方向それぞれに対応する二つのシューに分けることで、あまり部品点数を増加させず、且つ構造を複雑にすることなく、従来の下方向の異常増速時のみでなく、上方向の異常増速時にも作動する制動装置を得ることができる。また、生産性の向上も図ることができる。
実施の形態2.
図5は、この実施の形態2にかかるエレベータの制動装置の可動側のシューの形状を示す図である。図5において、(A)は、エレベータかごが平常昇降されている状態、および制動装置が下方向の異常増速時に作動した状態におけるシューの位置関係を示す図であり、左側の図がシューを制動面側から見た立面図、右側の図がシューの側面図である。(B)は、制動装置が上方向の異常増速時に作動した状態におけるシューの位置関係を示す側面図である。
図5に示すように、この実施の形態2にかかるエレベータの制動装置は、第一のシュー12に形成された収納溝17の底面18と第二のシュー13の背面13bとの間にローラー21が介設されている。その他の構成およびその動作は、実地の形態1と同様であるから、同一または相等部分に同一に符号を付してその説明を省略する。これにより、エレベータかご1が上方向に異常増速し、レバー5が第二のシュー13を駆動する場合に、例えば、シュー13による制動力を大きくするために制動面13aを大きくとり、その結果、背面13bの表面積も増え、シュー13駆動時の背面13bにおける摺動抵抗が大きくなった場合など、必要に応じて、このローラー21が設けられることによって円滑にシュー13を駆動することができるようになる。その他、実施の形態1と同様の効果を奏する。
また、本発明にかかるエレベータの制動装置は、従来の制動装置に対し、部品点数の増加を抑え、構造を複雑にすることなく、上下両方向の異常増速に対する作動ができるようにしたものであるため、生産性の向上したエレベータとして有用である。
Claims (5)
- エレベータかごガイドレールに対向してエレベータかごに固着され、前記ガイドレールに向かって上方が狭まるシュー押圧面を有するシュー収納機構と、
このシュー収納機構に収納され、前記ガイドレールに対向する制動面と前記シュー押圧面に対向する背面とを有し、前記制動面には前記ガイドレールに向かって下方が狭まる底面を有する収納溝が形成された第一のシューと、
前記第一のシューの前記収納溝に収納され、前記ガイドレールに対向する制動面と前記収納溝の底面に対向する背面とを有する第二のシューとを備え、
調速機ロープと連動するレバーにより、前記エレベータかごが下方向に異常増速した場合に前記第一のシューを上向きに駆動し、前記エレベータかごが上方向に異常増速した場合に前記第二のシューを下向きに駆動して、前記第一のシュー、前記第二のシューそれぞれに制動作用をさせるようにしたことを特徴とするエレベータの制動装置。 - 前記第一のシューの前記収納溝の一方の側面に前記収納溝の底面の傾斜方向に沿って形成された長穴と前記レバーの一端に形成された長穴とに挿通されるとともに、前記第二のシューの一方の側面に固着されたピンを備え、前記ピンを介して前記第一のシュー及び第二のシューを駆動するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータの制動装置。
- 前記レバーは、長手状に形成され、前記レバーの一端に有する前記長穴は長手方向に沿って形成され、前記レバーの他端を支点として回動可能とされ、前記支点より前記長穴側に前記調速機ロープが取り付けられたことを特徴とする請求項2に記載のエレベータの制動装置。
- 前記シュー収納機構は、第一のシューの下向きの移動を抑制する係止面を備え、前記第一のシューは、前記エレベータかごの平常昇降時においては前記係止面上に載置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のエレベータの制動装置。
- 前記第一のシュー収納溝の前記底面と、前記第二のシューの前記背面との間にローラーが介設されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエレベータの制動装置。
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