JP4164883B2 - 印刷配線板用樹脂組成物及びそれを用いたプリプレグ、金属張り積層板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷配線板等の金属張り積層板や多層印刷配線板に用いられる樹脂組成物及びそれを用いたプリプレグ、金属張り積層板に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子機器の小型化・高性能化に伴い、印刷配線板に用いられる積層板は、高多層化、薄型化、スルーホールの小径化及び穴間隔の減少などによる高密度化が進んでいる。このため、積層板の耐熱性やドリル加工性、絶縁特性等に対する要求はますます厳しくなっている。
耐熱性や絶縁特性を向上させる手法としては、従来から樹脂の高Tg(ガラス転移温度)化等による樹脂硬化物物性の改良が広く行われてきた。しかしながら、上記特性を十分に満足させるためには樹脂の改良だけでは不十分となってきた。
一方、樹脂の改良と並行して、基材/樹脂界面の接着性の向上を目的とした検討も古くから行われている。特に、耐湿耐熱性やドリル加工性及び耐電食性は、この界面接着性の良否が直接影響するため、界面制御は非常に重要な技術となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
基材/樹脂界面の接着性を向上させる手法としては、ガラス織布等の基材に予めカップリング剤等の表面処理を施す方法が一般的である。表面処理剤としては、処理剤が有する有機官能基の種類や数を調整し樹脂との反応性を高める方法(例えば、特開昭63−230729号公報、特公昭62−40368号公報参照)が一般的であるが、樹脂との反応性を高くするだけでは界面にリジッドな薄い層ができるだけで、ドリル加工時や打ち抜き加工時に界面に生じる応力の緩和や加熱加圧成形時や配線板への部品のはんだ接続時に界面に生じる残留応力等の低減は困難であり接着性の顕著な向上は期待できない。界面の残留応力の低減も含めた改良手法としては、表面処理剤に加えて低応力化のために長鎖のポリシロキサンを併用するもの(特開平3−62845号公報、特開平3−287869号公報)があるが、通常の処理条件では表面処理剤と長鎖ポリシロキサンの反応性が非常に低いこと、また一般的な長鎖ポリシロキサンは基材と反応するアルコキシル基を有していないこと、長鎖ポリシロキサンが有するメチル基等の疎水性の影響によるプリプレグへのワニス樹脂含浸性の低下等により界面の高接着性を発現することは非常に困難である。
【0004】
図1に一般的なシランカップリング剤処理された基材表面の理想的なモデル形態を示す。化学的に吸着したシランカップリング剤がある程度の層を形成し、樹脂層との接着性を発現するものである。しかしながら、工業的に行われる無機材料への処理は、非常に短時間で完結させるため、図2に示すように多くの欠陥を含んだ処理形態になっているといわれている。化学的に吸着したシランカップリング剤も均一に表面を被っておらず、樹脂層へ溶け出しやすい物理的に吸着したシランカップリング剤も多く存在する。このような欠陥の多い化学的吸着層では本来の接着性は期待できず、逆に物理的吸着層によって界面近傍の樹脂硬化物の不均一化や低強度化による接着性の低下を引き起こす可能性が高い。
【0005】
これらに対して、予め樹脂組成物にカップリング剤を配合する方法(特開昭61−272243号公報)もある。樹脂組成物に配合することにより、ガラス基材等のみならず、無機充填剤を併用した場合でも樹脂/充填剤界面の接着性が制御可能となる。しかしながら、市販されている通常のカップリング剤では、上記問題と同じように界面にリジッドな薄い層ができるだけで、接着性の向上は期待できない。
【0006】
一方、特開平1−204953号公報は、無機充填剤と反応するトリアルコキシル基及び樹脂と反応する有機官能基を併せ持つ鎖状ポリシロキサンを用いることを特徴としている。しかしながら、図3に示すようにポリシロキサンの鎖を長くした場合、メチル基等の疎水性基の配向等により基材表面に横向きとなる可能性が高く、樹脂中への鎖の入り込みは難しくかつ数箇所で基材に吸着するためリジッドな層を形成しやすい。樹脂内に侵入しても、鎖の回りを樹脂が取り囲むため、鎖の長さに見合った界面の低応力化を実現するのは困難である。また、物理的に吸着した層は大環状になりやすいため、樹脂硬化物の物性低下を引き起こしやすい。
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、積層板や多層印刷配線板を成形した際に優れたドリル加工性及び絶縁特性等を発現する樹脂組成物及びそれを用いたプリプレグ、金属張り積層板を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、4官能性(SiO4/2)シロキサン単位を含有し酸性下で加熱反応させることにより3次元縮合反応させた後、ヒドロシリル化により樹脂と反応する官能基を導入したシリコーンオリゴマであって、かつ基材表面の水酸基と反応する官能基及び樹脂と反応する官能基を各々1個以上有するシリコーンオリゴマを、熱硬化性樹脂組成物に配合する印刷配線板用樹脂組成物である。そして、基材表面の水酸基と反応する官能基が、アルコキシル基、シラノール基の中から選ばれる少なくとも1種以上であり、樹脂と反応する官能基が、プロピレン基を介して珪素と結合する、グリシジルオキシ基、アミノ基、アミノ基の有機酸塩及びアミノ基の無機酸塩の中から選ばれる少なくとも1種類以上であると好ましい印刷配線板用樹脂組成物である。さらに、シリコーンオリゴマが分子内に含有するシロキサン単位として2官能性(R2SiO2/2)、3官能性(RSiO3/2)と4官能性(SiO4/2)とを組み合わせた印刷配線板用樹脂組成物(式中、R基は同じか又は別異な有機基である)であり、シリコーンオリゴマが分子内に含有する4官能性(SiO4/2)シロキサン単位が全体の5mol%以上であると好ましい印刷配線板用樹脂組成物である。また、シリコーンオリゴマが有する樹脂と反応する官能基がエポキシ基、アミノ基、アミノ基の有機酸塩又はアミノ基の無機酸塩のうちいずれか1種以上であると好ましい印刷配線板用樹脂組成物である。そして、さらに、シリコーンオリゴマを配合する際に、カップリング剤を併用することが好ましく、樹脂組成物に予め無機充填剤が配合されていると好ましい印刷配線板用樹脂組成物である。また、本発明は、上記の印刷配線板用樹脂組成物のワニスを基材に含浸し、80〜200℃で乾燥して得られるプリプレグで、多層プリント配線板の層間接着用絶縁体としても使用することができる。そして、このプリプレグの1枚ないし複数枚を積層し、その片面ないし両面に金属箔を積層し加熱加圧して得られる金属張り積層板である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物に、4官能性(SiO4/2)シロキサン単位を含有し酸性下で加熱反応させることにより3次元縮合反応させた後に、ヒドロシリル化により樹脂と反応する官能基を予め導入したシリコーンオリゴマであって、かつ基材表面の水酸基と反応する官能基及び樹脂と反応する官能基を各々1個以上有するシリコーンオリゴマを配合し、図4に示すように基材表面にシリコーンオリゴマの層を付与し、成形、加工時の応力を緩和する層を設けることを特徴とする。
【0010】
本発明で用いる熱硬化性樹脂は特に制限されず、例えばエポキシ樹脂系、ポリイミド樹脂系、トリアジン樹脂系、フェノール樹脂系、メラミン樹脂系、ポリエステル樹脂系やこれら樹脂の変性系等が用いられる。また、これらの樹脂は2種類以上を併用してもよい。
【0011】
熱硬化性樹脂の硬化剤としては、従来公知の種々のものを使用することができ、例えば樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合には、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、フェノールノボラックやクレゾールノボラック等の多官能性フェノール等をあげることができる。また、樹脂と硬化剤との反応等を促進させる目的で促進剤が用いられるが、促進剤の種類や配合量は特に制限するものではなく例えばイミダゾール系化合物、有機リン系化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等が用いられ、2種類以上を併用してもよい。
【0012】
本発明のシリコーンオリゴマは、4官能性(SiO4/2)シロキサン単位を少なくとも1種類以上含有し酸性下で加熱反応させることにより3次元縮合反応したシリコーンオリゴマであって、かつ基材表面の水酸基と反応する官能基及び樹脂と反応する官能基を各々1個以上有していればその分子量や骨格等に特に制限はなく、重合体の中でシロキサン単位の重合度が2〜70程度が好ましく、更には5〜30程度がより好ましい。重合度は、GPC(ゲル透過クロマトグラフィー)により数平均分子量或いは重量平均分子量から換算して得られる。重合度が2未満であると加熱乾燥等により揮発もしくは飛散しやすく、重合度が70を超えると耐熱性等が低下するおそれがある。2官能性、3官能性、4官能性シロキサン単位のR2SiO2/2、RSiO3/2、SiO4/2は、それぞれ次のような構造を意味する。
【化1】
ここで、Rは同じか又は別異な有機基であり、具体的にメチル基、エチル基、フェニル基、ビニル基、または、エポキシ基、メルカプト基、アクリル基、アミノ基、アミノ基の有機酸塩及びアミノ基の無機酸塩を含む基のうちいずれか1以上であると好ましい。有機基としては、基材表面の水酸基と反応する官能基は、アルコキシル基やシラノール基等が主としてその役割を担い、シロキサン結合を有するシリコーンオリゴマには既に含まれる可能性が高いので、少なくとも1個以上樹脂と反応する官能基を含んでいれば特に制限はないが、エポキシ基やアミノ基及びアミノ基の有機酸塩、無機酸塩、特に塩酸塩等が一般的であり好ましい。有機官能基をシリコーンオリゴマ骨格の中に取り込む方法としては特に制限はなく、例えばヒドロシリル化反応等により付加する方法や市販のシランカップリング剤と併用してオリゴマ化する方法等がある。基材表面の水酸基と反応する官能基は特に制限はないが、アルコキシル基やシラノール基等が一般的であり好ましい。また、シリコーンオリゴマは分子内に、4官能性シロキサン単位を含有し、それと2官能性または3官能性シロキサン単位と組合せ3次元縮合反応していることが好ましく、更には4官能性シロキサン単位がシリコーンオリゴマ全体の5mol%以上であるとより好ましい。シリコーンオリゴマは、予め3次元縮合反応しているものであるが、配合前にゲル状態とならない程度に反応させたものを用いる。このためには、反応温度、反応時間、オリゴマ組成比、触媒の種類や量を変えて調整する。触媒としては、酢酸、塩酸、マレイン酸、リン酸等の酸性溶液で合成することが好ましい。
【0013】
シリコーンオリゴマの配合量は特に制限されないが、樹脂固形分に対して0.1重量部〜50重量部の範囲が好ましい。0.1重量部未満では界面接着性向上の効果は得られず、50重量%を超えると耐熱性等が低下するおそれがある。また、シリコーンオリゴマに加えて各種カップリング剤等を含めた添加剤を配合してもよい。カップリング剤としてはシラン系カップリング剤やチタネート系カップリング剤等があり、シラン系カップリング剤としては、一般にエポキシシラン系、アミノシラン系、カチオニックシラン系、ビニルシラン系、アクリルシラン系、メルカプトシラン系及びこれらの複合系等がある。
【0014】
本発明においては、さらに無機充填剤を配合することも可能であり、好ましい。無機充填剤としては特に制限はなく、例えば、炭酸カルシウム、アルミナ、酸化チタン、マイカ、炭酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、シリカ、ガラス短繊維やホウ酸アルミニウムや炭化ケイ素等の各種ウィスカ等が用いられる。また、これらを数種類併用しても良く、配合量も特に制限するものではない。
【0015】
本発明に係る印刷配線板用樹脂組成物は、各種の形態で利用されるが基材に塗布、含浸する際にはしばしば溶剤が用いられる。それらの溶剤としては特に制限はなく、例えばアセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール等があり、これらは何種類かを併用してもよい。
【0016】
前記各成分を配合して得たワニスは、基材に含浸させ、乾燥炉中で80℃〜200℃の範囲で任意時間乾燥させ室温で粘着性を有しないBステージ状態とすることにより、プリプレグを得る。基材としては、金属張り積層板や多層印刷配線板を製造する際に用いられるものであれば特に制限されず、通常織布や不織布等の繊維基材が用いられる。繊維基材としては、たとえばガラス、アルミナ、アスベスト、ボロン、シリカアルミナガラス、シリカガラス、チラノ、炭化ケイ素、窒化ケイ素,ジルコニア等の無機繊維やアラミド,ポリエーテルエーテルケトン,ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、カーボン、セルロース等の有機繊維等及びこれらの混抄系があり、特にガラス繊維の織布が好ましく用いられる。
【0017】
本発明で作製されるプリプレグの塗工条件は特に制約はないが、溶剤溶液を用いる場合には、溶剤が揮発可能な温度以上での乾燥が好ましい。得られたプリプレグは、これを1枚ないし複数枚積層し、その片面若しくは両面に銅箔のような金属箔を積層し、150℃〜200℃、1MPa〜10MPa程度の範囲で加熱加圧して金属張り積層板を製造し、印刷配線板や多層プリント配線板に供される。
【0018】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物に予め3次元縮合反応した基材表面の水酸基と反応する官能基及び樹脂と反応する官能基を各々1個以上有するシリコーンオリゴマを配合することにより、積層板や多層印刷配線板にした場合に、従来のシランカップリング剤等による薄くてリジッドな基材表面の処理剤層に対してシリコーンオリゴマが基材/樹脂の界面でクッション的な役割をはたし、界面に発生する歪みや応力を緩和させ、熱硬化性樹脂が本来有している優れた接着性を引き出すことが可能となる。
【0019】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0020】
(実施例1)
撹拌装置、コンデンサ及び温度計を備えたガラスフラスコに、4官能性シロキサン単位であるテトラメトキシシランを40g、2官能性シロキサン単位であるジメトキシメチルシランを14g、メタノールを126g配合した溶液に、触媒として酢酸を0.5g、蒸留水を22g配合して50℃で1時間撹拌した後、官能基を付与するためアリルグリシジルエーテルを15gと塩化白金酸塩(2重量%イソプロピルアルコール溶液)を0.04g添加し更に7時間撹拌してエポキシ変性のシリコーンオリゴマを合成した。得られたシリコーンオリゴマのシロキサン単位の重合度は13であった(GPCによる数平均分子量から換算,以下同じ)。
【0021】
(参考例3)
実施例1と同様に、トリメトキシメチルシランを40g、ジメトキシメチルシランを15.6g、メタノールを130g配合した溶液に、酢酸を0.5g、蒸留水を13.2g配合して50℃で1時間攪拌した後、アリルグリシジルエーテルを17gと塩化白金酸塩(2重量%イソプロピルアルコール溶液)を0.04g添加し更に7時間撹拌してエポキシ変性のシリコーンオリゴマを合成した。得られたシリコーンオリゴマのシロキサン単位の重合度は11であった。
【0022】
(実施例3)
実施例1と同様に、ジメトキシジメチルシランを32g、テトラメトキシシランを8g、ジメトキシメチルシランを17g、メタノールを98g配合した溶液に、酢酸を0.5g、蒸留水を16.2g配合して50℃で1時間撹拌した後、アリルグリシジルエーテルを18.2gと塩化白金酸塩(2重量%イソプロピルアルコール溶液)を0.04g添加し更に7時間撹拌してエポキシ変性のシリコーンオリゴマを合成した。得られたシリコーンオリゴマのシロキサン単位の重合度は18であった。
【0023】
(実施例4)
実施例1と同様に、ジメトキシジメチルシランを9g、テトラメトキシシランを20g、ジメトキシメチルシランを11g、メタノールを93g配合した溶液に、酢酸を0.5g、蒸留水を14g配合して50℃で1時間撹拌した後、アリルグリシジルエーテルを11.8gと塩化白金酸塩(2重量%イソプロピルアルコール溶液)を0.03g添加し更に7時間撹拌してエポキシ変性のシリコーンオリゴマを合成した。得られたシリコーンオリゴマのシロキサン単位の重合度は20であった。
【0024】
(実施例5)
実施例1と同様に、トリメトキシメチルシランを9g、テトラメトキシシランを20g、ジメトキシメチルシランを11g、メタノールを92g配合した溶液に、酢酸を0.5g、蒸留水を13.2g配合して50℃で1時間撹拌した後、アリルグリシジルエーテルを11.2gと塩化白金酸塩(2重量%イソプロピルアルコール溶液)を0.03g添加し更に7時間撹拌してエポキシ変性のシリコーンオリゴマを合成した。得られたシリコーンオリゴマのシロキサン単位の重合度は16であった。
【0025】
(実施例6)
実施例1と同様に、ジメトキシジメチルシランを9g、テトラメトキシシランを20g、ジメトキシメチルシランを11g、メタノールを93g配合した溶液に、酢酸を0.5g、蒸留水を14g配合して50℃で1時間撹拌した後、アリルアミンを5.9gと塩化白金酸塩(2重量%イソプロピルアルコール溶液)を0.02g添加し更に7時間撹拌してアミン変性のシリコーンオリゴマを合成した。得られたシリコーンオリゴマのシロキサン単位の重合度は18であった。
【0026】
(実施例7)
実施例1と同様に、ジメトキシジメチルシランを9g、テトラメトキシシランを20g、ジメトキシメチルシランを11g、メタノールを93g配合した溶液に、酢酸を0.5g、蒸留水を14g配合して50℃で1時間撹拌した後、塩酸アリルアミンを9.7gと塩化白金酸塩(2重量%イソプロピルアルコール溶液)を0.03g添加し更に7時間撹拌してカチオニック変性のシリコーンオリゴマを合成した。得られたシリコーンオリゴマのシロキサン単位の重合度は17であった。
【0027】
(参考例1)
実施例1と同様に、ジメトキシジメチルシランを10g、テトラメトキシシランを20g、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(A−187、日本ユニカー株式会社製商品名)を10g、メタノールを93g配合した溶液に、酢酸を0.25g、蒸留水を14g配合後、50℃で8時間攪拌し、シリコーンオリゴマを合成した。得られたシリコーンオリゴマのシロキサン繰り返し単位の平均は25であった。
【0028】
(参考例2)
実施例1と同様に、ジメトキシジメチルシランを10g、テトラメトキシシランを20g、N−β−[N−(ビニルベンジル)アミノエチル]−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩(SZ−6032、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製商品名)を10g、メタノールを93g配合した溶液に、酢酸を0.3g、蒸留水を13.5g配合後、50℃で8時間攪拌し、シリコーンオリゴマを合成した。得られたシリコーンオリゴマのシロキサン繰り返し単位の平均は27であった。
【0029】
次に、実施例1、3〜7、参考例1〜3で作製した各種シリコーンオリゴマを以下に示すエポキシ樹脂ワニスに配合した。
臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂 100重量部
(エポキシ当量:530)
ジシアンジアミド 4重量部
各種シリコーンオリゴマ 2重量部
2−エチル−4−メチルイミダゾール 0.5重量部
上記化合物をメチルエチルケトン及びエチレングリコールモノメチルエーテル(50重量%)に溶解し、不揮発分70重量%の印刷配線板用樹脂組成物のワニスを作製した。
【0030】
(実施例10)
実施例1で得られたシリコーンオリゴマを1重量部配合した上記ワニスに、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(A−187、日本ユニカー株式会社製商品名)を1重量部加えて、不揮発分70重量%の印刷配線板用樹脂組成物のワニスを作製した。
【0031】
(実施例11)
実施例1で得られたシリコーンオリゴマを1重量部配合した上記ワニスに、シランカップリング剤としてN−β−[N−(ビニルベンジル)アミノエチル]−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩(SZ−6032、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製商品名)を1重量部加えて、不揮発分70重量%の印刷配線板用樹脂組成物のワニスを作製した。
【0032】
(実施例12)
実施例1のシリコーンオリゴマを配合したワニスに、無機充填剤として焼成クレーを50重量部配合して、不揮発分70重量%の印刷配線板用樹脂組成物のワニスを作製した。
【0033】
(比較例1)
シリコーンオリゴマを配合しないこと以外は、実施例と同様のワニスを作製した。
【0034】
(比較例2)
撹拌装置、コンデンサ及び温度計を備えたガラスフラスコに、テトラメトキシシランを40g、メタノールを93g配合した溶液に、酢酸を0.47g、蒸留水を18.9g配合後、50℃で8時間撹拌し、シリコーンオリゴマを合成した。得られたシリコーンオリゴマのシロキサン繰り返し単位の平均は20であった。
【0035】
(比較例3)
シリコーンオリゴマを配合せず、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(A−187、日本ユニカー株式会社製商品名)を2重量部加えた以外は、実施例と同様の印刷配線板用樹脂組成物のワニスを作製した。
【0036】
(比較例4)
シリコーンオリゴマを配合せず、シランカップリング剤としてN−β−[N−(ビニルベンジル)アミノエチル]−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩(SZ−6032,東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製商品名)を2重量部加えた以外は、実施例と同様の印刷配線板用樹脂組成物のワニスを作製した。
【0037】
(比較例5)
シリコーンオリゴマのかわりに、エポキシ変性シリコーンオイル(KF101、信越化学工業株式会社製商品名)を2重量部配合した以外は、実施例と同様の印刷配線板用樹脂組成物のワニスを作製した。
【0038】
(比較例6)
比較例1に無機充填剤として焼成クレーを50重量部配合して、不揮発分70重量%の印刷配線板用樹脂組成物のワニスを作製した。
【0039】
実施例1、3〜7、10〜12、参考例1〜3及び比較例1〜6で作製した印刷配線板用樹脂組成物のワニスを厚さ約0.2mmのガラス布(坪量210g/m2)に含浸後、140℃で5〜10分加熱乾燥して樹脂分41重量%のプリプレグを得た。このプリプレグ4枚を重ね、その両側に厚みが35μmの銅箔を重ね、170℃、90分、4.0MPaのプレス条件で両面銅張り積層板を作製した。
【0040】
得られた両面銅張り積層板について、ドリル加工性、吸水率、はんだ耐熱性及び耐電食性を評価した。その結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
試験方法は以下の通りである。耐電食性以外の試験片はすべて銅箔をエッチングしたものを使用した。
ドリル加工性:直径0.4mmのドリルを用いて、回転数;80,000rpm、送り速度;3,200mm/minで穴あけを行い、基材/樹脂界面の剥離等による穴壁クラックを評価した。穴壁クラックは、穴あけした試験片をレッドチェック液で1時間煮沸後、顕微鏡による表面観察より穴面積に対する穴回りに染み込んだ面積の割合を画像処理装置で測定した(20穴の平均)。単位:%
吸水率:常態及びプレッシャークッカーテスター中に2時間保持した後の重量差より算出した。単位:重量%
はんだ耐熱性:プレッシャークッカーテスター中に2時間保持した後、260℃のはんだ浴に20秒間浸漬して、外観を目視で調べた。表中の良好とは、ミーズリング、ふくれがないことを意味する。
耐電食性:ドリル加工性で評価した穴壁間隔300μmのスルーホールを使用し、85℃/85%RH、100V印加での導通破壊までの時間を測定した。また、導通破壊は全てスルーホール間のCAF(CONDUCTIVE ANODIC FILAMENTS)であることを確認した。
【0043】
以上の結果より、実施例1、3〜7、10〜12は、はんだ耐熱性が低下することなく、ドリル加工時の内壁クラックや吸水率が小さく耐電食性が向上している。
【0044】
【発明の効果]】
本発明の印刷配線板用樹脂組成物及びこれを用いたプリプレグ、金属張り積層板は、これまでの積層板が有する特性を低下させることなく、ドリル加工性や耐電食性等の絶縁特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 基材表面にシランカップリング剤を処理したときの理想状態を示す基材断面のモデル。
【図2】 基材表面にシランカップリング剤を処理したときの実際の状態を示す基材断面のモデル。
【図3】 基材表面を長鎖ポリシロキサンで処理したときの基材断面モデル。
【図4】 基材表面に本発明のシリコーンオリゴマを処理したときの理想状態を示す基材断面のモデル。
【符号の説明】
1:化学的に吸着されたシリコーン鎖(基材との化学的結合があり)
2:物理的に吸着されたシリコーン鎖(基材との化学的結合がない)
3:樹脂
4:シリコーン鎖内の結合による環状鎖
Claims (7)
- 4官能性(SiO4/2)シロキサン単位を含有し酸性下で加熱反応させることにより3次元縮合反応させた後、ヒドロシリル化により樹脂と反応する官能基を導入したシリコーンオリゴマであって、かつ基材表面の水酸基と反応する官能基及び樹脂と反応する官能基を各々1個以上有するシリコーンオリゴマを、熱硬化性樹脂組成物に配合する印刷配線板用樹脂組成物であって、
基材表面の水酸基と反応する官能基が、アルコキシル基、シラノール基の中から選ばれる少なくとも1種以上であり、樹脂と反応する官能基が、プロピレン基を介して珪素と結合する、グリシジルオキシ基、アミノ基、アミノ基の有機酸塩及びアミノ基の無機酸塩の中から選ばれる少なくとも1種類以上であることを特徴とする印刷配線板用樹脂組成物。 - シリコーンオリゴマが分子内に含有するシロキサン単位として、さらに2官能性(R2SiO2/2)を含む請求項1に記載の印刷配線板用樹脂組成物(式中、R基は同じか又は別異な有機基である)。
- シリコーンオリゴマが分子内に含有するシロキサン単位として、さらに3官能性(RSiO3/2)を含む請求項1に記載の印刷配線板用樹脂組成物(式中、R基は同じか又は別異な有機基である)。
- シリコーンオリゴマが分子内に含有するシロキサン単位として、さらに2官能性(R2SiO2/2)と3官能性(RSiO3/2)とを含む請求項1に記載の印刷配線板用樹脂組成物(式中、R基は同じか又は別異な有機基である)。
- シリコーンオリゴマが分子内に含有する4官能性(SiO4/2)シロキサン単位が全体の5mol%以上である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の印刷配線板用樹脂組成物。
- シリコーンオリゴマを配合する際に、カップリング剤を併用することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の印刷配線板用樹脂組成物。
- 樹脂組成物に予め無機充填剤が配合されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の印刷配線板用樹脂組成物。
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