JP4154521B2 - 水性ポリウレタン樹脂、印刷インキ用バインダーおよび印刷インキ組成物 - Google Patents
水性ポリウレタン樹脂、印刷インキ用バインダーおよび印刷インキ組成物 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、水性ポリウレタン樹脂、印刷インキ用バインダーおよび印刷インキ組成物に関する。さらに詳しくは、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステルなどのプラスチックに対してもすぐれた密着性を有し、塗料、インキ、ガラス飛散防止膜、合成皮革、人工皮革、不織布、織布、紙、木、鋼板、ゴム、皮、フロアーポリッシュ、ガラス繊維の集束剤などのコーティング剤や接着剤、粘着剤などに好適に使用しうる水性ポリウレタン樹脂、当該水性ポリウレタン樹脂を含有してなる印刷インキ用バインダーおよび印刷インキ組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、塗料、インキなどのコーティング剤や接着剤としては、高分子の有機溶剤溶液が主に用いられていたが、近年、大気汚染をはじめとする公害の防止、消防法上の規制、労働条件の安全性や衛生面などが考慮され、水溶性高分子や高分子のエマルジョンといったものが用いられるようになってきた。当該水溶性高分子としては、近年、その柔軟性に特徴を有する水性ポリウレタン樹脂などが開発されている。しかしながら、ポリウレタンを水性化するためには、ポリウレタン樹脂中に極性基等を付与したりしなければならず(例えば、特許文献1参照)、そのため、プラスチック(特に極性基を有しないポリオレフィン等)に対する密着性が不十分となるという欠点があった。なお、鎖長停止剤として長鎖モノアミン化合物を用いる印刷インキ用ポリウレタン樹脂が、本出願人によって提案されている(特許文献2参照)が、このものは、水以外の溶剤に溶解させるためのポリウレタン樹脂に関するものであり、水性ポリウレタン樹脂として用いることができるものではなく、また、解決しようとする課題も異なるものであった。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−269243号公報
【特許文献2】
特開2001−233929号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、水性ポリウレタン樹脂特有の柔軟性を有し、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ナイロン、ポリエステルなどのプラスチックに対してもすぐれた密着性を有する水性ポリウレタン樹脂を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく、鋭意検討を行なったところ、特定のモノアルコール化合物またはモノアミン化合物を反応させた水性ポリウレタン樹脂を用いることにより、前記課題を悉く解決しうることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、水酸基、一級アミノ基または二級アミノ基のいずれか一つを有する炭素数が10〜40の脂肪族炭化水素化合物、高分子量ポリオール(カルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物を除く)、ポリイソシアネート化合物、ならびに、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、および2,2−ジメチロールペンタン酸から選ばれる脂肪族カルボン酸を反応させて得られる反応物を中和剤で中和し、さらに水に分散してなる、カルボン酸塩基を有するポリウレタン樹脂の水分散液;当該水分散液を用いた印刷インキ用バインダー;当該印刷インキ用バインダーを含有してなる印刷インキ組成物に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の水性ポリウレタン樹脂の構成成分である、水酸基、一級アミノ基または二級アミノ基のいずれか一つを有する炭素数が10〜40の脂肪族炭化水素化合物としては、水酸基、一級アミノ基または二級アミノ基のいずれか一つを有し、かつ炭素数が10〜40であるものであれば特に制限されず、公知のものを使用することができる。具体的には、水酸基を一つ有する炭素数が10〜40の脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、デシルアルコール、イソデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコールなどのモノアルコール類などが挙げられる。一級アミノ基を一つ有する炭素数が10〜40の脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン等の一級モノアミン類などが挙げられる。二級アミノ基を一つ有する炭素数が10〜40の脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、ジ2−エチルヘキシルアミン、ジステアリルアミン等の二級モノアミン類等が挙げられる。これら脂肪族炭化水素化合物は単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。これら脂肪族炭化水素化合物の炭素数が10未満である場合には、各種プラスチックフィルムに対する密着性が劣るため好ましくなく、また炭素数が40を超える場合には、印刷インキに用いた際、重ね刷りの部分ではじきを生ずるなどの問題が生じるため好ましくない。
【0008】
高分子量ポリオール(カルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物を除く)としては、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフラン等の重合体または共重合体等のポリエーテルポリオール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチンジオール、ジプロピレングリコール等の飽和もしくは不飽和の各種公知の低分子グリコール類またはn−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、バーサティック酸グリシジルエステル等のモノカルボン酸グリシジルエステル類と、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸等の二塩基酸またはこれらに対応する酸無水物やダイマー酸などとを脱水縮合せしめて得られるポリエステルポリオール類;環状エステル化合物を開環重合して得られるポリエステルポリオール類;その他ポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエングリコール類、ビスフェノールAにエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られたグリコール類等の一般にポリウレタン樹脂の製造に用いられる各種公知の高分子量ポリオールがあげられる。
【0009】
前記ポリイソシアネート化合物の代表例としては、たとえばジイソシアネート化合物があげられる。前記ジイソシアネート化合物の具体例としては、たとえばメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸が有するカルボキシル基をイソシアネート基に置き換えたダイマージイソシアネートなどの鎖状脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4´−ジイソシアネート、1,3−ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネートなどの環状脂肪族ジイソシアネート;4,4´−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネートなどのジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルテトラメチルメタンジイソシアネートなどのテトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4´−ジベンジルイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;リジンジイソシアネートなどのアミノ酸ジイソシアネートなどがあげられる。これらのジイソシアネート化合物をはじめとする前記ポリイソシアネート化合物は、単独でまたは2種以上を混合して用いられる。これらのジイソシアネート化合物の中では、鎖状脂肪族ジイソシアネートおよび環状脂肪族ジイソシアネートを用いることにより耐候性を向上させることができる。
【0010】
前記脂肪族炭化水素化合物と高分子量ポリオールの使用割合は重量比で、1/99〜20/80程度であることが好ましい。該脂肪族炭化水素化合物の使用量が当該数値範囲の下限値に満たない場合には、各種プラスチックフィルムに対する密着性に優れるという当該発明の効果が充分に発揮されにくくなり、また当該数値範囲の上限を超える場合は、最終的に得られる水性ポリウレタン樹脂の高分子量化が困難になり、皮膜強度や耐ブロッキング性が低下する傾向がある。
【0011】
また、本発明では必要に応じて鎖伸長剤を使用することができる。鎖伸長剤の具体例としては、たとえば前記高分子量ポリオールの項で示した低分子グリコール類;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4´−ジアミンなどのアミン;2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミンなどの分子内に水酸基を有するジアミン;ダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に置き換えたダイマージアミン、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジドなどがあげられる。これらの鎖伸長剤は、単独でまたは2種以上を混合して用いられる。これらの鎖伸長剤の中では、水に対する分散性を向上させる目的で、ポリウレタン樹脂にイオン性官能基を付与するために、イオン性官能基を有する鎖伸長剤を用いることができる。イオン性官能基としては、特に制限されないが、例えば、4級アミノ塩基やカルボン酸塩基などがあげられる。具体例として、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−プロピルジエタノールアミン、N−イソプロピルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N−イソブチルジエタノールアミン、N−オレイルジエタノールアミン、N−ステアリルジエタノールアミン、エトキシ化椰子油アミン、N−アリルジエタノールアミン、N−メチルジイソプロパノールアミン、N−エチルジイソプロパノールアミン、N−プロピルジイソプロパノールアミン、N−ブチルジイソプロパノールアミン、ジメチルジエトキシヒドラジン、プロポキシメチルジエタノールアミン、N−(3−アミノプロピル)−N−メチルエタノールアミン、N,N´−ビス(オキシエチル)プロピレンジアミン、ジエタノールアミノアセトアミド、ジエタノールアミノプロピオンアミド、N,N−ビス(オキシメチル)セミカルバジドなどのアルコキシ化鎖状脂肪族アミン;N−シクロヘキシルジイソプロパノールアミンなどのアルコキシ化環状脂肪族アミン;N,N−ジエトキシアニリン、N,N−ジエトキシトルイジン、N,N−ジエトキシ−1−アミノピリジン、N,N´−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N、N´−ジエチルヘキサヒドロ−p−フェニレンジアミン、N,N´−ビス(オキシエチル)フェニルセミカルバジドなどのアルコキシ化芳香族アミン;N,N´−ジエトキシピペラジン、N−2−ヒドロキシエチルピペラジンなどのアルコキシ化複素環アミン;N−メチル−N,N−ビス(3−アミノプロピル)アミン、N−(3−アミノプロピル)−N,N´−ジメチルエチレンジアミン、N,N´−ビス(3−アミノプロピル)−N,N´−ジメチルエチレンジアミン、2−メチル−2−[(N,N−ジメチルアミノ)メチル]プロパン−1,3−ジオールなどの鎖状脂肪族アミン;2,6−ジアミノピリジン、p,p´−ビス−アミノメチルジベンジルメチルアミンなどの芳香族アミン;N,N´−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジンなどの複素環アミンなどがあげられる。なお、前記鎖伸長剤の有する塩基性チッ素は、前記鎖伸長剤を水に分散させる前、または前記鎖伸長剤を水に分散させたあとで、塩化物イオン、硫酸塩イオン、有機物カルボン酸のアニオンなどの4級化剤を用いて4級化される。
【0012】
本発明では、前記カルボキシル基を有する鎖伸長剤として、カルボン酸塩基を、えられるポリウレタンに導入するために、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、および2,2−ジメチロールペンタン酸から選ばれる脂肪族カルボン酸を用いる。また、かかる鎖伸長剤の有するカルボキシル基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;アンモニア;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミンやN−エチルジエタノールアミンをはじめとするN−アルキルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミンやN,N−ジエチルエタノールアミンをはじめとするN,N−ジアルキルエタノールアミンなどの3級アミンなどの中和剤を用いて中和される。また、かかる鎖伸長剤は、前記重合成分を水に分散させる前に用いてもよく、前記重合成分を水に分散させたあとに用いてもよい。
【0013】
前記鎖伸長剤の配合量は、特に限定はないが、えられる水性ポリウレタン樹脂から形成される皮膜の柔軟性および強靭性を両立させるという観点から、前記重合成分の0.1〜20重量%、好ましくは1〜15重量%となるように調整することが望ましい。
【0014】
前記イオン性官能基を有する鎖伸長剤を用いる場合の配合量は、特に限定されないが、たとえば前記塩基性窒素を有するポリウレタン樹脂中の塩基性チッ素が、該ポリウレタン樹脂の樹脂固形分1gに対して3×10−5〜1.8×10−3グラム当量程度となるように調整することが好ましい。また、前記イオン性官能基を有する鎖伸長剤であるカルボキシル基を有する鎖伸長剤の配合量は、とくに限定はないが、たとえばかかるカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂中のカルボキシル基が、該ポリウレタン樹脂の樹脂固形分1gに対して3×10−5〜1.8×10−3グラム当量程度となるように調整することが好ましい。
【0015】
本発明の水性ポリウレタン樹脂はこれらの成分を公知の方法により反応させることにより得られる。なお、得られる水性ポリウレタン樹脂の主成分は、水酸基、一級アミノ基または二級アミノ基のいずれか一つを有する炭素数が10〜40の脂肪族炭化水素化合物の活性水素基と高分子量ポリオールの水酸基が、ポリイソシアネートのイソシアネート基と反応し、例えば、当該脂肪族炭化水素化合物の活性水素基が水酸基の場合はウレタン結合を介して、該脂肪族炭化水素化合物の活性水素基がアミノ基の場合はウレタン結合およびウレア結合を介して結合したものである。なお、得られた水性ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、通常3,000〜1,000,000程度である。本発明の水性ポリウレタン樹脂は前記各成分を反応させることにより得られるが、通常は水性ポリウレタン樹脂として単離されず、そのまま水溶液として印刷インキ用バインダーとして用いられる。以下に、それぞれの方法による印刷インキ用バインダーの製造方法について説明する。
【0016】
イオン性官能基を付与させる方法により得られたイオン性官能基を有する水性ポリウレタン樹脂を水に分散させる方法の具体例としては、例えば、水酸基、一級アミノ基または二級アミノ基のいずれか一つを有する炭素数が10〜40の脂肪族炭化水素化合物、高分子量ポリオールとポリイソシアネート化合物とを、水酸基、一級または二級アミノ基のいずれか一つを有する炭素数が10〜40の脂肪族炭化水素化合物および高分子量ポリオールの活性水素基に対してポリイソシアネート化合物が有するNCO基が過剰となる条件で共重合させてNCO基を有するプレポリマーを生成させ、かかるプレポリマーを適当な有機溶剤の溶液とし、かかる溶液に前記イオン性官能基を有する鎖伸長剤を含有した鎖伸長剤を加えて反応させ、そののち前記4級化剤または中和剤を用いて4級化または中和し、さらに水に分散させたのちに必要に応じ有機溶剤を除去する方法、水酸基、一級アミノ基または二級アミノ基のいずれか一つを有する炭素数が10〜40の脂肪族炭化水素化合物、高分子量ポリオール、ポリイソシアネート化合物、前記イオン性官能基を有する鎖伸長剤を含有した鎖伸長剤を適当な有機溶剤中で一度に反応させたのち、前記4級化剤または中和剤を用いて4級化または中和を行い、ついで水に分散させてから必要に応じ有機溶剤を除去する方法、水酸基、一級アミノ基または二級アミノ基のいずれか一つを有する炭素数が10〜40の脂肪族炭化水素化合物、高分子量ポリオール、ポリイソシアネート化合物および前記イオン性官能基を有する鎖伸長剤を、水酸基、一級アミノ基または二級アミノ基のいずれか一つを有する炭素数が10〜40の脂肪族炭化水素化合物、高分子量ポリオール、および前記イオン性官能基を有する鎖伸長剤の活性水素基に対して、ポリイソシアネート化合物が有するNCO基が過剰となる条件で適当な有機溶剤中で反応させて分子の末端にNCO基を有するプレポリマーを生成させ、前記4級化剤または中和剤を用いて4級化または中和を行なったのち、水に分散させ、ついで鎖伸長剤を加えて反応させ、そののち必要に応じて有機溶剤を除去する方法などがあげられる。なお、前記有機溶剤としては、とくに限定がなく、通常用いられているものであればよい。かかる有機溶剤の具体例としては、たとえばベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶剤;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶剤;ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶剤、イソプロピルアルコール、エタノールなどのアルコール類;N−メチルピロリドンなどがあげられる。これらの有機溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
【0017】
このようにして得られた印刷インキ用バインダーは、顔料などを加えて練肉および分散を行い、必要に応じて本発明で得られるものとは異なる水性ポリウレタン樹脂、水性ポリアミド樹脂、水性アクリル酸エステル系共重合体塩、水性スチレン−マレイン酸系共重合体の塩などの水系樹脂、ブロッキング防止剤や可塑剤などの添加剤を適宜配合することにより、印刷インキ組成物を容易に得ることができる。
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、水性ポリウレタン樹脂特有の柔軟性を有し、特に印刷インキ用バインダーとして使用した場合、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ナイロンやポリエステルなどのプラスチックに対してすぐれた密着性を有する水性ポリウレタン樹脂を提供できる。なお、当該水性ポリウレタン樹脂は、密着性に優れるため、塗料、ガラス飛散防止膜、合成皮革、人工皮革、不織布、織布、紙、木、鋼板、ゴム、皮、フロアーポリッシュ、ガラス繊維の集束剤などのコーティング剤、接着剤、粘着剤などに好適に用いることができる。
【0019】
【実施例】
次に、本発明の水性ポリウレタン樹脂を実施例にもとづいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0020】
実施例1
攪拌機、温度計、冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、ジメチロールブタン酸26.4部、ポリプロピレングリコール(商品名 アデカポリエーテルP−2000 旭電化工業(株)製 数平均分子量2,000)362.0部、ステアリルアルコール25.9部、イソホロンジイソシアネート111.6部を仕込み、85℃にて5時間反応を行い、イソシアネート基含有のウレタンプレポリマー525.9部を得た。このウレタンプレポリマーを70℃まで冷却した。水914.0部、イソプロピルアルコール74.0部、トリエチルアミン17.8部、アジピン酸ジヒドラジド15.7部からなる水溶液中に、攪拌下に前記ウレタンプレポリマーを添加、分散させ、50℃にて3時間反応させた。こうして得られたポリウレタン樹脂水分散液は、樹脂固形分濃度35%、粘度700mPa・s/25℃、pH8.0であった。
【0021】
実施例2
攪拌機、温度計、冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、ジメチロールブタン酸26.4部、ポリプロピレングリコール(商品名 アデカポリエーテルP−2000 旭電化工業(株)製 数平均分子量2,000)362.0部、ラウリルアミン17.7部、イソホロンジイソシアネート111.6部を仕込み、85℃にて5時間反応を行い、イソシアネート基含有のウレタンプレポリマー517.7部を得た。このウレタンプレポリマーを70℃まで冷却した。水898.8部、イソプロピルアルコール74.0部、トリエチルアミン17.8部、アジピン酸ジヒドラジド15.7部からなる水溶液中に、攪拌下に前記ウレタンプレポリマーを添加、分散させ、50℃にて3時間反応させた。こうして得られたポリウレタン樹脂水分散液は、樹脂固形分濃度35%、粘度800mPa・s/25℃、pH8.0であった。
【0022】
比較例1
攪拌機、温度計、冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、ジメチロールブタン酸26.4部、ポリプロピレングリコール(商品名 アデカポリエーテルP−2000 旭電化工業(株)製 数平均分子量2,000)362.0部、イソホロンジイソシアネート71.8部を仕込み、85℃にて5時間反応を行い、ウレタンポリマー460.2部を得た。水762.9部、イソプロピルアルコール74.0部、トリエチルアミン17.8部からなる水溶液中に、攪拌下に前記ウレタンポリマーを添加、分散させ、50℃にて3時間保温した。こうして得られたポリウレタン樹脂水分散液は、樹脂固形分濃度35%、粘度800mPa・s/25℃、pH8.0であった。
【0023】
比較例2
攪拌機、温度計、冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、ジメチロールブタン酸26.4部、ポリプロピレングリコール(商品名 アデカポリエーテルP−2000 旭電化工業(株)製 数平均分子量2,000)362.0部、1−ヘキサノール9.8部、イソホロンジイソシアネート111.6部を仕込み、85℃にて5時間反応を行い、イソシアネート基含有のウレタンプレポリマー509.8部を得た。このウレタンプレポリマーを70℃まで冷却した。水884.1部、イソプロピルアルコール74.0部、トリエチルアミン17.8部、アジピン酸ジヒドラジド15.7部からなる水溶液中に、攪拌下に前記ウレタンプレポリマーを添加、分散させ、50℃にて3時間反応させた。こうして得られたポリウレタン樹脂水分散液は、樹脂固形分濃度35%、粘度1000mPa・s/25℃、pH8.0であった。
【0024】
実施例1及び比較例1で得た各ポリウレタン樹脂水分散液について、以下の項目について評価を行った。結果を表1に示す。
【0025】
密着性:各ポリウレタン樹脂水分散液を、コロナ処理を施したポリプロピレンフィルム(OPP)、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)、及びナイロンフィルム(NY)処理面にバーコーダー(No.4)を使用して塗工した後にヒートガンで1分間乾燥し、ポリウレタン樹脂の塗膜を得た。次いで塗工面に粘着テープを貼り、塗工面に対して垂直方向に引き剥がした時の塗膜の残り具合を目視評価した。
○:全く剥がれなかった。
△:50%以上残った。
×:50%未満残った。
【0026】
【表1】
Claims (5)
- 水酸基、一級アミノ基または二級アミノ基のいずれか一つを有する炭素数が10〜40の脂肪族炭化水素化合物、高分子量ポリオール(カルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物を除く)、ポリイソシアネート化合物、ならびに、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、および2,2−ジメチロールペンタン酸から選ばれる脂肪族カルボン酸を反応させて得られる反応物を中和剤で中和し、さらに水に分散してなる、カルボン酸塩基を有するポリウレタン樹脂の水分散液。
- 高分子量ポリオール(カルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物を除く)が、ポリエーテルポリオール類である、請求項1に記載の水分散液。
- 水酸基、一級アミノ基または二級アミノ基のいずれか一つを有する炭素数が10〜40の脂肪族炭化水素化合物と高分子量ポリオールの使用割合が重量比で、1/99〜20/80である請求項1記載の水分散液。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の水分散液を用いてなる印刷インキ用バインダー。
- 請求項4に記載の印刷インキ用バインダーを含有してなる印刷インキ組成物。
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